(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】平面物体またはストランド状物体用生産システムを制御するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/41 20060101AFI20250131BHJP
G01N 21/3581 20140101ALI20250131BHJP
【FI】
G01N21/41 Z
G01N21/3581
(21)【出願番号】P 2023065929
(22)【出願日】2023-04-13
(62)【分割の表示】P 2021513249の分割
【原出願日】2019-09-30
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】102018124175.5
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511082609
【氏名又は名称】シコラ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】シコラ ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】シャリック クリスチャン
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-537630(JP,A)
【文献】特開2010-156664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0112973(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0194055(US,A1)
【文献】特開2005-043230(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0267600(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/61
G01N 22/00-22/04
B29C 48/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状物体または管状物体(12)用の生産システム(32)を制御するための方法であって、
前記物体(12)は測定領域を通って搬送方向に搬送され、前記物体(12)は前記測定領域においてギガヘルツまたはテラヘルツの周波数範囲で測定放射が照射され、前記測定放射は少なくとも部分的に前記物体(12)を透通し、前記物体(12)によって反射される測定放射は検出され、前記物体(12)の屈折率(n)および/または前記物体(12)による前記測定放射の吸収は、検出される前記測定放射を使用して判断され、
前記生産システム(32)の少なくとも1つの生産パラメータは、前記屈折率の判断および/または前記吸収の判断に基づいて制御され、
前記屈折率(n)および/または前記吸収は前記測定領域を通して前記物体(12)の搬送中に複数の時点で判断され、そして前記少なくとも1つの生産パラメータは経時的な前記屈折率(n)および/または前記吸収の変化に基づいて制御され、
および/または、測定放射は前記物体(12)の種々の点に対して放射され、前記屈折率(n)および/または前記吸収は前記物体(12)の前記種々の点で判断され、そして前記少なくとも1つの生産パラメータは前記屈折率(n)および/または前記吸収の空間的変化に基づいて制御され、
前記屈折率を判断するために、さらに、前記物体が前記測定領域に配置される時に前記測定領域を通して送信器によって発せられる前記測定放射の伝搬時間と、前記物体が配置されていない前記測定領域を通る前記測定放射の伝搬時間との比較が考慮され
、
データ傾向は、前記測定領域を通して前記物体(12)の搬送中に複数の時点で判断される前記屈折率および/または前記吸収の値を使用して生成され、
前記生産システムは、経時的な前記データ傾向により検出される経時的な前記値の変化に基づいて制御され、
空間値分布は、前記物体(12)の前記種々の点で判断される前記屈折率および/または前記吸収の分布値を使用して生成され、前記生産システムは前記分布値の分布の検出される空間的変化に基づいて制御され、
前記物体(12)はプラスチック材料からなり、前記生産システム(32)は前記プラスチック材料を押し出すための押し出し装置を含み、前記押し出し装置の少なくとも1つの生産パラメータは前記屈折率の判断および/または前記吸収の判断に基づいて制御され、
前記押し出し装置に送り込まれる少なくとも2つの押し出される材料の混合比は、前記少なくとも1つの生産パラメータとして制御され、
