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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】脳波測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/256 20210101AFI20250203BHJP
   A61B 5/369 20210101ALI20250203BHJP
【FI】
A61B5/256 120
A61B5/369
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020187704
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077070
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100198856
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 聡
(72)【発明者】
【氏名】加治屋 篤
(72)【発明者】
【氏名】木村 泰介
(72)【発明者】
【氏名】迫 富男
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-153532(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0188697(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0221620(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0051995(KR,A)
【文献】国際公開第2010/082496(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108309285(CN,A)
【文献】特開2019-017945(JP,A)
【文献】国際公開第2011/158481(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/125081(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05 - 5/0538
A61B 5/24 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の頭部に装着可能なフロント部、テンプル部、及びモダン部を有し、眼鏡型形状を呈する眼鏡型測定装置本体と、
前記眼鏡型測定装置本体と接続され、前記被測定者の脳波検出位置に配置され、前記被測定者の脳波信号を検出するための前記モダン部に取設される脳波電極と、
前記眼鏡型測定装置本体に対する前記脳波電極の相対的位置を調整する電極位置調整機構部とを具備し、
前記電極位置調整機構部は、
前記テンプル部及び前記モダン部の内部に形成された位置調整空間と、
前記位置調整空間の中に取設された固定軸部と、
前記眼鏡型測定装置本体の前記フロント部及び前記固定軸部の間の前記位置調整空間の中に取設された位置調整ローラ部と、
前記位置調整ローラ部と接続し、前記固定軸部側から前記フロント部側に離間する方向に前記位置調整ローラ部を弾性変形力によって付勢するローラ付勢部と、
前記フロント部側から前記固定軸部側に向かって延設され、前記固定軸部と当接することで延設方向を逆方向に変化させて折り曲げられ、かつ、前記位置調整ローラ部と更に当接することで前記延設方向を再び逆方向に変化させて折り曲げられた状態で前記位置調整空間の中に格納され、一端が前記脳波電極と接続された長尺状の柔軟性素材で形成された電気配線部と
を備える脳波測定装置。
【請求項2】
前記モダン部は、
前記脳波電極がスライド可能なスライド溝部を有し、
前記電極位置調整機構部は、
前記スライド溝部によって構成される請求項1に記載の脳波測定装置。
【請求項3】
前記モダン部と前記テンプル部との長さを前記テンプル部の長手方向に沿って伸縮させる伸縮機構を更に備え、
前記電極位置調整機構部は、
前記伸縮機構によって構成される請求項1に記載の脳波測定装置。
【請求項4】
前記脳波電極を前記脳波検出位置に配置させる方向に付勢する電極付勢手段を更に具備する請求項1~3のいずれか一項に記載の脳波測定装置。
【請求項5】
前記眼鏡型測定装置本体は、
前記脳波電極と電気的に接続され、検出された前記脳波信号に基づいて前記被測定者の脳波を測定する脳波測定用モジュールと、
測定された前記脳波にかかる脳波データを外部に送信する通信用モジュールと
を備える請求項1~4のいずれか一項に記載の脳波測定装置。
【請求項6】
前記脳波測定用モジュールと電気的に接続され、前記被測定者の耳朶に配置される不関電極を更に具備する請求項5に記載の脳波測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳波測定装置に関するものである。更に詳しくは、周囲の人々に違和感を覚えさせることなく、日常的に安定して脳波の測定を行うことが可能な脳波測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、てんかん等の主として脳機能に起因する種々の疾病に罹患した患者や高齢者等の要介護者に対し、生体情報の一種である脳波を経時的に測定し、患者等の健康状態をモニタリングすることが行われている。更に、各種競技のアスリートやe-スポーツのプレーヤー等は、自己の能力やパフォーマンスの向上を図ることを目的として、競技中やトレーニング中の脳波を測定し、得られた脳波データに基づいて自己の欠点や要強化項目を認識することで、トレーニングメニューの変更等を行っている。このように、近年において、脳波を測定する機会が従来に増して増加している。
【0003】
人間の脳は、およそ100億個超の神経細胞によって構成されていると言われており、当該神経細胞が情報伝達の際に微弱な電気信号(活動電位)を発することが知られている。かかる電気信号(脳波信号)の電気量を検出することで脳波の測定が可能となる。なお、脳波の測定には、例えば、被測定者の頭部であって、特に毛髪の生えていない予め規定された複数の位置に電極を配置し、かかる電極によって微弱な脳波信号を検出することが行われている。ここで、頭部にそれぞれ配置する電極の電極装着方法の一つとして、従来から標準的に知られている国際式10/20法等が一般的に採用されている。
【0004】
被測定者の頭部の正確な位置に上記電極を配置できない場合、脳波信号の検出が安定せず、正確な脳波測定を行うことができなかった。そこで、例えば、ヘッドギア型やヘッドセット型の脳波測定装置が既に開発されており、被測定者が装着するヘッドギア等に複数の電極が配置されたものを用いて脳波の測定が行われている。或いは、被測定者の頭部の左右の前頭前野(前頭葉)の直上位置と、左右の側頭部の耳の後ろの位置との合計四箇所に対してそれぞれ電極を配置するタイプの脳波測定装置も既に提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
