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特許7628308ドローンの存在を検知し、監視し、軽減するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】ドローンの存在を検知し、監視し、軽減するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20250203BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20250203BHJP
【FI】
H04L27/26 420
G01S5/02 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021567994
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 US2020032391
(87)【国際公開番号】W WO2020231947
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】62/846,680
(32)【優先日】2019-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521495552
【氏名又は名称】スカイセーフ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェン、チュン キン オ
(72)【発明者】
【氏名】ロー、ブランドン ファン-シュエン
(72)【発明者】
【氏名】トーボーグ、スコット
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0214429(US,A1)
【文献】特表2019-510401(JP,A)
【文献】特表2012-528522(JP,A)
【文献】国際公開第2019/000364(WO,A1)
【文献】特表2020-526130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
G01S 5/02
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドローンの存在を検知するためのシステムであって、
ドローンとコントローラとの間で送信されるRF信号を受信するように構成された無線周波数(RF)受信機であって、前記RF信号が前記RF信号の同期のための同期信号を含むRF受信機と、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサと通信するコンピュータ可読メモリであって、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記RF受信機からサンプルのシーケンスを受信し、前記受信されたサンプルのシーケンスの2階微分を取得し、前記受信されたサンプルのシーケンスの前記2階微分の規定数のランニングサムを計算し、前記ランニングサムに基づいてメトリックを決定し、前記メトリックに基づいて前記サンプルのシーケンスのルートを推定し、前記メトリックに基づいて前記ドローンの前記存在を検知し、前記推定されたルートに基づいて前記RF信号と同期する、各動作を行わせるコンピュータ実行可能命令を記憶している、コンピュータ可読メモリと、
を備えるシステム。
【請求項2】
ドローンの存在を検知するためのシステムであって、
ドローンとコントローラとの間で送信されるRF信号を受信するように構成された無線周波数(RF)受信機であって、前記RF信号が前記RF信号の同期のための同期信号を含むRF受信機と、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサと通信するコンピュータ可読メモリであって、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記RF受信機からサンプルのシーケンスを受信し、前記受信されたサンプルのシーケンスの2階微分を取得し、前記受信されたサンプルのシーケンスの前記2階微分の規定数のランニングサムを計算し、前記ランニングサムに基づいてメトリックを決定し、前記メトリックに基づいて前記ドローンの前記存在を検知し、前記ランニングサムに基づいて前記RF信号と同期する、各動作を行わせるコンピュータ実行可能命令を記憶している、コンピュータ可読メモリと、
を備え、
前記メトリックは下記式に従って決定され、

ここで、γfd2[k]はメトリックであり、Ydd[k]は2階微分であり、Pは同期信号の長さである、
システム。
【請求項3】
ドローンの存在を検知するためのシステムであって、
ドローンとコントローラとの間で送信されるRF信号を受信するように構成された無線周波数(RF)受信機であって、前記RF信号が前記RF信号の同期のための同期信号を含むRF受信機と、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサと通信するコンピュータ可読メモリであって、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記RF受信機からサンプルのシーケンスを受信し、前記受信されたサンプルのシーケンスの2階微分を取得し、前記受信されたサンプルのシーケンスの前記2階微分の規定数のランニングサムを計算し、前記ランニングサムに基づいて前記ドローンの前記存在を検知し、前記ランニングサムに基づいて前記RF信号と同期する、各動作を行わせるコンピュータ実行可能命令を記憶している、コンピュータ可読メモリと、
を備え、
前記同期信号が時間領域シーケンスを含み、前記ランニングサムは正規化されている、
システム。
【請求項4】
前記同期信号は、Zadoff-Chu(ZC)シーケンスを含む、請求項1から請求項
3までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記同期信号が、ガードバンドを含む周波数領域シーケンスを含む、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記コンピュータ可読メモリは、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記メトリックが閾値よりも大きいと判断する、各動作を行わせる前記コンピュータ実行可能命令をさらに記憶しており、
前記ドローンの存在の前記検知は、前記メトリックが閾値よりも大きいとの前記判断にさらに基づいている、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記コンピュータ可読メモリは、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記メトリックに基づいて前記サンプルのシーケンスのルートを推定する動作を行わせる、前記コンピュータ実行可能命令をさらに記憶している、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記RF信号と同期することは、前記推定されたルートを用いて実行される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記メトリックは、下記式に従って決定される、請求項1に記載のシステム。

