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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】塗装ロボットおよび塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 12/00 20180101AFI20250131BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20250131BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20250131BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20250131BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20250131BHJP
   B25J 9/10 20060101ALI20250131BHJP
   B05B 13/04 20060101ALN20250131BHJP
   B05D 1/26 20060101ALN20250131BHJP
   B05D 3/00 20060101ALN20250131BHJP
【FI】
B05B12/00 A
B05C5/00 101
B05C11/00
B05C11/10
B41J2/01 109
B41J2/01 207
B41J2/01 201
B41J2/01 451
B41J2/01 307
B41J2/01 401
B25J9/10 A
B41J2/01 205
B05B13/04
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024087658
(22)【出願日】2024-05-30
【審査請求日】2024-05-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 輝澄
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特許第7425919(JP,B1)
【文献】特開2017-196826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B05C 5/00
B05C 11/00
B05C 11/10
B25J 9/10
B05B 12/00
B05B 13/04
B05D 1/26
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の塗装部位への塗装を行う塗装ロボットであって、
塗料の液滴を吐出する複数のノズルと、駆動することで前記ノズルから前記液滴を押し出すための圧電基板を備える塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、
前記塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、
前記塗装ヘッドの前記圧電基板の作動を制御するヘッド制御部、および前記ロボットアームの作動を制御するロボットアーム制御部を備える制御部と、を備え、
前記ヘッド制御部は、前記車両への塗装において、特定の前記ノズルが前記液滴の吐出が不良である不良ノズルと判定された場合に、当該不良ノズルに対応した不良ドットの周囲のドットであって前記液滴の吐出に問題のない良ノズルに対応した良ドットの前記液滴のサイズが大きくなるように前記圧電基板の駆動を制御するリカバリー制御を行い、
前記リカバリー制御では、
前記不良ドットの周囲の前記良ドットが前記塗装部位における塗装範囲の境界に到達している場合において、当該良ドットの前記液滴のサイズを、前記リカバリー制御を実施しないときの通常の吐出状態と同等の液滴サイズとなるような境界吐出制御を実行しつつ、
前記不良ドットの周囲の前記良ドットであって、前記境界よりも前記塗装範囲の内部側に位置する前記良ドットについては、当該良ドットの前記液滴のサイズが前記通常の吐出状態における前記良ドットよりも大きくなるような非境界吐出制御を実行し、
前記ヘッド制御部は、前記リカバリー制御において、
(A)前記車両の塗装部位が水平面または水平面に近い所定の傾斜角度の範囲内の場合には、前記不良ドットの周囲の複数の前記良ドットにおいて、前記通常の吐出状態における前記良ドットよりも前記液滴のサイズが大きくなるように前記圧電基板の制御を行い、
(B)前記車両の塗装部位が前記所定の傾斜角度を超えて傾斜している場合には、前記不良ドットの周囲の複数の前記良ドットにおいて、
前記不良ドットよりも上側に位置する前記良ドットについては、前記不良ドットの周囲における前記良ドットの中で最も前記液滴のサイズが大きくなるように前記圧電基板を制御しつつ、
前記不良ドットの上側以外に位置する前記良ドットについては、前記通常の吐出状態よりも、当該良ドットの前記液滴のサイズが大きくなる、または前記通常の吐出状態と同等の液滴サイズとなるように前記圧電基板を制御する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項2】
車両の塗装部位への塗装を行う塗装ロボットであって、
塗料の液滴を吐出する複数のノズルと、駆動することで前記ノズルから前記液滴を押し出すための圧電基板を備える塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、
前記塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、
前記塗装ヘッドの前記圧電基板の作動を制御するヘッド制御部、および前記ロボットアームの作動を制御するロボットアーム制御部を備える制御部と、を備え、
前記ヘッド制御部は、前記車両への塗装において、特定の前記ノズルが前記液滴の吐出が不良である不良ノズルと判定された場合に、当該不良ノズルに対応した不良ドットの周囲のドットであって前記液滴の吐出に問題のない良ノズルに対応した良ドットの前記液滴のサイズが大きくなるように前記圧電基板の駆動を制御するリカバリー制御を行い、
前記リカバリー制御では、
前記不良ドットの周囲の前記良ドットが前記塗装部位における塗装範囲の境界に到達している場合において、当該良ドットの前記液滴のサイズを、前記リカバリー制御を実施しないときの通常の吐出状態と同等の液滴サイズとなるような境界吐出制御を実行しつつ、
前記不良ドットの周囲の前記良ドットであって、前記境界よりも前記塗装範囲の内部側に位置する前記良ドットについては、当該良ドットの前記液滴のサイズが前記通常の吐出状態における前記良ドットよりも大きくなるような非境界吐出制御を実行し、
前記ヘッド制御部は、前記リカバリー制御において、
同一の塗装パスである第1塗装パス内での前記液滴のサイズの制御によっては前記不良ノズルによる塗装不良が解消されない前記不良ドットが存在すると判断される際に、
次の塗装パスである第2塗装パスにおいて前記第1塗装パスとオーバーラップするオーバーラップ領域を設けると共に、当該オーバーラップ領域内に前記不良ドットと重なる前記良ドットを設ける補完制御を行う、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項3】
