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特許7628485液状廃棄物の濃縮方法および液状廃棄物の濃縮装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】液状廃棄物の濃縮方法および液状廃棄物の濃縮装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/147 20190101AFI20250203BHJP
   C02F 11/121 20190101ALI20250203BHJP
【FI】
C02F11/147 ZAB
C02F11/121
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021194103
(22)【出願日】2021-11-30
(65)【公開番号】P2023080648
(43)【公開日】2023-06-09
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】矢出 乃大
(72)【発明者】
【氏名】森 康輔
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-079262(JP,A)
【文献】特開平11-104696(JP,A)
【文献】特開2000-317220(JP,A)
【文献】特開2016-185536(JP,A)
【文献】特開2019-037956(JP,A)
【文献】米国特許第07452469(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/01
C02F 1/52 - 1/56
C02F 11/00 - 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状廃棄物から凝集フロックを形成させる凝集工程と、
前記凝集フロックを含む液状廃棄物を濃縮し、濃縮汚泥と分離液を得る濃縮工程と、
前記濃縮工程で得られた前記濃縮汚泥の少なくとも一部を取り出す取り出し工程と、
前記取り出された濃縮汚泥の懸濁物質濃度(SS濃度)を測定するSS濃度測定工程と、
取り出された濃縮汚泥に前記SS濃度測定工程の測定結果に応じた量の高分子凝集剤を添加し、得られた凝集濃縮汚泥を前記凝集工程に返送する返送工程と、を有し、
前記凝集工程における前記凝集フロックの形成が、前記返送された前記凝集濃縮汚泥の前記液状廃棄物への混合によりなされることを特徴とする液状廃棄物の濃縮方法。
【請求項2】
前記取り出し工程後に前記取り出された前記濃縮汚泥の残部を脱水する脱水工程をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の液状廃棄物の濃縮方法。
【請求項3】
前記高分子凝集剤が、水道用高分子凝集剤であることを特徴とする、請求項1または2に記載の液状廃棄物の濃縮方法。
【請求項4】
前記高分子凝集剤が、アクリルアミドモノマーを含まない水道用高分子凝集剤であることを特徴とする、請求項3に記載の液状廃棄物の濃縮方法。
【請求項5】
前記液状廃棄物の懸濁物質濃度(SS濃度)が1000mg/L以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の液状廃棄物の濃縮方法。
【請求項6】
前記凝集工程において、前記凝集濃縮汚泥に含まれる高分子凝集剤を除き、凝集剤を添加しないことを特徴とする請求項1または2に記載の液状廃棄物の濃縮方法。
【請求項7】
液状廃棄物から凝集フロックを形成させる凝集手段と、
前記凝集フロックを含む液状廃棄物を濃縮し、濃縮汚泥と分離液を得る濃縮手段と、
前記濃縮手段で得られた前記濃縮汚泥の少なくとも一部を取り出す配管手段と、
前記配管手段の途中に設けられ、該配管手段中の前記濃縮汚泥の懸濁物質濃度(SS濃度)を測定可能な汚泥濃度計と、
前記配管手段で取り出された前記濃縮汚泥に前記汚泥濃度計による測定結果に応じた量の高分子凝集剤を添加・混合し、凝集濃縮汚泥を得る混合手段と、
前記混合手段で得られた凝集濃縮汚泥を前記凝集手段に返送する返送手段と、
を有することを特徴とする液状廃棄物の濃縮装置。
【請求項8】
記凝集手段および前記濃縮手段が造粒濃縮装置であることを特徴とする請求項に記載の液状廃棄物の濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状廃棄物の濃縮方法および液状廃棄物の濃縮装置に関し、特に、液状廃棄物から凝集フロックを形成させ、この凝集フロックを含む液状廃棄物から濃縮汚泥と分離液を得る、液状廃棄物の濃縮方法および液状廃棄物の濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液状廃棄物は、水中の浮遊物質が沈殿または浮上して泥状になった汚泥や、し尿や浄化槽汚泥、浄水処理、下水処理、民間排水等の処理過程で発生する液状廃棄物である。液状廃棄物には、有機汚泥と無機汚泥の二種類がある。前者は、下水処理場や食品工場、紙・パルプ工場等からの有機性排水を処理する設備で発生する汚泥や産業廃棄物として収集される有機性廃棄物である。有機性廃棄物の主成分は鉱物油や動植物油を含む有機物である。
【0003】
後者は、土木工事現場や浄水場の凝集沈殿汚泥である上水汚泥、金属メッキ工場等の砂や金属成分等を多く含む排水を処理する設備で発生する汚泥である。
【0004】
また、液状廃棄物である、バイオマスや下水汚泥などを嫌気性条件下でそれらの有機物を分解する消化槽やメタン発酵槽から排出される消化汚泥も液状廃棄物である。
【0005】
汚泥の減容のために濃縮、あるいは濃縮と脱水が行われる。
【0006】
濃縮は、汚泥の濃度を高め、濃縮汚泥とする工程である。
【0007】
脱水は、機械的な圧力をかけて、濃縮汚泥から水分を絞り出す工程であり、これにより、含水率の低い脱水ケーキが得られる。
【0008】
汚泥の脱水処理では、汚泥濃度が高い程、汚泥の脱水効率が向上するため、脱水処理に先立ち、汚泥を濃縮する各種方法が提案されている。
【0009】
図6は、従来の、液状廃棄物の濃縮・脱水方法の処理フローを示す模式図である。
【0010】