前記屈折率および/または前記吸収の判断のために、前記物体(12)の体積測定及び重量測定を行わないことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記物体(12)は管状物体(12)であって、
前記屈折率を判断するために、さらに、
前記送信器の方へ向いている第1の壁部、および前記送信器の向こう側に向いている第2の壁部を通して前記送信器によって発せられる前記測定放射の伝搬時間が考慮に入れられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記押し出し装置の出力容量は、前記少なくとも1つの生産パラメータとして制御されることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記物体(12)の生産のために使用される前記材料に付加される添加物の比率は、前記屈折率および/または前記吸収の確認された前記値および/または前記分布値を使用して判断され、前記生産システム(32)は前記添加物の判断された前記比率に基づいて制御されることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記生産システム(32)の前記少なくとも1つの生産パラメータは、前記屈折率の判断および/または前記吸収の判断に基づく閉制御ループで調整されることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
平面
状物体または
管状物体(12)用の生産システム(32)を制御するための装置であって、
前記装置の測定領域を通して搬送方向に前記物体(12)を搬送するための搬送器と、
前記測定領域におけるギガヘルツまたはテラヘルツの周波数範囲での測定放射を前記物体(12)に照射するための送信器であって、前記測定放射は少なくとも部分的に前記物体(12)を透通する、送信器と、
前記物体(12)によって反射される前記測定放射を検出するための検出器と、
前記検出器によって検出される前記測定放射を使用して、前記物体(12)の屈折率(n)および/または前記物体(12)による前記測定放射の吸収を判断するように設計される評価器(24)と、を含み、
前記屈折率の判断および/または前記吸収の判断に基づいて前記生産システム(32)の少なくとも1つの生産パラメータを制御するように設計される制御器が設けられ、前記評価器(24)は、前記測定領域を通して前記物体(12)の搬送中に複数の時点で前記屈折率(n)および/または前記吸収を判断するように設計され、前記制御器は、前記少なくとも1つの生産パラメータを経時的な前記屈折率(n)および/または前記吸収の変化に基づいて制御するように設計され、および/または、前記送信器は前記物体(12)の種々の点に対して測定放射を放射するように設計され、前記評価器(24)は、前記物体(12)の前記種々の点で前記屈折率(n)および/または前記吸収を判断するように設計され、前記制御器は、前記屈折率(n)および/または前記吸収の空間的変化に基づいて前記少なくとも1つの生産パラメータを制御するように設計され、
前記屈折率を判断するために、さらに、前記評価器(24)は、前記物体が前記測定領域に配置される時に前記測定領域を通して前記送信器によって発せられる前記測定放射の伝搬時間と、前記物体が配置されていない前記測定領域を通る前記測定放射の伝搬時間と、の比較から、前記屈折率を判断するように設計され
、
前記評価器(24)は、前記測定領域を通して前記物体(12)の搬送中に複数の時点で判断される前記屈折率および/または前記吸収の値を使用してデータ傾向を生成するように設計され、
前記生産システム(32)は前記データ傾向により検出される経時的な前記値の変化に基づいて制御可能であり、
前記評価器(24)は、前記物体(12)の前記種々の点で判断される前記屈折率および/または前記吸収の分布値を使用して空間値分布を生成するように設計され、前記制御器は、前記分布値の検出される空間的変化に基づいて前記生産システムを制御するように設計され、
前記物体(12)はプラスチック材料からなり、
前記生産システム(32)は前記プラスチック材料を押し出すための押し出し装置を含み、前記制御器は、前記屈折率の判断および/または前記吸収の判断に基づいて前記押し出し装置の少なくとも1つの生産パラメータを制御するように設計され、
前記押し出し装置の前記少なくとも1つの生産パラメータは、前記押し出し装置に送り込まれる少なくとも2つの押し出される材料の混合比であり、
前記屈折率および/または前記吸収の判断のために、前記物体(12)の体積測定及び重量測定を行わないことを特徴とする、装置。
【請求項7】
前記物体(12)は管状物体(12)であり、
前記屈折率を判断するために、さらに、