車両の塗装部位への塗装を行う塗装ロボットであって、
塗料の液滴を吐出する複数のノズルと、駆動することで前記ノズルから前記液滴を押し出すための圧電基板を備える塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、
前記塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、
前記塗装ヘッドの前記圧電基板の作動を制御するヘッド制御部、および前記ロボットアームの作動を制御するロボットアーム制御部を備える制御部と、を備え、
前記ヘッド制御部は、前記車両への塗装において、特定の前記ノズルが前記液滴の吐出が不良である不良ノズルと判定された場合に、当該不良ノズルに対応した不良ドットの周囲のドットであって前記液滴の吐出に問題のない良ノズルに対応した良ドットの前記液滴のサイズが大きくなるように前記圧電基板の駆動を制御するリカバリー制御を行い、
前記リカバリー制御では、
前記不良ドットの周囲の前記良ドットが前記塗装部位における塗装範囲の境界に到達している場合において、当該良ドットの前記液滴のサイズを、前記リカバリー制御を実施しないときの通常の吐出状態と同等の液滴サイズとなるような境界吐出制御を実行しつつ、
前記不良ドットの周囲の前記良ドットであって、前記境界よりも前記塗装範囲の内部側に位置する前記良ドットについては、当該良ドットの前記液滴のサイズが前記通常の吐出状態における前記良ドットよりも大きくなるような非境界吐出制御を実行し、
前記リカバリー制御における境界吐出制御では、前記ヘッド制御部は、
前記良ドットの前記液滴のサイズを、前記通常の吐出状態と同等の液滴サイズに代えて、前記通常の吐出状態よりも小さな液滴サイズとなるように前記圧電基板を制御する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項4】
請求項記載の塗装ロボットであって、
前記ロボットアーム制御部は、前記リカバリー制御において、
前記車両の塗装部位が前記所定の傾斜角度を超えて傾斜している場合であって、前記不良ドットよりも上側に位置する前記良ドットが存在しないと判断される場合に、前記塗装ヘッドユニットを前記塗装部位に対して平行を維持しつつ回転させるように、前記ロボットアームの作動を制御する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項5】
車両の塗装部位への塗装を行う塗装ロボットであって、
塗料の液滴を吐出する複数のノズルと、駆動することで前記ノズルから前記液滴を押し出すための圧電基板を備える塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、
前記塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、
前記塗装ヘッドの前記圧電基板の作動を制御するヘッド制御部、および前記ロボットアームの作動を制御するロボットアーム制御部を備える制御部と、を備え、
前記ヘッド制御部は、前記車両への塗装において、特定の前記ノズルが前記液滴の吐出が不良である不良ノズルと判定された場合に、当該不良ノズルに対応した不良ドットの周囲のドットであって前記液滴の吐出に問題のない良ノズルに対応した良ドットの前記液滴のサイズが大きくなるように前記圧電基板の駆動を制御するリカバリー制御を行い、
前記リカバリー制御では、
前記不良ドットの周囲の前記良ドットが前記塗装部位における塗装範囲の境界に到達している場合において、当該良ドットの前記液滴のサイズを、前記リカバリー制御を実施しないときの通常の吐出状態と同等の液滴サイズとなるような境界吐出制御を実行しつつ、
前記不良ドットの周囲の前記良ドットであって、前記境界よりも前記塗装範囲の内部側に位置する前記良ドットについては、当該良ドットの前記液滴のサイズが前記通常の吐出状態における前記良ドットよりも大きくなるような非境界吐出制御を実行し、
前記ロボットアーム制御部は、前記塗装ヘッドにおける前記不良ノズルに対応する前記不良ドットの個数が所定の閾値を超えたと判定された場合に、前記リカバリー制御における前記塗装ヘッドユニットの移動速度が前記所定の閾値を超えない場合よりも遅くなるように、前記ロボットアームの作動を制御する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の塗装ラインにおいては、ロボットを用いたロボット塗装が主流となっている。このロボット塗装に関する構成の一例として、たとえば特許文献1には、以下の構成が開示されている。この特許文献1に開示の塗装ロボットには、ノズルに吐出不良が生じている場合に、ヘッドを振動させて吐出不良の場所をカバーする、といった技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-052170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示の構成では、塗装が全くなされないことによる、白スジ等が形成されるのは防止可能である。しかしながら、塗装不良の箇所付近では、塗装膜厚は低下する傾向があるので、塗装品質の向上を図ることは困難である。
【0005】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、塗装膜厚の低下を抑えて、塗装品質の向上を図ることが可能な塗装ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、車両の塗装部位への塗装を行う塗装ロボットであって、塗料の液滴を吐出する複数のノズルと、駆動することでノズルから液滴を押し出すための圧電基板を備える塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、塗装ヘッドの圧電基板の作動を制御するヘッド制御部、およびロボットアームの作動を制御するロボットアーム制御部を備える制御部と、を備え、ヘッド制御部は、車両への塗装において、特定のノズルが液滴の吐出が不良である不良ノズルと判定された場合に、当該不良ノズルに対応した不良ドットの周囲のドットであって液滴の吐出に問題のない良ノズルに対応した良ドットの液滴のサイズが大きくなるように圧電基板の駆動を制御するリカバリー制御を行い、リカバリー制御では、不良ドットの周囲の良ドットが塗装部位における塗装範囲の境界に到達している場合において、当該良ドットの液滴のサイズを、リカバリー制御を実施しないときの通常の吐出状態と同等の液滴サイズとなるような境界吐出制御を実行しつつ、不良ドットの周囲の良ドットであって、境界よりも塗装範囲の内部側に位置する良ドットについては、当該良ドットの液滴のサイズが通常の吐出状態における前記良ドットよりも大きくなるような非境界吐出制御を実行する、ことを特徴とする塗装ロボットが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、塗装膜厚の低下を抑えて、塗装品質の向上を図ることが可能な塗装ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態に係る塗装ロボットの全体構成を示す概略図である。
