(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】光透過性導電性シート、タッチセンサ、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ、電磁波シールド部材および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
B32B 7/025 20190101AFI20250203BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20250203BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20250203BHJP
【FI】
B32B7/025
G06F3/041 495
B32B7/023
(21)【出願番号】P 2020090596
(22)【出願日】2020-05-25
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】藤野 望
【審査官】橋本 憲一郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104951165(CN,A)
【文献】特開昭62-055127(JP,A)
【文献】特開2000-243145(JP,A)
【文献】特開2012-172219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と、光透過性導電層とを、厚み方向一方側に向かって順に備え、
前記光透過性導電層は、
単数の第1領域と、
単数の第2領域
とからなり、これらを前記厚み方向一方側に向かって順に含み、
断面視において、
前記第1領域における非晶質の面積比は、0.6以上であり、
前記第2領域における結晶質の面積比は、0.7以上であり、
前記光透過性導電層の厚みが、30nmを超過し、
前記第1領域の厚みが、10nm以上であり、
前記第1領域の厚みに対する前記第2領域の厚みの比が、2以上100以下であることを特徴とする、光透過性導電性シート。
【請求項2】
前記光透過性導電層の厚みに対する前記第2領域の厚みの割合が、0.73以上であることを特徴とする、請求項1に記載の光透過性導電性シート。
【請求項3】
前記光透過性導電層の材料が、インジウムおよびスズを含有する複合酸化物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の光透過性導電性シート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光透過性導電性シートを備えることを特徴とする、タッチセンサ。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光透過性導電性シートを備えることを特徴とする、調光素子。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光透過性導電性シートを備えることを特徴とする、光電変換素子。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光透過性導電性シートを備えることを特徴とする、熱線制御部材。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光透過性導電性シートを備えることを特徴とする、アンテナ。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光透過性導電性シートを備えることを特徴とする、電磁波シールド部材。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光透過性導電性シートを備えることを特徴とする、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性導電性シート、タッチセンサ、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ、電磁波シールド部材および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材フィルムと、ITOからなる透明導電膜とを備える透明導電性フィルムが知られている。
【0003】
例えば、非晶性ITO膜と、その上に配置される結晶性のITO膜とを備える透明導電膜が提案されている。(例えば、下記特許文献1参照。)。特許文献1の記載の透明導電膜では、非晶性ITO膜(下層)が、結晶性のITO膜(上層)より厚い。これによって、特許文献1に記載の透明導電膜は、エッチング性を向上させながら、耐久性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、透明導電膜には、低い比抵抗が求められる。しかし、特許文献1の記載の透明導電膜は、上記した要求を満足できないという不具合がある。
【0006】
さらに、透明導電膜には、クラックの抑制が求められる。
【0007】
本発明は、低い比抵抗を有しながら、クラックが抑制された光透過性導電層を備える光透過性導電性シートと、それを備えるタッチセンサ、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ、電磁波シールド部材および画像表示装置とを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(1)は、樹脂層と、光透過性導電層とを、厚み方向一方側に向かって順に備え、前記光透過性導電層は、第1領域と、第2領域とを、前記厚み方向一方側に向かって順に含み、前記第1領域の主要な領域は、非晶質であり、前記第2領域は、結晶質であり、前記第2領域は、前記第1領域の前記領域より厚く、前記光透過性導電層の厚みが、30nmを超過する、光透過性導電性シートを含む。