しかしながら、上記したヘッドギア型のような既存の脳波測定装置の場合、脳波測定装置自体が大掛かりなものとなりやすく、また被測定者の頭部全体を複数の電極をレイアウトしたヘッドギアやヘルメット等で覆うことになった。そのため、脳波測定装置が装着された被測定者は、周囲から明らかに目立った存在となり、周囲の人々が違和感を覚えたり、奇異に感じたりすることがあり、そのままの状態で外出できないことが多かった。また、頭部全体を被覆するものであるため、帽子を被ったり、或いは、脳波測定装置の上からヘルメットを被ったりすることができず、帽子の着用やオートバイの運転等の一般的な生活しながら脳波を測定できないことがあった。
【0006】
したがって、日常的或いは経時的に脳波の測定を行うことが必要な場合であったとしても、周囲の人々の目を気にしたり、或いは、日常生活を送る上で支障を来したりすることから、既存の脳波測定装置の装着及び脳波の測定を躊躇する場合があった。なお、周囲の人々が違和感を覚えることを解消するために、例えば、脳波測定装置を眼鏡型の形状に構成した眼鏡型生体情報取得装置や生体計測装置等が既に提案されている(例えば、特許文献3-6参照)。更に、脳波測定装置自体を小型化し、例えば、被測定者の耳に掛ける耳掛け型の脳波測定装置等が既に提案されている(例えば、特許文献7,8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2019-506829号公報
【文献】特表2006-502791号公報
【文献】特開2014-018234号公報
【文献】特開2017-185148号公報
【文献】特開2018-000880号公報
【文献】特表2019-512713号公報
【文献】国際公開第2016/119665号
【文献】特開2011-005176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記に示したヘッドギア型等の従来型の脳波測定装置の場合、電極の位置が予め固定されていることが多く、被測定者毎の当該電極の位置を調整して配置することができなかった。かかる不具合は、上述した眼鏡型の形状等の脳波測定装置や生体上方取得装置等の場合であっても同様であった。
【0009】
すなわち、国際式10/20法等で予め規定された正しい脳波検出位置に複数の電極をそれぞれ配置させるための機能や手段を有しておらず、脳波信号の検出を安定して行うことができない場合が多かった。そのため、検出された脳波信号に基づいて測定された脳波の情報の精度が低下するおそれがあった。
【0010】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、周囲の人々に対して違和感を覚えさせることなく、日常生活に支障を来すことなく脳波の測定を行うことが可能であり、かつ、表情筋等の動きや発汗による電気ノイズの影響を抑え、被測定者の脳波検出位置における脳波信号を安定して検出し、高い精度の脳波を測定可能とする脳波測定装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、上記課題を解決した脳波測定装置が下記において提供される。
【0012】
[1] 被測定者の頭部に装着可能なフロント部、テンプル部、及びモダン部を有し、眼鏡型形状を呈する眼鏡型測定装置本体と、前記眼鏡型測定装置本体と接続され、前記被測定者の脳波検出位置に配置され、前記被測定者の脳波信号を検出するための前記モダン部に取設される脳波電極と、前記眼鏡型測定装置本体に対する前記脳波電極の相対的位置を調整する電極位置調整機構部とを具備し、前記電極位置調整機構部は、前記テンプル部及び前記モダン部の内部に形成された位置調整空間と、前記位置調整空間の中に取設された固定軸部と、前記眼鏡型測定装置本体の前記フロント部及び前記固定軸部の間の前記位置調整空間の中に取設された位置調整ローラ部と、前記位置調整ローラ部と接続し、前記固定軸部側から前記フロント部側に離間する方向に前記位置調整ローラ部を弾性変形力によって付勢するローラ付勢部と、前記フロント部側から前記固定軸部側に向かって延設され、前記固定軸部と当接することで延設方向を逆方向に変化させて折り曲げられ、かつ、前記位置調整ローラ部と更に当接することで前記延設方向を再び逆方向に変化させて折り曲げられた状態で前記位置調整空間の中に格納され、一端が前記脳波電極と接続された長尺状の柔軟性素材で形成された電気配線部とを備える脳波測定装置。
【0014】
] 前記モダン部は、前記脳波電極がスライド可能なスライド溝部を有し、前記電極位置調整機構部は、前記スライド溝部によって構成される前記[]に記載の脳波測定装置。
【0015】
] 前記モダン部と前記テンプル部との長さを前記テンプル部の長手方向に沿って伸縮させる伸縮機構を更に備え、前記電極位置調整機構部は、前記伸縮機構によって構成される前記[]に記載の脳波測定装置。
【0020】
] 前記脳波電極を前記脳波検出位置に配置させる方向に付勢する電極付勢手段を更に具備する前記[1]~[]のいずれかに記載の脳波測定装置。
【0021】
] 前記眼鏡型測定装置本体は、前記脳波電極と電気的に接続され、検出された前記脳波信号に基づいて前記被測定者の脳波を測定する脳波測定用モジュールと、測定された前記脳波にかかる脳波データを外部に送信する通信用モジュールとを備える前記[1]~[]のいずれかに記載の脳波測定装置。
【0022】
[6] 前記脳波測定用モジュールと電気的に接続され、前記被測定者の耳朶に配置される不関電極を更に具備する前記[5]に記載の脳波測定装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明の脳波測定装置によれば、電極位置調整機構部を具備することにより、脳波電極の測定装置本体に対する相対的位置を変化させることが可能となる。これにより、脳波電極が測定者の正しい脳波検出位置に位置するように調整することができ、脳波信号の検出を安定して行うことができる。
【0024】
特に、測定装置本体を眼鏡型形状としたり、耳掛け型としたりすることで、周囲の被飛び地が脳波測定装置を装着していることに違和感を覚えたり、奇異に感じることが少なくなる。その結果、日常生活を送る上で支障を来すことなく、帽子やヘルメット等を被ることに制約を受けないで脳波の測定を行うことができる。
【0025】
