(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】図面検索装置、図面検索方法及び図面検索プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 1/00 20060101AFI20250203BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20250203BHJP
【FI】
G06T1/00 200E
G06T7/60 180B
(21)【出願番号】P 2024140966
(22)【出願日】2024-08-22
【審査請求日】2024-09-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520445521
【氏名又は名称】株式会社ダックビル
(73)【特許権者】
【識別番号】500489015
【氏名又は名称】建装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230115118
【氏名又は名称】西村 義隆
(72)【発明者】
【氏名】野口 高志
【審査官】渡部 幸和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-180191(JP,A)
【文献】特許第7004125(JP,B2)
【文献】韓国登録特許第10-2381354(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0085004(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G06T 7/60
G06F 16/00 - 16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力データから図面を検索するための装置であって、
入力装置から取得した入力データから輪郭を抽出して直線又は曲線の端点となる複数の点を特徴点として抽出し、予め定められた基点と当該複数の特徴点との距離をそれぞれ計測する計測部と、
前記特徴点間の相互の距離をそれぞれ算出する距離推定部と、
前記距離推定部で算出した前記特徴点間の距離の割合と、データベースに格納されている図面において対象物を構成する直線又は曲線の距離の割合を比較することで、最も適合する図面を検索する検索部とを有する図面検索装置。
【請求項2】
入力データから図面を検索するための装置であって、
入力装置から取得した入力データから輪郭を抽出して直線又は曲線の端点となる複数の点を特徴点として抽出し、予め定められた基点と当該複数の特徴点との距離をそれぞれ計測する計測部と、
前記特徴点間の相互の距離をそれぞれ算出する距離推定部と、
前記距離推定部で算出した前記特徴点間の距離の割合と、データベースに格納されている図面において対象物を構成する直線又は曲線の距離の割合を比較した結果、最も適合する直線又は曲線の数が多い図面を検索結果として決定する検索部とを有する図面検索装置。
【請求項3】
入力データから図面を検索するための装置であって、
入力装置から取得した入力データから輪郭を抽出して直線又は曲線の端点となる複数の点を特徴点として抽出し、予め定められた基点と当該複数の特徴点との距離をそれぞれ計測する計測部と、
前記特徴点間の相互の距離をそれぞれ算出する距離推定部と、
データベースに格納されている図面において対象物を構成する直線又は曲線の距離の割合をそれぞれ学習データとして構築されたモデルに対して、前記距離推定部で算出した前記特徴点間の距離の割合を入力データとして、機械学習を用いて検索結果の図面を決定する検索部とを有する図面検索装置。
【請求項4】
入力データから図面を検索するための装置であって、
入力装置から取得した入力データの複数の特徴点を抽出して予め定められた基点と当該複数の特徴点との距離をそれぞれ計測する計測部と、
前記特徴点間の相互の距離をそれぞれ算出する距離推定部と、
前記距離推定部で抽出した特徴点には天井面と床面の特徴点が存在し、地面と水平方向の2つの閉じられた空間を天井面と床面として抽出し、天井面と床面の外郭を構成する要素以外の特徴点を雑音として除去した上で、天井面と床面の比較し、共通する特徴点をたどりながら、共通しない特徴点を雑音として除去する雑音除去部と、
前記距離推定部で算出した前記特徴点間の距離を用いて、データベースに格納されている図面から最も適合する図面を検索する検索部とを有する図面検索装置。
【請求項5】