ここで、γfd2[k]はメトリックであり、Ydd[k]は2階微分であり、Pは同期信号の長さである。
【請求項10】
前記同期信号が時間領域シーケンスを含み、前記ランニングサムは正規化されている、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項11】
前記コンピュータ可読メモリは、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記正規化されたランニングサムの絶対値が閾値よりも大きいと判断する動作を行わせる、前記コンピュータ実行可能命令をさらに記憶しており、
前記ドローンの存在の前記検知は、前記正規化されたランニングサムの絶対値が前記閾値よりも大きいとの前記判断にさらに基づいている、請求項3に記載のシステム。
【請求項12】
前記コンピュータ可読メモリは、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記正規化されたランニングサムに基づいて、前記サンプルのシーケンスのルートを推定する動作を行わせる、前記コンピュータ実行可能命令をさらに記憶している、請求項3に記載のシステム。
【請求項13】
ドローンの存在を検知する方法であって、
ドローンとコントローラとの間で送信されるRF信号のサンプルのシーケンスを受信することであって、前記RF信号は前記RF信号の同期のための同期信号を含み、前記同期信号が時間領域シーケンスを含む、前記RF信号のサンプルのシーケンスを受信することと、
前記受信されたサンプルのシーケンスの2階微分を取得することと、
前記受信されたサンプルのシーケンスの2階微分の規定数のランニングサムを計算することであって、前記ランニングサムは正規化されている、ランニングサムを計算することと、
前記ランニングサムに基づいて前記ドローンの前記存在を検知することと、
前記ランニングサムに基づいて前記RF信号と同期することと、
を含む方法。
【請求項14】
前記同期信号は、Zadoff-Chu(ZC)シーケンスを含む、請求項13に記載の
方法。
【請求項15】
前記正規化されたランニングサムの絶対値が閾値よりも大きいと判断することをさらに
含み、
前記ドローンの存在を検知することは、前記正規化されたランニングサムの絶対値が閾値よりも大きいとの前記判断にさらに基づいている、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、
実行されると、コンピュータ装置に、
ドローンとコントローラとの間で送信されるRF信号のサンプルのシーケンスを受信し、前記RF信号は前記RF信号の同期のための同期信号を含み、
前記受信されたサンプルのシーケンスの2階微分を取得し、
前記受信されたサンプルのシーケンスの2階微分の規定数のランニングサムを計算し、
前記ランニングサムに基づいてメトリックを決定し、
前記メトリックに基づいて前記サンプルのシーケンスのルートを推定し、
前記メトリックに基づいて前記ドローンの存在を検知し、
前記推定されたルートに基づいて前記RF信号と同期する、
各動作を行わせる命令を記憶している、
非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
前記同期信号は、ガードバンドを含む周波数領域シーケンスを含む、請求項16に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
前記命令は、実行されると、少なくとも1つの前記コンピュータ装置に、前記メトリックが閾値よりも大きいと判断する動作を行わせ、
前記ドローンの存在の前記検知は、前記メトリックが閾値よりも大きいとの前記判断にさらに基づいている、請求項16または請求項17に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、令和1年5月12日に出願された米国仮出願第62/846,680号の利益を主張する。
【0002】
本明細書で開示されるシステム及び方法は、ドローンの存在を検知し、監視し、軽減することを対象とする。より詳細には、システム及び方法がドローンとドローンコントローラとの間で送信される無線周波数(RF)信号を検出する。
【背景技術】
【0003】
近年、無人航空機システム(UAS)(ドローンとしてより一般的に知られている)は、空撮、農業、製品配送、インフラ点検、航空ライトショー、及び趣味のドローンレースにわたる多数のエキサイティングでクリエイティブな用途で幅広く使用されている。多くの用途におけるドローンの有用性にもかかわらず、それらはまた、セキュリティ、安全性、及びプライバシーに関する懸念を増大させる。ドローンは、国境を越えて武器や薬物を密輸するために使用されている。空港の近くでドローンを使用することは、安全上の懸念を提示し、周囲の空域が確保されるまで空港を閉鎖しなければならなくなる可能性がある。また、ドローンは、企業や国家のスパイ活動のツールとしても使用されている。したがって、ドローンを検知し、監視し、必要に応じてドローンの脅威を軽減する効果的な対無人機システム(CUAS)ソリューションが求められている。
【発明の概要】
【0004】
本開示のシステム、方法、及び装置はそれぞれ、いくつかの革新的な態様を有し、そのうちの1つだけが、本明細書で開示される望ましい属性に単独で関与するわけではない。
【0005】
1つの態様では、ドローンの存在を検知するためのシステムが提供される。システムは、ドローンとコントローラとの間で送信されたRF信号を受信するように構成された無線周波数(RF)受信機であって、RF信号の同期のための同期信号を含むRF信号を受信するように構成された無線周波数(RF)受信機と、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサと通信するコンピュータ可読メモリと、を備え、コンピュータ可読メモリは、少なくとも1つのプロセッサに、RF受信機からサンプルのシーケンスを受信し、受信されたサンプルのシーケンスの2階微分(double differential)の規定数のランニングサム(running sum)を計算し、ランニングサムに基づいてドローンの存在を検知する、各動作を行わせるコンピュータ実行可能命令を記憶する。
【0006】
別の態様では、ドローンの存在を検知する方法が提供される。この方法は、ドローンとコントローラとの間で送信されるRF信号のサンプルのシーケンスを受信することであって、RF信号の同期のための同期信号を含むRF信号を受信することと、受信されたサンプルのシーケンスの2階微分を取得することと、受信されたサンプルのシーケンスの2階微分の規定数のランニングサムを計算することと、ランニングサムに基づいてドローンの存在を検知することとを含む。
【0007】
さらに別の態様では、実行されたときに、コンピュータ装置に、ドローンとコントローラとの間で送信されるRF信号のサンプルのシーケンスを受信し、RF信号はRF信号の同期のための同期信号を含み、受信されたサンプルのシーケンスの2階微分を取得し、受信されたサンプルのシーケンスの2階微分の規定数のランニングサムを計算し、ランニングサムに基づいてドローンの存在を検知する、各動作を行わせる命令を記憶した非一時的なコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の態様による、ドローン検知システムを含む例示的な環境を示す図である。
図2A図2Aは本開示の態様による、ドローンを検知し、監視し、及び/又は軽減するために使用され得る、図1からの例示的なドローン検知システムを示す図である。
図2B図2Bは、本開示の態様による、図2Aのドローン検知システムを用いて検知され得る、図1からのドローンの例を示す。
図2C図2Cは、本開示の態様による、ドローンを制御するために使用することができる、図1からの例示的なコントローラを示す図である。
図2D図2D図2Cのコントローラから図2Bのドローンに、又はその逆に送信され得る、図1からの一例のRF信号を示す図である。
図2E図2Eは、コントローラとドローンとの間で送信された図2DからのRF信号を傍受した結果として、図2Aからのドローン検知システムが受信する信号の一例を示す図である。
図3図3は、本開示の態様による、ドローンの存在を検知する方法を示す図である。
図4図4は、本開示の態様による、ドローンの存在を検知する方法を示す図である。
図5図5は、本開示の態様による、ドローンの存在を検知する方法を示す図である。
図6図6は、シミュレートされたSNRを、低SNR領域での下限と比較し、高SNR領域での下限とを比較するグラフである。
図7A図7Aは、時間領域ZCシーケンスの検出誤り率を示すグラフである。
図7B図7Bは、ガードサブキャリアなしの周波数領域ZCシーケンスに対する検出誤り率を示すグラフである。ZCシーケンスのルートのブラインド推定精度も15dBのSN比で1%の誤差を達成した。
図8】ガードサブキャリアを有する周波数領域におけるブラインドルート検出性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
近年、産業、商業、及び消費者領域におけるドローン用途の急速な成長は、セキュリティ、安全性、及びプライバシーに関する大きな懸念を引き起こしている。このため、ドローンの検知、監視、及び軽減のためのシステム及び技法に対する需要が増大している。
【0010】
CUASシステム(又は、単に「ドローン検知システム」)は、複数の段階を使用して動作することができる。第1段階では、ドローン検知システムは、ドローンの存在を検知し、ドローンが敵か味方かを判断する。ドローン検知システムは、ドローンとコントローラとの間で交換される信号を傍受することにより、これを達成することができる。例えば、本開示の特定の態様は、RF信号の同期のためのZadoff-Chu(ZC)シーケンスなどの同期信号を含むRF信号を使用して、コントローラと通信するドローンの存在を検知することに関連し得る。