前記評価器(24)は、前記送信器の方へ向いている第1の壁部、および前記送信器の向こう側に向いている第2の壁部を通して前記送信器によって発せられる前記測定放射の伝搬時間も考慮に入れられるように設計されることを特徴とする、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記押し出し装置の前記少なくとも1つの生産パラメータは、前記押し出し装置の出力容量であることを特徴とする、
請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記制御器は、前記屈折率の判断および/または前記吸収の判断に基づく閉制御ループで前記生産システム(32)の前記少なくとも1つの生産パラメータを調整するように設計される閉ループ制御器(28)を形成することを特徴とする、
請求項6から8のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面物体またはストランド状物体用生産システムを制御するための方法であって、前記物体は測定領域を通して搬送方向に搬送され、前記物体は前記測定領域においてギガヘルツまたはテラヘルツの周波数範囲で測定放射が照射され、前記測定放射は少なくとも部分的に前記物体を透通し、前記物体によって反射される測定放射は検出され、前記物体の屈折率および/または前記物体による前記測定放射の吸収は、検出される前記測定放射を使用して判断される方法に関する。
【0002】
また本発明は、平面物体またはストランド状物体用生産システムを制御するための装置であって、前記装置の測定領域を通して搬送方向に前記物体を搬送するための搬送器と、前記測定領域におけるギガヘルツまたはテラヘルツの周波数範囲での測定放射を前記物体に照射するための送信器であって、前記測定放射は少なくとも部分的に前記物体を透通する、送信器と、前記物体によって反射される前記測定放射を検出するための検出器と、前記検出器によって検出される前記測定放射を使用して、前記物体の屈折率および/または前記物体による前記測定放射の吸収を判断するように設計される評価器と、を含む装置に関する。
【背景技術】
【0003】
伝搬時間測定を使用して試験対象物の少なくとも1つの層厚を確認するためのテラヘルツの測定装置およびテラヘルツの測定方法は、例えば、ドイツ特許第102016103298A1号公報(特許文献1)から既知である。また屈折率が不明な場合でも、ストランドの直径および/または壁厚を測定するための装置および方法は、国際公開特許第2016/139155A1号公報(特許文献2)から既知である。したがって、例えば、屈折率が不明であるまたは確実に不明な場合でも、管の直径および壁厚を正確に判断することが可能である。
【0004】
押し出し装置から出る管状ストランドを測定するための装置は、ドイツ特許第202018006144U1号公報(特許文献3)から既知であり、管状ストランドの形状の直径および/または壁厚および/または偏差は、特にテラヘルツ放射によって確認できる。形状の直径および/または壁厚および/または偏差を確認した値に基づき、押し出し装置も、制御および/または調整可能である。形状の直径または壁厚または偏差を判断するために、ストランド材料の屈折率も判断可能である。
【0005】
さらに、テラヘルツ放射で照射し、押し出し機に送り込まれる供給材料の少なくとも1つの供給速度または供給量を測定することにより、押し出し工程において生成される押し出し製品の層特性を確認するための方法および装置は、ドイツ特許第102015110600B3号公報(特許文献4)から既知である。ドイツ特許第102015110600B3号公報(特許文献4)には、材料の密度に依存する屈折率が、発泡層の押し出し製品である場合不明であるという問題が述べられている。その一方、ドイツ特許第102015110600B3号公報(特許文献4)によれば、非発泡層の場合の屈折率は、既知であることを前提としている。発泡層の屈折率を確認するために、ドイツ特許第102015110600B3号公報(特許文献4)には、テラヘルツ放射で押し出し製品を測定することに加え、押し出し工程に送り込まれる材料の量に関するデータまたは測定信号を使用することが提案されている。ドイツ特許第102015110600B3号公報(特許文献4)によれば、この材料の量は、重量測定または体積測定で得られる。この方法で確認された発泡層の屈折率により、発泡層の発泡度に関する情報が提供されるはずである。確認された屈折率に基づき、押し出し機の供給速度は、所望の発砲度を達成するために調整可能である。ドイツ特許第102015110600B3号公報(特許文献4)によれば、粒状物として押し出し機に送り込まれる材料の重量は、計量装置を用いて測定される。しかしながら、この場合、特定の粒状物の重量が既知であり、一定である場合にのみ体積を判断できる。実際には、これらの両方が当てはまらないことが多い。さらに、ドイツ特許第102015110600B3号公報(特許文献4)によれば、押し出し機への材料の投入量が測定され、これに基づき、テラヘルツ放射により照射された押し出し製品の部分の屈折率に関する予測が行われる。しかしながら、押し出し機の投入から、押し出し機で作られた押し出し製品の特定の部分の屈折率に関する結論を出すには、押し出し機の回転速度も、引抜速度も、押し出し中の温度変化による伸縮率も変化しないことが必要である。実際には、これらの要件は確実に存在しないため、公知の方法は対応する不正確さに悩まされる。
