(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン系化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20250203BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20250203BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20250203BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20250203BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250203BHJP
【FI】
C07D471/04 104Z
C07D471/04 CSP
A61K31/444
A61K31/497
A61K31/506
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2023519054
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 CN2021120385
(87)【国際公開番号】W WO2022063241
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】202011023186.4
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011253763.9
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522194474
【氏名又は名称】成都嘉葆薬銀医薬科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウェンユアン
(72)【発明者】
【氏名】魏霞蔚
(72)【発明者】
【氏名】楊純道
(72)【発明者】
【氏名】徐光海
(72)【発明者】
【氏名】姜寧
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シューフイ
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/134662(WO,A1)
【文献】特表2013-525363(JP,A)
【文献】特表2013-510166(JP,A)
【文献】特表2018-524381(JP,A)
【文献】国際公開第2018/233526(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式
(I-1),(I-2),(P-1),(P-2)及び(P-3)からなる群から選ばれるいずれか1つで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、
【化1】
そのうち、
R
1は、-C(=O)-NH-C
1-3アルキル基から選ばれ、前記-C(=O)-NH-C
1-3アルキル基は、任意選択的に1、2又は3個のR
aで置換され、
R
2は、C
1-3アルキル基から選ばれ、前記C
1-3アルキル基は、任意選択的に1、2又は3個のR
bで置換され、
R
3は、H、C
1-3アルキル基及びC
3-5シクロアルキル基から選ばれ、前記C
1-3アルキル基とC
3-5シクロアルキル基は、任意選択的に1、2又は3個のR
cで置換され
、
L
1は-N(R
d)-から選ばれ、
L
2は、単結合、-O-、-N(R
d)-C(=O)-及び-N(R
d)-C(R
e)(R
f)-から選ばれ、
R
a、R
b及びR
cは、それぞれ独立的にF、Cl、Br、I及びCH
3から選ばれ、
R
d、R
e及びR
fは、それぞれ独立的にHとCH
3から選ばれる、
式
(I-1),(I-2),(P-1),(P-2)及び(P-3)からなる群から選ばれるいずれか1つで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
R
1は、-C(=O)-NH-CH
3から選ばれ、前記-C(=O)-NH-CH
3は、任意選択的に1、2又は3個のR
aで置換される、
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
R
1は、-C(=O)-NH-CH
3から選ばれる、
請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
R
2は
、CH
3から選ばれ、前記CH
3は任意選択的に1、2又は3個のR
bで置換される、
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
R
2は
、CH
3、CH
2F、CHF
2及びCF
3から選ばれる、
請求項4に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
R
3は、H、CH
3、CH(CH
3)
2及びシクロプロピル基から選ばれ、前記CH
3、CH(CH
3)
2及びシクロプロピル基は、任意選択的に1、2又は3個のR
cで置換される、
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
R
3は、H、CH
3、CF
3、CH(CH
3)
2及びシクロプロピル基から選ばれる、
請求項6に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
L
1は、-NH-と-N(CH
3)-から選ばれる、
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
L
2は、単結合、-O-、-NH-C(=O)-、-NH-CH
2-及び-N(CH
3)-CH
2-から選ばれる、
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
構造単位
【化2】
は、
【化3】
から
各々独立して選ばれる、
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
下記の式で示される化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化4】
。
【請求項12】
請求項1~
11の何れか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の、腱鞘巨細胞腫を治療する薬剤の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
優先権の主張
CN202011023186.4、出願日:2020年09月25日、
CN202011253763.9、出願日:2020年11月11日。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、一系列の1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン系化合物及びその使用に関し、具体的に、式(P)で示される化合物及びその薬学的に許容される塩に関する。
【0003】
〔背景技術〕
コロニー刺激因子1(colony stimulating factor 1、CSF-1で、macrophage colony stimulating factor、M-CSFとも呼ばれる)は、骨髄性前駆細胞、単球、マクロファージ、及びマクロファージから分化された破骨細胞と樹状細胞などの成長を制御する重要な成長因子であり、その生物学的効果を果たせるために、その唯一の細胞表面受容体CSF-1Rと結合しなければならない。CSF-1Rはプロトオンコジーンc-FMSによりコードされるので、c-FMSとも呼ばれ、受容体型チロシンキナーゼの1つであり、CSF-1とCSF-1Rとの細胞外区域での結合は、CSF-1Rの二量化を誘導し、更に細胞内のCSF-1Rキナーゼ区域自身のリン酸化を引き起こし、リン酸化が発生されると、CSF-1Rは、複数種の細胞質シグナル分子のドッキング部位として機能し、最終的に一系列のシグナルカスケード反応を誘発することになる。例えば、CSF-1Rの697番目のチロシン残基のリン酸化作用は、MAPKシグナル伝達経路を活性化することができるが、その721番目のチロシン残基のリン酸化作用は、PI3KとPLCγシグナル伝達経路などを起動することができる。
【0004】
コロニー刺激因子-1受容体(CSF-1R)は、腫瘍微小環境における腫瘍関連マクロファージを調節する肝心な標的である。多くの腫瘍細胞は、成長中にCSF-1のような成長因子を分泌することができ、後者は更に、マクロファージ(腫瘍関連マクロファージ、tumor-associated macrophage、TAM)を腫瘍区域に動員することができ、マクロファージも腫瘍細胞と同じようにCSF-1を分泌することができ、それらの加入により腫瘍の複雑な微小環境の形成が促進され、このような微小環境は、腫瘍細胞に自己免疫機能に対する免疫耐性を発生させ、更に腫瘍細胞の体内での増殖、侵入と転移を促進することができる。CSF-1/CSF1R経路の遮断は、マクロファージの腫瘍部位での浸潤を顕著に低下させると共に、原発性腫瘍の増殖を遅延させ、腫瘍の転移を低減することができることが確認されている。従って、CSF-1/CSF1Rシグナル伝達の阻害によるマクロファージの生存/活性化の阻害は、既にがん免疫治療法の重要な対策の1つとなっている。
【0005】
近年の研究によると、CSF-1Rの阻害剤は、複数種の経路で疾患治療分野に応用可能であり、単独で使用されてもよく、抗血管新生、T細胞の養子移入、放射線療法、化学療法と免疫チェックポイント療法などの複数種の抗がん療法と併用されてもよい。市販されている薬剤には、例えば、イマチニブ、ダサチニブとスニチニブなど、CSF-1Rの阻害活性を有するものが多いが、選択的なCSF-1R阻害剤はまだ市販に出ていない。Plexxikon社により研究、開発されて第一三共に買収されたPexidartinib(PLX-3397)は、CSF-1Rとc-Kitの二重阻害剤であり、2019年8月に腱鞘巨細胞腫(TGCT)の治療のためにFDAによって承認された。
【0006】
【0007】
〔発明の概要〕
本発明は、式(P)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供し、
【0008】
【0009】
そのうち、
R1は、F、Cl、Br、I、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、-C(=O)-C1-3アルキル基及び-C(=O)-NH-C1-3アルキル基から選ばれ、上記C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、-C(=O)-C1-3アルキル基及び-C(=O)-NH-C1-3アルキル基は、任意選択的に1、2又は3個のRaで置換され、
R2は、F、Cl、Br、I及びC1-3アルキル基から選ばれ、上記C1-3アルキル基は、任意選択的に1、2又は3個のRbで置換され、
R3は、H、C1-3アルキル基及びC3-5シクロアルキル基から選ばれ、上記C1-3アルキル基とC3-5シクロアルキル基は、任意選択的に1、2又は3個のRcで置換され、
環Bは、フェニル基と6員ヘテロアリール基から選ばれ、
mとnは、それぞれ独立的に0、1及び2から選ばれ、
L1は-N(Rd)-から選ばれ、
L2は、単結合、-O-、-N(Rd)-C(=O)-及び-N(Rd)-C(Re)(Rf)-から選ばれ、
Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立的にF、Cl、Br、I及びCH3から選ばれ、
