(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】電極埋設部材、その製造方法、および基板保持部材
(51)【国際特許分類】
H05B 3/03 20060101AFI20250203BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20250203BHJP
H05B 3/74 20060101ALI20250203BHJP
H05B 3/10 20060101ALI20250203BHJP
【FI】
H05B3/03
H01L21/68 N
H05B3/74
H05B3/10 Z
(21)【出願番号】P 2020209029
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004554
【氏名又は名称】弁理士法人i-MIRAI
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】大木 敬介
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-175179(JP,A)
【文献】特開2001-332560(JP,A)
【文献】特開平04-087181(JP,A)
【文献】特開2020-161589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/03
H01L 21/683
H05B 3/74
H05B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極埋設部材であって、
セラミックス焼結体からなる平板状の基体と、
ワイヤーを織り込んだメッシュで形成され、前記基体に埋設された電極と、を備え、
前記電極は、Mo炭化物のバルク体で構成され
、
前記電極に電気的に接続され、前記基体に埋設されたW金属を含む接続部材をさらに備え、
前記接続部材は、表面にW炭化物層を有することを特徴とする電極埋設部材。
【請求項2】
前記電極のメッシュを形成するワイヤーの線径は、0.02mm以上0.15mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電極埋設部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電極埋設部材と、
前記電極と電気的に接続された端子と、を備えることを特徴とする基板保持部材。
【請求項4】
セラミックス焼結体で形成された電極埋設部材の製造方法であって、
セラミックス原料粉から複数のセラミックス成形体を形成する成形体形成工程と、
前記複数のセラミックス成形体を所定の温度以上、所定の時間以上脱脂処理して複数のセラミックス脱脂体を作製する脱脂工程と、
Moワイヤーを織り込んだメッシュで形成され、カーボンでコーティングされた電極を準備する準備工程と、
前記電極、および前記複数のセラミックス脱脂体を組み合わせて、平板状に形成され、
電極が埋設された電極埋設部材前駆体を形成する前駆体形成工程と、
前記電極埋設部材前駆体を、800℃以上1500℃以下で7時間以上熱処理をする熱処理工程と、
熱処理後の前記電極埋設部材前駆体を、前記電極埋設部材前駆体の主面に垂直方向に一軸加圧焼成して電極埋設部材を得る焼成工程と、を備えることを特徴とする電極埋設部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極埋設部材、その製造方法、および基板保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置用の部材としてセラミックス焼結体に電極が埋設されたサセプタ-、静電チャックまたはセラミックスヒータ等の電極埋設部材が提案されている。
【0003】
特許文献1には、セラミックスヒーターを、加熱─冷却のサイクルに繰り返し供し、長期間使用した場合に、抵抗発熱体の抵抗値が上昇したり、抵抗発熱体が断線したりするのを、防止することを目的として、セラミックスからなる基材と、基材内に埋設された抵抗発熱体とを有し、抵抗発熱体が、高融点金属からなる本体と、本体を被覆する被覆膜とを有し、本体の熱膨張係数よりも被覆膜の熱膨張係数の方が大きく、被覆膜の厚さが2μm以上である、セラミックスヒーターの技術が開示されている。特許文献1には、好ましくは、被覆膜が、TiN、Mo2C、NbC、TiC、VC、ZrC、WC、TaC、TaN及びZrNからなる群より選ばれた材料によって形成されており、高融点金属がタングステンであり、特に好ましくは被覆膜がTiNによって形成されていると記載されている。
【0004】
特許文献2には、昇温降温繰り返し試験時の抵抗の変化を改善でき、信頼性の高いセラミックスヒーターを得ることが出来る窒化珪素部材及びその製造法を提供することを目的として、タングステン、モリブデン等の高融点金属を窒化珪素を主成分とする部材中に埋設した窒化珪素部材において、高融点金属を高融点金属炭化物で被覆したことを特徴とする窒化珪素部材、及び、炭素を含有するタングステン、モリブデン等の高融点金属を窒化珪素成形体中に埋設し、その後焼成し、高融点金属の表面に焼成中に少なくとも高融点金属炭化物を生成させたことを特徴とする窒化珪素部材の製造法の技術が開示されている。
