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特許7628391オムニフォビック化粧品用顔料の製造方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】オムニフォビック化粧品用顔料の製造方法。
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/29 20060101AFI20250203BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20250203BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20250203BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20250203BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20250203BHJP
   A01K 29/00 20060101ALI20250203BHJP
【FI】
A61K8/29
A61K8/02
A61K8/73
A61K8/19
A61Q1/00
A01K29/00 F
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019206295
(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公開番号】P2020083883
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】18306498.9
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519407220
【氏名又は名称】コミサリアット エー エナジー アトミック エト アウクス エナジーズ オルタネイティブス(シーイーエー)
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】519407231
【氏名又は名称】ミヨシ ヨーロッパ エス.エー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】パトリック,ゲーノウン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ,ファジョレス
(72)【発明者】
【氏名】テツヤ,タカハシ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ポーリーン,ボスメット
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン,ゴージョン
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-223108(JP,A)
【文献】特開平03-099006(JP,A)
【文献】国際公開第2010/128204(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
C09C 1/00- 3/12
C09D15/00-17/00
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オムニフォビック化粧品用顔料の製造方法であって、
(i)酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、黄酸化鉄、黒酸化鉄、赤色酸化鉄、および酸化クロムから選択される金属酸化物粒子およびポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)を含む酸性水溶液を作製するステップであって、前記ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)がアセチル化されているか、または部分的にもしくは完全に脱アセチル化されている、ステップ;および
(ii)前記ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)を金属酸化物粒子上に吸着させ、かつ得られた前記ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)でコートされた金属酸化物粒子を沈殿させるために、ステップ(i)で得られた溶液のpHを12まで高めるステップ、を含む方法。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子が、酸化チタン粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子が、100nm~100μmの範囲のサイズを有する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)が、完全に脱アセチル化されているか、または部分的にN-脱アセチル化されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)が、部分的に脱アセチル化され、かつ70%~99%の範囲の脱アセチル化度を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)が、40,000Da~500,000Daの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)の量が、0%超~20%の範囲である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸性の水溶液が、酸を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法により得られたオムニフォビック化粧品用顔料であって、前記オムニフォビック化粧品用顔料は、疎水性および疎油性の粉末の形態であり、キトサン鎖が吸着されたチタン酸化物粒子を含むかまたはそれからなる、オムニフォビック化粧品用顔料。
【請求項10】
請求項9に記載のオムニフォビック化粧品用顔料および美容的に許容可能な基剤を含む化粧品組成物。
【請求項11】