【0006】
ドイツ特許第102015110600B3号公報(特許文献4)によれば、発泡層の屈折率を、確認し、所望の発泡度を達成するために供給速度を調節するために使用できるが、ドイツ特許第102015110600B3号公報(特許文献4)によれば、非発泡層の既知の屈折率を前提としている。しかしながら、実際には、非発泡層の屈折率も様々な理由で変化する。ドイツ特許第102015110600B3号公報(特許文献4)によれば、このような変化を認識していない。さらに、ドイツ特許第102015110600B3号公報(特許文献4)によれば、屈折率は、押し出しのために押し出し機に送り込まれる材料を使用して間接的に体積測定または重量測定で判断されるため、説明したように、材料から押し出される物体の特定の部分に割り当てることは困難である。これに対応して、ドイツ特許第102015110600B3号公報(特許文献4)によって提供されている押し出しシステムを制御または調節することも不正確である。 また生産システムをより対象的に、より正確に制御するために、生産プロセスに関するより多くの情報を取得する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】ドイツ特許第102016103298A1号公報
【文献】国際公開特許第2016/139155A1号公報
【文献】ドイツ特許第202018006144U1号公報
【文献】ドイツ特許第102015110600B3号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
説明した先行技術から出発して、本発明の目的は、平面物体またはストランド状物体用の生産システムの制御を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、独立請求項1および12の特徴により目的を達成する。有利な実施形態は、従属請求項、明細書、および図面に開示されている。
【0010】
冒頭で述べたタイプの方法を用いて、本発明は、前記生産システムの少なくとも1つの生産パラメータは、前記屈折率の判断および/または前記吸収の判断に基づいて制御され、前記屈折率および/または前記吸収は前記測定領域を通して前記物体の搬送中に複数の時点で判断され、かつ前記少なくとも1つの生産パラメータは経時的な前記屈折率および/または前記吸収の変化に基づいて制御され、および/または、測定放射は前記物体の種々の点に対して放射され、前記屈折率および/または前記吸収は前記物体の前記種々の点で判断され、前記少なくとも1つの生産パラメータは前記屈折率および/または前記吸収の空間的変化に基づいて制御されるという点において目的を達成する。
【0011】
冒頭で述べたタイプの方法を用いて、本発明は、前記屈折率の判断および/または前記吸収の判断に基づいて前記生産システムの少なくとも1つの生産パラメータを制御するように設計される制御器が設けられ、前記評価器は、前記測定領域を通して前記物体の搬送中に複数の時点で前記屈折率および/または前記吸収を判断するように設計され、前記制御器は、前記少なくとも1つの生産パラメータを経時的な前記屈折率および/または前記吸収の変化に基づいて制御するように設計され、および/または、前記送信器は前記物体の種々の点に対して測定放射を放射するように設計され、前記評価器は、前記物体の前記種々の点で前記屈折率および/または前記吸収を判断するように設計され、前記制御器は、前記屈折率および/または前記吸収の空間的変化に基づいて前記少なくとも1つの生産パラメータを制御するように設計されるという点で目的を達成する。
【0012】
生産システムで生産されるストランド状または平面状物体は、例えば、プラスチックまたはガラス製の物体であってもよい。特に物体は、非発泡体であってもよく、したがって、発泡部分、例えば、発泡層を有していない。ストランド状物体は、例えば、プラスチックまたはガラス製の管の管状物体であってもよい。平面状物体は、例えば、プラスチックやガラス製の板であってもよい。本発明によれば、測定の時点で、生産システムで生産された物体は、既に(基本的に)完全に最終形状となり得る。しかしながら、測定の時点では、成形がまだ完了していない可能性もある。測定時点では、物体はまだ、特にガラス製の物体である場合、例えば、2000℃以上の非常に高い温度を有する可能性がある。物体は、特に長手方向に測定領域を通して搬送され、ギガヘルツまたはテラヘルツの測定放射で照射される。