【0005】
特許文献3には、ヒータ電極層の抵抗値の基板内ばらつきが小さくて、半導体ウェハを均一に加熱できるセラミックヒータを提供することを目的として、一炭化一タングステン粒子を含む導電性ペーストを用いて、窒化アルミニウム製のグリーンシートにヒータ電極層を形成し、次いで、グリーンシートの熱処理工程を行い、この工程では、不活性ガス雰囲気下にて一炭化二タングステンの生成温度よりも低い温度域でグリーンシートを加熱し、その後、グリーンシートを完全に焼結させる本焼成工程を行い、セラミックヒータ1を完成するセラミックヒータの製造方法の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平07-135068号公報
【文献】特開平04-087181号公報
【文献】特開2000-12194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
セラミックス製の焼結体に、メッシュ電極を埋設する場合、メッシュの形態により電極の抵抗を高く設定することが困難になる場合がある。これは本質的に金属自体の体積抵抗率が小さいことに起因している。しかし、電源の仕様やその他の使用上の制約により電極の抵抗値を大きくすることが要求される場合がある。その場合、メッシュの裁断幅を狭くかつ長手方向に長くする必要があるが、裁断幅内のワイヤー数が抵抗値のバラツキに直接影響し、電極の信頼性が低下するため、裁断幅を狭くすることには限界がある。例えば、電極埋設部材をヒーターとして使用する場合、裁断幅を狭くしすぎると基体面内の温度分布にバラツキが生じるため、裁断幅を狭くするだけでは十分な抵抗値を有し基体面内の温度分布が均一な信頼性の高い電極を得ることはできない。
【0008】
また、メッシュ電極としてMoを使用する場合、Moメッシュ電極はセラミックス成形体に埋設して焼成する必要のあるところ、セラミック原料のバインダ、カーボンジグや環境から混入するC成分と反応してしまう。そのため製造条件や電極の位置によって反応性が異なることでMoの炭化度合がバラツキ、Mo電極の抵抗値が基体面内でバラツキ、その結果、基体面内の温度分布のバラツキに繋がっていた。Moは体積抵抗率が小さいが、炭化したMo2Cの体積抵抗率は大きく、この影響が顕著となるからである。また、体積抵抗率を高めるため、あらかじめ炭化物のMo2Cを埋設することが考えられるものの、Mo2Cは脆く、強度、延性が低いため、Mo2Cをメッシュに織ることは現実的でない。
【0009】
そこで、Moメッシュ電極をセラミックス成形体に埋設して焼成する際に、Moメッシュ電極の炭化を促進して電極全部を炭化させることでヒーター電極の抵抗値を大きくすると共に、基体面内の温度分布のバラツキを抑制する電極埋設部材が望まれていた。
【0010】
しかしながら、特許文献1は、セラミックスヒーターを、加熱─冷却のサイクルに繰り返し供し、長期間使用した場合に、抵抗発熱体の抵抗値が上昇したり、抵抗発熱体が断線したりするのを、防止することを目的としているため、Moメッシュ電極を十分に炭化させることはできない。特許文献2は、昇温降温繰り返し試験時の抵抗の変化の改善を目的としているため、Moメッシュ電極を十分に炭化させることはできない。
【0011】
特許文献3は、ヒータ電極層の抵抗値の基板内ばらつきが小さくて、半導体ウェハを均一に加熱できるセラミックヒータを提供することを目的としているものの、一炭化一タングステン粒子を含む導電性ペーストを使用して、一炭化二タングステンの生成をさせないようにする技術であり、このような技術をMoメッシュ電極に適用して、Moメッシュ電極を十分に炭化させることはできない。
【0012】
本発明者らは、セラミック原料のバインダ、カーボンジグや環境から混入するC成分以外に、Moメッシュ電極をCコーティングして適切な温度で熱処理をすることで、Moメッシュ電極を十分に炭化できることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、電極の信頼性を損なわない設計でも電極の抵抗を高くすることができ、電極設計の自由度を高くすることができ、また、基体面内の電極の抵抗値のバラツキを抑制することができる電極埋設部材、その製造方法、および基板保持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の電極埋設部材は、電極埋設部材であって、セラミックス焼結体からなる平板状の基体と、ワイヤーを織り込んだメッシュで形成され、前記基体に埋設された電極と、を備え、前記電極は、Mo炭化物のバルク体で構成され、前記電極に電気的に接続され、前記基体に埋設されたW金属を含む接続部材をさらに備え、前記接続部材は、表面にW炭化物層を有することを特徴としている。
【0015】
このように、電極をMo炭化物(Mo2C)のバルク体で構成することで体積抵抗率が高くなるので、電極の信頼性を損なわない設計でも電極の抵抗を高くすることができ、電極設計の自由度を高くすることができる。また、面内の電極の抵抗値のバラツキを抑制することができる。
【0016】