【0011】
特定の態様では、ドローンの検知は、ドローンとドローンコントローラとの間で送信されるRF信号(RF信号はRF信号の同期のための同期信号を含む)のサンプルのシーケンスを受信することと、受信されたサンプルのシーケンスの2階微分を得ることと、受信されたサンプルのシーケンスの2階微分の規定数のランニングサムを計算することと、ランニングサムに基づいてドローンの存在を検知することとを含む。
【0012】
特定のタイプの同期信号(例えば、ZCシーケンス)について、本明細書で説明される同期信号を採用するドローンの存在を検知することによって、ドローン検知システムは、同期信号のルート(root)の情報なしに同期信号を検出することができる。本明細書で使用されるように、これらのタイプの同期信号のルートは一般に、同期信号の生成及び復号に使用される一意の値を指す。一意のルートを使用することにより、同期信号が異なるルートを使用して生成された他のRF通信信号と干渉することを防止することができる。さらに、ドローン検知システムは、あらゆる可能なルート値を使用して並列に検知を実行する技法と比較して、低複雑度で実装することができ、コスト面でも有利になる可能性がある。
【0013】
図1は、本開示の態様によるドローン検知システム101を含む例示的な環境100を示す。特定の実施形態では、環境100は、ドローン検知システム101と、1つ又は複数のドローン103A~103Nと、1つ又は複数のドローンコントローラ105A~105N(又は、単に「コントローラ」)とを含む。1つ又は複数のドローン103A~103Nの一例を図2Bに示す。1つ又は複数のコントローラ105A~105Nの一例を図2Cに示す。
【0014】
特定の実施形態では、ドローン103A~103Nの各々は、RF信号107A~107Nを介してコントローラ105A~105Nの対応する1つと通信するように構成される。図示されていないが、いくつかの実施形態では、コントローラ105A~105Nのうちの単一のコントローラが、ドローン103A~103Nのうちの2つ以上を制御するように構成されてもよい。
【0015】
ドローン検知システム101は、ドローン103A~103Nの存在を検知するために、ドローン103A~103Nとコントローラ105A~105Nとの間の通信上で傍受(eavesdrop)109A~109Nを受信するように構成される。例えば、ドローン検知システム101は、ドローン103A~103Nとコントローラ105A~105Nとの間の通信上で傍受109A~109Nするために、ドローン103A~103Nとコントローラ105A~105Nとの間で送信されるRF信号107A~107Nを受信するように構成され得る。特定の実施形態では、ドローン検知システム101がRF信号107A~107Nを復号することができると、ドローン検知システム101は、ドローン103A~103Nを監視し、ドローン103A~103Nの潜在的な脅威を軽減するために特定の動作を行うことができる。例えば、図5に関して説明されるように、ドローン検知システム101は、検知されたドローン103A~103Nとコントローラ105A~105Nとの間の通信を妨害するために、妨害RF信号を送信することができるし、及び/又は、ドローン103A~103Nに着陸又はその他の方法で環境100から離れるようにコマンドを送信することによって、コントローラ105A~105Nになりすますことができる。
【0016】
図2Aは、本開示の態様による、1つ又は複数のドローン103A~103Nの存在を検知するために使用され得る例示的なドローン検知システム101を示す。特定の実施形態では、ドローン検知システム101は、プロセッサ111と、メモリ113と、フロントエンド115と、複数の送信アンテナ117A~117Nと、複数の受信アンテナ119A~119Nとを含む。他の実施形態では、アンテナ117A~119Nのうちの1つ又は複数を、信号の送信及び受信の両方に使用することができる。
【0017】
特定の実施形態では、ドローン検知システム101は、受信アンテナ119A~119Nのうちの1つを介してRF信号(例えば、図1のRF信号107A~107N)を受信するように構成される。受信アンテナ119A~119Nのうちの1つは、受信したRF信号をフロントエンド115に供給する。特定の実施形態では、フロントエンド115は、受信したRF信号をプロセッサ111が読み取り可能なフォーマットに処理することができる。例えば、特定の実施形態では、フロントエンド115は、受信されたRF信号に対して、フィルタリング、増幅、アナログ-デジタル変換などの動作のうちの1つ又は複数を実行することができる。
【0018】
特定の実施形態では、メモリ113は、受信アンテナ119A~119Nを介して受信されたRF信号に基づいて、プロセッサ111にドローン(例えば、図1のドローン103A~103N)の存在を検知させるためのコンピュータ可読命令を記憶することができる。さらに、特定の実施形態では、ドローン検知システム101は、検知されたドローン(複数可)に送信される信号(例えば、妨害信号又はRF通信信号)をフロントエンド115に供給するように構成することもできる。次に、フロントエンド115は、処理された信号を送信アンテナ117A~117Nのうちの1つ又は複数に供給する前に、プロセッサ111から受信した信号を処理することができる。
【0019】
ドローン検知システム101がドローン103A~103Nの存在を検知するために使用することができる多くの異なる技術がある。例えば、ドローン検知システム101は、ドローン103A~103Nの特定のモデル(複数可)によって使用されることが知られている周波数の電波を走査することができる。既知のプロトコルが識別された場合、ドローン検知システム101は、次に、意図された受信機/コントローラ105A~105Nであるかのように信号を復号することができる。実施形態によっては、これらの復号ステップは、同期、チャンネル推定、デインタリーブ、デスクランブル、復調、及びエラー制御復号を含むことができる。特定の実施形態では、ドローン検知システム101は、コントローラ105A~105Nによって知られている情報に関する知識(装置IDなど)の欠如のために、前述のステップのいくつかをブラインドで実行するように構成することができる。以下に説明するように、特定の通信プロトコル(例えば、同期信号)を使用するドローン103A~103Nのブラインド検知が、本明細書で提供される。ドローンが検知されると、ドローン検知システム101は、1つ又は複数のドローン103A~103Nの存在に関する警告(複数可)を提供することができる。
【0020】
ドローン検知システム101は、1つ又は複数のドローン103A~103Nの存在を監視することができる。監視の一部として、環境100に対する1つ又は複数のドローン103A~103Nの位置をリアルタイムで監視して、1つ又は複数のドローン103A~103Nの位置が許容空域の内側又は外側にはみ出すかどうかを判断することができる。
【0021】
また、ドローン検知システム101によって取ることができる多数の軽減措置がある。例えば、1つ又は複数のドローン103A~103Nを検知した後、ドローン検知システム101は、図5を参照して説明した動作のうちの1つ又は複数を行うことができる。例えば、特定の実施形態では、これらの動作は、何もしない/監視し続けること、ドローン特有の妨害(drone-specific jamming)、広帯域妨害、及び制御の乗っ取りを含むことができる。
【0022】
図2Bは、本開示の態様による、ドローン検知システム101を用いて検知することができる例示的なドローン103を示す。特定の実施形態では、ドローン103は、1つ又は複数のプロペラ121、1つ又は複数のモータコントローラ123、バッテリ又は他の電源125、メモリ127、プロセッサ129、フロントエンド131、アンテナ133、及びカメラ135を含む。上述したように、アンテナ133は、コントローラ105(図2C参照)からRF信号107を受信し、RF信号107をコントローラ105に戻すように構成されてもよい(例えば、カメラ135から得られた画像)。特定の実施形態では、アンテナ133から送信/受信されたRF信号107はプロセッサ129に/プロセッサ129から供給され、フロントエンド131によって処理される。特定の実施形態では、プロペラ(複数可)121は、ドローン103が空域を操縦するときに、ドローン103に揚力と提供し、ドローン103の動きを制御する。プロペラ(複数可)121はまた、各プロペラ121に個別に動力を供給するように構成された1つ又は複数のモータ(図示せず)を含むことができる。
【0023】
特定の実施形態では、モータコントローラ(複数可)123は、(例えば、メモリ127に格納された命令と、コントローラ105から受信されたRF信号107とに基づいて)プロセッサ129からドローン103を空域内の特定の地点に移動させる命令を受信し、受信した命令をプロペラ121に提供されるモータ位置コマンドに変換するように構成されている。特定の実施形態では、バッテリ125は、ドローン103の構成要素のそれぞれに電力を供給し、プロペラ121がドローン103を所定時間操縦することを可能にするのに十分な蓄電量を有している。カメラ135は、リアルタイムで画像を捕捉し、捕捉された画像を、アンテナ133を介してコントローラ105に提供することができ、これはユーザがドローン103の動きを制御するのを補助することができる。
【0024】