【0009】
本発明(2)は、前記光透過性導電層の厚みに対する前記第2領域の厚みの割合が、0.73以上である、(1)に記載の光透過性導電性シートを含む。
【0010】
本発明(3)は、前記光透過性導電層の材料が、インジウムおよびスズを含有する複合酸化物である、請求項(1)または(2)に記載の光透過性導電性シートを含む。
【0011】
本発明(4)は、(1)~(3)のいずれか一項に記載の光透過性導電性シートを備える、タッチセンサを含む。
【0012】
本発明(5)は、(1)~(3)のいずれか一項に記載の光透過性導電性シートを備える、調光素子を含む。
【0013】
本発明(6)は、(1)~(3)のいずれか一項に記載の光透過性導電性シートを備える、光電変換素子を含む。
【0014】
本発明(7)は、(1)~(3)のいずれか一項に記載の光透過性導電性シートを備える、熱線制御部材を含む。
【0015】
本発明(8)は、(1)~(3)のいずれか一項に記載の光透過性導電性シートを備える、アンテナを含む。
【0016】
本発明(9)は、(1)~(3)のいずれか一項に記載の光透過性導電性シートを備える、電磁波シールド部材を含む。
【0017】
本発明(10)は、(1)~(3)のいずれか一項に記載の光透過性導電性シートを備える、画像表示装置を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光透過性導電性シートの光透過性導電層は、低い比抵抗を有しながら、クラックが抑制されている。
【0019】
本発明のタッチセンサ、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ、電磁波シールド部材および画像表示装置は、上記した光透過性導電性シートを備えるので、信頼性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の光透過性導電性シートの一実施形態の断面図である。
【
図2】
図2は、スパッタリング装置の構成図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す光透過性導電性シートの変形例の断面図である。
【
図4】
図4は、実施例2のTEM写真の画像処理図である。
【
図5】
図5は、実施例3のTEM写真の画像処理図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(光透過性導電性シートの一実施形態)
本発明の光透過性導電性シートの一実施形態を、
図1を参照して説明する。
【0022】
光透過性導電性シート1は、後述するタッチセンサ、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ、電磁波シールド部材および画像表示装置などに備えられる一部材であって、光透過性導電性シート1は、それらを製造するための中間部材である。光透過性導電性シート1は、単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。
【0023】
光透過性導電性シート1は、厚みを有し、厚み方向に直交する面方向に延びる平板形状を有する。光透過性導電性シート1は、樹脂層の一例としての基材シート2と、光透過性導電層3とを厚み方向一方側に向かって順に備える。具体的には、光透過性導電性シート1は、基材シート2と、基材シート2の厚み方向一方面に配置される光透過性導電層3とを備える。好ましくは、光透過性導電性シート1は、基材シート2と、光透過性導電層3とのみを備える。
【0024】
(基材シート)
基材シート2は、厚みを有し、面方向に延びる平板形状を有する。基材シート2は、光透過性導電性シート1の厚み方向他方面を形成する。基材シート2は、面方向に延びるフィルム形状を有する。基材シート2は、可撓性を有する。基材シート2は、少なくとも基材層4を含む。具体的には、基材シート2は、基材層4と、ハードコート層5とを厚み方向一方側に向かって順に備える。なお、この一実施形態において、光透過性導電性シート1に備えられる基材シート2の数は、1である。
【0025】
基材層4は、面方向に延びるフィルム形状を有する。基材層4は、基材シート2の厚み方向他方面を形成する。基材層4の材料は、特に限定されず、例えば、ポリマー、ガラスなどが挙げられる。好ましくは、ポリマーが挙げられる。ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー(COP)などのオレフィン樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、例えば、ポリメタクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂(アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂)、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂などの樹脂が挙げられ、好ましくは、ポリエステル樹脂、より好ましくは、PETが挙げられる。基材層4の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、30μm以上であり、また、例えば、300μm以下、好ましくは、200μm以下、より好ましくは、100μm以下、さらに好ましくは、75μm以下である。〓
