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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】耐震補強構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20250203BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20250203BHJP
   E04C 2/30 20060101ALI20250203BHJP
   E04C 2/04 20060101ALI20250203BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20250203BHJP
【FI】
E04G23/02 D
E04G23/02 E
E04B2/56 621Q
E04B2/56 631Q
E04C2/30 D
E04C2/04 F
E04H9/02 321E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021001653
(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公開番号】P2022106562
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2023-12-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月20日発行のDVDに収録
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】濱田 明俊
(72)【発明者】
【氏名】井戸硲 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】ウサレム ハッサン
(72)【発明者】
【氏名】高津 比呂人
(72)【発明者】
【氏名】掛 悟史
(72)【発明者】
【氏名】上枝 豊
(72)【発明者】
【氏名】河野 隆史
(72)【発明者】
【氏名】熊野 豪人
(72)【発明者】
【氏名】田中 弘臣
(72)【発明者】
【氏名】土井 公人
(72)【発明者】
【氏名】内山 まりな
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓未
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-122674(JP,A)
【文献】特開2000-320154(JP,A)
【文献】特開昭54-031943(JP,A)
【文献】特開2002-285708(JP,A)
【文献】特開2000-136637(JP,A)
【文献】実開昭60-083112(JP,U)
【文献】特開2000-309011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04B 2/56
E04C 2/30
E04C 2/04
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と梁とで構成される柱梁架構の構面に対して耐震壁を接着接合により固定してなる耐震補強構造であって、
前記耐震壁は、前記柱梁架構の面内方向に沿って並ぶ複数のパネルで構成され、
前記パネル間の境界部では、前記面内方向で前記境界部に沿った前記パネル同士のずれを防止するためのパネル間ずれ防止部が設けられ、
前記耐震壁と前記梁との境界部では、前記面内方向で前記境界部に沿った前記耐震壁と前記梁とのずれを防止するための耐震壁ずれ防止部が設けられ、
前記耐震壁と前記柱との境界部では、前記耐震壁と前記柱とが縁切りされ
前記耐震壁ずれ防止部を構成するのに、前記耐震壁の前記梁に対向する縁部が波形に形成されていると共に、前記耐震壁の縁部と前記梁との間に硬化性充填材が充填されている耐震補強構造。
【請求項2】
柱と梁とで構成される柱梁架構の構面に対して耐震壁を接着接合により固定してなる耐震補強構造であって、
前記耐震壁は、前記柱梁架構の面内方向に沿って並ぶ複数のパネルで構成され、
前記パネル間の境界部では、前記面内方向で前記境界部に沿った前記パネル同士のずれを防止するためのパネル間ずれ防止部が設けられ、
前記耐震壁と前記梁との境界部では、前記面内方向で前記境界部に沿った前記耐震壁と前記梁とのずれを防止するための耐震壁ずれ防止部が設けられ、