ここで問題となっているタイプの生産システムでは、特に困難な測定条件が整っている。これは、特に物体がまだ最終形状を受け取っている間または成形が完成したばかりの初期段階での物体の測定に当てはまる。これは一般的に、生産システムにおける許容できない逸脱に早期に対応し、不必要な不良品を防止できるようにするためには望ましいことである。しかしながら、この測定領域では、生産工程からの汚染の危険性が高い。また、冷却水などの冷却液を、生産システムの物体または部品を冷却するために、生産システムの物体や部品にかけることが多い。これにより、水が飛散し、蒸気することになる。例えば、レーザー光を用いた光学的な測定方法は、一般的にこのような測定条件において問題を有する。説明したタイプの困難な測定環境にほとんど影響されない本発明に係るギガヘルツまたはテラヘルツの測定放射を使用することにより、そのような問題を回避できる。
【0013】
測定放射は、送信器から放射され、測定される物体に対して案内される。これにより、測定放射は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に物体を透通する。特に、測定放射は、物体を通って完全に透通できる。測定放射は、物体の境界面で反射され、反射した測定放射は、受信器で受信される。送信器および受信器は、特に実用的な方法で送受信機を形成するように組み合わせ可能である。もちろん、複数の送信器と複数の受信器を備えることができ、例えば、異なる方向から物体に放射線を照射し、反射した測定放射を受信することも可能である。複数の送信器および受信器を備える場合、特に実用的な方法でそれぞれが送受信機を形成するようにそれらを対にして組み合わせることが可能である。
【0014】
反射された測定放射の検出に基づいて、物体の材料の屈折率および物体による測定放射の吸収を判断できる。ドイツ特許第102015110600B3号公報(特許文献4)は、非発泡層の既知の屈折率を前提としているが、本発明では、特に非発泡材料の屈折率も様々な理由で実際には変化し得ることを考慮している。したがって、例えば、プラスチック管のような押し出し製品用の押し出し材料には、様々な理由で、日焼け防止など、例えば材料の伝導性を低下させるように添加剤が加えられる。この目的のために、押し出しシステムのユーザは、製造者が既に付加した添加物である、プレミックス材料混合物を使用することがある。しかしながら、時には、ユーザが自ら添加物を基材に付加し材料混合物を生産することもある。特に後者の場合には、添加物の添加量に望ましくない変化が生じることがある。押し出し材料に添加される1つの添加剤の割合が変化した場合、本発明によれば、屈折率の判断を用いて迅速かつ確実に検出でき、生産システムにおける対応する制御によって改善できる。
【0015】
本発明によれば、屈折率または吸収の測定は、特に、物体によって反射された測定放射を直接使用して、特に、物体によって反射された測定放射のみを使用して行われる。本発明によれば、屈折率または吸収を判断するために、特に、例えばドイツ特許第102015110600B3号公報(特許文献4)においてまだ提供されているような押し出し装置で押し出された材料の重量測定または体積測定を行う必要はない。したがって、本発明によれば、確認された屈折率を物体の特定の部分に割り当てることがより確実に可能となり、より正確に制御することが可能となる。
【0016】
本発明によれば、生産システムの少なくとも1つの生産パラメータが、屈折率の判断および/または吸収の判断に基づいて制御される。本発明は、測定される物体の屈折率および/または吸収度、特にこれらの値の時間的または空間的な変化により、生産プロセスに関する情報が提供され、それに基づいて生産プロセスの制御が可能であるという驚くべき発見に基づいている。ギガヘルツ放射またはテラヘルツ放射の照射は、実際には、例えば、表面輪郭、直径、厚さ、厚壁など、物体の幾何学的なパラメータを判断するために行われることが多い。これに対応して、本発明に係る物体の少なくとも1つの幾何学的パラメータも、例えば、その表面輪郭、直径、厚さ、または壁厚などを(評価器によって)判断できる。説明したように、この場合、屈折率を、幾何学的パラメータの正確な判断を用いて、確認することもできる。さらに本発明によれば、ギガヘルツまたはテラヘルツ放射、および場合によっては屈折率および/または吸収の判断は、工程に関する結論を導き出し、それに対応して工程を制御するために使用され、特にこの制御は、自動的に行うことが可能である。本発明によれば、この方法により、生産工程を簡単かつ確実に改善することが可能である。
【0017】