Rd、Re及びRfは、それぞれ独立的にHとCH3から選ばれる。
【0010】
本発明の幾つかの形態において、上記R1は、F、Cl、Br、I、CH3、OCH3、-C(=O)-CH3及び-C(=O)-NH-CH3から選ばれ、上記CH3、OCH3、-C(=O)-CH3及び-C(=O)-NH-CH3は、任意選択的に1、2又は3個のRaで置換され、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0011】
本発明の幾つかの形態において、上記R1は、F、Cl、Br、I、CH3、CHF2、CF3、OCH3、-C(=O)-CH3及び-C(=O)-NH-CH3から選ばれ、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0012】
本発明の幾つかの形態において、上記R2は、F、Cl、Br、I及びCH3から選ばれ、上記CH3は任意選択的に1、2又は3個のRbで置換され、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0013】
本発明の幾つかの形態において、上記R2は、F、Cl、Br、I、CH3、CH2F、CHF2及びCF3から選ばれ、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0014】
本発明の幾つかの形態において、上記R3は、H、CH3、CH(CH3)2及びシクロプロピル基から選ばれ、上記CH3、OCH3及びシクロプロピル基は、任意選択的に1、2又は3個のRcで置換され、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0015】
本発明の幾つかの形態において、上記R3は、H、CH3、CF3、CH(CH3)2及びシクロプロピル基から選ばれ、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0016】
本発明の幾つかの形態において、上記L1は-NH-と-N(CH3)-から選ばれ、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0017】
本発明の幾つかの形態において、上記L2は、単結合、-O-、-NH-C(=O)-、-NH-CH2-及び-N(CH3)-CH2-から選ばれ、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0018】
本発明の幾つかの形態において、上記環Bは、フェニル基、ピリジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基及びピリダジニル基から選ばれ、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0019】
本発明の幾つかの形態において、上記構造単位
【0020】
【0021】
は、
【0022】
【0023】
と
【0024】
【0025】
から選ばれ、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0026】
本発明の幾つかの形態において、上記L2は、構造単位
【0027】
【0028】
から選ばれ、
【0029】
【0030】
、
【0031】
【0032】
、
【0033】
【0034】
、
【0035】
【0036】
及び
【0037】
【0038】
から選ばれ、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0039】
本発明の一実施形態において、上記構造単位
【0040】
【0041】
は
【0042】
【0043】
、
【0044】
【0045】
、
【0046】
【0047】
、
【0048】
【0049】
、
【0050】
【0051】
、
【0052】
【0053】
、
【0054】
【0055】
、
【0056】
【0057】
及び
【0058】
【0059】
から選ばれ、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0060】
本発明は、式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供し、
【0061】
【0062】
そのうち、
T1とT2は、それぞれ独立的にNとCHから選ばれ、
R1は、F、Cl、Br、I、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、-C(=O)-C1-3アルキル基及び-C(=O)-NH-C1-3アルキル基から選ばれ、上記C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、-C(=O)-C1-3アルキル基及び-C(=O)-NH-C1-3アルキル基は、任意選択的に1、2又は3個のRaで置換され、
R2は、F、Cl、Br、I及びC1-3アルキル基から選ばれ、上記C1-3アルキル基は、任意選択的に1、2又は3個のRbで置換され、
R3は、C1-3アルキル基とC3-5シクロアルキル基から選ばれ、上記C1-3アルキル基とC3-5シクロアルキル基は、任意選択的に1、2又は3個のRcで置換され、
mとnは、それぞれ独立的に0、1及び2から選ばれ、
L1は-N(Rd)-から選ばれ、
L2は、-O-、-N(Rd)-C(=O)-及び-N(Rd)-C(Re)(Rf)-から選ばれ、
Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立的にF、Cl、Br、I及びCH3から選ばれ、
Rd、Re及びRfは、それぞれ独立的にHとCH3から選ばれる。
【0063】
本発明の幾つかの形態において、上記R1は、F、Cl、Br、I、CH3、OCH3、-C(=O)-CH3及び-C(=O)-NH-CH3から選ばれ、上記CH3、OCH3、-C(=O)-CH3及び-C(=O)-NH-CH3は、任意選択的に1、2又は3個のRaで置換され、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0064】
本発明の幾つかの形態において、上記R1は、F、Cl、Br、I、CH3、CHF2、CF3、OCH3、-C(=O)-CH3及び-C(=O)-NH-CH3から選ばれ、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0065】
本発明の幾つかの形態において、上記R2は、F、Cl、Br、I及びCH3から選ばれ、上記CH3は任意選択的に1、2又は3個のRbで置換され、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0066】
本発明の幾つかの形態において、上記R2は、F、Cl、Br、I、CH3、CH2F、CHF2及びCF3から選ばれ、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0067】
本発明の幾つかの形態において、上記R3は、CH3とシクロプロピル基から選ばれ、上記CH3とシクロプロピル基は、任意選択的に1、2又は3個のRcで置換され、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0068】
本発明の幾つかの形態において、上記R3は、CH3、CF3及びシクロプロピル基から選ばれ、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0069】
本発明の幾つかの形態において、上記L1は-NH-と-N(CH3)-から選ばれ、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0070】
本発明の幾つかの形態において、上記L2は-O-、-NH-C(=O)-及び-NH-CH2-から選ばれ、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0071】
本発明の幾つかの形態において、上記構造単位
【0072】
【0073】
は、
【0074】
【0075】
と
【0076】
【0077】
から選ばれ、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0078】
本発明の幾つかの形態において、上記構造単位
【0079】
【0080】
は、
【0081】
【0082】
と
【0083】
【0084】
から選ばれ、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0085】
本発明の幾つかの形態において、上記構造単位
【0086】
【0087】
は、
【0088】
【0089】
と
【0090】
【0091】
から選ばれ、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0092】
本発明は、更に、上記変量を任意に組み合わせてなる形態がある。
【0093】
本発明の幾つかの形態において、上記化合物又はその薬学的に許容される塩は、
【0094】
【0095】
から選ばれ、
そのうち、
R1、R2、R3、L1及びL2は、本発明に定義される通りである。
【0096】
本発明の幾つかの形態において、上記化合物又はその薬学的に許容される塩は、
【0097】
【0098】
から選ばれ、
そのうち、
環Bは、
【0099】
【0100】
、
【0101】
【0102】
、
【0103】
【0104】
及び
【0105】
【0106】
から選ばれ、
R3とL2は、本発明に定義される通りである。
【0107】
本発明は、下記の式で示される化合物又はその薬学的に許容される塩、
【0108】
【0109】
を更に提供する。
【0110】
本発明は、腱鞘巨細胞腫を治療する薬剤の製造における、上記化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を更に提供する。
【0111】
〔発明の効果〕
本発明に係る化合物は、顕著なCSF-1Rキナーゼ阻害作用を有し、本発明に係る化合物は、5つのCYPアイソザイムに対する阻害程度が弱く、薬剤の併用によるリスクが低減され、本発明に係る化合物は、優れた薬物動態特性及び体内薬効を有する。
【0112】
(定義及び説明)
特に断りのない限り、本文に用いられる下記用語及び語句は下記の意味を有する。1つの特定の用語又は語句は、特別に定義されていない場合に、不確定又は不明だと考えられるべきではなく、一般的な意味で理解すべきである。本明細書に商品名が現れる場合、その対応する商品又はその活性成分を意味する。
【0113】
ここで用いられる「薬学的に許容される」という用語は、確実な医学的判定の範囲内で、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応或いは他の問題又は合併症がなく、合理的な損益比に見合い、ヒト及び動物の組織との接触に使用するのに適する化合物、材料、組成物及び/又は剤形を意味する。
