(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】処理液、インクジェットインクセット、及び印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20250203BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250203BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20250203BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20250203BHJP
【FI】
B41M5/00 132
B41M5/00 120
B41M5/00 112
B41M5/00 114
B41J2/01 123
C09D11/54
C09D11/30
(21)【出願番号】P 2021158265
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2024-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】浦野 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正規
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 涼
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-193230(JP,A)
【文献】特開2019-65087(JP,A)
【文献】特開2013-163370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00
B41J 2/01
C09D 11/54
C09D 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式によって基材に付与される処理液であって、
水、凝集剤、及び界面活性剤を含み、
前記凝集剤は、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物及びジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーを質量比で20:80~90:10で含み、
前記界面活性剤は、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤を含む、処理液。
【請求項2】
前記脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物及び前記ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーは質量比で35:65~50:50である、請求項1に記載の処理液。
【請求項3】
沸点が70~250℃であるアミン化合物をさらに含む、請求項1又は2に記載の処理液。
【請求項4】
前記シリコーン系界面活性剤は、側鎖型変性シリコーン系界面活性剤を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の処理液と、水性インクジェットインクとを含む、インクジェットインクセット。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の処理液をインクジェット方式によって基材に付与する工程、及び水性インクジェットインクをインクジェット方式によって前記処理液が付与された基材にウェットオンウェット法で付与する工程を含む、印刷物の製造方法。
【請求項7】
前記基材は非浸透性基材である、請求項6に記載の印刷物の製造方法。
【請求項8】
前記基材は浸透性基材である、請求項6に記載の印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液、インクジェットインクセット、及び印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録システムは、流動性の高い液体インクを微細なノズルから噴射し、基材に付着させて印刷を行う印刷システムである。このシステムは、比較的安価な装置で、高解像度、高品位の画像を、高速かつ低騒音で印刷可能という特徴を有し最近急速に普及している。インクとしては、安価に高画質の印刷物が得られることから、水性タイプのインクが普及している。水性インクは、水分を含有することにより乾燥性を高めたインクであり、さらに環境性に優れるという利点もある。
【0003】
バインダー樹脂を含む水性インクを用いる印刷方法では、印刷物の乾燥によってバインダー樹脂が成膜することで画像の定着性が得られ、各種基材への印刷が可能になる。特許文献1には、特定の酸性基を有する溶解性樹脂、表面張力が25mN/m以上40mN/m以下の溶剤、シリコーン系もしくはフッ素系の界面活性剤を含む水性インクジェットインクをメディアを加熱しながら印刷することで、布帛、非吸水性記録メディア等の吸水性の異なるメディアに対応させる方法が提案されている。
【0004】
水性インクを印刷する前に、基材を前処理する方法がある。基材の前処理方法としては、基材に前処理液をローラー塗布、スプレー塗布、ワイヤーバーコータ等で一定領域に付与する方法がよく知られている。近年では、基材に前処理液をインクジェット方式で付与する方法が研究されている。
【0005】
特許文献2には、反応液及び水性インクを同じ記録ヘッドに搭載したそれぞれのノズル列から吐出してインクジェット記録する方法において、水性インクに対する反応液の吐出量を所定のバンド内の走査方向の位置に応じて変化させることで、反応液が着弾時間差によって記録媒体により多く浸透する位置では反応液及び水性インクの反応量を多くするように制御し、バンド内で色ムラを少なくする方法が提案されている。
【0006】
特許文献3には、反応液及び水性インクをインクジェット法により記録媒体に付着させる方法において、反応液が凝集剤、水、及び界面活性剤を含み、界面活性剤の含有量を反応液の総質量に対し2~10質量%とし、反応液に含まれる界面活性剤の含有量と、水性インクに含まれる界面活性剤の含有量との記録媒体上での割合を規定することで、反応液及び水性インクを記録媒体上で濡れ広がりやすくし、印刷物でのピンホールの発生を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】再公表2008-102722号公報
【文献】特開2005-119115号公報
【文献】特開2019-65087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水性インクは、水を含むことから表面張力が高く、さらに水溶性有機溶剤を含む場合は水素結合により乾燥時間が長くなる傾向がある。そのため、表面自由エネルギーが低い基材へ水性インクを付与すると基材がインクを弾き乾燥時間を要する問題がある。さらに、このような基材に合わせて水性インクの成分を調節する場合では、その他の浸透性が異なる基材に対して画質を維持して印刷することが難しくなる問題がある。特許文献1に開示の方法では、非吸水性記録メディアに対する濡れ広がりを確保しながら、インク混じりによる画質低下を防止することは相反する作用であるため、より濡れ性が悪い基材への均一塗工が十分ではなく、特にベタ画像での画像ムラが発生する問題がある。
【0009】
前処理液をインクジェット方式で付与する場合は、前処理液を基材に均一に付与することが難しく、不均一に前処理された基材に水性インクを用いて印刷すると画質が低下することがある。
特許文献2に開示の方法では、バンド方向の画像ムラが抑制され得るが、印刷システムの制御が複雑になるだけではなく、基材の材質によっては画像ムラが十分に抑制されないことがある。さらに、基材上でのインク成分の凝集を促し細字再現性等の画質を改善するためには、前処理液の凝集剤をより選別することが望まれる。
特許文献3に開示の方法は、反応液及び水性インクを記録媒体上で濡れ広がりやすくするために界面活性剤の種類及び使用量が検討されるが、前処理剤により強力な凝集剤を用いる場合に前処理剤を充填したインクジェットヘッドの放置後の吐出回復性能まで検討されていない。前処理液にカチオン性が強いポリマーが含まれる場合、ポリマーが結晶化しノズル目詰まりの原因となることがある。このポリマーの結晶化は、界面活性剤との相互作用によっても引き起こされ得るため、基材上での前処理液の濡れ広がりとともに放置後の吐出回復性能が改善されるように凝集剤を選別することが望まれる。
【0010】
本発明の一目的としては、インクジェット方式によって付与可能であり、インクジェットヘッドの放置後の吐出回復性能に優れる処理液であり、さらに水性インクによって高画質な画像を形成可能に各種基材に適用可能である処理液、この処理液と水性インクを備えるインクジェットインクセット、及びこの処理液と水性インクを用いる印刷物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面は、インクジェット方式によって基材に付与される処理液であって、水、凝集剤、及び界面活性剤を含み、前記凝集剤は、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物及びジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーを質量比で20:80~90:10で含み、前記界面活性剤は、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤を含む、処理液である。
本発明の他の側面は、上記処理液と、水性インクジェットインクとを含む、インクジェットインクセットである。
本発明のさらに他の側面は、上記処理液をインクジェット方式によって基材に付与する工程、及び水性インクジェットインクをインクジェット方式によって前記処理液が付与された基材にウェットオンウェット法で付与する工程を含む、印刷物の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、インクジェット方式によって付与可能であり、インクジェットヘッドの放置後の吐出回復性能に優れる処理液であり、水性インクによって高画質な画像を形成可能に各種基材に適用可能である処理液、この処理液と水性インクを備えるインクジェットインクセット、及びこの処理液と水性インクを用いる印刷物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を一実施形態を用いて説明する。以下の実施形態における例示が本発明を限定することはない。
