(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】ポリオール組成物、ポリウレタン組成物、及びポリウレタン発泡体
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20250203BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20250203BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20250203BHJP
【FI】
C08G18/00 H
C08G18/08 038
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2021520623
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012725
(87)【国際公開番号】W WO2021193871
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2020054987
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】柿本 悠
(72)【発明者】
【氏名】梶田 倫生
(72)【発明者】
【氏名】牛見 建彦
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109485903(CN,A)
【文献】特開2005-350666(JP,A)
【文献】特開平06-128404(JP,A)
【文献】特開2016-124912(JP,A)
【文献】特表2018-502211(JP,A)
【文献】特開2006-169474(JP,A)
【文献】特開2020-128459(JP,A)
【文献】特開2020-090582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08L 75/00- 75/16
C08K 3/00- 13/08
CAplus/REGISTRY
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物、フィラー、触媒、及び沸点が-10℃以下の有機系発泡剤を含むポリオール組成物
と、
ポリイソシアネート化合物及び沸点が-10℃以下の有機系発泡剤を含むポリイソシアネート組成物と、を有し、
前記ポリオール組成物は第1のエアゾール容器に封入されており、
前記ポリイソシアネート組成物は第2のエアゾール容器に封入されており、
下記式(1)で算出されるフィラー割合が5~80%である、ポリウレタン組成物。
式(1) フィラー割合(%)=(E/D)×100
D:ポリオール組成物をエアゾール容器に封入して、該容器を35℃に保温した後、該容器から均一に混合された状態でポリオール組成物を10秒間吐出して得た吐出物を、40℃で30分間乾燥させた後の重量
E:Dの乾燥後の吐出物をアセトンで希釈して吸引濾過を行い、得られた凝集物の重量
【請求項2】
前記有機系発泡剤が、式(1)で表される炭化水素化合物、式(2)で表されるエーテル化合物、及び炭素数3以下のフッ素含有化合物から選択される少なくとも1種以上である、請求項1
に記載の
ポリウレタン組成物。
式(1):C
nH
2n+2
(式(1)において、nは1以上4以下の整数である)
式(2):C
nH
2n+1-O-C
mH
2m+1
(式(2)において、n及びmは、それぞれ独立して1又は2である)
【請求項3】
前記有機系発泡剤が、プロパン、ジメチルエーテル、及びHFO-1234zeから選択される少なくとも1種以上である、請求項1
又は2に記載の
ポリウレタン組成物。
【請求項4】
前記触媒が、樹脂化触媒及び三量化触媒を含む、請求項1~
3のいずれかに記載の
ポリウレタン組成物。
【請求項5】
イソシアネートインデックスが200~1000である請求項
1~4のいずれかに記載のポリウレタン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール組成物、該ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とを備えるポリウレタン組成物、及び該ポリウレタン組成物から形成されたポリウレタン発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン発泡体(ポリウレタンフォーム)は、自動車、鉄道車輌、船舶などの乗り物、建築物などにおいて断熱材として使用されている。ポリウレタン発泡体には、別々の容器に充填されたポリオール組成物とポリイソシアネート組成物を混合して発泡体を形成する2液型ポリウレタンが広く使用される。
2液型ポリウレタンは、各液を比較的簡単な構成で容器から吐出させ混合させることが可能になるから、エアゾール容器で使用されることがある。2液型ポリウレタンがエアゾール容器で使用される場合、一方の容器にポリオール化合物と低沸点化合物が、他方の容器にポリイソシアネート化合物と低沸点化合物が充填される。各容器からは、低沸点化合物の蒸気圧により、ポリオール液剤及びポリイソシアネート液剤をそれぞれ吐出させ、それらを混合することで、ポリウレタン発泡体を形成する。
【0003】
エアゾール容器に使用される低沸点化合物としては、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ジメチルエーテル、液化石油ガスなどが使用される。また、HFC,HCFCは、地球温暖化係数が高いことから、これらを代替する化合物が求められている。
例えば、特許文献1では、低沸点化合物を特定量含む、硬質ポリウレタンフォーム用2液型エアゾール組成物について記載されており、低沸点化合物として、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)などを使用することにより、地球温暖化に対して悪影響を与えないことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の2液型エアゾール組成物により形成されたポリウレタン発泡体は、収縮し易い傾向があり、形状安定性の観点から改善の余地があった。これに対して、発泡体の収縮を抑制するため、ポリオール組成物にフィラーを配合することが考えられる。しかしながら、フィラーを配合することにより、エアゾール容器からのポリオール組成物の吐出量が不足し、組成物の混合効率が低下したり、施工性が悪化したりするなど、不具合が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、容器に封入した場合において、吐出し易いポリオール組成物であり、収縮率の低いポリウレタン発泡体を製造可能なポリオール組成物、及び該ポリオール組成物を備えるポリウレタン組成物、並びにポリウレタン発泡体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ポリオール化合物、フィラー、触媒、及び沸点が-10℃以下の有機系発泡剤を含むポリオール組成物、該ポリオール組成物を備えるポリウレタン組成物、並びにポリウレタン発泡体により、上記課題が解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[11]を提供する。
[1]ポリオール化合物、フィラー、触媒、及び沸点が-10℃以下の有機系発泡剤を含むポリオール組成物。
[2]下記式(1)で算出されるフィラー割合が5~80%である、上記[1]に記載のポリオール組成物。
式(1) フィラー割合(%)=(E/D)×100
D:ポリオール組成物を容器に封入して、該容器を35℃に保温した後、該容器からポリオール組成物を10秒間吐出して得た吐出物を、40℃で30分間乾燥させた後の重量