前記耐震壁と前記柱との境界部では、前記耐震壁と前記柱とが縁切りされ、
前記パネル間ずれ防止部を構成するに、隣接する一対の前記パネルの相対向する縁部が互いに嵌り合う波型に形成されていると共に、一対の前記パネルの相対向する前記縁部の間に硬化性充填材が充填されている耐震補強構造。
【請求項3】
前記耐震壁は、前記梁に対向する縁部を長辺とする横長形状に構成されている請求項1又は2に記載の耐震補強構造。
【請求項4】
前記複数のパネルは、前記耐震壁の長辺方向に沿って並ぶ状態で設けられている請求項に記載の耐震補強構造。
【請求項5】
前記複数のパネルの夫々が、SFRC造パネルである請求項1からの何れか一項に記載の耐震補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱と梁とで構成される柱梁架構に利用可能な耐震補強構造であって、特に、柱と梁とで構成される柱梁架構の構面に対して耐震壁を接着接合により固定してなる耐震補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、柱(1)と梁(2)とで構成される柱梁架構で囲まれる構面に対して耐震壁(3)を接着接合により固定してなる耐震補強構造が示されている。この特許文献1の耐震補強構造では、耐震壁(3)は、面内方向(水平方向)に沿って並ぶ複数のパネルで構成されている。そして、パネル間の境界部に、パネル同士のずれを防止するためのパネル間ずれ防止部が設けられ、耐震壁の全周と柱梁架構との境界部に、耐震壁と柱や梁とのずれを防止するための柱梁ずれ防止部が設けられている。
【0003】
このような耐震補強構造では、耐震壁を複数のパネルで構成することで、プレキャストコンクリートで事前に成形した耐震壁を現場に運び易くなると共に、現場において開口部に耐震壁を設置し易くなる。また、パネルの境界部にパネル間ずれ防止部を設けることで、耐震壁を複数のパネルに分割しながらも耐震壁として必要な耐力を確保し易くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-310381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、柱梁架構で囲まれる構面に耐震壁を接着接合により固定することで、地震が発生した際の梁の層間変形を防止できるものの、柱頭に応力が集中して柱頭にせん断ひび割れが発生する虞がある。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、耐震壁を複数のパネルで構成して耐震壁を柱梁架構に設置し易くしながら耐震壁として十分な耐力を確保すると共に、柱頭のせん断ひび割れを抑制することが可能な耐震補強構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、柱と梁とで構成される柱梁架構の構面に対して耐震壁を接着接合により固定してなる耐震補強構造であって、
前記耐震壁は、前記柱梁架構の面内方向に沿って並ぶ複数のパネルで構成され、
前記パネル間の境界部では、前記面内方向で前記境界部に沿った前記パネル同士のずれを防止するためのパネル間ずれ防止部が設けられ、
前記耐震壁と前記梁との境界部では、前記面内方向で前記境界部に沿った前記耐震壁と前記梁とのずれを防止するための耐震壁ずれ防止部が設けられ、
前記耐震壁と前記柱との境界部では、前記耐震壁と前記柱とが縁切りされ
前記耐震壁ずれ防止部を構成するに、前記耐震壁の前記梁に対向する縁部が波形に形成されていると共に、前記耐震壁の縁部と前記梁との間に硬化性充填材が充填されている点にある。
【0008】
本構成によれば、耐震壁を複数のパネルに分割してパネル間の境界部にパネル間ずれ防止部が設けられているため、耐震壁を複数のパネルに分割することで柱梁架構の構面に耐震壁を設置し易くしながら、パネル間ズレ防止部によりパネル同士のずれを防止することで、複数のパネルを一体的に機能させて耐震壁として必要な耐力を確保し易くなる。
そして、耐震壁と梁との境界部に設けられた耐震壁ずれ防止部により耐震壁と梁とのずれを防止することで、耐震壁の水平方向のせん断耐力にて上下の梁の層間変位(柱梁架構の変形)を防止して耐震性を向上できながら、耐震壁と柱との境界部の縁切りにより耐震壁と柱とのずれを許容することで、柱頭のせん断ひび割れを抑制することができる。
【0010】