【0014】
一実施形態による処理液は、インクジェット方式によって基材に付与される処理液であって、水、凝集剤、及び界面活性剤を含み、凝集剤は、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物及びジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーを質量比で20:80~90:10で含み、界面活性剤は、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤を含むことを特徴とする。
これによれば、インクジェット方式によって付与可能であり、インクジェットヘッドの放置後の吐出回復性能に優れる処理液であり、水性インクによって高画質な画像を形成可能に各種基材に適用可能である処理液を提供することができる。
【0015】
水性インクにおいて顔料等は静電反発及び立体障害によって分散しているが、水性インクの付与前又は付与後において、凝集剤を基材に付与することで、基材上で水性インク中の顔料等の静電反発力が抑制されて顔料等が凝集し、インクの流動性を損失させることができる。これによって、基材上でインク滴同士の合一、インクの過浸透等を抑制することができる。処理液をインクジェット方式で付与することで、印刷領域のみに処理液を付与可能であり、さらには印刷画像と重なる部分のみに処理液を付与することも可能である。また、処理液と水性インクとをともにインクジェット方式で基材に付与することで印刷システムを単純化することができる。
【0016】
ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーは、カチオン性ポリマーの一種であり、基材上で水性インクを凝集させて、凝集剤として機能する。ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーは、疎水性が高いことを一つの要因として、ヘッド放置により水や中和剤が揮発すると結晶化が起こり、処理液の不吐出を引き起こすことがある。特にフッ素系界面活性剤等の極性が低い成分が処理液中に存在すると、その傾向が顕著になる。本開示では、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーによる凝集作用を用いながらも、不吐出を引き起こす結晶化を防止する方法を見出した。
脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物とジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーとを質量比で20:80以上で、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物が多い比率で含まれることで、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーに起因する結晶化が抑制され、放置後の吐出回復性能を向上することができる。原理については定かではないが、次のように推測される。脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物は親水性が高く、水や中和剤が多少揮発しても析出は起こりにくい。また、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物は、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーと同じく分子骨格に窒素原子を有するため、ポリマー同士が相互作用しやすく、分子間の距離も近くなりやすいと考えられる。そのため、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物とジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーとが処理液中に混合状態で含まれる場合は、水やジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマー由来の中和剤が揮発しても、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物がジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーに中和剤を供給し溶解性の低下を防止したり、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマー分子同士の隙間に入り込むことで、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーに起因する結晶化を抑制していると考えられる。
【0017】
一実施形態による処理液は各種基材に適用可能であり、水性インクによって高画質な印刷物を提供することができる。画質のポイントは、第1に処理液の基材への均一な付与と基材上でのインク成分の均一な凝集であり、第2にインク成分との適切な反応速度である。これにより、画像のひび割れを防止し、画像ムラが少ない高画質な画像を得ることができ、また、画像濃度の高い高画質な画像を得ることができる。
【0018】
処理液に含まれる脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物及びジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーはそれぞれ凝集剤として作用する。特にジアリルジメチルアンモニウムハライド系ポリマーは、基材上で処理液と水性インクとが十分に混和してからインク成分が凝集することで、インク成分の均一な凝集を引き起こすことができる。基材上で処理液と水性インクとが十分に混和せずに凝集する状態では、インク成分が過度に凝集剤と反応して凝集している部分と、インク成分が凝集剤とほとんど反応せずに凝集していない部分とが混在するようになる。これにより、基材上にインク成分の凝集している部分と凝集していない部分との混在によって画像ムラを引き起こすことがある。さらに、バインダー樹脂である水分散性樹脂を含むインクでは、基材上で樹脂粒子同士の距離が近い部分(凝集している部分)と遠い部分(凝集していない部分)とが混在するため、水性インク付与後の乾燥工程において成膜が不均一になり、画像のひび割れが引き起こされる場合がある。
ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーが有する環状アミン骨格は、色材等の分散性能を持つ。これより、カチオン性基による凝集性能と合わせ、インクの凝集性能を比較的緩やかにしていると考える。また、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーのみでは、基材上でのインク成分の凝集性が緩やかであり、細字再現性等が劣る場合がある。一方で、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物は、親水性が高く水溶液中に広がりやすい性質を備えるため、インク成分との反応点であるアミノ基がインク中の粒子と触れやすくなり、結果としてインク成分と凝集剤の反応が促進される。そのため、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物とジアリルジメチルアンモニウムハライド系ポリマーとを併用することで画質、特に細字再現性をより一層向上することができる。
【0019】
処理液にフッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が含まれることで、処理液を基材に付与後に、処理液が基材上で迅速に濡れ広がり、処理液を基材に均一に付与することができる。
フッ素系界面活性剤は気液界面に配向し、シリコーン系界面活性剤は基材との界面に配向する傾向があることから、処理液の基材への接触角を著しく低下することができると考えられる。さらに、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が含まれることで、フッ素系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤が会合体を形成して、効率的に基材との接触角を低下することができると考えられる。例えば、フッ素系界面活性剤が基材との界面には配向し難くても、フッ素系界面活性剤がシリコーン系界面活性剤と会合体を形成することで、基材との界面にも配向し易くなり、基材との界面に均一に界面活性剤が分布するようになり、基材に対する濡れ性を高めていると考えられる。
【0020】
処理液が付与される基材は浸透性基材及び非浸透性基材のいずれであってもよい。非浸透性基材の場合、一実施形態によれば、処理液は基材上に濡れ広がりやすく、基材上でインク成分と凝集剤とが均一に凝集しやすいことから、画像のひび割れがなく画像ムラが少ない均一な画質であって、さらに基材上で凝集作用が十分に得られることから優れた細字再現性の画質を得ることができる。浸透性基材も優れた画質を得ることができる。浸透性基材の場合、基材上でのインク成分と処理液との反応速度がより高いことが望まれる。基材上でのインク成分と処理液の反応速度が遅いと、インクが基材内部に過浸透してしまい、画像濃度が低下することがある。脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物は前述した通り親水性が高いことから、基材上で湿潤状態でインク成分との反応速度が速く、浸透性基材において画像濃度を高めることができる。
【0021】
「処理液」
処理液は、インクジェット方式によって基材に付与されるものであり、水、凝集剤、及び界面活性剤を含むことができる。この処理液は、水性インクによる印刷の前に基材に付与して用いることができ、より具体的には水性インクジェットインクによる印刷の前に基材に付与して用いることができる。
【0022】
処理液は、凝集剤として、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物及びジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーを含む。処理液が基材に付与されることで基材上に凝集剤が付与され、基材上の凝集剤は、その後に付与される水性インクの色材等の成分を凝集させ、高画質な画像を形成することができる。
