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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】トラネキサム酸配合外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/195 20060101AFI20250203BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20250203BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20250203BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20250203BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20250203BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20250203BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20250203BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20250203BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250203BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250203BHJP
【FI】
A61K31/195
A61K8/42
A61K8/44
A61K8/73
A61K8/86
A61K47/18
A61K47/34
A61K47/36
A61Q19/00
A61P17/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020210467
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022097087
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000181147
【氏名又は名称】持田製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小關 知子
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-138683(JP,A)
【文献】特開2019-142825(JP,A)
【文献】国際公開第2020/111067(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61L
A61P 17/00-17/18
A61Q 19/00-19/10
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラネキサム酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のトラネキサム酸類を配合した外用組成物に、ヘパリン類似物質、並びに、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ポリオキシエチレンメチルグルコシド及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を配合することを含む、トラネキサム酸類の固化物の析出を抑制する方法。
【請求項2】
前記トラネキサム酸類と前記ヘパリン類似物質との質量比が、1:0.007ないし1:0.15である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
トラネキサム酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のトラネキサム酸類、ヘパリン類似物質、並びに、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ポリオキシエチレンメチルグルコシド及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を配合した外用組成物。
【請求項4】
前記トラネキサム酸類と前記ヘパリン類似物質との質量比が、1:0.007ないし1:0.15である、請求項3に記載の外用組成物。
【請求項5】
前記ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ポリオキシエチレンメチルグルコシド及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種が、前記外用組成物の総質量に基づいて、0.001ないし0.3質量%のジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、0.1ないし10.0質量%のポリオキシエチレンメチルグルコシド及び0.1ないし10.0質量%のポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項3又は請求項4に記載の外用組成物。
【請求項6】
トラネキサム酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のトラネキサム酸類、ヘパリン類似物質、並びに、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ポリオキシエチレンメチルグルコシド及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくと
も1種を配合した外用組成物であって、
トラネキサム酸類の固化物の析出が抑制されている外用組成物。
【請求項7】
前記トラネキサム酸類と前記ヘパリン類似物質との質量比が、1:0.007ないし1:0.15である、請求項6に記載の外用組成物。
【請求項8】
前記ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ポリオキシエチレンメチルグルコシド及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種が、前記外用組成物の総質量に基づいて、0.001ないし0.3質量%のジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、0.1ないし10.0質量%のポリオキシエチレンメチルグルコシド及び0.1ないし10.0質量%のポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項6又は請求項7に記載の外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラネキサム酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のトラネキサム酸類を配合した外用組成物(以下「トラネキサム酸類配合外用組成物」とも記載する。)において、トラネキサム酸類の固化物の析出を抑制する方法に関する。また、本発明は、トラネキサム酸類の固化物の析出が抑制されている外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
トラネキサム酸類は、抗炎症成分や美白成分として、医薬品、医薬部外品又は化粧品によく用いられる成分である。また、トラネキサム酸類は水に溶解しやすい一方、結晶性が高いことが知られており、トラネキサム酸類を配合した外用組成物の保存中、経時的にトラネキサム酸類の固化物が析出する現象や、トラネキサム酸類を配合した外用組成物がこれを充填した容器の口元に付着すると、経時的に水分が蒸発してトラネキサム酸類が容器の口元で固化する現象が問題となっていた。トラネキサム酸の固化物の析出や容器の口元でのトラネキサム酸類の固化は、製品の品質を劣化させたり、使用感を損なう原因となりうる。
これまで、トラネキサム酸類の固化物の析出を抑制する組成物が種々提供されており、例えば、特許文献1ではカルボキシルビニルポリマーと、キサンタンガムと、アルギン酸塩より選択される2種以上の水溶性高分子と、トラネキサム酸類とを組み合わせることで、製剤中のトラネキサム酸類が容器の口元で固化するのを抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-177763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、トラネキサム酸類配合外用組成物において、トラネキサム酸類の固化物の析出を抑制する方法を提供することにある。また、本発明の目的は、トラネキサム酸類の固化物の析出が抑制されている外用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、トラネキサム酸類を含む外用組成物に、ヘパリン類似物質を配合することにより、トラネキサム酸類の固化物の析出を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明は、
[1]トラネキサム酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のトラネキサム酸類を配合した外用組成物に、ヘパリン類似物質を配合することを含む、トラネキサム酸類の固化物の析出を抑制する方法、
[2]前記トラネキサム酸類と前記ヘパリン類似物質との質量比が、1:0.007ないし1:0.15である、[1]に記載の方法、
[3]トラネキサム酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のトラネキサム酸類、ヘパリン類似物質、並びに、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ポリオキシエチレンメチルグルコシド及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を配合した外用組成物、
[4]前記トラネキサム酸類と前記ヘパリン類似物質との質量比が、1:0.007ない
し1:0.15である、[3]に記載の外用組成物、
[5]前記ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ポリオキシエチレンメチルグルコシド及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種が、前記外用組成物の総質量に基づいて、0.001ないし0.3質量%のジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、0.1ないし10.0質量%のポリオキシエチレンメチルグルコシド及び0.1ないし10.0質量%のポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[3]又は[4]に記載の外用組成物、
[6]トラネキサム酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のトラネキサム酸類、ヘパリン類似物質、並びに、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ポリオキシエチレンメチルグルコシド及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を配合した外用組成物であって、トラネキサム酸類の固化物の析出が抑制されている外用組成物、