上述のとおり、一般に濃縮は脱水機に供給する汚泥濃度を高めるための前処理として使用される。汚泥は凝集槽で高分子凝集剤を添加し、凝集フロックを作る調質を行った後に、調質後の汚泥は濃縮機で濃縮汚泥と、分離液に分離される。
【0011】
汚泥への高分子凝集剤の添加率は汚泥の固形物に対して概ね0.2~5wt%である。
【0012】
濃縮汚泥は脱水機で脱水されて、更に減量化される。この脱水処理に高分子凝集剤が水に溶解した水溶液として用いられる。水溶液の濃度は特に限定されないが、通常0.05~0.8wt%である。
【0013】
脱水機からは脱水ろ液と、脱水ケーキが搬出されて、脱水ケーキは埋立処分等で外部搬出されたり、自前の焼却炉で焼却処分されたりする。下水処理では返流水として、分離液と脱水ろ液を下水処理工程に送り、水処理する。
【0014】
また、濃縮は嫌気性消化槽やメタン発酵槽での嫌気処理性能向上のために、嫌気性消化槽に供給する汚泥濃度を高めるための前処理として使用される。
【0015】
図7は、従来の、嫌気性消化の前処理としての液状廃棄物の濃縮方法の処理フローを示す模式図である。
【0016】
図示のように、汚泥に凝集槽で高分子凝集剤を添加し、凝集フロックを作る調質を行った後に、調質後の汚泥は濃縮機で濃縮汚泥と、分離液に分離される。濃縮汚泥の有機物は嫌気性消化槽でメタンガスと炭酸ガスに分解される。メタンガスはボイラ燃料等に利用される。分離液は下水処理工程に送られて、水処理される。
【0017】
嫌気性消化槽の汚泥(消化汚泥)も定期的に嫌気性消化槽から消化汚泥として引き抜かれて、図6のように濃縮と、脱水が行われる。
【0018】
汚泥の濃縮には、従来より、重力濃縮槽や造粒濃縮装置が用いられている。
【0019】
図8は、従来の、重力濃縮装置を用いた液状廃棄物の処理フローを示す模式図である。
【0020】
図示のように、凝集槽の汚泥に高分子凝集剤を添加し、凝集フロックを作る調質を行った後に、調質後の汚泥は重力濃縮槽で濃縮汚泥と、分離液に分離される。濃縮汚泥は脱水機や嫌気性消化槽に送られる。
【0021】
調質された汚泥は重力濃縮槽に流入し、固液分離される。分離液は分離液流出管から排出される。重力濃縮槽に沈殿した汚泥は槽内のピケットフェンスで汚泥を攪拌して、汚泥粒子間の水を排出させて、濃縮汚泥を得る。濃縮汚泥は水槽の下部から排出される。
【0022】
図9は、従来の、造粒濃縮装置を用いた液状廃棄物の処理フローを示す模式図である。
【0023】
図示のように、造粒濃縮装置は、撹拌機とドラフトチューブで水槽下部から流入する汚泥と高分子凝集剤を混合することで、凝集フロックを良い大きい造粒物にする。その造粒物と分離液はスクリーンで分離されて、分離液は分離液流出管から排出される。造粒物は濃縮汚泥となり、濃縮汚泥流出管を介して造粒濃縮装置から外に排出される。
【0024】
また、特許文献1は、汚泥と凝集剤とを反応させて凝集汚泥を生成する凝集反応槽と、凝集反応槽から抜き出された凝集汚泥を濃縮して濃縮汚泥を形成する濃縮機と、凝集反応槽から濃縮機に凝集汚泥を供給する汚泥供給路と、濃縮機により形成された濃縮汚泥の一部を凝集反応槽に環流させる汚泥環流路と、濃縮機により形成された濃縮汚泥の残部を、外部に排出する排出路と、前記凝集反応槽に前記凝集剤を投入する第1の凝集剤投入装置とを備える汚泥濃縮装置を開示する。
【0025】
特許文献1の汚泥濃縮装置によれば、濃縮汚泥の一部が凝集反応槽に還流されるので、凝集反応槽における濃縮汚泥の滞留時間を延ばすことができ、これにより、凝集フロックの緻密度と機械的強度が増大し、脱水後の脱水ケーキの含水量をより一層低減させることができる。
【0026】
特許文献2は、(1)原水に無機凝集剤を添加するとともに、高分子凝集剤を含む返送汚泥を添加して凝集反応を行わせる凝集工程、(2)凝集工程で生成した凝集フロックを固液分離する固液分離工程、(3)固液分離工程から得られる処理水を逆浸透膜装置及び/又はイオン交換装置に通水して脱塩する脱塩工程、(4)固液分離工程から排出される凝集汚泥の一部を凝集工程に返送する汚泥返送工程、並びに(5)凝集工程に返送される凝集汚泥に高分子凝集剤を添加する工程を有する純水製造方法を開示する。
【0027】
特許文献2の純水製造方法によれば、沈殿または浮上処理水のSS濃度が低くなり、処理水の水質が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【文献】特開2020-001016号公報
【文献】特開平11-104696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
特許文献1によれば、濃縮汚泥の一部を凝集反応槽に還流させない従来の濃縮方法と比較して凝集フロックの緻密度と機械的強度が増大し、脱水後の脱水ケーキの含水量をより一層低減させることができるものの、高分子凝集剤が凝集反応槽に添加されることで槽内の粘度が上昇し、濃縮汚泥、汚泥、高分子凝集剤の凝集反応槽での分散性が低下し、混合が不十分になる虞がある。
【0030】
したがって、凝集反応槽の撹拌条件や濃縮汚泥の返送量などの凝集反応槽の運転条件に凝集反応が大きく左右され、濃縮性に影響が出る。
【0031】
特許文献2には、固液分類工程で排出された凝集汚泥の一部に高分子凝集剤を添加し、凝集工程に返送しているが、処理対象が廃棄されるべき液体廃棄物(汚泥)ではなく、純水の原料となる原水であることから凝集工程も低粘度となり、分散の不均一性の課題が生じない。また、処理対象物が原水であり、技術分野も異なる。
【0032】
上記課題を鑑みてなされた本願発明の目的は、凝集反応の際の分散性を向上させ、多少の運転条件の違いによっても安定的な濃縮を可能とする汚泥の濃縮方法及び濃縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明者らは、上記目的の達成に向け、鋭意検討したところ、凝集槽での凝集、濃縮機での汚泥の濃縮、濃縮汚泥の一部の凝集工程への返送を伴う汚泥の濃縮方法において、返送する濃縮汚泥に対して、処理対象の汚泥と混合する前に高分子凝集剤を添加することで、凝集槽における凝集フロックをさらに大きく緻密にすることができると共に、凝集槽に高分子凝集剤が添加されないことで凝集槽内の粘度上昇を抑制できることを見出し、その結果、多少の運転条件の違いによっても安定的に濃縮機での濃縮効率が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0034】