(2)上述のように、本発明の電極埋設部材において、前記電極に電気的に接続され、前記基体に埋設されたW金属を含む接続部材をさらに備え、前記接続部材は、表面にW炭化物層を有することを特徴としている。
【0017】
このように、電極に電気的に接続される接続部材をW金属を含む材料で構成し、W炭化物層を表面に有する構成にすることで、接続部材の高抵抗化を抑制することができ、接続部材との電気的接続の信頼性を向上することができると共に、接続部材の脆化を抑制することができ、接続部材にクラックが発生する虞を低減することができる。
【0018】
(3)また、本発明の電極埋設部材において、前記電極のメッシュを形成するワイヤーの線径は、0.02mm以上0.15mm以下であることを特徴としている。
【0019】
これにより、電極の抵抗を高い値に設計することがより容易になり、電極設計の自由度をより高くすることができる。また、熱処理時間を相対的に短くすることができ、製造コストを低減できる。
【0020】
(4)また、本発明の基板保持部材は、上記(1)から(3)のいずれかに記載の電極埋設部材と、前記電極と電気的に接続された端子と、を備えることを特徴としている。
【0021】
これにより、電極設計の自由度が高く、面内の電極の抵抗値のバラツキを抑制することができる電極埋設部材を使用した基板保持部材を構成できる。
【0022】
(5)また、本発明の電極埋設部材の製造方法は、セラミックス焼結体で形成された電極埋設部材の製造方法であって、セラミックス原料粉から複数のセラミックス成形体を形成する成形体形成工程と、前記複数のセラミックス成形体を所定の温度以上、所定の時間以上脱脂処理して複数のセラミックス脱脂体を作製する脱脂工程と、Moワイヤーを織り込んだメッシュで形成され、カーボンでコーティングされた電極を準備する準備工程と、前記電極、および前記複数のセラミックス脱脂体を組み合わせて、平板状に形成され、電極が埋設された電極埋設部材前駆体を形成する前駆体形成工程と、前記電極埋設部材前駆体を、800℃以上1500℃以下で7時間以上熱処理をする熱処理工程と、熱処理後の前記電極埋設部材前駆体を、前記電極埋設部材前駆体の主面に垂直方向に一軸加圧焼成して電極埋設部材を焼成する焼成工程と、を備えることを特徴としている。
【0023】
これにより、熱処理工程において電極の炭化が促進され電極をMo炭化物のバルク体で構成することができる。その結果、電極素材の体積抵抗率が高くなるので、電極の信頼性を損なわない設計でも電極の抵抗を高くすることができ、電極設計の自由度を高くすることができる。また、面内の電極の抵抗値のバラツキを抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電極埋設部材の電極をMo炭化物のバルク体で構成することで体積抵抗率が高くなるので、電極の信頼性を損なわない設計でも電極の抵抗を高くすることができ、電極設計の自由度を高くすることができる。また、面内の電極の抵抗値のバラツキを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る電極埋設部材の一例を示す断面図である。
【
図2】実施形態に係る電極埋設部材の変形例を示す断面図である。
【
図3】実施形態に係る基板保持部材の一例を示す断面図である。
【
図4】実施形態に係る基板保持部材の変形例を示す断面図である。
【
図5】実施形態に係る電極埋設部材の製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】(a)~(d)それぞれ実施形態に係る電極埋設部材の製造工程の一段階を模式的に示す断面図である。
【
図7】(a)~(c)それぞれ実施形態に係る基板保持部材の製造工程の一段階を模式的に示す断面図である。
【
図8】実施例および比較例の製造条件および測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、構成図において、各構成要素の大きさは概念的に表したものであり、必ずしも実際の寸法比率を表すものではない。
【0027】
[実施形態]
[電極埋設部材の構成]
まず、本実施形態に係る電極埋設部材の構成を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電極埋設部材の一例を示す断面図である。本実施形態に係る電極埋設部材100は、基体110と、電極120と、を備える。電極埋設部材100は、ヒーター、静電チャック等に適用される。
【0028】
基体110は、セラミックス焼結体からなり、平板状に形成され、一方の主面に基板を載置する載置面112を有する。基体110の材質は、用途に応じて様々な材料を使用することができる。例えば、AlN、Al2O3、Si3N4、SiCなどを使用することができる。また、基体110の形状は、円板状、多角形状、楕円状など、様々な形状にすることができる。
【0029】