【0114】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明で発見されて特定の置換基を有する化合物と比較的無毒な酸又は塩基から製造される、本発明に係る化合物の塩を指す。本発明に係る化合物に相対的酸性の官能基が含まれる場合、純粋な溶液又は適切な不活性溶媒において十分な量のアルカリをそれらの化合物の中性形態と接触させることにより塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミン又はマグネシウム塩又は類似する塩を含む。本発明に係る化合物に相対的塩基性の官能基が含まれる場合、純粋な溶液又は適切な不活性溶媒において十分な量の酸をそれらの化合物の中性形態と接触させることにより酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の実例は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸水素基、リン酸、リン酸一水素基、リン酸二水素基、硫酸、硫酸水素基、ヨウ化水素酸、亜リン酸などを含む無機酸塩と、例えば、酢酸、プロピオン酸、イソブタン酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸及びメタンスルホン酸などのような酸を含む有機酸塩とを含み、アミノ酸(例えば、アルギニン酸など)の塩、及び例えば、グルクロン酸などの有機酸の塩を更に含む。本発明に係る幾つかの特定の化合物は、塩基性と酸性の官能基を含むため、何れかの塩基又は酸付加塩に変換されることができる。
【0115】
本発明に係る薬学的に許容される塩は、酸基又は塩基が含まれる親化合物から通常の化学的方法により合成することができる。一般的な場合、このような塩の製造方法は下記の通りである:水又は有機溶媒又は両方の混合物において、遊離酸又は塩基の形態のこれらの化合物を化学量論的に適切な塩基又は酸と反応させることによって製造する。
【0116】
特に断りのない限り、「異性体」という用語は、幾何異性体、シストランス異性体、立体異性体、エナンチオマー、光学異性体、ジアステレオマー及び互変異性体を含む。
【0117】
本発明に係る化合物は、特定の幾何又は立体異性体の形態で存在してもよい。本発明は、シス・トランス異性体、(-)-と(+)-エナンチオマー、(R)-と(S)-エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体を含む化合物の全て、及びそのラセミ混合物と他の混合物を意図している。例えば、エナンチオマーやジアステレオマーが富化した混合物のような混合物の全ては、本発明の範囲に属する。アルキル基などの置換基には、他の不斉炭素原子があってもよい。これらの異性体及びそれらの混合物は、何れも本発明の範囲に含まれる。
【0118】
特に断りのない限り、「エナンチオマー」又は「光学異性体」という用語は、互いに鏡像関係である立体異性体を指す。
【0119】
特に断りのない限り、「シストランス異性体」又は「幾何異性体」という用語は、二重結合又は環構成炭素原子の単結合が自由に回転できないことによるものである。
【0120】
特に断りのない限り、「ジアステレオマー」という用語は分子に2つ又は複数のキラル中心を有すると共に、分子同士が非鏡像関係である立体異性体を指す。
【0121】
特に断りのない限り、「(D)」又は「(+)」は右旋性を示し、「(L)」又は「(-)」は左旋性を示し、「(DL)」又は「(±)」はラセミ化を示す。
【0122】
特に断りのない限り、楔形実線結合(
【0123】
【0124】
)及び楔形破線結合(
【0125】
【0126】
)により1つの立体中心の絶対配置を示し、直形実線結合(
【0127】
【0128】
)及び直形破線結合(
【0129】
【0130】
)により立体中心の相対配置を示し、波線(
【0131】
【0132】
)により楔形実線結合(
【0133】
【0134】
)又は楔形破線結合(
【0135】
【0136】
)を示し、又は波線(
【0137】
【0138】
)により直形実線結合(
【0139】
【0140】
)及び直形破線結合(
【0141】
【0142】
)を示す。
【0143】
特に断りのない限り、「1つの異性体に富む」、「異性体富化」、「1つのエナンチオマーに富む」又は「エナンチオマー富化」という用語は、そのうちの1つの異性体又はエナンチオマーの含有量が100%より低く、且つ、当該異性体又はエナンチオマーの含有量が60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上、又は99.5%以上、又は99.6%以上、又は99.7%以上、又は99.8%以上、又は99.9%以上であることを意味する。
【0144】
特に断りのない限り、「異性体過剰」又は「エナンチオマー過剰」という用語は、2つの異性体又は2つのエナンチオマーの相対百分率間の差を指す。例えば、そのうちの一方の異性体又はエナンチオマーの含有量は90%であり、他方の異性体又はエナンチオマーの含有量は10%であると、異性体又はエナンチオマー過剰(ee値)は80%である。
【0145】
キラル合成又はキラル試薬又は他の従来の技術により光学活性な(R)-と(S)-異性体及びDとL異性体を製造することができる。本発明に係るある化合物の1つのエナンチオマーを得るには、不斉合成又はキラル助剤を有する誘導作用により製造することができ、ここで、得られたジアステレオマーの混合物を分離すると共に、基の分解を補助することで純粋な所望のエナンチオマーを提供する。又は、分子に塩基性官能基(例えば、アミノ基)又は酸性官能基(例えば、カルボキシ基)が含まれる場合、適切な光学活性な酸又は塩基とジアステレオマーの塩を形成し、そしてこの分野で公知の従来方法によりジアステレオマーを分割した後、回収して純粋なエナンチオマーを得る。なお、エナンチオマー及びジアステレオマーの分離は、一般的にクロマトグラフィーにより完成され、上記クロマトグラフィーは、キラル固定相を利用し、且つ任意選択的に化学的誘導法と組み合わせる(例えば、アミドからカルバメートを生成する)。
【0146】
本発明に係る化合物は、当該化合物を構成する1つ又は複数の原子において非天然割合の原子同位体を含むことができる。例えば、三重水素(3H)、ヨウ-125(125 I)又はC-14(14C)などの放射性同位体で化合物を標識してもよい。また例えば、重水素で水素を置換して重水素化薬物を形成してもよく、重水素と炭素からなる結合は、一般的な水素と炭素からなる結合よりも堅固であり、重水素化されていない薬物と比べて、重水素化薬物は、毒性と副作用を減らし、薬物の安定性を高め、治療効果を向上させ、薬物の生物学的半減期を延長するといった利点を有する。本発明に係る化合物の全ての同位体により構成される変換は、放射性の有無を問わず、何れも本発明の範囲に含まれる。
【0147】
「任意選択的」又は「任意選択的に」は、その後に説明されるイベント又は状況があり得るが、必ずしも出るべきものではなく、且つ当該説明には、そのうちの記載されるイベント又は状況が発生する場合と、上記イベント又は状況が発生しない場合とを含むことを意味する。
【0148】
「置換される」という用語は、特定の原子における何れか1つ又は複数の水素原子が置換基で置換されることを意味し、特定の原子の原子価が正常であり、且つ置換された化合物が安定であれば、重水素と水素の変異体を含むことができる。置換基が酸素(即ち、=O)である場合、2つの水素原子が置換されることを意味する。酸素置換はアリール基において発生しない。「任意選択的に置換される」という用語は、置換されても置換されなくてもよいことを意味し、特に断りのない限り、置換基の種類と数は、化学的に実現可能であれば任意でよい。
【0149】
何れかの変量(例えば、R)は、化合物の組成又は構造において1回以上出る場合、何れの場合の定義も独立している。従って、例えば、1つの基が0個~2個のRで置換される場合、上記基は任意選択的に多くとも2個のRで置換可能であり、且つ何れの場合のRも、独立した選択肢がある。なお、置換基及び/又はその変異体の組み合わせは、このような組み合わせにより安定した化合物が生成される場合だけに許容される。
【0150】
1つの連結基の数が0、例えば-(CRR)0-である場合、当該連結基が単結合であることを示す。
【0151】
1つの置換基の数が0である場合、当該置換基が存在しないことを示し、例えば、-A-(R)0は、当該構造が実際に-Aであることを示す。
【0152】
1つの置換基が欠ける場合、当該置換基が存在しないことを示し、例えば、A-XにおいてXが欠ける場合、当該構造が実際にAであることを示す。
【0153】
そのうちの1つの変量が単結合から選ばれる場合、その連結される2つの基が直接連結されることを示し、例えば、A-L-ZにおいてLが単結合を示す場合、当該構造が実際にA-Zであることを示す。
【0154】
1つの置換基の結合が1つの環における2つを超える原子に交差して連結することができる場合、このような置換基は、当該環における任意の原子に結合することができ、例えば、構造単位
【0155】
【0156】
又は
【0157】
【0158】
は、その置換基Rがシクロヘキシル基又はシクロヘキサジエニル基における何れか1つの位置で置換することができることを示す。挙げられた置換基においてそれがどの原子を介して置換される基に連結されると明示しない場合、このような置換基はその任意の原子を介して結合することができ、例えば、ピリジニル基は置換基としてピリジン環における任意の炭素原子を介して置換される基に連結することができる。
【0159】
挙げられた連結基は、その連結方向が明示されていない場合、その連結方向が任意であり、例えば、
【0160】
【0161】
において連結基Lが-M-W-であり、この場合、-M-W-は、左から右への読み取り順序と同じ方向で環Aと環Bを連結して
【0162】
【0163】
を構成してもよく、左から右への読み取り順序とは逆の方向で環Aと環Bを連結して
【0164】
【0165】
を構成してもよい。上記連結基、置換基及び/又はその変異体の組み合わせは、このような組み合わせにより安定した化合物が生成される場合だけに許容される。
【0166】
特に断りのない限り、ある基が1つ又は複数の連結可能な部位を有する場合、当該基の何れか1つ又は複数の部位は、化学結合を介して他の基と連結することができる。当該化学結合の連結方法は非部位特異的であり、且つ連結可能な部位にH原子がある場合、化学結合を連結する時に、当該部位のH原子の数が連結される化学結合の個数に応じて減少されて相応する価数の基になる。上記部位と他の基を連結する化学結合は、直形実線結合(
【0167】
【0168】
)、直形破線結合(
【0169】
【0170】
)、又は波線(
【0171】
【0172】
)で示すことができる。例えば、-OCH3における直形実線結合は、当該基における酸素原子を介して他の基と連結することを示し、
【0173】
【0174】
における直形破線結合は、当該基における窒素原子の両端を介して他の基と連結することを示し、
【0175】
【0176】
における波線は、当該フェニル基における1位及び2位の炭素原子を介して他の基と連結することを示し、
【0177】
【0178】
は、当該ピペリジニル基における何れかの連結可能な部位が1つの化学結合を介して他の基と連結可能なことを示し、少なくとも
【0179】
【0180】
、
【0181】
【0182】
、
【0183】
【0184】
、
【0185】
【0186】
という4つの連結方法を含み、-N-にH原子が描かれていても、
【0187】
【0188】
は、依然として
【0189】
【0190】
という連結方法の基を含み、ただ1つの化学結合に連結する時に、当該部位のHは、それに応じて1つ減らして相応する1価ピペリジニル基になる。
【0191】
特に断りのない限り、環における原子の数は、通常、環の員数と定義され、例えば、「5~7員環」は、5個~7個の原子が環状に配列している「環」を指す。
【0192】
特に断りのない限り、「C1-3アルキル基」という用語は、1個~3個の炭素原子により構成される直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素基を示すために用いられる。上記C1-3アルキル基はC1-2とC2-3アルキル基などを含み、それは1価(例えば、メチル基)、2価(例えば、メチレン基)又は多価(例えば、メチン基)であってもよい。C1-3アルキル基の実例は、メチル基(Me)、エチル基(Et)、プロピル基(n-プロピル基とイソプロピル基を含む)などを含むが、これらに限定されない。