ハードコート層5は、光透過性導電層3に擦り傷を生じ難くするための擦傷保護層である。ハードコート層5は、基材シート2の厚み方向一方面を形成する。ハードコート層5は、基材層4の厚み方向一方面の全部に接触している。ハードコート層5は、特開2016?179686号公報に記載のハードコート組成物(アクリル樹脂、ウレタン樹脂など)の硬化物が挙げられる。ハードコート層5の厚みは、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、5μm以下である。
【0026】
(基材の物性)
基材シート2の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上、より好ましくは、15μm以上、さらに好ましくは、30μm以上であり、また、例えば、310μm以下、好ましくは、210μm以下、より好ましくは、110μm以下、さらに好ましくは、80μm以下である。
【0027】
基材シート2の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、例えば、60%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは、85%以上であり、また、例えば、100%以下である。
【0028】
(光透過性導電層)
光透過性導電層3は、光透過性導電性シート1の厚み方向一方面を形成する。光透過性導電層3は、その厚み方向他方側から、基材シート2に支持されている。光透過性導電層3は、基材シート2の厚み方向一方面の全部に接触している。つまり、光透過性導電層3は、基材シート2の厚み方向一方面に接触する。この光透過性導電層3は、第1領域6と、第2領域7とを、厚み方向一方側に向かって備える。そのため、この光透過性導電性シート1は、基材シート2と、第1領域6と、第2領域7とが、厚み方向一方側に向かって順に配置される。なお、この一実施形態において、光透過性導電性シート1に備えられる光透過性導電層3の数は、1である。
【0029】
(第1領域)
第1領域6は、この一実施形態では、光透過性導電層3における厚み方向他方側部分である。第1領域6は、光透過性導電層3の厚み方向他方面を含む。
【0030】
この第1領域6は、断面視において、非晶質(非晶性)である領域を含む。第1領域6における非結晶性の態様としては、例えば、断面視において、第1領域6におけるすべての領域が非晶質である態様、例えば、断面視において、第1領域6において主要な領域が非晶質であり、残りわずかな領域が、結晶質である態様を含む。第1領域6における非晶性は、断面TEM画像の観察によって確認される。具体的には、例えば、
図4に示すように、断面TEM画像によって、黒色の領域が非晶質の第1領域6として同定される。また、後述する通り、高倍率の断面TEM観察にて、格子縞の有無や格子縞が確認される領域の割合を観察することにより、第1領域6の非晶質であること、および/または、非晶質が主要な領域であることを同定することもできる。なお、断面視において、第1領域6における主要な領域の面積比(非晶質の面積比)は、例えば、0.6以上、好ましくは、0.8以上、より好ましくは、0.9以上であり、また、例えば、1以下である。
【0031】
第1領域6の厚みは、上記した主要な領域の厚みであって、後述する第2領域7の厚みとの比が所望範囲となるように設定される。第1領域6の厚みは、例えば、30nm以下、好ましくは、25nm以下、より好ましくは、20nm以下、さらに好ましくは、15nm以下であり、また、例えば、1nm以上、好ましくは、5nm以上、より好ましくは、10nm以上である。
【0032】
第1領域6の厚みの測定方法は、実施例で説明する。
【0033】
(第2領域)
第2領域7は、この一実施形態では、光透過性導電層3における厚み方向一方側部分である。第2領域7は、光透過性導電層3の厚み方向一方面を含む。また、第2領域7は、第1領域6の厚み方向一方側に連続する。
【0034】
この第2領域7は、断面視において、主要な領域として、結晶質である領域を含み、具体的には、結晶質(結晶性)である。
【0035】
第2領域7は非晶質(非晶性)をわずかに含んでいてもよい。具体的には、第2領域7における主要な領域の面積比(結晶質の面積比)は、例えば、0.7以上、好ましくは、0.8以上、より好ましくは、0.9以上であり、また、例えば、1以下である。
【0036】
第2領域7における結晶性は、断面TEM画像の観察によって確認される。具体的には、例えば、
図4に示すように、断面TEM画像によって、灰色の領域が結晶質の第2領域7として同定される。また、後述する通り、高倍率の断面TEM観察にて、格子縞の有無や格子縞が確認される領域の割合を観察することにより、第2領域7が結晶質であること、および/または、結晶質が主要な領域であることを同定することもできる。
【0037】
第2領域7は、第1領域6(第1領域6における主要な領域)より厚い。他方、第2領域7が、第1領域6より薄いか同一厚みであれば、比抵抗が上昇する。
【0038】
具体的には、第1領域6の厚みに対する第2領域7の厚みの比は、1.0超過、好ましくは、1.3以上、より好ましくは、2以上、さらに好ましくは、4以上である。また、光透過性導電層3の厚みに対する第2領域7の厚みの比は、例えば、0.50超過、好ましくは、0.56以上、より好ましくは、0.70以上、さらに好ましくは、0.73以上、とりわけ好ましくは、0.80以上である。第1領域6の厚みに対する第2領域7の厚みの比、および/または、光透過性導電層3の厚みに対する第2領域7の厚みの比が、上記した下限以上であれば、光透過性導電層3における、低い比抵抗を確保できる。
【0039】
