(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】中古端末の自動グレーディング方法と装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/89 20060101AFI20250203BHJP
【FI】
G01N21/89 Z
(21)【出願番号】P 2023549879
(86)(22)【出願日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2023026000
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】519280025
【氏名又は名称】株式会社CDRエコムーブメント
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】関口利宏
(72)【発明者】
【氏名】石坂正宏
(72)【発明者】
【氏名】今井綾乃
(72)【発明者】
【氏名】原田望
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-148593(JP,A)
【文献】特開2008-286646(JP,A)
【文献】特開2015-040835(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0067559(KR,A)
【文献】中国実用新案第205701488(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0330910(US,A1)
【文献】特表2022-553084(JP,A)
【文献】特開2021-043967(JP,A)
【文献】特開2021-081221(JP,A)
【文献】特開2018-205197(JP,A)
【文献】特開2015-049213(JP,A)
【文献】特開2023-029260(JP,A)
【文献】特表2022-525855(JP,A)
【文献】特開2002-082060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末を送る1本のコンベアに代えて、2本のコンベアを走行方向に関して当該端末の長さ未満の隙間を開けて直列した形になる第1コンベアと第2コンベアとして備え、前記第1コンベアと第2コンベアの隙間を上下方向から挟んで、前記隙間の上方に、当該隙間を通る前記端末の走行方向の後方の斜め上方から走行方向の前方へ向けてその端末の表面を照明する照明装置とその端末の走行方向の前方の斜め上方から走行方向の後方へ向けてその端末を撮像する1つのカメラとを暗箱状空間に設けた第1撮像データ形成部として配置すると共に、前記隙間の下方に前記第1撮像データ形成部を上下反転させた向きの照明装置とカメラを備える第2撮像データ形成部として配置する一方、前記第1コンベアと第2コンベアの走行方向に関して前記隙間の左右側に、移動される端末の左右の側面に向けて水平面に関し略45度の傾斜角を付与したミラーを配置し、前記端末が前記隙間を通過するとき、前記第1撮像データ形成部と第2撮像データ形成部とを同時に作動させて、第1撮像データと第2撮像データとを同時に取得すると共に、前記ミラーに写された前記端末側面の鏡像を、前記第1撮像データ形成部のカメラにより、その対物レンズの光軸を前記第1、第2コンベアの走行方向に直交する方向で変更して撮像し、当該端末の左右側面の撮像データを取得する外観検査用の撮像データの取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォンなどの中古携帯端末(以下、中古端末、又は端末という。)を再生して商品化する工程において、実行される各端末の外観検査の撮像データに基づき、新たな商品としての等級付け(以下、グレーディング、又はランク付ともいう。)をAI(artificial intelligence)により自動的に行う方法とそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より中古品として買取った端末を再生して商品化することが行われており、中古端末の商品化業務に有用と思われる技術が特許文献1~3などにより提案されている。しかし、提案されている文献の中に中古端末の自動グレーディングに係るものは見当たらない。
【0003】
因みに、従来から実行されている中古端末の人手を主体とした商品化工程の概要を
