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特許7628530導電ペーストおよびそれを用いた導電パターン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-31
(45)【発行日】2025-02-10
(54)【発明の名称】導電ペーストおよびそれを用いた導電パターン
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20250203BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20250203BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20250203BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01B1/00 C
H01B5/14 A
H01B5/14 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022505866
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2021005749
(87)【国際公開番号】W WO2021182034
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2020041720
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】中谷 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】辻 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】松村 賢
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-050119(JP,A)
【文献】特表2009-533552(JP,A)
【文献】特開2015-026519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
H01B 1/00
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀被覆銅フレークと、銀被覆シリカ粉とを含んでおり、
前記銀被覆銅フレークの平均粒子径が2.0μm以上20.0μm以下であり、そして
前記銀被覆シリカ粉の平均粒子径が0.1μm以上5.0μm以下であることを特徴とする導電ペースト。
【請求項2】
前記銀被覆銅フレークと前記銀被覆シリカ粉の配合比が、体積比で99:1から15:85の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の導電ペースト。
【請求項3】
導電ペーストの全不揮発分に対して、30体積%以上60体積%以下の配合量で樹脂バインダーをさらに含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の導電ペースト。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の導電ペーストを用いて形成された導電パターン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子デバイスの電極などの導電パターンを形成するために用いられる導電ペーストおよびそれを用いた導電パターンに関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の半導体素子(半導体チップ)をリードフレームと呼ばれる金属片に載置し固定したり、印刷等により基板に回路を形成したり、或いはコンデンサなどの電子部品の電極を形成するため等に、多様な用途に導電ペーストが用いられている。
【0003】
また、近年の半導体チップの集積度の向上、回路基板の回路の高密度化に伴い、導電ペーストには、線幅のバラつきが少なく、高い精度で回路パターンの印刷が可能であり、また印刷された回路パターンにおいても、電気伝導性および熱伝導性が高く、高い耐マイグレーション性を有しており、そして適度な粘度や流動性を有することにより優れた作業性を備えていることが求められている。
【0004】
