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  • 特許-各階扉開閉状態表示装置 図1
  • 特許-各階扉開閉状態表示装置 図2
  • 特許-各階扉開閉状態表示装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】各階扉開閉状態表示装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/14 20060101AFI20250203BHJP
【FI】
B66B13/14 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021004614
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109358
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592217141
【氏名又は名称】サノヤス・エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】寺田 圭
(72)【発明者】
【氏名】神尾 勇治
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】石井 高広
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-061726(JP,A)
【文献】実開平02-083868(JP,U)
【文献】特開平02-204289(JP,A)
【文献】特開2018-203384(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0073203(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事用エレベータにおける各階扉の開閉状態を篭内に表示する各階扉開閉状態表示装置であって、
各階毎に設けられた各階扉の開閉状態を検出する各階扉開閉検出部と、
前記各階扉開閉検出部からの信号を受信する伝送制御部と、
篭内に設けられ、前記伝送制御部が受信した各階扉毎の開閉状態を表示する各階扉毎開閉表示部と、
全ての階の前記各階扉開閉検出部と前記伝送制御部とは、2本のケーブル一対で構成される各階扉開閉状態伝送線で接続されて各階扉の開閉状態を多重伝送することが可能であり、
前記各階扉開閉検出部は、それぞれが何階の扉であるかの階数値を有しており、前記各階扉開閉状態伝送線に時系列に送出されたリセット信号に続く所定数の階数指定信号のうち、それぞれの前記階数値に相当する前記階数指定信号に同期して、開状態と閉状態とで電位を異ならせて前記各階扉の開閉状態を前記各階扉開閉状態伝送線に送出することを特徴とする各階扉開閉状態表示装置。
【請求項2】
前記各階扉毎開閉表示部は、全ての各階扉の開閉状態を一括して視認可能であることを特徴とする請求項1に記載の各階扉開閉状態表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場で使用される工事用エレベータにおいて、各階に設ける工事用扉の開閉状態を篭内の表示盤に表示する各階扉開閉状態表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビルの建築現場で使用される工事用エレベータに対して、安全のために各階に昇降機側とステージ側とを仕切る工事用扉が設置されている。この工事用扉は、人の接触や強風により開状態となることがある。その場合、篭を昇降させると危険であるから、該当の階の工事用扉を閉める作業を人が行う必要がある。
【0003】
従来は、いずれかの階の工事用扉(以下、「各階扉」という。)が開状態となった場合、開状態となった各階扉を閉める作業が必要であるが、どの階の各階扉が開状態となったかわからないので、人がすべての階の各階扉の開閉状態を目視で確認する必要があった。
【0004】
特許文献1には、各階扉の開閉状態を検出するとともに呼び信号を篭内の制御部に伝達して自動的に篭を昇降させる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1:特開平9-194149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、何階の各階扉が開状態なのかについての情報を得ることができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決して、各階扉の開閉状態を各階扉毎に表示して篭内の人が確認できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、工事用エレベータにおける各階扉の開閉状態を篭内に表示する各階扉開閉状態表示装置であって、
各階毎に設けられた各階扉の開閉状態を検出する各階扉開閉検出部と、
前記各階扉開閉検出部からの信号を受信する伝送制御部と、
篭内に設けられ、前記伝送制御部が受信した各階扉毎の開閉状態を表示する各階扉毎開閉表示部と、
全ての階の前記各階扉開閉検出部と前記伝送制御部とは、2本のケーブル一対で構成される各階扉開閉状態伝送線で接続されて各階扉の開閉状態を多重伝送することが可能であり、