【0023】
脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物は、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとを含む混合物を重縮合して得ることができる。脂肪族アミンとしては、脂肪族モノアミン、脂肪族ポリアミン等が挙げられる。
脂肪族アミンとしては、モノアルキルモノアミン、ジアルキルモノアミン、アルキレンジアミン、アルカノールアミン、ポリアルキレングリコールアミン、グリコールエーテルアミン等が挙げられる。具体的には、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン等のアルキルモノアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン等のアルキレンジアミン;モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、1-アミノ-2-プロパノール、ジ-2-プロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;ジエチレングリコールアミン、トリエチレングリコールアミン等のポリアルキレングリコールアミン;2-(2-メトキシエトキシ)エチルアミン、2-メトキシエチルアミン等のグリコールエーテルアミン等が挙げられる。脂肪族アミンは、アルキルアミンであることが好ましく、アルキルモノアミンであることがより好ましい。
エピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられる。
さらに、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物は、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとアンモニアとの重縮合物をも含む。
脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物は、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとを重縮合したものであってよいが、ハロゲン原子を有機酸等に置換したものであってもよい。
【0024】
脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物は、4級アンモニウム塩であることが好ましく、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物の構成ユニットにおける2級又は3級アンモニウム塩の比率が低いことが好ましく、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物の構成ユニットにおいてカチオン性基の構成ユニットはすべて4級アンモニウム塩であることがより好ましい。これによって、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物と、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーとが相互作用することに伴って、異物が発生してしまうこともさらに防止し、放置後の吐出回復性能をより高めることができる。脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物は、ジアルキルモノアミンとエピハロヒドリンとの重縮合物が好ましく、ジアルキルモノアミンとエピハロヒドリンとともにさらにアンモニア又はアルキレンジアミンとを含む重縮合物であってもよい。ジアルキルモノアミンとしてはジメチルアミンが好ましく、アルキレンジアミンとしてはエチレンジアミンが好ましい。エピハロヒドリンとしてはエピクロルヒドリンが好ましい。これによって、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーとの相互作用がより高まり、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーに起因する結晶化をより防止して、放置後の吐出回復性能をより高めることができる。
具体的には、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物は、脂肪族アミン-エピハロヒドリン重縮合物、脂肪族アミン-アンモニア-エピハロヒドリン重縮合物が好ましく、脂肪族アミン-エピハロヒドリン重縮合物がより好ましい。より具体的には、ジメチルアミン-エピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルアミン-アンモニア-エピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルアミン-エチレンジアミン-エピクロルヒドリン重縮合物が好ましく、ジメチルアミン-エピクロルヒドリン重縮合物がより好ましい。
【0025】
脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物の重量平均分子量(Mw)は、1,000~200,000が好ましく、2,000~100,000がより好ましい。脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物の重量平均分子量(Mw)は、吐出性の観点から、50,000以下が好ましく、10,000以下がさらに好ましい。
本開示において、ポリマーの重量平均分子量は、GPC法で標準ポリスチレン換算で求めた値である。以下同じである。
【0026】
脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物の市販品例は、センカ株式会社製の「ユニセンスKHE1000L、ユニセンスKHE100L、ユニセンスKHE101L、ユニセンスKHE102L、ユニセンスKHE105L」等のジメチルアミン-アンモニア-エピクロルヒドリン重縮合物、センカ株式会社製の「ユニセンスKHE104L」等のジメチルアミン-エピハロヒドリン重縮合物、四日市合成株式会社製の「カチオマスターPE-30」等のジメチルアミン-エチレンジアミン-エピクロルヒドリン重縮合物等が挙げられる。
【0027】
ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーは、ジアリルジアルキルアンモニウムハライドの単独重合体、ジアリルジアルキルアンモニウムハライドと、これと重合可能なモノマーとの共重合体等が挙げられる。ジアリルジアルキルアンモニウムハライドと重合可能なモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、二酸化硫黄、メチルジアリルアミン等のアルキルジアリルアミン等が挙げられる。
ジアリルジアルキルアンモニウムハライドは、ジアリルジメチルアンモニウムハライド、ジアリルジエチルアンモニウムハライド等が挙げられるが、ジアリルジメチルアンモニウムハライドが好ましい。ジアリルジアルキルアンモニウムハライドは、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドがより好ましい。
ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーは、ジアリルジアルキルアンモニウムハライドを単独重合又はその他のモノマーと共重合したものであってよいが、ハロゲン原子を有機酸等に置換したものであってもよい。
なお、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物とジアリルジメチルアンモニウムハライド系ポリマーとは共通する中和剤を用いることで水性媒体中で相互作用をより高めることができることから、一方がハロゲンであれば他方もハロゲンが好ましく、一方が有機酸であれば他方も有機酸が好ましい。より好ましくは両方の中和剤が塩素である。
【0028】
ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーの具体例は、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド単独重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・メチルジアリルアミン共重合体等が挙げられる。
【0029】
ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1,000~200,000が好ましく、3,000~100,000がより好ましく、5,000~10,000がさらに好ましい。ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、吐出性の観点から、50,000以下が好ましく、10,000以下がさらに好ましい。
【0030】
ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーの市販品例は、ニットーボーケミカル株式会社製の「PAS-H-1L、PAS-H-5L、PAS-H-10L」、センカ株式会社製の「ユニセンスFPA100L」等のジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体、ニットーボーケミカル株式会社製の「PAS-A-1、PAS-A-5」等のジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄共重合体等が挙げられる。
【0031】
脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物(E)とジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマー(D)との質量比(E:D)は、20:80~90:10が好ましく、30:70~80:20がより好ましく、35:65~50:50がより好ましい。
この質量比(E:D)の範囲で脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物の比率が多いことで、放置後の吐出回復性能を改善し、印刷物の画質、特に浸透性基材での画像濃度をより高めることができる。