入力データから図面を検索するための方法であって、
入力装置から取得した入力データから輪郭を抽出して直線又は曲線の端点となる複数の点を特徴点として抽出し、予め定められた基点と当該複数の特徴点との距離をそれぞれ計測する計測ステップと、
前記特徴点間の相互の距離をそれぞれ算出する距離推定ステップと、
前記距離推定ステップで算出した前記特徴点間の距離の割合と、データベースに格納されている図面において対象物を構成する直線又は曲線の距離の割合を比較することで、最も適合する図面を検索する検索ステップとをコンピュータにより実現するための図面検索方法。
【請求項6】
入力データから図面を検索するためのプログラムであって、
入力装置から取得した入力データから輪郭を抽出して直線又は曲線の端点となる複数の点を特徴点として抽出し、予め定められた基点と当該複数の特徴点との距離をそれぞれ計測する計測ステップと、
前記特徴点間の相互の距離をそれぞれ算出する距離推定ステップと、
前記距離推定ステップで算出した前記特徴点間の距離の割合と、データベースに格納されている図面において対象物を構成する直線又は曲線の距離の割合を比較することで、最も適合する図面を検索する検索ステップとをコンピュータにより実現するための図面検索プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、図面検索装置、図面検索方法及び図面検索プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械学習技術の進歩により、AI(Artificial Intelligence)により画像データを把握したり、画像データと選択された情報とのマッチングを行う技術が進歩している。一方で、図面や地図などのデータから現在地を検出するためには、GPS(Global Positioning System 登録商標)などの位置情報を用いた方がエラーを少なく運用でき、画像データから現在地を検出する方法については、正確性に劣る場面も多く、改良の余地がある。さらにGPSには空間解像度の制約があるため、カメラその他のセンサから入力されたデータに基づいて図面や地図との正確なマッチングが実現できれば、建設現場等において現場と図面とのマッチングが可能となり、有効活用することが期待できる。
【0003】
例えば、特許文献1では、写真のデータが平面図においてどの位置からどの方向に向けて撮影されたものかを推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、機械学習を用いて図面の特徴量と写真(カメラから入力された画像データ)の特徴量をコンカットして機械学習を用いて対応付けを行うが、より簡単な情報、簡単な機構でセンサからの入力データと図面との対応付けができれば、リアルタイムの処理にも応用が可能となる。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みて提案するものであり、センサから入力される入力データから、構造物など対象物の輪郭の辺の長さを抽出し、その各辺の割合を用いて図面とのマッチングを行うことにより、簡易な機構で入力画像と図面とのマッチングを行う図面検索装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る図面検索装置は、入力データから図面を検索するための装置であって、入力装置から取得した入力データから複数の特徴点を抽出し、予め定められた基点と当該複数の特徴点との距離をそれぞれ計測する計測部と、特徴点間の相互の距離をそれぞれ算出する距離推定部と、距離推定部で算出した前記特徴点間の距離を用いて、データベースに格納されている図面から最も適合する図面を検索する検索部とを有する。
【0008】
上記目的を達成するため、本開示に係る図面検索方法は、入力データから図面を検索するための方法であって、入力装置から取得した入力データから複数の特徴点を抽出し、予め定められた基点と当該複数の特徴点との距離をそれぞれ計測する計測ステップと、特徴点間の相互の距離をそれぞれ算出する距離推定ステップと、距離推定ステップで算出した特徴点間の距離を用いて、データベースに格納されている図面から最も適合する図面を検索する検索ステップとを有する。
【0009】