E:Dの乾燥後の吐出物をアセトンで希釈して吸引濾過を行い、得られた凝集物の重量
[3]前記有機系発泡剤が、式(1)で表される炭化水素化合物、式(2)で表されるエーテル化合物、及び炭素数3以下のフッ素含有化合物から選択される少なくとも1種以上である、上記[1]又は[2]に記載のポリオール組成物。
式(1):CnH2n+2
(式(1)において、nは1以上4以下の整数である)
式(2):CnH2n+1-O-CmH2m+1
(式(2)において、n及びmは、それぞれ独立して1又は2である)
[4]前記有機系発泡剤が、プロパン、ジメチルエーテル、及びHFO-1234zeから選択される少なくとも1種以上である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリオール組成物。
[5]前記触媒が、樹脂化触媒及び三量化触媒を含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載のポリオール組成物。
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載のポリオール組成物を封入した容器。
[7]エアゾール容器である、上記[6]に記載の容器。
[8]上記[1]~[5]のいずれかに記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート組成物とを備える、ポリウレタン組成物。
[9]イソシアネートインデックスが200~1000である上記[8]に記載のポリウレタン組成物。
[10]上記[9]に記載のポリウレタン組成物から形成される、ポリウレタン発泡体。
[11]収縮率が20%未満である、上記[10]に記載のポリウレタン発泡体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容器に封入した場合において、吐出し易いポリオール組成物であり、収縮率の低いポリウレタン発泡体を製造可能なポリオール組成物、及び該ポリオール組成物を備えるポリウレタン組成物、並びにポリウレタン発泡体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】混合システムの一実施形態を示す模式図である。
【
図2】混合システムの別の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ポリオール化合物、フィラー、触媒、及び沸点が-10℃以下の有機系発泡剤を含むポリオール組成物である。
【0011】
[沸点が-10℃以下の有機系発泡剤]
本発明のポリオール組成物は、沸点が-10℃以下の有機系発泡剤(以下、単に有機系発泡剤ともいう)を含有する。有機系発泡剤は、その蒸気圧によりポリオール組成物を吐出させると共に、ポリオール組成物を吐出する際に気化することで、ポリオール組成物や後述するポリウレタン組成物を発泡させる。なお、本明細書において、沸点とは1気圧における沸点を意味する。ここで、有機系発泡剤の沸点は、有機系発泡剤単体の沸点を意味し、例えば、有機系発泡剤が他の化合物と共沸する場合において、その共沸する沸点を意味するものではない。
【0012】
該有機系発泡剤の沸点が-10℃を超える場合は、フィラーを含有するポリオール組成物を吐出させにくくなる。ポリオール組成物をより吐出し易くする観点から、有機系発泡剤の沸点は、-12℃以下であることが好ましく、-15℃以下であることがより好ましい。
【0013】
本発明における有機系発泡剤は、沸点が-10℃以下の有機系発泡剤であれば特に制限されないが、ポリオール組成物を吐出し易くする観点から、式(1)で表される炭化水素化合物、式(2)で表されるエーテル化合物、及び炭素数3以下のフッ素含有化合物から選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0014】
(式(1)で表される炭化水素化合物)
式(1)で表される炭化水素化合物は以下のとおりである。
式(1):CnH2n+2
式(1)において、nは1以上4以下の整数である。
式(1)で表される炭化水素化合物としては、具体的には、メタン、エタン、プロパン、イソブタン、ノルマルブタンなどの各種ブタンなどが挙げられる。取り扱い性、ポリオール組成物の吐出性などの観点から、式(1)で表される炭化水素化合物は、nが2以上4以下の整数が好ましく、具体的には、エタン、プロパン、イソブタン、ノルマルブタンなどの各種ブタンなどが好ましい。式(1)で表される炭化水素化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、プロパンとブタン類とを主成分とするLPG(液化石油ガス)なども好適な具体例として挙げられる。
【0015】
(式(2)で表されるエーテル化合物)
式(2)で表されるエーテル化合物は以下のとおりである。
式(2):CnH2n+1-O-CmH2m+1
式(2)において、n及びmは、それぞれ独立して1又は2である。式(2)で表されるエーテル化合物の中でも、n及びmは共に1であることが好ましい。すなわち、式(2)で表されるエーテル化合物は、ジメチルエーテルであることが好ましい。
【0016】
(炭素数3以下のフッ素含有化合物)
本発明における炭素数3以下のフッ素含有化合物としては、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)などが挙げられる。これらの中でも、地球温暖化係数が低く、環境負荷を低減する観点から、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)が好ましい。
ハイドロフルオロオレフィンとしては、ポリオール組成物の吐出性を良好にする観点から、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)などが好ましい。これらの中でも、HFO-1234zeが好ましい。
【0017】
本発明における有機系発泡剤は、上述のように、式(1)で表される炭化水素化合物、式(2)で表されるエーテル化合物、及び炭素数3以下のフッ素含有化合物から選択される少なくとも1種以上であることが好ましく、特に、プロパン、ジメチルエーテル、及びHFO-1234zeから選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0018】
ポリオール組成物における有機系発泡剤の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは5~50質量部であり、より好ましくは8~35質量部であり、さらい好ましくは10~30質量部である。
【0019】
ポリオール組成物は、沸点が-10℃以下の有機系発泡剤を含むが、本発明の効果を害さない範囲で、沸点が-10℃以下の有機系発泡剤以外のその他の発泡剤を配合してもよい。その他の発泡剤は、ポリオール組成物に含まれる発泡剤全量基準に対して、好ましくは70質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0020】
[フィラー]
本発明におけるポリオール組成物は、フィラーを含有する。フィラーを含有することにより、得られるポリウレタン発泡体の収縮を抑制することができる。
ポリオール組成物の式(1)で算出されるフィラー割合は5~80%であることが好ましい。フィラー割合が5%以上であると、得られるポリウレタン発泡体の収縮を抑制しやすくなり、フィラー割合が80%以下であると、ポリオール組成物を容器から吐出しやすくなる。
ポリオール組成物のフィラー割合は、好ましくは8~78%であり、より好ましくは10~75%である。
【0021】
フィラー割合は、以下に示す式(1)により算出される。