前記美容的に許容可能な基剤が無水である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
水性ゲル、油性ゲル、ペースト、クリーム、ローション、乳状液、スティック、セッケン、発泡体、シャンプー、コンパクトパウダー、ルースパウダー、マニキュア、美容マスク、エアロゾル、フィルム、セラム、エマルジョン、または貼付剤の形態である、請求項10または請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項9に記載のオムニフォビック化粧品用顔料または請求項10~12のいずれか1項に記載の化粧品組成物の、それを必要としている対象における使用を含む美容のための皮膚改善方法。
【請求項14】
前記組成物が、それを必要としている対象の皮膚に、1日1回投与される、請求項13に記載の皮膚改善方法。
【請求項15】
メーキャップ、スキンケア、サンケア、ヘアケア、マニキュア、トイレタリー、乳児養護またはペットケアにおける、請求項10~12のいずれか1項に記載の化粧品組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、化粧品分野に関する。特に本発明は、コアシェル構造の形態のオムニフォビック化粧品用顔料に関し、該コアは、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)鎖を吸着させた金属酸化物を含むかまたはそれからなり、前記鎖は、アセチル化されているか、部分的にまたは完全に脱アセチル化されている。本発明は、また、前記オムニフォビック化粧品用顔料の製造方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品では、無機顔料が広く使用されている。その理由は、無機顔料が種々の特性を製品にもたらすことによる。
【0003】
無機化粧品用顔料は、主に、二酸化チタン(TiO)、酸化鉄(例えば、Fe)またはヒドロキシル化ケイ酸マグネシウムなどの酸化物である。
【0004】
顔料が何であれ、消費者は、自分の皮膚上への顔料の最適保持を求めている。しかし、皮膚は複雑な臓器であり、皮脂(脂質媒体と同等)および汗(水性媒体と同等)の両方を分泌する。
【0005】
従って、消費者の皮膚上に顔料の保持を長く持続するために最適化された化粧品用顔料を提供する必要性がまだ存在する。特に、オムニフォビック化粧品用顔料、すなわち、皮脂および汗の液体が顔料上に広がらないという意味で、皮脂および汗の両方に耐え得るヒトの皮膚に好適する顔料を提供する必要性がある。
【0006】
ペルフルオロオクタン酸(PFOA)などのフッ素化物で金属酸化物粒子の表面を改質することによるいくつかの試みが行われてきた。しかし、最近の研究は、フッ素化物による癌発症のリスクの増大、および環境に対する悪い影響を明確に示している。
【0007】
このように、上述のようなフッ素化分子を回避しながら、オムニフォビック化粧品用顔料を提供することに対する差し迫った必要性がある。
【0008】
意外にも、出願者は、部分的にまたは完全にN-アセチル化したポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)鎖を吸着させた金属酸化物コアを含む化粧品用顔料がオムニフォビック特性を有することを立証した。本発明の化粧品用顔料は、反応媒体のpHの急激な変更による沈殿ステップを含む特殊な方法により製造される。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、オムニフォビック化粧品用顔料の製造方法に関し、前記方法は、
(i)金属酸化物粒子およびポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)を含む酸性水溶液を作製するステップであって、前記ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)がアセチル化されているか、または部分的にもしくは完全に脱アセチル化されている、ステップ;および
(ii)前記ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)を金属酸化物粒子上に吸着させ、および得られた前記ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)でコートされた金属酸化物粒子を沈殿させるために、ステップ(i)で得られた溶液のpHを約12まで高めるステップ、を含む。
【0010】
一実施形態では、金属酸化物粒子は、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、黄酸化鉄、黒酸化鉄、赤色酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、ウルトラマリン;雲母、絹雲母、カオリン、滑石、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムまたは粘土などの珪酸塩から選択され;好ましくはチタン酸化物粒子である。
【0011】
一実施形態では、金属酸化物粒子は、100nm~100μmの範囲、好ましくは500nm~60μmのサイズを有する。
【0012】
一実施形態では、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は、部分的にN-脱アセチル化されており、好ましくはキトサンである。一実施形態では、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は、完全に脱アセチル化されているか、または脱アセチル化およびアセチル化の両方がなされており;好ましくはキトサンである。
【0013】
一実施形態では、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は、約25℃で測定して、10cP~2000cP;好ましくは40cP~800cP;より好ましくは50cP~350cPの範囲の粘度を有する。
【0014】
一実施形態では、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は部分的に脱アセチル化され、70%~99%;好ましくは75%~95%;より好ましくは75%~85%の範囲の脱アセチル化度を有する。
【0015】