前記各階扉開閉検出部は、それぞれが何階の扉であるかの階数値を有しており、前記各階扉開閉状態伝送線に時系列に送出されたリセット信号に続く所定数の階数指定信号のうち、それぞれの前記階数値に相当する前記階数指定信号に同期して、開状態と閉状態とで電位を異ならせて前記各階扉の開閉状態を前記各階扉開閉状態伝送線に送出することを特徴とする各階扉開閉状態表示装置を提供するものである。
【0009】
この構成により、各階扉毎の開閉状態を表示して篭内の人が確認できるようにできる。
また、前記階数指定信号に同期して、前記各階扉開閉状態伝送線の電位を開状態と閉状態とで異ならせて前記各階扉の開閉状態を前記各階扉開閉状態伝送線に送出することで、前記各階扉開閉状態伝送線を一本の信号線と一本の接地線の2本のケーブル一対で構成することができる。
【0014】
各階扉開閉状態表示装置であって、前記各階扉毎開閉表示部は、全ての各階扉の開閉状態を一括して視認可能である構成としてもよい。
【0015】
この構成により、人が一目で各階扉毎の開閉状態を視認することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の各階扉開閉状態表示装置により、各階扉の開閉状態を各階毎に表示することで、篭内の人が何階の各階扉が開なのかを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例1における各階扉開閉状態表示装置を説明する図である。
図2】本発明の実施例1における各階扉開閉状態伝送線での多重伝送を説明する図である。
図3】本発明の実施例1における各階扉毎開閉表示部の表示を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例1について、図1図3を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1における各階扉開閉状態表示装置を説明する図である。図2は、本発明の実施例1における各階扉開閉状態伝送線での多重伝送を説明する図である。図3は、本発明の実施例1における各階扉毎開閉表示部の表示を説明する図である。
【0019】
実施例1における各階扉開閉状態表示装置100が備えられた工事用エレベータは、人や荷物が乗る篭10が1階(又は地階)から最上階まで篭10内に乗った人が操作して昇降させることができる。工事用エレベータが設置されるのは、建築中のビル等であり、建築が進むにつれて最上階は高くなる。このため、建築が進むにつれて工事用エレベータが停止する階も高くなっていく。各階における工事用エレベータの乗り口には危険防止のために引き戸形式の仮設の扉(以下、「各階扉」ともいう。)が設置されている。この各階扉は、人の接触や強風により開状態となってしまうことがある。開状態となると人や荷物が落下の恐れがあり危険であるから篭10を昇降させる前に、開状態となった各階扉を閉状態とする必要がある。
【0020】
従来の工事用エレベータでは、いずれかの各階扉が開状態となったことを検知することはできるが、どの階の各階扉が開状態なのかがわからなかった。そのため、人がすべての階を階段で上り下りして確認していく作業が必要で、疲労を伴うとともに時間がかかるという問題があった。
【0021】
以下の説明においては、1階からn階(nは、最大255)まで昇降可能な工事用エレベータについて説明を行なう。実施例1における各階扉開閉状態表示装置100は、各階扉20(20-1、20-2、・・・20-(n―1)、20-n)の開状態を検知するリミットスイッチ22(22-1、22-2、22-(n―1)、22-n)が閉じる(ON)と開状態であることを検出する各階扉開閉検出部21(21-1、21-2、・・・21―(n―1)、21-n)が各階扉毎に設けられている。逆に、リミットスイッチ22(22-1、22-2、22-(n―1)、22-n)が開く(OFF)と閉状態であることを検出する。ここで、各階扉開閉検出部21-1は1階に設けられ、各階扉開閉検出部21-2は2階に設けられ、同様に各階扉開閉検出部21-(n―1)は(n―1)階に設けられ、各階扉開閉検出部21-nはn階に設けられている。
【0022】
なお、実施例1においては、1階からn階(nは、最大255)まで昇降可能な工事用エレベータとしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、地下5階からn階までとしてもよいし、2階からn階までとしてもよく、任意の階から階までを昇降可能とすればよい。実施例1においては、検出できる各階扉の数は最大256である。
【0023】
篭10には、伝送制御部11、制御部12、各階扉毎開閉表示部13が設けられている。伝送制御部11は、各階扉開閉検出部21(21-1、21-2、・・・21―(n―1)、21-n)が検出した各階扉20(20-1、20-2、・・・20-(n―1)、20-n)の開閉状態を把握するためのものである。具体的には、伝送制御部11がケーブル24を経由してインバータ30に信号を送り、インバータ30は伝送制御部11が発出する信号に基づいて、リセット信号及び所定数(実施例1においては、n)の階数指定信号を時系列に1→2→・・・(n-1)→nと昇順に、各階扉開閉状態伝送線23に送出する(図2参照)。図2において、「RESET」はこれ以降階数指定信号が送出されるトリガとなる信号を示し、「1」は1階を指定する階数指定信号を示し、同様に、「2」は2階を指定する階数指定信号を示し、「n-1」は(n-1)階を指定する階数指定信号を示し、「n」はn階を指定する階数指定信号を示している。実施例1における所定数はnである。
