(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20250203BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20250203BHJP
【FI】
H02G11/00
B60R16/02 620C
(21)【出願番号】P 2022028846
(22)【出願日】2022-02-28
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】木暮 直人
(72)【発明者】
【氏名】佐野 光
(72)【発明者】
【氏名】角谷 誠一
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-196925(JP,A)
【文献】特開2007-151377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体とスライドドアを連結させ且つ前記スライドドアを前記車体に対してスライド方向に往復移動させるリンク機構に配索される第1配索部、前記第1配索部よりも前記車体側に配索される第2配索部、及び、前記第1配索部よりも前記スライドドア側に配索される第3配索部を有するハーネス本体と、
前記スライドドアに対する相対的な変位が起こらぬよう設けられた当該スライドドア側の被固定部に前記第3配索部の固定部を固定するハーネス固定具と、
前記第3配索部の配索経路を規制するハーネスガイド具と、
を備え、
前記リンク機構は、一端部を前記車体側に連結させ且つ前記第1配索部が他端部に配索される第1アーム部材と、一端部を前記スライドドア側に連結させる第2アーム部材と、前記スライド方向に対する直交方向を軸方向とし、前記車体と前記第1アーム部材の前記一端部との間での第1相対回転を可能にする第1回転軸と、前記第1回転軸と平行で、前記ハーネスガイド具が固定された前記第1アーム部材の前記他端部と前記第2アーム部材の他端部との間での第2相対回転を可能にする第2回転軸と、前記第1回転軸及び前記第2回転軸と平行で、前記スライドドアと前記第2アーム部材の前記一端部との間での第3相対回転を可能にする第3回転軸と、を備え、前記第1回転軸と前記第2回転軸と前記第3回転軸に対する直交平面に沿って前記スライドドアを前記車体に対して前記スライド方向に往復移動させるものであり、
前記ハーネスガイド具は、自身に対して前記直交平面に交差する方向に位置する前記スライドドア側の前記被固定部に向けて前記第3配索部を案内し、
前記スライドドア側の前記被固定部は、前記スライドドアに対する前記第3回転軸の軸周りの前記第2アーム部材の相対回転位置が前記第3相対回転の振り幅の中央位置のときに、前記第2回転軸と前記第3回転軸のそれぞれの軸中心が存在する平面上で、かつ、前記ハーネスガイド具に対して前記直交平面に交差する方向に設けることを特徴としたワイヤハーネス。
【請求項2】
前記スライドドア側の前記被固定部は、前記スライドドアに対する前記第3回転軸の軸周りの前記第2アーム部材の相対回転位置が前記中央位置のときに、前記ハーネスガイド具に対して車両上方の領域又は車両下方の領域に設けることを特徴とした請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記スライドドア側の前記被固定部が設けられる前記平面は、前記スライドドアに対する前記第3回転軸の軸周りの前記第2アーム部材の相対回転位置が前記中央位置のときに前記スライド方向に直交する平面であることを特徴とした請求項1又は2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記ハーネスガイド具は、前記第2回転軸の軸線上で前記第3配索部を引き出させることを特徴とした請求項1,2又は3に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記第3配索部は、前記スライドドアに対して前記第3回転軸の軸周りに前記第2アーム部材を相対回転させた際に、前記ハーネスガイド具と前記固定部との間で曲げ変形させ、前記第1アーム部材と前記第2アーム部材をその相互間で前記第2回転軸の軸周りに相対回転させた際に、前記ハーネスガイド具と前記固定部との間で自身の軸周りに捻れ変形させることを特徴とした請求項1から4の内の何れか1つに記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