(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】異形物体の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
D06F 35/00 20060101AFI20250203BHJP
A42B 3/00 20060101ALI20250203BHJP
A47L 23/02 20060101ALI20250203BHJP
A47L 23/18 20060101ALI20250203BHJP
A62B 17/04 20060101ALI20250203BHJP
A62B 18/00 20060101ALI20250203BHJP
A62C 33/02 20060101ALI20250203BHJP
B08B 3/04 20060101ALI20250203BHJP
B08B 3/10 20060101ALI20250203BHJP
【FI】
D06F35/00 B
A42B3/00
A47L23/02 Z
A47L23/18
A62B17/04 Z
A62B18/00
A62C33/02
B08B3/04 A
B08B3/10 Z
D06F35/00 A
(21)【出願番号】P 2024065033
(22)【出願日】2024-04-12
【審査請求日】2024-06-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名:イカロス出版 刊行物名:Jレスキュー 2024-1月号 Vol.127 発行年月日:2024年1月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521265092
【氏名又は名称】株式会社エスエスティー
(73)【特許権者】
【識別番号】502164509
【氏名又は名称】ラクナ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090158
【氏名又は名称】藤巻 正憲
(72)【発明者】
【氏名】大浦 秀晴
(72)【発明者】
【氏名】藤井 一
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-126333(JP,A)
【文献】特開2022-107378(JP,A)
【文献】特開2003-038891(JP,A)
【文献】登録実用新案第3066636(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 35/00
A42B 3/00
A47L 23/02
A47L 23/18
A62B 17/04
A62B 18/00
A62C 33/02
B08B 3/04
B08B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異形物体の洗浄方法において、
ネット状をなし開口部を有する第1袋内に、スポンジ状の緩衝材を装入し、更に、洗浄対象の異形物体を前記第1袋に装入し、その上にスポンジ状の他の緩衝材を被せた後、前記第1袋の前記開口部を閉じ、
前記第1袋より大きなネット状をなし開口部を有する第2袋内に、その底部にスポンジ状の底部緩衝材を配置すると共にこの底部緩衝材を取り囲む側壁緩衝材を配置し、この底部緩衝材及び側壁緩衝材に囲まれた空間に、前記異形物体を収納した状態の第1袋を装入し、前記第2袋の前記開口部を閉じ、
その後、この第2袋内に収納された異形物体を複数個洗浄槽内に装入すると共に前記洗浄槽内に緩衝材を装入し、前記洗浄槽内で水及び洗浄液と共に撹拌して、前記異形物体を洗浄することを特徴とする異形物体の洗浄方法。
【請求項2】
前記異形物体は、消防士用ヘルメット又は消防士用面体であることを特徴とする請求項1に記載の異形物体の洗浄方法。
【請求項3】
異形物体としての消火ホースの洗浄方法において、
メッシュ状の素材に複数個の仕切りを設けて、複数個の袋部が一方向に配置されたメッシュ袋内に、その開口部から各袋部内に、緩衝材を装入し、この緩衝剤が連なるメッシュ袋を消火ホースの金具に巻き付け、更に、メッシュ袋を紐により前記金具に固定し、
この金具にメッシュ袋が巻き付けられた複数個の消火ホースを洗浄槽内に装入すると共に前記洗浄槽内に緩衝材を装入し、前記洗浄槽内で水及び洗浄液と共に撹拌して