図5に示して説明する。
商品化される中古端末は、商品化工程に乗せるため「入庫」した端末の中から商品化不能と判断した端末を除去し残った端末を「受入」に置き、「受入」に置かれるすべての端末を、次の「消去工程」で残留データを消去し「機能検査」と「外観検査」を行う検査工程へ移送している。
【0004】
そして「機能検査」と「外観検査」は、端末を次の「グレーディング」工程で等級付される再生された商品とするため、検査結果に基づいてグレーディング(等級付け)するための検査工程として実行されている。
なお、グレーディング結果やその他の基準によって分類された端末は、「在庫棚」に保管して買取り業者からの注文を待ち、複数の買取り業者(発注者)から注文があると各発注者向けに注文内容に則した各端末を個装して「梱包」し、各梱包に「封緘」を施す流れで「出荷」されている。
【0005】
図5に示した従来の商品化工程では、各工程がベルトコンベアBCで結ばれ、各工程の拠点には、作業台、仮置き棚、工具等が備えられて少なくとも一人の担当作業員がついて各工程が実行されている。
【0006】
上記のように従来の中古端末の商品化工程は、各工程が殆ど作業員による人的作業であったため、作業効率や作業結果、或は作業精度に各作業員の経験差や能力差などによりバラつきが生じ易いという難点があった。特に外観検査に基づくグレーディングでは、一応の基準があるものの作業員の経験や勘による主観的な判断によるものであったため、判断作業に時間を要する上に判断したグレードにバラつきが生じていた。
【0007】
上記の問題点に関し、本発明の発明者らは、先に、外観検査を含む検査工程を人手によらず自動的に実行できる発明を、特願2022-203406として提案している。
【0008】
提案した発明は、端末の機能検査、外観検査のいずれも、人手によらず自動的に検査を実行できる技術であり、グレーディングも検査データに基づいて自動的に判断する技術であるから、従来の人手に依るグレーディングの問題点を概ね解消できるものであったが課題も残っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2022-539909号公報
【文献】特許第5820464号公報
【文献】特許第4171453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、商品化する中古端末の外観検査を、新しい撮像形態を採用することにより、検査精度を格段に高めることができると共に、新しい撮像形態によって得られる高精度の撮像データに基づいて再生される端末のグレーディングをAIで自動的に行う方法を提供することを課題の一つとする。
【0011】
ところで、中古端末の外観の良否は、端末のケーシング(筐体)の表面(液晶表示面)、裏面、外周面、外周の角部にキズ(引っ掛き、凹状、凸状などのキズ)があるか否か、キズがある場合その程度はどうか(深いか浅いか、或は高いか低いか等)で判断されるが、中古端末は一見綺麗に見えても微細なキズ(擦りキズ)がついたものが多いため、微細なキズであっても明瞭・明確に撮像できる技術の開発が望まれている。
よって本発明は、微細なキズでも明確な撮像データとして取得することも課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決することができる本発明の構成は、端末を平面内で移動させ、移動する前記端末の外面(表面又は裏面)に対し、前記端末の移動方向に関し端末後方の斜め上方から前方へ向けて照明光を当該端末に照射すると共に、前記移動方向に関し端末前方の斜め上方から後方へ向けたカメラ(以下、デジタルカメラ、又はDカメともいう。)で前記端末の証明部位を複数枚撮像し、その撮像データを処理して形成した前記端末のキズデータを、サーバにおいて、データベースにグレード別に分類されて格納されている複数種の基準グレードデータに参照し、前記キズデータが属すると判断した基準グレードデータのグレード(ランク)を当該端末のグレードと判定し、その判定結果を出力することを特徴とする。
【0013】
本発明において、移動される端末は、表側又は裏側を上に向けてベルトコンベアで移動させるとき、前記の照明光の照射とDカメによる撮像を行い、次いで当該端末を反転させて裏側又は表側を上に向けて移動させ、前記と同様の照明光の照射とDカメによる撮像を行うことによって、当該端末両面の撮像データを取得する形態がある。
【0014】
