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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】フットカバー
(51)【国際特許分類】
   A41B 11/00 20060101AFI20250203BHJP
【FI】
A41B11/00 F
A41B11/00 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021112771
(22)【出願日】2021-07-07
(65)【公開番号】P2023009461
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川原崎 真悟
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-014669(JP,A)
【文献】特開2016-050373(JP,A)
【文献】特開2017-133148(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0227843(US,A1)
【文献】特表2008-511762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B11/00-11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足首を露出するフットカバーであって、
1以上の伸縮性生地により、足底部、側辺部、踵部および少なくとも前記爪先を覆う爪先部で形成され、
足を出し入れするための開口部を、前記足底部に対して上下反対側に設け、
少なくとも前記足底部の爪先側と前記爪先部とが1枚の伸縮性生地で形成され、前記足底部から前記爪先部へ前記爪先を包むように立ち上がり、
前記足底部の前記立ち上がり部分以外において前記足底の形状に沿った接合線を備え、
前記立ち上がり部分に接合線を備えず、
前記フットカバーを形成する1以上の伸縮性生地とは異なる爪先別生地が、前記接合線を備えない部分を含めて、前記足底部から前記爪先部へ前記爪先を上下方向および左右方向から包むように設けられた、ことを特徴とするフットカバー。
【請求項2】
前記フットカバーは左右共用であって、
前記爪先別生地は前記爪先部の肌当接面に設けられ、前記フットカバーを裏返して平面に前記フットカバーの側面を観測可能に載置した後に前記平面に載置された前記フットカバーに透明な平板に押し当てた状態における前記爪先別生地の形状が、四辺形で、かつ、前記足底の形状に沿った接合線を線対称の中心線とした線対称の形状を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のフットカバー。
【請求項3】
前記フットカバーは左右共用であって、
前記爪先別生地は前記爪先部の肌当接面に設けられ、前記フットカバーを裏返して平面に前記フットカバーの側面を観測可能に載置した後に前記平面に載置された前記フットカバーに透明な平板に押し当てた状態における前記爪先別生地の形状が、四辺形で、かつ、前記足底の形状に沿った接合線上に前記四辺形の対向する2頂点が存在するとともに、前記四辺形の頂点どうしを結んだ2直線の交点を点対称の中心点とした点対称の形状を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のフットカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用してパンプス(履き口である甲部分が大きく開いている主として婦人用の靴)やスニーカー(男女の性別を問わないいわゆる運動靴)等の靴を履くとその靴の内側に隠れて見えなくなる(見えなくなることには見えにくくなることを含む)フットカバーに関し、特に、感覚が敏感な足指先の不快感をできる限り抑制するともに、(任意的ではあるが)フットカバーの立体的形状を形成する伸縮性生地とは別生地を爪先部に好適に備えることのできるフットカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
素足にパンプスやスニーカー等の靴を履くことが、ファッションとして定着している。この場合、パンプスやスニーカー等の靴と足裏とが直接接していると、足に発生した汗により靴の中が蒸れてしまい不快感がある。