基体110を形成するセラミックス焼結体は、AlNを主成分とすることが好ましい。AlNを主成分とするとは、セラミックス焼結体にAlNが90wt%以上含まれることをいう。AlNセラミックスは、熱伝導率をあげるために2a族元素や3a族元素の酸化物からなる焼結助剤を添加することが多い。一般的に、焼結助剤の添加量は、量を増やすと熱伝導率が高くなるが、一定量以上添加すると熱伝導率の低下を引き起こすことが知られている。したがって、2a族元素や3a族元素の酸化物からなる焼結助剤の含有量は、10wt%以下とすることが望ましい。2a族元素の添加物としては、Mg、Ca、Sr、Ba等が挙げられ、3a族元素の添加物としては、Y、La、Sm、Ce等が挙げられる。
【0030】
AlNを主成分とするセラミックス焼結体は、熱伝導率が高く、耐熱性、耐プラズマ性に優れており、添加する焼結助剤の種類や量を調整することで、容易に熱伝導率を調整することができる。そのため、AlNを主成分とするセラミックス焼結体により基体110を形成することで、熱伝導率が調整され、耐熱性、耐プラズマ性に優れた基体110を構成できる。
【0031】
電極120は、ワイヤーを織り込んだメッシュで形成され、基体110に埋設される。メッシュを形成するワイヤーは、線径が0.02mm以上0.15mm以下であることが好ましい。これにより、電極の抵抗を高い値に設計することがより容易になり、電極設計の自由度をより高くすることができる。また、熱処理時間を相対的に短くすることができ、製造コストを低減できる。Moは融点が高く加工が難しいので、線径が0.02mm未満のワイヤーは、製造が困難である。また、線径が0.15mmより大きいワイヤーを織り込んでメッシュを形成すると、抵抗値を高くすることが難しくなり、必要な抵抗値に設計することが難しくなる場合がある。
【0032】
さらに、ワイヤーの線径が0.15mmより大きい場合、焼結時にワイヤーに圧裂(クラック)が生じる虞が高くなる。また、ワイヤーの交点部分のメッシュの厚みは0.3mmより大きくなり、電極120の上部のセラミックスを薄い絶縁層として構成する場合に、絶縁層にクラックを生じさせる虞が増大する。このように、十分に細いワイヤーで電極120を構成することで、焼結時にワイヤーに圧裂が生じる虞をより低減することができ、また、電極120の上部のセラミックスを薄い絶縁層として構成しても、絶縁層にクラックを生じさせる虞をより低減させることができる。
【0033】
電極120は、Mo炭化物(Mo2C)のバルク体で構成される。このように、電極120をMo炭化物で構成することで、体積抵抗率を高くすることができる。また、電極120をバルク体で構成することで、電極材料のペーストを焼成することで作製された電極と比較して、電極120の幅を細く設計した場合であっても断線の虞を低減することができ、電極120の信頼性を高くできる。すなわち、電極120がMo炭化物のバルク体で構成されることで、体積抵抗率が高く、電極の幅を細くしても信頼性を損なわず、面内の抵抗のバラツキも生じにくいので、電極120の抵抗を高くすることができ、電極設計の自由度を高くすることができる。
【0034】
電極120がMo炭化物で構成されるとは、EPMA分析において電極120の断面全面の元素マッピング分析を行ない、ZAF法によりCおよびMoをatom%換算で定量し、C/(C+Mo)比が0.20以上となっていることをいう。
【0035】
電極120がバルク体で構成されるとは、電極120の気孔率が5%以下であることをいう。電極120の気孔率は、例えば、電極120の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で1000~5000倍の倍率で撮影し、アメリカ国立衛生研究所(NIH:National Institute of Health)が開発したフリーソフト「ImageJ」を用いて、撮影した写真データから30μm×30μmの視野を2値化することで測定することができる。なお、測定点としては無作為に5視野観察すればよい。
【0036】
基体110は、複数の電極を備えていてもよい。例えば、ヒーター用電極と静電吸着用電極とを備えることで、電極埋設部材100は、ヒーター付静電チャックとして使用できる。その場合、少なくとも一方の電極が、本発明の電極120であればよい。2以上の電極が本発明の電極120であってもよい。
【0037】
電極埋設部材100は、接続部材130をさらに備えていてもよい。
図2は、実施形態に係る電極埋設部材の変形例を示す断面図である。接続部材130は、基体110に埋設され、電極120に電気的に接続される。これにより、接続部材130を介して電極120に電気を供給でき、電気の供給を安定的に行なうことができる。接続部材130は、W金属を含むことが好ましい。接続部材130がW金属を含むとは、EPMA分析のZAF法による定量分析において接続部材130の断面からWが0.9以上検出されることによって確認されることをいう。
【0038】
接続部材130の厚みは、0.2mm以上5mm以下であることが好ましい。0.2mmより小さい場合、端子140を接続するために端子穴142を設ける際に、破損する虞が増大する。5mmより大きい場合、基体110のセラミックスとの焼成時の収縮率の差や使用時の熱膨張率の差によって、基体110にクラックが入る虞が増大する。
【0039】