具体的な撮像形態の例としては、一本のコンベアを水平姿勢で一方向に走行させる形態で配置し、コンベアの走行方向の手前側に、端末の表側(又は裏側)の撮像データ形成部(以下、第1撮像データ形成部という)として、暗箱状空間の中に照明用の光源と撮像用のDカメを配置して構成する。
【0015】
端末の裏側(又は表側)の撮像データ形成部(以下、第2撮像データ形成部という。)は、前記コンベアの走行方向の前方側に、前記第1撮像データ形成部と同じ構成によって配置される。
【0016】
前記コンベアにおいて、第1撮像データ形成部と第2撮像データ形成部の間には、当該コンベアに載って搬送される端末を反転させる反転機構が設けられる。
反転機構は、一例として移動して来る水平姿勢の端末を掴んで上昇し、上死点で保持した端末を180度回転させて降下してコンベア上で保持を開放する機構を、モータを駆動源とする昇降機能と回転機能を有するグリップにより構成される。グリップにはエアー利用の吸盤タイプと機械的構成の掴み具がある。
【0017】
本発明の第1撮像データ形成部、及び第2撮像データ形成部を構成する照明光の光源とDカメは、その上下方向の位置、並びに傾斜の角度を任意に変更できる調整機能を備えたものでもよい。前記の位置及び角度の調整や設定は、移動開始する端末を、別のDカメで撮像して得られる当該端末の大きさ及び厚さのデータに基づいて自動的に調整又は設定されるようになっている。
【0018】
前記位置及び角度の自動調整の機構としては、光源及びDカメとも略同じである。一例として、モータを駆動源とし、ラック・ピニオン機構や送りネジ機構で対象物(光源又はカメラ)に昇降等の直線動作をさせる直線運動機構と、対象物(光源及びカメラ)の設定角を変更する回転機構とにより構成され、前記モータの制御部がサーバの制御部から供給される制御信号に基づいて回転制御されることにより、直線運動と回転運動が駆動制御される。
【0019】
以上の説明においては、端末の表面と裏面の撮像データは、一本のコンベア上に直列に配置した第1撮像データ形成部と第2撮像データ形成部において、時系列的に形成する構成であった。本発明では、第1撮像データと第2撮像データとを同時に形成して獲得できる構成とすることがある。この点について以下に述べる。
【0020】
第1撮像データと第2撮像データを同時に形成して取得する構成の例としては、次の形態がある。
【0021】
まず端末を送るコンベアを2台用意し、その2台のコンベアを走行方向に関して端末1台の長さ未満の隙間を開けて分離した形になる第1コンベアと第2コンベアとして配置する。
次いで前記第1コンベアと第2コンベアの隙間を挟んで、両コンベアの上方と下方とに、夫々、上部暗箱状空間と下部暗箱状空間とを形成する。
上部暗箱状空間と下部暗箱状空間との夫々の中に、先に説明した要領で照明用光源と撮像用のDカメを配置する。これによって上部暗箱状空間が第1撮像データ形成部に構成され、下部暗箱空間が第2撮像データ形成部に構成される。
以上の構成により、第1撮像データと第2撮像データとを、第1コンベアと第2コンベアの隙間を上下方向から挟んで配置した第1撮像データ形成部と第2撮像データ形成部において、同時に形成し取得することができる。この構成では端末の反転機構が不要になる。
【0022】
第1撮像データと第2撮像データを同時に形成して取得できる上記機構は、さらに、ミラーを利用する構成で、端末側面の撮像データの取得が可能な構成に展開することができる。この点について、以下に説明する。
【0023】
進行方向に関して第1コンベアと第2コンベアの間に設定した隙間のコンベア走行方向に関する左右側に、移動される端末の左右の側面に向けた水平面(コンベア走行面)に関し45度程度の傾斜を与えたミラー、又はハーフミラーを配置して、当該ミラーに端末の側面がわの鏡像を写し、ミラーに写された端末の側面を、第1撮像データ形成部のDカメにより撮像することにより、端末の左右側面の撮像データ(以下、第3撮像データという。)を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、移動させる端末に光軸を傾斜させた照明光を照射し、照明され移動している端末をデジタルカメラ(Dカメ)で複数枚撮像しこれを処理して撮像データを取得し、取得した撮像データをデータベースが保有しているグレード別の複数種の基準グレードデータに参照して、取得した撮像データをもたらした当該端末のグレードを判定し、その判定データを出力するようにしたから、その判定データによって端末のキズに関するグレードをAIで自動的に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の自動グレーディングシステムにおける端末の撮像データ形成部の基本的構成を説明するための模式的側面図。