この質量比(E:D)の範囲でジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーの比率が多いことで、印刷物の画質、特に非浸透性基材での均一な画質及び細字再現性をより高めることができる。
【0032】
脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物の含有量は、処理液全量に対し、有効成分量で、0.5~15質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましく、1~5質量%がさらに好ましい。
ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーの含有量は、処理液全量に対し、有効成分量で、0.5~15質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましく、1~5質量%がさらに好ましい。
脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物とジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーの合計量は、処理液全量に対し、有効成分量で、1~20質量%が好ましく、5~10質量%がより好ましい。
処理液には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記した凝集剤以外のその他の凝集剤が含まれてもよい。
【0033】
処理液は、界面活性剤として、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤を含むことができる。処理液がこれらの界面活性剤を含むことで、基材と処理液の親和性をより高めて、基材に処理液をより均一に付与することができ、その後に付与される水性インクによる画像の均一性を高めることができる。
【0034】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルアルキレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルカルボン酸エステル、パーフルオロアルキル4級アンモニウム塩、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物、パーフルオロアルキルベタイン等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤はノニオン性フッ素系界面活性剤が好ましく、パーフルオロアルキルアルキレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキル基含有オリゴマーがより好ましい。パーフルオロアルキルアルキレンオキサイド付加物としては、パーフルオロアルキレンエチレンオキサイド付加物がより好ましい。ノニオン性フッ素系界面活性剤は、上述した会合体を形成しやすく、処理液をより均一に基材に付与することができる。
【0035】
フッ素系界面活性剤の市販品例としては、「サーフロンS-242、サーフロンS-243」等のパーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、「サーフロンS-386」等のパーフルオロアルキル基含有オリゴマー等が挙げられる。
【0036】
フッ素系界面活性剤は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。フッ素系界面活性剤は、処理液全量に対し、有効成分量で、0.1~5質量%が好ましく、0.5~3質量%がより好ましい。
【0037】
シリコーン系界面活性剤は、ポリシロキサン骨格に変性基が導入される化合物を用いることができる。変性基は、ポリシロキサン骨格の末端位置及び側鎖位置の一方又は両方に導入されていてもよいが、ポリシロキサン骨格の側鎖位置に変性基が導入されている側鎖型変性シリコーン系界面活性剤が好ましい。側鎖型変性シリコーン系界面活性剤を用いることで、前述したフッ素系界面活性剤との会合体を形成しやすくなり、処理液をより均一に基材に付与することができる。
シリコーン系界面活性剤の具体例としては、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル変性シリコーン系界面活性剤、フェニル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル・アラルキル共変性シリコーン系界面活性剤、アクリル変性シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。なかでも、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が好ましい。さらに、シリコーン系界面活性剤はノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0038】
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリシロキサン骨格にポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を用いることができる。この化合物において、ポリアルキレングリコール鎖は、ポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖、ポリエチレン・プロピレングリコール鎖、ポリトリメチレングリコール鎖等であってよいが、好ましくはポリエチレングリコール鎖である。ポリアルキレンオキサイドの付加モル数は、5~20が好ましく、8~15がより好ましい。
【0039】
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、トリシロキサン骨格又はテトラシロキサン骨格の少なくとも1つのケイ素原子にポリアルキレングリコール鎖が導入される化合物が好ましい。この界面活性剤において、シロキサン骨格に結合するメチル基は、炭素数2以上のアルキル基等のその他の疎水性基に置換されてもよい。好ましくは、トリシロキサン骨格の3位のケイ素原子に1個又は2個のポリアルキレングリコール鎖が導入される化合物、テトラシロキサン骨格の3位及び5位のケイ素原子の一方又は両方に合計1~4個のポリアルキレングリコール鎖が導入される化合物等が挙げられる。より具体的には、3位にアルキレングリコール鎖が導入されたヘプタメチルトリシロキサン、3位又は5位にアルキレングリコール鎖が導入されたノナメチルテトラシロキサン、3位及び5位にアルキレングリコール鎖が導入されたオクタメチルテトラシロキサン等が挙げられる。
【0040】
シリコーン系界面活性剤の市販品例としては、例えば、「BYK-302、BYK-307、BYK-325、BYK-331、BYK-333、BYK-342、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-378」(いずれもビックケミー・ジャパン株式会社)、DOWSIL(登録商法)シリーズの「L-7001、L-7002、L-7604、FZ-2105、8032 ADDITIVE」(いずれも東レ・ダウコーニング株式会社)、「KF-6011、KF-6011P、KF-6013、KF-6004、KF-6043」(いずれも信越化学工業株式会社)、「ディスパロンAQ-7120、ディスパロンAQ-7130、ディスパロンAQ-7180」(いずれも楠本化成株式会社)、「シルフェイスSAG503A、シルフェイスSAG001、シルフェイスSAG002、シルフェイスSAG003、シルフェイスSAG005、シルフェイスSAG008」(いずれも日信化学工業株式会社)等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0041】
シリコーン系界面活性剤は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリコーン系界面活性剤は、処理液全量に対し、有効成分量で、0.1~5質量%が好ましく、0.5~3質量%が好ましい。
フッ素系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤の合計量は、処理液全量に対し、有効成分量で、0.1~10質量%が好ましく、1~3質量%がより好ましい。この合計量が10質量%以下、特に3質量%以下であることで、処理液の吐出性能をより改善することができる。フッ素系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤の質量比は、有効成分量で、1:10~10:1が好ましく、1:5~2:1がより好ましい。
【0042】
フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤は、いずれか一方が水溶性を示すことが好ましく、いずれも水溶性を示すことがより好ましい。
処理液には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記した界面活性剤以外のその他の界面活性剤が含まれてもよい。
【0043】
処理液は、水性溶媒として水を含むことが好ましく、主溶媒が水であってもよい。
水としては、特に制限されないが、イオン成分をできる限り含まないものが好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水等を用いるとよい。
水は、粘度調整の観点から、処理液全量に対して20~90質量%で含まれることが好ましく、30~80質量%で含まれることがより好ましく、40~70質量%がさらに好ましい。
【0044】
処理液は、水溶性有機溶剤を含むことができる。水溶性有機溶剤は、水と相溶性を示すことが好ましい。水溶性有機溶剤としては、濡れ性及び保湿性の観点から、室温で液体であり、水に溶解又は混和可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
水溶性有機溶剤の沸点は180~270℃が好ましい。水溶性有機溶剤の沸点が180℃以上、より好ましくは200℃以上であることで、処理液からの水溶性有機溶剤の蒸発を抑制して機上安定性をより改善することができる。水溶性有機溶剤の沸点が270℃以下であることで、水性インクの付与後に印刷物に残留する溶剤量を低減し、画像の耐久性をより改善することができる。この観点から、沸点が270℃を超える水溶性有機溶剤は、処理液全量に対し5質量%未満に制限することが好ましい。