記リンク機構は、全閉位置の前記スライドドアを全開位置まで移動させる際に、前記第1アーム部材を前記車体に対して前記第1回転軸の軸周りに相対回転させつつ、前記スライドドアに対して前記振り幅の一端に位置する前記第2アーム部材を前記第1アーム部材に対して前記第2回転軸の軸周りに相対回転させながら前記スライドドアに対して前記第3回転軸の軸周りに相対回転させることで、前記第2アーム部材を前記スライドドアに対して前記振り幅の他端に到達させ、前記第1アーム部材の前記車体に対する前記第1回転軸の軸周りの相対回転を継続させつつ、前記第2アーム部材を前記スライドドアに対して前記振り幅の前記他端に位置させたまま、前記第1アーム部材を前記第2アーム部材に対して前記第2回転軸の軸周りに相対回転させるものであることを特徴とした請求項1から5の内の何れか1つに記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両には、車体側の電源(二次電池等)や電装部品などをスライドドア側のスイッチや電装部品などに電気接続させるワイヤハーネスが搭載されている。このワイヤハーネスは、車体とスライドドアの間に渡ってハーネス本体が配索されており、スライドドアの開閉動作に連動してそのハーネス本体の配索経路が変化する。この種のワイヤハーネスについては、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両には、そのスライドドアのスライド動作を担うスライド機構がスライドドアと車体との間に組み付けられる。例えば、車両においては、そのスライド機構として、スライドドアと車体の間に渡されたリンク機構を用いることが考えられる。そして、この車両においては、そのリンク機構に沿ってハーネス本体を配索させることが考えられる。この場合、ワイヤハーネスにおいては、そのハーネス本体をリンク機構の動きに追従させることになるが、ハーネス本体に過度の曲げ等で過負荷が加わることは好ましくない。
【0005】
そこで、本発明は、過負荷無くハーネス本体をリンク機構の動きに追従させることが可能なワイヤハーネスを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車体とスライドドアを連結させ且つ前記スライドドアを前記車体に対してスライド方向に往復移動させるリンク機構に配索される第1配索部、前記第1配索部よりも前記車体側に配索される第2配索部、及び、前記第1配索部よりも前記スライドドア側に配索される第3配索部を有するハーネス本体と、前記スライドドアに対する相対的な変位が起こらぬよう設けられた当該スライドドア側の被固定部に前記第3配索部の固定部を固定するハーネス固定具と、前記第3配索部の配索経路を規制するハーネスガイド具と、を備え、前記リンク機構は、一端部を前記車体側に連結させ且つ前記第1配索部が他端部に配索される第1アーム部材と、一端部を前記スライドドア側に連結させる第2アーム部材と、前記スライド方向に対する直交方向を軸方向とし、前記車体と前記第1アーム部材の前記一端部との間での第1相対回転を可能にする第1回転軸と、前記第1回転軸と平行で、前記ハーネスガイド具が固定された前記第1アーム部材の前記他端部と前記第2アーム部材の他端部との間での第2相対回転を可能にする第2回転軸と、前記第1回転軸及び前記第2回転軸と平行で、前記スライドドアと前記第2アーム部材の前記一端部との間での第3相対回転を可能にする第3回転軸と、を備え、前記第1回転軸と前記第2回転軸と前記第3回転軸に対する直交平面に沿って前記スライドドアを前記車体に対して前記スライド方向に往復移動させるものであり、前記ハーネスガイド具は、自身に対して前記直交平面に交差する方向に位置する前記スライドドア側の前記被固定部に向けて前記第3配索部を案内し、前記スライドドア側の前記被固定部は、前記スライドドアに対する前記第3回転軸の軸周りの前記第2アーム部材の相対回転位置が前記第3相対回転の振り幅の中央位置のときに、前記第2回転軸と前記第3回転軸のそれぞれの軸中心が存在する平面上で、かつ、前記ハーネスガイド具に対して前記直交平面に交差する方向に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るワイヤハーネスにおいて、第3配索部は、スライドドア側の被固定部が先の平面上で且つハーネスガイド具に対して先の直交平面に交差する方向に設けられているので、スライドドアに対して第3回転軸の軸周りに第2アーム部材を第3相対回転の振り幅の中央位置から一端まで相対回転させたときとその振り幅の中央位置から他端まで相対回転させたときとで、それぞれに同じ変形量で曲げ変形させることができる。