【0193】
特に断りのない限り、「C1-3アルコキシ基」という用語は、1個の酸素原子を介して分子の他の部分に連結するような、1個~3個の炭素原子を含むアルキル基を示す。上記C1-3アルコキシ基はC1-2、C2-3、C3、及びC2アルコキシ基などを含む。C1-3アルコキシ基の実例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(n-プロポキシ基とイソプロポキシ基を含む)などを含むが、これらに限定されない。
【0194】
特に断りのない限り、「C3-5シクロアルキル基」は、3個~5個の炭素原子からなる飽和環状炭化水素基を示し、それは単環系であり、上記C3-5シクロアルキル基はC3-4とC4-5シクロアルキル基などを含み、1価、2価又は多価であってもよい。C3-5シクロアルキル基の実例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基などを含むが、これらに限定されない。
【0195】
特に断りのない限り、本発明に係る「6員ヘテロ芳香環」及び「6員ヘテロアリール基」という用語は互いに交換使用可能であり、「6員ヘテロアリール基」という用語は、6個のシクロ原子から構成され、共役π電子系を有する単環基を示し、その1個、2個、3個又は4個のシクロ原子は独立的にO、S及びNから選ばれるヘテロ原子であり、その他は炭素原子である。そのうち、窒素原子は任意選択的に四級アンモニウム化され、窒素及び硫黄のヘテロ原子は任意選択的に酸化(即ち、NO及びS(O)pであり、pは1又は2である)されることができる。6員ヘテロアリール基は、ヘテロ原子又は炭素原子を介して分子の他の部分に連結することができる。上記6員ヘテロアリール基の実例は、ピリジニル基(2-ピリジニル基、3-ピリジニル基及び4-ピリジニル基などを含む)、ピラジニル基又はピリミジニル基(2-ピリミジニル基と4-ピリミジニル基などを含む)を含むが、これらに限定されない。
【0196】
「後処理」という用語は、本発明に係る化合物の塩酸塩又はトリフルオロ酢酸塩が、酢酸エチル又はジクロロメタンなどの有機溶剤に溶けられ、1 Nの炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、有機相を濃縮させるという方法で、当該化合物の遊離状態が取得可能なことを意味する。
【0197】
本発明に係る化合物は、当業者によく知られている複数種の合成方法により製造することができ、以下挙げられる具体的な実施形態、それと他の化学合成方法との組み合わせで形成された実施形態及び当業者によく知られている等価置換形態を含み、好ましい実施形態は本発明の実施例を含むが、これらに限定されない。
【0198】
本発明で用いられる溶媒は、市販により入手可能である。
【0199】
本発明は下記の略語を用いる:aqは水を表し、eqは当量、等量を表し、DCMはジクロロメタンを表し、PEは石油エーテルを表し、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを表し、DMSOはジメチルスルホキシドを表し、EtOAcは酢酸エチルを表し、EtOHはエタノールを表し、MeOHはメタノールを表し、CBzはアミド保護基であるベンジルオキシカルボニル基を表し、BOCはアミド保護基であるt-ブトキシカルボニル基を示し、r.t.は室温を表し、O/Nは一晩放置を表し、THFはテトラヒドロフランを表し、Boc2Oは二炭酸ジ-tert-ブチルを表し、TFAはトリフルオロ酢酸を表し、DIPEAはジイソプロピルエチルアミンを表し、mpは融点を表し、Pd(dppf)Cl2は1,1'-ビスジフェニルホスフィノフェロセン二塩化パラジウムを表し、Pd(dppf)Cl2CH2Cl2は[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]二塩化パラジウムジクロロメタン錯体を表す。
【0200】
本発明に係る化合物は、当業者によく知られている従来の方法で構造を確認することができ、本発明は化合物の絶対配置に関わると、当該絶対配置は、この分野で従来の技術的手段により確認することができる。例えば、単結晶X線回折法(SXRD)では、培養された単結晶に対して回折強度データをBruker D8 venture回折計により収集し、光源がCuKα放射で、走査方式がφ/ω走査であり、関連データを収集した後、更に直接法(Shelxs97)により結晶構造を解析することで、絶対配置を確認することができる。
【0201】
化合物は、当該分野での従来の命名原則に従い、又はChemDraw(登録商標)ソフトウェアにより命名され、市販化合物は供給業者のカタログ名称を採用する。
【0202】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、マウスの脾腫試験である。
【0203】
〔発明を実施するための形態〕
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明への何らかの不利な制限ではない。本明細書は既に本発明を詳細に説明し、その具体的な実施例形態も開示されているが、当業者にとっては、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、本発明の具体的な実施形態に対して様々な変化や改良を行うことが明らかである。
【0204】
(中間体I)
【0205】
【0206】
合成経路:
【0207】
【0208】
ステップ1:化合物I-Aの合成
化合物1-F(1 g、3.31 mmol、1 eq)をテトラヒドロフラン(10 mL)に溶け、反応を0℃に冷却し、その後水素化ナトリウム(158.90 mg、3.97 mmol、純度60%、1.2 eq)を加え、反応液を0℃で0.5 h撹拌した。その後(2-(クロロメトキシ)エチル)トリメチルシラン(717.51 mg、4.30 mmol、761.69 μL、1.3 eq)を加え、反応液を20℃で1 h撹拌した。微弱な窒素気流下で、反応液を20 mLの水に入れ、撹拌してクエンチした。酢酸エチル40 mLを加えて抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、乾燥させ、ろ過して中間体I-Aを得た。
【0209】
MS m/z: 432.9[M+H]+。
【0210】
ステップ2:化合物Iの合成
化合物I-A(1 g、2.31 mmol)を1,4-ジオキサン(10 mL)及び水(1 mL)に溶け、その中に化合物I-B(495.54 mg、2.89 mmol)、Pd(dppf)Cl2(169.25 mg、231.31 μmol)、リン酸カリウム(1.47 g、6.94 mmol)を加え、反応液に窒素ガスを1分間バブリングし、反応は60℃でマイクロ波反応を45分間行った(3バッチを平行投入した)。3つの反応液を混合した後、その中に水(50 mL)と酢酸エチル(100 mL)を加え、分液し、有機相を飽和食塩水(50 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮して溶剤を除去して粗製品を得た。粗製品をカラムクロマトグラフィーにより分離して(石油エーテル:酢酸エチル=10:1~4:1)化合物Iを得た。
【0211】
MS m/z: 432.1[M+H]+;
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ = 8.40 (d, J=5.3 Hz, 1H), 8.30 (s, 1H), 7.47 (d, J=5.3 Hz, 1H), 7.41 (s, 1H), 7.33 (s, 1H), 5.79 (s, 2H), 4.08 (s, 3H), 3.35 - 3.26 (m, 2H), 2.26 (s, 3H), 0.84 - 0.77 (m, 2H), 0.09 (s, 9H)。
【0212】
(中間体II)
【0213】
【0214】
合成経路:
【0215】
【0216】
ステップ1:化合物II-Bの合成
化合物II-A(200 mg、624.64 μmol)をジクロロメタン(5 mL)に溶け、その中にBoc2O(272.65 mg、1.25 mmol、287.00 μL)、4-ジメチルアミノピリジン(38.16 mg、312.32 μmol)を加え、反応液を25℃~30℃で1時間撹拌した。反応液を減圧濃縮して粗製品を得て、粗製品をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:石油エーテル=0~5~10%)により分離し、化合物II-Bを得た。
【0217】
MS m/z: 420.1[M+H]+。
【0218】
ステップ2:化合物IIの合成
化合物II-B(110 mg、261.72 μmol)を1,4-ジオキサン(2 mL)に溶け、その中にビスボロン酸ピナコールエステル(73.11 mg、287.89 μmol)、酢酸カリウム(51.37 mg、523.44 μmol)を加え、反応系に窒素ガスを30 sバブリングした後、その中にPd(dppf)Cl2CH2Cl2(21.37 mg、26.17 μmol)を加え、反応系に窒素ガスを30 sバブリングした後、反応液は130℃でマイクロ波反応を2時間行った。反応液を珪藻土によりろ過した後、減圧濃縮して粗製品を得て、粗製品をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:石油エーテル=0~10%)により分離し、中間体IIを得た。
【0219】
MS m/z: 468.3[M+H]+;
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ = 8.59 (s, 1H), 8.03 (d, J=2.5 Hz, 1H), 7.50 (dd, J=2.8, 8.8 Hz, 1H), 7.41 (s, 1H), 6.77 (d, J=8.8 Hz, 1H), 4.29 - 4.07 (m, 1H), 2.54 (s, 3H), 1.45 (s, 9H), 1.32 (s, 12H), 0.81 - 0.76 (m, 4H)。
【0220】
(実施例1)
【0221】
【0222】
合成経路:
【0223】
【0224】
ステップ1:化合物1-Bの合成
化合物1-A(700 mg、3.23 mmol)、Pd(dppf)Cl2(236.01 mg、322.55 μmol)及びトリエチルアミン(1.63 g、16.13 mmol)をメタノール(3 mL)とN,N-ジメチルホルムアミド(30 mL)に混合し、80℃で、CO(50 Psi)で12時間撹拌した。反応液を珪藻土によりろ過した後、水(100 mL)を加え、ジクロロメタン(250 mL)で抽出し、有機相を水(200 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過濃縮して粗製品を得て、粗製品をカラムクロマトグラフィー(テトラヒドロフラン:石油エーテル=0~10~25%)により分離し、化合物1-Bを得た。
【0225】
MS m/z: 196.9[M+H]+。
【0226】
ステップ2:化合物1-Cの合成
化合物1-B(30 mg、152.94 μmol)、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(448.50 mg、3.76 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(2 mL)に混合し、100℃で12時間撹拌した。反応液を減圧濃縮して粗製品を得て、粗製品をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=1:1)により分離し、化合物1-Cを得た。