図2図1に示す塗装ロボットを備える塗装システムの概略的な構成を示す図である。
図3図1に示す塗装ロボットが備える塗装ヘッドユニットのうち、塗料を吐出させるノズル形成面を正面視した状態を示す図である。
図4図1に示す塗装ロボットにおいて、各ノズルへ塗料を供給する概略的な構成について示す図である。
図5図1に示す塗装ロボットにおいて、列方向供給流路、ノズル加圧室および列方向排出流路付近の構成を示す断面図である。
図6図3に示す塗装ヘッドユニットとは異なる他の塗装ヘッドユニットにおけるノズル形成面の構成を示す平面図である。
図7図1に示す塗装ロボットによって塗装を行う際のドットの状態を示す図であり、(a)はリカバリー制御を行う前のドットの状態を示し、(b)はリカバリー制御を行った後のドットの状態を示している。
図8図1に示す塗装ロボットによって塗装範囲の境界B1付近で塗装を行う際のドットの状態を示す図であり、(a)は境界吐出制御を行う前のドットの状態を示し、(b)は境界吐出制御を行った後のドットの状態を示している。
図9】(a)は車両の塗装部位を横から見た状態を示しており、(b)は(a)における破線Aで囲まれた部位のドットの配置を示している。
図10】(a)は車両の塗装部位を横から見た状態を示しており、(b)は(a)における破線Aで囲まれた部位のドットの配置を示している。
図11図1に示す塗装ロボットによって塗装を行う際に、第1塗装パスと第2塗装パスとの間にオーバーラップ領域を設けた状態を示す図である。
図12】(a)は境界吐出制御を行う前のドットの状態を示し、(b)は境界吐出制御で小さなサイズの液滴の吐出を行った際のドットの状態を示す図である。
図13】(a)は塗装ヘッドの上側に不良ノズルが位置している状態を示す図であり、(b)は(a)の状態のときに塗装ヘッドを回転させた状態を示す図である。
図14図1に示す塗装ロボットの塗装ヘッドにおいて、不良ノズルの個数が所定の閾値を超えた状態を示す図である。
図15】本発明の変形例に係り、2つの不良ドットが隣り合っている場合に、その周囲の良ドットの液滴のサイズを大きくした状態を示している。
図16】本発明の変形例に係り、不良ドットの直ぐ隣の良ドットのみならず、その良ドットに隣接する良ドットの液滴のサイズを大きくした状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態に係る塗装ロボット10について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、必要に応じて、X方向はノズル形成面52(塗装ヘッド53)の長手方向とし、X1側は図3における右側、X2側は図3における左側とする。また、Y方向はノズル形成面52(塗装ヘッド53)の短手方向(幅方向)とし、Y1側は図3における紙面上側、Y2側は図3における紙面下側とする。
【0010】
(1.塗装ロボット10の概要について)
本実施の形態の塗装ロボット10は、自動車製造の工場における塗装ラインに位置する車両または車両部品(以下、車両の一部となる車両部品も車両として説明する)といった塗装対象物に対して、「塗装」を行うものであり、塗膜を塗装対象物の表面に形成して、その表面の保護や美観を与えることを目的としている。したがって、所定時間毎に、塗装ラインに沿って移動してくる車両に対し、一定の時間内に所望の塗装品質にて、塗装を行う必要がある。
【0011】
また、本実施の形態の塗装ロボット10では、上述した塗膜を形成するのみならず、各種のデザインや画像を、車両や車両部品といった塗装対象物に対して形成することが可能である。なお、塗装対象物は、車両や車両部品には限られず、自動車以外の各種部品(一例としては、飛行機や鉄道の外装部品)等、塗装を行う必要があるものであれば良い。
【0012】
(1-1.塗装システム1および塗装ロボット10の全体構成について)
図1は、本発明の一実施の形態に係る塗装ロボット10の全体構成を示す概略図である。図2は、図1に示す塗装ロボット10を備える塗装システム1の概略的な構成を示す図である。図2に示すように、塗装システム1は、塗装ロボット10と、画像処理装置200とを備えている。
【0013】
(1-2.塗装ロボット10について)
塗装ロボット10は、図1に示すように、ロボット本体20と、塗装ヘッドユニット50とを主要な構成要素としている。図1に示す塗装ロボット10は、その一例として、6軸の垂直多関節ロボットを示しているが、当該塗装ロボット10は、6軸以外の垂直多関節型、水平多関節型、直交ロボット等、どのようなタイプのロボットでも良い。
【0014】
(1-3.ロボット本体20について)
図1に示すように、ロボット本体20は、基台21と、第1~第6回転軸22a~22fと、脚部23と、第1回動アーム24と、第2回動アーム25と、回転アーム26と、リスト部27と、これらを駆動させるモータM1~M6(図2参照)と、を主要な構成要素としている。なお、脚部23からリスト部27までの部分は、ロボットアームR1に対応するが、基台21等のようなそれ以外の部分も、ロボットアームR1に対応するものとしても良い。
【0015】
これらのうち、基台21は床面等の設置部位に設置される部分であるが、この基台21が設置部位に対して走行可能であっても良い。また、脚部23は、基台21から上部に向かい立設された部分であり、モータM1(図2参照)の駆動によって第1回転軸22aを介して基台21に対して回転可能に設けられている。なお、脚部23は、基台21に対して回転しないように構成しても良い。
【0016】
また、脚部23の上端には、モータM2の駆動によって第2回転軸22bを介して第1回動アーム24が回動可能に設けられている。さらに、第1回動アーム24の先端側には、モータM3の駆動によって第3回転軸22cを介して第2回動アーム25が回動可能に設けられている。
【0017】
また、第2回動アーム25の先端側には、回転アーム26が第2回動アーム25の中心軸周りに回転可能に設けられている。この回転アーム26は、モータM4の駆動によって、第4回転軸22dを介して回転可能となっている。また、回転アーム26の先端側には、リスト部27が設けられている。このリスト部27は、モータM5およびモータM6の駆動によって、たとえば2つ等の複数の異なる向きの軸部を中心に、回転運動を可能としている。図1においては、その回転運動が可能な回転軸を、それぞれ第5回転軸22eおよび第6回転軸22fとしている。それにより、塗装ヘッドユニット50の向きを精度良くコントロールすることが可能となっている。なお、軸部の個数は、2つ以上であれば幾つでも良い。
【0018】
また、リスト部27には、塗装ヘッドユニット50が取り付けられているが、この塗装ヘッドユニット50は、リスト部27に対して着脱自在に設けられていても良い。
【0019】
(1-4.塗料供給部40について)
図2に示すように、塗装システム1および塗装ロボット10には、塗料供給部40が設けられている。塗料供給部40は、塗装ヘッドユニット50に向けて塗料を供給するための部分である。このため、塗料供給部40は、不図示の塗料貯留部から塗料を供給するための供給路41(図4参照)と、不図示のポンプと、不図示の弁等と、吐出されなかった塗料を回収するための戻り流路42とを備えている。