式(1) フィラー割合(%)=(E/D)×100
D:ポリオール組成物を容器に封入して、該容器を35℃に保温した後、該容器からポリオール組成物を10秒間吐出して得た吐出物を、40℃で30分間乾燥させた後の重量
E:Dの乾燥後の吐出物をアセトンで希釈して吸引濾過を行い、得られた凝集物の重量
【0022】
上記Dにおいて、本発明のポリオール組成物を容器に封入する。容器は、本発明の有機系発泡剤の蒸気圧で、ポリオール組成物を吐出可能な容器であり、典型的には、後述するエアゾール容器である。35℃に保温する操作は、例えば、容器を35℃の温水に、60分間浸漬するとよい。また、上記Dにおいて10秒間ポリオール組成物を吐出させる際には、ポリオール組成物を構成する各成分が均一に混合されている状態で吐出する。例えば、均一なるように十分に混合されたポリオール組成物であり、かつ10秒間の間にすべてが吐出されない程度の十分な量のポリオール組成物が充填された未使用のエアゾール容器を用いると、上記10秒の間の吐出量は一定となる。なお、ポリオール組成物を構成する各成分を均一に混合するために、吐出前に容器を十分に振盪するとよい。容器の振盪は、例えば容器を手で持って上下に振ることにより行うことができる。ポリオール組成物を均一に混合する方法は、前記した方法に限定されるものではない。
【0023】
また、吐出物を、40℃で30分間乾燥させる際は、直径10cm、高さ12cmの円筒状のポリエチレン製容器に吐出物を入れ、該容器の上部を開放して行う。
【0024】
上記Eにおいて、吐出物をアセトンで希釈する際のアセトンの使用量は、吸引濾過を行うことができれば特に制限されるものではないが、例えば、吐出物1mgあたり、0.1~10mLとすればよい。また、吸引濾過に使用される濾紙は、フィラーを濾別できる濾紙であり、例えば、アドバンテック社製円形定量ろ紙No.3を用いる。吸引濾過を行うと、濾紙上に凝集物(アセトン不溶分)が残る。該凝集物を乾燥させて、凝集物に含まれるアセトンを除いた後に、重量を測定し、この値をEにおける凝集物の重量とする。
【0025】
フィラーとしては、例えば固形難燃剤、無機充填剤などが挙げられる。
フィラーとして、固形難燃剤を用いると、ポリウレタン発泡体の難燃性を効果的に高めることができる。また、固形難燃剤は、通常、粉体成分としてポリオール組成物に分散した状態にある。なお、固形難燃剤とは、常温(23℃)、常圧(1気圧)において、固体となる難燃剤である。
固形難燃剤の具体例としては、赤燐系難燃剤、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、塩素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、及び金属水酸化物が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
<赤燐系難燃剤>
赤燐系難燃剤は、赤燐単体からなるものでもよいが、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などを被膜したものでもよいし、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などと混合したものでもよい。赤燐を被膜し、または赤燐と混合する樹脂は、特に限定されないがフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、及びシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。被膜ないし混合する化合物としては、難燃性の観点から、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物は、後述するものを適宜選択して使用するとよい。
【0027】
<リン酸塩含有難燃剤>
リン酸塩含有難燃剤としては、例えば、各種リン酸と周期律表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、環中に窒素を含む複素環式化合物から選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩が挙げられる。
リン酸としては、特に限定されないが、モノリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等が挙げられる。
周期律表IA族~IVB族の金属として、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。
前記脂肪族アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、アニリン、o-トリイジン、2,4,6-トリメチルアニリン、アニシジン、3-(トリフルオロメチル)アニリン等が挙げられる。環中に窒素を含む複素環式化合物として、ピリジン、トリアジン、メラミン等が挙げられる。
【0028】
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、モノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。ここで、ポリリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
リン酸塩含有難燃剤は、上記したものから一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0029】
<臭素含有難燃剤>
臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有し、常温、常圧で固体となる化合物であれば特に限定されないが、例えば、臭素化芳香環含有芳香族化合物等が挙げられる。
臭素化芳香環含有芳香族化合物としては、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー系有機臭素化合物が挙げられる。
【0030】
また、臭素化芳香環含有芳香族化合物は、臭素化合物ポリマーであってもよい。具体的には、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、このポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物などが挙げられる。さらには、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテルと臭素化ビスフェノールAと塩化シアヌールとの臭素化フェノールの縮合物、臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン、架橋または非架橋臭素化ポリ(-メチルスチレン)等が挙げられる。
また、ヘキサブロモシクロドデカンなどの臭素化芳香環含有芳香族化合物以外の化合物であってもよい。
これら臭素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、上記した中では、臭素化芳香環含有芳香族化合物が好ましく、中でも、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)などのモノマー系有機臭素化合物が好ましい。
【0031】
塩素含有難燃剤は、難燃性樹脂組成物に通常用いられるものが挙げられ、例えば、ポリ塩化ナフタレン、クロレンド酸、「デクロランプラス」の商品名で販売されるドデカクロロドデカヒドロジメタノジベンゾシクロオクテンなどが挙げられる。
【0032】
<アンチモン含有難燃剤>
アンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