接続部材130は、表面にW炭化物層を有していてもよい。その場合、W炭化物層は、0μmより大きく20μm以下であることが好ましい。このように、接続部材130のW炭化物層を表面に有する構成にして、その厚みをごく薄くすることで、接続部材130の高抵抗化を抑制することができ、接続部材130を介した電気的接続の信頼性をさらに向上することができると共に、接続部材130の脆化を抑制することができ、接続部材130にクラックが発生する虞を低減することができる。本発明の製造方法は、熱処理温度がWの炭化が進む温度より相対的に低いためWの炭化が進みにくく、Wからなる接続部材130を埋設した場合でも、その表面のW炭化物層を薄くすることができる。
【0040】
本発明の電極埋設部材は、電極をMo炭化物のバルク体で構成することで体積抵抗率が高くなるので、電極の信頼性を損なわない設計でも電極の抵抗を高くすることができ、電極設計の自由度を高くすることができ、また、面内の電極の抵抗値のバラツキを抑制することができる。
【0041】
[基板保持部材の構成]
図3は、本発明の実施形態に係る基板保持部材の一例を示す断面図である。
図4は、実施形態に係る基板保持部材の変形例を示す断面図である。本実施形態に係る基板保持部材200は、本実施形態に係る電極埋設部材100に端子穴142を設け、端子140を備えたものである。端子140は、電極120と電気的に接続される。端子140が電極120と電気的に接続されるとは、端子140が直接電極120と接続されること、および端子140が接続部材130等を介し電極120と接続されることの両方を含む。これにより、電極120に給電することができる。端子140は、Niなどで形成することができる。端子140は、電極120または接続部材130とAuロウなどでロウ付けされる。電極120または接続部材130と端子140との間にコバールなどで形成された中間部材150を設けてもよい。
【0042】
本発明の基板保持部材は、電極の信頼性を損なわない設計でも電極の抵抗を高くすることができ、電極設計の自由度を高くすることができ、また、面内の電極の抵抗値のバラツキを抑制することができる。また、接続部材を用いた電極埋設部材を使用する場合、端子と接続部材との接続の不具合の発生の虞を低減できる。
【0043】
[電極埋設部材の製造方法]
次に、本実施形態に係る電極埋設部材の製造方法を説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る電極埋設部材の製造方法を示すフローチャートである。本発明の実施形態に係る電極埋設部材の製造方法は、
図5に示すように、成形体形成工程STEP1、脱脂工程STEP2、準備工程STEP3、前駆体形成工程STEP4、熱処理工程STEP5、および焼成工程STEP6を備えている。なお、以下では成形体を積層して製造する成形体ホットプレス法による製造方法を説明するが、本発明は準備工程STEP3のMo電極をCコーティングすること、および熱処理工程STEP5の温度および時間が重要であり、その他の工程は別の方法に置き換えてもよい。
【0044】
図6(a)~(d)は、それぞれ本実施形態に係る電極埋設部材の製造工程の一段階を模式的に示す断面図である。
図6(a)~(d)は、
図2の電極埋設部材を製造する場合について示している。
【0045】
成形体形成工程STEP1では、セラミックス原料粉から複数のセラミックス成形体11、12を形成する。なお、
図6ではセラミックス成形体は2の部材に分かれているが、設計に応じて3以上であってもよい。例えば、セラミックス原料粉末にバインダ、可塑剤、分散剤などの添加剤を適宜添加して混合して、スラリーを作製し、スプレードライ法等により顆粒(セラミックス原料粉)を造粒後、加圧成形して複数のセラミックス成形体11、12を形成することができる。このようにバインダを用いた製法をとる場合、バインダ由来のC成分が後述する脱脂工程後もセラミックス脱脂体内に100ppm~500ppm程度残ることとなる。このC成分も炭化の原因となると推定されるが、本発明はMoメッシュ電極をCコーティングすることで炭化を促進しているので、セラミックス脱脂体内のC成分の量はさほど重要ではない。本発明は、電極のMoを十分に炭化させることが目的であるので、この程度のC成分が脱脂体内に残っていても全く問題はない。セラミックス原料粉には、必要に応じて焼結助剤となる粉末が添加されてもよい。
【0046】
セラミックス原料粉末は、高純度であることが好ましく、その純度は、好ましくは96%以上、より好ましくは98%以上である。また、セラミックス原料粉末の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上1.0μm以下である。
【0047】
混合方法は、湿式、乾式の何れであってもよく、例えばボールミル、振動ミルなどの混合器を用いることができる。また、成形方法としては、例えば、一軸加圧成形や冷間静水等方圧加圧(CIP:Cold Isostatic Pressing)法などの公知の方法を用いればよい。なお、セラミックス成形体を形成する方法は、加圧成形に限らず、例えば、グリーンシート積層、または鋳込み成形であっても適用が可能であり、これらを適宜脱脂、またはさらに仮焼する工程により、セラミックス成形体を製造することができる。また、粉末ホットプレス法により電極埋設部材前駆体を形成してもよい。
【0048】
複数のセラミックス成形体11、12は、成形後、機械加工により成形体の形状が整えられてもよい。また、