【0024】
各階扉開閉検出部21(21-1、21-2、・・・21―(n―1)、21-n)は、それぞれ何階の各階扉に設置されているかを示す階数値を記憶している。そして、それぞれの階数値に相当する階数指定信号を受信したら、開状態であるか閉状態であるかを示す各階扉の開閉状態を各階扉開閉状態伝送線23に送出して時系列に多重伝送する。すなわち、図2に示すように、開状態(すなわちON)であれば電圧をマイナス電位にし、閉状態(すなわちOFF)であれば電圧をゼロ電位(0V)にする。実施例1におけるマイナス電位は、―10Vである。各階扉開閉状態伝送線23は、信号線と接地線の2本のケーブル1対で構成されている。このため、低コストで構成できるとともに、断線等の故障のリスクを軽減することができる。
【0025】
伝送制御部11は、各階扉開閉状態伝送線23に送出された時系列多重伝送の信号に基づいて各階扉の開閉状態を受信する。受信した各階扉の開閉状態は制御部12に伝えられる。制御部12は、すべての階の各階扉の開閉状態を各階扉毎開閉表示部13に表示する。各階扉毎開閉表示部13における表示は、図3に示すように、各階扉毎に各階表示13aとLED13bを備えていて、開状態であれば赤色(図3においては黒色で表示している。)、閉状態であれば緑色(図3においては白色で表示している。)に発光させる。これにより、人が一目で一括して各階扉毎の開閉状態を視認することができる。
【0026】
また、制御部12は、篭10を昇降させるモータを制御することが可能で、仮に篭10が昇降中にいずれかの階の各階扉が開状態であることを把握すれば、直ちに篭10の昇降を中止し最も近い階に停止させるように制御する。
【0027】
なお、実施例1においては、各階扉の開閉をリミットスイッチで検知するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、非接触に検知するように構成してもよい。
【0028】
また、実施例1においては、各階扉毎開閉表示部13において各階扉毎にLEDを備え赤色又は緑色で開状態又は閉状態を表すように構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、開状態又は閉状態を表す色を別の任意の色で表してもよい。また、各階扉毎にLED又はランプを備え、点灯又は非点灯で開状態又は閉状態を表すようにしてもよい。さらに、開状態の階を数字で表示するように構成してもよい。
【0029】
さらに実施例1においては、多重伝送における開状態をー10Vとしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、―24Vとしてもよいし、他のマイナス電位にしてもよい。
【0030】
また、実施例1においては、階数指定信号を時系列に1→2→・・・(n-1)→nと昇順に、各階扉開閉状態伝送線23に送出するように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、n→(n―1)→・・・→2→1と降順に送出するようにしてもよい。また、昇順、降順ではなく、ランダムに順番を設定してもよい。いずれの場合においても、各階扉開閉検出部21(21-1、21-2、・・・21―(n―1)、21-n)及び伝送制御部11が決められた階数指定信号の順番を記憶しておけばよい。
【0031】
このように、実施例1においては、工事用エレベータにおける各階扉の開閉状態を篭内に表示する各階扉開閉状態表示装置であって、
各階毎に設けられた各階扉の開閉状態を検出する各階扉開閉検出部と、
前記各階扉開閉検出部からの信号を受信する伝送制御部と、
篭内に設けられ、前記伝送制御部が受信した各階扉毎の開閉状態を表示する各階扉毎開閉表示部と、
全ての階の前記各階扉開閉検出部と前記伝送制御部とは、各階扉開閉状態伝送線で接続されて各階扉の開閉状態を多重伝送することを特徴とする各階扉開閉状態表示装置により、各階扉毎の開閉状態を表示して篭内の人が確認できるようにできる。そのため、従来のように人が階段を上がり降りして各階扉の開閉状態を確認する必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明における各階扉開閉状態表示装置は、建築現場における工事用昇降機の分野に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
10:篭
11:伝送制御部
12:制御部
13:各階扉毎開閉表示部
13a:各階表示 13b:LED
20-1:1階
20-2:2階
20-(n―1):(n―1)階
20-n:n階
21(21-1、21―2、21-(n―1)、21-n):各階扉開閉検出部
22(22-1、22―2、22-(n―1)、22-n):リミットスイッチ
23:各階扉開閉状態伝送線
24:ケーブル
100:各階扉開閉状態表示装置
図1
図2
図3