例えば、特開2012-18783号公報(特許文献1)では、平均粒子径0.5μm以上の銀粒子に平均一次粒子径10nm以上200nm以下の銀微粒子を添加して導電ペーストの流動性の低下を抑制することにより、体積抵抗率が低い導電膜の配線を形成することができ、且つ基板に対する密着性や印刷性を向上させた導電ペーストが開示されている。
【0005】
また、特開2019-102273号公報(特許文献2)では、電気的に低い抵抗を維持したまま、細線形状を維持できるだけの適正な粘度を有するように、ナノ粒子を含む3種類のフィラーを使用することにより、粘度の低下を抑制した導電ペーストが開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1および2に記載の導電ペーストでは、ナノサイズのフィラーの分散が難しく、流動性が高くなり易い傾向がある。流動性が高過ぎる場合、印刷後に導電ペーストが滲んでしまい、線幅にバラつきが生じ、その結果回路のショートの原因となるという問題があった。また、これらの導電ペーストを用いて形成した導電パターンは、必ずしも高い耐マイグレーション性を有していないという問題もあった。
【0007】
また、銀粒子などの導電性粉体は充填量が多くなると分散し難くなり、それ故、従来のフレーク状(または扁平状)の銀粉や球状銀粉等を高充填した組成物は、外観不良が生じ易く、また接着強度や作業性が低下するなどの問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-18783号公報
【文献】特開2019-102273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、線幅のバラつきが少なく、高い精度で導電パターンの印刷が可能であり、また印刷された導電パターンにおいても、電気伝導性が高く、高い耐マイグレーション性を有しており、そして適度な粘度や流動性を有することにより優れた作業性を備えた導電ペーストおよびそれを用いた導電パターン(回路パターン)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み、印刷時の滲みによる線幅のバラつきやマイグレーションの発生を抑制するのに有効であり、そして高い電気伝導性や優れた作業性を実現するための導電性粉体の種類、形状および異なる導電性粉体との組み合わせ等について鋭意検討を重ねた結果、導電ペーストとして、銀被覆銅フレークをベースとして、これに銀被覆シリカ粉を添加することで上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明によれば、銀被覆銅フレークと、銀被覆シリカ粉とを含む導電ペーストおよびそれを用いた導電パターンが提供される。また、本発明の導電ペーストは、さらにバインダー樹脂と、溶剤と、そして硬化剤とを含んでいてもよい。
【0012】
本発明の導電ペーストは、銀被覆銅フレークおよび銀被覆シリカ粉と、そしてそれらへバインダー樹脂を加えることによりペースト状に成形された組成物である。銀被覆銅フレークと銀被覆シリカ粉とバインダー樹脂とを含んでいれば、本発明の効果が損なわれない範囲で、必要に応じて他に溶剤、消泡剤など他の成分を含んでいてもよい。
【0013】
本発明で用いられる銀被覆銅フレークは、銀で被覆されたフレーク状の銅粉であれば、特に限定されることなく、公知のものを使用することができる。銀被覆銅フレークの体積平均粒子径(D50)は1.0μm以上50μm以下であることが好ましく、2.0μm以上20μm以下であることがより好ましい。特に銀被覆銅フレークの体積平均粒子径(D50)が2.0μm以上20.0μm以下であれば、回路を描画する際細線への対応が極めて容易となる。なお、銀で被覆する銅粉としては、球状または略球状の銅粉またはフレーク状の銅粉が知られているが、回路形成後の電気的接点の減少を抑制し、電気的抵抗の増大を抑える観点から、本発明では銀被覆の銅フレークを用いることが好ましい。
【0014】
また、銀被覆銅フレークは、銀で完全に被覆されていてもよいし、一部銅が露出していてもよい。銀で完全に被覆されている方が、比抵抗値が小さくなるために好適である。銀被覆銅フレークの配合量は、導電ペーストの全不揮発分に対して10体積%以上40体積%以下であることが好ましく、30体積%以上40体積%以下であれば、より好ましい。銀被覆銅フレークの配合量が10体積%以上40体積%以下であれば、比抵抗値を低く抑えながら、適度な粘度や流動性を有することにより作業性の向上を図ることができる。
【0015】