【
図2】
図1の撮像データ形成部の手前に、端末の大きさ、厚さに関するデータを取得するため設置した端末情報形成部を備える撮像データ形成部の模式的側面図。
【
図3】端末の表面と裏面の撮像データを、同時に形成、取得できるように構成した撮像データ形成部の模式的側面図。
【
図4】
図4の撮像データ形成部に、端末の側面を撮像するためにミラーを用いた構成例を説明するための模式的正断面図。
【
図5】従来の人手による中古端末の商品化のための工程を説明するための工程図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の自動グレーディング方法を実行できるシステムの一例について
図1~
図4を参照して説明する。
【0027】
図1において、1は端末Tを載せて4m/min前後の速度で走行するベルトコンベア(以下、コンベア1という。)であり、このコンベア1は、走行方向(コンベア1の長さ方向)の前方と後方において、フレーム2Aとフレーム2Bに架装されている。因みに、
図1のコンベア1は、その長さが約2m、幅が300~450mm程度の柔軟な搬送用ベルトで形成されているが、コンベア1は上記数値のベルトとこのベルトを支持するフレーム2A、2Bによる構成に限られるものではない。
なお、本明細書において、コンベア1の走行方向に関して手前側を後方(又は後)、向こう側を前方(又は前)、コンベア1の上面に関し直交する垂直方向の上方側を上方(又は上)下方側を下方(又は下)とする。
【0028】
3はコンベア1の走行方向に関して手前側(後方)に形成した第1撮像データ形成部、4はコンベア1の走行方向に関し向こう側(前方)に形成した、前記第1撮像データ形成部と同じ構成の第2撮像データ形成部である。
【0029】
第1撮像データ形成部3と第2撮像データ形成部4は、構成が同じであるから、以下は第1撮像データ形成部3の説明になるが、第2撮像データ形成部4は、同一構成部材の符号が第1撮像データ形成部3と異なるのみである。
【0030】
第1撮像データ形成部3は、コンベア1の手前側(後)に、前後で2本の縦向きフレーム2A、2Aに支持させて設け暗箱状のエリア3a(以下、暗箱エリア3aともいう)の中に、コンベア1に置かれた端末Tに対し、前、後の斜め上方に配置した照明装置3bとデジタルカメラ3C(以下、Dカメ3cともいう。)によって構成される。
【0031】
具体的には、照明装置3bは、暗箱エリア3a内の端末Tに対し、後方の斜め上方からLED等面状に配置した照明光源(以下、光源ともいう。)による照明光を照射できる姿勢で配置されている。一方、Dカメ3cは、照明される端末Tの前方の斜め上方から当該端末Tに対し対物レンズを向けた姿勢で配置されている。
【0032】
なお、照明装置3bとDカメ3cの配置姿勢は、端末Tの種類(機種やメーカの相違など)による端末Tの大きさ、上下方向の厚さの違いに対応するため、図示しないが、上、下方向での変位と位置決め、及び、照射光軸やカメラ光学系の光軸の傾斜角の変更と位置決めができる構成を備えたものがある。この点については、後述する。
【0033】
第2撮像データ形成部4は、上記の第1撮像データ形成部3と同じ構成であり、前方のフレーム2B,2Bに配設した暗箱エリア4aとこの暗箱エリア4aの内部に、前記照明装置3b,Dカメ3cと同じ要領で配置した照明装置4b、Dカメ4cを具備している。
【0034】
図1の本発明装置では、コンベア1に関し後方のフレーム2Aと前方のフレーム2Bの間に、コンベア上の端末Tを反転させる反転機構5が配置されている。
【0035】
反転機構5は、コンベア1の上の端末Tを吸盤で保持して上昇し、上死点で仮置台に載せて開放し、載っている端末Tを180度回転させたら再び吸盤で保持して下降し、保持している端末Tをコンベア1の上に置く動作をする。反転機構5は、端末保持具5aと、該保持具5aを有するエレベータ5b、上昇した端末を仮置きして反転させる仮置台5c、モータ等による駆動機構部により構成される。
【0036】
一例として、端末保持具5aは、吸盤式のものが好ましいが、エア式や電磁式で開閉する掴み手段で端末Tを掴み、開放する機械的構成のものであってもよい。この端末保持具5aを昇降させるエレベータ5bは、エアシリンダ機構や送りネジ機構、或はラック・ピニオン機構などのリニア運動機構により構成される。そして端末保持具5a、エレベータ5bは、制御部サーバ6が備える第3制御部63によって制御される。