このため、このワイヤハーネスは、スライドドアに対して第3回転軸の軸周りに第2アーム部材を相対回転させた際に、第3配索部の曲げ変形量を最少に抑えることができる。従って、本発明に係るワイヤハーネスは、第3相対回転をリンク機構が行うときに、過負荷無くハーネス本体をリンク機構の動きに追従させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態のワイヤハーネスをリンク機構やスライドドア等と共に車室内側から見たドア全閉時の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態のワイヤハーネスをリンク機構等と共に車室内側から見たドア全閉時の斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態のワイヤハーネスをリンク機構等と共に車両上方から見たドア全閉時の平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態のワイヤハーネスをリンク機構等と共に車室内側から見たドア全閉時の平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態のワイヤハーネスをリンク機構等と共に車室内側から見たドア全開時の斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態のワイヤハーネスをリンク機構等と共に車両上方から見たドア全開時の平面図である。
【
図7】
図7は、実施形態のワイヤハーネスをリンク機構等と共に車室内側から見たドア半開時の斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態のワイヤハーネスをリンク機構等と共に車両上方から見たドア半開時の平面図である。
【
図9】
図9は、全閉位置のスライドドアを半開位置まで移動させた際又はその逆の動きの際のワイヤハーネスとリンク機構の変位についてスライドドア側の視点で車両上方から見た平面図である。
【
図10】
図10は、全閉位置のスライドドアを半開位置まで移動させた際又はその逆の動きの際のワイヤハーネスとリンク機構の変位についてスライドドア側の視点で車室内側から見た平面図である。
【
図11】
図11は、半開位置のスライドドアを全開位置まで移動させた際又はその逆の動きの際のワイヤハーネスとリンク機構の変位についてスライドドア側の視点で車両上方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係るワイヤハーネスの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
[実施形態]
本発明に係るワイヤハーネスの実施形態の1つを
図1から
図11に基づいて説明する。
【0011】
図1から
図11の符号1は、本実施形態のワイヤハーネスを示す。
【0012】
例えば、自動車等の車両においては、車体510に対してスライド方向に往復移動可能なスライドドア520(
図1から
図11)が搭載されるものがある。この車両は、スライドドア520のスライド動作(スライド方向への往復移動動作)を担うために、車体510とスライドドア520を連結させ、かつ、スライドドア520を車体510に対してスライド方向に往復移動させるリンク機構600を備えている(
図1から
図11)。ここで示すリンク機構600は、車両側方のスライドドア520を車両前後方向にスライドさせる。
【0013】
リンク機構600は、車体510とスライドドア520の間に渡して、スライドドア520を全閉位置(
図1から
図4)と全開位置(
図5及び
図6)との間で車体510に対して変位させる。このリンク機構600は、スライドドア520の所定の半開位置(
図7及び
図8)を経て全閉位置と全開位置との間で車体510に対して変位させる。このリンク機構600は、一端部611を車体510側に連結させる第1アーム部材610と、一端部621をスライドドア520側に連結させる第2アーム部材620と、を備える(
図1から
図11)。
【0014】