一実施形態では、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は、40,000Da~500,000Da;好ましくは100,000Da~300,000Daの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有する。
【0016】
一実施形態では、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)の量は、前記ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)および金属酸化物粒子の総重量に対し、0重量%超~20重量%の範囲;好ましくは1重量%~15重量%の範囲;より好ましくは約3重量%または10重量%である。
【0017】
一実施形態では、酸性の水溶液は、酸;好ましくは有機酸;より好ましくは酢酸を含む。
【0018】
本発明は、本発明の方法により得られたオムニフォビック化粧品用顔料に関する。
【0019】
一実施形態では、オムニフォビック化粧品用顔料は、キトサン鎖が吸着されたチタン酸化物粒子を含むかまたはそれからなる。
【0020】
本発明は、本発明のオムニフォビック化粧品用顔料および美容的に許容可能な基剤を含む化粧品組成物に関する。
【0021】
一実施形態では、美容的に許容可能な基剤は無水である。
【0022】
一実施形態では、組成物は、水性ゲル、油性ゲル、ペースト、クリーム、ローション、乳状液、スティック、セッケン、発泡体、シャンプー、コンパクトパウダー、ルースパウダー、マニキュア、美容マスク、エアロゾル、フィルム、セラム、エマルジョン、または貼付剤の形態である。
【0023】
本発明は、本発明のオムニフォビック化粧品用顔料または本発明の化粧品組成物の使用を含む、それを必要としている対象の美容のための皮膚改善方法に関する。
【0024】
一実施形態では、組成物は、それを必要としている対象の皮膚に、1日1回投与される。
【0025】
本発明は、本発明の化粧品組成物のメーキャップ、スキンケア、サンケア、ヘアケア、マニキュア、トイレタリー、乳児養護またはペットケアにおける使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】左から右へ、純水および:非コーティングTiO粒子[TiO2];キトサンAでコートされ、1回洗浄されたTiO粒子[TiO2+LV];キトサンAでコートされ、4回洗浄されたTiO粒子[TiO2+LV x4];キトサンBでコートされ、1回洗浄されたTiO粒子[TiO2+MV]およびキトサンBでコートされ、4回洗浄されたTiO粒子[TiO2+MV x4]を含むバイアル、を示す写真である。
図2】純水および:6、7または12のpH(左から右へ)でのアルカリ化を有する方法(本発明の方法)から得られたキトサンでコートされたTiO粒子を含むバイアルを示す写真である。
図3】左から右へ、純水およびイソノナン酸イソノニルエステルの混合物、および:非コーティングTiO粒子[TiO2];キトサンAでコートされ、1回洗浄されたTiO粒子[TiO2+LV];キトサンAでコートされ、4回洗浄されたTiO粒子[TiO2+LV x4];キトサンBでコートされ、1回洗浄されたTiO粒子[TiO2+MV]およびキトサンBでコートされ、4回洗浄されたTiO粒子[TiO2+MV x4]を含むバイアル、を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
本発明では、以下の用語はそこに示す意味を有する。
-数値の前の「約」は前記数値の値の±10%を意味する。
-「酢酸」または「エタン酸」は、式CHCOOHの有機化合物を意味する。
-「酸」は、水素イオン(H)を放出可能な(ブレンステッド酸)または電子対と共有結合形成可能な(ルイス酸)任意の化合物を意味する。
-「吸着」は、原子、イオンまたは分子(吸着質)が気相、溶液または固溶体から固体表面(吸着剤)に結合する表面現象を意味する。
-「無水組成物」は、その総重量を基準にして、5重量%未満の水、好ましくは2重量%未満の水、さらには0.5重量%未満の水を含む組成物、および特に、水不含の組成物を意味する。
-「キチン」は、ポリ(β-(1→4)-N-アセチル-D-グルコサミン)である天然の多糖を意味する。特に、「キチン」は、式:
【化1】
の多糖を意味し、式中、nは正の整数、好ましくは10~2,000の範囲である。
-「キトサン」は、β-(1→4)-N-アセチル-D-グルコサミンおよびβ-(1→4)-D-グルコサミンのランダムコポリマー(すなわち、ポリ[(β-(1→4)-N-アセチル-D-グルコサミン)-co-(β-(1→4)-D-グルコサミン)])である多糖を意味する。用語の「キトサン」はまた、脱アセチル化ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)を意味する。
-「美容的」は、対象の審美的外観を改善するまたは身体の快適性を高めるための使用を意味する。一実施形態では、用語の「美容的」は、ソーラークリームの使用などのソーラーケアを含む。
-「美容的に許容可能な基剤」は、表皮および/または真皮と接触して使用するための、毒性、刺激、炎症またはアレルギー反応などの副作用を何ら誘発しない任意の化合物を意味する。本発明では、美容的に許容可能な基剤には、局所投与用の基剤を含む。一実施形態では、「美容的に許容可能な基剤」という表現は、顔料が分散された担体で、表皮および/または真皮と接触して使用するための、毒性、刺激、炎症またはアレルギー反応などの副作用を何ら誘発しない担体を意味する。
-「キトサンアセチル化度(DA)」は、キトサンの主鎖中の総単位数に比較したN-アセチル化単位のパーセンテージを意味する。
-「キトサン脱アセチル化度(DD)」は、キトサンの主鎖中の総単位数に比較したN-脱アセチル化単位のパーセンテージを意味する。
-「美容のための皮膚改善方法」は、対象の皮膚の審美的外観を改善することを可能とするいずれかの美容方法を意味する。
-「酸化鉄」は、酸素および鉄原子から作られる化学的化合物を意味する。一実施形態では、「酸化鉄」は、式:FeO、FeまたはFeの化合物を意味する。
-「金属酸化物」は、金属および酸素から作られる化学的化合物を意味する。一実施形態では、「金属酸化物」という表現は、酸化物であるアニオン性部分および金属のカチオン性部分を有する任意の化合物を意味する。