[7]前記トラネキサム酸類と前記ヘパリン類似物質との質量比が、1:0.007ないし1:0.15である、[6]に記載の外用組成物、
[8]前記ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ポリオキシエチレンメチルグルコシド及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種が、前記外用組成物の総質量に基づいて、0.001ないし0.3質量%のジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、0.1ないし10.0質量%のポリオキシエチレンメチルグルコシド及び0.1ないし10.0質量%のポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[6]又は[7]に記載の外用組成物
に関する。
【0007】
本発明の別の態様としては、
[9]前記外用組成物の総質量に基づいて、トラネキサム酸類の配合量が0.001ないし15質量%であり、ヘパリン類似物質の配合量が0.001ないし5質量%である、[3]に記載の外用組成物、
[10]前記外用組成物の総質量に基づいて、トラネキサム酸類の配合量が0.001ないし15質量%であり、ヘパリン類似物質の配合量が0.001ないし5質量%である、[6]に記載の外用組成物、
[11]保湿成分、界面活性剤、キレート剤、酸化防止剤及びpH調整剤からなる群から選ばれる1種以上を配合することを更に含む、[1]又は[2]に記載のトラネキサム酸類の固化物の析出を抑制する方法、
[12]保湿成分を配合することを更に含む、[1]、[2]又は[11]に記載の方法、
[13]保湿成分、界面活性剤、キレート剤、酸化防止剤及びpH調整剤からなる群から選ばれる1種以上を更に配合した、[3]ないし[5]、又は[9]のいずれか1つに記載の外用組成物、
[14]保湿成分、界面活性剤、キレート剤、酸化防止剤及びpH調整剤からなる群から選ばれる1種以上を更に配合した、[6]ないし[8]、又は[10]のいずれか1つに記載の外用組成物、
[15]保湿成分が、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、グリセリン、濃グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールからなる群から選ばれる1種以上を含む、[13]又は[14]に記載の外用組成物
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トラネキサム酸類配合外用組成物中のトラネキサム酸類の固化物の析出を抑制することができる。
したがって、本発明の方法を使用することにより、トラネキサム酸類の固化物の析出を抑制することができるので、品質が劣化しにくく、使用感が損なわれにくいトラネキサム
酸類配合製品を提供することができる。
【0009】
本発明によれば、トラネキサム酸類の固化物の析出が抑制されている外用組成物を提供することができる。本発明の方法又は組成物は、上記のうちいずれか一つ以上の効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、更に詳細に本発明を説明する。
[トラネキサム酸類の固化物の析出抑制方法]
本発明は、トラネキサム酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のトラネキサム酸類を配合した外用組成物に、ヘパリン類似物質を配合することを含む、トラネキサム酸類の固化物の析出を抑制する方法に関する。
【0011】
本発明において、トラネキサム酸類とは、トラネキサム酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
トラネキサム酸とは、トランス-(4-アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸の略称である。
また、トラネキサム酸の塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等の金属塩、塩酸塩、アルギニン塩等のアミノ酸塩、リン酸塩、硫酸塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
本発明において、トラネキサム酸類としては、遊離酸の形態であるトラネキサム酸が好ましい。
本発明におけるトラネキサム酸類の固化物とは、固化したトラネキサム酸類を含む固体であり、固化したトラネキサム酸類の形態は特に限定されず、結晶質であっても非晶質であってもよい。
【0012】
トラネキサム酸類の配合量は、その薬効を発現するのに十分な量であれば特に限定されず、トラネキサム酸類配合外用組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.001ないし15質量%であり、より好ましくは0.01ないし10質量%であり、さらに好ましくは0.1ないし3質量%である。
本発明において、トラネキサム酸類の配合量及び質量比は、遊離酸の形態であるトラネキサム酸に換算した配合量及び質量比である。
【0013】
本発明において、ヘパリン類似物質は、トラネキサム酸類の固化物の析出を抑制する作用を有する。また、ヘパリン類似物質は、その配合量によっては保湿成分としても作用し得る。
本発明において、ヘパリン類似物質とは、コンドロイチン多硫酸等の多硫酸化ムコ多糖の総称である。