上記目的を達成するため、本開示に係る図面検索プログラムは、入力データから図面を検索するためのプログラムであって、入力装置から取得した入力データから複数の特徴点を抽出し、予め定められた基点と当該複数の特徴点との距離をそれぞれ計測する計測ステップと、特徴点間の相互の距離をそれぞれ算出する距離推定ステップと、距離推定ステップで算出した特徴点間の距離を用いて、データベースに格納されている図面から最も適合する図面を検索する検索ステップとを有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、図面検索の対象となる対象物に対して、光を照射し、その反射光を光センサなどの入力装置から取得して入力データとし、その入力データとマッチングする図面データを検索する。これにより、画像データを入力データとするのと比較して、より対象物の形状を正確に捉えることが可能となる。また、本開示による検索方法は、簡単かつ容易なもので実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】図面検索装置10の利用の一場面を示す図である。
【
図2】図面検索装置10のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】図面検索装置10の基本的な機能を示すブロック図である。
【
図4】図面検索装置10を用いて算出する特徴点や特徴点間の距離の一例を示す図である。
【
図5】図面検索装置10が選択した図面から算出した特徴点と特徴点間の距離の一例を示す図である。
【
図6】図面検索装置10が選択した図面から算出した特徴点と特徴点間の距離の一例を示す図である。
【
図7】図面検索装置10の変形例2の基本的な機能を示すブロック図である。
【
図8】図面検索装置10の変形例3の基本的な機能を示すブロック図である。
【
図9】図面検索装置10の利用の一場面を示す図である。
【
図10】図面検索装置10の変形例3において天井面の特徴点や特徴点間の距離の一例を示した図である。
【
図11】図面検索装置10の変形例3において床面の特徴点や特徴点間の距離の一例を示した図である。
【
図12】図面検索装置10が制御処理を行う一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示について図面を参照して説明する。
【0013】
(図面検索装置10の利用場面)
図1は、図面検索装置10を利用する一場面を示した図である。構造物20は一例として示したが、図面検索の対象となるものであり、建物などの建築物であってもよいし、橋梁などの構造物であってもよい。また、機械などの動産(工作物)であってもよく、図面が存在する建築物、構造物、動産(工作物)であれば、対象となり得る。
【0014】
図面検索装置10は、図面の検索対象となる構造物20に対して向けられ、センサなどの入力装置を通して入力データを取得する。検索対象となる図面は、建築物の平面図などが考えられるが、立面図などその他の建築図面であってもよいし、橋梁など構造物の図面であってもよい。また、機械図面など、動産の図面が検索対象であってもよい。
【0015】
(図面検索装置10のハードウェア構成)
図2は、図面検索装置10のハードウェア構成を示す図である。図面検索装置10は、汎用のコンピュータにより構成可能である。
【0016】
図2に示すように、図面検索装置10は、プロセッサ11、メモリ12、ストレージ13、通信IF14(なお、IFはInterFaceの略語として記載した。以下、同じ。)、入出力IF15を備える。
【0017】
プロセッサ11は、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路などにより構成される。
【0018】
メモリ12は、プログラム、および、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリにより実現される。
【0019】
ストレージ13は、プログラムなどのデータを保存するための記憶装置であり、例えばフラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard disk Drive)により実現される。
【0020】
通信IF14は、図面検索装置10が他の機器と通信するため、信号を送受信するためのインタフェースである。ただし、図面検索装置10において必須の構成要素ではない。
【0021】
入出力IF15は、カメラなどの画像入力装置、センサなどの入力装置、及び/又はユーザからの入力を受け付けるためのキーボード、マウス、テンキーなどの入力装置、並びにユーザに対し情報を提示するためのディスプレイなど出力装置のインタフェースとして機能する。
【0022】