本発明は、特に、屈折率および/または吸収の時間的または空間的変化が、生産システムの制御または調節のための重要なパラメータであるという発見に基づいている。この目的のために、本発明によれば、屈折率および/または吸収が、複数の時点で、および/または物体の複数の点、特に物体の全周にわたって分布した点で判断される。本発明によれば、生産プロセスにおける望ましくない変化は、屈折率および/または吸収に関して確認された時間的または空間的に分布したデータの変化から推測される。これに基づいて生産システムは、制御される。
【0018】
屈折率や吸収の確認は、例えば、物体が測定領域を通して搬送されている間、一定の時間間隔で行うことができる。この方法で、これらのデータの傾向を検出できる。ここから、生産システムにおける必要な制御介入を導き出すことができる。例えば、屈折率または吸収の値が経時的に上昇したり下降したりした場合、生産プロセスにおける望ましくない変化を示している。
【0019】
ストランド状物体の場合、測定放射は、特に物体の全周にわたって分布する異なる点に対して放射されることが可能である。前述の実施形態では、複数の送信器および受信器、例えば複数の送受信器を備えることができ、測定放射を物体の異なる点に対して放射するように案内し、それぞれの場合に反射された測定放射を受信するように配置する。例えば、複数の送信器および受信器、例えば複数の送受信器を、ストランド状物体の全周にわたって分布して配置できる。しかしながら、少なくとも1つの送信器および少なくとも1つの受信器、例えば少なくとも1つの送受信器を、ストランド状物体に対して空間的に変化可能に、例えば回転可能に配置することを考えてもよい。前述の実施形態により、屈折率または吸収の空間分布を検出できる。ひいては、生産システムにおける必要な制御介入をそこから導き出すことができる。例えば、屈折率または吸収の値が場所によって系統的に変化することにより、生産プロセスに欠陥があることが分かる。例えば、押し出されたプラスチック材料が望ましくない方法で流れた場合、その結果、屈折率または吸収は、例えば、ストランド状物体の下側とその上側で異なることがある。これを検出して、製造工程を制御する際に考慮することができる。
【0020】
吸収は、例えば、送信器から放射された測定放射の強度と、反射後に送信器および受信器の向こう側に向いている物体の後部境界面で受信された測定放射の強度との比較から判断できる。屈折率は、例えば、国際公開特許第2016/139155A1号公報(特許文献2)にて説明されている通りに、判断できる。この場合、例えば、物体が測定領域に配置されているとき、送信器から測定領域を通して放射された測定放射の伝搬時間と、物体が配置されずに測定領域を通る測定放射の伝搬時間とを比較することができる。そして、以下に詳細に説明するように、伝搬時間の変化から材料の屈折率を数学的に判断できる。この目的のために、送信器および受信器を、例えば、測定領域の反対側に配置できる。しかしながら、例えば、測定領域の片側に送信器および受信器を配置し、測定領域の反対側に反射器を配置することも可能である。
【0021】
既に説明したように、屈折率は、物体が測定領域に配置されているとき送信器から測定領域を通して放射された測定放射の伝搬時間と、物体が配置されずに測定領域を通して放射された測定放射の伝搬時間との比較から判断することができる。特に、物体が管状物体である場合には、屈折率を判断するために送信器の方へ向いている第1の壁部および送信器の向こう側へ向いている第2の壁部を通って送信器から放射された測定放射の伝搬時間を考慮することができる。
【0022】
国際公開特許第2016/139155A1号公報(特許文献2)にて説明されている通り、例えば管状物体の場合、少なくとも1つの送信器の方へ向いている物体の壁部の壁厚W
d1または少なくとも1つの送信器の向こう側へ向いている物体の壁部の壁厚W
d2は、以下の式で定めることができる。
以下とともに:
ΔT
wd1 少なくとも1つの送信器の方へ向いている外側境界面から反射された測定放射と、少なくとも1つの送信器の方へ向いている物体の壁部の少なくとも1つの送信器の向こう側へ向いている内側境界面から反射された測定放射との間の伝搬時間の差。
ΔT
wd2 少なくとも1つの送信器の方へ向いている内側境界面から反射された測定放射と、少なくとも1つの送信器の向こう側へ向いている物体の壁部の外側境界面から反射された測定放射との間の伝搬時間の差。
ΔT
R 装置を通して案内された物体の材料によって起こる、少なくとも1つの送信器から放射され、物体を透通した後に少なくとも1つの受信機で受信される測定放射の伝搬時間の変化。
c 空気中における測定放射の伝搬速度。
例えば、上記のW
d1の式は、次のように変換できる:
また、以下も当てはまる:
以下とともに:
c
K 物体における測定放射の伝搬速度
したがって、以下も当てはまる:
したがって、管状物体の屈折率nは次の通りである:
【0023】
したがって、管状物体の屈折率は、管状物体によって起こる伝搬時間の変化と、第1および第2の壁部を通る測定放射の伝搬時間とを考慮して計算できる。この目的において、体積測定または重量測定は必要ない。