【0045】
水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ヘキサンジオール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン等のアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールベンジルエーテル等のグリコールエーテル類;1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、β-チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。
水溶性有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、また、単一の相を形成する限り、2種以上混合して用いてもよい。
【0046】
水溶性有機溶剤は、濡れ性、保湿効果、粘度調節等の観点から、処理液全量に対し、1~80質量%で含ませることができ、10~50質量%であることがより好ましく、20~40質量%がより好ましい。
水溶性有機溶剤は、沸点が200~270℃であるグリコール類を含むことが好ましい。沸点が200~270℃であるグリコール類は、処理液全量に対し、10~60質量%であることが好ましく、20~40質量%がより好ましい。
【0047】
処理液は、アミン化合物をさらに含むことができる。処理液にアミン化合物が含まれることで、アミン化合物が防錆剤として機能し、印刷装置に処理液が装填される間に錆の発生を防止することができる。凝集剤である脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物及びジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーはいずれも中和剤として酸を含むため、インクジェットヘッドの金属部材に錆を発生させる可能性がある。処理液にアミン化合物がさらに含まれることで、金属部材の表面にアミン化合物が配向し、酸による金属部材の錆の発生を抑制することができる。さらに、ベンゾトリアゾールやアルキルナフタレンスルホン酸塩等の一般的な防錆剤ではなくアミン化合物を用いることで、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーとの反応が引き起こされることがなく、処理液からの異物発生を抑制できる。これらの理由により、処理液のヘッド放置後の吐出回復性能をより改善することができる。
【0048】
アミン化合物は沸点が250℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。沸点がこの範囲を示す揮発性のアミン化合物は、基材に付与された後に、印刷物表面から揮発して除去されて、印刷物上でのインク成分との相互作用が防止されるので、画像の耐久性をより改善することができる。
アミン化合物の沸点は70℃以上が好ましい。これによって、インクジェットノズルから揮発することを防止し、インクジェットノズル内の処理液中にアミン化合物が適当量で含まれる状態を維持し、防錆作用を十分に得ることができる。
例えば、アミン化合物の沸点は、70~250℃が好ましく、70~150℃がより好ましく、70~100℃がさらに好ましい。
【0049】
アミン化合物は、第1級アミン、第2級アミン、及び第3級アミンのいずれであってもよいが、第3級アミンがより好ましい。第3級アミンは、金属への吸着性が高く、さらに揮発性であることで画像の耐久性の低下を引き起こしにくいという利点がある。アミン化合物は、脂肪族アミン化合物であることが好ましく、具体的には、アルキルアミン、アルカノールアミン、アルキレンジアミン等が挙げられる。脂肪族アミンの炭素数は、1分子中で、4~20が好ましく、6~10がより好ましい。
アミン化合物は、例えば、メチルアミン、エチルアミン、アミノメチルプロパノール、アミノエチルプロパノール、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の第1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン等の第2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ジメチルアミノプロパノール、トリエタノールアミン、テトラメチルエチレンジアミン等の第3級アミン等が挙げられる。
中でも、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノールが好ましく、トリエチルアミンがより好ましい。
アミン化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
アミン化合物は、処理液全量に対し、0.1~2質量%が好ましく、0.5~1質量%がより好ましい。アミン化合物は処理液全量に対し0.1質量%以上で含まれることで、放置後の吐出回復性能をより改善することができる。アミン化合物が処理液全量に対し2質量%以下であることで、放置後の吐出回復性能をより改善できるとともに、印刷物上への残留量を低減し、印刷物上でのインク成分への作用を抑制して、画像の耐久性をより改善することができる。
【0051】
処理液には、上記した各成分に加え、任意的に、防錆剤、防腐剤、酸化防止剤、UV吸収剤、赤外線吸収剤、架橋剤、pH調整剤、消泡剤、湿潤剤(保湿剤)、表面張力調整剤(浸透剤)、定着剤等の各種添加剤が含まれてもよい。
【0052】
処理液の粘度は、インクジェット方式に適した吐出性を得るために、23℃において1~30mPa・sであることが好ましく、3~20mPa・sであることがより好ましく、4~12mPa・sであることがさらに好ましい。
【0053】
処理液の作製方法は、特に限定されないが、各成分を適宜混合することで所望の処理液を得ることができる。得られた組成物をフィルター等を用いてろ過してもよい。また、各種添加剤を適宜添加してもよい。
【0054】
「インクセット」
一実施形態によれば、処理液と水性インクジェットインクとを含み、処理液が上記した一実施形態による処理液であるインクジェットインクセットを提供することができる。このインクセットは、処理液及び水性インクジェットインクをそれぞれインクジェット方式によって基材に付与する印刷方法に用いることができる。処理液は、水性インクジェットインクが付与される前の基材に付与され、その後に水性インクジェットインクが付与されることが好ましい。以下、水性インクジェットインクを単に水性インクとも称する。
【0055】
水性インクは、色材及び水を含むことができる。色材としては、顔料、染料、又はこれらの組み合わせを含むことができる。画像の耐候性及び耐水性の点から、顔料を好ましく用いることができる。
【0056】
顔料は、顔料分散体としてインクに好ましく配合することができる。
顔料分散体としては、顔料が溶媒中に分散可能なものであって、インク中で顔料が分散状態となるものであればよい。例えば、顔料を顔料分散剤で水中に分散させたもの、自己分散性顔料を水中に分散させたもの、顔料を樹脂で被覆したマイクロカプセル化顔料を水中で分散させたもの等を用いることができる。
【0057】
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料、及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0058】
顔料の平均粒子径は10~500nmであることが好ましく、10~200nmであることがより好ましい。これらの顔料の平均粒子径は、発色性の観点から10nm以上であることが好ましく、分散安定性の観点から500nm以下であることが好ましい。インクジェットインクの場合は吐出性の観点から500nm以下が好ましい。
【0059】
インク中に顔料を安定に分散させるために、高分子分散剤や界面活性剤に代表される顔料分散剤を好ましく用いることができる。
高分子分散剤の市販品として、例えば、エボニックジャパン株式会社製のTEGOディスパースシリーズ「TEGOディスパース740W、750W、755W、760W」、日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパースシリーズ「ソルスパース20000、27000、41000、43000、44000、46000」、BASFジャパン株式会社製のジョンクリルシリーズ「ジョンクリル57J、60J、63J」、ビックケミー・ジャパン株式会社製の「DISPERBYK-102、185、190、193、199」、「BYKJET-9152」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0060】
界面活性剤型分散剤には、インク中の顔料の分散安定性を考慮して、非イオン性界面活性剤を用いることができる。
界面活性剤型分散剤の市販品として、例えば、花王株式会社製エマルゲンシリーズ「エマルゲンA-60、A-90、A-500、420」等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0061】
顔料分散剤は、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
顔料分散剤を用いる場合では、顔料分散剤の添加量はその種類によって異なり特に限定はされない。例えば、顔料分散剤は、有効成分の質量比で、顔料1に対し、0.005~2.0の範囲で添加することができる。
【0062】
色材として自己分散性顔料を配合してもよい。自己分散性顔料は、化学的処理又は物理的処理により顔料の表面に親水性官能基が導入された顔料である。自己分散性顔料に導入させる親水性官能基としては、イオン性を有するものが好ましく、顔料表面をアニオン性又はカチオン性に帯電させることにより、静電反発力によって顔料粒子を水中に安定に分散させることができる。アニオン性官能基としては、カルボキシ基、スルホ基、スルフィノ基、硫酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、亜リン酸基、亜リン酸エステル基等が好ましい。カチオン性官能基としては、第4級アンモニウム基、第4級ホスホニウム基等が好ましい。
【0063】