更に、脳波信号を検出する脳波検出位置を被測定者の耳の後方の側頭部に位置する側頭骨乳突部から乳様突起の範囲、或いは、被測定者の前頭前野の直上位置に相当する左右の前頭部、換言すれば、左右の額の範囲に設定することで、表情筋の動きや発汗時による電気ノイズの発生を抑制することができる。その結果、電気ノイズの影響による脳波信号の正確な検出を損なうことがなく、安定した脳波信号の検出及び精度の高い脳波の測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第一実施形態の脳波測定装置の概略構成を示す説明図である。
図2】第一実施形態の脳波測定装置における電極位置調整機構部による脳波電極の上下方向及び水平方向に沿った相対的位置の変化の一例を示す説明図である。
図3】第一実施形態の脳波測定装置における電極位置調整機構部の内部構造の一例を模式的に示す説明図である。
図4】第一実施形態の脳波測定装置における脳波電極等の配置、及び機能的構成の一例を示す説明図である。
図5】第一実施形態の脳波測定装置における脳波電極等の配置、及び機能的構成の別例を示す説明図である。
図6】第一実施形態の脳波測定装置における脳波電極等の配置、及び機能的構成の別例を示す説明図である。
図7】第一実施形態の脳波測定装置における脳波電極等の配置、及び機能的構成の別例を示す説明図である。
図8】第一実施形態の脳波測定装置における脳波電極等の配置、及び機能的構成の別例を示す説明図である。
図9】本発明の第二実施形態の脳波測定装置の概略構成を示す説明図である。
図10】本発明の第三実施形態の脳波測定装置の概略構成を示す説明図である。
図11】第三実施形態の脳波測定装置における脳波電極等の配置、及び機能的構成の一例を示す説明図である。
図12】第三実施形態の脳波測定装置における脳波電極等の配置、及び機能的構成の別例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の脳波測定装置の実施の形態について説明する。なお、本発明の脳波測定装置は、以下に示すものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、種々の設計の変更、修正、及び改良等を加え得るものである。
【0028】
1. 第一実施形態の脳波測定装置
本発明の第一実施形態の脳波測定装置1は、図1図3等に主として示すように、被測定者の頭部Hに装着可能であり、外観が眼鏡型形状を呈する眼鏡型測定装置本体2と、眼鏡型測定装置本体2と接続され、被測定者の脳波信号3を検出する脳波電極4と、眼鏡型測定装置本体に対する脳波電極4の相対的位置を調整し、脳波電極4を被測定者の正しい脳波検出位置Pまで移動させ、正しい脳波検出位置Pに脳波電極4を配置するための電極位置調整機構部5とを具備して構成されている。ここで、眼鏡型測定装置本体2が本発明における測定装置本体に相当する。
【0029】
更に、第一実施形態の脳波測定装置1にかかる具体的な構成について説明すると、眼鏡型測定装置本体2は、図1に示すように、外観形状全体が眼鏡型形状を呈するものであって、一対のレンズ部6a,6b及び当該レンズ部6a,6bをそれぞれ囲むようにして配されたリム部7を有するフロント部8と、該フロント部8とヒンジ部9を介して折り畳み可能に接続された一対のテンプル部10a,10bと、テンプル部10a,10bの一端からそれぞれ延設され、被測定者の耳Eの上側及び後方側と当接し、耳Eに引っ掛け可能となるように湾曲した耳掛け部分に相当する一対のモダン部11a,11bとを備えている。
【0030】
なお、図1に示した眼鏡型測定装置本体2の外観形状は、本発明の脳波測定装置の概略構成を模式的に示した一例であり、かかる形状に限定されるものではない。更に、図1において、後述する電極位置調整機構部5等の一部構成についての図示は省略、若しくは簡略化して示している。また、上記において、レンズ部6a,6bを備える眼鏡型測定装置本体2を例示したがこれに限定されるものではなく、レンズ部を備えるものではない所謂「伊達眼鏡」のような構成であっても構わない。すなわち、被測定者の頭部Hに装着可能であって、かつ、モダン部11の一部に脳波電極4を取設可能なものであればよい。
【0031】
上記の構成を備えることにより、眼鏡型測定装置本体2は、一般的な形状の眼鏡を掛ける動作と同様の動作を行うことで、被測定者の左右の耳E及び鼻の三点で眼鏡型測定装置本体2を支持することができる。すなわち、被測定者の頭部Hに第一実施形態の脳波測定装置1を容易な動作によって装着することができる。
【0032】
特に、日常的に見なされた眼鏡型形状を呈するもののため、周囲の人々が脳波測定装置1を装着していることに気付く可能性が低くなり、周囲の人々に脳波測定装置1の装着による違和感を覚えさせることがない。その結果、脳波測定装置1を装着した状態で日常生活を行うことが可能となり、脳波測定装置1の装着に躊躇することがない。更に、被測定者が帽子やヘルメット等を被る際に当該脳波測定装置1が支障を来すことがない。
【0033】
ここで、眼鏡型測定装置本体2を形成する主たる材質は特に限定されるものではなく、一般的な眼鏡に使用される周知の金属材料や樹脂材料等を用いることができる。
【0034】
更に、第一実施形態の脳波測定装置1の眼鏡型測定装置本体2におけるモダン部11a,11bは、応力に対して弾性変形可能な弾性反発力を有する金属材料等の材質によって構成されている。そのため、モダン部11a,11bの先端部分は、弾性反発力によって所定方向に付勢する力が作用している。更に、図1等に示すように、一方のモダン部11a及び他方のモダン部11bには、被測定者の皮膚と接する側には、脳波信号3を検出可能な脳波電極4がそれぞれ取設されている。
【0035】
このように、第一実施形態の脳波測定装置1において、一対のモダン部11a,11bが弾性反発力を有することにより、これらのモダン部11a,11bにそれぞれ取設された脳波電極4は、被測定者の耳Eの後方の側頭部の脳波検出位置Pにそれぞれ電極付勢方向A,A’(図1における矢印参照)に沿って付勢される。
【0036】
これにより、脳波電極4が被測定者の脳波検出位置Pに強く押し付けられる状態で配置される。その結果、脳波検出位置Pにおける脳波電極4の導通が良好に維持される。なお、弾性反発力を有するモダン部11a,11bにかかる構成が本発明における電極付勢手段に相当する。
【0037】
更に、眼鏡型測定装置本体2は、内部に機能的構成として、検出された脳波信号3に基づいて脳波を測定する脳波測定用モジュール13と、脳波測定用モジュール13によって測定された脳波にかかる脳波データ14を外部に無線送信する通信用モジュール15とを備えている。眼鏡型測定装置本体2から送信された脳波データ14は、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の情報通信機器で受信可能であり、ディスプレイ等に表示することができる。更に、サーバー等に脳波データ14を蓄積することもできる。
【0038】