【0227】
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ = 8.31 (d, J=5.5 Hz, 1H), 7.36 (d, J=5.5 Hz, 1H), 7.23 (d, J=13.1 Hz, 1H), 4.97 (d, J=13.6 Hz, 1H), 3.98 (s, 3H), 3.00 (s, 6H)。
【0228】
ステップ3:化合物1-Dの合成
化合物1-C(330 mg、1.31 mmol)を酢酸(10 mL)に溶け、鉄粉(733.52 mg、13.13 mmol)を加え、70℃で5時間撹拌した。反応液を珪藻土によりろ過し、ろ液を濃縮して粗製品を得て、粗製品をカラムクロマトグラフィー(テトラヒドロフラン:石油エーテル=0~50%)により分離し、化合物1-Dを得た。
【0229】
MS m/z: 176.8[M+H]+。
【0230】
ステップ4:化合物1-Fの合成
化合物1-D(60 mg、340.58 μmol)、N-ヨードスクシンイミド(91.95 mg、408.69 μmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(6 mL)に溶け、35℃で1時間撹拌した。反応液を減圧濃縮して粗製品を得て、粗製品をカラムクロマトグラフィー(テトラヒドロフラン:石油エーテル=0~50%)により分離し、1-Fを得た。
【0231】
MS m/z: 302.9[M+H]+。
【0232】
ステップ5:化合物1-Gの合成
化合物1-F(50 mg、165.53 μmol)、中間体II(77.36 mg、165.53 μmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(19.13 mg、16.55 μmol)及び炭酸ナトリウム(35.09 mg、331.05 μmol)をジオキサン(2.5 mL)と水(0.25 mL)に溶け、反応液にN2を約30秒間バブリングした後、マイクロ波にて100℃で30分間撹拌した。反応液に水(50 mL)を加え、ジクロロメタン(100 mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤をろ過し、減圧濃縮して粗製品を得て、粗製品をカラムクロマトグラフィー(テトラヒドロフラン:石油エーテル=0~25~50%)により分離し、化合物1-Gを得た。
【0233】
ステップ6:化合物1-Hの合成
化合物1-G(30 mg、58.19 μmol)をメチルアミンエタノール溶液(20 mL、33%の質量分率)に溶け、45℃で2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮して粗製品を得て、粗製品をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:石油エーテル=0~10~25%)により分離し、化合物1-Hを得た。
【0234】
MS m/z: 515.1[M+H]+。
【0235】
ステップ7:化合物1の塩酸塩の合成
化合物1-H(12 mg、23.32 μmol)を酢酸エチル(4 mL)と塩酸酢酸エチル(4 M、20 mL)に混合し、18℃で12時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した後、粗製品を分取高速液体クロマトグラフィー(HCl、アセトニトリル)により分離してから化合物1の塩酸塩を得た。
【0236】
MS m/z: 415.2[M+H]+;
1H NMR (400MHz, CD3OD) δ = 8.53 (d, J=2.0 Hz, 1H), 8.47 (s, 1H), 8.38 (d, J=6.0 Hz, 1H), 8.21 - 8.13 (m, 2H), 8.02 (s, 1H), 7.46 (d, J=9.0 Hz, 1H), 7.28 (s, 1H), 4.41 - 4.30 (m, 1H), 3.15 (s, 3H), 2.40 (s, 3H), 0.99 - 0.93 (m, 2H), 0.92 - 0.87 (m, 2H)。
【0237】
(実施例2)
【0238】
【0239】
合成経路:
【0240】
【0241】
ステップ1:化合物2-Bの合成
0℃の条件下で、2-A(1 g、6.55 mmol)のTHF(30 mL)溶液に、NaH(314.56 mg、7.86 mmol、60%の質量分率)を加えた。反応混合液を0℃で20分間撹拌した。その後、ヨードメタン(3.44 g、24.24 mmol、1.51 mL)を加え、反応液を0℃で1時間撹拌し続けた。反応が終了した後、5 mLの水を加えて反応をクエンチし、混合液を水(50 mL)で希釈し、酢酸エチル(50 mL*3)で抽出し、飽和食塩水(50 mL*3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤をろ過して除去した後、減圧濃縮して粗製品を得て、粗製品をカラムクロマトグラフィー(0~20% 酢酸エチル/石油エーテル)により精製し、化合物2-Bを得た。
【0242】
MS m/z: 166.9[M+H]+;
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ = 7.95 (d, J=5.5 Hz, 1H), 7.42 (d, J=5.4 Hz, 1H), 7.16 (d, J=3.1 Hz, 1H), 6.49 (d, J=3.1 Hz, 1H), 4.17 (s, 3H)。
【0243】
ステップ2:化合物2-Cの合成
2-B(500 mg、3.00 mmol)、TEA(1.26 g、12.45 mmol、1.73 mL)及びPd(dppf)Cl2CH2Cl2(122.54 mg、150.05 μmol)のトルエン(40 mL)とメタノール(40 mL)溶液を一酸化炭素(4 MPa)及び110℃という温度の条件下で17時間撹拌した。反応が終了した後、減圧濃縮して粗製品を得て、粗製品をカラムクロマトグラフィー(0~30% テトラヒドロフラン/石油エーテル)により精製し、化合物2-Cを得た。
【0244】
MS m/z: 190.9 [M+H]+;
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ = 8.30 (d, J=5.0 Hz, 1H), 7.66 (d, J=5.3 Hz, 1H), 7.22 (d, J=3.0 Hz, 1H), 6.57 (d, J=3.0 Hz, 1H), 4.06 (s, 3H), 3.97 (s, 3H)。
【0245】
ステップ3:化合物2-Dの合成
2-C(400 mg、2.10 mmol)のDMF(10 mL)溶液にN-ヨードスクシンイミド(567.78 mg、2.52 mmol)のDMF(5 mL)溶液を加え、反応液を20℃~30℃で2時間撹拌した。反応が終了した後、5 mLの水を加えて反応をクエンチし、混合液を水(50 mL)で希釈し、酢酸エチル(50 mL*3)で抽出し、飽和食塩水(50 mL*3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤をろ過して除去した後、減圧濃縮して粗製品を得て、粗製品をカラムクロマトグラフィー(0~20% テトラヒドロフラン/石油エーテル)により精製し、化合物2-Dを得た。
【0246】
MS m/z: 316.9 [M+H]+;
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ = 8.39 (d, J=5.3 Hz, 1H), 7.51 (d, J=5.3 Hz, 1H), 7.32 (s, 1H), 4.06 (s, 3H), 3.99 (s, 3H)。
【0247】
ステップ4:化合物2-Eの合成
N2の保護下で、化合物2-D(150 mg、474.54 μmol)、中間体II(443.57 mg、949.08 μmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム及びNa2CO3(100.59 mg、949.08 μmol)のジオキサン(10 mL)と水(1 mL)の混合液を85℃~90℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、5 mLの水を加えて反応をクエンチし、混合液を水(20 mL)で希釈し、酢酸エチル(20 mL*3)で抽出し、飽和食塩水(20 mL*3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤をろ過して除去した後、減圧濃縮して粗製品を得て、粗製品をカラムクロマトグラフィー(0~50% テトラヒドロフラン/石油エーテル)により精製し、化合物2-Eを得た。
【0248】
MS m/z: 530.4 [M+H]+。
【0249】
ステップ5:化合物2-Fの合成
相応する原料の他に、実施例1における化合物1-Hの製造と同様の方法により化合物2-Fを製造した。
【0250】
MS m/z: 529.3 [M+H]+。
【0251】
ステップ6:化合物2の塩酸塩の合成
化合物2-F(100 mg、189.18 μmol)の塩酸/酢酸エチル(4 M、5 mL)とMeOH(2 mL)溶液を40℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、ろ過して製品を得て、乾燥して化合物2の塩酸塩を得た。
【0252】
MS m/z: 429.2 [M+H]+;
1H NMR (400MHz, CD3OD) δ = 8.49 (d, J=2.3 Hz, 1H), 8.39 (s, 1H), 8.32 (d, J=6.5 Hz, 1H), 8.13 - 8.06 (m, 2H), 7.98 (s, 1H), 7.39 (d, J=9.0 Hz, 1H), 7.24 (s, 1H), 4.38 - 4.25 (m, 1H), 4.13 (s, 3H), 3.13 (s, 3H), 2.37 (s, 3H), 0.98 - 0.80 (m, 4H)。
【0253】
(実施例3)
【0254】
【0255】
合成経路:
【0256】
【0257】
ステップ1:化合物3-Aの合成
窒素ガス保護で、ジオキサン(10 mL)の溶液に、中間体I(100 mg、231.49 μmol)、4-イソプロポキシアニリン(38.50 mg、254.64 μmol)、炭酸セシウム(150.85 mg、462.98 μmol)、4,5-ビスジフェニルホスフィノ-9,9-ジメチルオキサアントラセン(26.79 mg、46.30 μmol)及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(21.20 mg、23.15 μmol)を加えた。反応混合液を100℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮して粗製品を得て、カラムクロマトグラフィー(0~50% 酢酸エチル/石油エーテル)により精製し、化合物3-Aを得た。
【0258】
MS m/z: 547.3[M+H]+。
【0259】
ステップ2:化合物3-Bの合成
メチルアミン(5 mL、純度33%)のエタノール溶液に、3-A(85 mg、155.47 μmol)を加えた。反応混合液を50℃で2時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮して化合物3-Bを得た。
【0260】
MS m/z: 546.3[M+H]+。
【0261】
ステップ3:化合物3の塩酸塩の合成