、前記消火ホースを洗浄することを特徴とする異形物体の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防士用、二輪車運転手用又は工場作業者用等のヘルメット、消防士用面体、消防士用防火靴、及び消防ホース取着金具端子等の異形物体を、傷及び変形等の障害を受けることなく、高清浄度且つ高効率で洗浄することができる異形物体の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消防士は消火作業中にヘルメットを装着する必要があり、二輪車運転手も運転中はヘルメットを装着する必要があり、更に、工場内で作業したり、工場内に入場する人は安全のためにヘルメットを装着する必要がある。このようなヘルメットは一般的に半球殻状を基本にして種々の突起及び凹部が形成されており、洗濯槽内での自動洗浄には不向きであるため、通常、1個ごとに手洗いして洗浄していた。
【0003】
一方、洗浄装置内にヘルメット等を装入し、機械的にヘルメットを洗浄する装置も提案されている。特許文献1乃至3には、チャンバ内に1個のヘルメットを装着し、そのヘルメットに洗浄液を噴出する等して、ヘルメットを個別に洗浄する洗浄装置が開示されている。また、特許文献4には、複数個(4個)のヘルメットを一括して洗浄する洗浄装置が開示されている。この洗浄装置においては、チャンバ内に、等間隔で離隔した4カ所の定位置に設置された装着部に、4個のヘルメットを装着し、各ヘルメットが移動しないようにして、洗浄液により洗浄している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-57991号公報
【文献】特開2016-60984号公報
【文献】実用新案登録第3244271号公報
【文献】特開2002-254043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、手作業によりヘルメットを洗浄することは、洗浄者に煩雑な作業を強いることになり、洗浄効率が極めて低く時間がかかるという問題点がある。特に、消防署等においては、消防士が自分のヘルメット等を洗浄しており、本来の消防活動以外の付随的な作業に時間をとられるという問題があった。
【0006】
また、洗浄装置によりヘルメットを機械的に洗浄する場合も、特許文献1乃至3に記載された従来装置では、洗浄槽又は洗浄チャンバ内に1個のヘルメットを所定の位置に装着し、1個のヘルメットに対して、個別の洗浄処理をするものであり、洗浄処理が煩雑であり、非効率であった。また、特許文献4に記載された洗浄装置においても、4個のヘルメットを所定の間隔で離隔するように設定された洗浄位置に設置され、その位置を保持した状態で、洗浄処理を受けるものであり、1処理で洗浄できるヘルメットの数には制約があり、洗浄効率が低いと共に、洗浄作業が煩雑であった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、洗浄槽内に複数のヘルメット等を投入しても相互に傷をつけることなく、高効率で煩雑な処理なく、異形のヘルメット等を洗浄することができる異形物体の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願第1発明に係る異形物体の洗浄方法は、
ネット状をなし開口部を有する第1袋内に、スポンジ状の緩衝材を装入し、更に、洗浄対象の異形物体を前記第1袋に装入し、その上にスポンジ状の他の緩衝材を被せた後、前記第1袋の前記開口部を閉じ、
前記第1袋より大きなネット状をなし開口部を有する第2袋内に、その底部にスポンジ状の底部緩衝材を配置すると共にこの底部緩衝材を取り囲む側壁緩衝材を配置し、この底部緩衝材及び側壁緩衝材に囲まれた空間に、前記異形物体を収納した状態の第1袋を装入し、前記第2袋の前記開口部を閉じ、
その後、この第2袋内に収納された異形物体を複数個洗浄槽内に装入すると共に前記洗浄槽内に緩衝材を装入し、前記洗浄槽内で水及び洗浄液と共に撹拌して、前記異形物体を洗浄することを特徴とする。
【0009】
この異形物体の洗浄方法において、例えば、
前記異形物体は、消防士用ヘルメット又は消防士用面体である。
【0011】
本願第2発明に係る異形物体の洗浄方法は、
異形物体としての消火ホースの洗浄方法において、
メッシュ状の素材に複数個の仕切りを設けて、複数個の袋部が一方向に配置されたメッシュ袋内に、その開口部から各袋部内に、緩衝材を装入し、この緩衝剤が連なるメッシュ袋を消火ホースの金具に巻き付け、更に、メッシュ袋を紐により前記金具に固定し、