図6(b)に示されるように、セラミックス成形体12の片面(他のセラミックス成形体11との接合面)に、電極120および接続部材130の形状に合わせた形状の凹部が形成されてもよい。凹部はセラミックス成形体11に設けられてもよいし、両方に設けられてもよい。機械加工は、脱脂後に行なってもよい。
【0049】
脱脂工程STEP2では、複数のセラミックス成形体11、12を所定の温度以上、所定の時間以上脱脂処理して複数のセラミックス脱脂体21、22を作製する。セラミックス成形体11、12は、例えば、400℃以上800℃以下の温度で熱処理され、セラミックス脱脂体21、22となる。脱脂時間は、1時間以上120時間以下であることが好ましい。脱脂には、大気炉または窒素雰囲気炉を用いることができる。
【0050】
準備工程STEP3では、Moワイヤーを織り込んだメッシュで形成され、カーボンでコーティングされた電極120を準備する。また、必要に応じて接続部材130を準備する。
【0051】
電極120の材質は、Moを主成分とする。Moを主成分とするとは、純度が98wt%以上であることを示し、他の遷移金属や希土類の単体またはその化合物およびCの合計が2wt%以下であることを示す。Moを主成分とする電極120が後述する熱処理工程STEP5および焼成工程STEP6を経ることにより、Mo炭化物のバルク体で構成される電極120となる。また、電極120は、電極埋設部材100の設計に応じた形状に加工されたものを準備する。形状は、炭化のしやすさを考慮してワイヤーを織り込んだメッシュである。電極120のメッシュを形成するワイヤーの線径は、0.02mm以上0.15mm以下であることが好ましい。
【0052】
接続部材130の材質は、Wを主成分とすることが好ましい。Wを主成分とするとは、純度が97wt%以上であることを示し、他の遷移金属や希土類の単体またはその化合物およびCの合計が3wt%以下であることを示す。Wを主成分とする接続部材130は、後述する熱処理工程STEP5および焼成工程STEP6を経てもMoに比べ相対的に炭化が進みにくいため、W金属を含む接続部材130となる。また、接続部材130は、電極埋設部材100の設計に応じた形状に加工されたものを準備し、設計に応じた位置に埋設する。
【0053】
前駆体形成工程STEP4では、準備した電極120、接続部材130、および複数のセラミックス脱脂体21、22を組み合わせて、平板状に形成され、電極120および接続部材130が埋設された電極埋設部材前駆体30を形成する。
【0054】
熱処理工程STEP5では、形成された電極埋設部材前駆体30を、800℃以上1500℃以下で7時間以上熱処理をする。これにより、CコーティングされたMoメッシュ電極120は、Moの炭化が進みMo炭化物のバルク体となる。熱処理時間は、Moメッシュ電極のワイヤーの線径に応じた所定の時間としてもよい。例えば、ワイヤーの線径が0.15mmより大きく0.2mm以下の場合、20時間としてもよい。Wを主成分とする接続部材130を使用する場合、Wの炭化が進む温度より相対的に低い温度で熱処理をしているので、熱処理時間にかかわらず接続部材130のWは炭化が進みにくい。
【0055】
焼成工程STEP6では、熱処理された電極埋設部材前駆体30を、主面(載置面)に垂直方向に一軸加圧焼成して電極埋設部材100を得る。加圧する力は、1MPa以上であることが好ましい。また、焼成温度は、1500℃より大きく2000℃以下であることが好ましい。焼成時間は、1時間以上12時間以下であることが好ましい。焼成雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。これにより、熱処理後の複数のセラミックス脱脂体21が焼結してセラミックス焼結体となり、これらが一体化され、電極120、または電極120および接続部材130が埋設された電極埋設部材100が得られる。焼成は、熱処理から連続して温度を上げることで行なってもよい。
【0056】
このようにすることで、電極の信頼性を損なわない設計でも電極の抵抗を高くすることができ、電極設計の自由度を高くすることができ、また、面内の電極の抵抗値のバラツキを抑制することができる電極埋設部材を製造することができる。
【0057】
なお、脱脂工程STEP2と、前駆体形成工程STEP4との間に、セラミックス仮焼体作製工程を設けてもよい。セラミックス仮焼体作製工程を設ける場合、セラミックス脱脂体を1200℃以上1700℃以下の温度で仮焼してセラミックス仮焼体を作製する。これにより、電極埋設部材の外形や電極および接続部材の埋設位置などの寸法精度をより高くすることができる。仮焼時間は、0.5時間以上12時間以下であることが好ましい。仮焼雰囲気は、窒素や不活性ガス雰囲気であることが好ましいが、真空などの雰囲気であってもよい。仮焼体作製工程を設ける場合、機械加工は仮焼体作製工程の後に行なってもよい。
【0058】
[基板保持部材の製造方法]
図7(a)~(c)は、それぞれ本実施形態に係る基板保持部材の製造工程の一段階を模式的に示す断面図である。
図7(a)~(c)は、
図4の基板保持部材を製造する場合について示している。
【0059】