-「オムニフォビック」は、疎水性および疎油性の両方の性質を有する化学化合物または物質を意味する。一実施形態では、用語の「オムニフォビック」は、対象の皮膚から分泌される皮脂および汗によりごくわずかに湿潤可能な、化合物または物質を意味する。
-「粒子」は、球状または球状または回転楕円状形態である化合物を意味する。一実施形態では、本発明における用語の「粒子」は、球状または回転楕円状顔料を意味する。
-「pH」は、化学では、溶液の酸性度を測定する尺度を意味する。一実施形態では、pHは、水溶液の酸性度を測定する、好ましくは0~14の範囲の尺度を意味する。
-「顔料」は、それが発色する媒体に不溶性で、微細分散性で非凝集粒子の形態である化学的着色物質を意味する。
-「ポリ(β-(1-4)-D-グルコサミン)」は、D-グルコサミン単位の重合により得られる多糖を意味し、この多糖中では、2つの連続した単位が、β、1-4グリコシド結合により相互に共有結合している。一実施形態では、用語の「ポリ(β-(1-4)-D-グルコサミン)」は、ポリ(β-(1-4)-N-アセチル-D-グルコサミン)(「キチン」とも呼ばれる)および部分または完全脱アセチル化ポリ(β-(1-4)-N-アセチル-D-グルコサミン)(「キトサン」とも呼ばれる)を含む。
-「沈殿」は、液体溶液から得られる不溶性固形物の出現を意味する。
-「粒子径」は、粒子の平均直径を意味する。本発明では、粒子径(または粒子の平均直径)は、好ましくは、Malvern Zetasizer(登録商標))を用いて、動的光散乱(DLS)により測定される。
-「対象」は、本発明の粒子を投与される哺乳動物、好ましくはヒトを意味する。
-「酸化チタン」は、酸素(O)およびチタン(Ti)原子から作られる化学的化合物を意味する。一実施形態では、用語の「酸化チタン」は、二酸化チタン(TiO)、チタン(III)酸化物(Ti)またはチタン(II)酸化物(TiO)を意味し、好ましくは、二酸化チタン(TiO)を意味する。
-「粘度」は、単位表面当たりの印加力下での物質の速度に対する抵抗の尺度(センチポアズ(cP)で表される)を意味する。一実施形態では、粘度は、20℃または25℃の温度で測定される。
【0028】
方法
本発明は、化粧品用顔料の製造方法に関する。一実施形態では、本発明は、疎水性および/または疎油性顔料の製造方法に関する。一実施形態では、本発明は、疎水性および疎油性の両特性を備えた顔料(すなわち、オムニフォビック顔料)の製造方法に関する。
【0029】
一実施形態では、本発明の方法は、金属酸化物粒子およびポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)を含むまたはそれからなる酸性水溶液を作製するステップを含み、前記ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は、場合により、部分的にまたは完全にN-脱アセチル化されている(ステップ(i))。
【0030】
一実施形態では、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は、ポリ(β-(1→4)-N-アセチルグルコサミン)から部分的にまたは完全に脱アセチル化されている。
【0031】
一実施形態では、本発明の方法は、ステップ(i)で得られた溶液のpHを約12まで高めるステップ(ステップ(ii))をさらに含む。一実施形態では、本発明の方法は、ステップ(i)で得られた溶液のpHを、11~13の範囲で、好ましくは11.5~12.5の範囲で、より好ましくは、12まで高めるステップ(ステップ(ii))をさらに含む。
【0032】
一実施形態では、ステップ(ii)は、前記ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)の金属酸化物粒子上への吸着をもたらす。一実施形態では、ステップ(ii)は、前記ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)で、好ましくは吸着により、コートされた金属酸化物粒子の沈殿をもたらす。
【0033】
ステップ(i)
一実施形態では、ステップ(i)の溶液は、純水を含む。一実施形態では、ステップ(i)の溶液は、脱イオン水を含む。
【0034】
一実施形態では、ステップ(i)の溶液は、酸を含む。一実施形態では、ステップ(i)の溶液は、ルイス酸を含む。一実施形態では、ステップ(i)の溶液は、ブレンステッド酸を含む。一実施形態では、ステップ(i)の溶液は、有機酸、好ましくは、限定されないが、メタン酸、エタン酸(または酢酸)、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸またはヘプタン酸などのカルボン酸を含む。
【0035】
一実施形態では、ステップ(i)の溶液は、7未満、好ましくは0~6の範囲のpHを有する。
【0036】
一実施形態では、金属酸化物粒子は、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、黄酸化鉄、黒酸化鉄、赤色酸化鉄、酸化クロム、および水酸化クロムから選択され;好ましくはチタン酸化物粒子である。
【0037】
一実施形態では、金属酸化物粒子は、10nm~100μmの範囲、好ましくは、20nm~100μm、30nm~100μm、40nm~100μm、50nm~100μm、60nm~100μm、70nm~100μm、80nm~100μm、90nm~100μm、100nm~100μm、110nm~100μm、120nm~100μm、130nm~100μm、140nm~100μm、150nm~100μm、160nm~100μm、170nm~100μm、180nm~100μm、190nm~100μm、200nm~100μm、250nm~100μm;300nm~100μm、350nm~100μm、400nm~100μm、450nm~100μm、500nm~100μm、550nm~100μm、600nm~100μm、650nm~100μm、700nm~100μm、750nm~100μm、800nm~100μm、850nm~100μm、900nm~100μm、950nm~100μm、または1000nm~100μmの範囲のサイズを有する。
【0038】