この金具にメッシュ袋が巻き付けられた複数個の消火ホースを洗浄槽内に装入すると共に前記洗浄槽内に緩衝材を装入し、前記洗浄槽内で水及び洗浄液と共に撹拌して、前記消火ホースを洗浄することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願第1発明においては、ヘルメット又は面体等の異形物体を収納した第1袋と、この第1袋より大きくて、前記ヘルメットを収納した第1袋を収納する第2袋との2重袋構成にし、前記第1袋内に緩衝材を装入すると共に、第2袋内にも緩衝材を装入し、これを洗浄槽内に緩衝材と共に複数個装入して、洗浄槽内で、水流により撹拌する。このとき、ヘルメット等は水流により撹拌されて洗浄槽内にて無秩序に動き、洗浄槽の内壁及び他のヘルメットに衝突するが、第1袋内に緩衝材が入っており、第2袋と第1袋との間にも緩衝材が入っており、更に、洗浄槽内にも緩衝材が入っているので、ヘルメット等の乱雑な衝突が生じても、ヘルメット等に傷がつくことはない。しかも、本発明方法によれば、洗浄槽内に複数個のヘルメット等を投入して、基本的には家庭用洗濯機又はコインランドリーと同様の方法で洗浄できるので、多数のヘルメットを簡単な操作で高効率で洗浄することができる。また、本発明においては、第1袋内にヘルメット等の異形物体を緩衝材と共に装入し、更にこの異形物体が装入された第1袋を同様に緩衝材と共に第2袋内に装入して、二重袋に囲まれた状態で、異形物体を洗浄槽内に投入するので、洗浄槽内で異形物体が乱雑に動く際に衝突による傷の付着が確実に防止される。この二重袋の傷防止効果は、一つの袋で多量の緩衝材を使用した場合よりも、優れたものである。
【0013】
本願第2発明においては、メッシュ状袋内に防火靴を装入して、洗浄槽内で洗浄する。また、本願第3発明においては、メッシュ袋内に緩衝材を入れたものを、消火ホースの金具に巻き付けて、この金具部分とホース部分とを洗浄槽内で洗浄するので、金具部分が洗浄槽内で無秩序に移動して、相互に衝突しても、金具部分が損傷することがない。また、本願第2発明及び第3発明においても、家庭用洗濯機又はコインランドリーと同等の簡便さで、高効率に異形物体を洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】異形物体としての消防士用ヘルメットを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態において、小袋2内にシリコンシート5を置く工程を示す図である。
【
図3】シリコンシート5上にヘルメット1を載置する工程を示す図である。
【
図4】ヘルメット1上に他のシリコンシート6を置く工程を示す図である。
【
図5】小袋2のファスナー3を閉じた状態を示す図である。
【
図6】大袋12内にシリコンシート15を敷き詰める工程を示す図である。
【
図7】大袋12と、ヘルメット1が収納された小袋2を示す図である。
【
図8】小袋2を大袋12内に入れてファスナー13を閉じた状態を示す図である。
【
図9】大袋12を洗浄槽20内にシリコンシート21と共に投入して撹拌洗浄する工程を示す図である。
【
図10】異形物体としての消防士用面体30を示す図である。
【
図11】小袋2内にシリコンシート5を敷き、その上に面体30を載置する工程を示す図である。
【
図12】異形物体としての防火靴40を示す図である。
【
図13】防火靴40をメッシュ袋41内に装入する工程を示す図である。
【
図14】異形物体としての消防ホース50並びに放出端部52及び取水端部51を示す図である。
【
図15】メッシュ状袋の保護部材60を示す図である。
【
図16】メッシュ状袋60とその内部に装入されたシリコンシート61を示す図である。
【
図17】消火ホース50の放出端部52と取水端部51を示す図である。
【
図18】放出端部52及び取水端部51を保護部材60で巻回しようとする工程を示す図である。
【
図19】放出端部52及び取水端部51を保護部材60で巻回した状態を示す図である。
【
図20】放出端部52及び取水端部51に巻回された保護部材60を紐65,66で縛った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
図1は本実施形態の洗浄対象の異形物体である消防士用ヘルメット1を示す。このヘルメット1は、単なる半球殻状ではなく、種々の凸部と凹部とが形成された複雑な形状をしている。
【0016】
図2は、本実施形態で使用するネット状の小袋2を示す。この小袋2は、クッション性を有する素材で製造されており、例えば、ナイロン又はポリエステル製のものがある。ナイロンの公定吸水率は4.5%、ポリエステルの公定吸水率は0.4%である。このメッシュ状小袋2は、水に洗浄剤を添加した洗浄液は通すが、内部のヘルメット等は収納状態を柔軟に保持するものである。このメッシュ状小袋2の上端開口部には、その縁辺に沿って、線ファスナー3の一方が取り付けられており、小袋2の上部の蓋4の縁辺にも、ファスナー3の他方が取り付けられている。そして、これらのファスナー3をかみ合わせることにより、蓋4は小袋2の上部を閉じ、内容物を小袋2内に格納することができる。