図3は、図面検索装置10の基本的な機能を説明するためのブロック図である。図面検索装置10は、通信部110、記憶部120、制御部130とを備える。
【0023】
通信部110は、他の機器と通信するための処理を行う。例えば通信部110は、データベースがネットワークを介した外部に存在するとき、通信部110を介して図面などのデータを取得してもよい。なお、通信部110は必須の構成要素ではない。
【0024】
記憶部120は、図面検索装置10が保持するデータを記憶する。例えば記憶部120は、図面データベース121を備えて、検索対象となる図面を記憶する。また、記憶部120は、図面検索装置10が実行するためのプログラムを記憶してもよい。
【0025】
制御部130は、図面検索装置10の動作を制御する。具体的には、制御部130は、計測部131、距離推定部132、検索部133を備える。
【0026】
計測部131は、対象物の反射光を入力装置30を通して取得した入力データについて、複数の特徴点を抽出して、反射光を感知する光センサを基点とし、複数の特徴点との間の距離及び角度をそれぞれ計測する。例えば、LiDAR(Light Detection And Ranging)を用いると、あらゆる方向にレーザを照射し、点群データを取得することが可能である。これらの点群データをつなぎ合わせることで、センサから把握できる物体の形状を検知することが可能となる。カメラで取得した画像から特徴点を抽出するのと比較すると、より物体の形状を正確に把握できる点がメリットである。
【0027】
計測部131は、取得した点群データに対して、画像処理技術などを使って輪郭強調を行うことで、物体の輪郭・形状を検出する処理を行う。そして、物体の形状から、特徴点を抽出する。特徴点とは、物体の輪郭があるときに、その輪郭を構成する直線又は曲線において、その各直線又は曲線の端点となる点である。言い換えると、複数の直線が交わっている点、直線と曲線が交わっている点及び曲線と曲線が交わっている点を特徴点として捉える。これらは例えば、直線又は曲線と、他の直線又は曲線が交わって角の端となっている点が含まれる。
【0028】
計測部131は、上記のように特徴点を抽出した上で、基点となるセンサと、抽出した特徴点との距離及び角度をそれぞれ計測する。
【0029】
計測部131は、基点となるセンサと各特徴点との間の距離及び角度を計測し、データとして取得しておくことで、基点と特徴点との間の関係だけでなく、特徴点間の距離などを算出することが可能となる。
【0030】
距離推定部132は、計測部131で抽出した特徴点間の相互の距離をそれぞれ算出する。計測部131では、基点となるセンサから各特徴点までの距離及び角度を算出しているため、これらの情報を用いて、特徴点相互の距離の抽出を行うことが可能である。
【0031】
距離推定部132は、特徴点相互の距離の抽出に際して、全ての特徴点の組み合わせの距離を算出する必要はなく、計測部131で算出された輪郭に沿って隣り合う特徴点の間の距離、言い換えれば、輪郭となる直線又は曲線の距離をそれぞれ算出すればよい。
【0032】
距離推定部132において、特徴点の間の直線又は曲線の距離を算出しておくことで、対象物の輪郭の概形を距離によって把握することが可能となる。
【0033】
検索部133は、第一に、図面DB121から任意の図面データを読み込む。このとき、図面データには予め特徴点間の距離が数値として記憶されており、かかる特徴点間の距離も同時に取得してもよい。また、図面データに特徴点間の距離が数値として記憶されていないときは、例えば以下の方法により、図面に描かれた特徴点間の距離から算出してもよい。
【0034】
検索部133が図面データから把握する特徴点とは、計測部131における処理と同様に、図面を構成する直線又は曲線において、その各直線又は各曲線の端の点として捉えることができる点である。すなわち、複数の直線が交わっている点、直線と曲線が交わっている点及び曲線と曲線が交わっている点を特徴点として捉える。
【0035】
検索部133は、図面DB121から読み込んだ1つの図面に対して、任意の隣り合う2つの特徴点を選択して、図面上の距離を算出する。検索部133は、言い換えれば、図面を構成する直線又は曲線の距離を算出する。そして、読み込んだ図面に対して、図面を構成する直線及び曲線の全ての長さを算出しておく。
【0036】
検索部133は、第二に、読み込んだ図面から任意の一つの直線又は曲線を選択し、それと隣り合う直線又は曲線との比率を算出する。
【0037】
