(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】ヒートパイプ装置
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20250203BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20250203BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20250203BHJP
【FI】
H05K7/20 R
H01L23/46 B
F28D15/02 D
F28D15/02 104A
(21)【出願番号】P 2022036167
(22)【出願日】2022-03-09
【審査請求日】2024-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃司
(72)【発明者】
【氏名】有松 公治
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-229455(JP,A)
【文献】再公表特許第2019/131814(JP,A1)
【文献】特開2006-269629(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0012281(US,A1)
【文献】特開2019-071432(JP,A)
【文献】特開昭60-057956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/46
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源が取り付けられる受熱部と、
前記受熱部から延び第1冷媒が内部に封入された第1パイプと、
前記受熱部から延び第2冷媒が内部に封入された第2パイプと、
前記第1パイプと第2パイプとに設けられた放熱部と、
を備え、
前記第1冷媒は、前記第2冷媒よりも沸点が低くなって
おり、
前記第1パイプおよび前記第2パイプは、前記熱源から離れる方向に向かって並んで配置されており、
前記熱源から前記第1パイプまでの寸法は、前記熱源から前記第2パイプまでの寸法よりも長くなっているヒートパイプ装置。
【請求項2】
熱源が取り付けられる受熱部と、
前記受熱部から延び第1冷媒が内部に封入された第1パイプと、
前記受熱部から延び第2冷媒が内部に封入された第2パイプと、
前記第1パイプと第2パイプとに設けられた放熱部と、
を備え、
前記第1冷媒は、前記第2冷媒よりも沸点が低くなって
おり、
前記第1パイプおよび前記第2パイプは、前記熱源から離れる方向に向かって並んで配置されており、
前記熱源から前記第1パイプまでの寸法は、前記熱源から前記第2パイプまでの寸法よりも短くなっているヒートパイプ装置。
【請求項3】
前記受熱部は、前記熱源を取り付けるための取付平面を有し、
前記取付平面は、前記受熱部の一側面にのみ設けられている請求項1または2に記載のヒートパイプ装置。
【請求項4】
前記熱源と通電する端子を有し、
前記端子は、前記熱源とは反対側に位置して前記受熱部の側面に取り付けられている請求項3に記載のヒートパイプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、一般的にヒートパイプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子などの熱源の冷却に用いられるヒートパイプ装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒートパイプ装置は、熱源の発熱量に応じて、用いられる冷媒を検討する必要がある。そのため、ヒートパイプ装置を製造する場合には、用いられる熱源に応じてその都度設計する必要があり、コストが増加するおそれがある。
【0005】
本実施形態は、上述する課題に鑑みなされたもので、汎用性の高いヒートパイプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態は、熱源が取り付けられる受熱部と、前記受熱部から延び第1冷媒が内部に封入された第1パイプと、前記受熱部から延び第2冷媒が内部に封入された第2パイプと、前記第1パイプと第2パイプとに設けられた放熱部と、を備え、前記第1冷媒は、前記第2冷媒よりも沸点が低くなっているヒートパイプ装置である。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、汎用性の高いヒートパイプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態によるヒートパイプ装置を示す正面図である。
【
図2】
図1中のヒートパイプ装置を矢示A-A方向からみた側面図である。
【
図3】
図1中のヒートパイプ装置を矢示B-B方向からみた断面図である。
【
図4】第1変形例によるヒートパイプ装置を示す