【0017】
この小袋2を利用し、本実施形態においては、
図2に示すように、この小袋2の底部上に、シリコンシート5を置く。このシリコンシート5は、板状に成形したスポンジの中にシリコンを含浸させたものであり、クッション性を求めたシートである。スポンジにシリコンを含浸させたのは、洗濯槽内で水流により撹拌された時の強度を高めて、耐久性を挙げるためである。なお、スポンジは内部に細かな孔が無数に空いた多孔質の柔らかい物質である。
【0018】
次に、
図3に示すように、この小袋2内のシリコンシート5の上に、ヘルメット1を上下逆にして載置する。
【0019】
そして、
図4に示すように、このヘルメット1の上に、他のシリコンシート6を載せてヘルメット1の上端をシリコンシート6で覆う。
【0020】
次に、
図5に示すように、ファスナー3をかみ合わせて、蓋4で小袋2の開口部を閉じると、ヘルメット1が小袋2内に収納される。
【0021】
次に、
図6に示すように、小袋2よりも大きな大袋12を用意する。この大袋12も小袋2と同様に、メッシュ状の弾性を有する素材で製造されており、水に洗浄液を溶かした洗浄水は通すが、内部の物体は通さないものである。この大袋12もその上端に開口部を有し、この開口部の縁辺に取り付けたファスナー13と、開口部を閉じる蓋14の縁辺に取り付けたファスナー13とをかみ合わせることにより、大袋12の内部が蓋14で閉じられるようになっている。
【0022】
そして、この大袋12内に、シリコンシート15を設置する。このシリコンシート15は、5枚のシートからなり、大袋12の底部に1枚の矩形シートを敷き、その4編に沿って4枚のシートを立てて底部シートを取り囲むように配置する。これにより、5枚のシリコンシート15からなる空間が形成される。
【0023】
次に、
図7及び
図8に示すように、この大袋12内に、
図5に示す小袋2内に収納されたヘルメット1を装入する。この小袋2は、5枚のシリコンシート15からなる空間内に配置され、その空間の上部を覆うようにして、6枚目のシリコンシート16を載置する。これにより、小袋2は、6枚のシリコンシート15、16により囲まれる。そして、大袋12の上端開口縁に設けたファスナー13を締めて、蓋14を閉じ、大袋12内に小袋2内に収納されたヘルメット1を封入する。
【0024】
このようにして、大袋12及び小袋2の2重メッシュ袋内にシリコンシート5、6及びシリコンシート15、16と共に収納されたヘルメット1を、
図9に示すように、洗浄槽20内に装入する。このとき、この洗浄槽20内に、複数のシリコンシート21も装入する。その後、洗浄槽20の開口部蓋を閉じ、洗浄槽20内に、水に洗浄剤を溶解させた洗浄液を導入し、この洗浄液を撹拌することにより、ヘルメット1を洗浄する。その後、大袋12及び小袋2からヘルメット1を取り出し、適宜の温度で乾燥する静止型乾燥庫内にラックを設置し、このラックにヘルメット1をかけて、乾燥する。
【0025】
次に、上述のごとく構成された本実施形態の洗浄方法の動作について説明する。ヘルメット、特に、消防士用ヘルメットは、その殻としての強度を高める等の目的のために、殻には種々の突起が設けられている。よって、このようなヘルメットをそのまま洗浄槽に装入して、洗浄液の撹拌水流によりヘルメットを洗浄しようとすると、ヘルメットを相互に衝突したり、ヘルメットが洗浄槽20の内面に衝突したりして、ヘルメットの殻の特に外面に傷がついてしまう。本実施形態においては、ヘルメットはメッシュ状小袋2内に2枚のシリコンシート5,6に挟まれて収納されており、更に、小袋2がメッシュ状大袋12内に6枚のシリコンシート15,16に囲まれて収納されているので、これらのシリコンシートが緩衝材として機能し、ヘルメット1が相互に又は洗浄槽壁に衝突しても、傷がついたり、変形したりすることはない。一方、小袋2及び大袋12は、メッシュ状の素材で製造されているので、洗浄液は袋内に浸透し、洗浄液の撹拌流によりヘルメット1が洗浄液中を無作為に移動して洗浄液に接触し、袋内のヘルメット1を十分に洗浄することができる。
【0026】
本実施形態では、更に、洗浄槽20内にシリコンシート21を装入しているので、小袋2及び大袋12内に収納されたヘルメット1は、洗浄液の撹拌流により無作為に移動した場合の衝撃を更に和らげることができる。
【0027】