すなわち、上記目的は、液状廃棄物から凝集フロックを形成させる凝集工程と、前記凝集フロックを含む液状廃棄物を濃縮し、濃縮汚泥と分離液を得る濃縮工程と、前記濃縮工程で得られた前記濃縮汚泥の少なくとも一部を取り出す取り出し工程と、取り出された濃縮汚泥に高分子凝集剤を添加し、得られた凝集濃縮汚泥を前記凝集工程に返送する返送工程と、を有し、前記凝集工程における前記凝集フロックの形成が、前記返送された前記凝集濃縮汚泥の前記液状廃棄物への混合によりなされることを特徴とする液状廃棄物の濃縮方法により達成することができる。
【0035】
本発明に係る液状廃棄物の濃縮方法の好ましい態様は以下の通りである。
(1)取り出し工程後に、取り出された濃縮汚泥の残部を脱水する脱水工程をさらに有する。
【0036】
これによれば、高濃度となっている濃縮汚泥を脱水することで脱水性能を従来よりも向上させることができる。
(2)高分子凝集剤が、水道用高分子凝集剤である。高分子凝集剤として水道用高分子凝集剤を使用することで、上水汚泥から大きくて強固な凝集フロックを作ることができ、したがって、得られた濃縮汚泥の濃縮性が向上する。
(3)高分子凝集剤が、アクリルアミドモノマーを含まない水道用高分子凝集剤である。これにより、上水汚泥から得られる濃縮汚泥の濃縮性が向上するとともに、濃縮の際に生じた分離水が浄水処理の前段工程に返送された場合にも、発がん性を有するアクリルアミドモノマーが浄水処理の前段工程に返送されることが無い。
【0037】
また、上記目的は、液状廃棄物から凝集フロックを形成させる凝集手段と、前記凝集フロックを含む液状廃棄物を濃縮し、濃縮汚泥と分離液を得る濃縮手段と、前記濃縮手段で得られた前記濃縮汚泥の少なくとも一部を取り出す配管手段と、前記配管手段で取り出された前記濃縮汚泥に高分子凝集剤を添加・混合し、凝集濃縮汚泥を得る混合手段と、前記混合手段で得られた凝集濃縮汚泥を前記凝集手段に返送する返送手段と、を有することを特徴とする液状廃棄物の濃縮装置によっても達成することができる。
【0038】
本発明に係る液状廃棄物の濃縮装置の好ましい態様は以下の通りである。
(1)濃縮手段が重力濃縮装置であるか、または凝集手段および濃縮手段が造粒濃縮装置である。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、液状廃棄物に直接高分子凝集剤を添加して凝集フロックを形成させるのではなく、濃縮汚泥の少なくとも一部に高分子凝集剤を添加・混合して凝集濃縮汚泥を得て、この凝集濃縮汚泥を液状廃棄物と混合させることで凝集フロックが形成されているので、液状廃棄物に直接高分子凝集剤を添加する場合と比較して凝集フロック形成時の粘度上昇が抑制され、凝集反応の際の分散性が向上する。さらに、凝集濃縮汚泥を核として凝集フロックが形成されるので、従来よりも凝集フロックが大きく強固なものとなる。
【0040】
よって、凝集反応の条件が多少異なっていても液状廃棄物の安定的な濃縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の液状廃棄物の濃縮方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図2】本発明の液状廃棄物の濃縮方法による処理フローの代表例を示す模式図である。
図3】本発明の液状廃棄物の処理装置10を示す模式図である。
図4】濃縮手段が重力濃縮装置である場合の液状廃棄物の処理装置を示す模式図である。
図5】凝集手段および濃縮手段が造粒濃縮装置である場合の液状廃棄物の処理装置を示す模式図である。
図6】従来の、液状廃棄物の濃縮・脱水方法の処理フローを示す模式図である。
図7】従来の、嫌気性消化の前処理としての液状廃棄物の濃縮方法の処理フローを示す模式図である。
図8】従来の、重力濃縮装置を用いた液状廃棄物の処理フローを示す模式図である。
図9】従来の、造粒濃縮装置を用いた液状廃棄物の処理フローを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
<液状廃棄物の濃縮方法>
図1は、本発明の液状廃棄物の濃縮方法の一例を説明するためのフローチャートであり、図2は、本発明の液状廃棄物の濃縮方法による処理フローの代表例を示す模式図である。
【0043】
本発明は、図1に示すように、凝集工程(S100)と、濃縮工程(S110)と、取り出し工程(S120)と、返送工程(S130)と、を有する。
【0044】
(液状廃棄物)
液状廃棄物は、懸濁物質濃度が1000mg/L以上の廃液、水中の有機物や無機物の懸濁浮遊物質や水処理用薬品として添加された無機凝集剤の加水分解生成物や粉末活性炭などが沈殿または浮上して泥状(スラリー状)になった汚泥や、固形粒子、藻類や菌類、無機凝集剤の加水分解生成物等を含む上水汚泥、し尿や浄化槽汚泥や、浄水処理、下水処理、民間排水等の水処理過程で発生する液状廃棄物である。
【0045】
以下、図1および図2に基づき、本発明の液状廃棄物の濃縮方法を説明する。
【0046】
[凝集工程(S100)]
本工程では、液状廃棄物から凝集フロックを形成させる。凝集フロックの形成は、返送された凝集濃縮汚泥(高分子凝集剤を添加した濃縮汚泥である)の液状廃棄物への混合によりなされる。凝集濃縮汚泥については後述する。本工程は、凝集槽において行われるのが一般的である。
【0047】
凝集濃縮汚泥と液状廃棄物が流入する凝集槽の汚泥濃度(SS濃度)は5.0~20g/Lが好ましく、SS濃度は10~20g/Lであることがより好ましい。このことから、凝集槽の汚泥濃度をモニタリングすることで、後述する返送工程(S130)において最適な凝集濃縮汚泥の返送流量を決定できる。
【0048】
凝集槽の前段には、無機凝集剤を添加、混合する混合槽が配備されていてもよい。
【0049】