そこで、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出する(浅履きまたは超浅履きと呼ばれる)、または、爪先と踵を含む足底と足甲とを被覆するとともに足首を露出する(深履きまたは超深履きと呼ばれる)フットカバーであって、着用時にパンプス、または、スニーカーから露出することのないよう履き口がカットされた薄手のフットカバーが提案されている。このフットカバーを着用してパンプスまたはスニーカーを履けば、外観上、素足にパンプスまたはスニーカーを履いているように見え、足裏とパンプスやスニーカーとの間にはフットカバーが介しているため、汗によって靴の中が蒸れてしまうことを防止することができる。
【0003】
なお、このような足装着具を、本明細書ではフットカバーと記載するが、ソックスカバー、インナーソックス、ヌードソックス、カバーソックス等と記載される場合もある。
このようなフットカバーはパンプスから露出しないよう履き口が大きくカットされている浅履きまたは超浅履きタイプの場合には、歩行中の摩擦等によって履き位置がずれたり、脱げたりすすることがある。一方、履き口を小さくしてしまうとパンプスから露出してしまう。このような問題点に鑑みて開発されたフットカバーが、以下の先行技術文献に開示されている。
【0004】
特開平10-292206号公報(特許文献1)は、歩行時におけるパンプスとフットカバーとの摩擦によってフットカバーが素足から脱げてしまったり、パンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを防止するために、踵当接部内面に摩擦付与体を取り付けたフットカバーを開示する。
実用新案登録第3165733号公報(特許文献2)は、特許文献1に開示されたフットカバーの開口部の周縁に沿ってゴム紐を設けたのでは、ゴム紐が足に食い込むため、足にゴム紐の型が付いてしまったり、痛みを感じたり、履き心地が良くないという問題があったことに鑑み、開口部の周縁に沿って平ゴムを設けて一面が足に接するようにした帯状伸縮部を形成したフットカバーを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-292206号公報
【文献】実用新案登録第3165733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの特許文献1に開示されたフットカバーおよび特許文献2に開示されたフットカバーを含めて、多くのフットカバーにおいては、伸縮性生地を裁断してその本体を立体的形状に縫合しており爪先に縫合線が存在し、かつ、このようなフットカバーは(当然であるが)素足に着用するために爪先に存在する縫合線により、感覚が相当に敏感な足指先に不快感が発生する場合がある。
【0007】
さらに、これらの特許文献1に開示されたフットカバーおよび特許文献2に開示されたフットカバーを含めて、多くのフットカバーにおいては、本体をパンティストッキング等の伸縮性生地(ナイロンおよび/またはポリウレタンからなる生地)により構成しているが、パンティストッキング等の生地ではなく、さらに履き心地の向上を求めて肌触りの好ましい他の生地であるが強度が劣る生地(たとえば綿およびナイロンからなる生地または絹およびナイロンからなる生地等)で構成する場合もあり得るが、このような綿および絹は化学繊維であるナイロン等に比較して強度が劣るので、特に、爪先部において生地が破れてしまうという問題がある。特に、爪先部には足指の爪先端(尖っている場合もある)が直接フットカバーに当接するために、強度の弱い生地ではそこから破れることもあり得る。この対策として、たとえばフットカバーの本体を形成する伸縮性生地とは別の生地を補強生地として爪先に設ける場合があるものの、爪先に存在する縫合線により、その別の生地を設けることが難しい場合がある。すなわち、爪先の(外観上の見栄えの良さを考慮して表側ではなく裏側の)肌当接側に(出っ張るように)存在する縫合線を含めてその別の生地を肌当接側に接着(接着による接合)すると、縫合線の部分において別の生地が浮いてフットカバーの本体から別の生地が剥がれやすい。また、爪先にその別の生地を(フットカバーの本体を形成する接合(縫着、接着)とは別に)縫着(縫製による接合)すると、感覚が相当に敏感な足指先に不快感がさらに発生する場合がある。
【0008】