ヘパリン類似物質としては、ムコ多糖を硫酸化することにより得られたもの等が挙げられ、日本薬局方外医薬品規格に記載されているヘパリン類似物質が好ましい。
ヘパリン類似物質の配合量は、トラネキサム酸類の固化物の析出を抑制するのに十分な量であれば特に限定されず、トラネキサム酸類配合外用組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.001ないし5質量%であり、より好ましくは0.01ないし3質量%であり、さらに好ましくは0.05ないし1質量%である。
本発明において、トラネキサム酸類とヘパリン類似物質との配合比率は、トラネキサム酸類の固化物の析出を十分に抑制する点で、質量比にて、好ましくは1:0.007ないし1:0.15であり、トラネキサム酸類の固化物の析出を十分に抑制する点に加えて、無色透明の溶液が得られる点で、より好ましくは1:0.007ないし1:0.05である。
【0014】
本明細書におけるトラネキサム酸類の固化物の析出抑制効果とは、トラネキサム酸類の固化物の析出を抑制して、トラネキサム酸類を配合した溶液の安定性を一定期間にわたり維持する効果を指す。析出抑制効果の有無は、より具体的には、例えば、室温(約23℃)の水にトラネキサム酸類を溶解可能な限度まで溶解して、高濃度のトラネキサム酸類溶液(飽和溶液)を調製し、密封容器に入れ、40℃で5日間静置したときの、固化物の析出の有無を観測することで判定できる。固化物の析出の有無は、通常目視で容易に判定することができる。
【0015】
本発明において、トラネキサム酸類配合外用組成物には、上述した成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、美白成分、保湿成分、抗炎症成分、紫外線吸収剤、抗酸化成分、酸化防止剤、抗菌・防腐剤、増粘剤、キレート剤、pH調整剤、可溶化剤、溶解補助剤、安定化剤、界面活性剤(非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤)、炭化水素類、エステル類、高級アルコール類、脂肪酸類、香料、色素等の各種成分を1種または2種以上組み合わせて配合してもよい。これらの各成分としては、医薬品、医薬部外品及び/又は化粧品分野において使用されうるものであれば特に限定されず、任意のものを適宜選択し、使用することができる。
【0016】
前記美白成分としては、例えば、アルブチン、プラセンタ、コウジ酸、アスコルビン酸、ナイアシンアミド、カモミラET、リノール酸、ハイドロキノン、パントテン酸又はその誘導体等のビタミン類等が挙げられる。
【0017】
前記保湿成分としては、例えば、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、コラーゲン、グリセリン、濃グリセリン、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム液、セラミド、トリメチルグリシン、植物抽出エキス、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム等が挙げられる。
保湿成分を配合する場合には、その配合量はその効果が認められる範囲であればよく、保湿成分の配合量は、トラネキサム酸類配合外用組成物の総質量に基づいて、0.001ないし60質量%が好ましく、0.1ないし45質量%がより好ましい。
【0018】
前記抗炎症成分としては、例えば、サリチル酸、イソプロピルメチルフェノール、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム、酸化亜鉛、酢酸トコフェロール、メントール等が挙げられる。
【0019】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤、安息香酸エステル誘導体紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0020】
前記抗酸化成分としては、例えば、ハイドロキノン、アスタキサンチン、ナイアシンアミド、γ-オリザノール、酢酸DL-α-トコフェロール、天然ビタミンE、プラセンタエキス、dl-α-トコフェリルリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0021】
前記酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、アスコルビン酸、イソプロピルガレート、ピロ亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
酸化防止剤を配合する場合には、その配合量はその効果が認められる範囲であればよく、酸化防止剤の配合量は、トラネキサム酸類配合外用組成物の総質量に基づいて、0.0001ないし10質量%が好ましく、0.0001ないし5質量%がより好ましい。
【0022】
前記抗菌・防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸
エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、フェノキシエタノール、安息香酸、グルコン酸クロルヘキシジン等が挙げられる。
抗菌・防腐剤を配合する場合には、その配合量はその効果が認められる範囲であればよく、抗菌・防腐剤の配合量は、トラネキサム酸類配合外用組成物の総質量に基づいて、0ないし3.0質量%が好ましく、0ないし1.0質量%がより好ましい。
【0023】
前記増粘剤としては、例えば、アルギン酸、カルボキシビニルポリマー、グアーガム、キサンタンガム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ベントナイト、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー等が挙げられる。