本発明に用いられる銀被覆シリカ粉は、銀で被覆されたシリカ粉であれば、特に限定されることなく、公知のものを使用することができる。銀被覆シリカ粉の体積平均粒子径(D50)は0.050μm以上50.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5.0μm以下であることがより好ましい。特に銀被覆シリカ粉の体積平均粒子径(D50)が0.1μm以上5.0μm以下であれば、高い充填率を達成することにより比抵抗値を低く抑えることができる。
【0016】
また、銀被覆シリカ粉は、銀で完全に被覆されていてもよいし、一部シリカが露出していてもよい。銀で完全に被覆されている方が、比抵抗値が小さくなるために好適である。銀被覆シリカ粉の配合量は、銀被覆銅フレークと銀被覆シリカ粉の体積比が99:1から15:85の範囲であることが好ましく、99:1から20:80の範囲であることがより好ましい。
【0017】
銀被覆銅フレークと銀被覆シリカ粉の体積比が99:1から15:85の範囲であれば、得られた導電ペーストの流動性が特に好適となり、印刷した際の線のバラつきが小さくなると伴に、形成された回路パターンの電気伝導性や耐マイグレーション性も向上する。また、銀被覆シリカ粉の形状は、粒子であれば特に限定されることなく使用することができる。粒子状であれば、流動性に優れるため、特に好適に用いられる。
【0018】
なお、本願明細書において「から」、「~」を用いて示された数値(比率)範囲は、「から」、「~」の前後に記載される数値(比率)をそれぞれ最小値(比率)および最大値(比率)として含む範囲を示している。
【0019】
本発明に用いられるバインダー樹脂としては、特に限定されることなく公知の樹脂を使用することができる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミドなどが挙げられる。また、末端に官能基が残存したポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を硬化剤と併せて使用してもよい。
【0020】
スクリーン印刷のような各種印刷法に適した作業性や印刷性を実現させるために、樹脂バインダーを、導電ペーストの全不揮発分に対して30体積%以上60体積%以下の比率で配合することが好ましい。
【0021】
本発明の導電性ペーストに用いられる溶剤に、特に限定はない。使用する樹脂の溶解性や印刷方法等の種類に応じて、適宜選択することができる。本発明の溶剤の例としては、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族系溶剤、脂環族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、水等の1 種または2種以上を混合したものが挙げられる。
【0022】
なお、エステル系溶剤の例としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、炭酸ジメチル等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンベンゼン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサンノン等が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等、これらモノエーテル類の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等や、これらモノエーテル類の酢酸エステル等が挙げられる。
【0023】
他方、脂肪族系溶剤の例としては、n-ヘプタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、イソヘプタン等が挙げられる。脂環族系溶剤の例としては、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。芳香族系溶剤の例としては、トルエン、キシレン、テトラリン等が挙げられる。アルコール系溶剤(上述のグリコールエーテル系溶剤を除く)の例としては、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
【0024】