更に、眼鏡型測定装置本体2の内部には、上記脳波測定用モジュール13等を駆動させて脳波信号3の検出及び脳波の測定処理を行ったり、通信用モジュール15による脳波データ14の送信処理を行ったりするための電力を供給する電源16、電源16と脳波測定用モジュール13等の間に設けられるDCDCコンバータ17等の電気的構成、及び、脳波電極4、脳波測定用モジュール13、電源16、及びDCDCコンバータ17等をそれぞれ電気的に接続する導電材料で形成された電気配線部18が配置されている(図4図8等参照)。これらの配線図、及び被測定者に対する脳波電極4の配置等の具体例については後述する。
【0039】
なお、脳波信号3に基づく脳波の測定処理、及び、脳波データ14の無線送信に関する機能は、従来から周知の脳波計(脳波測定装置)による検出技術や測定技術、或いは、周知の無線通信技術を採用することが可能であり、ここでは詳細な説明は省略する。すなわち、脳波電極4によって検出された電気信号の一種である脳波信号3の入力を脳波測定用モジュール13で受け付け、これを内部のソフトウェア処理によって脳波データ14を生成し、更に当該脳波データ14を既存のWiFi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等の無線通信技術を通じて外部に送信することができる。なお、かかる脳波データ14を眼鏡型測定装置本体2と有線接続によって外部に送信するものであっても構わない。
【0040】
第一実施形態の脳波測定装置1における脳波電極4は、被測定者の頭部Hであって、特に微弱な脳波信号3の検出を阻害することとならないように毛髪等が存在しない、被測定者の皮膚に脳波検出位置Pに配置される。第一実施形態の脳波測定装置1の場合、上記の通り眼鏡型測定装置本体2を具備し、モダン部11a,11bの先端部分に脳波電極4が取設されている。
【0041】
そのため、被測定者の耳Eの後方の側頭部に位置する側頭骨乳突部から乳様突起にかけての範囲が脳波検出位置Pとして設定され、当該範囲において脳波信号3の検出が行われる。
【0042】
ここで、脳波電極4の構成は、従来から周知の脳波計等に利用されるものを採用することができる。更に、脳波電極4の電極表面部19を導電性シリコーン等の導電性ゴム材料から形成することもできる。導電性シリコーンからなる導電性シリコーンゴムは、応力に対して自在に変形可能な柔軟性を有する材料であり、被測定者の脳波検出位置Pにおける皮膚の形状や凹凸に応じて自在に変形することが可能となる。これにより、脳波検出位置Pへの配置を良好なものとすることが可能となり、脳波信号3の安定的な検出が可能となる。
【0043】
更に、脳波検出位置Pに脳波電極4を配置した状態で、被測定者が動くことで皮膚の伸縮が発生する場合であっても、当該伸縮に応じて電極表面部19自体が変形することが可能となる。更に、導電性シリコーンゴムの摩擦係数が高いことが知られており、脳波検出位置Pにおける脳波電極4の滑りやずれを防ぐことができる。そのため、脳波電極4の脳波検出位置Pへの配置を安定して維持することが可能となり、上記導電性シリコーンからなる電極表面部19の形成は好適である。
【0044】
ここで、脳波電極4の電極表面部19の表面形状は特に限定されるものではなく、例えば、凹凸のない滑らかな平面状、或いは複数の凸部(図示しない)が所定の配列基準に従って配列した凸形状を有するものであっても構わない。凹凸のない滑らかな平面状とすることで脳波検出位置Pへの配置の安定性を更に高めることができる。一方、複数の微小な凸部を設けることにより、摩擦係数を高くすることができ、ずれ等の不具合を防止することができる。
【0045】
なお、電極表面部19に形成される凸部の形状も特に限定されるものではなく、例えば、直方体形状、立方体形状、円錐体形状、円錐台形状、角錐体形状、或いは角錐台形状等を採用することができ、かかる凸部の配列基準の正方配列や千鳥配列等を採用することができる。
【0046】
具体的な一例を示すと、凸部の形状を円錐体形状の円錐体凸部とした場合、円錐体凸部の底辺半径を1mm~5mmの範囲とすることが可能であり、円錐体凸部の円錐頂点における曲率半径を0.5mm~5mmの範囲とすることができる。
【0047】
また、複数の凸部を正方配列または千鳥配列にした場合において、互いに隣り合う各凸部の間の配列ピッチを0.1mm~10mmの範囲とすることが可能であり、凸部の電極表面部19の基面からの凸高さを0.05mm~2mmの範囲とすることができる。
【0048】
このように、脳波電極4の電極表面部19に複数の凸部による凹凸を設けることにより、脳波電極4が更に微小な変形を生じ、摩擦係数をより高くすることができる。そのため、皮膚及び電極表面部19の間でより滑りやずれが生じ難くなり、脳波電極4の配置が安定し、脳波信号3の検出に電気ノイズ等が混在することがない。
【0049】
なお、電極表面部19に微小な凸部を複数設けることにより、被測定者の皮膚からの発汗時においても複数の凸部の間の空隙が汗の通る流路(排出路)となることができる。そのため、皮膚と脳波電極4との間に汗が溜まることがなく、脳波電極4の滑りやずれ等による電気ノイズの発生を抑える効果を有する。
【0050】
加えて、第一実施形態の脳波測定装置1は、眼鏡型測定装置本体2に対する脳波電極4の相対的位置を調整し、脳波電極4を正しい脳波検出位置Pに配置するための電極位置調整機構部5を具備している。
【0051】
電極位置調整機構部5の構成の一例について説明すると、例えば、図2に示すように、被測定者の耳Eの後方に位置するモダン部11aの長手方向に沿ってスライド溝部20を設け、当該スライド溝部20に沿って脳波電極4が摺動可能(スライド可能)な機構を設けることができる。これにより、眼鏡型測定装置本体2に対する脳波電極4の上下方向B(図2における上下矢印参照)の相対的位置を変化させることができる。なお、スライド溝部20に対して脳波電極4をスライドさせ、脳波検出位置Pの高さに調整した後、脳波電極4のスライドを規制する手段を設け、上下方向の相対的位置を固定することができる。
【0052】
一方、脳波電極4の取設されたモダン部11aとテンプル部10aとの長さをテンプル部10aの長手方向に沿って伸縮させる伸縮機構を設けることができる。すなわち、テンプル部10aの一端に細径の先端部21を形成し、モダン部11aの一端に当該先端部21を挿入可能な挿入孔部22を形成し、かつ、先端部21及び挿入孔部22の形成されたモダン部11aの位置に互いに等間隔で複数の位置決め孔23をそれぞれ設けたものとすることができる。そして、挿入孔部22に対する先端部21の挿し込み量を調整し、かつ互いの位置決め孔23の位置を一致させた状態で、一致した位置決め孔23に棒状の位置固定部材24を挿入することで、モダン部11aに対するテンプル部10aの相対的位置を決定することができる。
【0053】