また、本構成によれば、耐震壁ずれ防止部において、耐震壁の縁部と梁との間に充填されている硬化性充填材に加えて、耐震壁の縁部が波状に形成されていることによって、耐震壁の縁部を直線状に形成した場合に比べて、耐震壁と梁とのずれをより好適に防止することができ、耐震壁の水平方向のせん断耐力を好適に発揮させて上下の梁の層間変位(柱梁架構の変形)を一層防止することができる。
【0011】
本発明の第特徴構成は、柱と梁とで構成される柱梁架構の構面に対して耐震壁を接着接合により固定してなる耐震補強構造であって、
前記耐震壁は、前記柱梁架構の面内方向に沿って並ぶ複数のパネルで構成され、
前記パネル間の境界部では、前記面内方向で前記境界部に沿った前記パネル同士のずれを防止するためのパネル間ずれ防止部が設けられ、
前記耐震壁と前記梁との境界部では、前記面内方向で前記境界部に沿った前記耐震壁と前記梁とのずれを防止するための耐震壁ずれ防止部が設けられ、
前記耐震壁と前記柱との境界部では、前記耐震壁と前記柱とが縁切りされ、
前記パネル間ずれ防止部を構成するに、隣接する一対の前記パネルの相対向する縁部が互いに嵌り合う波型に形成されていると共に、一対の前記パネルの相対向する前記縁部の間に硬化性充填材が充填されている点にある。
【0012】
本構成によれば、耐震壁を複数のパネルに分割してパネル間の境界部にパネル間ずれ防止部が設けられているため、耐震壁を複数のパネルに分割することで柱梁架構の構面に耐震壁を設置し易くしながら、パネル間ズレ防止部によりパネル同士のずれを防止することで、複数のパネルを一体的に機能させて耐震壁として必要な耐力を確保し易くなる。
そして、耐震壁と梁との境界部に設けられた耐震壁ずれ防止部により耐震壁と梁とのずれを防止することで、耐震壁の水平方向のせん断耐力にて上下の梁の層間変位(柱梁架構の変形)を防止して耐震性を向上できながら、耐震壁と柱との境界部の縁切りにより耐震壁と柱とのずれを許容することで、柱頭のせん断ひび割れを抑制することができる。
また、本構成によれば、パネル間ずれ防止部において、一対のパネルの相対向する縁部の間に充填されている硬化性充填材に加えて、一対のパネルの縁部が波状に形成されていることによって、パネル同士のずれをより好適に防止することができる。しかも、一対のパネルの波状の縁部が互いに嵌り合っているため、パネル同士のずれを一層強力に防止することができる。よって、複数のパネルを更に一体的に機能させて耐震壁として必要な耐力を更に確保し易くなる。
【0013】
本発明の第特徴構成は、前記耐震壁は、前記梁に対向する縁部を長辺とする横長形状に構成されている点にある。
【0014】
本構成によれば、耐震壁を、水平方向のせん断耐力を得るのに有利な横長形状とすることで、耐震壁と上下の梁の間に介在する耐震壁ずれ防止部を、水平方向のせん断力に対して効率良く抵抗させることができる。
【0015】
本発明の第特徴構成は、前記複数のパネルは、前記耐震壁の長辺方向に沿って並ぶ状態で設けられている点にある。
【0016】
本構成によれば、複数のパネルを、耐震壁の長辺方向に沿って並ぶ状態で設けることで、耐震壁の長辺方向に沿うパネルの短辺を長くすると共に耐震壁の短辺方向に沿うパネルの長辺を短くすることができる。よって、各パネルの形状を正方形状に近づけることができ、現場への運搬性や現場での施工性を向上させることができる。
【0017】
本発明の第特徴構成は、前記複数のパネルの夫々が、SFRC造パネルである点にある。
【0018】
本構成によれば、パネルを、SFRC(Steel Fiber Reinforced Concrete:鋼繊維補強コンクリート)造とすることで、高靭性で高強度なパネルを構成して耐震壁の耐力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】柱梁架構の正面図
図2】パネル間の境界部の拡大正面図
図3】耐震壁と梁との境界部の拡大正面図
図4】耐震壁と柱との境界部の拡大正面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示す耐震補強構造1は、柱2と梁3とで構成される柱梁架構4の構面5に対して耐震壁6が接着接合により固定されている。説明を加えると、耐震補強構造1は、柱梁架構4を備えた建築物に対し、耐震補強のための改修工事を実施して、柱梁架構4の構面5に耐震壁6を接着接合した構造である。
【0021】
図1に示すように、柱梁架構4は、左側柱7と右側柱8との一対の柱2と、上側梁9と下側梁10との一対の梁3とで構成されており、これらにより囲まれる矩形状の設置空間(構面5)に耐震壁6が設置されている。図示は省略するが、上側梁9や下側梁10はスラブと一体的に構成されている。なお、一対の柱2が並ぶ方向を左右方向Xとし、一対の梁3が並ぶ方向を上下方向Yとしている。