【0020】
なお、塗料が塗装ロボット10の外部から供給される構成を採用する場合には、塗装ロボット10は、塗料を貯留する部分を備えなくても良く、塗装ロボット10の外部に塗料を貯留する部分を備えても良い。
【0021】
(1-5.塗装ヘッドユニット50について)
次に、塗装ヘッドユニット50について説明する。図3は、塗装ヘッドユニット50のうち、塗料を吐出させるノズル形成面52を正面視した状態を示す図である。図3に示すように、塗装ヘッドユニット50は、不図示のヘッドカバーを備え、そのヘッドカバー内に、種々の構成が内蔵されている。図3に示すように、ノズル形成面52には、ノズル54が塗装ヘッドユニット50の長手方向に対して傾斜する方向に連なるノズル列55が複数設けられている。かかるノズル列55には、本実施の形態では、主走査方向(Y方向)の一方側(Y2側)に存在する第1ノズル列55Aと、主走査方向の他方側(Y1側)に存在する第2ノズル列55Bとが設けられている。
【0022】
なお、塗料を吐出する場合、第1ノズル列55Aにおける隣り合うノズル54から吐出される液滴の間に、第2ノズル列55Bにおけるノズル54から吐出される液滴が着弾されるように、各ノズル54の駆動タイミングが制御される。それにより、塗装の際にドット密度を向上させることができる。
【0023】
ところで、図3に示すように、ノズル形成面52には、単一の塗装ヘッド53が存在している。しかしながら、ノズル形成面52には、複数の塗装ヘッド53から構成されるヘッド群が存在するようにしても良い。この場合、一例として、複数の塗装ヘッド53を位置合わせしつつ千鳥状に配置する構成が挙げられるが、ヘッド群における塗装ヘッド53の配置は千鳥状でなくても良い。
【0024】
図4は、各ノズル54へ塗料を供給する概略的な構成について示す図である。図5は、列方向供給流路58、ノズル加圧室59および列方向排出流路60付近の構成を示す断面図である。図4および図5に示すように、塗装ヘッド53は、供給側大流路57と、列方向供給流路58と、ノズル加圧室59と、列方向排出流路60と、排出側大流路61とを備えている。供給側大流路57は、上記の供給路41から塗料が供給される流路である。また、列方向供給流路58は、供給側大流路57内の塗料が、分流される流路である。
【0025】
また、ノズル加圧室59は、列方向供給流路58とノズル供給流路59aを介して接続されている。それにより、ノズル加圧室59には、列方向供給流路58から塗料が供給される。このノズル加圧室59は、ノズル54の個数に対応して設けられていて、内部の塗料を後述する圧電基板62を用いてノズル54から吐出させることができる。
【0026】
また、ノズル加圧室59は、ノズル排出流路59bを介して列方向排出流路60と接続されている。したがって、ノズル54から吐出されなかった塗料は、ノズル加圧室59内からノズル排出流路59bを介して、列方向排出流路60へと排出される。また、列方向排出流路60は、排出側大流路61と接続されている。排出側大流路61は、それぞれの列方向排出流路60から、排出された塗料が合流する流路である。この排出側大流路61は、上記の戻り流路42と接続されている。
【0027】
このような構成により、供給路41から供給された塗料は、供給側大流路57、列方向供給流路58、ノズル供給流路59aおよびノズル加圧室59を経て、ノズル54から吐出される。また、ノズル54から吐出されなかった塗料は、ノズル加圧室59からノズル排出流路59b、列方向排出流路60および排出側大流路61を経て、戻り流路42へと戻される。
【0028】
なお、図4に示す構成では、1本の列方向供給流路58には、1本の列方向排出流路60が対応するように配置されている。しかしながら、1本の列方向供給流路58に、複数本(たとえば2本)の列方向排出流路60が対応するように配置されていても良い。また、複数本の列方向供給流路58に、1本の列方向排出流路60が対応するように配置されていても良い。
【0029】
また、図5に示すように、ノズル加圧室59の天面(ノズル54とは反対側の面)には、圧電基板62が配置されている。この圧電基板62は、圧電体である2枚の圧電セラミック層63a,63bを備え、さらに共通電極64と、個別電極65とを備えている。圧電セラミック層63a,63bは、外部から電圧を印加することで、伸縮可能な部材である。このような圧電セラミック層63a,63bとしては、強誘電性を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO3系、BaTiO3系、(BiNa)NbO3系、BiNaNb5O15系等のセラミックス材料を用いることができる。
【0030】
また、図5に示すように、共通電極64は、圧電セラミック層63aと圧電セラミック層63bの間に配置されている。また、圧電基板62の上面には、共通電極用の表面電極(不図示)が形成されている。これら共通電極64と共通電極用の表面電極とは、圧電セラミック層63aに存在する不図示の貫通導体を通じて、電気的に接続されている。また、個別電極65は、上記のノズル加圧室59と対向する部位にそれぞれ配置されている。さらに、圧電セラミック層63aのうち、共通電極64と個別電極65とに挟まれた部分は、厚さ方向に分極している。したがって、個別電極65に電圧を印加すると、圧電効果によって圧電セラミック層63aが歪む。このため、所定の駆動信号を個別電極65に印加すると、ノズル加圧室59の体積を減少させるように圧電セラミック層63bが相対的に変動し、それによって塗料が吐出される。
【0031】
なお、図5において、共通電極64がノズル加圧室59の天面に配置されているが、共通電極64は、図5に示すような、ノズル加圧室59の天面に配置されている構成には限られない。たとえば、共通電極64は、ノズル加圧室59の側面(上記の天面と直交または概ね直交する面)に配置される構成を採用しても良く、その他、塗料をノズル54から良好に吐出可能であれば、どのような構成を採用しても良い。
【0032】
(1-6.塗装ヘッドユニットの他の構成について)
次に、塗装ヘッドユニット50の他の構成について説明する。図6は、他の塗装ヘッドユニット50のノズル形成面52の構成を示す平面図である。図6に示すように、複数のノズル54が塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;Y方向)に沿って並ぶことでノズル列55を構成するようにしても良い。なお、図6に示す構成では、複数のノズル54が塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;主走査方向)に並んでノズル列55を構成しているが、1つの(単一の)ノズル54のみが塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;主走査方向)に配置される構成としても良い。すなわち、ノズル列55が1つのノズル54から構成されていても良い。
【0033】