アンチモン含有難燃剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明に使用するアンチモン含有難燃剤は、酸化アンチモンであることが好ましい。
【0033】
<ホウ素含有難燃剤>
本発明で使用するホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ素含有難燃剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明に使用するホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛がより好ましい。
【0034】
<金属水酸化物>
本発明に使用する金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等が挙げられる。金属水酸化物は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0035】
固体難燃剤のポリオール組成物中の含有量は、フィラー割合が上記範囲内となるように適宜調整すればよいが、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは5~100質量部であり、より好ましくは10~50質量部である。
固体難燃剤の含有量が上記下限値以上であると、得られるポリウレタン発泡体の収縮率を小さくすることができ、また難燃性を向上させることができる。固体難燃剤の含有量が上記上限値以下であると、ポリオール組成物の吐出性が良好になる。
【0036】
<無機充填剤>
無機充填材としては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカパルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素パルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムポレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、及びジルコニア繊維等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機充填剤のポリオール組成物中の含有量は、フィラー割合が上記範囲内となるように適宜調整すればよいが、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは5~150質量部であり、より好ましくは10~100質量部である。
無機充填剤の含有量が上記下限値以上であると、得られるポリウレタン発泡体の収縮率を小さくすることができる。無機充填剤の含有量が上記上限値以下であると、ポリオール組成物の吐出性が良好になる。
【0037】
[ポリオール化合物]
本発明のポリオール組成物は、ポリウレタン発泡体の原料となるポリオール化合物を含有する。ポリオール化合物としては、例えば、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、及びポリエーテルポリオール等が挙げられる。ポリオール化合物は、通常、常温(23℃)、常圧(1気圧)で液体となる。
【0038】
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、及びポリバレロラクトングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及びノナンジオール等の水酸基含有化合物と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等との脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
【0039】
芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、及びクレゾールノボラック等が挙げられる。
脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロへキシルメタンジオール、及びジメチルジシクロへキシルメタンジオール等が挙げられる。
脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、及びヘキサンジオール等のアルカンジオールが挙げられる。
【0040】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン、及びα-メチル-ε-カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、及びヒドロキシカルボン酸と前記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)、及びコハク酸等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、及びネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0041】
ポリマーポリオールとしては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、及びポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、及びメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、及び多価アルコールの変性ポリオール又はこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0042】
多価アルコールの変性ポリオールとしては、例えば、原料の多価アルコールにアルキレンオキサイドを反応させて変性したもの等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン及びトリメチロールプロパン等の三価アルコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクト-ス、メチルグルコシド及びその誘導体等の四~八価のアルコール、フロログルシノール、クレゾール、ピロガロール、カテコ-ル、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1,3,6,8-テトラヒドロキシナフタレン、及び1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラセン等のポリオール、ひまし油ポリオール、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体及びポリビニルアルコール等の多官能(例えば官能基数2~100)ポリオール、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)が挙げられる。
【0043】
多価アルコールの変性方法は特に限定されないが、アルキレンオキサイド(以下、「AO」ともいう)を付加させる方法が好適に用いられる。AOとしては、炭素数2~6のAO、例えば、エチレンオキサイド(以下、「EO」ともいう)、1,2-プロピレンオキサイド(以下、「PO」ともいう)、1,3-プロピレオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、及び1,4-ブチレンオキサイド等が挙げられる。
これらの中でも性状や反応性の観点から、PO、EO及び1,2-ブチレンオキサイドが好ましく、PO及びEOがより好ましい。AOを2種以上使用する場合(例えば、PO及びEO)の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
【0044】