また、第1領域6の厚みに対する第2領域7の厚みの比は、例えば、1000以下、好ましくは、100以下、より好ましくは、50以下、さらに好ましくは、20以下、とりわけ好ましくは、15以下、とくに好ましくは、10以下である。また、透過性導電層3の厚みに対する第2領域7の厚みの比は、例えば、1.00未満、好ましくは、0.99以下、より好ましくは、0.95以下、より好ましくは、0.90である。第1領域6の厚みに対する第2領域7の厚みの比、および/または、透過性導電層3の厚みに対する第2領域7の厚みの比が上記した上限以下であれば、透過性導電層3のクラックの発生量を抑制できる。
【0040】
また、第2領域7の厚みは、第2領域7の厚み比が上記範囲になるように設定され、具体的には、例えば、25nm超過、好ましくは、30nm以上、より好ましくは、50nm、さらに好ましくは、65nm以上、とりわけ好ましくは、100nm以上である。また、第2領域7の厚みは、例えば、500nm未満、好ましくは、300nm以下、より好ましくは、200nm以下である。
【0041】
第2領域7の厚みの測定方法は、実施例で説明する。
【0042】
(光透過性導電層の材料)
光透過性導電層3の材料としては、例えば、導電性酸化物が挙げられる。導電性酸化物としては、例えば、In、Sn、Zn、Ga、Sb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、Wからなる群より選択される少なくとも1種の金属または半金属を含む金属酸化物が挙げられる。金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子または半金属原子をドープしていてもよい。
【0043】
導電性酸化物としては、具体的には、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)、インジウムガリウム複合酸化物(IGO)、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)などの金属酸化物が挙げられる。導電性酸化物として、好ましくは、透明性および電気伝導性を向上する観点から、インジウムおよびスズの両方を含有するインジウムスズ複合酸化物(ITO)が挙げられる。導電酸化物がITOであれば、透明性および導電性により一層優れる。ITOにおける酸化インジウムの濃度および酸化スズの濃度は、用途および目的によって適宜設定される。具体的には、導電性酸化物における酸化スズの濃度は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、例えば、30質量%以下である。
【0044】
(光透過性導電層の物性)
光透過性導電層3の厚みは、30nmを超過する。光透過性導電層3の厚みが30nm以下であれば、光透過性導電層3の比抵抗が上昇する。また、光透過性導電層3の厚みは、好ましくは、40nm以上、より好ましくは、50nm超過、さらに好ましくは、60nm以上、とりわけ好ましくは、75nm以上、とくに好ましくは、100nm以上、もっとも好ましくは、125nm以上であり、また、例えば、500nm以下、好ましくは、300nm以下、より好ましくは、250nm以下、さらに好ましくは、200nm以下、とりわけ好ましくは、175nm以下である。光透過性導電層3の厚みが上記した下限以上あれば、比抵抗を低減できる。光透過性導電層3の厚みが上記した上限以下であれば、クラックを抑制できる。
【0045】
光透過性導電層3の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、例えば、60%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは、85%以上であり、また、例えば、100%以下である。
【0046】
光透過性導電層3の表面抵抗は、例えば、200Ω/□以下、好ましくは、65Ω/□以下、より好ましくは、45Ω以下、さらに好ましくは、30Ω/□以下、とりわけ好ましくは、20Ω/□以下であり、また、例えば、0Ω/□超過である。表面抵抗は、JIS K7194に準拠して、4端子法により測定する。
【0047】
光透過性導電層3の比抵抗は、例えば、7.0×10-4Ωcm以下、好ましくは、2.8×10-4Ωcm以下、より好ましくは、2.5×10-4Ωcm以下、さらに好ましくは、2.2×10-4Ωcm以下であり、また、例えば、0Ωcm超過、好ましくは、0.1×10-4Ωcm以上、より好ましくは、0.5×10-4Ωcm以上、さらに好ましくは、1.0×10-4Ωcm以上である。比抵抗は、表面抵抗に厚みを乗じて得られる。
【0048】
(光透過性導電性シートの物性)
光透過性導電性シート1の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上、より好ましくは、15μm以上、さらに好ましくは、30μm以上であり、また、例えば、310μm以下、好ましくは、210μm以下、より好ましくは、120μm以下、さらに好ましくは、90μm以下である。
【0049】
光透過性導電性シート1の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、例えば、60%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは、85%以上であり、また、例えば、100%以下である。
【0050】
(光透過性導電性シート1の製造方法)
次に、光透過性導電性シート1の製造方法を、
図2を参照して説明する。この方法では、例えば、ロール-トゥ-ロール方式で、基材シート2に光透過性導電層3を成膜する。
【0051】
この方法では、まず、基材シート2を準備する。具体的には、ハードコート組成物を、基材層4の厚み方向一方面に塗布および乾燥後、ハードコート組成物を硬化させる。これにより、基材層4と、ハードコート層5とを厚み方向一方側に順に備える基材シート2を準備する。
【0052】