【0037】
第1撮像データ形成部4と第2撮像データ形成部4は、制御部サーバ6の第1、第2の制御部61,62によってその駆動が制御されると共に、2台のDカメ3cと4cによる端末Tの表面と裏面の複数の撮像を処理した撮像データ(第1撮像データと第2撮像データ)を、制御部サーバ6に送る。
【0038】
即ち、制御部サーバ6は、端末Tの表側(のキズ)を撮像する第1撮像データ形成部3の照明装置3bとDカメ3cの駆動制御をする第1制御部61と、端末Tの裏側(のキズ)を撮像する第2撮像データ形成部4の照明装置4bとDカメ4cの駆動を制御する第2制御部62を備えている。
【0039】
さらに第1制御部61と第2制御部62とは、次の機能を有する。
即ち、端末Tがコンベア1で投入側から第1撮像データ形成部3と第2撮像データ形成部4を通って排出側へ搬送されているとき、第1撮像データ形成部3の手前側のフレーム2Aに設けた端末検出センサ(図示せず)が移動する端末Tを捉えると、トリガー信号t1を第1制御部61に出力する。次いで第2撮像データ形成部4の手前側のフレーム2Bに設けた端末検出センサ(図示せず)が移動する端末Tを捉えると、トリガー信号t2を第2制御部62に出力する。
【0040】
トリガー信号t1が入力すると、第1制御部61は、第1撮像データ形成部3の照明装置3bとDカメ3cを駆動状態にする。移動する端末TがDカメ3cの画角から離れると前方のフレーム2Aに設けた端末検知センサ(図示せず)が移動して来る端末Tを検出し、エンド信号e1を第1制御部61に供給し、照明装置3bとDカメ3cの作動状態を止める。
【0041】
第1撮像データ形成部3での撮像を終えた端末Tは、そのまま搬送され前方のフレーム2Aに設けた前記の端末検知センサに検知される。この検知は前記エンド信号e1と同じであるがトリガー信号t3として第3制御部63に送られる。トリガー信号t3を受けた第3制御部63では反転機構5を駆動制御して端末Tを反転させる。反転された端末Tが第2撮像データ形成部4に入ると、第2撮像データ形成部4の手前側のフレーム2Bが備える端末検知センサ(図示せず)によりトリガー信号t2が生成される。エンド信号e2は、前方のフレーム2Bに設けた端末検知センサ(図示せず)が移動して来る端末Tを検出すると生成され第2制御部62に供給される。トリガー信号t2とエンド信号e2の第2制御部62に対する作用は上記の第1制御部61の場合と同様である。
第1制御部61と第2制御部62では、2つの撮像データ形成部3,4で取得される撮像データを分析処理し、端末Tの表面と裏面のキズに関してグレーディングの自動判定に必要なデータ(以下、説明の便宜上「キズデータ」という。)を形成する。
【0042】
第1撮像データ形成部3と第2撮像データ形成部4において、夫々のDカメ3cと4cによって撮像された端末Tの表面の撮像データと端末Tの裏面の撮像データは、夫々に第1制御部61と第2制御部2で処理され、前記端末Tに紐付けたこの端末Tの表側に関するキズデータと裏側に関するキズデータとして、データベース7Aと7Bに格納される。
【0043】
端末Tの表側のキズと裏側のキズに関し、前記データベース7Aと7Bに格納される端末Tの表面と裏面の撮像データを処理したキズデータは、これらのキズデータをグレーディング(ランク付け)するため、グレーディングサーバ8に送られこのサーバ8においてAIでグレーディング処理される。
【0044】
グレーディングサーバ8でのAIによるグレーディングの処理形態の一例は次のとおりである。
グレーディングサーバ8は、端末Tの表面と裏面のキズに関するキズデータを、AIでグレーディング処理して当該端末Tのグレードの判定をする。
このためまず、端末Tの表面と裏面のキズデータを「ヒビ」関する基準データに参照し「ヒビ」が有るものと無いものに分ける判定をする。次いでヒビが有ると判定された端末TはDランクに判定し、ヒビが無い判定の端末Tは、擦りキズ(打痕を含む)の程度(大きさ、量)に基づいて予め生成した複数の基準データに参照され、A,B,Cのいずれかのランクに判定する。この例ではAランクをキズが無いもの、キズの程度が極めて小さいものとしている。
上記判定のために、ここでは上記A~Dランクの判定の基準になるデータを基準グレードデータとしてAIに学習させてデータベース8aに備えている。なお、端末Tのヒビ以上の大きな破損は検査担当者の目視によりD-にランクされる。因みに、ヒビの撮像データは、第1、第2撮像データ形成部3,4の照明3b、4bとカメラ3c、4cの調整により略100%の確率で取得できる。