その結果、モダン部11aに取設された脳波電極4の水平方向C(図2における水平矢印参照)の相対的位置を変化させることができる。かかる構成を備えることで、脳波電極4の上下方向及び/または水平方向の相対的位置の調整が可能となる。なお、図2において示した電極位置調整機構部5は、具体例の一つであり、本発明の脳波測定装置における電極位置調整機構部はこれに限定されるものではない。
【0054】
上記のように、脳波電極4の上下方向B及び水平方向Cの眼鏡型測定装置本体2に対する相対的位置を変化させるための電極位置調整機構部5を採用しようとする場合、眼鏡型測定装置本体2の内部において、脳波測定用モジュール13と脳波電極4との間を電気的に接続する電気配線部18の長さが伸縮、折り畳み、或いは巻き取りによって変化する気候を必要となる。
【0055】
例えば、図3に示すように、脳波測定用モジュール13の搭載されたテンプル部10a及び脳波電極4の取設されたモダン部11aの内部に形成された位置調整空間25と、位置調整空間25の中に取設された固定軸部26と、眼鏡型測定装置本体2のフロント部8及び当該固定軸部26の間の位置調整空間25に取設された位置調整ローラ部27と、位置調整ローラ部27を固定軸部26側からフロント部8側に離間する方向に沿って弾性変形力によって付勢する付勢ばね28とを備える電極位置調整機構部5を眼鏡型測定装置本体2の内部に形成したものが例示される。ここで、付勢ばね28が本発明におけるローラ付勢部に相当する。
【0056】
更に、上記構成において、脳波測定用モジュール13と他端が接続され、フロント部8側から固定軸部26側に向かって(図3における紙面左方向から紙面右方向に)延設され、固定軸部26の軸表面と当接し延設方向を逆方向(図3における紙面右方向から紙面左方向)に変化させて折り曲げられ、かつ、位置調整ローラ部27のローラ表面と更に当接し延設方向を再び逆方向(図3における紙面左方向から紙面右方向)に変化させて折り曲げられた状態で上記位置調整空間25の中に格納され、一端が脳波電極4に接続された長尺状の柔軟性素材で形成された電気配線部18とを更に備えている。
【0057】
これにより、脳波電極4の上下方向B及び/または水平方向Cの相対的位置を変化させることに伴って、脳波測定用モジュール13及び脳波電極4の間を接続する電気配線部18の折り畳み状態が変化する。
【0058】
すなわち、付勢ばね28によって位置調整ローラ部27がフロント部8側に向かって引っ張られる力が作用し(図3における紙面左側方向)、固定軸部26及び位置調整ローラ部27の間の距離が拡がる拡張方向D(図3の矢印参照)に位置調整ローラ部27が付勢される。そのため、固定軸部26及び位置調整ローラ部27の間に折り畳まれる電気配線部18の長さが変化する。具体的には折り畳みの長さが伸びる。
【0059】
一方、脳波電極4をテンプル部10aから遠ざけるように相対的位置を変化させると、脳波電極4と接続された電気配線部18が引っ張られるとともに、位置調整ローラ部27が固定軸部26及び位置調整ローラ部27の間の距離が短くなる。すなわち、位置調整ローラ部27が固定軸部26に近接する方向(図3における紙面右側方向)に移動する。このように、脳波電極4の相対的位置の変化に伴って眼鏡型測定装置本体2の内部においても電気配線部18の折り畳み状態が変化することができる。これにより、脳波測定用モジュール13及び脳波電極4の間の電気的な接続が維持される。
【0060】
2. 第一実施形態の脳波測定装置の配線図、及び脳波電極の配置等の具体例
一般的に脳波測定装置には、単極誘導型や2極誘導型等の種々の測定タイプが存在する。かかる測定タイプ毎に内部構造の配線部や脳波電極等の被測定者の取り付け位置にかかる配置がそれぞれ相違する。以下、第一実施形態の脳波測定装置における配線図及び上記脳波電極4等の配置の具体例について説明する。なお、かかる配線図及び脳波電極4等の配置は、あくまでも一例であり、これに限定されるものではない。
【0061】
2.1 単極誘導測定1極タイプ
単極誘導測定1極タイプの第一実施形態の脳波測定装置の場合、図4に示すように、被測定者の左側の耳の後方の側頭部に脳波電極4Lを配置し、更に不関電極12R、及びグランド電極29Rをそれぞれ被測定者の右側の耳の耳朶(図示しない)に配置する。脳波電極4L、不関電極12R、及びグランド電極29R(図4において、「GND電極」と表示、以下同じ)は、1chの脳波測定用モジュール13とそれぞれ電気的に接続されている。眼鏡型測定装置本体2の内部に搭載された脳波測定用モジュール13及び通信用モジュール15からなる制御ユニット30は、DCDCコンバータ17を介して電源16と接続されている。これにより、左側の耳Eの後方の側頭部の位置(脳波検出位置P)で脳波信号3を検出し、脳波測定用モジュール13で脳波の測定を行い、得られた脳波データ14を、通信用モジュール15を介して外部のパーソナルコンピュータやスマートフォン等の情報通信端末(図示しない)に送信することができる。
【0062】
2.2 単極誘導測定2極タイプ
単極誘導測定2極タイプの第一実施形態の脳波測定装置の場合、図5に示すように、被測定者の左側の耳及び右側の耳の後方の側頭部にそれぞれ脳波電極4L,4Rを配置し、更に不関電極12L,12R、及びグランド電極29L,29Rをそれぞれ被測定者の左側及び右側の耳の耳朶に配置する。一対の1chの脳波測定用モジュール13及び通信用モジュール15からなる制御ユニット30L,30Rを備え、左側の脳波電極4L、右側の不関電極12R及びグランド電極29Rは、一方の制御ユニット30Rの脳波測定用モジュール13と電気的に接続され、右側の脳波電極4R、左側の不関電極12L及びGND29Lは、他方の制御ユニット30Lの脳波測定用モジュール13と電気的に接続されている。
【0063】
電源16は、一対の絶縁DCDCコンバータ17L,17Rとそれぞれ接続され、一方の絶縁DCDCコンバータ17Lが制御ユニット30Lと接続され、他方の絶縁DCDCコンバータ17Rが制御ユニット30Rと接続されている。なお、一対の絶縁DCDCコンバータ17L,17Rのうち、いずれか一方が絶縁タイプのものであればよい。なお、検出された脳波信号3に基づく、脳波の測定及び得られた脳波にかかる脳波データ14の外部への送信は、前述した単極誘導測定1極タイプの場合と略同一のため、以降の説明は省略するものとする。
【0064】
2.3 2極タイプ
2極タイプの第一実施形態の脳波測定装置の場合、図6に示すように、被測定者の左側の耳及び右側の耳の後方の側頭部にそれぞれ脳波電極4L,4Rを配置し、更に不関電極12L,12R、及びグランド電極29L,29Rをそれぞれ被測定者の左側及び右側の耳の耳朶に配置する。2chの脳波測定用モジュール13及び通信用モジュール15からなる制御ユニット30を備え、左右の脳波電極4L,4R等はいずれも2chの脳波測定用モジュール13と電気的に接続されている。2chの脳波測定用モジュール13は、内部に左用電源31L及び右用電源31Rを有し、電源16とそれぞれ絶縁DCDCコンバータ17L,17Rを介して接続されている。