混合槽で無機凝集剤が添加される場合、無機凝集剤は、市販品の硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリ硫酸第2鉄(ポリ鉄)、塩化第2鉄あるいはこれらの混合物が使用できる。また、これらの無機凝集剤を使用すると、調質時の液状廃棄物のpHが低下するため、適正な凝集pHに調整するために、アルカリ剤として市販の苛性ソーダ等を使用する。
【0050】
また、混合槽で添加される無機凝結剤に加えて、あるいは無機凝結剤に代えて、有機凝結剤を添加することとしてもよい。混合槽で有機凝結剤が添加される場合、有機凝結剤は市販品を用いることができ、例えば、ポリアルキルポリアミン、ポリエチレンイミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、エチレンジアミンエピクロルヒドリン重縮合物、ジシアンジアミド・塩化アンモニウム・ホルムアルデヒド重縮合物、ポリエチレン・ポリアミン・ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジアルキルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物などから1種以上を用いることができる。
【0051】
有機凝結剤は、製品を無希釈で使用しても、水などで任意に希釈して使用できる。有機凝結剤が添加される場合、液状廃棄物への有機凝結剤の添加率は、汚泥(液状廃棄物)の固形物TSに対して、概ね0.1質量%~10質量%であり、好ましくは、0.5質量%~5質量%である。
【0052】
凝集槽内の液状廃棄物を凝集濃縮汚泥と混合し、凝集フロックを作る調質を行った後に、凝集フロックを含む液状廃棄物は濃縮工程(S110)に移送される(以上、凝集工程(S100))。
【0053】
[濃縮工程(S110)]
本工程では、凝集フロックを含む液状廃棄物を濃縮し、濃縮汚泥と分離液を得る。濃縮に用いる濃縮機としては、例えば、重力濃縮槽などの重力濃縮装置、遠心濃縮機、スクリーン濃縮機、ベルト型ろ過濃縮機、造粒濃縮槽、浮上濃縮など市販の濃縮装置が使用できる。
【0054】
液状廃棄物が浄水場の凝集沈殿処理工程等から発生する凝集沈殿汚泥、すなわち、上水汚泥である場合、本工程で使用される濃縮機は重力濃縮槽が一般的である。
【0055】
濃縮前の液状廃棄物の汚泥濃度、SSは5g/Lから15g/Lであるが、濃縮後の濃縮汚泥の汚泥濃度、SSは、汚泥の性状や濃縮機の種類や運転条件で異なるが、20~40g/Lになる。
【0056】
汚泥濃度が20~40g/Lと高濃度の濃縮汚泥は、任意に嫌気性消化槽に移送してもよい。この場合、濃縮濃度の汚泥濃度が高濃度であることで嫌気性消化槽での滞留時間が長くなり、嫌気性消化性能を向上させることができる(以上、濃縮工程(S110))。
【0057】
[取り出し工程(S120)]
本工程では、濃縮工程(S110)で得られた濃縮汚泥の少なくとも一部を取り出す。濃縮汚泥の取り出しには、例えば、一端が前記濃縮機に接続され、他端が前記凝集槽または凝集槽の上流位置に接続された専用の返送配管と、当該返送配管に設けられた返送ポンプと、を含む返送ラインを用いることができる。これによれば、後段の返送工程(S130)において、高分子凝集剤を添加して得られた凝集濃縮汚泥を凝集槽に安定した汚泥流量で返送することができる。
【0058】
取り出される濃縮汚泥の量は、後述する凝集濃縮汚泥と液状廃棄物との好適な混合割合に基づき、この混合割合のために必要な量で取り出されることとなる(以上、取り出し工程(S120))。
【0059】
[返送工程(S130)]
本工程では、取り出された濃縮汚泥に高分子凝集剤を添加し、得られた凝集濃縮汚泥を凝集工程(S100)に返送する。
【0060】
高分子凝集剤の添加場所は、濃縮汚泥の(図示していない)返送ポンプの吸込部、吐出部、上記返送配管の途中に設けたラインミキサー、また図2の混合部位に混合槽を設け、この混合槽で添加することとしても良い。返送配管の途中に設けた混合槽の撹拌は、機械撹拌でも濃縮汚泥による水流による撹拌でもよい。
【0061】
返送配管の途中に設けた混合槽での濃縮汚泥の滞留時間は撹拌方法や撹拌強度、返送流量やその濃度で変化するが、例えば0.5~3分間とすることができる。滞留時間が0.5分以上であれば高分子凝集剤と濃縮汚泥の混合が十分である。一方、滞留時間が3分間以下であれば、返送配管の途中に設けた混合槽内に濃縮汚泥の凝集物が堆積する可能性や凝集性が低下する可能性が低く抑えることができる。
【0062】
高分子凝集剤は、市販品を使用することができ、アニオン性高分子凝集剤あるいはカチオン性高分子凝集剤あるいは両性高分子凝集剤、それぞれ単独でも組合せても使用できる。また、高分子凝集剤は、粉末状、液状(ディスパージョン状、エマルジョン状)などが使用できる。
【0063】
アニオン性高分子凝集剤は、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸カリウム、ポリメタクリル酸アンモニウムからなる群より選択されるいずれか1種以上を用いることが可能である。
【0064】
また、ポリアクリルアミド系高分子凝集剤も使用することができ、これは、アクリルアミドモノマーと(メタ)アクリル酸塩の共重合物である。
【0065】
液状廃棄物が浄水場の凝集沈殿処理工程等から発生する凝集沈殿汚泥、すなわち、上水汚泥である場合、高分子凝集剤としては、水道用高分子凝集剤を使用する。
【0066】
水道用高分子凝集剤は、日本水道協会で規格化(JWWA K163:2019、水道用ポリアクリルアミド)されている。水道用高分子凝集剤としては、水道用ポリアクリルアミドを本工程において用いることができる。一方で、アクリルアミドは発がん性を有することから、アクリルアミドモノマーが残留する濃縮工程(S110)の分離液や脱水ろ液が返送水として浄水処理の前段工程に返送されることを回避する観点から、アクリルアミドモノマーを含まないポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウムなどの水道用高分子凝集剤が好適である。
【0067】