次いで、光透過性導電層3を、スパッタリングによって成膜する。具体的には、基材シート2をスパッタリング装置30で搬送しながら、光透過性導電層3を成膜する。
【0053】
[スパッタリング装置]
図2に示すように、スパッタリング装置30は、繰出部35と、スパッタ部36と、巻取部37とを順に備える。
【0054】
繰出部35は、繰出ロール38を備える。
【0055】
スパッタ部36は、成膜ロール40と、第1成膜室41と、第2成膜室42とを備える。
【0056】
成膜ロール40は、成膜ロール40を冷却するように構成される図示しない冷却装置を備える。
【0057】
第1成膜室41は、第1ターゲット51と、第1ガス供給機61と、第1ポンプ71の排出口とを収容する。第1ターゲット51と、第1ガス供給機61と、第1ポンプ71の排出口とは、成膜ロール40に対して間隔を隔てて配置されている。第1成膜室41において、第1ターゲット51に対する成膜ロール40の反対側には、図示しないマグネットが配置されている。マグネットの磁場強度は、第1ターゲット51上の水平磁場強度が、例えば、10mT以上、200mT以下になるように、調整されている。
【0058】
第1ターゲット51の材料としては、上記した導電性酸化物と同様の材料が挙げられる。なお、第1ターゲット51の材料は、導電性酸化物の焼結体を含む。第1ターゲット51は、所定の電力密度で電力印加できるように構成されている。
【0059】
第1ガス供給機61は、スパッタリングガスを、第1成膜室41に供給するように構成されている。スパッタリングガスとしては、例えば、窒素、アルゴンなどの不活性ガス、例えば、不活性ガスと、酸素などの反応性ガスとを含む混合ガスなどが挙げられ、好ましくは、混合ガスが挙げられる。スパッタリングガスが混合ガスであれば、第1ガス供給機61は、第1不活性ガス供給機63と、第1反応性ガス供給機64とを含んでおり、それぞれから、不活性ガスと、反応性ガスとが第1成膜室41に供給される。
【0060】
第2成膜室42は、成膜ロール40の周方向において、第1成膜室41に隣接して配置される。第2成膜室42は、第2ターゲット52と、第2ガス供給機62と、第2ポンプ72の排出口とを収容する。第2ターゲット52と、第2ガス供給機62と、第2ポンプ72の排出口とは、成膜ロール40に対して間隔を隔てて配置されている。第2成膜室42において、第2ターゲット52に対する成膜ロール40の反対側には、図示しないマグネットが配置されている。マグネットの磁場強度は、第2ターゲット52上の水平磁場強度が、例えば、10mT以上、200mT以下になるように、調整されている。
【0061】
第2ターゲット52の材料としては、上記した導電性酸化物と同様の材料が挙げられる。なお、第2ターゲット52の材料は、導電性酸化物の焼結体を含む。第2ターゲット52は、所定の電力密度で電力を印加できるように構成されている。
【0062】
第2ガス供給機62は、第2のスパッタリングガスを、第2成膜室42に供給するように構成されている。第2のスパッタリングガスとしては、例えば、不活性ガス、混合ガスが挙げられ、好ましくは、混合ガスが挙げられる。第2のスパッタリングガスが第2混合ガスであれば、第2ガス供給機62は、第2不活性ガス供給機65と、第2反応性ガス供給機66とを含んでおり、それぞれから、不活性ガスと、反応性ガスとが第2成膜室42に供給される。
【0063】
巻取部37は、巻取ロール39を備える。
【0064】
[光透過性導電性シート1の製造方法]
このスパッタリング装置30を用いて、光透過性導電層3を基材シート2に成膜するには、まず、基材シート2を、繰出ロール38、成膜ロール40および巻取ロール39に掛け渡す。
【0065】
第1ポンプ71を駆動しながら、第1ガス供給機61からスパッタリングガスを第1成膜室41に供給する。スパッタリングガスが混合ガスであれば、混合ガスにおける不活性ガスに対する反応性ガスの比R1は、容量基準で、例えば、0.001以上、好ましくは、0.005以上であり、また、例えば、0.2以下、好ましくは、0.1以下である。第1成膜室41の圧力は、例えば、1Pa以下である。
【0066】
第2ポンプ72を駆動しながら、第2ガス供給機62からスパッタリングガスを第2成膜室42に供給する。スパッタリングガスが混合ガスであれば、混合ガスにおける不活性ガスに対する反応性ガスの比R2は、容量基準で、例えば、0.001以上、好ましくは、0.005以上であり、また、例えば、0.2以下、好ましくは、0.1以下である。また、比R2に対する比R1の比(R1/R2)は、例えば、2以下、好ましくは、1未満、より好ましくは、0.9以下、さらに好ましくは、0.8以下、とりわけ好ましくは、0.7以下であり、また、例えば、0.01以上、好ましくは、0.1以上、より好ましくは、0.5以上である。第2成膜室42の圧力は、例えば、1Pa以下である。
【0067】
また、冷却装置を駆動して、成膜ロール40(の表面)を冷却する。成膜ロール40の温度(表面温度)は、例えば、20℃以下、好ましくは、10℃以下、さらに好ましくは、0.0℃以下であり、また、例えば、-50℃以上、好ましくは、-25℃以上である。
【0068】
第1ターゲット51と第2ターゲット52とのそれぞれに電極を印加する。具体的には、第1ターゲット51に電力密度P1で電力を印加する。第2ターゲット52に電力密度P2で電力を印加する。
【0069】
なお、第1ターゲット51と第2ターゲット52とのそれぞれに印加する電源は、特に限定されず、例えば、DC、RFなどが挙げられる。電源は、好ましくは、DCである。
【0070】