増粘剤を配合する場合には、その配合量はその効果が認められる範囲であればよく、増粘剤の配合量は、トラネキサム酸類配合外用組成物の総質量に基づいて、0.001ないし3.0質量%が好ましく、0.01ないし1.0質量%がより好ましく、0.01ないし0.8質量%がさらに好ましい。
【0024】
前記キレート剤としては、例えば、エデト酸塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸、エチドロン酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム等が挙げられる。
キレート剤を配合する場合には、その配合量はその効果が認められる範囲であればよく、キレート剤の配合量は、トラネキサム酸類配合外用組成物の総質量に基づいて、0.001ないし5.0質量%が好ましく、0.01ないし3.0質量%がより好ましい。
【0025】
前記pH調整剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、無水クエン酸、コハク酸、コハク酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、無水リン酸水素二ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0026】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
界面活性剤を配合する場合には、その配合量はその効果が認められる範囲であればよく、界面活性剤の配合量は、トラネキサム酸類配合外用組成物の総質量に基づいて、0.01ないし15質量%が好ましく、0.05ないし10質量%がより好ましい。
【0027】
さらに、本発明において、トラネキサム酸類配合外用組成物には、上述の成分以外に、溶媒として水を配合する。
水としては、精製水を用いることができる。トラネキサム酸類配合外用組成物中に含まれる水の量は、通常、上述の各成分の合計量を100質量%から差し引いた残部である。
本発明において、トラネキサム酸類配合外用組成物に含まれる水の量は、トラネキサム酸類配合外用組成物の総質量に基づいて、通常、30ないし99.9質量%であり、好ましくは40ないし99.9質量%であり、より好ましくは50ないし99質量%である。
また後述のように、本発明の外用組成物は、種々の性状や製剤形態をとることができるので、目的に合わせて水の量を調節することが可能である。例えば、外用組成物に流動性をもたせたい場合、水の量は、外用組成物の総質量に基づいて、50ないし99質量%であってもよく、60ないし99質量%であってもよい。
【0028】
本発明において、トラネキサム酸類配合外用組成物は、例えば、精製水、脱イオン水等
の水にトラネキサム酸類、及び上記の任意成分を混合し、必要に応じて加温、攪拌等の処理を行って、各成分を溶解することにより調製できる。
得られた溶液は、必要に応じてpH調整剤を添加して所望のpHに調整できる。本発明における溶液のpHは特に限定されないが、トラネキサム酸類配合外用組成物として用いることから、好ましくはpH3以上、より好ましくはpH4ないし8、より更に好ましくはpH4.5ないし7である。
【0029】
本発明において、トラネキサム酸類配合外用組成物にヘパリン類似物質を配合する方法は特に限定されず、トラネキサム酸類配合外用組成物にヘパリン類似物質を直接配合する方法や、ヘパリン類似物質を水などの溶媒に溶解してからトラネキサム酸類配合外用組成物に配合する方法などが挙げられる。
【0030】
[外用組成物]
本発明は、トラネキサム酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のトラネキサム酸類、ヘパリン類似物質、並びに、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ポリオキシエチレンメチルグルコシド及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を配合した外用組成物に関する。
【0031】
外用組成物中のトラネキサム酸類及びヘパリン類似物質について、それらの種類、含有量、及び含有比率などは、トラネキサム酸類配合外用組成物で説明したとおりである。
ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウムの配合量は、外用組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.001ないし0.3質量%であり、より好ましくは0.01ないし0.3質量%であり、さらに好ましくは0.01ないし0.1質量%である。
ポリオキシエチレンメチルグルコシドの配合量は、外用組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.1ないし10.0質量%であり、より好ましくは0.1ないし5.0質量%であり、さらに好ましくは1.0ないし5.0質量%である。
ポリエチレングリコールの配合量は、外用組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.1ないし10.0質量%であり、より好ましくは0.1ないし5.0質量%であり、さらに好ましくは1.0ないし5.0質量%である。
【0032】
また、本発明において、外用組成物には、上述した成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、段落[0015]に例示した各種成分を1種または2種以上組み合わせて配合してもよい。