【0065】
2.4 2極タイプの別例構成
2極タイプの別例構成の第一実施形態の脳波測定装置の場合、図7に示すように、被測定者の左側の耳及び右側の耳の後方の側頭部にそれぞれ脳波電極4L,4Rを配置させる。一対の1chの脳波測定用モジュール13及び通信用モジュール15からなる制御ユニット30L,30Rを備え、左側の脳波電極4Lは、一方の制御ユニット30Lの脳波測定用モジュール13と電気的に接続され、右側の脳波電極4Rは、他方の制御ユニット30Lの脳波測定用モジュール13と電気的に接続されている。
【0066】
電源16は、一対の絶縁DCDCコンバータ17L,17Rとそれぞれ接続し、一方の絶縁DCDCコンバータ17Lが制御ユニット30Lと接続され、他方の絶縁DCDCコンバータ17Rが制御ユニット30Rと接続されている。なお、一対の絶縁DCDCコンバータ17L,17Rのうち、いずれか一方が絶縁タイプのものであればよい。この場合、不関電極及びグランド電極の構成は不要となる。
【0067】
2.5 2極タイプの別例構成
2極タイプ構成の第一実施形態の脳波測定装置の場合、図8に示すように、被測定者の
左側の耳及び右側の耳の後方の側頭部にそれぞれ脳波電極4L,4Rをそれぞれ配置する。2chの脳波測定用モジュール13及び通信用モジュール15からなる制御ユニット30を備え、左右の脳波電極4L,4R等はいずれも2chの脳波測定用モジュール13と電気的に接続されている。2chの脳波測定用モジュール13は、内部に左用電源31L及び右用電源31Rを有し、電源16とそれぞれ絶縁DCDCコンバータ17L,17Rを介して接続されている。この場合、不関電極及びGNG電極の構成は不要となる。
【0068】
3. 第二実施形態の脳波測定装置
本発明の第二実施形態の脳波測定装置32は、図9に示すように、被測定者の耳Eに掛けて装着可能な一対の耳掛け部33、及び当該一対の耳掛け部33同士を連結する連結部34を備える耳掛け型測定装置本体35と、耳掛け型測定装置本体35の一方の耳掛け部33(図9において被測定者の左の耳E側に相当)と接続され、被測定者の脳波信号を検出する脳波電極36と、耳掛け型測定装置本体35に対する脳波電極36の相対的位置を上下方向及び/または水平方向に調整し、脳波電極36を被測定者の正しい脳波検出位置Pに配置するための電極位置調整機構部37とを具備して構成されている。ここで、耳掛け型測定装置本体35が本発明における測定装置本体に相当する。なお、第二実施形態の脳波測定装置32において、第一実施形態の脳波測定装置1と略同一の構成等については図示及び詳細な説明を省略するものとする。
【0069】
第二実施形態の脳波測定装置32の具体的な構成について説明すると、耳掛け部33は、被測定者の頭部Hの左右の耳Eにそれぞれ引っ掛け可能に形成され、図9に示すように、被測定者の耳の前部、上部、及び後部とそれぞれ接する前片部38a、上片部38b、及び後片部38cを有し、略逆U字形状を呈して構成されている。
【0070】
更に、連結部34は、左右の耳Eに掛けられる一対の耳掛け部33の間を連結するものであり、前述した後片部38c同士を接続するものであり、一対の耳掛け部33を左右の耳Eに装着した状態で、被測定者の頭部Hの後ろ側、具体的には被測定者の首Nの後ろ側付近の所謂「盆の窪」付近を横切るようにして耳掛け部33同士を連結するものである。なお、図9は、被測定者及び被測定者の頭部Hに装着された第二実施形態の脳波測定装置32を被測定者に対して右側方の位置から視た図であり、反対側(被測定者の左側)の構成等については図示されていない。
【0071】
上記の構成を備えることにより、被測定者を前方(図9における紙面左方向)から視た場合、耳掛け部33の一部である前片部38aが視認されるのみであり、耳掛け型測定装置本体35の大部分の構成については被測定者の頭部H等で隠されるため視認することができない。すなわち、従来のような大掛かりな脳波測定装置を装着する必要がなく、周囲の人々に脳波測定装置32の装着による違和感を覚えさせることがない。その結果、脳波測定装置32を装着した状態での日常生活を行うことが可能となり、脳波測定装置32の装着に躊躇することがない。また、被測定者が帽子やヘルメット等を被る際に当該脳波測定装置32が支障を来すことがない。
【0072】
なお、耳掛け型測定装置本体35を形成する主たる材質は、第一実施形態の脳波測定装置1と同様のものを用いることが可能であり、ここでは詳細な説明は省略する。また、第二実施形態の脳波測定装置32の耳掛け部33において、被測定者の耳Eの後方の側頭部に位置する後片部38cは、応力に対して弾性変形可能な弾性反発力を有する材質によって構成することが可能であり、脳波電極36を脳波検出位置Pに押し付ける方向に付勢する電極付勢手段が設けられている。これらの詳細な構成及び作用効果等については第一実施形態の脳波測定装置1と同様であり、ここでは詳細な説明は省略する。
【0073】
耳掛け型測定装置本体35は、内部の機能的構成として、検出された脳波信号に基づいて脳波を測定する脳波測定用モジュール39と、脳波測定用モジュール39によって測定された脳波にかかる脳波データを外部に無線送信する通信用モジュール40とを備えている。更に、耳掛け型測定装置本体35の内部には、第一実施形態の脳波測定装置1と同様に、電源、DCDCコンバータ等、及び、脳波電極36、脳波測定用モジュール39等、電源、及びDCDCコンバータ等を電気的に接続する電気配線部等が設けられている。これらの構成の一部については図示を省略している。
【0074】
第二実施形態の脳波測定装置32における脳波電極36は、被測定者の頭部Hであって、特に微弱な脳波信号の検出を阻害することとならないように毛髪等が存在しない、被測定者の皮膚の脳波検出位置Pに直接配置される。第二実施形態の脳波測定装置32は、前述したように、耳掛け型測定装置本体35の略逆U字形状を呈する一方の耳掛け部33の後片部38cの先端部分に脳波電極36が取設されている。
【0075】
そのため、被測定者の耳Eの後方の側頭部に位置する側頭骨乳突部から乳様突起にかけての範囲が脳波検出位置Pとして設定され、当該範囲において脳波信号の検出が行われている。脳波電極36の構成は、第一実施形態の脳波測定装置1における脳波電極4と同一のものを使用可能であり、ここでは詳細な説明は省略する。
【0076】
更に、第二実施形態の脳波測定装置32は、耳掛け型測定装置本体35に対する脳波電極36の相対的位置を調整し、脳波電極36を正しい脳波検出位置Pに配置するための電極位置調整機構部37を具備している。これにより、正しい脳波検出位置Pで脳波信号を安定して検出することが可能となる。
【0077】