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、フットカバーを着用して靴を履くと靴の内側に隠れて見えなくなる(見えにくくなる)とともに感覚が敏感な足指先の不快感をできる限り抑制することのできるフットカバーを提供することである。本発明のさらなる目的とするところは、フットカバーの立体的形状を形成する伸縮性生地とは別生地を爪先部に好適に(剥がれ落ちることなく、かつ、不快感を発生させることなく)備えることのできるフットカバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るフットカバーは以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係るフットカバーは、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足首を露出するフットカバーであって、1以上の伸縮性生地により、足底部、側辺部、踵部および少なくとも前記爪先を覆う爪先部で形成され、足を出し入れするための開口部を、前記足底部に対して上下反対側に設け、少なくとも前記足底部の爪先側と前記爪先部とが1枚の伸縮性生地で形成され、前記足底部から前記爪先部へ前記爪先を包むように立ち上がり、前記足底部の前記立ち上がり部分以外において前記足底の形状に沿った接合線を備え、前記立ち上がり部分に接合線を備えない、ことを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記フットカバーを形成する1以上の伸縮性生地とは異なる爪先別生地が、前記接合線を備えない部分を含めて、前記足底部から前記爪先部へ前記爪先を包むように設けられたように構成することができる。
さらに好ましくは、前記フットカバーは、前記足底部、前記側辺部の爪先側および前記爪先部が第1の伸縮性編地で形成され、前記側辺部の踵側および前記踵部が前記第1の伸縮性編地とは別の第2の伸縮性編地で形成され、前記足底部において、前記爪先部の先端以外に前記足底の形状に沿った前記足底形状に略等しい形状の接合線を備え、前記先端に接合線を備えないように構成することができる。
【0011】
さらに好ましくは、前記爪先別生地は、上下方向および左右方向から前記爪先を包むように設けられたように構成することができる。
さらに好ましくは、前記爪先別生地は前記爪先部の肌当接面に設けられ、前記フットカバーを裏返して平面に前記フットカバーの側面を観測可能に載置した後に前記平面に載置された前記フットカバーに透明な平板に押し当てた状態における前記爪先別生地の形状が、四辺形で、かつ、前記足底の形状に沿った接合線を線対称の中心線とした線対称の形状を備えることができるように構成することができる。
【0012】
さらに好ましくは、前記爪先別生地は前記爪先部の肌当接面に設けられ、前記フットカバーを裏返して平面に前記フットカバーの側面を観測可能に載置した後に前記平面に載置された前記フットカバーに透明な平板に押し当てた状態における前記爪先別生地の形状が、四辺形で、かつ、前記足底の形状に沿った接合線上に前記四辺形の対向する2頂点が存在するとともに、前記四辺形の頂点どうしを結んだ2直線の交点を点対称の中心点とした点対称の形状を備えることができるように構成することができる。
【0013】
さらに好ましくは、爪先別生地は、前記伸縮性生地よりも強度がある生地、前記伸縮性生地よりも滑りやすい生地、前記伸縮性生地よりも断熱性がある生地、前記伸縮性生地よりもクッション性がある生地、前記伸縮性生地よりも抗菌性がある生地、および、前記伸縮性生地よりも消臭効果がある生地の少なくともいずれかであるように構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフットカバーによれば、フットカバーを着用して靴を履くと靴の内側に隠れて見えなくなる(見えにくくなる)とともに感覚が敏感な足指先の不快感をできる限り抑制することができる。また、本発明のフットカバーによれば、フットカバーの立体的形状を形成する伸縮性生地とは別生地を爪先部に好適に(剥がれ落ちることなく、かつ、不快感を発生させることなく)備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るフットカバー100を、足Fに着用した全体斜視図である。
図2】裏返して足Fに着用した(A)右側面図、(B)左側面図である。
図3】裏返して足Fに着用した(A)前面図(腹側から見た図)、(B)後面図(背中側から見た図)である。
図4】フットカバー100の裏面図(足裏側から見た図)である。
図5】平面載置圧迫側面視の状態のフットカバー100を示す図であって、爪先別生地112の形状を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係るフットカバー100を、図面に基づき詳しく説明する。