ポリエーテルポリオ-ルとしては、例えば、活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも1種の存在下に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオ-ル等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、エチレンジアミン、及びブチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0045】
本発明に使用するポリオール化合物としては、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールが好ましい。中でも、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)等の芳香族環を有する多塩基酸と、ビスフェノールA、エチレングリコール、及び1,2-プロピレングリコール等の2価アルコールとを脱水縮合して得られる芳香族系ポリエステルポリオールがより好ましい。また、水酸基を2個有するポリオールが好ましい。
【0046】
ポリオール化合物の水酸基価は、20~300mgKOH/gが好ましく、30~250mgKOH/gがより好ましく、50~220mgKOH/gがさらに好ましい。ポリオール化合物の水酸基価が前記上限値以下であるとポリオール組成物の粘度が下がりやすく、取り扱い性等の観点で好ましい。一方、ポリオール化合物の水酸基価が前記下限値以上であるとポリウレタン発泡体の架橋密度が上がることにより強度が高くなる。
なお、ポリオール化合物の水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に従って測定可能である。
【0047】
本発明のポリオール組成物中のポリオール化合物の含有量は、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~75質量%、更に好ましくは25~70質量%である。ポリオール化合物の含有量が前記下限値以上であるとポリオールとポリイソシアネートとを反応させやすくなるため好ましい。一方、ポリオール化合物の含有量が前記上限値以下であると、ポリオール含有組成物の粘度が高くなりすぎないため取扱い性の観点で好ましい。
【0048】
[触媒]
本発明におけるポリオール組成物は、触媒を含有する。触媒としては、三量化触媒及び樹脂化触媒の少なくとも一方を含有することが好ましく、三量化触媒及び樹脂化触媒の両方を含有することがより好ましい。これら両方の触媒を用いて製造されたポリオール発泡体は、収縮率が低くなりやすく好ましい。
【0049】
三量化触媒は、ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する触媒である。三量化触媒としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の窒素含有芳香族化合物、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム塩、トリエチルモノメチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用できる。アンモニウム塩としては、2,2-ジメチルプロパン酸などカルボン酸のアンモニウム塩が挙げられ、より具体的にはカルボン酸4級アンモニウム塩が挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中では、カルボン酸アルカリ金属塩、カルボン酸4級アンモニウム塩から選択される1種又は2種以上が好ましく、中でもカルボン酸4級アンモニウム塩がより好ましい。
【0050】
三量化触媒の配合量は、ポリオール化合物100質量部に対して、1~25質量部が好ましく、2~18質量部がより好ましく、3~15質量部が更に好ましい。三量化触媒の配合量がこれら下限値以上であるとポリイソシアネート化合物の三量化が起こりやすくなり、得られるポリウレタンフォームの難燃性が向上する。一方、三量化触媒の配合量が前記上限値以下であると反応の制御がし易くなる。
【0051】
樹脂化触媒は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応を促進させる触媒である。樹脂化触媒としては、イミダゾール化合物、ピペラジン化合物などのアミン系触媒、金属系触媒などが挙げられる。
イミダゾール化合物としては、イミダゾール環の1位の第2級アミンをアルキル基、アルケニル基などで置換し3級アミンが挙げられる。具体的には、N-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾールなどが挙げられる。また、イミダゾール環中の第2級アミンをシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物などでもよい。
また、ピペラジン化合物として、N-メチル-N’N’-ジメチルアミノエチルピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジンなどの3級アミンが挙げられる。
また、樹脂化触媒としては、イミダゾール化合物、ピペラジン化合物以外にも、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリンビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’-トリメチルアミノエチル-エタノールアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリプロピルアミン等の各種の3級アミンなどが挙げられる。
【0052】
金属系触媒としては、鉛、錫、ビスマス、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルなどからなる金属塩が挙げられ、好ましくは鉛、錫、ビスマス、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルなどからなる有機酸金属塩である。より好ましくはジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫バーサテート、ビスマストリオクテート、ビスマストリス(2-エチルへキサノエート)、ジオクチル酸スズ、ジオクチル酸鉛などが挙げられ、中でも有機酸ビスマス塩がさらに好ましい。
樹脂化触媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記した中では、イミダゾール化合物及び有機酸ビスマス塩から選択される1種又は2種以上を使用することが好ましく、これら両方を使用する態様も好ましい。
【0053】
樹脂化触媒の配合量は、ポリオール化合物100質量部に対して、1~25質量部が好ましく、2~18質量部がより好ましく、3~12質量部が更に好ましい。樹脂化触媒の配合量がこれら下限値以上であるとウレタン結合が形成しやすくなり、反応が速やかに進行する。一方、これら上限値以下であると、反応速度が制御しやすくなる。
【0054】
触媒として、三量化触媒と樹脂化触媒とを併用する場合は、三量化触媒に対する樹脂化触媒の量(樹脂化触媒の量/三量化触媒の量)は、得られるポリウレタン発泡体の収縮率を小さくする観点から、好ましくは0.2~10であり、より好ましくは0.5~2である。
【0055】
また、ポリオール組成物における触媒の合計量は、特に限定されないが、好ましくは2~40質量部、より好ましくは4~25質量部、さらに好ましくは5~20質量部である。これら下限値以上であると、ウレタン結合の形成と三量化が適切に進行して、難燃性が良好となりやい。また、これら上限値以下とすると、ウレタン化及び三量化反応の制御が容易となる。