カチオン性高分子凝集剤は、カチオン性モノマーを必須成分として、カチオン性モノマーの単独重合体又は共重合体、カチオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体との共重合体などから1種以上を選択して使用することができる。カチオン性モノマーとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートもしくはこれらのアルカリ金属塩、4級アンモニウム塩などである。
【0068】
また、両性高分子凝集剤は、カチオン性モノマー、アニオン性モノマー及びノニオン性モノマーを共重合し、分子内にカチオン単位、アニオン単位及びノニオン単位を有するものである。
【0069】
液状廃棄物が生物処理後の汚泥である場合、高分子凝集剤としては、任意のカチオン度や分子量のカチオン性高分子凝集剤や両性高分子凝集剤を使用することができる。
【0070】
液状廃棄物が上水汚泥である場合、濃縮汚泥に対して、高分子凝集剤として、0.1%塩粘度が2~5mPa・sで、アニオン当量が-9.0以下のポリ(メタ)アクリル酸塩の水道用高分子凝集剤を添加することが好ましいが、水道用高分子凝集剤としてはこれに限られるものではない。アクリルアミドモノマーを含む水道用高分子凝集剤も、アクリルアミドモノマーを含まない水道用高分子凝集剤も、それぞれ目的に応じて使用することができる。
【0071】
なお、塩粘度は、1Nの塩化ナトリウム水溶液に、ポリ(メタ)アクリル酸塩をその濃度が0.1質量%になるよう溶解した試料を、B型粘度計にて25℃の条件で測定した値であり、単位はmPa・sである。
【0072】
アニオン当量は以下の測定法で求めることができる値であって、単位はmeq/gである。ポリ(メタ)アクリル酸塩0.1%水溶液を調整し、メチルグリコールキトサン溶液(N/200)を5ml添加し、攪拌後、トイジンブルー指示薬を2~3滴添加し、ポリビニル硫酸カリウム溶液(PVSK,N/400)で滴定し、変色して10秒以上保持する時点を終点とする。同上の操作で試料を添加せずにブランク試験を行い、下記式によりアニオン当量Avを算出する。
【0073】
アニオン当量(Av)[meq/g]=
(ブランク滴定量ml-サンプル滴定量ml)×1/2×PVSKの力価
【0074】
濃縮汚泥への高分子凝集剤の添加率は0.02wt/wt%対SS以上2.0wt/wt%対SS以下である。高分子凝集剤の添加率が0.02wt/wt%対SS以上なら、高分子凝集剤の溶解液が濃縮汚泥と良く混合して、凝集槽で強固な凝集フロックが生成して、濃縮性能が向上する。高分子凝集剤の添加率が2.0wt/wt%対SS以下であることで、高分子凝集剤の使用量を抑えつつ凝集した凝集濃縮汚泥と液状廃棄物とから凝集槽で強固な凝集フロックが生成して、濃縮性能が向上する。
【0075】
予め設定された濃縮汚泥への高分子凝集剤添加率(「wt/wt%対SS」または「wt/wt%対TS」)と、凝集濃縮汚泥と液状廃棄物が流入する凝集槽の汚泥濃度と汚泥流量、濃縮汚泥濃度をモニタリングすることで、凝集工程(S100)に返送する凝集濃縮汚泥の最適な返送流量が決定できる。
【0076】
また、返送工程(S130)の返送配管の途中に汚泥流量計や汚泥濃度計を設置して、返送流量や汚泥濃度のモニターすることで、凝集工程(S100)への凝集濃縮汚泥の返送量が制御できて、安定した濃縮を行うことができる。
【0077】
汚泥濃度の検出は、近赤外光式汚泥濃度計、レーザー光式汚泥濃度計、マイクロ波汚泥濃度計などの市販の汚泥濃度計が使用できる。汚泥流量の検出は市販の電磁流量計や超音波流量計などが使用できる。凝集濃縮汚泥を返送するポンプは市販品でよく、回転数制御で設定流量に調節して返送することができる。
【0078】
本発明の液状廃棄物の濃縮方法によれば、凝集工程(S100)における液状廃棄物からの凝集フロックの形成が、液状廃棄物に直接高分子凝集剤を添加するのではなく、返送された凝集濃縮汚泥を液状廃棄物と混合することによりなされるので、凝集反応の際の粘度上昇が従来よりも抑制されて凝集反応時の分散性が向上する。よって、従来の凝集槽に流入する汚泥(液状廃棄物)の流量を基準とした高分子凝集剤の注入率設定方法に比べて、液状廃棄物の性状等に関わらず常に最適な添加量で高分子凝集剤を添加することが可能となる。
【0079】
これにより、高分子凝集剤の使用量を最適化して効率的な処理を行いながら、高い凝集効果と濃縮性を安定して継続的に得ることが可能となる。
【0080】
最適な高分子凝集剤添加量の凝集濃縮汚泥を凝集工程(S100)に返送すれば、さらに高分子凝集剤を凝集工程(S100)において追加添加する必要はない。むしろ、凝集工程(S100)で高分子凝集剤を追加添加すると、高分子凝集剤溶液の粘性のために凝集槽で分散均一化に時間がかかり、かえって凝集性や濃縮性が低下する可能性がある。
【0081】
なお、汚泥濃度の指標としてSS(懸濁物質)やTS(Total solids:全蒸発残留物)がある。また、下水のような溶解塩類濃度(食塩などの溶解塩類濃度)が低い汚泥ではSSとTSの測定値は同じであるが、溶解塩類濃度が高いし尿処理などでは汚泥のSSとTSの数値が異なる場合、汚泥濃度はSSを採用する。
【0082】
本発明において、SS及びTSは以下の定義に従う。
SS:K 0102:2019 工場排水試験方法 14.1 懸濁物質
TS:K 0102:2019 工場排水試験方法 14.2 全蒸発残留物
【0083】
以上、本発明の液状廃棄物の濃縮方法の一例を、図1および図2に基づき説明したが、本発明はこの一例に限られない。
【0084】
例えば、濃縮工程(S110)で得られた濃縮汚泥の少なくとも一部が取り出され、凝縮濃縮汚泥として凝集工程(S100)に返送されているが、濃縮工程(S110)で得られた濃縮汚泥の残部を脱水することとしてもよい。
【0085】
図1に示すように、本発明の液状廃棄物の濃縮方法は、任意工程として脱水工程(S140)を含む。脱水工程(S140)を以下に説明する。
【0086】
[脱水工程(S140)]
本工程では、取り出し工程(S120)後に前記取り出された前記濃縮汚泥の残部を脱水する。
【0087】
脱水は、濃縮汚泥に機械的な圧力をかけて、濃縮汚泥から水分を絞り出して、含水率の低い脱水ケーキを得るものである。
【0088】