また、図6に示すような塗装ヘッド53を用いて車両に塗装を行う場合、塗装ヘッド53の長手方向が、塗装ヘッド53の主走査方向に対して若干傾斜させた状態で塗装を実行するようにしても良い。たとえば、図3に示す塗装ヘッド53の構成では、ノズル列55は主走査方向に対して所定の角度だけ傾斜しているとすると、図6に示す塗装ヘッド53の短手方向を、塗装ヘッド53の主走査方向に対して所定の角度だけ傾斜させるようにすればよい。このように傾斜させる場合には、各ノズル54からの塗料の吐出タイミングを調整するだけで、図3に示す塗装ヘッド53と同等の塗装を実現することができる。
【0034】
(1-7.塗装システム1の制御的な構成について)
次に、塗装システム1の作動を制御するための制御的な構成について説明する。なお、以下に説明する制御的な構成は、制御部に対応する。図2に示すように、塗装ロボット10は、ロボットアーム制御部70と、塗料供給制御部80と、ヘッド制御部90と、主制御部100と、位置センサ110と、傾きセンサ120とを備えている。また、塗装ロボット10は、画像処理装置200に接続されることで、塗装システム1を構成している。
【0035】
なお、ロボットアーム制御部70、塗料供給制御部80、ヘッド制御部90、主制御部100、および後述する画像処理部210は、CPU(Central Processing Unit)、記憶部位(ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、不揮発メモリ等)等のメモリ、その他の要素から構成されている。なお、画像処理部210は、画像処理性能に優れたCPUと共に、またはCPUに代えて、GPU(Graphics Processing Unit)を用いるようにしても良い。
【0036】
また、塗装ロボット10には、図示を省略する各種のセンサも備えていて、それら各センサからの出力が、ロボットアーム制御部70、塗料供給制御部80、ヘッド制御部90、および主制御部100の何れかに入力される。各種のセンサとしては、たとえば加速度センサ、角速度センサ、各駆動部の位置を検出する位置検出センサ、イメージセンサ等が挙げられるが、これら以外のセンサを用いても良い。
【0037】
これらのうち、ロボットアーム制御部70は、上述したモータM1~M6の駆動を制御する部分である。このロボットアーム制御部70は、メモリ71を備えていて、メモリ71には、ロボットティーチングによって作成されたプログラムおよびデータが記憶されている。
【0038】
そして、ロボットアーム制御部70では、メモリ71に記憶されたプログラムやデータ、および画像処理装置200の画像処理部210での画像処理に基づいて、モータM1~M6の駆動を制御する。その制御により、塗装ヘッドユニット50は、塗装を実行するための所望の位置を、所望の速度で通過したり、所定の位置で停止することができる。
【0039】
メモリ71には、塗装ヘッド53における塗装可能な塗装幅を勘案したロボットティーチングによって作成された、塗装ヘッド53の軌跡に関するデータ(軌跡データ)、および塗装ヘッド53の傾き等の姿勢に関する姿勢データが記憶されている。なお、メモリ71は、塗装ロボット10が備えていても良いが、塗装ロボット10の外部にメモリ71が存在し、そのメモリ71に対して、有線または無線の通信手段を介して、情報の送受信を可能としても良い。
【0040】
また、塗料供給制御部80は、塗装ヘッドユニット50への塗料の供給を制御する部分であり、具体的には、塗料供給部40が備えるポンプや弁等の作動を制御する。なお、塗料供給制御部80は、塗料が供給される塗装ヘッドユニット50に対して、定圧にて塗料が供給されるように、上記のポンプや弁の作動を制御することが好ましい。なお、塗料供給制御部80は、圧力制御部に対応する。
【0041】
また、ヘッド制御部90は、画像処理部210での画像処理に基づいて、塗装ヘッドユニット50内の圧電基板62の作動を制御する部分である。このヘッド制御部90は、後述する位置センサ110、傾きセンサ120等の位置を検出する手段によって軌跡データにおける所定の位置に到達したときに、その位置および塗装パスに対応した分割塗装データに基づいて、塗料の吐出を制御する。なお、この場合、車両の膜厚が均一となるように、圧電基板62の駆動周波数を制御してノズル54から吐出されるドット数(液滴の数)を制御したり、圧電基板62に印加する駆動周波数および/または電圧に基づいて、当該圧電基板62の変形量を制御することで、ノズル54から吐出される液滴のサイズを制御する。
【0042】
なお、圧電基板62に印加する駆動周波数に基づいて圧電基板62の変形量を制御することで、液滴サイズの制御を行う場合、当該圧電基板62の固有振動数と一致する駆動周波数にて圧電基板62を駆動させる場合が、液滴サイズが最も大きくなる。このため、印加する駆動周波数が固有振動数からずれるにしたがって、液滴サイズが小さくなるように制御することができる。また、圧電基板62に印加する電圧に基づいて圧電基板62の変形量を制御することで、液滴サイズの制御を行う場合、当該圧電基板62に印加する電圧が高くなるほど、液滴サイズが大きくなるように制御することができる。
【0043】
また、主制御部100は、上記のモータM1~M6、塗料供給部40および圧電基板62が協働して塗装対象物に対して塗装が実行されるように、上述したロボットアーム制御部70、塗料供給制御部80、ヘッド制御部90に所定の制御信号を送信する部分である。
【0044】
また、位置センサ110は、塗装ヘッド53の現在の位置を検出するセンサである。かかる位置センサ110としては、ロータリエンコーダ、レゾルバ、レーザセンサ、その他、種々のセンサを用いることが可能である。また、傾きセンサ120は、塗装ヘッド53の傾斜角度を検出するセンサである。かかる傾きセンサ120としては、たとえば、ジャイロセンサ、加速度センサ、傾斜センサ、その他、種々のセンサを用いることが可能である。
【0045】
また、塗装システム1には、画像処理装置200が設けられている。画像処理装置200は、画像処理部210と、メモリ220とを備えている。画像処理部210は、塗装ヘッド53が塗装を実行する経路である塗装パス毎の画像データを作成する部分である。
【0046】
また、メモリ220は、塗装パス毎の画像データを塗装順序に対応して記憶する部分である。
【0047】
なお、画像処理装置200は、たとえばコンピュータが対応するが、そのコンピュータは、塗装ロボット10の一部の構成要素であっても良く、塗装ロボット10とは別体的に設けられていても良い。画像処理装置200が塗装ロボット10とは別体的に設けられている場合、画像処理装置200と塗装ロボット10の間で、有線通信または無線通信により、データの送受信が行われる。なお、画像処理装置200が塗装ロボット10とは別体的に設けられていても、塗装ロボット10の概念に含めるようにしても良く、塗装ロボット10の概念に含めないようにしても良い。
【0048】
(2.液滴の吐出制御に関して)
以上のような構成の塗装システム1および塗装ロボット10では、主制御部100の指令により、ヘッド制御部90は、圧電基板62を駆動させて、塗装対象物に対する塗料の吐出を行い、所定のテストパターン(図示省略)を印刷する。このテストパターンは、インクジェットプリンタにおいて通常実施されているような、ノズル54からの塗料の吐出抜けをチェックするためのものである。かかるテストパターンをチェックすることで、どのノズル54に塗料の吐出不良が生じているのかを判別することができる。