図2Cは、本開示の態様に従ってドローン103を制御するために使用され得る例示的なコントローラ105を示す。特定の実施形態では、コントローラ105は、メモリ141、プロセッサ143、フロントエンド145、アンテナ147、入力装置149、及びディスプレイ151を備える。上述したように、アンテナ147は、ドローン103(図2B参照)からRF信号107(例えば、カメラ135から得られた画像)を受信し、ドローン103の動きを制御するために、RF信号107をドローン103に戻すように構成されてもよい。特定の実施形態では、アンテナ147から送信/受信されたRF信号107は、プロセッサ143へ/プロセッサ143から供給され、フロントエンド145によって処理される。特定の実施形態では、入力装置149は、ユーザからの入力を受け付けるように構成される。ユーザからの入力は、ドローン103の動きを制御するコマンドを生成するためにプロセッサ143によって使用され得る。特定の実施形態では、ディスプレイ151は、ドローン103から受信した画像をユーザに表示して、ドローン103の現在位置及びその環境に関するフィードバックを提供するように構成される。いくつかの実施形態では、ディスプレイは、カメラ135によって取得された画像の一人称視点(first person view)を提供するために、ユーザによって着用される一対のゴーグルとして実装され得る。
【0025】
図2Dはコントローラ105からドローン103に、又はその逆に送信することができる例示的なRF信号107を示す。図2Dを参照して、特定の実施形態では、RF信号107は、RF信号107の一部として定期的に送信される(例えば、一定の間隔でRF信号に挿入される)ZCシーケンスを含む。特定の実施形態では、RF信号107は、コントローラ105とドローン103との間でデータを提供するために使用される複数のデータパケット202~206をさらに含む(例えば、ドローンを動かすためのコマンド及びカメラ135によって取得された画像を含む)。前述のように、ドローン103とコントローラ105との間のRF信号107の送信を同期させるために使用されるZCシーケンス201は、ドローン検知システム101にとっては未知のZCルートを使用して生成される。
【0026】
図2Eは、コントローラ105とドローン103との間で送信されるRF信号を傍受した結果として、ドローン検知システム101が受信する信号109の一例を示す。図2Eを参照すると、特定の実施形態では、信号109は、RF信号107の複数のサンプル211~215を含む。ドローン検知システム101は、ZCシーケンス201を生成するために使用されるZCルートを知らないので、サンプル211~215のセット内のZCシーケンスの位置はドローン検知システム101には分からない。本開示の態様は、信号109を使用してドローン103の存在を検知すると共に、ZCルートの値を推定するためにドローン検知システム101によって使用することができる技法に関する。
【0027】
同期信号を用いたドローンの検知
図1を参照すると、今日の市場にあるドローン103A~103Nの多くは、高解像度ビデオ映像を送信し、それらのコントローラ105A~105N及びゴーグルと通信するために、直交周波数分割多重(OFDM:orthogonal frequency division multiplexing)変調を採用している。図1を参照すると、OFDMを採用している一部のドローン103A~103Nは、ドローン103A~103Nとコントローラ105A~105Nとの間で送信されるRF信号を同期させるために使用される同期信号を使用して、コントローラ105A~105Nと通信することができる。
【0028】
RF同期に使用することができる同期信号の一例は、Zadoff-Chu(ZC)シーケンスである。例えば、同期のために使用されるZCシーケンスは、非ゼロオフセットのためのゼロ自己相関、及び異なるルートを有する2つのZCシーケンス間の低い相互相関など、特定の望ましい特性を有することができる。ドローン103A~103Nは、通常、同じ空域を占有するときに干渉を回避するために異なるZCシーケンスを使用するので、ZCシーケンスはドローン103A~103Nの存在を検知するための一意の特徴として使用することができる。しかしながら、これらのシステムで使用されるZCシーケンスは、ドローンシステムにしか知られていない。特に、ZCシーケンスは、一意のZC「ルート」値を使用して生成され得る。可能なZCルート値は数百から数千ある可能性があり、したがって、ドローン103A~103Nによって使用されるZCシーケンスをリアルタイムでブラインド検出する(例えば、使用されているZCルート値の知識なしに検出する)ことは困難である可能性がある。
【0029】
本開示の態様は、コントローラ105A~105NとのRF通信を同期させるために同期信号を使用するドローン103A~103Nの検知に関するものである。以下の説明では、ZCシーケンスが同期信号として使用される実施形態を提供するが、当業者は本明細書で説明されるシステム及び技法が、他のタイプの同期信号を使用するドローン103A~103Nの存在を検知するためにも使用され得ることを認識するであろう。
【0030】
同期のためにZCシーケンスを使用するドローン(複数可)103A~103Nを検知するために、ドローン103A~103Nの存在は、ドローン検知システム101で受信されたRF信号中のこれらのZCシーケンスの存在を検出することによって検知され得る。ZCシーケンスは一般に、LTEシステムなどの通信プロトコルで使用されている。ZCシーケンスを検出するためのある技術は、典型的には非常に限られた数の未知のZCを探索するために相関器のバンクを使用する。これはLTE受信機がブラインド検索する必要があるZCシーケンスのセットが非常に限られているためであり、これはLTE規格の設計によって意図されたものである。例えば、所与のセルにおいて、通常、主同期信号(PSS:Primary Synchronization Signal)探索用の最大3つのZCシーケンスと、物理ランダムアクセスチャンネル(PRACH:Physical Random Access Channel)のための64のZCシーケンスとが存在する。これらの従来の技法は、膨大なコストを招くことなく、ドローン103A~103Nの検知及び監視を行うシステムのためのブラインドZC検出に適用することができない。なぜなら、ドローン103A~103Nとの通信でZCシーケンスに使用される多数の可能なルートについて並列に検出を実行すると、あまりにも多くの並列探索が必要になるからである。
【0031】
所与の領域内で動作可能なドローン103A~103Nの数は、最大3つに制限されている。このため、より多くの個数のZCルートが、ドローン103A~103Nとコントローラ105A~105Nとの固有の対の各々が、ZCシーケンスを生成する際に異なるZCルートを使用することを保証するために使用される。同じZCルートの使用を回避するために、RFドローン通信を同期させるZCシーケンスを生成するために使用される可能なルートの数は、数百、数千、又はそれ以上であってもよい。したがって、可能なZCルートのそれぞれを使用してZCシーケンスの検出を試みるために、潜在的に何千もの並列検索を実行する必要があり、それは、このようなシステムを構築することに伴うコストのために実用的ではない。したがって、ドローンによって使用される可能性のある何千もの未知のZCシーケンスをリアルタイムでブラインド検出することは、大きな課題である。
【0032】
本開示の態様は、低複雑度で、費用対効果の高いブラインドZC検出のためのシステム及び方法に関するものである。本明細書に記載されるZCシーケンスを検出するために使用される技術の少なくとも一部は、低コストのドローン検知及び監視システムのための2階微分に基づくものである。詳細には、本開示の態様は、OFDMベースのドローンシステムで使用される多数の未知のZCシーケンスをリアルタイムで検出することができる、2階微分に基づく低複雑度なブラインドZC検出システム及び方法に関するものである。本開示の特定の実施形態は、時間領域、ガードバンドなしの周波数領域、及びガードバンドありの周波数領域で展開されるZCシーケンスのブラインドZC検出に適用され得る。
【0033】
OFDMベースの同期信号通信のモデル
ZCシーケンスの検出に使用されるシステム及び技法を説明するために、まず、ドローン103A~103Nとコントローラ105A~105Nとの間の通信の同期に使用されるZCシーケンスのモデルが提供されよう。N個のサブキャリアとL個のサンプルの巡回プレフィックス(CP:cyclic prefix)を有するOFDMベースのドローンシステムについて考察する。Lは、シンボル間干渉を除去するための最大のマルチパス遅延スプレッドよりも大きい。同期を容易にするために、時間領域又は周波数領域のZCシーケンスが、ドローン103A~103N及びコントローラ105A~105Nによって定期的に送信される。ルートuを有する長さPのZCシーケンスは、下記式で定義される。
【0034】
【数1】
【0035】
ここで、P(P≦N)は奇数素数であり、u(1≦u<P)はシーケンスのルートである。時間領域ZCシーケンスの場合、CPを含む時間領域OFDMサンプルs[n](n=0、1、・・・、L+N-1)は、下記式で与えられる。
【0036】
【数2】
【0037】
周波数領域ZCシーケンスの場合、チャンネル帯域幅の中心にマッピングされたZCシーケンスを有する周波数領域OFDMサンプルS[k](k=-[N/2]、・・・、N-[N/2])は、下記式で与えられる。
【0038】
【数3】
【0039】
なお、上記式は、P=Nの特別な場合を含むことに留意されたい。時間領域サンプルは、単にS[k]の逆離散フーリエ変換(IDFT:Inverse Discrete Fourier Transform)である。f s とΔf をそれぞれサンプリング周波数と周波数オフセットとする。受信シーケンスy[n]は、下記式で表される。
【0040】
【数4】
【0041】
ここで、