検索部133は、第三に、図面から選択した隣り合う直線又は曲線の比率が、距離推定部132で算出した特徴点により構成される隣り合う2つの直線又は曲線の比率と一致するか否かを判定する。
【0038】
検索部133は、図面から選択した隣り合う直線又は曲線の比率と、距離推定部132で算出した隣り合う2つの直線又は曲線の比率が一致するときは、さらに図面において隣接する直線又は曲線の割合と、距離推定部132で算出したさらに隣り合う直線又は曲線の比率と一致するか判定し、一致し続ける限り探索を続け、最終的に一致する数を算出する。このとき、図面から選択した隣り合う直線又は曲線の比率と、距離推定部132で算出した隣り合う2つの直線又は曲線の比率の一致の判定に際して、閾値を設定して、閾値以内の誤差を許容してもよい。
【0039】
検索部133は、図面から選択した隣り合う直線又は曲線の比率と、距離推定部132で算出した特徴点により構成される隣り合う2つの直線又は曲線の比率が一致しないときは、図面上で探索を開始する任意の直線又は曲線をずらして直線又は曲線に設定した上で、さらに同様の探索を行う。
【0040】
検索部133は、図面上で一通り探索を開始する直線又は曲線を変えて距離推定部132で算出した特徴点により構成される直線又は曲線の比率との一致を判定し、最も一致数の多かった数値をその図面のマッチング度とする。
【0041】
検索部133は、第四に、図面DB121の全ての図面に対して探索を行い、マッチング度が最も大きい図面を、図面検索装置10が検索した構造物の図面として最終的に決定する。
【0042】
検索部133は、直線又は曲線の比率だけで図面の検索、すなわち図面のマッチングを行うことで、図面の縮尺の誤差やセンサから把握した距離の誤差を吸収しつつ、計算量を抑制しながら図面の検索を行うことが可能となる。
【0043】
検索部133は、直線又は曲線の比率を用いて図面の検索を行うが、三次元の実空間から図面を検索することは、実空間の情報をいかに特徴量化して検索するかという問題と関連し、複雑な問題になりがちであるが、シンプルに実空間を構成している輪郭の直線又は曲線部分を用いることで簡易に検索が可能となる。
【0044】
検索部133は、直線又は曲線の距離ではなく、比率を用いて図面の検索を行うことで、図面上の縮尺から実際の距離を算出する手間を省略することが可能となるし、図面に誤った縮尺が記載されていた場合にも、検索を行うことが可能となる。
【0045】
(制御部130が行う処理の具体例)
図4に計測部131が抽出した特徴点の具体例を示す。黒丸(●)は特徴点を示している。
図4は、併せて、各直線の距離も示している。
【0046】
図4は、建物の部屋を見た場面を想定した具体例であり、図面検索装置10がセンサを用いて点群データを取得すると、部屋の壁、床、天井、柱などに沿って点群データが生成される。計測部131は、輪郭強調を行うことで、壁、床、天井、柱などを構成する直線又は曲線が強調され、かかる直線又は曲線の端点が特徴点として抽出される。
図4において、P101からP112はそれぞれ特徴点を示したものである。
【0047】
距離推定部132は、隣り合う特徴点間の距離、例えば、P101-P102の距離、P102-P103の距離、P101-P112の距離を算出する。この算出に際しては、計測部131は、センサ(図面検索装置10)から各特徴点までの距離及び角度が分かっているため、センサから特徴点までの距離と三角関数を用いて算出することが可能である。また、この方法に限られず、センサから各特徴点までの距離を算出することも可能である。
【0048】
検索部133は、図面DB121から任意の1つの図面を選択する。そして、選択した図面から、図面を構成する直線又は曲線の距離を読み込む。
【0049】
検索部133は、図面DB121の図面データにおいて図面を構成する直線又は曲線の距離が数値データとして記憶されていないときは、特徴点を把握した上で、図面を構成する直線又は曲線の距離を算出する。
【0050】
図5は、ある図面とその特徴点を示した具体例である。黒丸(●)は特徴点を示しており、直線又は曲線の端点となる点を特徴点として示している。併せて、
図5は、図面を構成する直線又は曲線の距離も示している。検索部133は、具体的には、直線又は曲線の距離、すなわち、P201-P202の距離、P202-P203の距離、P203-P204の距離、P204-P201の距離をそれぞれ読み込みないし算出することで把握しておく。
【0051】
検索部133は、例えば
図5に示す図面を選択し、任意の1つの直線又は曲線(P201-P202)とそれに隣り合う直線又は曲線(P202-P203)を選択する。このとき、距離の比率は2:5.4であるが、