一実施形態では、金属酸化物粒子は、1μm~100μmの範囲;好ましくは20μm~60μmの範囲のサイズを有し;より好ましくは約40μmのサイズを有する。
【0039】
一実施形態では、金属酸化物粒子は、1μm~100μmの範囲;好ましくは、1μm~90μm、1μm~80μm、1μm~70μm、1μm~60μm、1μm~50μm、1μm~40μm、1μm~30μm、1μm~20μm、または1μm~10μmの範囲のサイズを有する。一実施形態では、金属酸化物粒子は、1μm~100μmの範囲;好ましくは、20μm~100μm、30μm~100μm、40μm~100μm、50μm~100μm、60μm~100μm、70μm~100μm、80μm~100μm、または90μm~100μmの範囲のサイズを有する。一実施形態では、金属酸化物粒子は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100μmのサイズを有する。
【0040】
一実施形態では、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は、N-アセチル化された、ポリ(β-(1→4)-N-アセチル-D-グルコサミン)である。
【0041】
一実施形態では、部分的にN-脱アセチル化されたポリ(β-(1→4)-N-D-グルコサミン)は、β-(1→4)-N-アセチル-D-グルコサミンおよびβ-(1→4)-D-グルコサミンのランダムコポリマー(すなわち、ポリ[(β-(1→4)-N-アセチル-D-グルコサミン)-co-(β-(1→4)-D-グルコサミン)])である。
【0042】
一実施形態では、部分的にN-脱アセチル化されたポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は、50%超~99%の範囲;好ましくは75%~95%の範囲;より好ましくは75%~85%の範囲の脱アセチル化度を有する。一実施形態では、脱アセチル化度は、50%超~90%の範囲;好ましくは50%超~80%の範囲;50%超~70%の範囲;または50%超~60%の範囲である。一実施形態では、脱アセチル化度は、60%~100%の範囲;好ましくは70%~100%の範囲;80%~100%の範囲;または90%~100%の範囲である。一実施形態では、脱アセチル化度は、約55、60、65、70、75、80、85、90、95または100%である。
【0043】
一実施形態では、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は、10,000Da~500,000Da;好ましくは30,000Da~300,000Da;より好ましくは40,000Da~200,000Daの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有する。一実施形態では、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は、40,000Da~500,000Da;好ましくは50,000Da~400,000Daの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有する。一実施形態では、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は、40,000Da~400,000Da;好ましくは40,000Da~350,000Da、40,000Da~300,000Da、40,000Da~250,000Da、40,000Da~200,000Da、40,000Da~150,000Da、40,000Da~100,000Da、または40,000Da~50,000Daの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有する。一実施形態では、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は、50,000Da~400,000Da;好ましくは60,000Da~400,000Da、70,000Da~400,000Da、80,000Da~400,000Da、90,000Da~400,000Da、100,000Da~400,000Da、110,000Da~400,000Da、120,000Da~400,000Da、130,000Da~400,000Da、140,000Da~400,000Da、150,000Da~400,000Da、160,000Da~400,000Da、170,000Da~400,000Da、180,000Da~400,000Da、190,000Da~400,000Da、200,000Da~400,000Da、210,000Da~400,000Da、220,000Da~400,000Da、230,000Da~400,000Da、240,000Da~400,000Da、250,000Da~400,000Da、260,000Da~400,000Da、270,000Da~400,000Da、280,000Da~400,000Da、290,000Da~400,000Da、300,000Da~400,000Da、310,000Da~400,000Da、320,000Da~400,000Da、330,000Da~400,000Da、340,000Da~400,000Da、350,000Da~400,000Da、360,000Da~400,000Da、370,000Da~400,000Da、380,000Da~400,000Daまたは390,000Da~400,000Daの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有する。一実施形態では、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は、50,000Da~190,000Daの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有する。一実施形態では、キトサンは、50,000Da~190,000Daの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有する(キトサンA)。一実施形態では、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は、310,000Da~380,000Daの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有する。