第2ターゲット52における電力密度P2に対する第1ターゲット51における電力密度P1の比(P1/P2)は、例えば、0.45以下、好ましくは、0.40以下、より好ましくは、0.32以下、さらに好ましくは、0.30以下であり、また、例えば、0.05以上、好ましくは、0.10以上、より好ましくは、0.16以上、さらに好ましくは、0.20以上である。第1ターゲット51の電力密度P1の比(P1/P2)が上記した上限以下であれば、第1非晶質導電膜81(後述)より厚い第2非晶質導電膜82(後述)を確実に形成できる。第1ターゲット51の電力密度P1の比(P1/P2)が上記した下限以上であれば、後の結晶化工程においても非晶質性を維持する第1領域6となる第1非晶質導電膜81を確実に形成し易い。
【0071】
具体的には、第1ターゲット51における電力密度P1と、第2ターゲット52における電力密度P2とは、上記した比(P1/P2)が上記した範囲内になるように適宜設定され、それぞれ、例えば、0.1W/cm2以上、また、例えば、15W/cm2以下の範囲から設定される。
【0072】
続いて、繰出ロール38と、成膜ロール40と、巻取ロール39とを駆動することにより、繰出ロール38から基材シート2が繰り出される。基材シート2は、成膜ロール40の表面に接触しながら、第1成膜室41と第2成膜室42とを順に移動する。この際、基材シート2は、成膜ロール40の表面との接触によって、冷却される。
【0073】
第1ターゲット51の近傍において、第1ターゲット51に対する電力の印加によって、スパッタリングガスをイオン化させて、イオン化ガスを生成する。続いて、イオン化ガスが、第1ターゲット51に衝突し、第1ターゲット51のターゲット材料が粒子となって叩き出され、粒子が、基材シート2に付着(堆積)して、第1非晶質導電膜81が形成される。
【0074】
続いて、第2ターゲット52の近傍において、第2ターゲット52に対する電力の印加によって、スパッタリングガスをイオン化させて、イオン化ガスを生成する。続いて、イオン化ガスが、第2ターゲット52に衝突し、第2ターゲット52のターゲット材料が粒子となって叩き出され、粒子が、第1非晶質導電膜81に付着(堆積)して、第2非晶質導電膜82が形成される。
【0075】
第1非晶質導電膜81と、第2非晶質導電膜82とは、それぞれが、主成分として同一の導電性酸化物を含有することから、それらの境界は明確に観察されない場合がある。
【0076】
これにより、基材シート2と、第1非晶質導電膜81と、第2非晶質導電膜82とを厚み方向に順に備える非晶質光透過性導電性シート10が得られる。
【0077】
その後、第2非晶質導電膜82を結晶化させる(結晶化工程)。第2非晶質導電膜82を結晶化させるには、例えば、非晶質光透過性導電性シート10を加熱する。加熱温度は、例えば、80℃以上、好ましくは、100℃以上、より好ましくは、150℃以上あり、また、例えば、200℃未満、好ましくは、180℃以下であり、また、加熱時間は、例えば、1分間以上、好ましくは、10分間以上、より好ましくは、30分間以上、さらに好ましくは、1時間以上であり、また、例えば、5時間以下、好ましくは、3時間以下である。または、非晶質光透過性導電性シート10を常温で長時間放置することもできる。例えば、非晶質光透過性導電性シート10を、20℃以上、40℃以下の雰囲気で、500時間以上、好ましくは、1000時間以上、2000時間以下、放置する。
【0078】
上記した加熱、または、常温長時間放置によって、第2非晶質導電膜82が結晶化する一方、第1非晶質導電膜81は、結晶化しない。これは、第1ターゲット51における電力密度P1の比(P1/P2)が上記した範囲(例えば、0.45以下)にあることから、第1非晶質導電膜81は、第2非晶質導電膜82に比べて不純物(例えば、水素原子および/または炭素原子)が多く、そのため、非晶性を維持する。
【0079】
これによって、第1非晶質導電膜81は、第1領域6をなし、第2非晶質導電膜82は、第2領域7をなす。
【0080】
これによって、基材シート2と、第1領域6および第2領域7を有する光透過性導電層3とを備える非晶質光透過性導電性シートが得られる。
【0081】
この光透過性導電性シート1は、種々の用途に用いられ、例えば、タッチセンサ、電磁波シールド、調光素子(PDLC、PNLC、やSPDなどの電圧駆動型調光素子やエレクトロクロクロミック(EC)等の電流駆動型調光素子)、光電変換素子(有機薄膜太陽電池や色素増感太陽電池に代表される太陽電池素子の電極など)、熱線制御部材(近赤外反射および/または吸収部材や遠赤外反射および/または吸収部材)、アンテナ部材(光透過性アンテナ)、ヒーター部材(光透過性ヒーター)、画像表示装置などに用いられる。
【0082】
(一実施形態の作用効果)
そして、この光透過性導電性シート1の光透過性導電層3は、光透過性導電層3の低い比抵抗を有しながら、クラックが抑制されている。
【0083】
具体的には、結晶質である第2領域7が、第1領域6において非晶質である領域より厚いので、光透過性導電層3の比抵抗を低くできる。また、光透過性導電層3の厚みが、30nmを超過するので、光透過性導電層3の比抵抗を低くできる。
【0084】
また、光透過性導電性シート1では、光透過性導電層3の厚みに対する第2領域7の厚みの割合が、0.73以上であれば、光透過性導電層3が、より一層低い比抵抗、さらには、低い表面抵抗を確保できる。
【0085】
タッチセンサ、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ、電磁波シールド部材、ヒータ部材、および画像表示装置は、上記した光透過性導電性シート1を備えるので、信頼性に優れる。
【0086】
(変形例)
変形例において、一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0087】