これらの親水性官能基は、顔料表面に直接結合させてもよいし、他の原子団を介して結合させてもよい。他の原子団としては、アルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられるが、これらに限定されることはない。顔料表面の処理方法としては、ジアゾ化処理、スルホン化処理、次亜塩素酸処理、フミン酸処理、真空プラズマ処理等が挙げられる。
【0064】
自己分散性顔料としては、例えば、キャボット社製CAB-O-JETシリーズ「CAB-O-JET200、300、400、250C、260M、270」、オリヱント化学工業株式会社製「BONJET BLACK CW-1、CW-2、CW-4」等を好ましく使用することができる(いずれも商品名)。
【0065】
顔料分散剤で顔料があらかじめ分散された顔料分散体を使用してもよい。顔料分散剤で分散された顔料分散体の市販品としては、例えば、クラリアント社製HOSTAJETシリーズ、冨士色素株式会社製FUJI SPシリーズ等が挙げられる(いずれも商品名)。上記した顔料分散剤で分散された顔料分散体を使用してもよい。また、顔料を樹脂で被覆したマイクロカプセル化顔料の分散体を使用してもよい。
【0066】
色材として染料を配合してもよい。染料としては、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用でき、特に限定されない。具体的には、塩基性染料、酸性染料、直接染料、可溶性バット染料、酸性媒染染料、媒染染料、反応染料、バット染料、硫化染料等が挙げられる。これらのうち、水溶性のもの及び還元等により水溶性となるものを好ましく用いることができる。より具体的には、アゾ染料、ローダミン染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料、メチレンブルー等が挙げられる。
【0067】
色材は、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
色材は、有効成分量で、インク全量に対し、0.1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましく、2~5質量%がさらに好ましい。
【0068】
水性インクは、界面活性剤をさらに含んでもよい。界面活性剤は、基材へのインクの浸透性又は濡れ広がり性をより高め、インクの塗工性をより改善することができる。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、又はこれらの組み合わせを好ましく用いることができ、非イオン性界面活性剤を含むことがより好ましい。
【0069】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシプロピレン脂肪酸エステル系界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル系界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤等を挙げることができる。非イオン性界面活性剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
非イオン性界面活性剤は、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、又はこれらの組み合わせを含むことが好ましい。シリコーン系界面活性剤の市販品として、例えば、「シルフェイスSAG014」、「シルフェイスSAG002」(商品名、日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品として、例えば、アセチレングリコールの「オルフィンE1010」、「オルフィンE1020」(いずれも商品名、日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0071】
界面活性剤は、有効成分量で、インク全量に対し、0.1~5質量%であることが好ましく、0.2~2質量%であることがより好ましい。
【0072】
水性インクは、バインダー樹脂をさらに含んでもよい。バインダー樹脂は、水分散性樹脂、水溶性樹脂、これらの組み合わせ等を挙げることができる。
【0073】
水分散性樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体等の共役ジエン系樹脂;アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はこれらの組み合わせの重合体又は共重合体、又はこれらとスチレン等との共重合体等のアクリル系樹脂;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂;これらの各種樹脂のカルボキシ基等の官能基含有単量体による官能基変性樹脂;ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキッド樹脂等が挙げられる。これらの水分散性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。これら水分散性樹脂は、水性樹脂エマルション(O/W型エマルション)の形態のものであってもよい。水性樹脂エマルションは、上記樹脂単独の樹脂エマルションであってもよく、上記樹脂の2以上からなるハイブリッド型の樹脂エマルションでもよい。水分散性樹脂の平均粒子径は、0.01~0.50μmが好ましく、0.05~0.30μmがより好ましい。
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸中和物、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等が挙げられる。また、これらの樹脂にアニオン性の官能基を導入したアニオン性水溶性樹脂を用いることができる。
バインダー樹脂は、インク定着性の観点から、水分散性樹脂を含むことが好ましく、水分散性ウレタン樹脂、水分散性ポリオレフィン樹脂、水分散性アクリル系樹脂、又はこれらの組み合わせを含むことがより好ましい。
【0074】
水分散性ウレタン樹脂の具体例としては、ウレタン骨格を有するアニオン性樹脂が挙げられ、具体的には、第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス150、スーパーフレックス300、スーパーフレックス460、スーパーフレックス470、スーパーフレックス740、スーパーフレックス840」等、三井化学ポリウレタン(株)製の「タケラックWS-6021、タケラックW-512-A-6、タケラックW-6110」等、(株)アデカ製の「アデカボンタイターHUX-370、アデカボンタイターHUX-380」等、DSM社製の「NeoRez R-9660、NeoRez R-966、NeoRez R-967、NeoRez R-986、NeoRez R-2170」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0075】
水分散性ポリオレフィン樹脂の市販品例としては、ユニチカ株式会社製アローベースシリーズ(「アローベースSB-1010、アローベースSE-1010、アローベースDC1010」等)、東洋紡株式会社製ハードレンシリーズ(「NZ1004、EW5250、EH801J」等)、ビックケミー株式会社製AQUACERシリーズ(「272、497、515、531、537」等)等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0076】
水分散性アクリル系樹脂としては、例えば、水分散性スチレン(メタ)アクリル樹脂、水分散性(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。スチレン(メタ)アクリル樹脂及び水分散性(メタ)アクリル樹脂は、いずれも特に限定されず、市販のものを用いることができる。
水分散性スチレン(メタ)アクリル樹脂又は水分散性(メタ)アクリル樹脂の市販品例としては、日本合成化学株式会社製の「モビニール966A、モビニール6750、モビニール6751D、モビニール6960、モビニール6718、モビニール7320」、日本ペイント株式会社製の「マイクロジェルE-1002、マイクロジェルE-5002」、株式会社DIC製の「ボンコート4001、ボンコート5454」、日本ゼオン株式会社製の「SAE1014」、サイデン化学株式会社製の「サイビノールSK-200」、DSM社製の「ネオクリルBT-62、ネオクリルSA-1094」、BASF社製の「ジョンクリル7100、ジョンクリル390、ジョンクリル711、ジョンクリル511、ジョンクリル7001、ジョンクリル632、ジョンクリル741、ジョンクリル450、ジョンクリル840、ジョンクリル74J、ジョンクリルHRC-1645J、ジョンクリル734、ジョンクリル852、ジョンクリル7600、ジョンクリル775、ジョンクリル537J、ジョンクリル1535、ジョンクリルPDX-7630A、ジョンクリル352J、ジョンクリル352D、ジョンクリルPDX-7145、ジョンクリル538J、ジョンクリル7640、ジョンクリル7641、ジョンクリル631、ジョンクリル790、ジョンクリル780、ジョンクリル7610」、日信化学工業株式会社製の「ビニブラン2580、ビニブラン2585、ビニブラン2682、ビニブラン2680、ビニブラン2684、ビニブラン2685、ビニブラン2687」、新中村化学工業株式会社製の「NKバインダーR-5HN」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0077】
バインダー樹脂は、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
バインダー樹脂は、インク全量に対し、1~20質量%が好ましく、5~10質量%がより好ましい。
【0078】
水性インクは、水性溶媒として水を含むことが好ましく、主溶媒が水であってもよい。
水としては、特に制限されないが、イオン成分をできる限り含まないものが好ましい。特に、インクの顔料分散安定性の観点から、カルシウム等の多価金属イオンの含有量が少ないことが好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水等を用いるとよい。
水は、粘度調整の観点から、インク全量に対して20~90質量%で含まれることが好ましく、30~80質量%で含まれることがより好ましく、40~70質量%がさらに好ましい。
【0079】
水性インクは、水溶性有機溶剤を含むことができる。水溶性有機溶剤としては、上記した処理液で説明したものを用いることができる。