また、上述した本発明の導電ペーストを用いてPET樹脂シート上に、直線状の複数のラインを100μm程度の間隔を空けて印刷した回路パターンにおいては、線幅のバラつきが小さいために隣り合うライン同士が短絡(接触)することがなく、また、各ラインの電気伝導性にも優れた回路パターンを得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の導電ペーストは、適度な粘度、適度な流動性を有するために優れた作業性を備えており、そして線幅のバラつきが少なく、高い精度で回路パターンの印刷が可能であるという優れた効果を奏すると共に、印刷された導電パターンにおいても、電気伝導性が高く、高い耐マイグレーション性を有するという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例4の導電ペーストを用いて印刷した回路パターン(導電パターン)の顕微鏡写真である。
図2】比較例1の導電ペーストを用いて印刷した回路パターン(導電パターン)の顕微鏡写真である。
図3】比較例3の導電ペーストを用いて印刷した回路パターン(導電パターン)の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態に係る導電ペーストおよびそれを用いた導電パターンについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例
【0028】
1.導電ペーストの作製
本発明の一実施形態に係る導電ペーストおよび比較例の導電ペーストは、以下の原料および条件にて製作した(「表1」参照)。
[実施例1]
銀被覆銅フレークとして、体積平均粒子径(D50)が6μmのトーヤルテックフィラー(登録商標)/TFM‐C05F(東洋アルミニウム社製)を65.1g、銀被覆シリカ粉として、体積平均粒子径(D50)が2μmのトーヤルテックフィラー(登録商標)/TFM‐S02P(東洋アルミニウム社製)を0.29g、バインダー樹脂として、エリーテル(登録商標)/UE‐3210(ユニチカ社製)を12.0g、硬化剤として、ブロックイソシアネート(製品名:7992、Baxenden社製)を1.7g、および溶剤として、エチルカルビトールアセテートとイソホロンを重量比16:9で混合した混合溶剤24.9gを配合し、そしてディスパーおよび3本ロールを用いて混錬して実施例1の導電ペーストを製作した。
【0029】
[実施例2]
銀被覆シリカ粉として、体積平均粒子径(D50)が2μmのトーヤルテックフィラー(登録商標)/TFM‐S02P(東洋アルミニウム社製)を0.57g配合したこと以外は、実施例1と同じ条件にて実施例2の導電ペーストを製作した。
【0030】
[実施例3]
銀被覆シリカ粉として、体積平均粒子径(D50)が2μmのトーヤルテックフィラー(登録商標)/TFM‐S02P(東洋アルミニウム社製)を1.2g配合したこと以外は、実施例1と同じ条件にて実施例3の導電ペーストを製作した。
【0031】
[実施例4]
銀被覆シリカ粉として、体積平均粒子径(D50)が2μmのトーヤルテックフィラー(登録商標)/TFM‐S02P(東洋アルミニウム社製)を2.3g配合したこと以外は、実施例1と同じ条件にて実施例4の導電ペーストを製作した。
【0032】
[実施例5]
銀被覆銅フレークとして、体積平均粒子径(D50)が6μmのトーヤルテックフィラー(登録商標)/TFM‐C05F(東洋アルミニウム社製)を25.9g、銀被覆シリカ粉として、体積平均粒子径(D50)が2μmのトーヤルテックフィラー(登録商標)/TFM‐S02P(東洋アルミニウム社製)を32.3g配合したこと以外は、実施例1と同じ条件にて実施例5の導電ペーストを製作した。
【0033】
[比較例1]
銀被覆シリカ粉を配合しなかったこと以外は、実施例1と同じ条件にて比較例1の導電ペーストを製作した。
【0034】
[比較例2]
銀被覆銅フレークを配合せず、銀被覆シリカ粉として、体積平均粒子径(D50)が2μmのトーヤルテックフィラー(登録商標)/TFM‐S02P(東洋アルミニウム社製)を47.9g配合したこと以外は、実施例1と同じ条件にて比較例2の導電ペーストを製作した。
【0035】
[比較例3]
銀被覆銅フレークを配合せず、銀被覆シリカ粉として、体積平均粒子径(D50)が2μmのトーヤルテックフィラー(登録商標)/TFM‐S02P(東洋アルミニウム社製)を7.9g配合したこと以外は、実施例1と同じ条件にて比較例3の導電ペーストを製作した。
【0036】
[比較例4]
銀被覆シリカ粉の代替として、体積平均粒子径(D50)が5.7μmの球状銀粉(製品名:HXR‐Ag、日本アトマイズ加工株式会社製)を2.3g配合したこと以外は、実施例1と同じ条件にて比較例4の導電ペーストを製作した。
【0037】
[比較例5]