【0056】
[液状難燃剤]
本発明におけるポリオール組成物は、液状難燃剤を含有してもよい。液状難燃剤とは、常温、常圧にて液体となる難燃剤である。液状難燃剤の具体例としては、リン酸エステルが挙げられる。ポリオール組成物に液状難燃剤を含有させることで、吐出流速、混合性などを殆ど低下させることなく、難燃性をより向上させやすくなる。
【0057】
リン酸エステルとしては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用できる。モノリン酸エステルとは、分子中にリン原子を1つ有するリン酸エステルである。モノリン酸エステルとしては、常温、常圧で液体のものであれば限定されないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどのトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェートなどのトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどの芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェートなどの酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0058】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェートなどの芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR-733S」、「CR-741」、「CR747」、ADEKA社製の「アデカスタブPFR」、「FP-600」等が挙げられる。
【0059】
液状難燃剤は、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以を併用してもよい。これらの中でも、ポリオール化合物の粘度を適切にしやすくする観点、及びポリウレタンフォームの難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステルがより好ましい。
【0060】
ポリオール組成物が液状難燃剤を含有する場合、液状難燃剤の配合量は、ポリオール化合物100質量部に対して、5~70質量部が好ましく、10~60質量部がより好ましく、20~50質量部がさらに好ましい。液状難燃剤の配合量をこれら下限値以上とすることで、液状難燃剤を含有させる効果を発揮しやすくなる。また、上限値以下とすることで、液状難燃剤によって、ポリウレタン発泡体の発泡が阻害さたりすることもない。
【0061】
[整泡剤]
本発明のポリオール組成物は、整泡剤を含有してもよい。整泡剤は、ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とから得られるポリウレタン組成物の発泡性を向上させる。
整泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン系整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。これらの整泡剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
整泡剤の配合量は、ポリオール化合物100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.5~8質量部がより好ましく、1~5質量部が更に好ましい。整泡剤の配合量がこれら下限値以上であるとポリウレタン組成物を発泡させやすくなり、均質なポリウレタン発泡体を得やすくなる。また、整泡剤の配合量がこれら上限値以下であると製造コストと得られる効果のバランスが良好になる。
【0062】
[水]
本発明におけるポリオール組成物は、水を含有してもよい。水を含有することで、ポリウレタン発泡体を形成するときの発泡性が良好となる。水の配合量は、ポリオール化合物100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.2~5質量部、より好ましくは0.3~3質量部である。水の配合量をこれら範囲内とすることで、ポリウレタン組成物を適切に発泡しやすくなる。
【0063】
[その他の成分]
ポリオール組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、沈降防止剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0064】
[容器]
本発明の容器は、上記したポリオール組成物を封入した容器である。該容器は、有機系発泡剤の蒸気圧によりポリオール組成物を吐出させることが可能であれば特に制限されず、エアゾール容器であることが好ましい。エアゾール容器は、例えば、ポリオール組成物が充填される容器本体と、容器本体の上部をシールするキャップ部を備え、キャップ部に設けられたボタンなどが押されることで弁などが開いて内圧が開放され、有機系発泡剤の蒸気圧によりキャップ部に設けられた吐出口からポリオール組成物が吐出する。
容器内にポリオール組成物を封入する方法は特に限定されないが、有機系発泡剤以外の各成分をディスパーなどを用いて必要に応じて混合した後、容器内部に充填して容器を密閉し、次いで有機系発泡剤を充填する。有機系発泡剤の充填は、例えば、容器のキャップ部に備えられた弁を開けて、有機系発泡剤を容器内部に注入することで行うことができる。
【0065】
容器からポリオール組成物を吐出する際には、ポリオール組成物を構成する各成分が均一に混合されている状態で吐出する。ポリオール組成物を構成する各成分を均一に混合するために、吐出前に容器を十分に振盪するとよい。容器の振盪は、例えば容器を手で持って上下に振ることにより行うことができる。ポリオール組成物を均一に混合する方法は、前記した方法に限定されるものではない。また、吐出する際の容器の温度は、例えば10℃以上40℃以下が好ましい。10℃以上であると、液温が一定程度高いため吐出が良好となり、40℃以下であると容器の破裂などが防止される。
【0066】
[ポリウレタン組成物]
本発明のポリウレタン組成物は、ポリオール組成物と、ポリイソシアネート化合物を含有するポリイソシアネート組成物とを備える。すなわち、上記した本発明のポリオール組成物は、2液型ポリウレタンのポリオール組成物として使用するものであって、ポリイソシアネート化合物を含有するポリイソシアネート組成物と混合させポリウレタン組成物として使用する。ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とは、後述するようにイソシアネートインデックスが所定の範囲になる質量割合で混合させるとよい。
ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とを混合して得られたポリウレタン組成物は、反応し、かつ上記したポリオール組成物に含有される有機系発泡剤、又は後述するポリイソシアネート組成物に含有される有機系発泡剤などによって、発泡することでポリウレタン発泡体となる。
【0067】
<ポリイソシアネート組成物>
ポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネート化合物を含有する。ポリイソシアネート化合物としては、ポリウレタン発泡体の形成に使用する公知のポリイソシアネート化合物を使用できる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等が挙げられる。
【0068】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0069】