水溶性有機溶剤は、濡れ性、保湿効果、粘度調節等の観点から、インク全量に対し、1~80質量%で含ませることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、20~40質量%がより好ましい。
【0080】
水性インクには、上記した各成分に加え、任意的に、防錆剤、防腐剤、酸化防止剤、UV吸収剤、赤外線吸収剤、架橋剤、pH調整剤、消泡剤、湿潤剤(保湿剤)、表面張力調整剤(浸透剤)、定着剤等の各種添加剤が含まれてもよい。
【0081】
水性インクの粘度は、インクジェットインクに適した吐出性を得るために、23℃において1~40mPa・sであることが好ましく、3~20mPa・sであることがより好ましく、4~12mPa・sであることがさらに好ましい。
【0082】
インクの作製方法は、特に限定されないが、各成分を適宜混合することで所望のインクを得ることができる。例えば、顔料の分散性を高めるためにビーズミル等の分散機を用いてもよい。また、得られた組成物をフィルター等を用いてろ過してもよい。また、各種添加剤を適宜添加してもよい。
【0083】
「印刷物の製造方法」
一実施形態によれば、処理液をインクジェット方式によって基材に付与する工程、及び水性インクジェットインクをインクジェット方式によって、処理液が付与された基材にウェットオンウェット法で付与する工程を含む、印刷物の製造方法を提供することができる。処理液及び水性インクジェットインクには、上記した一実施形態による処理液及び水性インクジェットインクを用いることができる。
【0084】
処理液及び水性インクはそれぞれインクジェット方式によって基材に付与することが好ましい。
インクジェット方式は、基材に非接触で、オンデマンドで簡便かつ自在に画像形成をすることができる印刷方式である。インクジェット方式は、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式等のいずれの方式であってもよい。インクジェット印刷装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから処理液又は水性インクを吐出させ、吐出された処理液又はインクの液滴を基材に付着させるようにすることが好ましい。
【0085】
まず、処理液をインクジェット方式によって基材に付与する工程について説明する。処理液は上記した通り放置後の吐出回復性能に優れるものであることから、インクジェット方式を採用して基材に付与することができる。処理液を基材に付与する領域は、水性インクによる画像と同一の形状の領域であってもよいし、水性インクによる画像の形状を含む広めの領域であってもよいし、基材の全面であってもよい。処理液は、インクジェット方式によってオンデマンドで付与可能であるため、水性インクによる画像の形状に合わせてその付与領域を調節することができる。処理液の付与量は、0.1~200g/m2が好ましく、2~20g/m2がより好ましい。
【0086】
次に、水性インクをインクジェット方式によって、処理液が付与された基材にウェットオンウェット法で付与する工程について説明する。水性インクは、処理液が付与された基材にウェットオンウェット法で付与されることが好ましい。すなわち、処理液が付与された基材から水分を完全には除去しない状態で、好ましくは処理液が付与された基材が湿潤状態を保つ状態で、水性インクが付与されるとよい。具体的には、処理液を付与後、基材上の処理液の揮発分の残存量が60質量%以上の状態で、水性インクが付与されることが好ましい。例えば、基材に処理液を付与後に、加熱乾燥などの乾燥工程を経ずに、水性インクを付与することが好ましい。基材上で処理液が湿潤状態である間に水性インクが付与されることで、基材上で処理液と水性インクとが十分に混和し、インク成分が均一に凝集し、優れた画質を得ることができる。
【0087】
処理液を付与後、水性インクを付与するまでの基材表面の温度は、好ましくは40℃以下が好ましく、35℃以下であることが好ましい。また、処理液を付与してから水性インクを付与するまでの間に基材を湿潤状態に保てる範囲であれば、上記温度にかかわらず、基材を加熱しながら処理液を付与することも好ましい。さらには、処理液が付与された基材を加熱しながら、水性インクを付与してもよい。例えば、基材を30~60℃、好ましくは35~45℃に加熱しながら、処理液及び水性インクを付与してもよい。特に、基材として非浸透性基材を用いる場合は、加熱しながら処理液及び水性インクを付与することが好ましい。基材に処理液を付与してから水性インクを付与するまでの時間は、0.1~200秒であることが好ましい。この温度又は時間とすることで、基材が非浸透性基材の場合では、処理液が基材に適度にレベリングしてから水性インクが付与されやすくなり、浸透性基材の場合では、処理液が基材に過浸透することなく水性インクが付与されやすくなる。
【0088】
水性インクの付与量は、0.1~400g/m2が好ましく、2~40g/m2がより好ましい。
なお、単色印刷の場合は1種類の水性インクを用いればよく、カラー印刷の場合は2種類以上の水性インクを用いればよい。2種類以上の水性インクを用いる場合は、基材に処理液を付与後に、ウェットオンウェット法で最初の水性インクを付与し、次いでウェットオンウェット法で次の水性インクを付与することが好ましい。
【0089】
処理液を付与する工程と水性インクを付与する工程は別々の装置で行ってもよく、1つの装置を用いて行ってもよい。一実施形態による印刷物の製造方法は、水性インクをウェットオンウェット法で付与することから、処理液の付与後に乾燥工程を不要とすることができるため、1つの印刷装置内で処理液及び水性インクの付与をインラインで簡便に行うことができる。
【0090】
水性インクの付与後に基材を熱処理する工程をさらに設けることができる。処理液及び水性インクが付与された基材を熱処理することで、基材から水分を除去することができる。さらに、基材上で処理液中の凝集剤の成分が濃縮されて、水性インクの色材を凝集させる作用をより強め、より高画質の印刷物を得ることができる。バインダー樹脂を含む水性インクを用いる場合は、基材上で樹脂の成膜を促進することができる。
【0091】
基材の加熱は接触式又は非接触式であってもよい。加熱装置としては、例えば、温風乾燥、電熱線、ホットプレート、ヒートローラ、IRヒータ等が挙げられる。これらの加熱装置は印刷装置と一体的に構成されてもよい。熱処理温度は、40~200℃が好ましく、60~180℃がより好ましく、80~120℃がさらに好ましい。40℃以上であることで効率的に加熱を行って加熱時間を短縮することができる。200℃以下であることで、過剰な加熱による画質の低下、基材の劣化等を防止することができる。熱処理時間は、処理液及び水性インクの成分、含有量等とともに、基材の種類、熱処理温度、熱処理方式等に応じて適宜設定すればよい。
【0092】
水性インクの付与後に基材を後処理してオーバーコート層を形成する工程をさらに設けてもよい。基材を後処理する方法としては、基材にオーバーコート液を付与して行うことができる。オーバーコート液としては、例えば、皮膜を形成可能な樹脂と、水性媒体又は油性媒体とを含むオーバーコート液を用いることができる。なお、一実施形態による処理液及び水性インクを用いる印刷物の製造方法によれば優れた画質が得られることから、オーバーコート層を設けなくてもよい。
【0093】
上記した印刷物の製造方法は、浸透性基材及び非浸透性基材のいずれにも適用することができる。
非浸透性基材は、基材内部に液体が染み込んでいかない基材であり、具体的には、処理液中又はインク中の液体の大部分が基材の表面上に留まる基材である。
非浸透性基材としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、チタン、錫、クロム、カドミウム、合金(例えばステンレス、スチール等)等の金属板等の金属基材;ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス等の板ガラス等のガラス基材;PETフィルム、PPフィルム、OHTシート、ポリエステルシート、ポリプロピレンシート等の樹脂製シート、アクリル板、ポリ塩化ビニル板等の樹脂基材;アルミナ、ジルコニア、ステアタイト、窒化ケイ素等の成形体等のセラミック基材等が挙げられる。
これらの基材は、メッキ層、金属酸化物層、樹脂層等が形成されていてもよく、又はコロナ処理等を用いて表面処理されていてもよい。
【0094】
浸透性基材としては、例えば、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙;織布、編物、不織布等の布;調湿用、吸音用、断熱用等の多孔質建材;木材、コンクリート、多孔質材等が挙げられる。
ここで、普通紙は、通常の紙の上にインクの受容層やフィルム層等が形成されていない紙である。普通紙の一例としては、上質紙、中質紙、PPC用紙、更紙、再生紙等を挙げることができる。
また、コート紙としては、マット紙、光沢紙、半光沢紙等のインクジェット用コート紙や、いわゆる塗工印刷用紙を好ましく用いることができる。ここで、塗工印刷用紙とは、従来から凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等で使用されている印刷用紙であって、上質紙や中質紙の表面にクレーや炭酸カルシウム等の無機顔料と、澱粉等のバインダーを含む塗料により塗工層を設けた印刷用紙である。塗工印刷用紙は、塗料の塗工量や塗工方法により、微塗工紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、上質コート紙、中質コート紙、アート紙、キャストコート紙等に分類される。
【0095】
布を構成する繊維としては、例えば、金属繊維、ガラス繊維、岩石繊維および鉱サイ繊維等の無機繊維;セルロース系、たんぱく質系等の再生繊維;セルロース系等の半合成繊維;ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフッ化エチレン等の合成繊維;綿、麻、絹、毛等の天然繊維等の各種の繊維から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。以下の説明において、特に説明のない箇所では、「%」は「質量%」を示す。製造元について特に説明がない原材料は東京化成工業株式会社、富士フイルム和光純薬株式会社等から入手可能である。各表に示す含有量は、溶液又は分散体として配合される成分はその全体量で示し、樹脂分又は有効成分等の割合を併記する。