図4の中からはこの距離の比率は存在しない。したがって、マッチング度は0となる。
【0052】
検索部133は、
図5において最初に選ぶ直線又は曲線をP202-P203とし、それに隣り合う直線又は曲線としてP203-P204を選択しても、その距離の比は5.4:4であり、
図4には存在しない。同様に、最初に選択する直線又は曲線をP203-P204、P203-P201としても同様に
図4中に同様の距離の比率のものは存在しない。したがって、
図5のマッチング度は0のままである。
【0053】
検索部133は、次に
図6の図面を選択し、最初に選ぶ直線をP301-P302とする。そして、隣り合う直線又は曲線をP302-P303とすると、その距離の比率は6:2である。これは、
図4において、P111-P110:P110-P109と、P102-P103:P103-P104の比率と一致する。さらに、探索していくと、P301-P302-P303-P304-P305-P306-P301は、P111-P110-P109-P108-P107-P112-P111又は、P102-P103-P104-P105-P106-P101-P102と一致し、一致する直線又は曲線の数は6となる。したがって、
図6のマッチング度は6である。
【0054】
検索部133は、さらに他の図面を読み込んで、最大一致する直線又は曲線の割合を探索し、結果として
図6のマッチング度6が一番大きければ、
図4を示す図面として
図6の図面が選択されることとなる。
【0055】
上記のような処理により、
図4のような三次元の実空間から、
図6のような図面を簡単な処理で検索することが可能となる。
【0056】
<変形例1>
図面検索装置10の検索部133は、図面を構成する直線又は曲線の割合を用いて逐一マッチングしなくとも、機械学習を用いて適切な図面を選択するよう構成してもよい。検索部133は、機械学習を用いる場合、例えば以下のような処理を行ってもよい。
【0057】
検索部133において機械学習を用いる場合、各図面を表すデータとして、図面を構成する全ての直線又は曲線の割合をベクトル化してデータとする。これが各図面に対する正解データ(学習データ)となる。
【0058】
検索部133は、図面に対応する正解データの他、他の図面のデータやダミーデータを不正解データとして、機械学習のモデルを学習して構築してもよい。
【0059】
検索部133は、図面の検索を行う際は、距離推定部132において算出した隣り合う特徴点間の距離を図面を検索するための入力データとして、機械学習のモデルに入力し、最も適合する図面を検索結果の図面として決定してもよい。
【0060】
検索部133は、機械学習を用いることで、誤差などの影響を軽減しつつ図面を検索することが可能となる。
【0061】
<変形例2>
図7に示すように、図面検索装置10の制御部130は、場所推定部134を備えてもよい。
【0062】
場所推定部134は、図面の検索を行う場所を推定し、検索部133において検索対象とする図面を絞り込む。例えば場所推定部134は、GPSによって位置情報を取得し、図面に関連付けられた位置情報を参照することで、図面の候補を絞るようにしてもよい。
【0063】
場所推定部134は、例えば、図面検索装置10を利用しようとするユーザが建物の中にいて平面図を対象として検索しようとしているのか、建物の外にいて立面図を対象として検索しようとしているのかを判別し、検索部133において検索対象とする図面を絞り込んでもよい。場所推定部134は、距離推定部132により推定した特徴点の距離を用いて、ユーザがその特徴点内の空間にいるか、その特徴点の外の空間にいるかを判別し、検索部133において検索対象とする図面を絞り込んでもよい。
【0064】
場所推定部134を設けることにより、図面の数を絞ることで計算量を削減し、高速に図面検索を実現するとともに、誤った図面を選択するリスクを抑制することが可能となる。
【0065】
<変形例3>
図8に示すように、図面検索装置10の制御部130は、雑音除去部135を備えてもよい。
【0066】
雑音除去部135は、距離推定部132において推定した特徴点から、雑音(ノイズ)を除去する。例えば、平面図を検索しようとするとき、距離推定部132は、天井面と地面の2面の特徴点を抽出することが可能である。しかし、天井面には、照明器具や火災報知器などの設置により、図面とは異なる特徴点が抽出される可能性があり、床面には、設置された物などの影響により、図面とは異なる特徴点が抽出される可能性がある。