本工程に用いる脱水装置は、従来公知の装置を用いることができ、例えば、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、加圧脱水機、真空脱水機、造粒調質式高効率直接脱水法、多重円盤型脱水機、スクリュープレス型脱水機、電気浸透式脱水機などが挙げられる。
【0089】
得られた脱水ケーキは、従来同様、搬出して埋立処分されたり、焼却炉で焼却されたりして処分される(以上、脱水工程(S140))。
【0090】
脱水工程(S140)の含む本発明の液状廃棄物の濃縮方法によれば、濃縮工程(S110)後に得られた濃縮汚泥は大きくて強固なフロックを含むので、脱水工程(S140)における脱水性能も向上し、得られた脱水ケーキの含水率が従来よりも低減している。よって、脱水ケーキの運搬コストや、焼却時の燃料コストを従来より低減させることができる。
【0091】
さらに、本発明の液状廃棄物の濃縮方法においては、濃縮汚泥に高分子凝集剤が添加され、また、液状廃棄物に対して任意に無機凝集剤や有機凝結剤が添加されるが、それ以外の添加剤を使用してもよい。例えば、濃縮性向上のため、液状廃棄物に短繊維状薬剤が添加されてもよい。
【0092】
短繊維状薬剤は、例えば、古紙や木綿などの天然の短繊維物、化学合成された短繊維物や再生短繊維物が挙げられる。プラスチック廃棄物から再生製糸した短繊維物やビスコースレーヨンからなる短繊維物が好適である。
【0093】
中でもビスコースレーヨンからなる短繊維物である短繊維状薬剤(例えばエバグロースU-700シリーズ、水ing社製)は濃縮効果に優れる。
【0094】
液状廃棄物への分散性および液状廃棄物(汚泥)との親和性に優れる観点から、繊維長さが5~10mmで含水率が30~80wt/wt%の短繊維状薬剤が好適である。
【0095】
短繊維状薬剤の添加率は、液状廃棄物あたり0.02~1.0wt/vol%であり、好ましくは0.1~0.5wt/vol%である。
【0096】
短繊維状薬剤の添加率が、液状廃棄物あたり0.02wt/vol%以上であることで、液状廃棄物と繊維によりさらに強固な凝集フロックを得ることができ、濃縮工程(S110)での濃縮性が向上する。したがって、さらに高濃度の濃縮汚泥が得られ、分離液のSS濃度やBOD濃度の低減が発揮される。
【0097】
また、短繊維状薬剤の添加率が、液状廃棄物あたり1.0wt/vol%未満であることで、液状廃棄物中に短繊維状薬剤を均一に混合分散でき、液状廃棄物の油分やSSを効果的に捕捉でき、また経済的にも有利である。
【0098】
<液状廃棄物の濃縮装置>
図3は、本発明の液状廃棄物の処理装置10を示す模式図である。図示のように、本発明の液状廃棄物の処理装置10は、凝集手段20と、濃縮手段30と、配管手段40と、混合手段50と、返送手段60と、を有する。
【0099】
凝集手段14は、液状廃棄物から凝集フロックを形成させる手段であり、一般的には凝集槽である。凝集槽内で混合された液状廃棄物と返送された凝集濃縮汚泥とが撹拌され、凝集フロックが成長し、形成される。
【0100】
凝集槽の前段には、無機凝集剤を添加、混合する混合槽が配備されていてもよい。また、混合槽で添加される無機凝結剤に加えて、あるいは無機凝結剤に代えて、有機凝結剤を添加することとしてもよい。
【0101】
凝集槽内の汚泥濃度(SS濃度)、凝集濃縮汚泥の返送流量、無機凝集剤、および有機凝結剤については、上記液状廃棄物の濃縮方法で述べたとおりであり、ここではその記載を省略する。凝集手段20の下流には、濃縮手段30が設けられている。
【0102】
濃縮手段30は、凝集フロックを含む液状廃棄物を濃縮し、濃縮汚泥と分離液を得る手段である。
【0103】
濃縮手段30としては、従来公知の濃縮手段を用いることができ、例えば、重力濃縮槽などの重力濃縮装置、遠心濃縮機、スクリーン濃縮機、ベルト型ろ過濃縮機、造粒濃縮槽、浮上濃縮など市販の濃縮装置が使用できる。
【0104】
中でも、濃縮手段30が重力濃縮装置であるか、または凝集手段20および濃縮手段30が造粒濃縮装置であることが好ましい。
【0105】
図4は、濃縮手段が重力濃縮装置である場合の液状廃棄物の処理装置を示す模式図である。図示のように、重力濃縮装置は、凝集槽からの凝集フロックを含む液状廃棄物(調質された汚泥)をセンターウエル内に導入し、ピケットフェンスと汚泥掻き寄せ板を駆動装置で回転させることで、調質された汚泥中の水や気泡を分離するために緩く撹拌する。汚泥は重力で分離されて濃縮汚泥と分離液となり、分離液は分離液流出管から引き抜かれ、濃縮汚泥は重力濃縮装置下方の濃縮汚泥引き抜き管より引き抜かれる。
【0106】
本発明によれば、凝集フロックが強固なものであるので、槽内のピケットフェンスで汚泥を攪拌しても、汚泥が壊れず、汚泥粒子間の水が排出しやすく、高濃度の濃縮汚泥を得ることができる。高濃度の濃縮汚泥が得られるので、返送する濃縮汚泥流量が低減でき、返送ポンプ(図示していない)の動力費の低減になる。また、後段に脱水設備を設ける場合には、脱水機の脱水性能向上や嫌気性消化での濃縮汚泥の滞留時間が長くなり有機物除去効果が向上する。
【0107】
図5は、凝集手段および濃縮手段が造粒濃縮装置である場合の液状廃棄物の処理装置を示す模式図である。図示のように、造粒濃縮装置は、撹拌羽根を有する撹拌機を備えた造粒濃縮槽を有し、底部に設けられた汚泥流入管から液状廃棄物を槽内に流入させ、同じく底部に設けられた返送配管から凝集濃縮汚泥を流入させる。
【0108】
液状廃棄物と凝集濃縮汚泥はドラフトチューブと撹拌機で撹拌混合されて凝集フロックを形成し、さらに大きな造粒物を形成する。そこからスクリーンによって造粒された濃縮汚泥と分離液に分離する。造粒濃縮装置によれば、強固で大きい凝集フロックが生成するので、閉塞しやすいスクリーンの目開きを大きくすることができ、安定した濃縮と、高濃度の濃縮汚泥が得られる。
【0109】
分離液は、液状廃棄物が有機汚泥であった場合は、分離液は下水処理工程などに送られて、水処理される。液状廃棄物が無機汚泥であった場合、分離液は返送水として例えば浄水処理の前段工程に返送され、あるいは放流される。濃縮汚泥は配管手段から取り出される。
【0110】