【0049】
上記のテストパターンの印刷後、主制御部100の指令により、不図示のカメラを作動させて、テストパターンの撮像を行い、撮像データを得る。そして、撮像データを、無線または有線の通信を介して、画像処理装置200へと送信し、その画像処理装置200では、撮像データと、判定用画像データとを比較し、テストパターンの中から、塗装がされてないラインを抽出し、それによって、液滴の吐出が不良であるノズル54(図3における不良ノズル54a)を特定する。
【0050】
(a)リカバリー制御における基本的な制御について
以上のようにして特定された不良ノズル54aが存在する場合、主制御部100の指令により、ヘッド制御部90は、車両への塗装を行う場合において、不良ノズル54aによる液滴の吐出不良を補うためのリカバリー制御(基本的なリカバリー制御)を行う。ここで、図7は、塗装を行う際のドットの状態を示す図であり、(a)はリカバリー制御を行う前のドットの状態を示し、(b)はリカバリー制御を行った後のドットの状態を示している。
【0051】
このリカバリー制御では、図7(b)に示すように、その不良ノズル54aに対応した不良ドットD1(すなわち、液滴の不吐出部分)の周囲のドットであって、液滴の吐出に問題のないノズル54(良ノズル54bとする)に対応した良ドットD2(すなわち、液滴の吐出部分)の液滴のサイズが大きくなるように、圧電基板62の駆動を制御している。したがって、リカバリー制御を行わない、図7(a)の場合と比較すると、不良ドットD1の存在により、塗装抜けが形成されるのを防止可能となっている。
【0052】
(b)塗装部位における境界吐出制御および非境界吐出制御について
図8は塗装範囲の境界B1付近で塗装を行う際のドットの状態を示す図であり、(a)は境界吐出制御を行う前のドットの状態を示し、(b)は境界吐出制御を行った後のドットの状態を示している。
【0053】
図8(a)に示すように、不良ドットD1の周囲の良ドットD2が、塗装部位CP1(図9参照)における塗装範囲の境界B1(エッジ)に到達している場合においては、上記の基本的なリカバリー制御を行うと、サイズの大きな液滴の着弾によって形成されるドットが存在することで、境界B1における塗装の解像度が粗く感じられ、塗装品質が低下したような印象を与える。
【0054】
そこで、図8(b)に示すように、ヘッド制御部90は、塗装範囲の境界B1に到達している良ドットD2における液滴のサイズを、リカバリー制御を実施しないときの通常の吐出状態と同等の液滴サイズとなるように、圧電基板62の作動を制御する(境界吐出制御に対応)。
【0055】
一方、不良ドットD1の周囲に存在すると共に、塗装範囲の境界B1よりも塗装範囲の内部側(非境界)に位置する良ドットD2については、ヘッド制御部90は、液滴サイズを大きくするように圧電基板62の作動を制御する(非境界吐出制御に対応)。
【0056】
かかる制御により、塗装範囲の境界B1において、塗装品質が低下するのを抑えることが可能となっている。また、非境界の良ドットD2では、液滴サイズが大きくなるように圧電基板62の駆動が制御されるので、不良ノズル54aに対応した不良ドットD1をカバーして、塗装品質が低下するのを抑えることが可能となっている。
【0057】
(c)塗装部位の傾斜に関して
図9(a)に示すように、車両の塗装部位CP1が水平面または水平面に近い所定の傾斜角度の範囲内の場合には、着弾した液滴のドットは、下側にはさほど流れない状態となる。なお、図9においては、(a)は車両の塗装部位CP1を横から見た状態を示しており、(b)は(a)における破線Aで囲まれた部位のドット(不良ドットD1および良ドットD2)の配置を示している。このような場合、図9(b)に示すように、ヘッド制御部90は、不良ドットD1の周囲の複数の良ドットD2において、通常の吐出状態における良ドットD2よりも液滴のサイズが大きくなるように、圧電基板62の作動を制御している。
【0058】
一方、図10(a)に示すように、車両の塗装部位CP1が所定の傾斜角度を超えて傾斜している場合には、着弾した液滴のドットは、下側に流れてしまう可能性が高い。このような場合、ヘッド制御部90は、図10(b)に示すように、不良ドットD1の周囲の複数の良ドットD2について、不良ドットD1よりも上側に位置する良ドットD2については、その周囲の良ドットD2の中で、最も液滴のサイズが大きくなるように、圧電基板62の作動を制御する。なお、図10においては、(a)は車両の塗装部位CP1を横から見た状態を示しており、(b)は(a)における破線Aで囲まれた部位のドット(不良ドットD1および良ドットD2)の配置を示している。
【0059】
したがって、上側から下側に向かい、良ドットD2の液滴から塗料が流れた際に、不良ドットD1を流れた塗料が覆う状態とすることが可能となっている。
【0060】
なお、不良ドットD1の上側以外に位置する良ドットD2については、その良ドットD2の液滴から塗料が流れても、流れた塗料が不良ドットD1を覆う状態とすることができない。この場合、ヘッド制御部90は、通常の吐出状態よりも、当該良ドットD2の液滴のサイズが大きくなる(ただし、上側に位置する良ドットD2よりも小さいことが好ましい)、または通常の吐出状態と同等の液滴サイズとなるように、圧電基板62の作動を制御する。
【0061】
(d)オーバーラップ領域OLによる補完制御について
図11は、第1塗装パスP1と第2塗装パスP2との間にオーバーラップ領域OLを設けた状態を示す図である。図11に示すように、同一の塗装パスである第1塗装パスP1内での液滴のサイズの制御によっては、不良ドットD1による塗装不良が解消されずに残存している不良ドットD1が存在する場合が考えられる。このように、残存している不良ドットD1が第1塗装パスP1内に存在すると判断される際に、主制御部100からの指令により、ヘッド制御部90は、次の塗装パスである第2塗装パスP2において、第1塗装パスP1とオーバーラップするオーバーラップ領域OLを設けると共に、当該オーバーラップ領域OL内に残存している不良ドットD1と重なる良ドットD2を設けるような、補完制御を行う。
【0062】
したがって、残存している不良ドットD1が良ドットD2で覆われるので、残存している不良ドットD1の部位の塗装が抜けてしまうのを防止可能となっている。
【0063】
(e)境界吐出制御での小さなサイズの液滴の吐出について
図12においては、(a)は境界吐出制御を行う前のドットの状態を示し、(b)は境界吐出制御で小さなサイズの液滴の吐出を行った際のドットの状態を示す図である。図12に示すように、不良ドットD1の周囲の良ドットD2が、塗装部位CP1における塗装範囲の境界B1に到達している場合においては、主制御部100の指令により、ヘッド制御部90は、上記の良ドットD2の液滴のサイズを、通常の吐出状態と同等の液滴サイズに代えて、それよりも小さな液滴サイズとなるように、圧電基板62を制御しても良い。
【0064】
このように制御する場合、塗装範囲の境界B1においては、塗装の解像度が高精細化し、塗装品質を向上させることが可能となっている。
【0065】
(f)塗装ヘッド53の回転について