更に、このリンク機構600は、車体510と第1アーム部材610の一端部611との間での第1相対回転を可能にする第1回転軸631と、この第1回転軸631と平行で、第1アーム部材610の他端部612と第2アーム部材620の他端部622との間での第2相対回転を可能にする第2回転軸641と、第1回転軸631及び第2回転軸641と平行で、スライドドア520と第2アーム部材620の一端部621との間での第3相対回転を可能にする第3回転軸651と、を備える(
図1から
図11)。第1回転軸631と第2回転軸641と第3回転軸651は、それぞれにスライド方向に対する直交方向を軸方向とするものである。ここで示す第1回転軸631と第2回転軸641と第3回転軸651は、それぞれにスライド方向(車両前後方向)と車幅方向とに対する直交方向(つまり、車両上下方向)を軸方向としている。
【0015】
このリンク機構600は、その第1回転軸631と第2回転軸641と第3回転軸651に対する直交平面(以下、「リンク機構600の作動平面」という。)Pmに沿ってスライドドア520を車体510に対してスライド方向に往復移動させるものである(
図4及び
図10)。
【0016】
このリンク機構600においては、駆動源たる回転機(図示略)の出力トルクが第1回転軸631に伝達される。
【0017】
例えば、ここで示す第1回転軸631は、第1アーム部材610の一端部611に相対的な変位無きよう固定され、この第1アーム部材610と一体となって動作させる。そして、ここで示すリンク機構600は、車体510に固定され、かつ、第1回転軸631を回転自在に軸支する軸受部材632を備える(
図1から
図11)。この軸受部材632は、車体510に相対的な変位無きよう固定された車体側固定部材である。このリンク機構600においては、車体510の被固定部510aと第1アーム部材610の一端部611とをその相互間で相対回転自在に連結させる連結具として、第1回転軸631と軸受部材632が設けられている。よって、このリンク機構600は、第1アーム部材610を車体510の被固定部510aに対して第1回転軸631の軸周りに相対回転させることができる。
【0018】
また、例えば、ここで示すリンク機構600においては、第2回転軸641を回転自在に軸支する軸受部642が第1アーム部材610の他端部612に設けられている(
図1から
図11)。そして、ここで示すリンク機構600においては、第2回転軸641を回転自在に軸支する軸受部643が第2アーム部材620の他端部622に設けられている(
図1から
図11)。よって、第1アーム部材610と第2アーム部材620は、第2回転軸641と軸受部642と軸受部643を介して、その相互間で第2回転軸641の軸周りに相対回転し得るよう連結されている。尚、このリンク機構600においては、その第2回転軸641を第1アーム部材610の他端部612と第2アーム部材620の他端部622の内の一方に相対的な変位無きよう固定してもよい。
【0019】
第3回転軸651は、第2アーム部材620の一端部621とスライドドア520の被固定部520aの内の少なくとも一方に設けた軸受部に軸支させる。例えば、ここで示すリンク機構600においては、第3回転軸651を回転自在に軸支する軸受部652が第2アーム部材620の一端部621に設けられている(
図1から
図11)。そして、ここで示すスライドドア520の被固定部520aは、第3回転軸651を回転自在に軸支する軸受部として形成されている。よって、第2アーム部材620とスライドドア520は、第3回転軸651と軸受部652と被固定部520aを介して、その相互間で第3回転軸651の軸周りに相対回転し得るよう連結されている。
【0020】
ここで示す第1アーム部材610は、スライドドア520が全閉位置のときに、スライド方向(車両前後方向)に延在させた状態で配置されている(
図1から
図4)。そして、リンク機構600は、全閉位置のスライドドア520を開くときに、第1アーム部材610を車体510に対して第1回転軸631の軸周りで車室外側へと相対回転させる(
図1から
図11)。
【0021】
また、ここで示す第2アーム部材620は、スライドドア520の位置に拘わらず、第2回転軸641よりも車室内側に延在させ、その延在させた先で第3回転軸651を軸支している。つまり、ここで示す第3回転軸651は、スライドドア520の位置に拘わらず、第2回転軸641よりも車室内側に配置されている。よって、スライドドア520の被固定部520aは、スライドドア520の例えばインナパネル520bから第2回転軸641よりも車室内側まで突出させ、その突出させた先で第3回転軸651を軸支している。このリンク機構600は、その第2アーム部材620をスライドドア520に対して第3回転軸651の軸周りに第3相対回転の振り幅Wθの範囲内で相対回転させるものである(