であり、hはチャンネルゲインである。また、wはパワー制約(power constraint)であるE{|w|}=σを有する加法的白色ガウス雑音(AWGN:additive white Gaussian noise)である。ZCシーケンスをモデル化する目的で、チャンネルは、周波数フラットなブロックフェージングを経験すると仮定する。周波数フラットなブロックフェージングの下では、単一フェージング係数が全帯域幅に適用され、OFDMシンボルに対して一定に保持される。また、ZCシーケンス長Pは既知であり、リバースエンジニアリングによって得ることができると仮定する。
【0042】
同期シーケンスを検出する技術の概要
図3は、本開示の態様による、ドローン103A~103Nの存在を検知するための方法300を示す。具体的には、方法300は、ドローン103A~103Nの存在を検知するために、ドローン103A~103Nとコントローラ105A~105Nとの間の通信を同期させる際に使用される同期シーケンスを検出することを含む。
【0043】
方法300はブロック301から開始する。ブロック302において、方法300は、ドローン103A~103Nとコントローラ105A~105Nとの間で送信されるRF信号107A~107Nのサンプルのシーケンスを受信することを含む。RF信号107A~107Nは、ドローン103A~103Nとコントローラ105A~105Nとの間のRF信号の同期のための同期信号を含む。いくつかの実装形態では、同期信号がZCシーケンスである。
【0044】
ブロック304において、方法300は、受信したサンプルのシーケンスの2階微分を得ることを含む。ブロック306において、方法300は、受信したサンプルのシーケンスの2階微分の規定数のランニングサムを計算することを含む。最後に、ブロック308において、方法300は、ランニングサムに基づいてドローンの存在を検知することを含む。方法300はブロック310で終了する。
【0045】
ステップ302~308のそれぞれに含まれる特定の動作は、ドローン103A~103Nとコントローラ105A~105Nとの間の通信プロトコルの特定の実装形態に応じて変わり得る。例えば、これらのステップは、ZCシーケンスが時間領域で送信されるか、又は周波数領域で送信されるかに応じて変化し得る。さらに、これらのステップは、ZCシーケンスが周波数領域で送信される場合に、ガードバンドが使用されるかどうかに基づいてさらに変化し得る。これらのブロック302~308がどのように実装され得るかに関するさらなる詳細は、本明細書で提供される。
【0046】
未知のルートを有する時間領域シーケンス
いくつかの実装形態では、ドローン103A~103Nは、時間領域でZCシーケンスを提供することによって、コントローラ105A~105Nと通信することができる。このセクションでは、時間領域において未知のルートを有するZCシーケンスを検出(例えば、ブラインド検出)するために使用される技術についての説明を提供する。
【0047】
Pは奇数の素数であるので、P-1個の可能なルートとそれに対応するZCシーケンスとが存在する。ドローンシステムにおけるPの典型的な値は、数百から数千の範囲であり得る。しかしながら、本開示の態様は、Pの値が数百から数千の範囲よりも小さいか又は大きいZCシーケンスを検出するために使用され得る。上記範囲内であるPの値については、網羅的な探索(例えば、全ての可能なルート値にわたる探索)を実行するために必要とされる大きな相関器バンクの複雑度は、一般に、リアルタイムで実行するには高過ぎる。この課題に対処するために、ドローン検知システム101は、ZCルートをブラインドで推定するために、低複雑度の2階微分法を実行するように構成され得る。
【0048】
シーケンスs[n]の1階微分(single differential)と2階微分(double differential)は、それぞれ下記式で定義される。
【0049】
【数5】
【0050】
ここで、上付き文字d及びddは、それぞれ1階微分と2階微分の演算子であり、Hは、エルミート演算を表す。(5)と(6)とを使うと、ZCシーケンスx[n]の1階微分と2階微分とは、それぞれ下記式のように導き出すことができる。
【0051】
【数6】
【0052】
式(4)の両辺について1階微分と2階微分を取ると、下記式が得られる。
【0053】
【数7】
【0054】
ここで、実効ノイズ項である