【0024】
別の実施形態によれば、データ傾向は、測定領域を通して物体の搬送中に複数の時点で判断される屈折率および/または吸収の値を使用して生成されることが可能である。次いで、生産システムは、経時的なデータ傾向の検出される変化、例えば、特定の時間間隔にわたるデータ傾向の低下または上昇に基づいて制御可能である。例えば、この目的において、データ傾向を、時間によって導き出すことが可能である。計算された値が、指定された設定値を超えたり、下回ったりした場合、生産システムへの制御介入を行うことができる。
【0025】
別の実施形態によれば、空間値分布は、物体の種々の点で判断される屈折率および/または吸収の値を使用して生成されることができる。次いで、生産システムは、値分布の検出される空間的変化に基づいて制御可能である。すでに説明したように、屈折率および/または吸収は、特に、例えば管状物体の全周にわたって分布する複数の点で判断可能である。このようにして、管状物体の全周にわたって分布する屈折率および/または吸収の確認された値の空間分布を確認できる。特に系統的な変化、例えば上側に比べて物体の下側の屈折率および/または吸収の値が非常に高い場合、ここで材料の望ましくない下向きの流れ、いわゆる下落が起こることが推測できる。次いで、生産工程で対応する制御介入によってこれを対処できる。次に、例えば、値分布の空間導出を行うことができる。次いで、導き出された計算値が指定された設定値を超えたり下回ったりした場合には、生産システムに制御介入を行うことができる。
【0026】
別の実施形態によれば、物体は、プラスチック材料からなり、生産システムは、プラスチック材料を押し出すための押し出し装置を含み、押し出し装置の少なくとも1つの生産パラメータは、屈折率の判断および/または吸収の判断に基づいて制御される。関連する別の実施形態によれば、押し出し装置の出力容量は、生産パラメータとして制御可能である。代替的または追加的に、押し出し装置に送り込まれる少なくとも2つの押し出される材料の混合比は、生産パラメータとして制御することも可能である。押し出し装置では、2つの材料を混合して、押し出される混合物を形成する可能性がある。この場合、一次プラスチック材料に多くの場合混和物が含まれる。例えば、黒鉛繊維またはガラス繊維は、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などのキャリアプラスチックに混合される可能性がある。このような混合物は、多くの場合、例えば重量1%以下の小さな比率においてのみ存在する。したがって、混合比の設定は難しく、多くの場合確実に誤った混合比を検出することはできない。例えば、異なる製造者の既製の混合物も、混合比に関してわずかな程度に変化する。材料によっては、このような混合物は、例えば屈折率にかなりの影響を有する。これは特に、屈折率がキャリア材料の屈折率から大きく逸脱している材料に当てはまる。これは、例えば、PPやPEなどのキャリアプラスチックに黒鉛繊維またはガラス繊維を混合した場合である。前記の実施形態は、これを使用している。したがって、小さな混和物の比率であっても、指定された混合比から許容できない混合比の逸脱があれば、本発明に係る屈折率の判断または吸収の判断に基づいて確実に検出でき、対応する介入を、押し出し装置における混合工程に行うことができるという驚くべき発見がなされた。
【0027】
既に説明したように、特に押し出しシステムで基材に付加される添加物は、材料の屈折率や吸収に大きな影響を与えることがある。別の実施形態によれば、物体の生産のために使用される材料に付加される添加物の比率は、対応する屈折率および/または吸収の確認された値を使用して判断され、生産システムは、添加物の判断された比率に基づいて制御可能である。この方法で、基材と添加物との間の所望の混合比が常に維持されることが可能である。
【0028】
別の実施形態によれば、生産システムの少なくとも1つの生産パラメータは、屈折率の判断および/または吸収の判断に基づく閉制御ループで調整可能である。次いで、閉ループ制御として知られているものである。したがって、制御装置は、閉ループ制御装置を形成する。特に、手動による介入を必要としない完全な自動制御を行うことができる。閉ループ制御装置は、例えば、屈折率および/または吸収の確認された値を制御変数として受け取ることができる。これを参照変数としての屈折率および/または吸収の設定値と比較する。比較の結果、制御偏差が生じた場合、閉ループ制御装置は、制御偏差が再び許容範囲内に入るまで、生産パラメータ、例えば、押し出し装置の混合比を制御することができる。この文脈で述べた生産システムを制御するためのすべての実施形態は、同様に生産システムを調整するためにも使用することができる。
【0029】