テトラブチルアンモニウムフルオリド(1 M、10 mL)のテトラヒドロフラン溶液に、3-B(85 mg、155.47 μmol)を加えた。反応混合液を80℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮し、そして水(50 mL)と酢酸エチル(50 mL)を加えて抽出し、有機相を水(200 mL、50 mL×4)で洗浄し、有機相を濃縮して粗製品を得た。10℃~20℃の条件下で、粗製品(70 mg、168.48 μmol)を酢酸エチル(10 mL)に溶け、HCl/EtOAc(4 M、421.19 μL)を加えた。反応混合液を40℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液をろ過してろ過ケーキを得て、真空乾燥(45℃、-0.1 MPa、2 h)して化合物3の塩酸塩を得た。
【0262】
MS m/z: 416.2[M+H]+;
1H NMR (400MHz, CD3OD) δ = 8.37 - 8.30 (m, 2H), 8.09 (d, J=6.3 Hz, 1H), 7.83 (s, 1H), 7.35 (d, J=8.8 Hz, 2H), 7.16 (s, 1H), 7.10 (d, J=8.8 Hz, 2H), 4.68 (spt, J=6.0 Hz, 1H), 3.12 (s, 3H), 2.34 (s, 3H), 1.36 (d, J=6.0 Hz, 6H)。
【0263】
(実施例4)
【0264】
【0265】
合成経路:
【0266】
【0267】
ステップ1:化合物4-Aの合成
窒素ガス保護で、ジオキサン(10 mL)の溶液に、中間体I(100 mg、231.49 μmol)、4-イソプロピルアニリン(34.43 mg、254.64 μmol)、炭酸セシウム(150.85 mg、462.98 μmol)、4,5-ビスジフェニルホスフィノ-9,9-ジメチルオキサアントラセン(26.79 mg、46.30 μmol)及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(21.20 mg、23.15 μmol)を加えた。反応混合液を100℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮して粗製品を得て、カラムクロマトグラフィー(0~50% 酢酸エチル/石油エーテル)により精製し、化合物4-Aを得た。
【0268】
MS m/z: 531.3 [M+H]+。
【0269】
ステップ2:化合物4-Bの合成
メチルアミン(5 mL、純度33%)のエタノール溶液に、4-A(81 mg、152.62 μmol)を加えた。反応混合液を50℃で4時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮して化合物4-Bを得た。
【0270】
MS m/z: 530.1 [M+H]+。
【0271】
ステップ3:化合物4の塩酸塩の合成
テトラブチルアンモニウムフルオリド(1 M、15.45 mL)のテトラヒドロフラン溶液に、4-B(81 mg、152.90 μmol)を加えた。反応混合液を80℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮し、そして水(50 mL)と酢酸エチル(50 mL)を加えて抽出し、有機相を水(200 mL、50 mL×4)で洗浄し、有機相を濃縮して粗製品を得た。10℃~20℃の条件下で、粗製品(69 mg、172.72 μmol)を酢酸エチル(10 mL)に溶け、HCl/EtOAc(4 M、431.80 μL)を加えた。反応混合液を40℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液をろ過してろ過ケーキを得て、真空乾燥(45℃、-0.1 MPa、2 h)して化合物4の塩酸塩を得た。
【0272】
MS m/z: 400.2 [M+H]+;
1H NMR (400MHz, CD3OD) δ = 8.42 - 8.31 (m, 2H), 8.11 (br s, 1H), 7.86 (s, 1H), 7.49 - 7.34 (m, 4H), 7.21 (s, 1H), 3.12 (s, 3H), 3.06 - 2.96 (m, 1H), 2.35 (s, 3H), 1.30 (d, J=7.0 Hz, 6H)。
【0273】
(実施例5)
【0274】
【0275】
合成経路:
【0276】
【0277】
ステップ1:化合物5-Aの合成
窒素ガス保護で、ジオキサン(10 mL)の溶液に、中間体I(100 mg、231.49 μmol)、N,N-ジメチル-p-フェニレンジアミン(34.68 mg、254.64 μmol)、炭酸セシウム(150.85 mg、462.98 μmol)、4,5-ビスジフェニルホスフィノ-9,9-ジメチルオキサアントラセン(26.79 mg、46.30 μmol)及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(21.20 mg、23.15 μmol)を加えた。反応混合液を100℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮して粗製品を得て、カラムクロマトグラフィー(0~50% 酢酸エチル/石油エーテル)により精製し、化合物5-Aを得た。
【0278】
MS m/z: 532.3 [M+H]+。
【0279】
ステップ2:化合物5-Bの合成
メチルアミン(5 mL、純度33%)のエタノール溶液に、5-A(90 mg、169.26 μmol)を加えた。反応混合液を50℃で2時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮して化合物5-Bを得た。
【0280】
MS m/z: 531.1 [M+H]+。
【0281】
ステップ3:化合物5の塩酸塩の合成
テトラブチルアンモニウムフルオリド(1 M、16.95 mL)のテトラヒドロフラン溶液に、5-B(89 mg、167.69 μmol)を加えた。反応混合液を80℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮し、そして水(50 mL)と酢酸エチル(50 mL)を加えて抽出し、有機相を水(200 mL、50 mL×4)で洗浄し、有機相を濃縮して粗製品を得た。10℃~20℃の条件下で、粗製品(65 mg、162.31 μmol)を酢酸エチル(10 mL)に溶け、塩酸/酢酸エチル(4 M、405.77 μL)を加えた。反応混合液を40℃で16時間撹拌した。反応が終了した後、反応液をろ過してろ過ケーキを得て、真空乾燥(45℃、-0.1 MPa、2 h)して化合物5の塩酸塩を得た。
【0282】
MS m/z: 401.2 [M+H]+;
1H NMR (400MHz, CD3OD) δ = 8.45 - 8.33 (m, 2H), 8.22 - 8.06 (m, 1H), 8.04 (s, 1H), 7.84 (br d, J=8.8 Hz, 2H), 7.73 - 7.66 (m, J=8.8 Hz, 2H), 7.35 (s, 1H), 3.34 (s, 6H), 3.12 (s, 3H), 2.40 (s, 3H)。
【0283】
(実施例6)
【0284】
【0285】
合成経路:
【0286】
【0287】
ステップ1:化合物6-Aの合成
窒素ガス保護で、ジオキサン(10 mL)の溶液に、中間体I(100 mg、231.49 μmol)、3-アミノ-6-メチルピリジン(27.54 mg、254.64 μmol)、炭酸セシウム(150.85 mg、462.98 μmol)、4,5-ビスジフェニルホスフィノ-9,9-ジメチルオキサアントラセン(26.79 mg、46.30 μmol)及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(21.20 mg、23.15 μmol)を加えた。反応混合液を100℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮して粗製品を得て、カラムクロマトグラフィー(0~60% 酢酸エチル/石油エーテル)により精製し、化合物6-Aを得た。
【0288】
MS m/z: 504.2 [M+H]+。
【0289】
ステップ2:化合物6-Bの合成
メチルアミン(5 mL、純度33%)のエタノール溶液に、6-A(80 mg、158.84 μmol)を加えた。反応混合液を50℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮して化合物6-Bを得た。
【0290】
MS m/z: 503.3 [M+H]+。
【0291】
ステップ3:化合物6の塩酸塩の合成
テトラブチルアンモニウムフルオリド(1 M、16.89 mL)のテトラヒドロフラン溶液に、6-B(84 mg、167.10 μmol)を加えた。反応混合液を80℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮し、そして水(50 mL)と酢酸エチル(50 mL)を加えて抽出し、有機相を水(200 mL、50 mL×4)で洗浄し、有機相を濃縮して粗製品を得た。20℃~30℃の条件下で、粗製品(60 mg、161.11 μmol)をEtOH(3 mL)に溶け、HCl(12 M、14.10 μL)を加えた。反応混合液を20℃~30℃で2時間撹拌した。反応が終了した後、反応液をろ過してろ過ケーキを得て、真空乾燥(45℃、-0.1 MPa、2 h)して化合物6の塩酸塩を得た。
【0292】
MS m/z: 373.2 [M+H]+;
1H NMR (400MHz, CD3OD) δ = 9.47 (d, J=2.3 Hz, 1H), 8.47 (dd, J=2.5, 8.8 Hz, 1H), 8.41 (s, 1H), 8.33 (d, J=6.3 Hz, 1H), 8.28 (s, 1H), 8.11 (d, J=6.5 Hz, 1H), 7.88 (d, J=8.8 Hz, 1H), 7.18 (s, 1H), 3.14 (s, 3H), 2.76 (s, 3H), 2.35 (s, 3H)。
【0293】
(実施例7)
【0294】
【0295】
合成経路:
【0296】
【0297】
ステップ1:化合物7-Aの合成
窒素ガス保護で、ジオキサン(10 mL)の溶液に、中間体I(100 mg、231.49 μmol)、2-アミノ-5-メトキシピラジン(28.97 mg、231.49 μmol)、炭酸セシウム(150.85 mg、462.98 μmol)、4,5-ビスジフェニルホスフィノ-9,9-ジメチルオキサアントラセン(26.79 mg、46.30 μmol)及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(21.20 mg、23.15 μmol)を加えた。反応混合液を100℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮して粗製品を得て、カラムクロマトグラフィー(0~50% THF/DCM)により精製し、化合物7-Aを得た。
【0298】
MS m/z: 521.2 [M+H]+。
【0299】
ステップ2:化合物7-Bの合成
メチルアミン(5 mL、純度33%)のエタノール溶液に、7-A(86 mg、165.18 μmol)を加えた。反応混合液を50℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮して化合物7-Bを得た。
【0300】
MS m/z: 520.3 [M+H]+。
【0301】
ステップ3:化合物7の塩酸塩の合成