このシリコンシート5,6,15,16,21は、スポンジにシリコンを含浸させたものであるので、強度が高く、長期間にわたって使用しても、損耗することが少ない。また、ヘルメット1は、小袋2内でシリコンシート5,6に挟まれているだけで小袋2に対し固定されてはいない。更に、ヘルメット1を収納した小袋2も、大袋12内でシリコンシート15,16に囲まれているだけで大袋12に固定されてはいない。しかし、ヘルメット1、小袋2及び大袋12の相互間は隙間がない程度に小袋2及び大袋12の大きさを設定してあるので、ヘルメット1が小袋2内又は大袋12内で自由な方向に動いてしまうことはない。一方、このヘルメット1、小袋2及び大袋12の相互間の間隔を比較的緩やかなものとした場合には、ヘルメット1は、メッシュ状小袋2内でシリコンシート5,6に保護されつつ自由に揺動し、小袋2全体も大袋12内でシリコンシート15,16に保護されつつ自由に揺動する。この場合には、ヘルメット1の揺動を可能としつつ、ヘルメット1への傷の付着を防止する上で、特に、シリコンシート5,6,15,16の効果が高い。いずれにしても、洗浄効果及び傷防止効果を勘案して、小袋2及び大袋12とシリコンシートの大きさ等を決めれば良い。このようにして、本実施形態によれば、家庭用洗濯機又はコインランドリーと同様の手軽な方法で異形物体のヘルメットを洗浄できるので、多数のヘルメットを簡単な操作で高効率且つ簡便に洗浄することができる。なお、洗浄プログラムは、家庭用又はコインランドリー用の洗濯機とは異なり、ヘルメット等の洗浄用として、専用のプログラムを組んでいる。
【0028】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、ヘルメット1の代わりに、面体30を洗浄する場合の洗浄方法である。
図10に示すように、面体30は、消防活動において、消防士が顔につけて火災現場で呼吸を確保したり、顔を火又は障害物から保護するフェースガード又はフェースシールドである。消防士用の面体は、溶接用の面体と異なり、その用途の必要上から極めて複雑な形状をしている。
【0029】
このような複雑な形状を有する呼吸用保護具としての消防士用面体30も、前述のヘルメット1と同様に洗浄することができる。先ず、
図11に示すように、小袋2内の底部にシリコンシート5を置き、このシリコンシート5の上に、面体30を載置する。
【0030】
その後、
図4乃至
図9の工程と同様の工程で、面体を洗浄液により洗浄する。この面体30の場合も、ヘルメット1の場合と同様に、洗浄槽20内で、洗浄液がメッシュ状ネットである小袋2及び大袋12を透過して直接面体30に接触し、面体30を洗浄液の水流により洗浄すると共に、面体30が洗浄槽20内で激しく移動し、他の面体及び洗浄槽壁に衝突しても、面体30に傷が付くことはない。
【0031】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、
図12に示すような防火靴40の洗浄方法についてのものである。この防火靴40は、
図13に示すように、メッシュ状のネット素材を5角形上の袋に成形したメッシュ袋41内に、装入される。このメッシュ袋41は、その最大辺に開口部が設けられており、この開口部の縁辺には開口部を開閉するための線ファスナー42が取り付けられている。そして、防火靴40をメッシュ袋41内に装入した後、ファスナー42を閉じて、防火靴40をメッシュ袋41内に封入する。
【0032】
この状態で、防火靴40を
図9に示す洗浄槽30内に投入し、洗浄液の撹拌流により防火靴を洗浄する。本実施形態でも、洗浄槽20内で、洗浄液がメッシュ状ネットであるメッシュ袋41を透過して直接防火靴40に接触し、防火靴40を洗浄液の水流により洗浄すると共に、防火靴40が洗浄槽20内で激しく移動し、他の防火靴40及び洗浄槽壁に衝突しても、防火靴40に傷が付くことはない。
【0033】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、消防ホースの洗浄方法についてのものである。
図14に示すように、消防ホース50は、長尺の巻回可能な素材からなるホース部分と、このホース部分の両端に設けられた消防水放出端部52と、消防水取水端部51とから構成されている。放出端部52は加圧された水を放出して消火するための端部であり、取水端部51は消火栓に結合されて消火栓から高圧水を取水するための端部である。そして、これらの放出端部52及び取水端部51は、高圧水で変形したり、消火栓に取り付けた後に外れてしまうことがないように、高強度でその形状を保持する必要があるため、いずれも金属製の円筒部品となっている。よって、この放出端部52及び取水端部51は、剛性をもち、高重量であるため、洗浄槽内では、相互に衝突したり、洗浄壁に衝突して損傷を受けやすい部位である。