及び

は下記式で表される。
【0055】
【数8】
【0056】
これらの方程式の1つの結果は、(8)におけるキャリア周波数オフセット(CFO:carrier frequency offset)項であるexp(jΔθ)が(9)から消え、(11)におけるノイズ項の分布に影響を与えないということである。
【0057】
受信信号における(例えば、ブロック302で受信されたサンプルのシーケンスにおける)ZCシーケンスを検出するために、ドローン検知システム101は、yddの最後のP-2時間領域の微分サンプル(ブロック304で計算された)の方法300のブロック306で正規化されたランニングサムを、次のように計算することができる。
【0058】
【数9】
【0059】
ドローン検知システム101は、る|γtd[n]|が予め定めた閾値を超えたことに応答して、ドローン103A~103Nの存在を検知することができる。OFDMシンボルの境界推定値は、

である。ZCルート推定値

は、下記式で表される。
【0060】
【数10】
【0061】
ここで、

は、[0;2π]におけるγの角度を返す。ここで、メトリックに対するエルミート演算は、角度を正に保つように機能する。同期が不完全であり、nがCP領域内に着地する場合、ZCシーケンスの周期的特性のために、N=Pの特別な場合についても解析は同じである。N≠Pである場合、(13)は、性能劣化が少なく、依然として有効である。
【0062】
(13)の推定誤差確率を数学的に解析することは自明ではない。しかしながら、以下では、一般に推定性能を示す高SNR領域と低SNR領域とにおける実効SNRの下限を決定する手法を説明する。具体的には、(10)式と(11)式のべき乗限界(power bounds)を求め、次いで実効SNRを求めると次のようになる。
【0063】
【数11】
【0064】
ここで、

であり、O(.)はビッグOの表記である。(14)は三角不等式を使用する。(15)は同一かつ独立に複素白色ガウス分布w[n-1]及びw[n]のために、

を使用する。ここでαは任意の実数定数であり、

は分布が同一であることを意味する。(16)はコーシー=シュワルツの不等式と、カイ二乗分布の結果であるE|w[n]|=2σを使用して、σと|h|σの両方の係数を計算する。(17)は三角不等式を利用している。(18)は複素数に対して(15)、(16)、及びLpノルム不等式

を使用する。また、(19)は(7)から導出することができる。(20)は(18)及び(19)を用いて得ることができる。最後に、高SNR領域及び低SNR領域における実効SNRの下限を、以下のように求めることができる。
【0065】
【数12】
【0066】
なお、高いSNRでは、(21)はネイティブSNRに対して直線的に成長することに留意されたい。低いSNRでは、(22)は2階微分を用いることから予想されるように、ネイティブSNRの4乗で劣化する。
【0067】
ガードバンドのない周波数領域同期シーケンス
いくつかの実装形態では、ドローン103A~103Nがガードバンドを使用せずに周波数領域でZCシーケンスを提供することによって、コントローラ105A~105Nと通信することができる。このセクションは、特定の実施形態においてガードバンドを使用せずに周波数領域において未知のルートを有するZCシーケンスを検出(例えば、ブラインド検出)するために使用される技術の説明を提供する。
【0068】
この実装では、OFDMシンボルは、N=P個のサブキャリアを含み、サブキャリアは上記(3)のように割り当てられる。この実装は、「未知のルートをもつ時間領域シーケンス」と題されたセクションで説明した実装の変形例である。
【0069】
DFT形式及びIDFT形式の両方の形態におけるZCシーケンスのフーリエ二重特性(Fourier Dual property)は、特性1に記載されている。特性1:(1)のP点DFT及びIDFTは、下記式で表される。
【0070】
【数13】
【0071】
ここで、逆ルート(inverse root)u-1は、uu-1=1modPを満たす。
【0072】
いくつかの操作の後、(24)の1階微分と2階微分は、下記式のように求めることができる。
【0073】
【数14】
【0074】
ここで、(25)はuu-1=1modPを使用した。
【0075】
同期及びブラインドZCルート検出のために、ドローン検知システム101は、ブロック304において、ydd[n]の正規化されたランニングサムを、以下のように計算することができる。
【0076】
【数15】
【0077】
ドローン検知システム101は、|γfd1[n]|が予め定めた閾値を超えたことに応答して、ドローン103A~103Nの存在を検知することができる。シンボル境界の推定値は、