また、図13においては、(a)は塗装ヘッド53の上側に不良ノズル54aが位置している状態を示す図であり、(b)は(a)の状態のときに塗装ヘッド53を回転させた状態を示す図である。図13(a)に示すように、リカバリー制御においては、車両の塗装部位CP1が所定の傾斜角度を超えて傾斜している場合において、例えば不良ノズル54aがノズル形成面52の上側に位置している等により、不良ドットD1よりも上側に位置する良ドットD2が存在しない場合も考えられる。このように、不良ドットD1よりも上側に位置する良ドットD2が存在しないと判断される場合には、図13(b)に示すように、塗装ヘッドユニット50を塗装部位CP1に対して平行を維持しつつ回転させるように、ロボットアーム制御部70は、ロボットアームR1の作動を制御しても良い。
【0066】
このように制御する場合、塗装ヘッドユニット50の回転によって、不良ドットD1の上方に良ドットD2を位置させることが可能となり、塗装品質が低下するのを抑えることが可能となっている。
【0067】
(g)塗装ヘッドユニット50の移動速度について
図14は、不良ノズル54aの個数が所定の閾値を超えた状態を示す図である。なお、図14においては、所定の閾値を超えた状態として、6個の不良ノズル54aが示されているが、その個数は、6個に限られるものではない。図14に示すように、塗装ヘッド53における不良ノズル54aに対応する不良ドットD1の個数が所定の閾値を超えることも考えられる。このような場合、ロボットアーム制御部70は、リカバリー制御における塗装ヘッドユニット50の移動速度が、所定の閾値を超えない場合よりも遅くなるように、ロボットアームR1の作動を制御しても良い。
【0068】
このようにする場合、塗装ヘッドユニット50の移動速度が通常の場合よりも遅く通過するので、不良ドットD1の周囲に存在する良ドットD2における液滴の分量を多くすることが可能となり、不良ドットD1をカバーすることが可能となる。
【0069】
(3.付記)
上述した実施の形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
[1]すなわち、車両の塗装部位CP1への塗装を行う塗装ロボット10は、塗料の液滴を吐出する複数のノズル54と、駆動することでノズル54から液滴を押し出すための圧電基板62を備える塗装ヘッド53を備える塗装ヘッドユニット50と、塗装ヘッドユニット50を先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニット50を所望の位置へ移動させるロボットアームR1と、塗装ヘッド53の圧電基板62の作動を制御するヘッド制御部90、およびロボットアームR1の作動を制御するロボットアーム制御部70を備える制御部と、を備える。
【0070】
そして、ヘッド制御部90は、車両への塗装において、特定のノズル54で液滴の吐出が不良である不良ノズル54aと判定された場合に、当該不良ノズル54aに対応した不良ドットD1の周囲のドットであって液滴の吐出に問題のない良ノズル54bに対応した良ドットD2の液滴のサイズが大きくなるように圧電基板62の駆動を制御するリカバリー制御を行い、リカバリー制御では、不良ドットD1の周囲の良ドットD2が塗装部位CP1における塗装範囲の境界B1に到達している場合において、当該良ドットD2の液滴のサイズを、リカバリー制御を実施しないときの通常の吐出状態と同等の液滴サイズとなるような境界吐出制御を実行しつつ、不良ドットD1の周囲の良ドットD2であって、境界B1よりも塗装範囲の内部側に位置する良ドットD2については、当該良ドットD2の液滴のサイズが通常の吐出状態における良ドットD2よりも大きくなるような非境界吐出制御を実行するようにしている。
【0071】
このように、リカバリー制御を行うことで、不良ドットD1の周囲に良ドットD2が配置されるので、塗装膜厚の低下を抑えて、塗装品質の向上を図ることが可能となる。また、塗装範囲の境界B1においては、境界吐出制御を実施することで、塗装範囲の境界B1における塗装の解像度が粗くなるのを抑えることができ、塗装品質が低下するのを防止することができる。また、非境界の不良ドットD1では、液滴サイズが大きくなるように圧電基板62の駆動が制御される非境界吐出制御が実施されるので、不良ノズル54aに対応した不良ドットD1をカバーして、塗装品質が低下するのを抑えることが可能となる。
【0072】
[2]また、上記の実施の形態においては、上記の[1]に記載の内容に加え、ヘッド制御部90は、リカバリー制御において、(A)車両の塗装部位CP1が水平面または水平面に近い所定の傾斜角度の範囲内の場合には、不良ドットD1の周囲の複数の良ドットD2において、通常の吐出状態における良ドットD2よりも液滴のサイズが大きくなるように圧電基板62の制御を行い、(B)車両の塗装部位CP1が所定の傾斜角度を超えて傾斜している場合には、不良ドットD1の周囲の複数の良ドットD2において、不良ドットD1よりも上側に位置する良ドットD2については、不良ドットD1の周囲における良ドットD2の中で最も液滴のサイズが大きくなるように圧電基板62を制御しつつ、不良ドットD1の上側以外に位置する良ドットD2については、通常の吐出状態よりも、当該良ドットD2の液滴のサイズが大きくなる、または通常の吐出状態と同等の液滴サイズとなるように圧電基板62を制御するようにしても良い。
【0073】
このように制御する場合、車両の塗装部位CP1が水平面または水平面に近い所定の傾斜角度の範囲内の場合には、着弾した液滴のドットは、下側にはさほど流れない状態となるので、不良ドットD1の周囲の複数の良ドットD2(上側には限られない)において、通常の吐出状態における良ドットD2よりも液滴のサイズが大きくなるように、圧電基板62の作動を制御することで、不良ノズル54aに対応した不良ドットD1をカバーして、塗装品質が低下するのを抑えることが可能となる。
【0074】
このように、車両の塗装部位CP1が所定の傾斜角度を超えて傾斜している場合、不良ドットD1よりも上側に位置する良ドットD2については、その周囲の良ドットD2の中で、最も液滴のサイズが大きくなるように、圧電基板62の作動を制御している。それにより、上側から下側に向かい、良ドットD2の液滴から塗料が流れた際に、その流れた塗料が不良ドットD1を覆う(カバーする)状態とすることができ、塗装品質が低下するのを抑えることが可能となる。
【0075】
また、不良ドットD1の上側以外に位置する良ドットD2については、その良ドットD2の液滴から塗料が流れても、流れた塗料が不良ドットD1を覆う状態とすることができない。このため、通常の吐出状態よりも、当該良ドットD2の液滴のサイズが大きくなる(ただし、上側に位置する良ドットD2よりも小さいことが好ましい)、または通常の吐出状態と同等の液滴サイズとなるように、圧電基板62の作動を制御することで、塗装膜厚の変動を抑え、塗装品質が低下するのを防ぐことができる。
【0076】
[3]また、上記の実施の形態においては、上述した[1]と[2]、またはそれらの組み合わせに記載の内容に加え、ヘッド制御部90は、リカバリー制御において、同一の塗装パスである第1塗装パスP1内での液滴のサイズの制御によっては不良ノズル54aによる塗装不良が解消されない不良ドットD1が存在すると判断される際に、次の塗装パスである第2塗装パスP2において第1塗装パスP1とオーバーラップするオーバーラップ領域OLを設けると共に、当該オーバーラップ領域OL内に不良ドットD1と重なる良ドットD2を設ける補完制御を行うようにしても良い。