テトラブチルアンモニウムフルオリド(1 M、15.95 mL)のテトラヒドロフラン溶液に、7-B(82 mg、157.79 μmol)を加えた。反応混合液を80℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮し、そして水(50 mL)と酢酸エチル(50 mL)を加えて抽出し、有機相を水(200 mL、50 mL×4)で洗浄し、有機相を濃縮して粗製品を得た。20℃~30℃の条件下で、粗製品(70 mg、179.76 μmol)をEtOH(3 mL)に溶け、HCl(12 M、15.73 μL)を加えた。反応混合液を20℃~30℃で2時間撹拌した。反応が終了した後、反応液をろ過してろ過ケーキを得て、真空乾燥(45℃、-0.1 MPa、2 h)して化合物7の塩酸塩を得た。
【0302】
MS m/z: 390.2 [M+H]+;
1H NMR (400MHz, CD3OD) δ = 8.42 (s, 1H), 8.36 (d, J=6.3 Hz, 1H), 8.24 (d, J=4.6 Hz, 2H), 8.14 (s, 1H), 8.12 (d, J=5.9 Hz, 1H), 7.42 (s, 1H), 4.02 (s, 3H), 3.13 (s, 3H), 2.46 (s, 3H)。
【0303】
(実施例8)
【0304】
【0305】
合成経路:
【0306】
【0307】
ステップ1:化合物8-Aの合成
中間体I(100 mg、231.49 μmol)、p-メトキシアニリン(31.36 mg、254.64 μmol)、炭酸セシウム(150.85 mg、462.98 μmol)、4,5-ビスジフェニルホスフィノ-9,9-ジメチルオキサアントラセン(26.79 mg、46.30 μmol)及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(21.20 mg、23.15 μmol)をジオキサン(10 mL)に溶け、窒素ガス保護で100℃まで加熱し、12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を濃縮して粗製品を得て、カラムクロマトグラフィー(0~50% 酢酸エチル/石油エーテル)により精製し、化合物8-Aを得た。
【0308】
MS m/z: 519.3 [M+H]+。
【0309】
ステップ2:化合物8-Bの合成
化合物8-A(75 mg、144.60 μmol、1 eq)をエタノール(5 mL)に溶け、その中にメチルアミンのエタノール溶液(3.5 g、37.19 mmol、5 mL、純度33%)を加え、反応を45℃~50℃で油浴にて16時間撹拌した。反応液を減圧濃縮して溶剤を除去して化合物8-Bを得た。
【0310】
MS m/z: 518.2 [M+H]+。
【0311】
ステップ3:化合物8の塩酸塩の合成
化合物8-B(83 mg、160.33 μmol)をテトラヒドロフラン(5 mL)に溶け、その中に無水エチレンジアミン(144.53 mg、2.40 mmol、160.95 μL)、テトラブチルアンモニウムフルオリド(1 Mのテトラヒドロフラン溶液、801.63 μL)を加え、反応液を85℃~90℃の外部温度で油浴にて16時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮して溶剤を除去して粗製品を得て、得られた残留物を分取HPLC(カラム型番:Phenomenex Synergi C18(150*30 mm*4 μm)、流動相:[0.05%塩酸水溶液-アセトニトリル]、勾配:12%~42%)により精製し、8の塩酸塩を得た。
【0312】
MS m/z: 388.3[M+H]+;
1H NMR (400MHz, CD3OD) δ = 8.36 (br d, J=10.0 Hz, 2H), 8.11 (br s, 1H), 7.85 (s, 1H), 7.39 (br d, J=8.0 Hz, 2H), 7.17 (s, 1H), 7.13 (br d, J=7.8 Hz, 2H), 3.87 (s, 3H), 3.12 (s, 3H), 2.35 (s, 3H)。
【0313】
(実施例9)
【0314】
【0315】
合成経路:
【0316】
【0317】
ステップ1:化合物9-Aの合成
中間体I(100 mg、231.49 μmol)、2-アミノ-5-メチルピリジン(27.54 mg、254.64 μmol)、炭酸セシウム(98.28 mg、301.63 μmol)、4,5-ビスジフェニルホスフィノ-9,9-ジメチルオキサアントラセン(26.79 mg、46.30 μmol)及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(21.20 mg、23.15 μmol)をジオキサン(10 mL)に溶け、窒素ガス保護で100℃まで加熱し、12時間撹拌した。反応が完了した後、反応液を濃縮して粗製品を得て、カラムクロマトグラフィー(0~10% メタノール/ジクロロメタン)により精製して化合物9-Aを得た。
【0318】
MS m/z: 504.3 [M+H]+。
【0319】
ステップ2:化合物9-Bの合成
化合物9-A(95 mg、188.62 μmol)をエタノール(5 mL)に溶け、その中にメチルアミンのエタノール溶液(3.5 g、37.19 mmol、5 mL、純度33%)を加え、反応を45℃~50℃で油浴にて16時間撹拌した。反応液を減圧濃縮して溶剤を除去して化合物9-Bを得た。
【0320】
MS m/z: 503.1[M+H]+。
【0321】
ステップ3:化合物9の塩酸塩の合成
化合物9-B(97 mg、192.96 μmol)をテトラヒドロフラン(5 mL)に溶け、その中に無水エチレンジアミン(173.95 mg、2.89 mmol、193.71 μL)、テトラブチルアンモニウムフルオリド(1 Mのテトラヒドロフラン溶液、964.82 μL)を加え、反応液を85℃~90℃の外部温度で油浴にて16時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮して溶剤を除去して粗製品を得て、得られた残留物を分取HPLC(カラム型番:Phenomenex Synergi C18(150*30 mm*4 μm)、流動相:[0.05%塩酸水溶液-アセトニトリル]、勾配:26%~56%)により精製し、9の塩酸塩を得た。
【0322】
MS m/z: 373.2[M+H]+;
1H NMR (400MHz, CD3OD) = 8.48 (s, 1H), 8.43 (br s, 1H), 8.36 (br s, 1H), 8.22 (br s, 1H), 8.16 (br s, 1H), 8.04 (br d, J=8.8 Hz, 1H), 7.35 (br d, J=8.8 Hz, 1H), 7.31 (s, 1H), 3.14 (s, 3H), 2.41 (s, 6H)。
【0323】
(実施例10)
【0324】
【0325】
合成経路:
【0326】
【0327】
ステップ1:化合物10-Aの合成
窒素ガス保護で、ジオキサン(10 mL)の溶液に、中間体I(100 mg、231.49 μmol)、2-メトキシ-5-アミノピリミジン(31.86 mg、254.64 μmol)、炭酸セシウム(98.28 mg、301.63 μmol)、4,5-ビスジフェニルホスフィノ-9,9-ジメチルオキサアントラセン(26.79 mg、46.30 μmol)及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(21.20 mg、23.15 μmol)を加えた。反応混合液を100℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮して粗製品を得て、カラムクロマトグラフィー(0~50% テトラヒドロフラン/石油エーテル)により精製し、化合物10-Aを得た。
【0328】
MS m/z: 521.2[M+H]+。
【0329】
ステップ2:化合物10-Bの合成
メチルアミン(5 mL、純度33%)のエタノール溶液に、10-A(90 mg、172.86 μmol)を加えた。反応混合液を50℃で2時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮して化合物10-Bを得た。
【0330】
MS m/z: 520.3[M+H]+。
【0331】
ステップ3:化合物10の塩酸塩の合成
テトラブチルアンモニウムフルオリド(1 M、10 mL)のテトラヒドロフラン溶液に、10-B(120 mg、230.92 μmol)を加えた。反応混合液を80℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液を減圧濃縮し、そして水(50 mL)と酢酸エチル(50 mL)を加えて抽出し、有機相を水(200 mL、50 mL×4)で洗浄し、有機相を濃縮して粗製品を得た。10℃~20℃の条件下で、粗製品(90 mg、231.12 μmol)をEtOH(3 mL)に溶け、HCl(12 M、20.22 μL)を加えた。反応混合液を40℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応液をろ過してろ過ケーキを得て、真空乾燥(45℃、-0.1 MPa、2 h)して化合物10を得た。
【0332】
MS m/z: 390.1 [M+H]+;
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ = 8.78 (s, 2 H), 8.35 (d, J=5.75 Hz, 1 H), 8.12 (s, 1 H), 7.99 (s, 1 H), 7.88 (d, J=5.75 Hz, 1 H), 7.25 (s, 1 H), 4.09 (s, 3 H), 3.07 (s, 3 H), 2.39 (s, 3 H)。
【0333】
〔実験例1:本発明に係る化合物のインビトロインビトロ酵素学的阻害活性〕
実験試薬:
基本反応緩衝液:20 mMヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸(pH 7.5)、10 mM塩化マグネシウム、1 mM EGTA、0.02% Brij35、0.02 mg/mLウシ血清アルブミン、0.1 mM Na3VO4、2 mM DTT、1% DMSO
必要な補助因子は、単独でCSF-1Rキナーゼ反応に加えた。
【0334】
酵素:CSF-1R濃度が2.5 nMである
化合物の処理:
測定待ちの化合物を100% DMSOで特定の濃度の溶液に製造し、連続希釈をDMSOで知的ピペッティングアシスタントIntegra Viaflo Assistにより行った。
【0335】
実験過程:
1.新鮮なマトリックス配置反応緩衝液を製造し、
2.必要な補助因子の全てを上記反応緩衝液に加え、
3.キナーゼをマトリックス溶液に入れて軽く振り混ぜ、
4.音響技術(Echo550、ナノリットル範囲)により化合物のDMSO溶液をキナーゼ反応混合物に入れ、室温で20分間孵化し、
5.反応混合物に33P-ATP(比活性度、10 μCi/μL)を加えて反応を励起し、
6.室温で2時間孵化し、
7.filter-binding方法によりキナーゼ活性を検出し、
8.キナーゼ活性は、試験サンプルにおける残りのキナーゼを溶媒(DMSO)群と比較し、IC50の値と曲線がPrism(GraphPadソフトフェア)により得られた。測定結果は表1の通りである。
【0336】
【0337】
実験の結論:本発明に係る化合物は、CSF-1Rキナーゼに顕著な阻害作用を有する。
【0338】
〔実験例2:浸透性研究(MDR1-MDCK)〕
実験の目的:
Caco-2単層細胞モデルにより試験品の双方向浸透性を測定した。