図3と同様の断面図である。
【
図5】第2変形例によるヒートパイプ装置を示す
図3と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図3を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態によるヒートパイプ装置を示す正面図である。
図2は、
図1中のヒートパイプ装置を矢示A-A方向からみた側面図である。
図3は、
図1中のヒートパイプ装置を矢示B-B方向からみた断面図である。
【0010】
図1、
図2に示すように、ヒートパイプ装置1は、受熱部10、第1パイプ20、第2パイプ25、および放熱部30を備えている。ヒートパイプ装置1は、冷媒の潜熱を利用することにより、熱源40を冷却させるものである。ヒートパイプ装置1は、例えば電力変換装置(図示せず)に設けられている。
【0011】
受熱部10は、熱源40が取り付けられる部分となっている。受熱部10は、熱伝導率が高い材料(例えば、銅材料)により形成されたブロック体となっている。熱源40は、例えば半導体素子となっており、受熱部10の側面に取り付けられている。なお、熱源40は、半導体素子に限らず、例えばその他の素子(電気機器)などでもよい。
【0012】
端子15は、受熱部10に取り付けられている。この例では、端子15は、熱源40とは反対側に位置して受熱部10の側面に取り付けられている。端子15は、受熱部10を介して熱源40と通電する。端子15は、図示しない外部機器に接続されている。
【0013】
例えば、熱源40が半導体素子である場合、受熱部10は、熱源40と熱的に結合し、熱源40の冷却を行うとともに、熱源40と電気的に結合し、熱源40への通電を行う。受熱部10は、熱源40を取り付けるための取付平面を有する。
【0014】
受熱部10は、取付平面を介して熱源40と接触することにより、熱源40と熱的に結合するとともに、熱源40と電気的に接続される。なお、熱源40は、受熱部10の取付平面に直接的に接してもよいし、他の部材などを介して間接的に接してもよい。また、受熱部10の形状は、上記に限ることなく、少なくとも熱源40と熱的な結合可能な任意の形状でよい。
【0015】
第1パイプ20および第2パイプ25は、受熱部10から上方に向けて延びている。第1パイプ20および第2パイプ25は、基端側(下端側)が受熱部10の内部に挿入されている。第1パイプ20および第2パイプ25は、例えば銅材料により形成された筒体となっている。熱源40から発せられた熱は、受熱部10から第1パイプ20および第2パイプ25に伝達される。
【0016】
放熱部30は、受熱部10の上方に位置して第1パイプ20と第2パイプ25とに設けられている。放熱部30は、例えば熱伝導率が高い材料で形成された複数の放熱フィンとなっている。放熱部30は、第1パイプ20および第2パイプ25から突出しており、熱を外気に放出する。
【0017】
第1パイプ20および第2パイプ25には、それぞれ冷媒が封入されている。冷媒は、第1パイプ20および第2パイプ25に伝達された熱を吸収して蒸気となる。蒸気となった冷媒は、第1パイプ20内および第2パイプ25内を上方に移動する。
【0018】
第1パイプ20内および第2パイプ25内を上方に移動した蒸気は、放熱部30により冷やされて液体となる。液体となった冷媒は、重力により第1パイプ20内および第2パイプ25内を下方に移動する。このように、ヒートパイプ装置1は、パイプ内の冷媒を循環させることにより熱を移動させる。
【0019】
第1パイプ20と第2パイプ25とは、内部に封入されている冷媒が異なっている。第1パイプ20には、第1冷媒R1が封入されている。一方、第2パイプ25には、第2冷媒R2が封入されている。第1冷媒R1は、第2冷媒R2よりも沸点が低くなっている。
【0020】
第1冷媒R1は、例えば沸点が80℃に設定されたPFC(パーフルオロカーボン)となっている。第2冷媒R2は、例えば沸点が100℃の純水となっている。なお、第1冷媒R1が純水であり、第2冷媒R2が沸点100℃以上のPFCとしてもよい。また、冷媒は、純水やPFCに限らず、沸点が異なっていれば任意に用いることができる。例えば、第1冷媒R1が沸点40℃に設定されたPFCであり、第2冷媒R2が沸点70℃に設定されたPFCでもよい。
【0021】
このように、沸点が異なる第1冷媒R1と第2冷媒R2とを用いることにより、汎用性の高いヒートパイプ装置1とすることができる。ヒートパイプ装置1は、熱源40のロスが高い用に設計されたヒートパイプ装置と比較して、熱源40のロスが低くても、熱効率の低下を少なくすることができる。そのため、熱源40のロスが異なっていても共通して使用可能な画一なヒートパイプ装置1とすることができる。その結果、ヒートパイプ装置1を熱源40を考慮することなく、一括にて製造することができるためコストを低減できる。また、例えば不具合などにより、熱源40に過剰なロスが増加した場合でも、沸点が高い第2冷媒R2により対応させることができる。