図9)。
【0022】
リンク機構600は、スライドドア520が全閉位置のときに第2アーム部材620を第3相対回転の振り幅Wθの一端に配置させ(
図1から
図4、
図9及び
図10)、スライドドア520が全開位置のときに第2アーム部材620を第3相対回転の振り幅Wθの他端に配置させる(
図5、
図6及び
図11)。
【0023】
このリンク機構600は、スライドドア520が全閉位置から所定の半開位置まで変位したときに第2アーム部材620を第3相対回転の振り幅Wθの一端から他端まで変位させ、スライドドア520がその半開位置から全閉位置まで変位したときに第2アーム部材620を第3相対回転の振り幅Wθの他端から一端まで変位させる(
図1から
図4及び
図7から
図10)。例えば、このリンク機構600は、全閉位置のスライドドア520を全開位置まで移動させる際に、第1アーム部材610を車体510に対して第1回転軸631の軸周りに相対回転させつつ、スライドドア520に対して第3相対回転の振り幅Wθの一端に位置する第2アーム部材620を第1アーム部材610に対して第2回転軸641の軸周りに相対回転させながらスライドドア520に対して第3回転軸651の軸周りに相対回転させることで、第2アーム部材620をスライドドア520に対して第3相対回転の振り幅Wθの他端に到達させる。このリンク機構600は、そのように動作させることで、全閉位置のスライドドア520を所定の半開位置まで移動させる。尚、ここで言うスライドドア520の所定の半開位置とは、第2アーム部材620を第3相対回転の振り幅Wθの一端から他端まで変位させたときの車体510に対するスライドドア520の位置のことである。
【0024】
続いて、このリンク機構600は、その第1アーム部材の車体510に対する第1回転軸631の軸周りの相対回転を継続させつつ、第2アーム部材620をスライドドア520に対して第3相対回転の振り幅Wθの他端に位置させたまま、第1アーム部材610を第2アーム部材620に対して第2回転軸641の軸周りに相対回転させる(
図5から
図8及び
図11)。つまり、このリンク機構600は、スライドドア520が所定の半開位置と全開位置の間に位置しているときに、第2アーム部材620を第3相対回転の振り幅Wθの他端に配置させたままにする。このリンク機構600は、そのように動作させることで、所定の半開位置のスライドドア520を全開位置まで移動させる。
【0025】
一方、このリンク機構600は、全開位置のスライドドア520を全閉位置まで移動させる際に、第1アーム部材610を車体510に対して第1回転軸631の軸周り(開動作時とは逆方向)に相対回転させつつ、第2アーム部材620をスライドドア520に対して第3相対回転の振り幅Wθの他端に位置させたまま、第1アーム部材610を第2アーム部材620に対して第2回転軸641の軸周り(開動作時とは逆方向)に相対回転させる(
図5から
図8及び
図11)。このリンク機構600は、そのように動作させることで、全開位置のスライドドア520を所定の半開位置まで移動させる。
【0026】
続いて、このリンク機構600は、その第1アーム部材の車体510に対する第1回転軸631の軸周りの相対回転を継続させつつ、スライドドア520に対して第3相対回転の振り幅Wθの他端に位置する第2アーム部材620を第1アーム部材610に対して第2回転軸641の軸周り(開動作時とは逆方向)に相対回転させながらスライドドア520に対して第3回転軸651の軸周り(開動作時とは逆方向)に相対回転させることで、第2アーム部材620をスライドドア520に対して振り幅Wθの一端に到達させる(
図1から
図4及び
図7から
図10)。このリンク機構600は、そのように動作させることで、半開位置のスライドドア520を全閉位置まで移動させる。
【0027】
本実施形態のワイヤハーネス1は、車体510に設置された第1電気接続対象物511とスライドドア520に設置された第2電気接続対象物521とを電気接続させるために車両に搭載される(
図1)。
【0028】