【0067】
図9に、平面図を検索しようとするときに、天井面には照明器具があり、床面には、物、物体又は物品等が設置されている状況を示す。これに対して、距離推定部132が抽出した特徴点をもとに、雑音除去部135は、さらに、地面と水平方向で閉じられ、地面と垂直方向で結合された2つの空間を抽出することで、天井面と床面を抽出することが可能である。
【0068】
図10に、
図9から天井面を抽出した特徴点の具体例を示す。雑音除去部135は、さらに、
図10で示される外郭を構成する特徴点のみを抽出し、外郭の内部に存在する特徴点を排除することで、照明器具など、平面図の内部に設置された特徴点を除去することが可能となる。床面で考えれば、床面に設置された荷物などの影響を除去することが可能となる。
【0069】
図11に、
図9から露出した床面又は物品の設置場所を除く床面を抽出した特徴点の具体例を示す。雑音除去部135は、さらに、
図11で示される外郭を構成する特徴点のみを抽出する。さらに、天井面と床面を比較し、共通する特徴点をたどりながら、共通しない特徴点については、より面積が広がるように特徴点を選択することで、
図10の特徴点と
図11の特徴点から、
図6に示されるような特徴点を抽出することが可能となる。これにより、照明器具や荷物など雑音(ノイズ)となる要素の除去を行うことが可能となる。
【0070】
例えば建設現場などにおいて、新築物件ではなく、修繕を行う場面では、既に入居者がおり、さまざまな障害物が図面検索の雑音(ノイズ)となり得る。このような雑音(ノイズ)を可能な限り排除することが図面検索の精度を向上させることに資する。
【0071】
(処理の流れ)
以下、
図7を参照しながら、図面検索装置10が図面検索を実行する制御処理の一例を説明する。
【0072】
図面検索装置10の制御部130は、センサから取得した点群データを取得する。これに輪郭強調処理を施して、対象としている構造物の輪郭を抽出し、輪郭を構成する直線又は曲線の端点を特徴点として抽出する。さらに、特徴点とセンサとの距離及び角度を取得する(ステップS101)。
【0073】
図面検索装置10の制御部130は、2つの隣り合う特徴点によって構成される各直線又は各曲線の長さを推定する(ステップS102)。
【0074】
図面検索装置10の制御部130は、記憶部120の図面DB121から任意の図面を選択し、図面上の直線又は曲線の距離比率と、図面検索装置10の制御部130が推定した特徴点間の直線又は曲線の距離の比率の一致度を算出し、もっとも一致度の高い図面を抽出する(ステップS103)。
【0075】
(効果の説明)
以上、図面検索装置10の構成について説明したが、点群データに基づいて構造物を構成する輪郭の直線又は曲線の比率を用いて図面とマッチングすることで、簡単な仕組みで図面を選択することが可能となる。三次元の対象物と図面をマッチングするのは大掛かりな処理が必要となることが多いが、本開示の方法を用いることで、簡単に検索が可能となる。
【0076】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された開示とその均等の範囲が含まれる。また、上記実施形態及び変形例で説明した装置の構成は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0077】
10…図面検索装置、11…プロセッサ、12…メモリ、13…ストレージ、14…通信IF、15…入出力IF、20…構造物、30…入力装置、110…通信部、120…記憶部、121…図面DB、130…制御部、131…計測部、132…距離推定部、133…検索部、P101~P112・P201~P204・P301~P306…特徴点
【要約】
【課題】図面検索装置により、レーザとセンサを用いて対象物の形状を把握し、その対象物の形状を示した図面をデータベースから検索して選択する。このとき、カメラを用いて画像認識をするのではなく、センサを用いて点群データから特徴点を抽出することで対象物の形状の精度を向上させる。
【解決手段】図面検索装置は、入力データから図面を検索するための装置であって、入力装置から取得した入力データから複数の特徴点を抽出し、予め定められた基点と当該複数の特徴点との距離をそれぞれ計測する計測部と、特徴点間の相互の距離をそれぞれ算出する距離推定部と、距離推定部で算出した前記特徴点間の距離を用いて、データベースに格納されている図面から最も適合する図面を検索する検索部とを有する。
【選択図】
図3