【0077】
このようにすることで、第1塗装パスP1内に残存している不良ドットD1が良ドットD2で覆われるので、残存している不良ドットD1の部位の塗装が抜けてしまうのを防止可能となり、塗装品質が低下するのを防ぐことができる。
【0078】
[4]また、上記の実施の形態においては、上述した上記の[1]から[3]のいずれかに記載またはそれらの組み合わせた内容に加え、リカバリー制御における境界吐出制御では、ヘッド制御部90は、良ドットD2の液滴のサイズを、通常の吐出状態と同等の液滴サイズに代えて、通常の吐出状態よりも小さな液滴サイズとなるように圧電基板62を制御するようにしても良い。
【0079】
このように制御することで、塗装範囲の境界B1における、塗装の解像度を高精細化することができる。それにより、塗装品質を向上させることが可能となる。
【0080】
[5]また、上記の実施の形態においては、上述した上記の[1]から[4]のいずれかに記載またはそれらの組み合わせた内容に加え、ロボットアーム制御部70は、リカバリー制御において、車両の塗装部位CP1が所定の傾斜角度を超えて傾斜している場合であって、不良ドットD1よりも上側に位置する良ドットD2が存在しないと判断される場合に、塗装ヘッドユニット50を塗装部位CP1に対して平行を維持しつつ回転させるように、ロボットアームR1の作動を制御するようにしても良い。
【0081】
このように制御することで、塗装ヘッドユニット50の回転によって、不良ドットD1の上側に良ドットD2を位置させることが可能となる。それにより、良ドットD2から不良ドットD1に向かって塗料が流れて、不良ドットD1を覆う(カバーする)状態とすることができ、塗装品質が低下するのを抑えることが可能となる。
【0082】
[6]また、上記の実施の形態においては、上述した上記の[1]から[5]のいずれかに記載またはそれらの組み合わせた内容に加え、ロボットアーム制御部70は、塗装ヘッド53における不良ノズル54aに対応する不良ドットD1の個数が所定の閾値を超えたと判定された場合に、リカバリー制御における塗装ヘッドユニット50の移動速度が所定の閾値を超えない場合よりも遅くなるように、ロボットアームR1の作動を制御するようにしても良い。
【0083】
このように制御する場合、通常の塗装ヘッド53の移動速度よりも、良ドットD2や不良ドットD1を塗装ヘッド53が遅く通過する。そのため、不良ドットD1の周囲に存在する良ドットD2における液滴の分量を多くすることが可能となり、不良ドットD1をカバーすることが可能となる。それにより、塗装品質が低下するのを抑えることが可能となる。
【0084】
(4.変形例について)
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態以外に、種々変形可能である。以下に、変形例について説明する。
【0085】
上述した実施の形態では、塗装ヘッド53に対し、若干の振動を加えて塗装を行うようにしても良い。このように、若干の振動を塗装ヘッド53に与えることで、不良ドットD1の部位にも塗料を着弾させることが可能となる。
【0086】
また、上述の実施の形態におけるリカバリー制御では、1つの不良ドットD1が存在する場合に、その不良ドットD1の周囲の良ドットD2の液滴のサイズが大きくなるように、対応する良ドットD2の圧電基板62の駆動を制御している。しかしながら、リカバリー制御では、不良ドットD1が複数隣り合っていても、その周囲の良ドットD2の液滴サイズを大きくするように、圧電基板62の駆動を制御することで、塗装抜けを防止し、塗装品質の低下を防ぐようにしても良い。
【0087】
このような状態の一例を、図15に示す。図15では、2つの不良ドットD1が隣り合っている場合において、リカバリー制御により、その周囲に、液滴サイズの大きな良ドットD2が配置された状態が示されている。なお、図15では、2つの不良ドットD1が隣り合っている状態が示されているが、塗装抜けが生じない範囲であれば、3つ以上の不良ドットD1が隣り合っていても、その周囲の良ドットD2の液滴サイズを大きくするようなリカバリー制御を行うことが可能である。
【0088】
また、上述の実施の形態におけるリカバリー制御では、不良ドットD1の隣接する良ドットD2につき、液滴のサイズが大きくなるように、対応する良ドットD2の圧電基板62の駆動を制御している。しかしながら、塗装抜けが防止可能であれば、例えば図16に示すように、不良ドットD1の直ぐ隣の良ドットD2のみならず、その良ドットD2に隣接する良ドットD2の液滴のサイズを大きくしても良い。また、不良ドットD1の直ぐ隣の良ドットD2の液滴のサイズは通常のサイズであるが、その通常のサイズの良ドットD2に隣接する良ドットD2の液滴のサイズを大きくして良く、さらには、不良ドットD1から所定の範囲内に存在する良ドットD2のうち、いずれかの良ドットD2の液滴サイズを大きくしても良い。
【符号の説明】
【0089】
1…塗装システム、10…塗装ロボット、20…ロボット本体、21…基台、22a…第1回転軸、22b…第2回転軸、22c…第3回転軸、22d…第4回転軸、22e…第5回転軸、22f…第6回転軸、23…脚部、24…第1回動アーム、25…第2回動アーム、26…回転アーム、27…リスト部、40…塗料供給部、41…供給路、42…戻り流路、50…塗装ヘッドユニット、52…ノズル形成面、53…塗装ヘッド、54…ノズル、54a…不良ノズル、54b…良ノズル、55…ノズル列、55A…第1ノズル列、55B…第2ノズル列、57…供給側大流路、58…列方向供給流路、59…ノズル加圧室、59a…ノズル供給流路、59b…ノズル排出流路、60…列方向排出流路、61…排出側大流路、62…圧電基板、63a…圧電セラミック層、63b…圧電セラミック層、64…共通電極、65…個別電極、70…ロボットアーム制御部、71…メモリ、80…塗料供給制御部(圧力制御部に対応)、90…ヘッド制御部、100…主制御部、110…位置センサ、120…傾きセンサ、200…画像処理装置、210…画像処理部、220…メモリ、B1…境界、CP1…塗装部位、D1…不良ドット、D2…良ドット、M1~M6…モータ、OL…オーバーラップ領域、P1…第1塗装パス、P2…第2塗装パス、R1…ロボットアーム
【要約】
【課題】塗装膜厚の低下を抑えて、塗装品質の向上を図ることが可能な塗装ロボットを提供する。
【解決手段】塗装ロボット10のヘッド制御部90は、車両への塗装において、特定のノズル54で液滴の吐出が不良である不良ノズル54aと判定された場合に、不良ドットD1の周囲の良ドットD2の液滴のサイズが大きくなるように圧電基板62の駆動を制御するリカバリー制御を行い、リカバリー制御では、不良ドットD1の周囲の良ドットD2が塗装部位における塗装範囲の境界に到達している場合において、当該良ドットD2の液滴のサイズを、リカバリー制御を実施しないときの通常の吐出状態と同等の液滴サイズとなるような境界吐出制御を実行する。
【選択図】図2
図1
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