第1電気接続対象物511とは、電源(二次電池等)や電装部品などの車体510側に設置されるものである。例えば、この車体510側の電装部品とは、スライドドア520のスピーカに関連する音響機器やパワーシートを駆動させる駆動装置等のことを示している。一方、第2電気接続対象物521とは、電装部品やスイッチ等のようなスライドドア520に設置されるものである。例えば、このスライドドア520の電装部品とは、パワーウインドウを駆動させる駆動装置やスピーカ等のことを示している。また、スライドドア520のスイッチとは、パワーウインドウを作動させるためのスイッチ、パワーシートを作動させるためのスイッチ等のことを示している。
【0029】
ワイヤハーネス1は、この第1電気接続対象物511と第2電気接続対象物521との間に配索される(
図1)。そして、このワイヤハーネス1は、リンク機構600に配索させ、このリンク機構600の動きに追従させる。
【0030】
ワイヤハーネス1は、第1電気接続対象物511と第2電気接続対象物521とを電気接続させる配索部品としてのハーネス本体10を備える(
図1から
図11)。このハーネス本体10は、複数本の電線を束ねた電線束のみで構成されたものであってもよく、この電線束の全体をコルゲートチューブ等の外装部品で覆ったものであってもよく、電線束を部分的に1つ又は複数の外装部品で覆ったものであってもよい。また、このワイヤハーネス1は、車体510側とスライドドア520側との間で信号の授受を行うための通信線を備えるものであってもよい。
【0031】
このワイヤハーネス1においては、ハーネス本体10の一方の端末を第1電気接続対象物511に対して直接的又は間接的に電気接続させ、かつ、ハーネス本体10の他方の端末を第2電気接続対象物521に対して直接的又は間接的に電気接続させる。例えば、このワイヤハーネス1は、ハーネス本体10の一方の端末に組み付け、このハーネス本体10を第1電気接続対象物511に対して直接的又は間接的に電気接続させる第1コネクタ21と、このハーネス本体10の他方の端末に組み付け、このハーネス本体10を第2電気接続対象物521に対して直接的又は間接的に電気接続させる第2コネクタ22と、を備えている(
図1から
図11)。
【0032】
ハーネス本体10は、リンク機構600に配索される第1配索部11と、第1配索部11よりも車体510側に配索される第2配索部12と、第1配索部11よりもスライドドア520側に配索される第3配索部13と、を有する(
図1から
図11)。
【0033】
第1配索部11は、第1アーム部材610の他端部612に配索される(
図1から
図11)。例えば、この第1配索部11は、第1アーム部材610に沿わせて当該第1アーム部材610の他端部612まで配索させる。ここで示す第1配索部11は、一端部611と他端部612との間に亘って第1アーム部材610に沿わせている。この第1配索部11は、その一端部611で第1アーム部材610にハーネス固定具(以下、「アーム側固定具」という。)を用いて固定してもよく(図示略)、このような一端部611での固定を行わなくてもよい。尚、そのアーム側固定具とは、例えば、第1配索部11と第1アーム部材610(例えば、平板状に形成されている部分)に対するそれぞれの保持形状が設けられたクランプ又はクリップ、第1配索部11と第1アーム部材610を一緒に巻き付ける樹脂テープ等のことである。
【0034】
第2配索部12とは、例えば、ハーネス本体10において、第1配索部11を第1アーム部材610の一端部611と他端部612との間に亘って配索させる場合、その一端部611よりも車体510側に配索される部分のことである(
図1から
図11)。ハーネス本体10においては、この第2配索部12の端末の第1コネクタ21を車体510側で第1電気接続対象物511に対して直接的又は間接的に電気接続させる。
【0035】
この第2配索部12は、車体510に対して直接的又は間接的に固定してもよく、このような車体510への固定を行わなくてもよい。この第2配索部12は、車体510側に固定する場合、例えば、その固定にハーネス固定具(以下、「第1ハーネス固定具」という。)を用いる(図示略)。この第1ハーネス固定具とは、例えば、第2配索部12と車体510又は車体510に固定された部品(例えば、平板状に形成されている部分)に対するそれぞれの保持形状が設けられたクランプ又はクリップ等のことである。
【0036】
また、第3配索部13とは、ハーネス本体10において、第1アーム部材610の他端部612よりもスライドドア520側に配索される部分のことである(
図1から
図11)。ハーネス本体10においては、この第3配索部13の端末の第2コネクタ22を第2電気接続対象物521に対して直接的又は間接的に電気接続させる。