【0022】
耐震壁6は、梁3に対向する縁部(梁側縁部17と称する)を長辺とする横長形状に形成されている。つまり、一対の柱2の間隔は、一対の梁3の間隔より広くなっており、設置空間は、上下方向Yに比べて左右方向Xが長い横長形状となっている。そのため、この設置空間に設置される耐震壁6も、上下方向Yに比べて左右方向Xが長い横長形状となっている。
【0023】
耐震壁6は、柱梁架構4の面内方向に沿って並ぶ複数のパネル11で構成されている。本実施形態では、複数のパネル11は、耐震壁6の長辺方向に沿って並ぶ状態で設けられている。つまり、本実施形態では、上述の如く、耐震壁6は左右方向Xに長い横長形状に形成されており、複数のパネル11は、左右方向Xに沿って並ぶ状態で設けられている。また、複数のパネル11の夫々は、左右方向Xに比べて上下方向Yが長い縦長形状に形成されている。本実施形態では、耐震壁6は3枚のパネル11で構成されており、これらの3枚のパネル11について、図1において左側X1にあるパネル11から順に、第1パネル11A、第2パネル11B、第3パネル11Cと称する場合がある。複数のパネル11の夫々は、鉄筋ではなく多数の鋼繊維をコンクリートに混入して補強された鋼繊維補強コンクリートからなる高靭性で高強度なSFRC造パネルである。
【0024】
パネル11間の境界部では、面内方向で境界部に沿ったパネル11同士のずれを防止するためのパネル間ずれ防止部13が設けられている。本実施形態では、パネル間ずれ防止部13は、パネル11同士の上下方向Yのずれを防止するように構成されている。パネル間ずれ防止部13を構成するに、隣接する一対のパネル11の相対向する縁部であるパネル側縁部14が互いに嵌り合う波型に形成されていると共に、一対のパネル11の相対向するパネル側縁部14の間にグラウト材(無収縮モルタル)等の硬化性充填材15が充填されている。
【0025】
説明を加えると、図1及び図2に示すように、第1パネル11Aの右側X2の縁部と第2パネル11Bの左側X1の縁部が、相対向するパネル側縁部14となっており、これら第1パネル11Aの右側X2の縁部と第2パネル11Bの左側X1の縁部とが互いに嵌り合う波型に形成されている。そして、第1パネル11Aの右側X2の縁部と第2パネル11Bの左側X1の縁部との間に、硬化性充填材15が充填されており、第1パネル11Aと第2パネル11Bとが接着接合されている。「一対のパネル11の相対向する縁部が互いに嵌り合う」とは、左側X1のパネル11における右側X2の縁部の頂点が、右側X2のパネル11における左側X1の縁部の頂点より右側X2に位置しており、上下方向Yに沿う上下方向視で一対のパネル11の縁部が互いに重複する部分を有していることを意味している。
【0026】
また、同様に、図1に示すように、第2パネル11Bの右側X2の縁部と第3パネル11Cの左側X1の縁部が、相対向するパネル側縁部14となっており、これら第2パネル11Bの右側X2の縁部と第3パネル11Cの左側X1の縁部とが互いに嵌り合う波型に形成されている。そして、第2パネル11Bの右側X2の縁部と第3パネル11Cの左側X1の縁部との間に、硬化性充填材15が充填されており、第2パネル11Bと第3パネル11Cとが接着接合されている。
【0027】
耐震壁6と梁3との境界部では、面内方向で境界部に沿った耐震壁6と梁3とのずれを防止するための耐震壁ずれ防止部16が設けられている。本実施形態では、耐震壁ずれ防止部16は、耐震壁6と梁3との左右方向Xのずれを防止するように構成されている。耐震壁ずれ防止部16を構成するに、耐震壁6の梁3に対向する縁部である梁側縁部17が波形に形成されていると共に、耐震壁6の縁部と梁3との間にグラウト等の硬化性充填材15が充填されている。
【0028】
説明を加えると、図1及び図3に示すように、耐震壁6の上側Y1の縁部(第1パネル11Aの上側Y1の縁部、第2パネル11Bの上側Y1の縁部、及び第3パネル11Cの上側Y1の縁部)が、梁側縁部17となっており、波型に形成されている。そして、耐震壁6の上側Y1の梁側縁部17と上側梁9との間に硬化性充填材15が充填されており、耐震壁6と上側梁9とが接着接合されている。
【0029】