これらの中でも、使いやすさの観点、及び入手容易性の観点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックMDI、又はこれらの混合物がより好ましい。ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0070】
ポリイソシアネート組成物は、通常、さらに有機系発泡剤を含有する。有機系発泡剤としては、上述したものを特に制限なく使用することができる。なお、ポリイソシアネート組成物で使用する有機系発泡剤は、ポリオール組成物に使用する有機系発泡剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
ポリイソシアネート組成物中に含まれる有機系発泡剤の割合としては5質量%以上20質量%未満であることが好ましく、7質量%以上15質量%未満であることがより好ましい。有機系発泡剤が5質量%以上含まれることにより十分な吐出力が得られる。また、20質量%未満であることにより得られる発泡密度が低くなり過ぎず、適切な物性が得られる。
また、ポリイソシアネート組成物には、ポリイソシアネートに配合される公知の添加剤が適宜配合されてもよい。
【0071】
<イソシアネートインデックス>
本発明のポリウレタン組成物のイソシアネートインデックスは、200以上が好ましい。イソシアネートインデックスが200以上であると、ポリオール化合物に対するポリイソシアネート化合物の量が過剰になりポリイソシアネートの三量化体によるイソシアヌレート結合が生成し易くなる結果、ポリウレタン発泡体の難燃性が向上する。難燃性をより向上させるために、イソシアネートインデックスは、250以上がより好ましく、340以上が更に好ましい。
また、イソシアネートインデックスは、1000以下が好ましく、650以下がさらに好ましく、500以下がよりさらに好ましい。イソシアネートインデックスがこれら上限値以下であると、得られるポリウレタン発泡体の難燃性と製造コストとのバランスが良好になる。
【0072】
なお、イソシアネートインデックスは、以下の方法により計算することができる。
イソシアネートインデックス=ポリイソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、各当量数は以下のとおり計算することができる。
・ポリイソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用量(g)×NCO含有量(質量%)/NCOの分子量(モル)×100
・ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用量(g)÷KOHの分子量(ミリモル)
OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)である。
・水の当量数=水の使用量(g)/水の分子量(モル)×水のOH基の数
上記各式において、NCOの分子量は42(モル)、KOHの分子量は56100(ミリモル)、水の分子量は18(モル)、水のOH基の数は2とする。
【0073】
[混合システム]
本発明は、ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とを混合するための混合システムも提供する。
図1に示すように、混合システム10は、ポリオール組成物が内部に封入された第1の容器11と、ポリイソシアネート組成物が内部に封入された第2の容器12とを備える。第1の容器11、12はいずれもエアゾール容器(スプレー缶)である。
第1の容器11に封入されたポリオール組成物は、ポリオール組成物に含有される有機系発泡剤の蒸気圧により吐出される。第2の容器12に封入されたポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネート組成物に含有される有機系発泡剤の蒸気圧により吐出される。なお、第1の容器11内部では、有機系発泡剤の一部が気化して気相を形成する。第2の容器12内部においても同様である。
第1及び第2の容器11、12から吐出されたポリオール組成物及びポリイソシアネート組成物は、有機系発泡剤などにより発泡されながら混合して、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とが反応することで、ポリウレタン発泡体を形成する。
【0074】
混合システム10は、混合器13を備えるとよい。第1及び第2の容器11、12それぞれの吐出口11A、12Aは、供給ライン11B,12Bを介して混合器13に接続される。第1及び第2の容器11、12から吐出されたポリオール組成物及びポリイソシアネート組成物は、それぞれ供給ライン11B,12Bを介して混合器13に供給され、これらは混合器13にて混合される。混合器13で混合されたポリオール組成物とポリイソシアネート組成物は、噴射器などにより、施工対象面に吹き付けられるとよい。
【0075】
混合器13は、いわゆるスタテックミキサーと呼ばれる静止型混合器であることが好ましい。静止型混合器は、駆動部のない混合器であって、流体が管体内部を通過することで、流体が混合されるものである。静止型混合器は、例えば、
図1に示すように管体13Aの内部にミキサーエレメント13Bが配置されたものが挙げられる。ミキサーエレメント13Bとしては、螺旋状に形成されたもの、複数の邪魔板が形成されたものなどがある。
静止型混合器は、噴射器の機能を兼ね備えたものでもよく、その場合、
図1に示すように管体13A内部で混合されたポリオール組成物とポリイソシアネート組成物の混合物を管体の先端13Cから噴射するとよい。なお、
図1では、第1及び第2の容器11、12から吐出されたポリオール組成物及びポリイソシアネート組成物が混合器に導入される態様を示しているが、混合器に導入される前に、吐出用ガンや治具などを備えていてもよい。
【0076】
混合器に導入される前に、吐出用ガンを備えた態様の一例として、
図2に混合システム20を示す。混合システム20は、第1の容器11と第2の容器12とを有する2液吐出装置15と、供給ライン11B及び12Bと、吐出用ガン14と、混合器13とを備える。第1の容器11と第2の容器12については上記説明したとおりであり、それぞれポリオール組成物、ポリイソシアネート組成物を収容している。第1及び第2の容器から、ポリオール組成物及びポリイソシアネート組成物が、それぞれ供給ライン11B、12Bを介して吐出用ガン14に送液される。吐出用ガン14はレバー14Aを備えており、送液のON-OFF機構を有する。具体的には、レバー14Aを引くと、ポリオール組成物及びポリイソシアネート組成物が混合器13に送液され、レバー14Aを離すと混合器13への送液が停止される。吐出用ガン14を備える混合システム20を用いることで、必要に応じて送液を行うことができるため、ポリウレタン発泡体を形成する際の作業性が向上する。
【0077】
本発明のポリウレタン発泡体は、上記したポリウレタン組成物から形成される。本発明ポリウレタン発泡体は、上記したフィラーを含有するため、収縮率が低く、形状安定性に優れる。具体的には、ポリウレタン発泡体の収縮率は、好ましくは20%未満であり、より好ましくは10%未満である。
ポリウレタン発泡体の収縮率は、次のように求められる。発泡完了直後(製造直後)のポリウレタン発泡体を5cm角(縦5cm、横5cm、厚さ5cm)に切り出して、各辺の長さ(試験前長さ)を測定する。なお、各辺とは、切り出した発泡体のすべての辺(12個の辺)を意味する。その後、該切り出された発泡体を温度23℃、相対湿度50%で24時間放置した後、各辺の長さ(試験後長さ)を測定する。各辺の長さの変化率[100×(試験前の長さ-試験後の長さ)/試験前の長さ]を求め、各辺の長さの変化率の平均値(12個の辺の変化率の平均値)を収縮率とする。