銀被覆銅フレークの代替として、体積平均粒子径(D50)が4.8μmの銀フレーク(製品名:TCG‐1は株式会社徳力化学研究所社製)を65.1g、銀被覆シリカ粉として、体積平均粒子径(D50)が2μmのトーヤルテックフィラー(登録商標)/TFM‐S02P(東洋アルミニウム社製)を2.3g配合したこと以外は、実施例1と同じ条件にて比較例5の導電ペーストを製作した。
【0038】
[比較例6]
銀被覆銅フレークの代替として、体積平均粒子径(D50)が4.8μmの銀フレーク(製品名:TCG‐1は株式会社徳力化学研究所社製)を65.1g配合し、銀被覆シリカ粉を配合しなかったこと以外は、実施例1と同じ条件にて比較例6の導電ペーストを製作した。
【0039】
実施例1~5および比較例1~6の導電ペーストに配合した各成分の添加量(g)および導電ペーストの全不揮発分に対する各成分の配合比率(Vol%)を表1に示す。
【表1】
【0040】
2.回路パターン(導電パターン)の作製
実施例1~5および比較例1~6の導電ペーストを用いて、材質がステンレス製、スクリーンメッシュ数325メッシュ、乳剤厚み10μmの線幅100μm、各線の間隔100μmの回路パターンで作製されたスクリーン版を用いてスクリーン印刷機(製品名:DP‐320型スクリーン印刷機、ニューロング精密工業株式会社製)により、PET樹脂シート上に印刷した。続いて、回路パターンが印刷されたシートを、150℃で30分間乾燥させて評価用回路パターンを作製した。
【0041】
3.導電ペーストおよび回路パターンの評価
(1)粘度
導電ペーストの作業性および滲み性との関係を調べるため、実施例1~5および比較例1~6の導電ペーストの粘度を、B型粘度計(型番:DV2THBCJ0、ブルックフィールド社製)にて温度25℃、回転数0.5rpmの条件で測定した。その結果を表2に示す。
【0042】
(2)線幅のバラつき
実施例1~5および比較例1~6の導電ペーストを用いて作製した上記評価用回路パターンを、検査用顕微鏡(製品名:ECLIPSE L200、ニコン社製)を用いて、倍率50倍にて観察し、画像を撮影した。続いて、得られた画像を画像解析ソフト(製品名:Winroof 2018、三谷商事株式会社製)を用いて二値化処理を行った。二値化された画像から1000箇所の線幅を測定し、線幅のバラつきの指標となる3σの値を求めた。3σは標準偏差(σ)の3倍の区間を意味しており、正規分布であれば平均値±3σ範囲に約99.7%のサンプルが収まる。
【0043】
回路パターンの線幅のバラつきは、その3σの値が小さいほど好ましいが、3σの値が50μmを超えると、通電時等おいて隣り合う線同士が短絡する可能性があることから「×」(不良)と評価し、50μm以下である場合を「〇」(良)と評価した。また、回路パターン形成当初から隣り合う線同士の一部において短絡(接触)が観察される場合は、3σの値に拠らず「×」(不良)と評価した。以上の結果を表2に示す。
【0044】
なお、上述の各評価用回路パターンのうち、実施例4の導電ペーストを用いて作製した回路パターンの顕微鏡写真を図1に、比較例1の導電ペーストを用いて作製した回路パターンの顕微鏡写真を図2に、そして比較例3の導電ペーストを用いて作製した回路パターンの顕微鏡写真を図3に示した。
【0045】
(3)耐マイグレーション性
回路パターンの耐マイグレーション性は、上術の各評価用回路パターンを85℃、湿度85%、印加電圧50Vの条件で保持し、短絡が発生するまでの時間を測定することにより評価した。回路パターンの短絡の有無は、マイグレーションテスター(製品名:MODEL MIG-87B、IMV株式会社製)を用いて確認した。
【0046】
耐マイグレーション性は、回路パターンが短絡するまでの時間が長いほど耐マイグレーション性に優れていることを示し、本実施形態においては、短絡が発生するまでの時間が800時間以上である場合を「〇」(良)と評価し、800時間未満である場合を「×」(不良)と評価した。以上の結果を表2に示す。
【0047】
(4)比抵抗値
回路パターンの比抵抗値(Ω・cm)は、材質がポリエステル樹脂、スクリーンメッシュ数280メッシュ、乳剤厚み9ミクロンで4.8cm×4.8cmの四角形状で作製した評価用スクリーン版を用い、導電ペーストをPETフィルム上に印刷し、150℃にて30分乾燥させたものについて塗膜を形成した。なお、塗膜の厚みはデジマチック標準外側マイクロメータ(商品名:IP65 COOLANT PROOF Micrometer、株式会社ミツトヨ社製)で測定することによって確認した。4探針式表面抵抗測定器(商品名:ロレスタGP、株式会社三菱アナリテック製)を用いて測定することにより確認した。各評価用回路パターンにおいて、それぞれ任意の5点を測定し、その平均値を比抵抗値とした。具体的には、印刷物の寸法、印刷物の平均厚み、測定点の座標を上記4探針式表面抵抗測定器にデータ入力し、自動的に計算させることにより得られる値を導電体層(回路パターン/導電パターン)の比抵抗値とした。