配管手段40は、濃縮手段30で得られた濃縮汚泥の少なくとも一部を取り出す手段であり、例えば、一端が濃縮手段30に接続され、他端が凝集手段20または凝集手段20および濃縮手段30が造粒濃縮装置である場合には他端が濃縮手段30の底部に接続された専用の返送配管と、当該返送配管に設けられた返送ポンプと、を含む返送ラインを用いることができる。当該返送ラインには、混合手段50が設けられている。
【0111】
混合手段50は、配管手段40で取り出された濃縮汚泥に高分子凝集剤を添加・混合し、凝集濃縮汚泥を得る手段である。混合手段50としては、例えば、濃縮汚泥の(図示していない)返送ポンプの吸込部、吐出部もしくは上記返送配管の途中に設けたラインミキサーや混合槽が挙げられる。混合槽における撹拌は、機械撹拌でも濃縮汚泥による水流による撹拌でもよい。混合槽の滞留時間、添加される高分子凝集剤については、上記液状廃棄物の濃縮方法において説明したとおりであり、ここではその説明を省略する。
【0112】
返送手段60は、混合手段50で得られた凝集濃縮汚泥を凝集手段に返送する手段である。返送手段60の具体的構成は上記配管手段40で返送ラインとして述べたとおりである。
【0113】
また、返送ラインの返送配管の途中に汚泥流量計や汚泥濃度計を設置して、返送流量や汚泥濃度のモニターすることとしてもよい。汚泥濃度の検出などについては、上記液状廃棄物の濃縮方法において説明したとおりであり、ここではその説明を省略する。
【0114】
また、図3に示すように、本発明の液状廃棄物の処理装置10では、返送配管が濃縮汚泥の少なくとも一部を濃縮手段30から取り出した後に混合手段50を経て凝集手段20に返送する返送手段60と、濃縮汚泥の残部を下流に移送する配管とに分岐しているが、当該配管の先に脱水手段(図示せず)を設けることとしてもよい。
【0115】
脱水手段は、濃縮汚泥に機械的な圧力をかけて、濃縮汚泥から水分を絞り出して、含水率の低い脱水ケーキを得る手段である。脱水手段としては、従来公知の手段を用いることができる。得られた脱水ケーキは、脱水ケーキは埋立処分等で外部搬出されたり、焼却炉で焼却処分されたりする。
【0116】
脱水手段を含む本発明の液状廃棄物の処理装置によれば、強固な凝集フロックが得られることから、濃縮汚泥を脱水する際の脱水性能も向上しており、従来より脱水ケーキの含水率が低下する。したがって、搬出の際の運搬コストが低減でき、さらに焼却処分の際に必要な燃料コストを低減することができる。
【0117】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
【実施例
【0118】
1.実施例1
分流式下水処理場の標準活性汚泥処理設備の余剰汚泥(液状廃棄物)(pH 6.5、 SS 10g/L)を対象に、表1の濃縮試験装置で、余剰汚泥流量 4.5m/日、液温20~25℃でワイヤのスリット幅1mmのスクリーンで濃縮試験を行った。濃縮汚泥の汚泥濃度と、分離液のSS濃度を測定した。
【0119】
【表1】
【0120】
表1の凝集槽の余剰汚泥(液状廃棄物)に、予め調製しておいた濃縮汚泥にカチオン性高分子凝集剤(エバグロースC-104G、水ing社製)を余剰汚泥のSS重量当たり0.02~0.5wt%(濃縮汚泥のSS重量当たり0.03~0.74wt%)添加した凝集濃縮汚泥を添加、混合して凝集させた凝集フロックをスクリーンで濃縮した。
【0121】
予め調製しておいた濃縮汚泥は、余剰汚泥にカチオン性高分子凝集剤を添加率0.3wt/wt%対SSで調質後に表1の濃縮試験装置で予め濃縮した濃縮汚泥(SS 38g/L、表2の試験番号No.11)である。
【0122】
また、凝集槽に濃縮汚泥を返送せず、凝集槽に直接、高分子凝集剤を添加した場合や、凝集槽に直接、高分子凝集剤を添加し、更に、高分子凝集剤を添加しない濃縮汚泥を添加した場合についても試験した。
【0123】
結果を表2に示す。
【0124】
表2の高分子凝集剤添加率(wt/wt%対SS)は、凝集槽SS重量に対する高分子凝集剤の添加率である。
【0125】
表2の(i)「高分子凝集剤を濃縮汚泥に添加」は、本発明の方法で、高分子凝集剤の必要添加量を濃縮汚泥に添加して、高分子凝集剤を含む濃縮汚泥(凝集濃縮汚泥)を凝集槽に返送した場合である。
【0126】
濃縮汚泥のSS重量に対する高分子凝集剤添加率は括弧内に併記する(試験番号No.1~9)。
【0127】
表2の(ii)「濃縮汚泥を返送せず高分子凝集剤を凝集槽に添加」は、濃縮汚泥に高分子凝集剤を添加せず、濃縮汚泥も凝集槽に返送せずに、凝集槽に高分子凝集剤を添加した場合である(試験番号No.10~13)。
【0128】
表2の(iii)「濃縮汚泥を返送し、高分子凝集剤を凝集槽に添加」は、凝集槽の濃縮汚泥に高分子凝集剤を添加しない濃縮汚泥を返送して、高分子凝集剤を凝集槽に添加した場合である(試験番号No.14~17)。
【0129】
【表2】
【0130】
凝集槽のSS重量に対して添加率0.3wt/wt%対SSで高分子凝集剤を濃縮汚泥に添加して得られる凝集濃縮汚泥を凝集槽のSS20g/Lになるように、凝集槽に返送し、凝集濃縮汚泥と余剰汚泥を凝集槽で凝集させてスクリーン濃縮すると、濃縮汚泥のSSは65g/Lで、その分離液のSSは110mg/Lであった(試験番号No.5)。
【0131】
凝集濃縮汚泥も濃縮汚泥も凝集槽に返送せず、凝集槽に凝集槽のSS重量に対して高分子凝集剤添加率0.3wt/wt%対SSの高分子凝集剤を添加し、凝集させてスクリーン濃縮すると、濃縮汚泥のSSは38g/Lで、その分離液のSSは220mg/Lであった(試験番号No.11)。
【0132】
高分子凝集剤を添加しない濃縮汚泥を凝集槽に返送し、凝集槽のSSを20g/Lに調整して、凝集槽のSS重量に対して高分子凝集剤添加率0.4wt/wt%対SSの高分子凝集剤を凝集槽に添加し、凝集させてスクリーン濃縮すると、濃縮汚泥のSSは44g/Lで、その分離液のSSは300mg/Lであった(試験番号No.15)。
【0133】
本発明のように、高分子凝集剤必要添加量を濃縮汚泥に添加して、高分子凝集剤を含む濃縮汚泥(凝集濃縮汚泥)を凝集槽に返送し、凝集槽で余剰汚泥(液状廃棄物)を調質してスクリーン濃縮することで、高分子凝集剤添加量を減らしても得られた濃縮汚泥のSS濃度が高まり、分離液のSS濃度も低減できた。
【0134】
2.実施例2