【0078】
本発明では、ポリウレタン組成物から形成されるポリウレタン発泡体は、様々な用途で使用可能であるが、断熱材として使用することが好ましい。ポリウレタン発泡体は、多数の気泡を有するので、それにより断熱効果を有する。
ポリウレタン発泡体は、特に、乗り物または建築物の断熱材として使用することがより好ましい。乗り物としては、鉄道車輌、自動車、船舶、航空機などが挙げられる。
また、本発明では、エアゾール容器などの容器を用いて、簡単な構成で、ポリウレタン発泡体を形成できる。また、容器を用いて発泡体を形成できるため、施工対象面が比較的小さい場合に特に好適である。したがって、例えば、既設の耐熱材が劣化、損傷などした箇所に吹き付けて補修する補修用途に使用することが好ましい。勿論、そのような用途に限定されず、新設の耐熱材を形成するために使用してもよい。
【実施例】
【0079】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0080】
評価方法は、以下の通りである。
【0081】
[フィラー割合]
ポリオール組成物におけるフィラー割合は、以下に示す式(1)により算出される。
式(1) フィラー割合(%)=(E/D)×100
D:ポリオール組成物を封入したエアゾール容器を35℃に保温した後、該容器からポリオール組成物を10秒間吐出して得た吐出物を、40℃で、30分間乾燥させた後の重量
E:Dの乾燥後の吐出物をアセトンで希釈して吸引濾過を行い、得られた凝集物の重量
【0082】
[収縮率]
ポリウレタン発泡体の収縮率を以下の方法で算出した。発泡完了直後(製造直後)のポリウレタン発泡体を5cm角(縦5cm、横5cm、厚さ5cm)に切り出して、各辺の長さ(試験前長さ)を測定する。その後、該切り出された発泡体を温度23℃、相対湿度50%で24時間放置した後、各辺の長さ(試験後長さ)を測定した。各辺の長さの変化率[100×(試験前の長さ-試験後の長さ)/試験前の長さ]を求め、各辺の長さの変化率の平均値を収縮率とし
A:収縮率が10%未満
B:収縮率が10%以上20%未満
C:収縮率が20%以上
【0083】
[吐出量]
ポリオール組成物を封入したエアゾール容器を35℃の温水に60分間浸漬した後、5秒間吐出させ、以下の式に基づいて吐出量を算出し、以下の基準に基づいて評価した。
吐出量(g)=吐出前のエアゾール容器の重量-吐出後のエアゾール容器の重量
A:吐出量が15g以上
B:吐出量が10g以上15g未満
C:吐出量が10g未満
【0084】
実施例、比較例にて使用した成分は以下のとおりである。なお、表1に示す各成分の配合部数は、希釈物に関しては希釈物としての配合部数を示す。
【0085】
ポリオール化合物:フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRLK-087、水酸基価=200mgKOH/g)
【0086】
樹脂化触媒:イミダゾール化合物(有効成分量65~75質量%、エチレングリコールによる希釈物、東ソー株式会社製、製品名:TOYOCAT-DM70)
三量化触媒:カルボン酸4級アンモニウム塩(有効成分量45~55質量%、エチレングリコールによる希釈物)(エボニック ジャパン株式会社、製品名:DABCO TMR-7)
【0087】
フィラー1:ウォラストナイト(キンセイマテック社製 製品名:SH1250)
フィラー2:赤燐系難燃剤(燐化学工業株式会社製、製品名:ノーバエクセル140、金属水酸化物被覆、赤燐分94質量%以上)
フィラー3:臭素含有難燃剤、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)(アルベマール社製、製品名:SAYTEX 8010)
フィラー4:ホウ素含有難燃剤(早川商事 「FIREBREAK ZB」)
整泡剤:ポリオキシアルキレン系整泡剤(東レダウコーニング社製、製品名SH-193)
有機系発泡剤1:DME(ジメチルエーテル) 沸点 -24℃
有機系発泡剤2:LPG(小池化学製 液化石油ガス)
LPGを構成するプロパンの沸点:-42℃
LPGを構成するイソブタンの沸点:-11.7℃
LPGを構成するノルマルブタンの沸点:-0.5℃
LPGを構成するイソペンタンの沸点:27.8℃
LPGを構成するノルマルペンタンの沸点:36.1℃
なおLPGにおける各成分の量は、プロパンが30~40質量%、イソブタンとノルマルブタンの合計が60~70質量%、ノルマルペンタンとイソペンタンの合計量が1.7質量%未満である。
有機系発泡剤3:HFO-1234ze(ハネウエル社製、製品名:ソルティスGBA)
沸点:-19℃
有機系発泡剤4:HFO-1233zd(ハネウエル社製、製品名:ソルティスLBA)
沸点:18℃
有機系発泡剤5:ペンタン 沸点:36℃
その他の発泡剤:窒素 沸点-195.8℃
【0088】
ポリイソシアネート化合物:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)(万華化学ジャパン株式会社製、製品名:PM200)
【0089】
実施例1
表1の配合に従い、発泡剤以外の成分を1000mlポリプロピレンビーカーに測りとり、ディスパーを用いて1500rpmで5分間混合させた後、エアゾール容器に移し、バキューム式クリンパーを用いて封入した後、さらに発泡剤を充填させ、内部にポリオール組成物が封入された第1のエアゾール容器を得た。なお、ポリオール組成物の充填量は、発泡剤以外のポリオール組成物が460g、発泡剤は表1の配合比率となるように充填した。該第1のエアゾール容器を用いて、上記したフィラー割合、吐出量を測定した。
別のエアゾール容器にポリイソシアネート化合物として4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI、万華化学ジャパン株式会社製、製品名:PM200)を封入した後、さらに有機系発泡剤(DME)を充填させ、ポリイソシアネート組成物が封入された第2のエアゾール容器を得た。ポリイソシアネート組成物において、有機系発泡剤の量は、ポリイソシアネート化合物420gに対して65gとした。
上記した第1のエアゾール容器、及び第2のエアゾール容器から、ポリオール組成物及びポリイソシアネート組成物をそれぞれ吐出し、これらをスタティックミキサーで混合して、ポリウレタン組成物を得て、その先端から噴射することで、石膏ボード上に吹き付けてポリウレタン発泡体を得た。各評価結果を表1に示す。
【0090】
実施例2~14、比較例1~5
ポリオール組成物の組成を表1に記載したとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、第1のエアゾール容器、第2のエアゾール容器を作製して、ポリウレタン発泡体を得た。各評価結果を表1に示す。
【0091】
【0092】
以上の各実施例は、沸点が-10℃以下の有機系発泡剤を含有する本発明のポリオール組成物を用いた例であり、吐出量に優れ、かつ得られるポリウレタン発泡体の収縮率が小さくなることが分かった。
これに対して、比較例1は、フィラーを含まないポリオール組成物を用いた例であり、得られたポリウレタン発泡体の収縮率が大きくなった。比較例2~4は、沸点が-10℃以下の有機系発泡剤を含有しないポリオール組成物を用いた例であり、吐出量が少ない結果となった。比較例5は触媒を含まないポリオール組成物を用いた例であり、ポリウレタン発泡体が形成されず、収縮率の評価ができなかった。
【符号の説明】
【0093】
10 混合システム
11 第1の容器
12 第2の容器
11A、12A 吐出口
11B,12B 供給ライン
13 混合器
13A 管体
13B ミキサーエレメント
13C 先端
14 吐出用ガン
14A レバー
20 混合システム