このフットカバー100を足Fに着用した全体斜視図を図1に、このフットカバー100を裏返して足Fに着用した、右側面図を図2(A)に、左側面図を図2(B)に、前面図(腹側から見た図)を図3(A)に、後面図(背中側から見た図)を図3(B)に、それぞれ示す。また、このフットカバー100を足Fに実際に着用するのではなく仮に着用した場合のフットカバー100の裏面図(足裏から見た図)を図4に示す。さらに、図5は、側面視可能な状態でフットカバー100を透明な平板に押し当てた図であって(より詳しくは爪先別生地112が爪先部102Bの肌当接面に設けられたフットカバー100を裏返して平面にフットカバー100の側面を観測可能に載置した後に平面に載置されたフットカバー100に透明な平板に押し当てた状態(後述する平面載置圧迫側面視の状態)を示す図であって)、爪先別生地112の形状を説明するための図である。
【0017】
ここで、図4および図5以外の図1図3は、着用者の足Fにフットカバー100を実際に着用している状態を示している。図4は、着用者の足Fにフットカバー100を仮に着用している状態を想定している。図5は着用者の足Fにフットカバー100を着用している状態ではなく平面載置圧迫側面視の状態を示す。図4はフットカバー100における対称性を説明するための図であって、フットカバー100は着用するとフットカバー100が(片足ではたとえば足親指と足小指とが同じ長さではなく左右方向が対称ではない)足の形状に沿って足を覆うために左右方向および上下方向の対称性を(厳密には)喪失するために、図4は着用者の足Fにフットカバー100を仮に着用している状態を想定している。
【0018】
すなわち、本実施の形態に係るフットカバー100は、パンティストッキング等の伸縮性生地で形成されているために、このように(図5以外を)図示しない場合には縮んだ状態となり、形状を理解することが困難なため、上述のように表現している。また、本発明をより容易に理解するために、図2および図3はフットカバー100を裏返して足Fに着用している状態を示し、図4はフットカバー100を裏返して足裏側から見ている状態であって仮に着用している状態(実際に着用すると喪失する左右対称性を説明するための状態)を示しており、図5は着用している状態ではなくフットカバー100を裏返して平面載置圧迫側面視の状態を示している。
【0019】
なお、フットカバーの構造には様々なものがあり、本発明は特定の構造に限定されるものではなく、後述する特徴的な構成を備えたものであれば、どのようなフットカバーの構造であっても、フットカバーを形成する生地の種類、生地の型紙およびその生地の接合方法がどのようなものであっても基本的には構わない。そのため、以下に示すフットカバー100の構造自体は単なる例示でしかない。
【0020】
また、このフットカバー100を形成する生地は、ベア天(ベア天竺:ポリウレタン糸を軸にして他の素材の糸(綿、ウール等)を巻きつけた糸(カバード・ヤーン等)を用いて編んだ平編みの生地)、トリコット(経編み機の一種であるトリコット機で編んだ経編みの生地)、パンティストッキング用の生地(ポリウレタン糸とナイロン糸とを含む編地)等が好ましく用いられる。特に、これらの中でもベア天は、(1)伸縮性にすぐれている点、(2)形状安定性がよく洗濯後の形状変化が少ない点、(3)風合いが柔らかくフィット感にすぐれている点、(4)シワや折り目がつきにくい点、(5)多孔性の構造なので通気性がある点、(6)綿を含む場合には肌触りおよび吸湿性がよい点、でフットカバーに好ましい。以下においては、生地と編地とを区別しない場合がある。また、以下においては、フットカバー自体およびフットカバー本体とは、それらのみでフットカバーの立体的形状を形成でき、本発明における任意的構成である爪先別生地112を含まないという意味である。
【0021】
さらに、本実施の形態に係るフットカバー100は、図1図5に示すように、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足首を露出するフットカバーであって(足甲は被覆しても被覆しなくてもいずれでも構わない)1以上(ここでは2枚であって足底部102D、足甲部102C、爪先部102Bおよび爪先側側辺部(側辺部の爪先側)102Aが第1の伸縮性生地102で形成され、踵側側辺部(側辺部の踵側)104Aおよび踵部104Bが第1の伸縮性生地102とは別の第2の伸縮性生地104で形成されている(ただし足甲部102Cは任意的構成)。これら2枚の伸縮性生地(第1の伸縮性生地102および第2の伸縮性生地104)を所定の位置で接合することにより、フットカバー100は、足底部102D、側辺部(より詳しくは爪先側側辺部102Aおよび踵側側辺部104A)、踵部104Bおよび少なくとも爪先を覆う爪先部102B(ここでは任意的な構成としてさらに足甲を覆う足甲部102C)で形成され、足を出し入れするための開口部が足底部102Dに対して上下反対側に設けられている。