焼成後の電極埋設部材100に端子穴142を設けて、接続部材130の表面を露出させる。このとき、接続部材130の表面に図示しないW炭化物層が形成されている場合、端子穴の範囲のW炭化物層も取り除く。これにより、接続部材130の抵抗の低く保たれたW金属に端子140を接続することができる。露出させた接続部材130にロウ材等で端子140を接続する。端子は、Ni等を用いることができる。また、ロウ材はAuロウ等を用いることができる。接続部材130と端子140との間にコバールなどで形成された中間部材150を配置して、ロウ付けしてもよい。なお、接続部材130を使用しない場合、端子140は直接電極120にロウ付けするか、中間部材150を介して電極120にロウ付けする。
【0060】
このようにすることで、電極の信頼性を損なわない設計でも電極の抵抗を高くすることができ、電極設計の自由度を高くすることができ、また、面内の電極の抵抗値のバラツキを抑制することができる基板保持部材200を製造することができる。また、接続部材を用いた電極埋設部材を使用する場合、端子と接続部材との接続の不具合の発生の虞を低減できる基板保持部材200を製造することができる。
【0061】
[実施例および比較例]
(実施例1)
5wt%Y2O3を添加したAlNを主成分とするセラミックス原料粉を用いて、CIP成形(圧力1ton/cm2)し、成形体のインゴットを得た。これを機械加工することで、直径340mm、厚み5mmのセラミックス成形体、および直径340mm、厚み30mmのセラミックス成形体を成形した。そして、厚み30mmのセラミックス成形体の一方の面に、成形体の中心を共有し、電極を収納するための直径300mm、深さ0.1mmの凹部を設けた。さらに、端子を形成する所定の位置に、接続部材を収納するための直径8.5mm、深さ0.25mmの凹部を設けた。
【0062】
次に、セラミックス成形体を、550℃、12時間脱脂して、セラミックス脱脂体を作製した。次に、直径294mmのモリブデン製のモリブデンメッシュ(線径0.1mm、平織り、メッシュサイズ♯50)を所定の形状に裁断した。これに、真空蒸着によりカーボンを1μmの厚みでコーティングし、電極を準備した。また、W製のペレットからφ8mm×0.2mmtのサイズの接続部材を2つ作製した。次に、凹部を設けたセラミックス脱脂体の凹部に接続部材および電極を載置し、もう一方のセラミックス脱脂体で挟み、電極埋設部材前駆体を作製した。
【0063】
次に、電極埋設部材前駆体をホットプレス炉に載置して、800℃から1500℃まで7時間の熱処理を行なった。次に、電極埋設部材前駆体の主面(載置面)に垂直な方向に10MPaの力を加えつつ、1800℃、2時間、1軸ホットプレス焼成した。このようにして、電極埋設部材を焼成した。
【0064】
その後、全面に研削、研磨加工を行ない、総厚25mm、絶縁層厚み1.0mm、表面粗さをRa0.4μmのウェハ載置面を形成した。セラミックス基体裏面側より端子位置に接続部材に到達するまで穴径φ5.5mmの平底穴加工を行なった。露出した接続部材底面にロウ材を介して直径5mm、厚み2mmのコバール製の緩衝部材(中間部材)と直径5mm長さ30mmの円柱状Ni製給電端子を設置し、真空炉により1050℃でAu-Ni系ロウ材によるロウ付けを行ない、基板保持部材を完成させた。このようにして、実施例1の基板保持部材を作製した。
【0065】
(実施例2)
実施例2は、実施例1で使用した電極を、メッシュを構成するワイヤーの線径を0.03mmとした電極に変更した。それ以外は実施例1と同様の条件で実施例2の基板保持部材を作製した。
【0066】
(実施例3)
実施例3は、実施例1で使用した電極を、メッシュを構成するワイヤーの線径を0.15mmとした電極に変更した。それ以外は実施例1と同様の条件で実施例3の基板保持部材を作製した。
【0067】
(実施例4)
実施例4は、実施例1で使用した電極を、DLC(Diamond-like Carbon)コーティングによりカーボンを1μmの厚みにコーティングしたMoメッシュ電極に変更した。それ以外は実施例1と同様の条件で実施例4の基板保持部材を作製した。
【0068】
(実施例5)
実施例5は、実施例1で使用した電極を、カーボンスプレーによりカーボンを10μmの厚みにコーティングしたMoメッシュ電極に変更した。それ以外は実施例1と同様の条件で実施例5の基板保持部材を作製した。
【0069】
(実施例6)
実施例6は、実施例1で使用した電極を、Moメッシュ電極にメタンガスを2000℃で熱分解したグラファイトを10μmの厚みにコーティングした電極に変更した。それ以外は実施例1と同様の条件で実施例6の基板保持部材を作製した。
【0070】
(実施例7)
実施例7は、実施例1で使用した電極を、メッシュを構成するワイヤーの線径を0.2mmとした電極に変更し、熱処理時間を20時間に変更した。それ以外は実施例1と同様の条件で実施例7の基板保持部材を作製した。
【0071】
(比較例1)
比較例1は、実施例1で使用した電極を、カーボンコーティングをしていないMoメッシュ電極に変更した。それ以外は実施例1と同様の条件で比較例1の基板保持部材を作製した。
【0072】
(比較例2)