本発明に係る方法は、本発明に係る装置によって実行可能である。したがって、本発明に係る装置は、本発明に係る方法を実行するように設計されることが可能である。
【0030】
また本発明は、平面状またはストランド状物体用生産システムであって、生産システムを制御するための本発明に係る装置を備え、本発明に係る装置の測定領域を通して物体を搬送方向に搬送するための搬送装置を備えた平面状またはストランド状物体用生産システムに関する。また本発明に係る装置または本発明に係る生産システムは、平面状またはストランド状物体を含むことができる。
【0031】
本発明の例示的な実施形態は、図面を参照して下記にてより詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係る装置または本発明に係る方法によって確認される管状物体の屈折率が経時的に描かれている図を示す。
【
図2】本発明に係る装置または本発明に係る方法によって確認される屈折率が管状物体の回転角度にわたって描かれた図を示す。
【
図3】断面図で示された管状物体を備える本発明に係る装置の一例を示す。
【0033】
特に明記しない限り、同一の参照番号は、図中の同一の対象を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1の図では、本発明による装置または本発明による方法による生産システムで測定される物体に対して、本発明に従って判断される屈折率の経時的な曲線が示されている。該図では、時間tの間の屈折率nが描かれている。示される例では、屈折率nは経時的に低下する。
【0035】
図2では、とりわけ、本発明による装置または本発明による方法による生産システムで測定される管状物体の屈折率の空間曲線が示されている。とりわけ、
図2における図に対して、屈折率は、管状物体の全周にわたって分布した種々の点で確認されている。この目的で、例えば、送受信機として組み合わせられた送信器および受信器は、管状物体の全周にわたって回転しており、管状物体に測定放射が発せられ、ここから放出された測定放射は、受信器によって測定された。送受信器の回転角度ωにわたる屈折率nが
図2の図に示されている。ここで、屈折率が最初、0度~180度の角度範囲における最小値を通過した後、この元の値に再び近づくことは、留意されるべきである。
【0036】
図3では、
図1および
図2の図による値が確認可能である例として本発明による装置が示されている。示される例では、装置は、ギガヘルツまたはテラヘルツ放射用の送信器および受信器を含む送受信機10を備える。ギガヘルツまたはテラヘルツの周波数範囲における測定放射は、
図3における矢印14によって示されるように、装置の測定領域を通して長手方向に搬送される管状物体12に対して送信機10によって発せられる。測定放射は、矢印14、16、18、および20によって示されるように、管状物体12を透通し、かつ管状物体12の異なる境界面で反射される。
図3における矢印22によって示されるように、一定の比率の放射はさらにまた管状物体12を出る。示される例では、この比率の放射が送受信機10に戻るように、この比率の放射は反射器36によって反射される。境界面で反射された測定放射はまた、送受信機10によってもう一度受け取られる。
図3で破線の矢印26によって示されるように、送受信機10からの測定データは評価器24に転送される。評価器24は、例えば上記で説明されるように、管状物体12の材料の屈折率を判断できる。この屈折率の判断は、
図1に示されるような図で確認できる、例えば、規則的な間隔での指定される期間にわたって、装置の測定領域を通して管状物体12の搬送中に繰り返され得る。
図2の図に示されるように、例えば、管状物体12を中心に送受信機10(および反射器36)を回転させ、回転中に管状物体12の全周にわたって分布する種々の点に対して測定放射を送り、および、反射された測定放射を受け取り、かつここからの屈折率の空間分布を確認することも考えられる。とりわけ、屈折率が上記で説明されるように判断される時、測定値は180度の角度期間で繰り返す。
【0037】
評価器24によって確認される屈折率の値は、示される例では、
図3で破線の矢印30によって示されるように、閉ループ制御器28に供給可能である。閉ループ制御器28は、
図3で破線の矢印34によって示されるように、
図3において参照番号32で極めて概略的に示される生産システムの少なくとも1つの生産パラメータを調整可能である。少なくとも1つの生産パラメータは、例えば、生産システムの押し出し装置に送り込まれる2つの材料の混合比とすることができる。
【符号の説明】
【0038】
n 屈折率
t 時間
ω 回転角度
10 送受信機
12 管状物体
14 矢印
16 矢印
18 矢印
20 矢印
22 矢印
24 評価器
26 破線の矢印
28 閉ループ制御器
30 破線の矢印
32 生産システム
34 破線の矢印
36 反射器