【0022】
任意的構成として説明した足甲部102Cはこのフットカバー100においては爪先部102Bを足首側へ伸ばして開口部の開口面積を少なくすることにより形成されており、足甲がこの足甲部102Cで覆われることになる。ここで、任意的構成である足甲部102Cを備えないフットカバー100は、着用者の足Fの爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーとなり、フットカバー100を着用してパンプス等を履いた時にパンプス等からフットカバー100が見えない(見えにくい)ように履き口である開口部が大きくカットされた(足甲部102Cが任意的構成であるためにこのように開口部が大きくカットされた形状に本発明に係るフットカバーの形状が限定されるものではないが)薄手の伸縮性生地で形成されている。このようなフットカバーであると、(足甲部102Cを備えない浅履きまたは超浅履きと呼ばれる)フットカバーを着用してさらにパンプス(履き口である甲部分が大きく開いている主として婦人用の靴)等の靴を履いても靴の内側にフットカバーが隠れて見えなくなる(見えなくなることには見えにくくなることを含む)点で好ましく、(足甲部102Cを備える深履きまたは超深履きと呼ばれる)フットカバーを着用してさらにスニーカー等の靴を履いても靴の内側にフットカバーが隠れて見えなくなる(見えなくなることには見えにくくなることを含む)点で好ましい。なお、本実施の形態に係るフットカバー100は、足甲部102Cを備える深履きまたは超深履きと呼ばれるフットカバーである。
【0023】
また、以下に示すフットカバー100は左右共用であって、左右共用であるために左右を履き間違いすることがない点で好ましい。このように左右共用であることは、たとえば、実際に着用しない状態(左右対称性の説明のために仮に着用した状態)の片足分のフットカバー100の裏面図(図4)においても、実際に着用しない状態(左右対称性の説明のために仮に着用した状態)のフットカバー100の上面図(図4の紙面裏側から紙面表側を見た開口部の開口形状が見える状態の図)においても、後述する爪先別生地112を含めて、このフットカバー100は図4に示す一点鎖線を線対称の中心線(対称軸)として(片足側のみでの)左右対称形状を備える。
【0024】
なお、フットカバーが左右共用でない場合には、左足用と右足用とは左右一対の両足分が左右対称形状を備える。ここで、フットカバー100の本体(足底部102D、側辺部(爪先側側辺部102Aおよび踵側側辺部104A))、踵部104Bおよび爪先部102B)を形成する伸縮性生地は1以上であれば生地枚数は限定されるものではない(このフットカバー100において生地枚数は2枚)。さらに、フットカバー100の本体を立体的な形状に形成する伸縮性生地の端縁どうしの接合方法については、特に限定されるものではなく、接着テープによる接着であっても縫製による縫着であってもそれ以外であっても構わず(このフットカバー100においては縫着であるが縫合線と記載しないで接合線と以下において記載する)、特に限定されるものではない。また、接着の場合には、帯状部材の一面に接着剤が塗布された接着テープを用いて加熱することにより接着剤が溶融して生地を熱接着して生地どうしを接合するものが好ましく、この場合の接合には、熱圧着によるもの、熱溶着によるもの、熱融着によるもの等を含むものになる。さらに、このフットカバー100を形成する伸縮性生地(第1の伸縮性生地102および第2の伸縮性生地104)は、周縁である編地端の端縁周囲のほつれ止め後処理が不要な切りっぱなし仕様の伸縮性生地が好ましい。
【0025】
そして、特徴的であるのは、少なくとも足底部102Dの爪先側(このフットカバー100においては足底部102Dの全体)と爪先部102Bとが1枚の伸縮性生地(第1の伸縮性生地102)で形成され、足底部102Dから爪先部102Bへ爪先を包むように立ち上がり、足底部102Dの立ち上がり部分(図3(A)および図4に示す長さL部分)以外において足底の形状に沿った接合線106を備え、立ち上がり部分に接合線を備えない。
【0026】
さらに、特徴的であるのは、(一部は上述したが)このフットカバー100は、足底部102D、爪先側側辺部102Aおよび爪先部102B(ならびに任意的構成である足甲部102C)が第1の伸縮性生地102で形成され、踵側側辺部104Aおよび踵部104Bが第1の伸縮性生地102とは別の第2の伸縮性生地104で形成され、足底部102Dにおいて、爪先部102Bの先端(図3(A)および図4に示す長さL部分)以外に図4に示すように足底の形状に沿った足底形状に略等しい形状の接合線106を備え、先端(図3(A)および図4に示す長さL部分)に接合線106を含めていかなる接合線も備えない。