一実施形態では、光透過性導電層3は、単数の第1領域6を含むが、例えば、複数の第1領域6を含むことができる。例えば、第1領域6と、第2領域7と、第1領域6とが、厚み方向一方側に向かって、配置されていてもよい。また、光透過性導電層3は、単数の第2領域7を含むが、例えば、複数の第2領域7を含むことができる。すると、光透過性導電層3は、複数の第1領域6と、複数の第2領域7とを含むことができる。
【0088】
例えば、この光透過性導電層3では、第1領域6と、第2領域7とが、厚み方向一方側に向かって、交互に配置されていてもよい。例えば、
図3に示すように、第1領域6と、第2領域7と、第1領域6と、第2領域7とが厚み方向一方側に向かって順に配置される。
図3に示す光透過性導電層3を形成するには、例えば、
図2に示すスパッタリング装置30を用いて、単数の第1非晶質導電膜81と単数の第2非晶質導電膜82とを形成し、巻取ロール39で巻き取った非晶質光透過性導電性シート10を、再び、スパッタリング装置30(の繰出ロール38)にセットして(巻き替えて)、第3非晶質導電膜83と、第4非晶質導電膜84とを、第2非晶質導電膜82の厚み方向一方側に順に形成する。その後、上記の積層体を加熱または常温長期間放置する。これによって、第2非晶質導電膜82と第4非晶質導電膜84とが、結晶化して、第2領域7を形成する。一方、第1非晶質導電膜81と第3非晶質導電膜83とは、非晶性を維持して、第1領域6を形成する。そのため、第1領域6と、第2領域7と、第1領域6と、第2領域7とが、厚み方向一方側に向かって順に配置される。
【0089】
第1領域6が複数配置される変形例では、第1領域6の厚みは、複数の第1領域6の厚みの合算値である。第2領域7が複数配置される変形例では、第2領域7の厚みは、複数の第2領域7の厚みの合算値である。
【0090】
基材シート2は、他の機能層をさらに備えることができる。機能層は、例えば、誘電体であり、その表面抵抗が、例えば、1×10
6Ω/□以上、好ましくは、1×10
8Ω/□以上である。また、機能層は、樹脂および/または無機物を含有する。機能層は、単一の層として形成しても、複数の層として形成してもよく、また、樹脂と無機物との混合物として形成してもよい。例えば、
図1の仮想線で示すように、基材フィルム13の厚み方向他方面に配置され、樹脂と無機粒子との混合物からなるアンチブロッキング層25を備えることができる。
【0091】
本発明の樹脂層は、図示しないが、基材層4のみであってもよく、また、ハードコート層5のみであってもよい。また、本発明の樹脂層は、機能層であってもよい。
【0092】
一実施形態では、光透過性導電性シート1に備えられる光透過性導電層3の数は、1であったが、例えば、図示しないが、2であってもよい。この場合には、光透過性導電層3と、基材シート2と、光透過性導電層3とが、厚み方向一方側に向かって配置される。つまり、2つの光透過性導電層3が、厚み方向において、1つの基材シート2が挟む。
【0093】
一実施形態では、スパッタリング装置30は、成膜ロール40を備えるが、これに代えて、表面が平坦な成膜板を備えることもできる。
【0094】
一実施形態では、2の成膜室を備えるスパッタリング装置30を用いたが、1つの成膜室を備えるスパッタリング装置30を用いることもできる。例えば、第1回目のスパッタで、第1非晶質導電膜81を形成し、非晶質光透過性導電性シート10を巻取ロール39で巻き取り、これを同じスパッタリング装置30(の繰出ロール38)にセットして(巻き替えて)、第2回目のスパッタで、第2非晶質導電膜82を形成する。この変形例では、例えば、第2回目のスパッタにおける電力密度P2に対する第1回目のスパッタにおける電力密度P1の比(P1/P2)は、第2ターゲット52における電力密度P2に対する第1ターゲット51における電力密度P1の比(P1/P2)と同様である。
【0095】
一実施形態では、成膜ロール40の温度(表面温度)を冷却(20℃以下)としている。変形例では、成膜ロール40を加熱する。成膜ロール40の温度は、例えば、20℃超過、180℃以下である。
【0096】
一実施形態では、第1成膜室41と、第2成膜室42とを備えるスパッタリング装置30を用いたが、成膜室の数は、これに限定されない。3つ以上の成膜室を備えるスパッタリング装置30を用いることもできる。例えば、3つの成膜室を備えるスパッタリング装置30は、第1成膜室41、第2成膜室42、および、第3成膜室(図示せず)を有する。また、第3成膜室は、例えば、第3ターゲット(図示せず)と、第3ガス供給機(図示せず)と、第3ポンプの排出口(図示せず)とを収容する。スパッタリングガスとして第3混合ガスを供給する場合、第3ガス供給機は、第3不活性ガス供給機(図示せず)と、第3反応性ガス供給機(図示せず)とを含んでおり、それぞれから、不活性ガスと、反応性ガスとが第3成膜室に供給される。光透過性導電層3は、第1ターゲット51、第2ターゲット52、第3ターゲットに電力を印加することで形成できるが、この変形例では、第1ターゲット51をスパッタすることにより、第1非晶質導電膜81を形成し、第2ターゲット52および第3ターゲットをスパッタすることにより、第2非晶質導電膜82を形成する。
【実施例】
【0097】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0098】
実施例1
長尺のPETフィルム(三菱樹脂社製、厚み50μm)からなる基材層4の厚み方向一方面に、アクリル樹脂を含む紫外線硬化性のハードコート組成物を塗布し、これを紫外線照射して硬化させて、厚みが2μmであるハードコート層5を形成した。これにより、基材層4と、ハードコート層5とを備える基材シート2を準備した。
【0099】
次いで、基材シート2をスパッタリング装置30にセットした。成膜ロール40の温度を、-8℃にした。第1ポンプ71と第2ポンプ72とを駆動した。スパッタリング装置30において、第1ターゲット51と第2ターゲットとの材料は、いずれも、酸化インジウムと酸化スズとの焼結体であった。焼結体における酸化スズ濃度は、10質量%であった。