【0339】
実験方法:
Caco-2細胞をTranswell-96ウェルプレートに接種し、接種密度が1×105細胞/cm2であった。細胞を二酸化炭素インキュベーターに入れて28日間培養した後に輸送実験に使用し、この間、4日~5日ごとに培地を1回交換した。
【0340】
緩衝液は、10 mM HEPESのHank’s平衡塩緩衝液(pH 7.40±0.05)であった。試験品を緩衝液で2 μMに希釈した。培養プレートにおける培地を除去し、予熱された輸送緩衝液により細胞を2回すすいだ。投与液と緩衝液をそれぞれ対応する細胞プレートウェル(各頂端と基底端のウェルにそれぞれ75 μLと250 μL試料を入れ、n=2)に加え、双方向輸送実験を開始させた。試料を加えた後、細胞プレートを37±1℃で置き、5% CO2及び飽和湿度条件下で120分間インキュベートした。
【0341】
開始投与液は即ちT0試料であり、試料を加えた後、それを取って輸送緩衝液(Hank’s平衡塩緩衝液)及び停止液(250 ng/mLトルブタミド(tolbutamide)を含むアセトニトリル溶液)と一定の割合で混合した。120分間インキュベートした後、投与端と受け端から最終試料を収集し、同様に輸送緩衝液及び停止液と一定の割合で混合した。
【0342】
全ての試料を渦巻きで振とうした後、4000 rpm、20℃で20分間遠心分離し、上清を取って超純水により1:1(v:v)で希釈した後に2℃~8℃で貯蔵し、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC/MS/MS)により分析・測定した。
【0343】
ルシファーイエロー拒絶実験(the Lucifer Yellow Rejection Assay)によりCaco-2細胞層の完全性を測定した。それぞれの細胞プレートにおいて6個の細胞ウェルをランダムに選択し、頂端に100 μMのルシファーイエローを75 μL加え、基底端に輸送緩衝液を250 μL加えた。120分間インキュベートした後、頂端から20 μLの試料を取って60 μLの輸送緩衝液と混合し、基底端から80 μLの試料を取った。M2eプレートリーダーにより425/528 nm(励起/発光)スペクトルで試料におけるルシファーイエローの相対蛍光強度(the relative fluorescence unit、RFU)を検出した。
【0344】
データの処理:
下記の式で見かけの浸透係数(Papp、cm/s)、拒絶率(effulx ratio、ER)、溶液回収率(%)(%Solution Recovery)を算出した。
【0345】
【0346】
VRは受け端溶液の体積(A面は0.075 mL、B面は0.25 mL)であり、Areaは細胞単層の相対表面積(0.0804 cm2)であり、Timeはインキュベート時間(7200 s)であり、C0は投与端の試験品のピーク面積の比率であり、VDは投与端の体積(A面は0.075 mL、B面は0.25 mL)であり、CDとCRはそれぞれ投与端と受け端の試験品のピーク面積の比率である。
【0347】
ルシファーイエローの基底端まで透過する百分率は、下記の公式で算出された:
【0348】
【0349】
RFUApical及びRFUBasolateralはそれぞれ、ルシファーイエローの頂端と基底端での相対蛍光強度である。VApical及びVBasolateralはそれぞれ、頂端と基底端のローディング体積(それぞれ0.075 mLと0.25 mL)である。
【0350】
【0351】
結論:化合物1の塩酸塩の浸透性は、PLX-3397より優れている。
【0352】
〔実験例3:シトクロム酵素阻害研究(CYP inhibition)〕
実験の目的:
CYPアイソザイムの混合プローブ基質によりヒト肝臓ミクロソームシトクロムP450アイソザイム(CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6及びCYP3A4)に対する試験品の阻害性を評価した。
【0353】
実験方法:
試験品をDMSOで10 mMの原液に製造した。反応プレートの無阻害剤対照(NIC)、試験品試料ウェルに178 μLのヒト肝臓ミクロソームと基質の混合物溶液を加え、氷上に置いた。希釈プレートからそれぞれブランク溶剤、試験品作動溶液を2 μL取って反応プレートに加えた(最終濃度は0.05 μM~50 μM)。反応プレートを37±0.2℃の水浴釜において10分間予熱した。液体処理ワークステーションにより20 μLの補助因子溶液を取って反応プレートに加え、反応を起動した。
【0354】
10分間後、400 μLの停止液を反応プレートに加えて反応を停止させ、そして反応プレートを氷上に5分間置いた。プレートを10分間振とうして溶液を均一にし、4000回転/分間で20分間遠心分離し、その後上清液を取り出して適当な割合で超純水を加えた。液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC/MS/MS)により基質と生成物のピーク面積を検出した。試料は検出前に2℃~8℃の環境で保存した。
【0355】
液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)方法により、プローブ基質により生成された代謝物と内部標準ピーク面積の比率を測定した。分析物と内部標準の保持時間、クロマトグラムの収集及びクロマトグラムの積分は、ソフトフェアAnalyst(AB Sciex、Framingham、Massachusetts、USA)により処理された。
【0356】
データの処理:
SigmaPlot(V.11)により、試験品の濃度に対する平均百分率活性に対して非線形回帰分析を行った。3パラメータ又は4パラメータ反曲対数方程式によりIC50値を算出した。試験品の最高濃度(50 μM)の作用下でCYP百分率活性が50%よりも大きい場合、IC50値は「>50 μM」と標識された。
【0357】
3パラメータ反曲対数方程式:
【0358】
【0359】
4パラメータ反曲対数方程式:
【0360】
【0361】
max:最大酵素活性。
【0362】
min:最小酵素活性。
【0363】
x:試験品又は陽性対照阻害剤の濃度。
【0364】
y:対応濃度での酵素活性、hillslope:勾配。
【0365】
IC50:半阻害濃度。
【0366】
最小酵素活性が±10%以内にある場合、4パラメータ反曲対数方程式を使用し、そうでない場合は3パラメータ方程を使用した。
【0367】
【0368】
結論:本発明に係る化合物は、5つのCYPアイソザイムへの阻害程度が弱く、薬剤併用によるリスクが低減される。
【0369】
〔実験例4:薬物動態研究(PK)〕
実験の目的:
本実験は、試験品の静脈注射と経口投与後の雄C57BL/6Jマウス及びSDラット血漿における薬物動態の状況を研究するためである。
【0370】
実験方法:
動物をランダムに2群に分け、1群あたり3匹の雄であった。化合物を所定の製剤(溶媒は0.5% MC)に製造し、静脈注射製剤は透明な溶液であり、経口製剤は透明又は均一な懸濁液であってもよい。
【0371】
動物は、投与後の5分間、15分間、30分間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間に頸静脈から穿刺し、又は伏在静脈から全血試料を採取した。抗凝固剤を含む遠心分離管に全血試料を加え、4℃で、3000 gを15 min遠心分離し、上清血漿を取ってドライアイス上で急速凍結し、その後、LC-MS/MS分析が行われるまで-70±10℃の冷蔵庫に保存した。
【0372】
データの処理:
WinNonlinTM Version 6.3.0 (Pharsight、Mountain View、CA)薬物動態ソフトフェアにより、ノンコンパートメントモデルで化合物の血漿中薬物濃度のデータを処理した。ピーク到達濃度(Cmax)とピーク到達時間(Tmax)及び定量可能な最終時間は、血中薬物濃度-時間図から直接取得された。
【0373】
対数線形台形法により下記の薬物動態パラメータを算出する。即ち、血漿クリアランス(CL)、分布容積(Vd)、排出相半減期(T1/2)、0時から終端時点の薬物の体内での平均滞留時間(MRT0-last)、0時から無限の時間の薬物の体内での平均滞留時間(MRT0-inf)、0時から終端時点の時間-血漿濃度曲線下面積(AUC0-last)、0時から無限の時間-血漿濃度曲線下面積(AUC0-inf)及び生物学的利用能(F)である。
【0374】
実験結果:
【0375】
【0376】
結論:本発明に係る化合物は、薬物動態の半減期、暴露量などの指標を顕著に向上させることができる。
【0377】
〔実験例5:化合物1の塩酸塩のBa/F3-TEL-CSF1R細胞同所移植腫瘍nu/nuヌードマウスモデルに対する体内薬力学研究〕
(実験の目的)
被験薬化合物1の塩酸塩のBa/F3-TEL-CSF1R細胞同所移植瘤モデルにおける体内薬効を評価した。
【0378】
(実験設計)
細胞の培養:Ba/F3-TEL-CSF1R細胞株を1640培地(Biological Industries)+10%ウシ胎児血清(BI)+1%二重抗生物質(Penicillin Streptomycin solution、Coring、USA)により、37℃、5% CO2で培養し、週2回継代処理した。細胞飽和度が80%~90%になり、数量が要求に達した場合、細胞を集め、カウントし、接種した。
【0379】
<動物>:雌、6週齢~8週齢、体重18グラム~22グラムのnu/nuマウスで、合計28匹が必要であり、北京維通利華実験動物技術有限公司より提供された。
【0380】
<腫瘍の接種>:0.2 mL(2×106個) Ba/F3-TEL-CSF1R細胞懸濁液を尾静脈注射により各匹のマウスの体内に接種し、10日目にマウスの体重によってランダムに群分けした。
【0381】
<動物実験の群分け及び投与計画>
【0382】
【0383】
<動物の飼育>:動物が到着した後、実験環境で隔離検疫されて7日間飼育されてから、実験を開始することができた。
【0384】
動物は、SPFグレードの動物飼育室において個別換気ケージで飼育され、1ケージあたり5匹以下であった。
・温度:20℃~26℃
・湿度:35%~75%
・光照明:12時間明、12時間暗
・トウモロコシの芯製の床材で、週1回交換
・飲食:自由に摂食させ、乾燥したペレット飼料は放射線照射で殺菌された。
・摂水:自由に水を摂取させ、飲用水は酸性化で殺菌された。
・動物の標識:耳パンチ。
【0385】
<動物の群分け>:接種が完了した後、毎日皮下担腫瘍状態を観察し、群分け前に動物の体重を量り、腫瘍の体積を測定し、データによってランダムに群分けした。
【0386】
<観察>:この実験計画の作成と何れの修正も、合肥中科普瑞昇生物医薬科技有限公司の実験動物福祉倫理委員会により評価されて承認された。毎日動物の健康状況及び死亡状況をモニターし、ルーチン検査としては、動物の腫瘍増殖状況、活動能力、飲食、体重、目、毛髪及び他の異常な行為、外見的兆候や他の異常な様子を含む。各群の動物数に基づいて群内の動物死亡数と副作用を記録した。
【0387】
<実験の指標>:毎日体重を量り、且つ動物の生存状態を観察し、実験終了時(最後投与後の4時間)にマウスを安楽死させて脾臓、肝臓を取って重量を量り、且つ写真を撮影した。
【0388】
<実験の結果は、
図1に示されている。>
結論:TEL-CSF1R-BaF3細胞脾腫実験において、10 mpk等用量の化合物1の塩酸塩は、圧倒的に優れた効果を示した!高、中、低という3つの用量は明確な用量相関性を示しており、1 mpk投与量では顕著な薬効を示し、薬効はPLX-3397に相当し、且つ統計的にPLX-3397よりも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0389】