【0027】
なお、このフットカバー100においては、
・第1の伸縮性生地102どうしを接合することになる、足底部102D(の爪先側略半分)と爪先部102Bおよび爪先側側辺部102Aとが(爪先先端部の長さLで示される部分以外の爪先側の)接合線106により接合され、
・第1の伸縮性生地102と第2の伸縮性生地104とを接合することになる、足底部102D(の踵側略半分)と踵側側辺部104Aおよび踵部104Bとが(踵側の)接合線106により接合され、
・第1の伸縮性生地102と第2の伸縮性生地104とを接合することになる、爪先側側辺部102Aと踵側側辺部104Aとが接合線108により接合され、
て、立体的形状を備えるフットカバー100が形成される。
【0028】
さらに、特徴的であるのは、このフットカバー100を形成する1以上の伸縮性生地(このフットカバー100においては第1の伸縮性生地102と第2の伸縮性生地104との2枚)とは異なる爪先別生地112が、接合線106を備えない部分を含めて、足底部102Dから爪先部102Bへ爪先を包むように設けられている。ここで、このフットカバー100においては、この爪先別生地112は、爪先部102Bの肌当接面に設けられている。
【0029】
ここでは、爪先別生地112が爪先部102Bに接着剤により接着されている。また、このように爪先別生地112が爪先部102Bに接着剤により(爪先別生地112の裏面(爪先部102B側の面)に高性能の生地用接着剤が線ではなく全面的に塗布されて)接着された後に、任意的構成であるが、フットカバー100自体の立体的形状を形成するための接合線106によりフットカバー100自体を形成する伸縮性生地(第1の伸縮性生地102および第2の伸縮性生地104)に爪先別生地112が接合(縫着)されている。このような任意的構成を備えた場合であっても、図1図5に示すように、このフットカバー100の爪先別生地112における足裏側にも足甲側にも接合線(縫着線も(面としては存在するが)線としての接着線も)が存在しない。さらに、接合線106によりフットカバー100自体を形成する伸縮性生地に爪先別生地112が接合(縫着)されているという上述した任意的構成を備えない場合には、このフットカバー100の爪先別生地112においてはどの部位にも接合線(縫着線も(面としては存在するが)線としての接着線も)が存在しないことになる。上述した任意的構成を備える場合であっても備えない場合であっても、爪先別生地112を爪先部102Bに接着すると(さらに爪先別生地122に周縁である編地端の端縁周囲のほつれ止め後処理が不要な切りっぱなし仕様の生地を採用するとなおさら)、高性能な(強力な)生地用接着剤で貼付しているために、フットカバー100の外観が非常にすっきりとした仕上がりになる点で好ましい。
【0030】
ここで、この爪先別生地112に関して特徴的であるのは、この爪先別生地112は、伸縮性生地(第1の伸縮性生地102および第2の伸縮性生地104)よりも(以下における(1)~(6)において比較対象は同じ第1の伸縮性生地102および第2の伸縮性生地104)、(1)強度がある生地、(2)滑りやすい生地、(3)断熱性がある生地、(4)クッション性がある生地、(5)抗菌性がある生地、および、(6)消臭効果がある生地の少なくともいずれかである。
【0031】
ここで、この爪先別生地112に関して特徴的であるのは、この爪先別生地112は、図1図4に示すように、上下方向および左右方向から爪先を包むように設けられている。
ここで、この爪先別生地112に関して特徴的であるのは、この爪先別生地112は爪先部102Bの肌当接面に設けられ、フットカバー100を裏返して平面にフットカバー100の側面を観測可能に載置した後に平面に載置されたフットカバー100に透明な平板に押し当てた状態(以下においてこの状態を平面載置圧迫側面視の状態と記載する場合がある)における爪先別生地112の形状が、図5(A)に示すように、四辺形で、かつ、足底の形状に沿った接合線106を線対称の中心線(対称軸)とした線対称の形状を備えることができる。
【0032】
ここで、この図5(A)に示すような形状を爪先別生地112が備えることができるとは、平面載置圧迫側面視の状態で爪先別生地112が接合線106を線対称の中心線とした線対称の形状になるように、フットカバー100を平面載置圧迫側面視することができることを意味する。