【0100】
第1不活性ガス供給機63からアルゴンを第1成膜室41に供給し、第1反応性ガス供給機64から酸素を第1成膜室41に供給した。第1成膜室41の気圧は、0.4Paであった。第1成膜室41の混合ガス(アルゴンおよび酸素の全量)におけるアルゴンに対する酸素の比R1(容量基準)は、0.010であった。第1ターゲット51に電力密度P1で電力を印加して、第1ターゲット51をスパッタリングした。第1ターゲット51上の水平磁場強度は、90mTであった。第1ターゲット51に印加する電源は、DCを用いた。
【0101】
第2不活性ガス供給機65からアルゴンを第2成膜室42に供給し、第2反応性ガス供給機66から酸素を第2成膜室42に供給した。第2成膜室42の気圧は、0.4Paであった。第2成膜室42の混合ガス(アルゴンおよび酸素の全量)におけるアルゴンに対する酸素の比R2(容量基準)は、0.017であった。第2ターゲット52に電力密度P2で電力を印加して、第2ターゲット52をスパッタリングした。第2ターゲット52上の水平磁場強度は、90mTであった。第2ターゲット52に印加する電源は、DCを用いた。第2ターゲット52における電力密度P2に対する、第1ターゲット51における電力密度P1の比(P1/P2)は、0.31であった。
【0102】
これによって、第1非晶質導電膜81と第2非晶質導電膜82とを基材シート2の厚み方向一方側に順に形成した。これによって、基材シート2と、第1非晶質導電膜81と、第2非晶質導電膜82とを厚み方向一方側に向かって順に備える非晶質光透過性導電性シート10を作製した。
【0103】
次いで、非晶質光透過性導電性シート10を、23℃、1500時間静置し、その後、熱風オーブンで155℃、1.5時間加熱した。これにより、光透過性導電性シート1を得た。
【0104】
(実施例2、実施例4~比較例5)
表1に示すように、第1ターゲット51の電力密度P2に対する第1ターゲット51の電力密度P1の比(P1/P2)、反応性ガスの比R1/R2、光透過性導電層3の総厚等を変更した以外は、実施例1と同様に処理して、光透過性導電性シート1を得た。
【0105】
(実施例3)
表1に示すように、第1ターゲット51の電力密度P2に対する第1ターゲット51の電力密度P1の比(P1/P2)を変更して、実施例1と同様に、第1非晶質導電膜81と第2非晶質導電膜82とを形成して、非晶質光透過性導電性シート10を形成し、巻取ロール39でこれを巻き取った後、非晶質光透過性導電性シート10を再度スパッタリング装置30にセットして(巻き替えて)、第3非晶質導電膜83と第4非晶質導電膜84とを形成した。その後、これを、23℃、1500時間静置し、さらにこれを熱風オーブンで155℃、1.5時間加熱した。
【0106】
(厚みの測定、結晶性の確認、評価等)
各実施例および各比較例の光透過性導電性シート1について、以下の項目を評価した。結果を表1に記載する。
【0107】
(光透過性導電層の厚みと、非晶質および結晶質の判定)
FIBマイクロサンプリング法により、光透過性導電性シート1を断面調整した後、断面のFE-TEM観察を実施した。20万倍の観察倍率で撮影したTEM画像を用いて、光透過性導電層3の黒色の領域(第1領域6)の厚みと灰色の領域(第2領域7)の厚みとを測定した。また、それらを合算して、光透過性導電層3の厚みを取得した。
【0108】
また、黒色の領域と、灰色の領域とのそれぞれにおいて、高倍率(200万倍)での断面TEM観察を実施した。灰色の領域では、断面視において全体の領域にわたって、格子縞が確認され、そのため、結晶質であり、第2領域7であることが分かった。一方、黒色の領域では、断面視において全体の領域にわたって、格子縞が確認されず、または、断面視において、一部の狭い領域で格子縞が確認されたが、格子縞の格子縞は、微小領域であることから、非晶質が支配的であるため、第1領域6であることが分かった。
【0109】
装置および測定条件は以下のとおりである。
FIB装置: Hitachi製 FB2200、 加速電圧: 10kV
FE-TEM 装置: JEOL製 JEM-2800、加速電圧: 200kV
実施例2のTEM写真を
図4に示す。実施例3のTEM写真を
図5に示す。
【0110】
(表面抵抗)
光透過性導電層3の表面抵抗を、JIS K7194(1994年)に準じる四端子法により測定した。以下の基準で、表面抵抗を評価した。
<基準>
◎: 表面抵抗が、20Ω/□以下である。
〇: 表面抵抗が、20Ω/□超過、45Ω/□以下である。
△: 表面抵抗が、45Ω/□超過、65Ω/□以下である。
×: 表面抵抗が、65Ω/□超過である。
【0111】
(比抵抗)
光透過性導電層3の表面抵抗に、光透過性導電層3の厚みを乗じて、比抵抗を取得した。以下の基準で、比抵抗を評価した。
<評価基準>
◎: 比抵抗が、2.2×10-4Ω・cm以下である。
〇: 比抵抗が、2.2×10-4Ω・cm超過、2.8×10-4Ω・cm以下である。
×: 比抵抗が、2.8×10-4Ω・cm超過である。
【0112】
(クラック)
光透過性導電性シート1を、5cm×50cmのサイズに切り出した。次いで、平面視で、5cm10cmの区画を15個定め、各区画の光透過性導電層3の表面を目視で観察した。以下の基準で、光透過性導電層3のクラックのレベルを評価した。
<評価基準>
〇: クラックが観察された区画が、0以上、6以下である。
△: クラックが観察される区画が、7以上、12以下である。
×: クラックが観察される区画が、13以上である。
【0113】
【符号の説明】
【0114】
1 光透過性導電性シート
2 基材シート
2 基材
3 光透過性導電層
6 第1領域
7 第2領域
11 基材