【0034】
このため、
図15及び
図16に示すように、この消防ホース50を洗浄槽20内で洗浄液の撹拌流により洗浄するために、放出端部52及び取水端部51の保護部材60を使用する。この保護部材60は、小袋2及び大袋12と同様に、クッション性を有する素材で製造されており、水に洗浄剤を添加した洗浄液は通すが、内部の収納物は収納状態を柔軟に保持するものである。この保護部材60は、一端縁が開放された袋状をなし、開放端を3分割するようにこの開放端に垂直の仕切り62が形成されている。この仕切り62により保護部材60は、3個の袋部が形成される。そして、この袋部内に、多孔のスポンジにシリコンを含浸させたシリコンシート61が収納されている。この保護部材60には、その中央部近傍に紐65が取り付けられており、保護部材60の開口部近傍には紐66が取り付けられている。
【0035】
そして、
図17に示すように、消防ホース50の放出端部52と取水端部51とを合わせ、
図18に示すように、放出端部52と取水端部51とを連結した後、その放出端部52と取水端部51とに保護部材60を巻回する。このとき、保護部材60の仕切り62と、放出端部52及び取水端部51の長手方向とを平行にして、保護部材60を配置し、金属製の放出端部52及び取水端部51の周囲を保護部材60が取り囲むように、保護部材60を金属部分に巻き付ける。そして、
図19に示すように、巻き付けた保護部材60の幅方向中央部を紐65で縛り、更に、保護部材60の開口部を紐66で縛る。
【0036】
その後、
図20に示すようにして準備された消防ホース50と保護部材60が巻回された放出端部52及び取水端部51を、緩衝材としてのシリコンシート21と共に、洗浄槽20内に装入し、洗浄液の撹拌流により、消防ホース50並びに放出端部52及び取水端部51を洗浄する。
【0037】
本実施形態においては、消防ホース50は洗浄槽20内で洗浄液に露出された状態で洗浄され、放出端部52及び取水端部51は、シリコンシート61及び保護部材60(メッシュ状ネット袋)に囲まれた状態で、洗浄される。このとき、洗浄液はメッシュ状袋(保護部材60)及びシリコンシート61を透過して、放出端部52及び取水端部51の外面に到達するので、放出端部52及び取水端部51が保護部材60及びシリコンシート61に囲まれていても、洗浄液により十分に洗浄される。そして、放出端部52及び取水端部51は、緩衝材としてのシリコンシート61を内包する保護部材60に囲まれているので、高重量且つ剛性が高い放出端部52及び取水端部51が洗浄槽20内に撹拌流に曝されて、相互に衝突したり、洗浄槽壁に衝突しても、放出端部52及び取水端部51に傷がつくことはない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、消防士用のヘルメット及び面体のように形状が複雑な異形物体で、洗浄槽内で洗浄すると、相互衝突等により傷がついたり、変形したりするおそれがあるものを、メッシュ状ネット及びシリコンシート等の緩衝材を使用することにより、傷及び変形等が生じることなく、洗浄することができ、しかも、家庭内洗濯機により又はコインランドリー等で衣服等を洗浄するのと同様の簡便な方法で、洗浄対象物を洗浄槽内に投入するだけで、簡便且つ迅速に複数の異形洗浄対象物を洗浄することができるので、例えば、消防署内における消防士の付随的な作業を著しく軽減することができる。これは、防火靴及び消防ホースを洗浄する場合も同様で、消防士が本来しなくても良い作業の削減に極めて有益である。
【符号の説明】
【0039】
1:ヘルメット
2:小袋(メッシュ状ネット)
3、13、42:(線)ファスナー
4、14:蓋
5,6、15,16、21:シリコンシート
12:大袋(メッシュ状ネット)
20:洗浄槽
30:面体
40:防火靴
41:メッシュ袋
50:消防ホース
51:取水端部
52:放出端部
60:保護部材
61:シリコンシート
62:仕切り
65,66:紐
【要約】
【課題】洗浄槽内に複数のヘルメット等を投入しても相互に傷をつけることなく、高効率で煩雑な処理なく、異形のヘルメット等を洗浄することができる異形物体の洗浄方法を提供する。
【解決手段】ネット状をなす小袋2内に緩衝材としてのシリコンシート5,6とヘルメット1を装入し、ファスナー3により蓋4を閉じた後、ネット状をなす大袋12内に緩衝材としてのシリコンシート15,16と共に小袋2を装入し、ファスナー13により蓋14を閉じる。その後、上記二重袋内のヘルメットを洗浄槽内に投入して、洗浄液の撹拌流により洗浄する。
【選択図】
図7