【0044】
一実施形態では、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は、約25℃で測定して、10cP~2000cP;好ましくは40cP~800cP;より好ましくは50cP~350cPの範囲の粘度を有する。一実施形態では、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は、約25℃で測定して、20cP~300cP、200cP~800cPまたは800cP~2000cPの範囲の粘度を有する。一実施形態では、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)は、約25℃で測定して、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070、1080、1090、1100、1110、1120、1130、1140、1150、1160、1170、1180、1190、1200、1210、1220、1230、1240、1250、1260、1270、1280、1290、1300、1310、1320、1330、1340、1350、1360、1370、1380、1390、1400、1410、1420、1430、1440、1450、1460、1470、1480、1490、1500、1510、1520、1530、1540、1550、1560、1570、1580、1590、1600、1610、1620、1630、1640、1650、1660、1670、1680、1690、1700、1710、1720、1730、1740、1750、1760、1770、1780、1790、1800、1810、1820、1830、1840、1850、1860、1870、1880、1890、1900、1910、1920、1930、1940、1950、1960、1970、1980、1990または2000cPの粘度を有する。
【0045】
一実施形態では、場合により、部分的にまたは完全に脱アセチル化された、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)に対する金属酸化物粒子の質量比は、0超~20の範囲;好ましくは1~15の範囲であり;より好ましくは約10である。一実施形態では、場合により、部分的にまたは完全に脱アセチル化された、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)に対する金属酸化物粒子の質量比は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20である。
【0046】
一実施形態では、場合により、部分的にまたは完全に脱アセチル化された、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)の量は、前記ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)および金属酸化物粒子の総重量に対し、0重量%超~20重量%の範囲;好ましくは1重量%~15重量%の範囲であり;より好ましくは約3重量%または10重量%である。一実施形態では、場合により、部分的にまたは完全に脱アセチル化された、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)量は、前記ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)および金属酸化物粒子の総重量に対し、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20重量%である。
【0047】
一実施形態では、溶液中のキトサンは、キトサンおよびTiO粒子の総重量に対し、1重量%~10重量%の範囲であり、好ましくは3重量%または10重量%である。一実施形態では、溶液中のキトサンは、キトサンおよびTiO粒子の総重量に対し、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%または10重量%である。
【0048】
一実施形態では、ステップ(i)は、1℃~40℃の範囲の温度、好ましくは10℃~30℃の範囲の温度;より好ましくは約20℃の温度で実施される。一実施形態では、ステップ(i)は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40℃の温度で実施される。
【0049】
ステップ(ii)
一実施形態では、ステップ(ii)は、上述のステップ(i)で得られた溶液のpHを高めるステップを含むまたはそれからなる。
【0050】
一実施形態では、溶液のpHを高めるステップは、水酸化物で、好ましくは水酸化カリウムで、より好ましくは約1モル/Lの濃度の水酸化カリウムの溶液で実施される。
【0051】
一実施形態では、上述のステップ(i)で得られた溶液のpHを高めるステップは、pHを約12、13または14まで増大させる。
【0052】
一実施形態では、ステップ(ii)は、12より低いpHを得ることを目的として、ステップ(i)で得られた溶液のpHを高めるステップを含むことも、それから構成されることもない。
【0053】
一実施形態では、ステップ(ii)は、1℃~40℃の範囲の温度、好ましくは10℃~30℃の範囲の温度;より好ましくは約20℃の温度で実施される。一実施形態では、ステップ(ii)は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40℃の温度で実施される。
【0054】
一実施形態では、ステップ(ii)は、加熱することを含まない。一実施形態では、ステップ(ii)は、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃または100℃より高い温度で、加熱するステップを含まない。
【0055】
他のステップ
一実施形態では、本発明の方法は、洗浄ステップをさらに含む。一実施形態では、洗浄ステップは水を用いて実施される。
【0056】