本発明において、グレードのランクの数や学習する各グレード判定の基準となるデータの内容は、いずれも任意に設定でき、上記実施の態様は一例である。
【0045】
上記のように前記制御部サーバ6のデータベース7A、7Bから端末Tの表面と裏面の撮像データを処理したキズデータは、グレーディングサーバ8の演算処理部8bに送られる。該演算処理部8bでは、送られてくるキズデータをデータベース8aのAIで生成した複数種の基準グレードデータに逐次参照して端末Tのグレード(ランク)を判定している。この判定信号は、出力部8cからランク付けデータ(グレーディングデータ)として出力される。出力される判定信号は、当該端末Tのグレード(ランク)として表示部8dに表示される。
図1では、A、B、C3段階が端末Tのグレードとして表示部8dに表示される例を模式的に示している。
【0046】
演算処理されてグレードが判定されランク付けされた端末Tの撮像データを処理したキズデータは、データベース8aにおいて同じランクの基準グレードデータに加えることができる。実際の撮像データから形成して判定された各グレードのキズデータが基準グレードデータに加えられると、各グレードのデータ量が増えて判定精度が向上する。
以上の説明において制御部サーバ6とグレーディングサーバ8は個別のサーバで説明したが、一基のサーバコンピュータによって2台のサーバ6と8の役割・機能を担当する構成にすることもできる。
【0047】
次に、
図2の本発明装置の別例について説明する。
中古端末の外観検査に基づくグレーディング工程では、単一機種についての外観検査とその結果に基づいたグレーディングと、異なる機種が混在した端末Tについての外観検査とその結果に基づくグレーディングがある。
【0048】
図1により先に説明した本発明装置の実施形態は、主として単一機種の外観検査とその検査結果に基づいたグレーディングについてであったが、
図2は、異なる機種が混在する場合の外観検査とグレーディングを実行するための装置の概要を示している。
なお、
図1の装置でも同程度のサイズであれば異なる機種に適用できる。この点
図2の装置は端末Tのサイズに左右されない。
【0049】
図2の装置では、第1撮像データ形成部3、第2撮像データ形成部4、反転機構5は、
図1の装置と同じ構成のものであるが、コンベア1の長さが長い点、及び第3のカメラを特設する点に
図1の装置との相違点がある。
まず、コンベア1は、その長さを走行方向の後側において
図1のコンベア1よりも長いものを使用している。そして後側の長くした部分に、コンベア1に載せられた端末Tの大きさ(送り方向に関して長さと幅)と厚さ(コンベア1の走行面に直交する上下方向の高さ)を撮像する第3のデジタルカメラ9(Dカメ9ともいう)を特別に配置した構成としている。
【0050】
特設したDカメ9は、コンベア1を支持した図示しないフレームに配置され、当該カメラ9のほぼ真下を移動する端末Tを撮像し、その撮像データを制御部サーバ6の第4制御部64に送る。第4制御部64では、撮像データから当該端末Tの大きさと厚みを求め、求めた大きさのデータと厚さのデータから第1撮像データ形成部3の照明装置3b、Dカメ3c及び第2撮像データ形成部4の照明装置4bとDカメ4cの夫々について、夫々に、照明装置とカメラの高さ方向の位置調整と、照明とカメラの光軸の傾斜角を調整するための信号を第1と第2の制御部61、62に出力する。位置と傾斜角の調整は、第1、第2の制御部61、62によって制御される。
【0051】
上記のようにして調整及び設定された位置や傾斜角は、当該端末Tが第2撮像データ形成部4を出たところ(Dカメ4cの画角から外れたところ)で、解除されて元の位置、角度に復帰する。なお、
図2の装置でも単一機種の取扱いと処理ができることは勿論である。単一機種の場合には、Dカメ9の系統はオフにしておく。
【0052】
図3は、第1撮像データ形成部3と第2撮像データ形成部4を、間に隙間Gsを持たせて直列に並べた2本のコンベア1Aと1Bの当該隙間Gsを上、下から挟む形で配置した本発明装置の第3の実施形態の概要を示した側面図である。
【0053】
図3において、隙間Gsを置いて直列に配置したコンベア1Aと1Bは、フレーム2Aと2Bに架装して支持され、上面に端末Tを載せて
図3の左方から右方へ走行するように配置されている。
【0054】