電極位置調整機構部37の構成の詳細について説明すると、例えば、図9に示すように、被測定者の耳Eの後方に位置する後片部38cに沿ってスライド溝部41を設け、当該スライド溝部41に沿って脳波電極36が摺動可能(スライド可能)な機構を設けることができる。これにより、耳掛け型測定装置本体35に対する脳波電極36の上下方向B(図9における上下矢印参照)の相対的位置を変化させることができる。なお、スライド溝部41に対して脳波電極36をスライドさせ、脳波検出位置Pの高さに調整した後、脳波電極36のスライドを規制する手段を設け、上下方向の相対的位置を固定することができる。
【0078】
更に、耳掛け部33は、脳波電極36の取設された後片部38cと連設された上片部38bに対して、直交するように設けられた前片部38aの相対的位置関係を変化させる機構を設けることができる。すなわち、上片部38bの長手方向に沿って等間隔で複数の位置決め孔42を設け、一方、前片部38aの当該上片部38bと交差する位置に同様に位置決め孔42を設けたものとすることができる。そして、上片部38bの長手方向に沿って前片部38aを動かしつつ、上片部38bの位置決め孔42と、前片部38aの位置決め孔42の位置を一致させた状態で、一致した位置決め孔42に棒状の位置固定部材43を挿入することで、前片部38aに対する上片部38b及び後片部38cの相対的位置を決定することができる。
【0079】
その結果、耳掛け部33に取設された脳波電極36の水平方向C(図9における水平矢印参照)の相対的位置を変化させることができる。かかる構成を備えることで、脳波電極36の上下方向及び/または水平方向の相対的位置の調整が可能となる。なお、上述した電極位置調整機構部37の具体的構成は、あくまで一例であり、本発明の脳波測定装置はこれに限定されるものではない。また、脳波測定装置32における耳掛け型測定装置本体35の内部における脳波測定用モジュール39と脳波電極36との間を電気的に接続する電気配線部等の折り畳み、巻き取りのための機構は第一実施形態の脳波測定装置1と略同一の機構を採用することが可能であり、ここでは詳細な説明は省略する。
【0080】
4. 第二実施形態の脳波測定装置の配線図、及び脳波電極等の配置の具体例
第二実施形態の脳波測定装置32における配線図や脳波電極36の配置等については、第一実施形態の脳波測定装置1における単極誘導測定2極タイプ(図5参照)及び2極タイプ(図6参照)と同一または類似の構成を採用することが可能であり、ここでは詳細な説明は省略する。
【0081】
5. 第三実施形態の脳波測定装置
本発明の第三実施形態の脳波測定装置44は、図10に示すように、第二実施形態の脳波測定装置32における耳掛け型測定装置本体35に相当する耳掛け部33及び連結部34の構成に加え、一対の耳掛け部33からそれぞれ斜め方向に延設された左右一対の電極支持体45を更に備えるものであり、脳波電極46が耳掛け部33の後片部38cの先端部分に取設されるとともに、一対の電極支持体45の先端に脳波電極46が更にそれぞれ取設されるものである。なお、第三実施形態の脳波測定装置44において、第二実施形態の脳波測定装置32と同一構成のものについては、同一番号を付し、詳細な説明は省略するものとする。
【0082】
ここで、第三実施形態の脳波測定装置44における一対の電極支持体45は、耳掛け部33の前片部38a及び上片部38bの交差付近から斜め上方(図10における紙面左斜め上)に向かって延設されており、電極支持体45の一端は被測定者の前頭前野の直上位置に相当する前頭部F、換言すれば、左右の額部分と当接可能に形成されている。すなわち、被測定者の耳Eの後方に設定された脳波検出位置P1とともに、左右の前頭部Fに設定された脳波検出位置P2における脳波信号47(図11等参照)の検出が可能となる。したがって、第三実施形態の脳波測定装置44は、複数の脳波検出位置P1,P2における脳波信号47を検出可能な同時検出型測定装置本体48を備えている。ここで、同時検出型測定装置本体48が本発明における測定装置本体に相当する。
【0083】
上記の構成を備えることにより、被測定者を前方(図10における紙面左方向)から視た場合、耳掛け部33の一部である前片部38aと、耳掛け部33から延設された電極支持体45及び電極支持体45の先端に取設された脳波電極46が視認されることとなり、同時検出型測定装置本体48の大部分の構成については被測定者の頭部H等で隠されるため視認することができない。すなわち、周囲の人々に脳波測定装置44の装着による違和感をそれほど覚えさせることがない。その結果、脳波測定装置44を装着した状態での日常生活を行うことが可能となり、脳波測定装置44の装着に躊躇することがない。また、被測定者が帽子やヘルメット等を被る際に当該脳波測定装置44が支障を来すことがない。
【0084】
同時検出型測定装置本体48を形成する材質、内部の機能的構成、及び脳波電極46の構成等については、第一実施形態の脳波測定装置1及び第二実施形態の脳波測定装置32と略同一であるためここでは詳細な説明は省略する。
【0085】
第三実施形態の脳波測定装置44における脳波電極46は、被測定者の頭部Hであって、特に微弱な脳波信号47の検出を阻害することとならないように毛髪等が存在しない、被測定者の皮膚の二箇所の脳波検出位置P1,P2に配置される。第二実施形態の脳波測定装置44は、前述したように、同時検出型測定装置本体48の略逆U字形状を呈する一方の耳掛け部33の後片部38cの先端部分と、耳掛け部33から延設された電極支持体45の先端部分との二箇所に脳波電極46がそれ取設されている。
【0086】
そのため、被測定者の耳Eの後方の側頭部に位置する側頭骨乳突部から乳様突起にかけての範囲である脳波検出位置P1と、被測定者の前頭部Fである脳波検出位置P2とにおいて脳波信号47の検出が行われている。脳波電極46の構成は、脳波測定装置1等における脳波電極4等と同一のものを使用可能であり、ここでは詳細な説明は省略する。
【0087】
更に、第三実施形態の脳波測定装置44は、同時検出型測定装置本体48に対する脳波電極46の相対的位置を調整し、脳波電極46を正しい脳波検出位置P1,P2に配置させるための二つの電極位置調整機構部49a,49bを具備している。ここで、脳波検出位置P1に対する脳波電極46の上下方向B及び水平方向Cの相対的位置の調整にかかる一方の電極位置調整機構部49aは第二実施形態の脳波測定装置32における電極位置調整機構部37と略同一であるためここでは詳細を省略する。
【0088】
第三実施形態の脳波測定装置44において、同時検出型測定装置本体48は、電極支持体45を長手方向に沿って伸縮させる伸縮機構を備え、他方の電極位置調整機構部49bは当該伸縮機構によって構成されている。かかる伸縮機構は、例えば、図10に示すように、ロッドアンテナや釣り竿等において主に使用されている形態であって、太さの異なる複数の中空円柱状部材50a,50b,50c,50dを組み合わせて電極支持体45を構成したものとすることができる。なお、第三実施形態の脳波測定装置44における伸縮機構は、これに限定されるものではなく、例えば、複数の中空角柱状部材を組み合わせるものや、パンタグラフ式のマニュピュレーター等の構造を採用するもの、その他の周知の伸縮機構を採用するものであっても構わない。これにより、同時検出型測定装置本体48の一部を構成する電極支持体45自体が伸び縮みすることで先端部分に取設された脳波電極46の相対的位置を変化させることができる。