【0048】
比抵抗値は、その値が小さいほど導電性に優れていることを示す。印刷物の寸法とは、印刷物が有する所定形状のパターンにおける最大長さと最大幅とからなる寸法をいう。比抵抗値は小さい方が良好であることを示し、2.0×10-4Ω・cm以下を示した場合を「〇」(良)であると評価し、逆に2.0×10-4Ω・cmより大きい場合を「×」(不良)と評価した。以上の結果を表2に示す。
【0049】
各評価用回路パターンの総合評価は、上述した「線幅のバラつき」、「耐マイグレーション性」および「比抵抗値」の評価において、いずれも「〇」を獲得したもののみを「〇」(良)と評価し、各評価の中で1つでも「×」があるものは総合評価においても「×」(不良)と評価した。
【0050】
実施例1~5および比較例1~6の導電ペーストおよびそれらを用いて作製した回路パターン(導電パターン)の評価を表2に示す。
【表2】
【0051】
4.考察
表2より、実施例1~5の導電ペーストと比較例1~6の導電ペーストとを比較すると、本発明の導電ペーストは、銀被覆銅フレークをベースとして、これに銀被覆シリカ粉を添加することにより、印刷された回路パターン(導電パターン)の「線幅のバラつき」、「耐マイグレーション性」および「比抵抗値」のいずれの評価においても良好な結果を得ることができ、その結果、線幅のバラつきが少なく、高い精度で導電パターンの印刷が可能であり、また印刷された導電パターンにおいても、電気伝導性および熱伝導性が高く、高い耐マイグレーション性を有しており、そして30Pa・s以上70Pa・s以下の粘度を有することにより優れた作業性を備えていることが判った。
【0052】
特に実施例1~5の導電ペーストと比較例1~3の導電ペーストとの比較により、銀被覆銅フレークと銀被覆シリカ粉の体積比が、好ましくは99:1から15:85の範囲、より好ましくは99:1から20:80の範囲にあると、印刷された回路パターンにおいて、線幅のバラつきが小さく、優れた耐マイグレーション性および導電性を得ることができ、さらに実施例1~4の導電ペーストのように、銀被覆銅フレークと銀被覆シリカ粉の体積比が99:1から90:10の範囲であると、より優れた耐マイグレーション性を得られることが判った。
【0053】
また、実施例1~5の導電ペーストは、銀被覆銅フレークの配合量を、導電ペーストの全不揮発分に対して10体積%以上40体積%以下とすることによって、印刷された回路パターンにおいて、線幅のバラつきが小さく、優れた耐マイグレーション性および導電性を得ることができ、比抵抗値を低く抑えながら、適度の粘度や流動性を有することにより作業性の向上を図ることができる。さらに実施例1~4の導電ペーストのように、銀被覆銅フレークの配合量を、導電ペーストの全不揮発分に対して30体積%以上40体積%以下とすれば、より優れた耐マイグレーション性を得られることが判った。
【0054】
また、実施例1~5の導電ペーストにおいて、スクリーン印刷のような各種印刷法に適した作業性や印刷性を実現させるために樹脂バインダーを、導電ペーストの全不揮発分に対して30体積%以上60体積%以下の比率で配合することが有効であることが判った。
【0055】
実施例1~5の導電ペーストは、銀被覆銅フレークの体積平均粒子径(D50)は、好ましくは1.0μm以上50μm以下、より好ましくは2.0μm以上20μm以下であると、印刷された回路パターンにおいて線幅のバラつきが少なく、回路パターンを描画する際細線への対応が極めて容易となることが判った。
【0056】
また、実施例1~5の導電ペーストは、銀被覆シリカ粉の体積平均粒子径(D50)は、好ましくは0.050μm以上50.0μm以下、より好ましくは0.1μm以上5.0μm以下であると、高い充填率を達成することにより比抵抗値を低く抑えながら、印刷された回路パターンにおいても線幅のバラつきが少なくなることが判った。
【0057】
また、図1~3より、本発明の導電ペーストを用いて複数のラインを100μm程度の間隔を空けて印刷した回路パターン(導電パターン)は、線幅のバラつきが小さいために隣り合うライン同士が短絡(接触)することがなく、また、各ラインの電気伝導性にも優れた回路パターンを得られることが判った。
【符号の説明】
【0058】
L・・・印刷線
G・・・隙間(PET樹脂シート)
S・・・短絡部分(接触部分)
図1
図2
図3