また、同様に、図1に示すように、耐震壁6の下側Y2の縁部(第1パネル11Aの下側Y2の縁部、第2パネル11Bの下側Y2の縁部、及び第3パネル11Cの下側Y2の縁部)が、梁側縁部17となっており、波型に形成されている。そして、耐震壁6の下側Y2の梁側縁部17と下側梁10との間に硬化性充填材15が充填されており、耐震壁6と下側梁10とが接着接合されている。
【0030】
耐震壁6と柱2との境界部では、耐震壁6と柱2とが縁切りされており、面内方向で境界部に沿った耐震壁6と柱2とのずれを許容するための耐震壁非ずれ防止部18が設けられている。本実施形態では、耐震壁非ずれ防止部18は、耐震壁6と柱2との上下方向Yのずれを許容するように構成されている。耐震壁非ずれ防止部18を構成するに、耐震壁6の縁部と柱2との間に硬化性充填材15が充填されているが、耐震壁6の柱2に対向する縁部である柱側縁部19が直線状に形成されていると共に、柱2と硬化性充填材15とが相対的に上下方向Yに移動可能なように、柱2における耐震壁6が存在する側の面にシート材20が備えられている。
【0031】
説明を加えると、図1及び図4に示すように、耐震壁6の左側X1の縁部(第1パネル11Aの左側X1の縁部)が、柱側縁部19となっており、直線状に形成されている。そして、左側柱7の右側X2を向く面にシート材20として養生テープが貼付された状態で、耐震壁6の柱側縁部19と左側柱7との間に硬化性充填材15が充填されている。そのため、耐震壁6と左側柱7との間は硬化性充填材15で埋められているものの、耐震壁6と左側柱7とは接着接合されておらず互いに上下方向Yに移動可能となっている。
【0032】
また、同様に、図1に示すように、耐震壁6の右側X2の縁部(第3パネル11Cの右側X2の縁部)が、柱側縁部19となっており直線状に形成されている。そして、右側柱8の左側X1を向く面にシート材20として養生テープが貼付された状態で、耐震壁6の柱側縁部19と右側柱8との間に硬化性充填材15が充填されている。そのため、耐震壁6と右側柱8との間は硬化性充填材15で埋められているものの、耐震壁6と右側柱8とは接着接合されておらず互いに上下方向Yに移動可能となっている。
【0033】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0034】
(1)上記した実施形態では、パネル間ずれ防止部13を、一対のパネル11の相対向する縁部を互いに嵌り合う波型に形成すると共に、一対のパネル11の相対向する縁部の間に硬化性充填材15を充填する構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、一対のパネル11の相対向する縁部を波型に形成しながら互いに嵌り合わない構成としてもよく、また、一対のパネル11の相対向する縁部を、ジグザグ型や直線状に形成する構成としてもよい。
【0035】
(2)上記した実施形態では、耐震壁ずれ防止部16を、耐震壁6の梁3に対向する縁部を波型に形成すると共に、耐震壁6の縁部と梁3との間に硬化性充填材15を充填する構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、耐震壁6の梁3に対向する縁部をジグザグ型や直線状に形成する構成としてもよい。
【0036】
(3)上記した実施形態では、耐震壁非ずれ防止部18において耐震壁6と柱2とが縁切りする構成は、柱2に養生テープ以外のシート材20を貼付する等の他の構成としてもよい。
【0037】
(4)上記した実施形態では、複数のパネル11を、耐震壁6の長辺方向(左右方向X)に沿って並ぶ状態で設ける構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、複数のパネル11を上下方向Yに並ぶ状態で設けて、耐震壁6の短辺方向に沿って並ぶ状態で設ける構成としてもよい。
【0038】
(5)上記した実施形態では、複数のパネル11の夫々を、SFRC造パネルとする構成を例示した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、複数のパネル11の夫々を、鉄筋コンクリート造パネルとする等、SFRC造以外のパネルでもよい。
【0039】
(6)本発明は、既存の柱梁架構4の構面5に耐震壁6を設置する場合に限らず、新築の柱梁架構の構面に耐震壁6を設置する場合にも好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 耐震補強構造
2 柱
3 梁
4 柱梁架構
5 構面
6 耐震壁
11 パネル
13 パネル間ずれ防止部
15 硬化性充填材
16 耐震壁ずれ防止部
図1
図2
図3
図4