2本のコンベア1Aと1Bの間に形成されている隙間Gsは、端末Tの略全長に見合う幅(走行方向に関して)に設定されている。そして、コンベア1Aに運ばれる端末Tが隙間Gsから落下することなくコンベア1Aからコンベア1Bに乗り移ることができるように、一例として端末Tの側縁(走行方向に関して左右の側縁)を下から支えるレール状の支持材(図示せず)が配置されている。
【0055】
上記の隙間Gsを置いて配置されたコンベア1A,1Bに対し、その隙間Gsを挟んだ上方と下方には、暗箱状空間による第1撮像データ形成部3と第2撮像データ形成部4が、フレーム2A、2Bに支持させて配置されている。
【0056】
第1撮像データ形成部3と第2撮像データ形成部4には、先の実施形態と同様に、端末Tの表面と裏面に対して照明光を照射する照明装置3b、4bと照明されている面を撮像するDカメ3c、4cとが設けられている。
【0057】
図3において、
図1と
図2により説明した第1撮像データ形成部3と第2撮像データ形成部4の構成において異なる構成は、両データ形成部3、4が2本のコンベア1A、1Bが形成する隙間Gsを挟んで上下に配置されている点と、
図4に示すように、隙間Gsの左右側の斜め下方に対称的な傾斜角度で2枚のミラー10、11を設けた点である。
図3では、ミラー10、11は第2撮像データ形成部4に配置されている。
【0058】
ミラー10、11を配置することにより、ミラー10と11に写る端末Tの側面の像を、Dカメ3cの首を振って位置決めすることにより、撮像することができる(
図4参照)。
即ち、
図3の例では、第1撮像データ形成部3のDカメ3cは、端末Tの表面と、当該端末Tの左右の両側面との合わせて3面の撮像データを取得することができる。
【0059】
上記2枚のミラー10、11は、第2撮像データ形成部4に配置したが、本発明ではコンベア1A、1Bに関して対称的な向きで第1撮像データ形成部3の側に配置することもできる。
【0060】
この場合には、第2撮像データ形成部4のDカメ4cによって端末Tの両側面が撮像されることになる。なお、端末Tの両側面の撮像は、端末Tの表面と裏面の撮像が完了してその次の工程として実行される。
【0061】
上記のように第3の実施形態の本発明装置は、端末Tの表目と裏面のキズを同時に撮像できると共に、ミラー10、11を配置する構成で端末Tの側面のキズも撮像することができるので、外観検査の精度を上げる上で有効である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は以上の通りであって、中古端末の表面と裏面のキズの状態を検査する手段を、移動させる端末に光軸を傾斜させた照明光を照射し、照明されている端末をデジタルカメラ(Dカメ)で複数枚撮像しこの撮像を処理して撮像データを取得するように構成し、取得した撮像データをデータベースが保有している複数種のモデルデータに参照して、取得した撮像データをもたらした端末グレードを判定することにより、端末のキズに関するグレードを自動的に行うことができる。
また、グレードが判定されたキズデータは、格納されている基準グレードデータに加えることができるからグレーディングの判定精度をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 コンベア
2A、2B フレーム
3 第1撮像データ形成部
3a 暗箱エリア
3b 照明装置
3c デジタルカメラ(Dカメ)
4 第2撮像データ形成部
4a 暗箱エリア
4b 照明装置
4c デジタルカメラ(Dカメ)
5 反転機構
6 サーバ
61 第1制御部
62 第2制御部
63 第3制御部
7A、7B データベース
8 グレーディングサーバ
8a データベース
8b 演算処理部
8c 出力部
8d 表示部
【要約】
【課題】
商品化する中古端末の外観検査の精度を、全く新しい検査形態を採用することにより格段に高め、新しい検査形態によって得られる高精度の検査データに基づいて再生される端末の自動グレーディングに寄与する。
【解決手段】
端末Tを平面内で移動させ、移動する前記端末Tの表面又は裏面に対し、当該端末Tの後方斜め上方から前方へ向けて照明光3bを照射すると共に、前記端末Tの前方斜め上方から後方へ向けたカメラ3cで前記端末Tの照明部位を撮像し、撮像した前記端末Tの撮像データをサーバ8のデータベースにグレード別に分類されて格納されている複数種の基準グレードデータに参照し、前記撮像データが属すると判断した基準グレードデータのグレード(ランク)を前記撮像データのグレードと判定し、判定結果を出力する。