【0089】
更に、前述した一方の電極位置調整機構部49aと同様、脳波電極46が電極支持体45の長手方向に沿って設けられたスライド溝部(図示しない)に沿って摺動可能な機構を備え、脳波電極46のみが相対的位置を変化させるものであっても構わない。
【0090】
これにより、同時検出型測定装置本体48に対する脳波電極46の斜め方向G(図10における斜め矢印参照)の相対的位置を変化させることができる。
【0091】
これにより、同時検出型測定装置本体48に対する二つの脳波電極46の相対的位置をそれぞれ調整し、脳波電極46を正しい脳波検出位置P1,P2にそれぞれ配置することが可能となり、当該脳波検出位置P1,P2で脳波信号47を安定して検出することが可能となる。
【0092】
6. 第三実施形態の脳波測定装置の配線図、及び脳波電極等の配置の具体例
第三実施形態の脳波測定装置44における配線図、及び脳波電極等の配置の具体例の一例を示すと、図11に示すように、被測定者の左側の耳及び右側の耳の後方の側頭部にそれぞれ脳波電極46EL,46ERをそれぞれ配置し、更に不関電極51L,51R、及びグランド電極52L,52Rをそれぞれ被測定者の左側及び右側の耳の耳朶に配置する。1chの脳波測定用モジュール53及び通信用モジュール54からなる制御ユニット55EL,55ER,55FL,55FRを一対二組(合計四つ)を備え、左側の脳波電極46EL、及び右側の不関電極51R及びグランド電極52Rは、制御ユニット55ERの脳波測定用モジュール53と電気的に接続され、右側の脳波電極46ER、及び左側の不関電極51L及びグランド電極52Lは、制御ユニット55ELと電気的に接続されている。
【0093】
更に、被測定者の左側の前頭部及び右側の前頭部にそれぞれ脳波電極46FL,46FRをそれぞれ配置し、左側の脳波電極46FLは制御ユニット55FLの脳波測定用モジュール53と電気的に接続され、右側の脳波電極46FRは制御ユニット55FRの脳波測定用モジュール53と電気的に接続されている。加えて、制御ユニット55FLの脳波測定用モジュール53は、被測定者の左側の耳朶に配置した不関電極51L及びグランド電極52Rと電気的に接続され、制御ユニット55FRの脳波測定用モジュール53は、被測定者の右側に配置した不関電極51R及びグランド電極52Rと電気的に接続されている。
【0094】
制御ユニット55EL、55FLは、絶縁DCDCコンバータ56Lを介し、一方、制御ユニット55ER,55ERは、絶縁DCDCコンバータ56Rを介し、それぞれ電源57と接続されている。なお、一対の絶縁DCDCコンバータ56L,56Rのうち、いずれか一方が絶縁タイプのものであればよい。これらの電気的な接続は電気配線部58を介して行われている。
【0095】
更に、第三実施形態の脳波測定装置44における配線図及び脳波電極等の配置の別例を示すと、図12に示すように、被測定者の左側及び右側の耳の後方の側頭部にそれぞれ脳波電極46EL,46ERを配置し、更に不関電極51L,51R、及びグランド電極52L,52Rをそれぞれ被測定者の左側及び右側の耳の耳朶に配置する。更に、被測定者の左側及び右側の前頭部にそれぞれ脳波電極46FL,46FRを配置する。
【0096】
4chの脳波測定用モジュール53及び通信用モジュール54からなる制御ユニット55を備え、脳波電極46EL,46ER,46FL,46EL、不関電極51L,51R、及びグランド電極52L,52Rがそれぞれ制御ユニット55の脳波測定用モジュール53と電気的に接続されている。4chの脳波測定用モジュール53は、内部に左用電源59L及び右用電源59Rを有し、電源57とそれぞれ絶縁DCDCコンバータ56L,56Rを介して接続されている。なお、一対の絶縁DCDCコンバータ56L,56Rのうち、いずれか一方が絶縁タイプのものであればよい。これらの電気的な接続は電気配線部58を介して行われている。
【0097】
上記に示したように、本発明の脳波測定装置は、脳波信号の検出を被測定者の耳Eの後方の側頭部に位置する側頭骨乳突部から乳様突起にかけての脳波検出位置、或いは、当該脳波検出位置に加えて前頭前野の直上位置にあたる左右の前頭部における脳波を同時に検出することができる。これらの脳波検出位置等は、脳波測定装置を装着した場合であっても周囲の人々が違和感を覚える可能性が低い箇所であり、装置本体を眼鏡型形状や耳掛け型にすることで、日常生活に支障を来すことなく日常的或いは経時的に脳波の測定を行うことができる
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の脳波測定装置は、医療分野やスポーツ分野の他、ゲーム等のエンターテイメント分野、教育分野、ニューロマーケティング分野、ヘルスケア分野、及びメンタルケア分野等の幅広い分野における脳波測定の際に使用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1,32,44:脳波測定装置
2:眼鏡型測定装置本体(測定装置本体)
3,47:脳波信号
4,4L,4R,36、46,46EL,46ER,46FL,46FR:脳波電極
5,37,49a,49b:電極位置調整機構部
6a,6b:レンズ部
7:リム部
8:フロント部
9:ヒンジ部
10a,10b:テンプル部
11a,11b:モダン部(電極付勢手段)
12,12L,12R,51L,51R:不関電極
13,39,53:脳波測定用モジュール
14:脳波データ
15,40,54:通信用モジュール
16,57:電源
17:DCDCコンバータ
17L,17R,56L,56R:絶縁DCDCコンバータ
18,58:電気配線部
19:電極表面部
20,41:スライド溝部(電極位置調整機構部)
21:先端部
22:挿入孔部
23,42:位置決め孔
24,43:位置固定部材
25:位置調整空間
26:固定軸部
27:位置調整ローラ部
28:付勢ばね(ローラ付勢部)
29L、29R,52L,52R:グランド電極
30、30L,30R,55EL,55ER,55FL,55FR:制御ユニット
31L,59L:左用電源
31R,59R:右用電源
33:耳掛け部
34:連結部
35:耳掛け型測定装置本体(測定装置本体)
38a:前片部
38b:上片部
38c:後片部
50a,50b,50c,50d:中空円柱状部材
A,A’:電極付勢方向
B:上下方向
C:水平方向
D:拡張方向
E:耳
F:前頭部
G:方向
H:頭部
N:首
P,P1,P2:脳波検出位置

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