【0022】
図3に示すように、ヒートパイプ装置1は、例えば、複数の第1パイプ20と、複数の第2パイプ25と、を備える。この例では、3本の第1パイプ20と、3本の第2パイプ25と、が設けられている。3本の第1パイプ20は、端子15側に位置して、端子15に沿って並列している。一方、3本の第2パイプ25は、熱源40側に位置して熱源40に沿って並列している。換言すると、熱源40から第1パイプ20までの寸法L1は、熱源40から第2パイプ25までの寸法L2よりも長くなっている。なお、ヒートパイプ装置1に設けられる第1パイプ20の数および第2パイプ25の数は、上記に限ることなく、任意の数でよい。
【0023】
これにより、熱源40の発熱量が小さい場合には、第1パイプ20により熱源40の冷却を行うことができる。また、熱源40の発熱量が大きい場合には、第2パイプ25により熱源40の冷却を行うことができる。また、第1パイプ20は、第2パイプ25よりも熱源40から離れているので、第1パイプ20の内圧が過度に上昇するのを抑制することができる。
【0024】
図4は、第1変形例によるヒートパイプ装置を示す
図3と同様の断面図である。
上述した実施形態では、第1パイプ20が第2パイプ25よりも熱源40から離れている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明の態様はこれに限らず、例えば
図4に示す第1変形例のように、熱源40から第1パイプ20までの寸法は、熱源40から第2パイプ25までの寸法よりも短くなっていてもよい。すなわち、沸点の低い第1冷媒R1が封入された第1パイプ20が熱源40に近い位置に設けられていてもよい。
【0025】
これにより、熱源40の発熱量が小さい段階で、第1パイプ20により早期に熱源40の冷却を行うことができる。また、熱源40の発熱量が大きくなった場合には、第1パイプ20と第2パイプ25との両方で熱源40の冷却を行うことができる。
【0026】
図5は、第2変形例によるヒートパイプ装置を示す
図3と同様の断面図である。
上述した実施形態では、第1パイプ20が第2パイプ25よりも熱源40から離れている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明の態様はこれに限らず、例えば
図5に示す第2変形例のように、第1パイプ20と第2パイプ25とは、熱源40に沿って交互に並んでいてもよい。
【0027】
複数の第1パイプ20と複数の第2パイプ25とを備える場合、複数の第1パイプ20および複数の第2パイプ25は、例えば取付平面と平行な方向において側方に交互に並ぶ。また、
図5に示すように、複数の第1パイプ20および複数の第2パイプ25は、複数列に並べて設けられる。この場合、複数の第1パイプ20および複数の第2パイプ25は、取付平面と直交する方向においても側方に交互に並ぶ。
【0028】
このように、第1パイプ20と第2パイプ25とを熱源40に沿って交互に配設することにより、熱源40を効率よく冷却させることができる。例えば熱源40への通電量が一定ではなく、熱源40の発熱量が変化するような場合でも、第1パイプ20と第2パイプ25とにより効率よく熱源40を冷却させることができる。その結果、熱源40の安定性を向上できる。そして、複数の第1パイプ20および複数の第2パイプ25を取付平面と直交する方向に側方に交互に並べることにより、熱源40をより効率よく冷却することができる。
【0029】
上述した実施形態では、受熱部10の側面に熱源40を1つ取り付けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明の態様はこれに限らず、例えば複数個の熱源40が受熱部10に取り付けられていてもよい。
【0030】
上述した実施形態では、第1パイプ20と第2パイプ25とがともに3本ずつ設けられた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明の態様はこれに限らず、例えば第1パイプ20と第2パイプ25とは、それぞれ少なくとも1本ずつ設けられていればよい。また、第1パイプ20と第2パイプ25とは、同じ本数でなくてもよい。
【0031】
上述した実施形態では、沸点が異なる2種類の冷媒を用いた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明の態様はこれに限らず、例えば沸点がそれぞれ異なる3種類以上の冷媒を用いていてもよい。すなわち、ヒートパイプ装置は、第1パイプ20と第2パイプ25とに加えて、第1冷媒R1および第2冷媒R2とは沸点が異なる第3冷媒が封入された第3パイプを設けていてもよい。
【0032】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ヒートパイプ装置
10 受熱部
15 端子
20 第1パイプ
25 第2パイプ
30 放熱部
40 熱源
R1 第1冷媒
R2 第2冷媒