である。ドローン検知システム101は、下記式のようにZCルートを推定することができる。
【0078】
【数16】
【0079】




を解くことによって求めることができる。SNR限界は、信号及びノイズのべき乗項(power terms)が同じであるため、「未知のルートを有する時間領域シーケンス」と題されたセクションの(21)及び(22)と同じである。
【0080】
ガードバンドを用いた周波数領域同期シーケンス
スペクトルマスクを満たすために、現代のOFDMシステムは、通常、エッジのサブキャリにデータを割り当てない。したがって、いくつかの実装形態では、ドローン103A~103Nは、ガードバンドを使用して周波数領域でZCシーケンスを提供することによって、コントローラ105A~105Nと通信することができる。このセクションは、ガードバンドを用いた周波数領域において未知のルートを有するZCシーケンスを検出(例えば、ブラインド検出)するために使用される技術の説明を提供する。
【0081】
この実装形態では、OFDMシンボルは、N>P個のサブキャリアを含む。ZCシーケンスは、(3)のようにガードバンドを用いてサブキャリア上で変調される。残念ながら、この場合、特性1はもはや成立しない。この特性がなければ、時間領域において未知のルートを有するZCシーケンスを検出するための閉じた式(closed-form expression)の導出は非常に困難である。
【0082】
粗いタイミング取得が行われたと仮定すると、ドローン検知システム101は、未知のZCシーケンスのルートをブラインドで特定することができる場合がある。これは、ドローン103A~103Nとコントローラ105A~105Nとの間のRF信号伝送の他の部分に別の同期機構がある場合に実現可能である。ドローン103A~103Nを検知する方法は、推定されたOFDMシンボルがCP領域内で開始され、従って時間領域サンプル

が意図した送信の巡回シフトされたノイズの多いバージョンを表すという仮定に基づいて機能し得る。
【0083】
Δを未知のタイミングオフセットとすると、周波数領域で位相ランピング(ramping)が生じることになる。ドローン検知システム101は、

のN点DFTをとることができる。

の場合は(1)を使用する
【0084】
【数17】
【0085】
ここで、W[k]は、パワーE|W[k]|=σによるAWGNノイズである。「未知のルートを有する時間領域シーケンス」と題するセクションにおける導出に続いて、(7)を使用して、ドローン検知システム101は、以下のようにY[k]、Ydd[k]、メトリックγfd2[k]、及びルート推定値