【0097】
(水性インクの作製)
下記に示す処方にしたがって原材料を混合し、ミックスロータを用いて100rpm、30分間撹拌し、5μmナイロンシリンジフィルターでろ過し、インクを得た。
自己分散性顔料の水分散体(キャボット社製「CAB-O-JET 400」(固形分15%)):20質量%
ウレタン樹脂エマルション(DSM社製「NeoRezR-967」(樹脂分40%)):22.5質量%
グリセリン:1質量%
ジエチレングリコール:30質量%
界面活性剤(日信化学工業株式会社製「シルフェイスSAG002」(不揮発分>95%))):1質量%
イオン交換水:25.5質量%
【0098】
(シリコーン系界面活性剤の合成)
処理液に用いるシリコーン系界面活性剤の合成処方を表1に示し、以下の手順で合成した。
表中に示すA液の原材料をフラスコに入れ、窒素雰囲気下70℃で加熱攪拌した。表中に示すB液の原料を混合してB液を作製し、B液をフラスコに1時間かけて滴下し、5時間加熱攪拌を続けた。生成物を濾過し、濾液からトルエンを減圧除去した。カラムクロマトグラフィーで副生成物を分離した。得られた活性剤1~3の構造式をそれぞれ下記式(1)~(3)に示す。下記式において、R1~R3はそれぞれー(CH2)3-(OC2H4)10―OHで表される基である。
【0099】
【0100】
【0101】
(処理液の作製)
表2~表4に前処理液の処方を示す。表中に示す処方にしたがって原材料を総量が100質量%になるように混合し、ミックスロータを用いて100rpm、30分間撹拌し、5μmナイロンシリンジフィルターでろ過し、処理液を得た。用いた成分は以下の通りである。DMA/ECH重縮合物とDMA/NH3/ECH重縮合物の含有量と、DADMAC重合体とDADMAC/SO2共重合体の含有量との比率「ECH:DADMAC」を表中に示す。
【0102】
DMA/ECH重縮合物「ユニセンスKHE104L」(商品名):センカ株式会社製、ジメチルアミン-エピクロルヒドリン重縮合物、樹脂分20%。
DMA/NH3/ECH重縮合物「ユニセンスKHE101L」(商品名):センカ株式会社製、ジメチルアミン-アンモニア-エピクロルヒドリン重縮合物、樹脂分41%。
DADMAC重合体「PAS-H-1L」(商品名):ニットーボーメディカル株式会社製、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体(分子量:8,500)、樹脂分28%。
DADMAC/SO2共重合体「PAS-A-1」(商品名):ニットーボーメディカル株式会社製、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄共重合体(分子量:5000)、樹脂分24%。
フッ素系界面活性剤「サーフロンS-243」(商品名)及び「サーフロンS-386」(商品名):AGCセイミケミカル株式会社製、いずれもノニオン性フッ素系界面活性剤、有効成分100%。
シリコーン系界面活性剤:活性剤1(側鎖型変性)、活性剤2(側鎖型変性)、及び活性剤3(末端型変性):上記処方にて合成したもの。
【0103】
(印刷物の製造方法)
印刷装置には、株式会社マスターマインド製インクジェットプリンター「MMP-8130」(商品名)を2台使用した。1台目で基材に処理液を付与し、2台目で処理液が付与された基材に水性インクをウェットオンウェット法で付与した。水性インクの付与後に熱風式乾燥機を用いて90℃で乾燥させ、印刷物を製造した。
【0104】
処理液の付与条件は以下の通りである。
設定濃度:印刷装置の設定で「8」にする。
処理液の付与領域:20cm×10cm角のベタ画像を付与する。
処理液の印字率:25%。
【0105】
水性インクの付与条件は以下の通りである。
設定濃度:印刷装置の設定で「8」にする。
インク画像:処理液の付与領域に重なるように、20cm×10cm角のベタ画像内に12ポイントの白抜き文字で「美」と印刷する。
インクの印字率:100%。
【0106】
印刷物の基材には以下の2種類を用いた。
非浸透性基材:ポリ塩化ビニル基材(AveryDennison社製「MPI3002P WPE」(商品名))、以下の説明では塩ビ基材と表記。
浸透性基材:100%ポリエステル布(トロマット)、以下の説明では布基材と表記。
【0107】
(評価方法)
印刷物の画質及び放置後の吐出回復性能を下記の通り評価し、結果を表2~表4に示す。
「印刷物の画質」
塩ビ基材及び布基材にそれぞれ上記した処理液の付与条件にて処理液を付与し、処理液の付与後50秒に、基材が処理液によって湿潤した状態で、上記した水性インクの付与条件にて水性インクを付与した。水性インク付与後に、熱風式乾燥機を用いて90℃で乾燥させ、印刷物を得た。
【0108】
塩ビ基材の印刷物の画質を下記基準で評価した。
A:均一なベタ画像が形成され、かつ白抜き文字に潰れが観察されない。
B:印刷面から30cmの距離から判断可能な画像ムラ又はひび割れが観察されるか、あるいは白抜き文字の一部に潰れが観察されるが判読可能なレベルである。
C:印刷面に明らかな画像ムラ又はひび割れが観察されるか、あるいは白抜き文字の判読が困難なレベルである。
【0109】
布基材の印刷物の画質は、印刷面のOD値をビデオジェット・エックスライト株式会社製の測色計「X-Rite eXact」を用いて測定し、下記基準で評価した。
A:OD値が1.4以上である。
B:OD値が1.3以上1.4未満である。
C:OD値が1.3未満である。
【0110】
塩ビ基材及び布基材の印刷物の画質の評価から、印刷物の画質を下記基準で総合評価した。
A:塩ビ基材及び布基材の画質がいずれもAである。
B:塩ビ基材及び布基材の画質がそれぞれA及びB、B及びA、又はB及びBである。
C:塩ビ基材及び布基材の画質の少なくとも一方がCである。
【0111】
「処理液のヘッド放置後の吐出回復性能」
処理液を充填したインクジェットヘッドの放置後の吐出回復性能を以下の手順で評価した。
株式会社マスターマインド製インクジェットプリンター「MMP-8130」(商品名)に処理液を装填し、処理液がノズル抜けなく正常に吐出されることを確認した後、キャッピング状態で室温で1か月放置後、クリーニング動作を行った。クリーニング動作後に、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに、上記処理液の付与条件と同じ条件で、処理液を付与した。処理液が付与された基材に観察される白スジ本数をノズル抜本数としてカウントし、全体のノズル数に対するノズル抜け本数からノズル抜けの発生割合を計算し、以下の基準で評価した。
A:クリーニング動作後のノズル抜けが1%未満である。
B:クリーニング動作後のノズル抜けが1%以上3%未満である。
C:クリーニング動作後のノズル抜けが3%以上である。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
表中に示す通り、各実施例の処理液が付与された基材を用いて印刷が行われることで、非浸透性基材及び浸透性基材のいずれに対しても良好な画質が得られた。また、各実施例の処理液のヘッド放置後の吐出回復性能は良好であった。
【0116】
実施例1~4では、実施例5と比べ、側鎖型変性シリコーン系界面活性剤を含む処理液を用いているため、塩ビ基材での処理液の濡れ広がりが十分に得られ、ベタ画像の均一性がより優れた。
実施例1~4、7、8では、実施例6と比べ、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーの比率がより多いため、塩ビ基材での水性インクと処理液とが十分に混和してから凝集し、ベタ画像の均一性がより優れた。
実施例1~6では、実施例7と比べ、アミン化合物を含むため、処理液のヘッド放置後の吐出回復性能がより優れた。これは、アミン化合物が防錆剤として機能したことでヘッド内で錆の発生が抑制されたうえ、異物の発生も抑制されたためと考えられる。
実施例1~6では、実施例8と比べ、2級又は3級アンモニウム塩を構成ユニットとして含まない4級アンモニウム塩の脂肪族アミン-エピハロヒドリン重縮合物を含む処理液を用いているため、ヘッド放置による処理液中の結晶発生の抑制に加えて、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物とジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーの相互作用による異物の発生も防止し、処理液のヘッド放置後の吐出回復性能がより改善された。
【0117】
実施例1~8では、実施例9と比べ、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物の比率がより多いため、布基材上でのインク成分と処理液の反応速度が速く、布基材での画像濃度がより向上した。また、実施例1~4、7、8では、実施例9と比べ、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物の比率がより多いため、塩ビ基材上でのインク成分と凝集剤の反応が促進され、塩ビ基材での細字再現性がより向上した。また、実施例1~6では、実施例9と比べ、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物の比率がより多いため、ヘッド放置による処理液中の結晶発生をより抑制し、処理液のヘッド放置後の吐出回復性能がより改善された。
【0118】
比較例1では、処理液にジアリルジアルキルアンモニウムハライド系ポリマーが含まれない例であり、塩ビ基材上でインクと処理液とが十分に混和する前に凝集し、水性インク付与後の乾燥工程において成膜が不均一になり、画像のひび割れが発生した。
比較例2では、処理液に脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物が含まれず、比較例3では、脂肪族アミンとエピハロヒドリンとの重縮合物の比率が少ない。これらの比較例では、処理液のヘッド放置により多量の結晶が発生し、処理液のヘッド放置後の吐出回復性能が低下した。さらに比較例2では、布基材上でのインク成分と処理液の反応速度が遅く、布基材での画像濃度が十分に得られなかった。
比較例4及び5では、処理液が界面活性剤としてフッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤の組み合わせが含まれない例であり、塩ビ基材での処理液の濡れ性が低下し、処理液が均一に付与されず、画像ムラが観察された。