実施例1で得られた濃縮汚泥を0.5L分取し、実施例1で使用した高分子凝集剤で調質を行った。濃縮汚泥に対する高分子凝集剤の添加率は、0.5~2.0wt/wt%対SSであった。調質後にろ布面積100cmのろ布上に調質した濃縮汚泥を乗せて、一軸加圧で圧力50kPaで10分間加圧して、加圧脱水試験機で加圧脱水試験を行った。加圧脱水試験後に脱水ケーキを取り出して、含水率を測定した。また、ろ布から排出された脱水ろ液のSSを測定した。
【0135】
結果を表3に示す。
【0136】
脱水試験に使用した濃縮汚泥は以下の3種類で、表3の濃縮汚泥に対する高分子凝集剤添加率欄に示す(i)~(iii)の濃縮汚泥の調製方法と、濃縮汚泥濃度は以下のとおりである。
【0137】
(i)高分子凝集剤を濃縮汚泥に添加して得られた濃縮汚泥であり、表2(実施例1)の試験番号No.5に対応し、濃縮汚泥濃度はSS65g/Lである。
【0138】
(ii)濃縮汚泥を返送せず高分子凝集剤を凝集槽して得られた濃縮汚泥であり、表2(実施例1)の試験番号No.11に対応し、濃縮汚泥濃度はSS38g/Lである。
【0139】
(iii)濃縮汚泥を返送し、高分子凝集剤を凝集槽に添加して得られた濃縮汚泥であり、表2(実施例1)の試験番号No.15に対応し、濃縮汚泥濃度はSS44g/Lである。
【0140】
【表3】
【0141】
表2(実施例1)の試験番号No.5の濃縮汚泥に高分子凝集剤を1.0wt/wt%対SSで添加して、調質後に加圧脱水すると、脱水ケーキの含水率は 80%、脱水ろ液のSSは 310mg/Lであった(試験番号No.2)。
【0142】
表2(実施例1)の試験番号No.11の濃縮汚泥に高分子凝集剤を1.5wt/wt%対SSで添加して、調質後に加圧脱水すると、脱水ケーキの含水率は 82%、脱水ろ液のSSは 380mg/Lであった(試験番号No.6)。
【0143】
表2(実施例1)の試験番号No.15の濃縮汚泥に高分子凝集剤を1.5wt/wt%対SSで添加して、調質後に加圧脱水すると、脱水ケーキの含水率は 82%、脱水ろ液のSSは 350mg/Lであった(試験番号No.10)。
【0144】
本発明のように、必要な高分子凝集剤添加量を濃縮汚泥に添加して、高分子凝集剤を含む濃縮汚泥(凝集濃縮汚泥)を凝集槽に返送し、凝集槽で余剰汚泥(液状廃棄物)を調質してスクリーン濃縮して得られる濃縮汚泥を脱水することで、高分子凝集剤添加量を減らしても低含水率の脱水ケーキが得られる。
【0145】
本発明で得られる濃縮汚泥は、後段の脱水性能の向上に寄与する。
【0146】
3.実施例3
浄水施設の急速ろ過設備で、濁度3~5度の河川水を水道原水に、PAC注入率20mg/Lで凝集沈殿処理して沈殿池から排出される凝集沈殿汚泥(pH 6.5、 SS 5.1g/L)以下、上水汚泥(液状廃棄物))を対象に、表1の濃縮試験装置で濃縮試験を行った。
【0147】
表1の凝集槽に上水汚泥(液状廃棄物)と、予め調製しておいた濃縮汚泥にアクリルアミドを含まないアニオン性水道用高分子凝集剤(エバグロースWA-200、水ing(株)製)を上水汚泥のSS重量当たり0.2~0.4wt%(濃縮汚泥のSS重量当たり0.35~0.81wt%)添加した凝集濃縮汚泥を添加、混合して凝集させた凝集フロックをスクリーンで濃縮した。
【0148】
予め調製しておいた濃縮汚泥は、上水汚泥に同じアクリルアミドを含まないアニオン性水道用高分子凝集剤を添加率0.4wt/wt%対SSで調質後に表1の濃縮試験装置で濃縮した濃縮汚泥(SS 36g/L、表4の試験番号No.7)である。
【0149】
また、実施例1と同様に、凝集槽に濃縮汚泥を返送せず、凝集槽に直接、高分子凝集剤を添加した場合や、凝集槽に直接、高分子凝集剤を添加し、更に、高分子凝集剤を添加しない濃縮汚泥を添加した場合についても試験した。
【0150】
結果を表4に示す。
【0151】
表4の(i)「高分子凝集剤を濃縮汚泥に添加」は、本発明の方法で、高分子凝集剤の必要添加量を予め調製しておいた濃縮汚泥に添加して、高分子凝集剤を含む濃縮汚泥(凝集濃縮汚泥)を凝集槽に返送した場合である。
【0152】
濃縮汚泥のSS重量に対する高分子凝集剤添加率を表4の括弧内に併記する(試験番号No.1~5)。
【0153】
表4の(ii)「濃縮汚泥を返送せず高分子凝集剤を凝集槽に添加」は、濃縮汚泥に高分子凝集剤を添加せず、濃縮汚泥も凝集槽に返送せずに、凝集槽に高分子凝集剤を添加した場合である(試験番号No.6~8)。
【0154】
表4の(iii)「濃縮汚泥を返送し、高分子凝集剤を凝集槽に添加」は、凝集槽に濃縮汚泥に高分子凝集剤を添加しない濃縮汚泥を返送して、高分子凝集剤を凝集槽に添加した場合である(試験番号No.9~11)。
【0155】
【表4】
【0156】
凝集槽のSS重量に対して添加率0.3wt/wt%対SSで高分子凝集剤を濃縮汚泥に添加して得られる凝集濃縮汚泥を凝集槽のSS10g/Lになるように、凝集槽に返送し、凝集濃縮汚泥と余剰汚泥(液状廃棄物)を凝集槽で凝集させてスクリーン濃縮すると、濃縮汚泥のSSは44g/Lで、その分離液のSSは100mg/Lであった(試験番号No.2)。
【0157】
凝集濃縮汚泥も濃縮汚泥も凝集槽に返送せず、凝集槽に凝集槽のSS重量に対して高分子凝集剤添加率0.4wt/wt%対SSの高分子凝集剤を添加して、凝集させてスクリーン濃縮すると、濃縮汚泥のSSは36g/Lで、その分離液のSSは260mg/Lであった(試験番号No.7)。
【0158】
高分子凝集剤を添加しない濃縮汚泥を凝集槽に返送し、凝集槽のSSを10g/Lに調整して、凝集槽のSS重量に対して高分子凝集剤添加率0.4wt/wt%対SSの高分子凝集剤を凝集槽に添加して、凝集させてスクリーン濃縮すると、濃縮汚泥のSSは39g/Lで、その分離液のSSは330mg/Lであった(試験番号No,10)。
【0159】
本発明のように、必要な高分子凝集剤添加量を濃縮汚泥に添加して、高分子凝集剤を含む濃縮汚泥(凝集濃縮汚泥)を凝集槽に返送し、凝集槽で上水汚泥(液状廃棄物)を調質してスクリーン濃縮することで、高分子凝集剤添加量を減らしても得られた濃縮汚泥のSS濃度が高まり、分離液のSS濃度も低減できた。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9