を求めることができる。
【0086】
【数18】
【0087】
特定の実施形態におけるメトリックγfd2[k]は、ガードバンドを用いたZCシーケンスを検出する場合は、正規化される必要はない。なぜなら、結果として得られるメトリックの角度を決定すればよいからである。したがって、ドローン検知システム101は、メトリックγfd2[k]が予め定めた閾値を超えたことに応答して、ドローン103A~103Nの存在を検知することができる。本実施形態では、周波数領域を除いて同じ動作が実行されるので、SNR特性は、「未知のルートを有する時間領域シーケンス」と題されたセクションのものと同じであってもよい。但し、時間領域微分アプローチとは異なり、特定の周波数領域アプローチは、CFOに対してロバストではない場合がある。
【0088】
ドローン(複数可)の監視方法の例
ドローン103が、例えば、上記メトリクスの1つを使用して検知されると、ドローン検知システム101は、ドローン103に対して潜在的に軽減措置を講じる前に、一定期間ドローン103を監視することができる。図4は、ドローン103のうちの1つ又は複数を監視するためにドローン検知システム101によって実行され得る例示的な方法400である。
【0089】
方法400はブロック401から開始する。いくつかの実装形態では、方法400は、図3の方法300に基づいてドローン103を検知することに応答して実行され得る。ブロック402において、方法400は、ドローン103とコントローラ105との間で送信されるRF信号107を復号することを含む。RF信号107がZCシーケンスを含む場合、RF信号107の復号は、本開示の態様に従って決定されたZCルートを使用して実行されてもよい。
【0090】
ブロック404において、方法400は、復号されたRF信号107からドローン103に関連するデータを記憶することを含む。例えば、データはドローン103によって実行される任意のアクティビティ(例えば、飛行データ)、ドローン103が敵か味方かを示すことができるドローンの挙動、一意のドローン識別子などを含むことができる。ブロック406において、方法400は、ドローン103に対して軽減措置を実行すべきかどうかを判断することを含む。軽減措置が正当化される(warranted)と判断したことに応答して、方法400はブロック406で終了することができ、そこで軽減措置500を実行することができる。軽減措置が正当化されないと判断したことに応答して、方法400はブロック402に戻る。
【0091】
ドローン(複数可)を軽減するための例示的な方法
ドローン103の軽減が適切であると判定した後、特定の実施形態では、ドローン検知システム101は、本開示の態様に従って、いくつかの異なる軽減措置のうちの1つ又は複数を実行する。図5は、ドローン103の1つ又は複数を軽減するためにドローン検知システム101によって実行することができる例示的な方法500である。
【0092】
方法500はブロック501から開始する。特定の実装形態では、方法500は、図4のブロック406において軽減措置が正当化されると判断したことに応答して実行され得る。ブロック502において、方法500は、実行する軽減手法を選択することを含む。次に、方法500は、ブロック502で選択された軽減手法に基づいて、ブロック504~510のうちの1つに続くことを含む。
【0093】
ブロック504において、方法500は、ドローン103を監視し続けることを含み、これは、方法400のブロック402に戻ることを含むことができる。例えば、ドローン103が友好的であると判断された場合、及び/又はドローン検知システム101がより積極的な措置を取る法的権限を有していない場合、ドローン検知システム101は、ドローン103の存在をユーザに警告しながらドローン103の監視を継続することのみを許可されてもよい。
【0094】
ブロック506において、方法500は、ドローン特有の妨害を実行することを含む。例えば、ドローン検知システム101が、ドローン103及びコントローラ105によって使用されるZCルートを解読した場合、ドローン検知システム101は、環境100内の他のドローン103の動作に影響を与えることなく、ZCルートを使用して対象のドローン103の動きに影響を与えるために、RF信号107を妨害できる場合がある。
【0095】
ブロック508において、方法500は、ドローン検知システム101が、広帯域妨害を実行することを含む。特定の実施形態では、ドローン検知システム101がドローン特有の妨害を実行するためにRF信号107によって使用される通信プロトコルに関する十分な情報を有しておらず、かつ広帯域妨害が環境100内の他の友好的なドローン103に影響を及ぼさない場合には、広帯域妨害が適切であり得る。
【0096】
ブロック510において、方法は、ドローン検知システム101が、ドローン103の制御を乗っ取ることを含む。例えば、特定の実施形態では、本開示の態様に従って検出されたZCルートを使用して、ドローン検知システム101は、ドローン103に特定の操縦、例えばドローン103を安全な領域に着陸させることを実行させるために、ドローン103にコマンドを送信することができる。方法500はブロック512で終了する。
【0097】
シミュレーション
以下の説明は、ドローン103A~103Nを検知するための上記技術の検証を提供する。30,000回の反復のモンテカルロシミュレーションを用いて結果を検証した。最初に、高SNR領域及び低SNR領域について導出したSNR下限値の検証を示す。図6は、シミュレートされたSNR(20)を、低SNR領域(22)の下限値及び高SNR領域(21)の下限値と比較するグラフである。低SNR領域では、(22)はシミュレートされたSNRと密接に一致する。高SNR領域では、(21)はシミュレートされたSNRから一定のギャップを有する。上述したように、このギャップは、幾つかの近似の緩さによるものである。次に、P=1021、N=1024、L=80で、任意のZC ルートが100である、時間領域で展開されたZCシーケンスが検討される。Pは素数であるため、P-1=1020個の可能なZCルートがある。CFOがない場合と、サブキャリア間隔の5%をCFOとした場合のシミュレーションについて以下で説明する。
【0098】
図7Aは、時間領域ZCシーケンスの検出誤り率を示すグラフである。推定されたルートが100の真のルートと同じでない場合、検出誤りイベントが発生する。図7Aから分かるように、ZCシーケンスルートのブラインド推定精度は、15dBのSNRで1%の誤り確率を達成する。したがって、中程度から高いSNR領域では、本明細書で説明される方法は、時間領域ZCシーケンスに対する同期と、ZCシーケンスルートのブラインド推定の両方において有効である。また、CFOは、検出性能に影響を及ぼさないことに留意されたい。
【0099】
図7Bは、ガードサブキャリアなしの周波数領域ZCシーケンスに対する検出誤り率を示すグラフである。ZCシーケンスルートのブラインド推定精度は、15dBのSNRで1%の誤り確率を達成する。これは、「ガードバンドなしの周波数領域同期シーケンス」と題するセクションで分析したように、時間領域バージョンと同様である。この場合、CFOも検出性能に影響を及ぼさない。
【0100】
最後に、図8は、ガードサブキャリアを有する周波数領域におけるブラインドルート検出性能を示すグラフである。20サンプルによる完全なシンボルタイミング及びずれたシンボルタイミングの両方がプロットされている。なお、タイミングオフセットは、検出性能に影響を与えない。しかしながら、予想されるように、サブキャリア間隔の5%のCFOサイズは、検出性能を実質的に低下させる。
【0101】
実装システムと用語
本明細書で開示される実装形態は、ドローンの存在を検知するためのシステム、方法、及び装置を提供する。本明細書で使用される用語「結合する(couple)」、「結合(coupling)」、「結合された(coupled)」、又は単語「結合する(couple)」の他の変形は、間接接続又は直接接続のいずれかを示し得ることに留意されたい。例えば、第1の構成要素が第2の構成要素に「結合」される場合、第1の構成要素は、別の構成要素を介して第2の構成要素に間接的に接続されるか、又は第2の構成要素に直接接続され得る。
【0102】
本明細書で説明するドローン検知機能は、プロセッサ読み取り可能な媒体又はコンピュータ読み取り可能な媒体に1つ又は複数の命令として記憶することができる。「コンピュータ可読媒体」という用語は、コンピュータ又はプロセッサによってアクセス可能な任意の利用可能な媒体を意味する。限定ではなく例として、このような媒体はRAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、CD-ROM又は他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶装置、或いは、所望のプログラムコードを命令又はデータ構造の形成で記憶するために使用することができ、コンピュータによってアクセスすることができる他の任意の媒体を含むことができる。コンピュータ可読媒体は、有形かつ非一時的であってもよいことに留意されたい。本明細書で使用される場合、「コード」という用語は、コンピューティング装置又はプロセッサによって実行可能であるソフトウェア、命令、コード又はデータを指す場合がある。
【0103】
本明細書で開示される方法は、説明される方法を実現するための1つ又は複数のステップ又は動作を備えている。方法のステップ及び/又は動作は、特許請求の範囲から逸脱することなく、互いに入れ替え可能である。換言すれば、説明されている方法の適切な動作のためにステップ又は動作の特定の順序が必要とされない限り、特定のステップ及び/又は動作の順序及び/又は使用は、特許請求の範囲から逸脱することなく変更され得る。
【0104】
本明細書で使用される場合、用語「複数(plurality)」は2つ以上を示す。例えば、複数の構成要素は、2つ以上の構成要素を示す。用語「判断(determining)」は多種多様な動作を包含し、したがって、「判断」は、計算(calculating)、計算(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、ルックアップすること(例えば、表、データベース、又は別のデータ構造をルックアップすること)、確認(ascertaining)などを含むことができる。また、「判断」は受信(例えば、情報の受信)、アクセス(例えば、メモリ内のデータへのアクセス)等を含むことができる。また、「判断」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選択(choosing)、確立(establishing)などを含むことができる。
【0105】
「に基づく(based on)」という用語は、別段の明示の規定がない限り、「にのみに基づく」という意味ではない。換言すれば、「に基づく」という語句は、「にのみ基づく」及び「少なくとも~に基づく」の両方を記述している。
【0106】
開示された実施形態の以上の説明は、当業者が本発明を製造又は使用することを可能にするために提供されたものである。これらの実装に対する様々な修正は当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の実装に適用され得る。例えば、当業者であれば、工具部品の締結、装着、結合、又は係合の同等の方法、特定の作動動作を生成するための同等の機構、及び電気エネルギーを供給するための同等の機構など、多数の対応する代替的で同等の構造詳細を採用することができることが理解されよう。したがって、本発明は、本明細書に示された実装形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示された原理及び新規な特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8