一実施形態では、本発明の方法は、乾燥ステップをさらに含む。一実施形態では、乾燥ステップは、20℃~70℃の範囲;好ましくは30℃~60℃の範囲;より好ましくは約40℃~55℃の範囲の温度で実施される。
【0057】
一実施形態では、本発明の方法は、場合により、部分的にまたは完全に脱アセチル化された、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)鎖が吸着した金属酸化物粒子を提供する。一実施形態では、本発明の方法は、粉末形態の顔料粒子を提供する。一実施形態では、本発明の方法は、個々に区別された顔料粒子を提供する。
【0058】
顔料
本発明はまた、化粧品用顔料にも関する。一実施形態では、化粧品用顔料は、疎水性および/または疎油性である。一実施形態では、化粧品用顔料は、疎水性および疎油性の両特性を備えている(すなわち、顔料はオムニフォビックである)。
【0059】
一実施形態では、化粧品用顔料は、場合により、部分的にまたは完全に脱アセチル化された、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)が吸着した金属酸化物粒子を含むまたはそれからなる。一実施形態では、化粧品用顔料は、場合により、部分的にまたは完全に脱アセチル化された、ポリ(β-(1→4)-N-アセチル-D-グルコサミン)が吸着した金属酸化物粒子を含むまたはそれからなる。一実施形態では、化粧品用顔料は、場合により、部分的にまたは完全に脱アセチル化された、ポリ(β-(1→4)-D-グルコサミン)鎖が吸着した金属酸化物粒子を含むまたはそれからなる。
【0060】
一実施形態では、好ましくはオムニフォビックな化粧品用顔料を、上記で定義の本発明の方法により得ることができる。
【0061】
化粧品組成物
本発明はまた、上記で定義の化粧品用顔料を含む組成物にも関する。特に、本発明は、上記で定義の本発明の方法により得ることができる、好ましくはオムニフォビックな化粧品用顔料を含む組成物に関する。
【0062】
一実施形態では、組成物は化粧品組成物である。一実施形態では、組成物は、美容的に許容可能な基剤を含む。一実施形態では、美容的に許容可能な基剤は、ゲル、ペースト、クリーム、ローション、乳状液、スティック、シャンプー、粉末、エアロゾル、フィルムまたは貼付剤の形態である。
【0063】
一実施形態では、組成物中の化粧品用顔料の量は、組成物の総重量に対し、0重量%超~90重量%の範囲である。
【0064】
本発明では、本発明の組成物は、脂肪酸、有機溶媒、ゲル化剤、柔軟化剤、界面活性剤、合成洗剤、ゲル化剤、香料、乳化剤、乳白剤、安定化剤、発泡剤、キレート化剤、保存剤、日焼け止め剤、精油、色素、鉱物充填剤、または化粧品で使用される任意の化合物から選択される少なくとも1種の化粧品用薬剤を組み合わせて使用し得る。
【0065】
本発明では、本発明の組成物は少なくとも1種の有効成分と組み合わせて使用し得る。
【0066】
皮膚改善方法
本発明はまた、上記で定義の化粧品組成物を使用することを含む皮膚改善方法にも関する。
【0067】
一実施形態では、皮膚改善方法は、改善を必要としている対象の皮膚に上記で定義の化粧品組成物を単独塗布として適用することを含む。一実施形態では、本発明の化粧品組成物は、それを必要としている対象の皮膚に、少なくとも月1回、好ましくは月2回より好ましくは;週1回適用され;より好ましくは本発明の組成物は週1回のみ適用される。一実施形態では、本発明の化粧品組成物は、それを必要としている対象の皮膚に、少なくとも1日1回適用される。
【0068】
一実施形態では、皮膚改善方法は、対象の肌の色つやを改善するためのものである。一実施形態では、皮膚改善方法は、対象の皮膚のテカリを抑えるためのものである。
【0069】
使用
本発明はまた、上記で定義の、好ましくはオムニフォビックな、化粧品用顔料の使用にも関する。
【0070】
一実施形態では、本発明の化粧品組成物のオムニフォビシティは、対象の皮膚上への前記顔料の保持を長期間にわたり継続する。
【0071】
一実施形態では、本発明の化粧品用顔料は、対象の皮膚により分泌される皮脂および/または汗に耐える。
【0072】
一実施形態では、本発明の化粧品用顔料は、水および/または油に対し親和性がない。一実施形態では、本発明の化粧品用顔料は、シクロペンタシロキサン(D5として知られる)またはエステルイソノナン酸イソノニルなどの油に対し親和性がない。
【0073】
一実施形態では、本発明の化粧品組成物のオムニフォビシティは、皮膚上への化粧品用顔料の付着を容易にする。
【0074】
一実施形態では、本発明の化粧品用顔料は、ヒトおよび/または環境に対し毒性がない。
【0075】
実施例
以下の実施例により本発明をさらに例示する。
略語
℃:摂氏温度
cP:センチポアズ
Da:ダルトン
D5:デカメチルシクロペンタシロキサン
h:時間
Hg:水銀
KOH:水酸化カリウム
M:リットル当たりのモル(mol/L)
mL:ミリリットル
TiO:二酸化チタン
μm:マイクロメートル
【0076】
材料および方法
全ての溶媒およびキトサンは、化学会社Sigma Aldrichから購入した。40μmの平均直径のTiO顔料は、会社Miyoshi FranceまたはSigma Aldrichから購入した。下記の特性を有する3種のキトサンを調査した:
【表1】
【0077】
パート1-化学合成
実施例1:本発明のオムニフォビック顔料の製造方法
第1のステップ(ステップ1)として、酢酸、キトサンおよび分散TiO粒子を含む100mLの酸性水溶液を作製する。溶液中のキトサンは、キトサンおよびTiO粒子の総重量に対し、1重量%~10重量%の範囲であり、好ましくは3重量%または10重量%である。溶液をキトサンA、BまたはCの完全溶解まで磁気撹拌する。
【0078】
その後、pH測定制御下で、水酸化カリウムの水溶液(1M)をステップ1で前に作製した溶液に加える。反応媒体が約pH12になると、KOHの添加を中止し、反応媒体を72時間撹拌する。
【0079】
最終的に、反応媒体を遠心分離し、水を用いた遠心分離サイクルにより洗浄する。粉末状の顔料粒子を取り出し、50mmHg未満の減圧下、45℃~55℃の温度で乾燥する。
【0080】