さらに、本発明において、外用組成物には、上述の成分以外に、溶媒として水を配合する。水の含有量などは、トラネキサム酸類配合外用組成物で説明したとおりである。
【0033】
本発明において、外用組成物の製造方法はこれに限定されないが、例えば、トラネキサム酸類、ヘパリン類似物質、並びに、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ポリオキシエチレンメチルグルコシド及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種、並びに任意成分の各成分を別々に、精製水、脱イオン水等の水に添加してそれぞれの組成物を調製し、前記組成物を各成分が全体で質量100%になるように混合して撹拌する方法が挙げられる。別の例として、全成分を一つにまとめて水に溶解して調製する方法が挙げられる。
得られた溶液は、必要に応じてpH調整剤を添加して所望のpHに調整できる。本発明における溶液のpHは特に限定されないが、外用組成物として用いることから、好ましくはpH3以上、より好ましくはpH4ないし8、より更に好ましくはpH4.5ないし7である。
【0034】
本発明における外用組成物の性状は、液状、ゲル状、クリーム状等であり、好ましくは液状である。本発明における製剤形態としては、液剤、ローション剤、乳剤、ゲル剤、ク
リーム剤、エアゾール剤、泡状剤等が挙げられ、好ましくは、液剤、ローション剤、乳剤が挙げられる。これらの製剤は上記の方法にて調製できる。
【0035】
本発明の外用組成物は、トラネキサム酸類の固化物の析出が抑制されているので、例えば、医薬品、医薬部外品又は化粧品の分野において、化粧水、ローション、乳液、美容液等の用途が挙げられる。特に本発明の外用組成物は、医薬部外品の化粧水、ローション、乳液、美容液等に適用されることが好ましい。
【実施例
【0036】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
尚、以下の試験例及び製剤例では、ヘパリン類似物質(日本薬局方外医薬品規格適合品)を用いた。
【0037】
試験例1:ヘパリン類似物質によるトラネキサム酸類の固化物の析出抑制の効果
表1に記載される配合量で全体で質量100%となるように各成分を秤量し、混合撹拌して外用組成物を調製した。
完全に溶解したのを確認した後、評価試験に用いる外用組成物をガラス製の密封容器に移し、密封容器を40℃の環境に所定の期間放置することによって、トラネキサム酸類の固化物の析出が認められるか否かの観察を行った。
トラネキサム酸類の固化物の析出の有無を以下の基準に従って、判定した。
〇:トラネキサム酸類の固化物が析出しなかった。
△:トラネキサム酸類の固化物は析出しなかったが、溶液に着色が認められた。
×:トラネキサム酸類の固化物が析出した。
なお、表1中の各成分の量は、外用組成物の総質量に基づく質量%を表す。
【0038】
【表1】
【0039】
結果:ヘパリン類似物質はトラネキサム酸類の固化物の析出を抑制できた。一方で、ヘパリン類似物質の代わりに、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム及び1,3-ブチレングリコールを加えた比較例2は、トラネキサム酸類の固化物の析出を抑制できなかった。ヘパリン類似物質に更にジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウムと1,3-ブチレングリコールを加えても、トラネキサム酸類の固化物の析出抑制には影響しないことが明らかになった。
【0040】
試験例2:ヘパリン類似物質の配合量の影響
試験例1等の方法に準じ、表2に示す組成の外用組成物を調製し、所定期間、外用組成物中のトラネキサム酸類の固化物の析出の有無を観察し、試験例1と同様の方法で判定した。
なお、表2中の各成分の量は、外用組成物の総質量に基づく質量%を表す。
【0041】
【表2】
【0042】
結果:ヘパリン類似物質の配合量がトラネキサム酸類との質量比において、トラネキサム酸類:ヘパリン類似物質=1:0.007でも、トラネキサム酸の固化物の析出を抑制できた。
【0043】
試験例3:トラネキサム酸類の固化物の析出が抑制されている外用組成物における保湿効果
試験例1等の方法に準じ、表3に示す組成の外用組成物を調製した(表3中の数値は質量%を意味する。)。
乾燥性敏感肌で、顔面の皮膚の粉吹き、皮剥けがある乾燥に悩む被験者に、表3に示された組成の外用組成物を、洗顔・メイク落とし後に、通常使用している化粧水の後、顔面に1日2回適量を塗布して使用した。塗布前並びに塗布開始から2週間後及び4週間後に、右頬骨の上の皮膚において、角質水分量をMoistureMeter SC Compact(登録商標)(デルフィン・テクノロジーズ社)で測定した。測定結果を表4に示す。結果は、導電性の低い表層部分(角質層)の水分量に比例するキャパシタンスを測定し、相対値(AU)として計算された数値である。
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
結果:塗布前と比較して塗布4週間後では有意に角質水分量が増加していた(片側t検定:p<0.001)。
【0046】
[製剤例]
下記の表5ないし表8に示す処方に基づいて、本発明の外用組成物を調製した。各表中の数値は質量%を意味する。調製方法は試験例1等の方法に準じ、調製した。本発明の外用組成物は、試験例1の方法に限定されず、一般的に、医薬品、医薬部外品又は化粧品で用いられる方法で調製することができる。
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
【表7】
【0050】
【表8】
【表9】