平面載置圧迫側面視の状態において、爪先別生地112の形状がこのような接合線106を線対称の中心線とした線対称の形状になるようには、どのようにしても平面載置圧迫側面視できないフットカバーは本発明に係るフットカバーとは異なるものである。逆に、接合線106を線対称の中心線とした線対称の形状に爪先別生地112の形状がなるように平面載置圧迫側面視ができさえすればそのフットカバーは本発明に係るフットカバーである。
【0033】
ここで、この爪先別生地112に関して特徴的であるのは、平面載置圧迫側面視の状態における爪先別生地112の形状が、図5(B)に示すように、四辺形で、かつ、足底の形状に沿った接合線106上に四辺形の対向する2頂点(ここでは点P(2)および点P(4))が存在するとともに、四辺形の頂点どうしを結んだ2直線(ここでは点P(1)と点P(3)とを結んだ直線と点P(2)と点P(4)とを結んだ直線)の交点Pを点対称の中心点とした点対称の形状を備えることができる。
【0034】
ここで、この図5(B)に示すような形状を爪先別生地112が備えることができるとは、平面載置圧迫側面視の状態で爪先別生地112が点Pを点対称の中心点とした点対称の形状になるように、フットカバー100を平面載置圧迫側面視することができることを意味する。
平面載置圧迫側面視の状態において、爪先別生地112の形状がこのような点Pを点対称の中心点とした点対称の形状になるようには、どのようにしても平面載置圧迫側面視できないフットカバーは本発明に係るフットカバーとは異なるものである。逆に、点Pを点対称の中心点とした点対称の形状に爪先別生地112の形状がなるように平面載置圧迫側面視ができさえすればそのフットカバーは本発明に係るフットカバーである。
【0035】
なお、このフットカバー100においては、開口部の周縁の全部に(全周に亘って)フットカバー100が足Fから脱げたりずれたりすることを防止するために適度な伸縮性を備えた5mm~15mm程度の伸縮性細幅生地118(第1の伸縮性生地102側)および伸縮性細幅生地114(第2の伸縮性生地104側)を(たとえば熱可塑性接着剤により生地の内側(肌当接側)に熱接着)設けている。しかしながら、開口部の少なくとも一部に伸縮性細幅生地118および/または伸縮性細幅生地114を設けるようにしても構わない。また、これらの伸縮性細幅生地118および伸縮性細幅生地114は内側(肌当接側)に設けられている理由は、これらの伸縮性細幅生地118および伸縮性細幅生地114を目立たせないようにするためである。
【0036】
ここで、これらの伸縮性細幅生地118および伸縮性細幅生地114の一例として、ナイロン製テープを挙げることができる。また、これらの伸縮性細幅生地118および伸縮性細幅生地114をこのフットカバー100(の少なくとも一部)を構成する伸縮性生地と同じ生地にすることも好ましい。
さらに、このフットカバー100の踵部104Bの上縁において、フットカバー100の内側(足Fが接する側:肌側)には、シリコーン樹脂等の薄い透明のシートで形成された踵部滑り止め116を設けることも好ましい。これにより、足Fの踵との密着性を高めてフットカバー100が足Fの踵の部分からずれることをさらに防止することができる。ここで、この踵部滑り止め116は足肌に当接するために、足肌側から、この踵部滑り止め116、伸縮性細幅生地114、踵部104Bの第2の伸縮性生地104の順に形成されている。なお、この踵部滑り止め116は、本発明に係るフットカバーにおいて必須の構成ではない。
【0037】
さらに、足底部102Dにおいて、足Fが接する側と反対側(靴の一例であるパンプスやスニーカーを履いたときにパンプスやスニーカーの内底に接する側)には、シリコーン樹脂等の薄いシートで形成された足底部滑り止めを設けることも好ましい。これにより、パンプスやスニーカーの内底との密着性を高めてパンプス内やスニーカー内におけるフットカバー100の位置がずれることを防止できる。なお、この足底部滑り止めも、本発明に係るフットカバーにおいて必須の構成ではない。
【0038】
これらのシリコーン樹脂等の薄いシートは、踵部滑り止め116のように、着用者の足肌に直接触れる場合がある。このような場合においては、シリコーン樹脂の他に、たとえば、ノンシリコーン素材である、スチレン系熱可塑性エラストマーの(メッシュ)シート、ウレタン樹脂を編地に浸漬させたシートを用いることも、特定の化学物質であるシリコーン樹脂に対する耐性が弱い人にも好ましい点で優れている。
【0039】
以下に、このフットカバー100が奏する作用効果について説明する。