その後、TiO表面に吸着されたキトサンの特性を明らかにするために、熱重量分析(ATG)および赤外線分光法(ATR)により試験を実施する。キトサンなしのTiO粒子と比較したATG結果は、本発明の方法が、TiO粒子の表面上に吸着したキトサンの層を与えることを実証している。上記で定義の方法により得られた粉末の赤外線領域は、1100cm-1および3000cm-1に、キトサンの特徴的なピークを明示している。
【0081】
パート2-物理化学的試験
実施例2:本発明の方法から得られた顔料の疎水性
目的は、実施例1で定義の方法(すなわち、pH=12でのアルカリ化ステップを含む方法)により得られる顔料粒子は、何ら処理をしないTiO粒子に比べて、およびアルカリ化ステップがpH=6、7または10で実施される方法に比べて、疎水性であることを実証することである。
【0082】
2.1.本発明の方法(pH=12)により得られた顔料粒子の使用
このために、下記のいくつかの種類の粉末を純水含有バイアル中で分散させた:
試料1:何ら処理をしないTiO粒子の粉末[「TiO2」];
試料2:キトサンAが吸着したTiO粒子の粉末で、1回洗浄した粉末[「TiO2+LV」];
試料3:キトサンAが吸着したTiO粒子の粉末で、4回洗浄した粉末[「TiO2+LV x4」];
試料4:キトサンBが吸着したTiO粒子の粉末で、1回洗浄した粉末[「TiO2+MV」];
試料5:キトサンBが吸着したTiO粒子の粉末で、4回洗浄した粉末[「TiO2+MV x4」]。
【0083】
図1の結果は、以下のことを示している:
-TiO粒子がキトサンでコートされない場合、粒子は水中に均一に分散し、親水性の特性を示し;および
-TiO粒子がキトサンでコートされる場合は、キトサンA、BまたはCのどれであっても、それらが疎水性であるため、粒子は凝集し、白色粉末の形態でバイアルの底に沈殿する。
【0084】
従って、この実験は、本発明の方法が、非コートTiO粒子とは逆に、疎水性顔料粒子をもたらすことを実証している。
【0085】
2.2.pH=6または7で得られた粒子との比較
pH6または7でのアルカリ化ステップを有する方法から得られた粒子を用いて、段落2.1.と同じ実験を実施し、本発明の方法(pH12でのアルカリ化ステップ)から得られた粒子と比較した。
【0086】
図2の結果は、親水性であるために粒子がまだ溶液中に分散していることが図2で明らかな、アルカリ化ステップがpH=6または7で実施される方法により得られる粒子とは逆に、本発明の粒子は疎水性であることを示す。
【0087】
2.3.pH=10で得られた粒子との比較
pH10でのアルカリ化ステップならびに等モル比のTiOおよびキトサンを有する方法から得られた粒子、および本発明の方法(pH12でのアルカリ化ステップ)から得られた粒子の間の水中での比較も同様に実施した。
【0088】
最初に、2つの方法間の最終生成物が異なることが観察された。すなわち、pH10でのステップを有する方法は、緻密で粉砕困難な固体のピンク色の物質を生じ、一方、本発明の方法により得られた生成物は、白色粉末の形態の粒子状物質を生じる。
【0089】
これらの生成物の水中での挙動も同様に異なる:
-pH10でのアルカリ化ステップを有する方法の生成物は、固体ブロックの形態を保持し、
-本発明の方法の生成物は、疎水性の個々に区別された白色粒子(粉末)の形態である。
【0090】
従って、この実験は、本発明の方法が、等モル濃度のpH10のステップを有する方法とは逆に、疎水性顔料粒子をもたらすことを実証している。実際に、pH10でのステップを有する方法から得られた生成物は、本発明などの粉末の形態が必要な顔料としての化粧品用途と適合性がない。
【0091】
実施例3:本発明の方法から得られる顔料の疎油性特性
目的は、実施例1で定義の方法(すなわち、pH=12でのアルカリ化ステップを含む方法)により得られる顔料粒子は、何ら処理をしないTiO粒子に比べて、およびアルカリ化ステップがpH=6、7または10で実施される方法に比べて、疎油性であることを実証することである。
【0092】
3.1.本発明の方法(pH=12)により得られる顔料粒子の使用
このために、下記のいくつかの種類の粉末を純水およびエステルイソノナン酸イソノニルの混合物含有バイアル中で分散させた:
試料1:何ら処理をしないTiO粒子の粉末[「TiO2」];
試料2:キトサンAが吸着したTiO粒子の粉末で、1回洗浄した粉末[「TiO2+LV」];
試料3:キトサンAが吸着したTiO粒子の粉末で、4回洗浄した粉末[「TiO2+LV x4」];
試料4:キトサンBが吸着したTiO粒子の粉末で、1回洗浄した粉末[「TiO2+MV」];
試料5:キトサンBが吸着したTiO粒子の粉末で、4回洗浄した粉末[「TiO2+MV x4」]。
【0093】
図3の結果は、以下のことを示している:
-TiO粒子がキトサンでコートされない場合、粒子は水中のみに均一に分散し、それらの一部のみが上部油相(エステルイソノナン酸イソノニル)の壁をコートしている;および
-TiO粒子がキトサンでコートされる場合は、キトサンA、BまたはCのどれであっても、粒子は、水およびエステルイソノナン酸イソノニルの両相から排除され、白色粉末の形態でバイアルの底に沈殿する。
【0094】
従って、この実験は、本発明の方法が、非コートTiO粒子とは逆に、疎水性および疎油性顔料粒子をもたらすことを実証している。
【0095】
3.2.pH=6または7で得られた粒子との比較
pH6または7でのアルカリ化ステップを有する方法から得られた粒子を用いて、段落3.1.と同じ実験を実施し、本発明の方法(pH12でのアルカリ化ステップ)から得られた粒子と比較した。
【0096】
水の場合には、アルカリ化ステップがpH=6または7で実施される方法により得られた粒子とは逆に、粒子は疎水性ではなく(水相中に存在する)、粒子が疎水性および疎油性の両特性を有することを示す本発明の結果とは逆である。
【0097】
3.3.pH=10で得られた粒子との比較
等質量濃度のキトサンおよびTiOを用いてpH10でのアルカリ化ステップを有する方法から得られた粒子を用いて、段落3.1.と同じ実験を実施し、本発明の方法(pH12でのアルカリ化ステップ)から得られた粒子と比較した。
【0098】
水の場合には、結果は、アルカリ化ステップがpH=10で実施され、生成物がブロック状または綿状形態に見え、化粧品用途に有用な顔料に変換できない方法により得られた粒子と逆に、本発明の粒子は、粉末形態のままであり、疎水性および疎油性の両特性を示す。

図1
図2
図3