比較例2は、実施例1で使用した電極を、メッシュを構成するワイヤーの線径を0.2mmとした電極に変更し、熱処理時間を14時間に変更した。それ以外は実施例1と同様の条件で比較例2の基板保持部材を作製した。
【0073】
[性能評価]
(温度分布の測定)
作製した基板保持部材(ヒーター)を評価チャンバー内にインストール後、自己発熱により400℃で温度制御し、表面分布をIRカメラで測定した。測定領域はΦ290mmの範囲内で温度バラツキはΔT=最大値-最小値として評価した。
【0074】
(ヒーター抵抗値および抵抗値のバラツキの評価)
温度分布測定後、ヒーター電極を露出させる抵抗測定用の端子穴を所定の位置に複数箇所設けた。所定の端子穴に露出したヒーター電極にテスターのプローブを接触させ、所定の端子間のヒーター抵抗値を8箇所(半径135mmの位置の外周部4箇所、半径50mmの位置の内周部4箇所)で測定した。8箇所の設計上の抵抗値Rdと測定した抵抗値Rmとの比(Rm/Rd)の(最大値-最小値)/平均値を電極の抵抗バラツキとして評価した。また、これとは別に、ヒーター電極全体の抵抗値を測定した。
【0075】
(電極、接続部材の組成分析)
ヒーターを載置面の中心および接続部材の中心を通る垂直な断面で切断し、電極、接続部材の断面を露出させ研磨後、EMPAで元素分析を行ない、XRDで定性分析を行なった。電極の元素分析は、載置面の中心に最も近い位置、外周に最も近い位置、およびその中点に最も近い位置の3箇所の電極について行なった。
【0076】
EPMA分析は、電極の断面をFE-EPMA(電界放出型電子線マイクロアナライザ)による断面の元素マッピング分析を行ない、ZAF法でatom%換算でC/(C+Mo)比で炭化物の判断を行なった。C/(C+Mo)比が0.20以上である場合、Mo炭化物で構成されていると判断し、C/(C+Mo)比が0.20未満である場合、未炭化のMoが残っていると判断した。またXRDでは、μ-XRD(マイクロX線回折)により、断面の領域(電極の径を含む直径約3100μmの領域)のX線回折を行なった。
【0077】
(電極の気孔率測定)
電極の気孔率は、電極の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で1000倍の倍率で撮影し、アメリカ国立衛生研究所(NIH:National Institute of Health)が開発したフリーソフト「ImageJ」を用いて、撮影した写真データから30μm×30μmの視野を2値化することで測定した。測定点としては無作為に5視野選択し、観察した。気孔率が5%以下である場合、バルク体であると判断した。
【0078】
実施例1~7は、EPMAおよびXRDの両方で、測定した3箇所全てで電極の中心までMo炭化物となっていた。また、バルク体であることが確認された。その結果、ヒーター電極の抵抗のバラツキが抑制され、それに伴い表面温度分布が小さく抑制された。実施例1および2の結果から、線径が0.1mm以下の場合は7時間の熱処理によって電極を全て炭化できることが分かった。一方、実施例4および7の結果から、線径が0.15mmの場合は14時間の熱処理が必要であり、0.2mmの場合は20時間の熱処理が必要であることが分かった。
【0079】
また、実施例1、4、5、および6の結果から、Cコーティングの方法はMoメッシュ電極の炭化に影響しないことが分かった。また、Cコーティングの厚みも1μmで十分であることが分かった。
【0080】
比較例1、2は、載置面の中心に最も近い位置の電極がMoとMo2Cの混合組織となっていた。その結果、ヒーター電極の抵抗がばらつき、それに伴い表面温度分布が大きくなったと考えられる。比較例1は従来製法であるが、カーボン源が不足したため、電極が全部炭化せずMo、Mo2Cの混合組織となった。
【0081】
比較例2は、実施例7との比較により、カーボン源は十分であるものの、ワイヤーの線径が大きかったため中心部まで炭化させるための熱処理時間が足りていなかったと考えられる。したがって、ワイヤーの線径が0.1mm以下であれば、従来と同等の熱処理時間であっても電極を炭化させることができ、0.15mm以下であれば従来の熱処理時間よりも長くなるものの、効果に見合った熱処理時間で電極を炭化させることができるため、製造コストを抑制することができることが分かった。
【0082】
これらの結果、実施例1~7は比較例1、2に比べ電極を十分に炭化させることができ、ヒーター電極の抵抗のバラツキが抑制され、それに伴い表面温度分布が小さく抑制されることが確かめられた。また、本発明の製造方法は、このような電極埋設部材および基板保持部材を製造できることが確かめられた。
【0083】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形および均等物に及ぶことはいうまでもない。また、各図面に示された構成要素の構造、形状、数、位置、大きさ等は説明の便宜上のものであり、適宜変更しうる。
【符号の説明】
【0084】
11、12 セラミックス成形体
21、22 セラミックス脱脂体
30 電極埋設部材前駆体
100 電極埋設部材
110 基体
112 載置面
120 電極
130 接続部材
140 端子
142 端子穴
150 中間部材
200 基板保持部材