【0037】
この第3配索部13は、その第2電気接続対象物521側の端末と第1配索部11側の端部との間で、スライドドア520に対する相対的な変位が起こらぬよう設けられた当該スライドドア520側の被固定部522に固定する(
図1)。そのスライドドア520側の被固定部522とは、スライドドア520に設けられた部位であってもよく、スライドドア520に対して相対的な変位無きよう固定されている別部材に設けられた部位であってもよい。リンク機構600は、第3配索部13における第2電気接続対象物521側の端末と第1配索部11側の端部との間の固定部13aをスライドドア520側の被固定部522に固定するハーネス固定具(以下、「第2ハーネス固定具」という。)30を備える(
図1、
図2、
図4、
図5、
図7及び
図10)。例えば、この第2ハーネス固定具30とは、第3配索部13の固定部13aとスライドドア520(例えば、平板状に形成されている部分)に設けた貫通孔等の被固定部522に対するそれぞれの保持形状が設けられたクランプ又はクリップのことである。
【0038】
更に、リンク機構600は、第1アーム部材610の他端部612に固定され、かつ、第3配索部13の配索経路を規制するハーネスガイド具40を備える(
図1から
図11)。このハーネスガイド具40は、自身に対してリンク機構600の作動平面Pmに交差する方向に位置するスライドドア520側の被固定部522に向けて第3配索部13を案内するガイド部材である。このハーネスガイド具40は、第1アーム部材610の他端部612に対して相対的な変位無きよう固定されており、第3配索部13を第1配索部11側の端部からスライドドア520側の被固定部522に向けて案内する。
【0039】
そのスライドドア520側の被固定部522は、スライドドア520に対する第3回転軸651の軸周りの第2アーム部材620の相対回転位置が第3相対回転の振り幅Wθの中央位置のときに、第2回転軸641と第3回転軸651のそれぞれの軸中心が存在する平面(以下、「仮想平面」という。)Pi上で、かつ、ハーネスガイド具40に対してリンク機構600の作動平面Pmに交差する方向に設ける(
図1及び
図10)。
【0040】
そのハーネスガイド具40は、第1アーム部材610に沿って当該第1アーム部材610の他端部612まで配索されてきた第1配索部11を引き入れる引入口41と、第3配索部13を引き出してスライドドア520側の被固定部522に向かわせる引出口42と、引入口41から引き入れた第1配索部11を案内し且つ第3配索部13を引出口42まで案内するガイド空間43と、を有する(
図2)。ここで示すハーネスガイド具40は、その主体がL字の筒形状に形成されており、その内部空間が第1配索部11と第3配索部13を案内するL字のガイド空間43として利用される。そして、このハーネスガイド具40は、引出口42を第1回転軸631や第2回転軸641の軸方向に開口させ、この引出口42の先に存在するスライドドア520側の被固定部522に第3配索部13を向かわせる。このハーネスガイド具40は、例えば、第2回転軸641の軸線上で第3配索部13を引き出させる。よって、引出口42は、第2回転軸641の軸線上に設け、この軸線上で第3配索部13を引き出させるものとなる。
【0041】
スライドドア520側の被固定部522は、ハーネスガイド具40に対して車両上方の領域又は車両下方の領域に設ける。例えば、この被固定部522は、スライドドア520に対する第3回転軸651の軸周りの第2アーム部材620の相対回転位置が第3相対回転の振り幅Wθの中央位置のときに、ハーネスガイド具40に対して車両上方の領域又は車両下方の領域に設ける。ここで示す被固定部522は、第2アーム部材620がその中央位置のときに、ハーネスガイド具40に対して車両上方の領域に設けている。具体的に、この被固定部522は、第2アーム部材620がその第3相対回転の振り幅Wθの中央位置のときに、ハーネスガイド具40に対する車両上方の領域で、かつ、このハーネスガイド具40に対して車両上方に配置した第3配索部13の固定部13aを第2ハーネス固定具30で固定し得る位置に設けている。例えば、第3配索部13は、第2アーム部材620が第3相対回転の振り幅Wθの中央位置のときに、ハーネスガイド具40の引出口42から車両上方に引き出され、この引出口42よりも車両上方に位置する固定部13aを第2ハーネス固定具30でスライドドア520側の被固定部522に固定する。
【0042】