爪先別生地112を備えるか備えないかに関わらず、足底部102Dの爪先側(このフットカバー100においては足底部102Dの全体)と爪先部102Bとが1枚の伸縮性生地(第1の伸縮性生地102)で形成され、足底部102Dから爪先部102Bへ爪先を包むように立ち上がり、足底部102Dの立ち上がり部分(図3(A)および図4に示す長さL部分)以外において足底の形状に沿った接合線106を備え、立ち上がり部分に接合線を備えない。このように足指が当接する足底部102Dの立ち上がり部分に接合線を備えないために、感覚が敏感な足指先の不快感をできる限り抑制することができる。
【0040】
爪先補強等の機能向上のためにフットカバー100に、フットカバー100の立体的形状を形成する伸縮性生地(ここでは第1の伸縮性生地102および第2の伸縮性生地104)とは別の爪先別生地112を爪先部102Bに設ける場合には、このフットカバー100の爪先部102Bに(より詳しくは足底部102Dの立ち上がり部分(図3(A)および図4に示す長さL部分)接合線が存在しないために、爪先別生地112を爪先部102Bに接着(接着による接合)しても接合線が存在しないために接合線の部分における爪先別生地が浮いてフットカバー100の本体から爪先別生地が剥がれやすいという問題点を解決することができる。これにより、フットカバー100が爪先別生地112を好適に備えることができる。
【0041】
このフットカバー100は左右共用であって、爪先別生地112は左右方向に対称であること(図4に示す一点鎖線を線対称の中心線(対称軸)として(片足側のみでの)左右対称形状であること)に加えて、図5(A)に示す上下方向に線対称、または、図5(B)に示す上下方向に点対称である。そして、爪先部102Bにおいて、爪先別生地112が足底部102Dから爪先部102Bへ上下方向および左右方向から爪先を包みこむように肌当接側に設けられる。この際、爪先別生地112は、上下方向の対称性により足指の足甲側と足裏側とで、および、足指の親指側と小指側とで同じ形状または略同じ形状であるために(着用前は同じ形状であり着用後は足の形状により変形するので略同じ形状であってこれらをまとめて略同じ形状と記載する)爪先別生地112が爪先部102Bの肌当接側に設けられていても足指への違和感を少なくすることができる。
【0042】
また、この爪先別生地112を伸縮性生地(第1の伸縮性生地102および第2の伸縮性生地104)よりもたとえば(爪先補強を兼ねて)厚い生地を採用することにより、フットカバー100を履いたときに(靴を履いていない状態で)足指の形状が外観上見えないので(爪先別生地112を肌当接側に設ければ爪先別生地112も外観上見えないので)すっきりしており外観上非常に美しい。
【0043】
さらに、この爪先別生地112を設けるにあたりフットカバー100の外観をすっきりさせるために、この爪先別生地112を伸縮性生地(ここでは爪先部102Bを形成する第1の伸縮性生地102)に縫着(縫合)ではなく接着させる際に、接合線が存在しないために接合線の部分における爪先別生地112が浮いてフットカバー100の本体から爪先別生地112が剥がれやすいという問題点を解決できるとともに、爪先別生地112が縫着されていないためにフットカバー100の外観をすっきりさせることができる。
【0044】
以上のようにして、本実施の形態に係るフットカバーによると、着用してパンプス(履き口である甲部分が大きく開いている主として婦人用の靴)やスニーカー(男女の性別を問わないいわゆる運動靴)等の靴を履くとその靴の内側に隠れて見えなくなる((見えにくくなる)とともに、感覚が敏感な足指先の不快感をできる限り抑制するともに、(任意的ではあるが)フットカバーの立体的形状を形成する伸縮性生地とは別生地を爪先部に好適に備えることができる。
【0045】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、着用してさらに靴を履くとその靴の内側に隠れて見えなくなるまたは見えにくくなるフットカバーに好適であり、感覚が敏感な足指先の不快感をできる限り抑制するともに、(任意的ではあるが)フットカバーの立体的形状を形成する伸縮性生地とは別生地を爪先部に好適に備えることができる点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0047】
100 フットカバー
102 第1の伸縮性生地
102A 爪先側側辺部
102B 爪先部
102C 足甲部
102D 足底部
104 第2の伸縮性生地
104A 踵側側辺部
104B 踵部
112 爪先別生地
F 足
図1
図2
図3
図4
図5