この第3配索部13は、第1配索部11側の端部が第1アーム部材610の動きや位置に追従するハーネスガイド具40の配置場所で拘束され、かつ、固定部13aがスライドドア520側の被固定部522の位置で拘束される。このため、この第3配索部13は、スライドドア520に対して第3回転軸651の軸周りに第2アーム部材620を相対回転させた際に、スライドドア520側の被固定部522の位置に対してハーネスガイド具40が第2アーム部材620の他端部622(第1アーム部材610の他端部612)の変位に連動して移動するので、このハーネスガイド具40の変位に追従して、ハーネスガイド具40と固定部13aとの間で変形量を抑えて曲げ変形させることができる(
図9及び
図10)。つまり、このワイヤハーネス1は、過負荷無くハーネス本体10をリンク機構600の動きに追従させることができる。
【0043】
具体的に、第3配索部13は、スライドドア520側の被固定部522が仮想平面Pi上で且つハーネスガイド具40に対してリンク機構600の作動平面Pmに交差する方向に設けられているので、スライドドア520に対して第3回転軸651の軸周りに第2アーム部材620を第3相対回転の振り幅Wθの中央位置から一端まで相対回転させたときとその振り幅Wθの中央位置から他端まで相対回転させたときとで、それぞれに同じ変形量で曲げ変形させることができる。このため、このワイヤハーネス1は、スライドドア520に対して第3回転軸651の軸周りに第2アーム部材620を相対回転させた際に、第3配索部13の曲げ変形量を最少に抑えることができる。従って、このワイヤハーネス1は、第3相対回転をリンク機構600が行うときに、過負荷無くハーネス本体10をリンク機構600の動きに追従させることができる。
【0044】
また、この第3配索部13は、第1アーム部材610と第2アーム部材620をその相互間で第2回転軸641の軸周りに相対回転させた際に、第1アーム部材610の動きに連動して第1配索部11が第3配索部13の軸周りに回転するので、ハーネスガイド具40と固定部13aとの間で変形量を抑えて自身の軸周りに捻れ変形させることができる(
図11)。つまり、このワイヤハーネス1は、過負荷無くハーネス本体10をリンク機構600の動きに追従させることができる。
【0045】
具体的に、第3配索部13は、ハーネスガイド具40から第2回転軸641の軸線上で引き出されているので、この第2回転軸641の軸線上又は第2回転軸641の軸線の近傍で捻れ変形させることができる。このため、この第3配索部13においては、第2回転軸641の軸線から離れた位置でハーネスガイド具40から引き出された場合と比較して、変形量を抑えた捻れ変形が可能になる。従って、このワイヤハーネス1は、第1アーム部材610と第2アーム部材620をその相互間で第2回転軸641の軸周りに相対回転させるときに、過負荷無くハーネス本体10をリンク機構600の動きに追従させることができる。
【0046】
ところで、ここで示す第2アーム部材620は、スライドドア520に対する第3回転軸651の軸周りの相対回転位置が第3相対回転の振り幅Wθの中央位置のときに、車幅方向に延在させ、かつ、この車幅方向に第2回転軸641と第3回転軸651を配置させる。よって、ここで示す仮想平面Piとは、第2アーム部材620がその中央位置のときに、車幅方向と車両上下方向とに沿い、かつ、車両前後方向(スライド方向)に直交する平面のことである。尚、第2アーム部材620は、第3相対回転の振り幅Wθの中央位置からそれぞれに同じ大きさの角度で、スライドドア520に対して第3回転軸651の軸周りに振り幅Wθの一端側及び他端側へと相対回転する。
【0047】
以上示したように、本実施形態のワイヤハーネス1は、過負荷無くハーネス本体10をリンク機構600の動きに追従させることができるので、このハーネス本体10の耐久性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ワイヤハーネス
10 ハーネス本体
11 第1配索部
12 第2配索部
13 第3配索部
13a 固定部
30 第2ハーネス固定具(ハーネス固定具)
40 ハーネスガイド具
510 車体
520 スライドドア
522 被固定部
600 リンク機構
610 第1アーム部材
611 一端部
612 他端部
620 第2アーム部材
621 一端部
622 他端部
631 第1回転軸
641 第2回転軸
651 第3回転軸
Pi 仮想平面(平面)
Pm 作動平面(直交平面)
Wθ 振り幅