(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】中皿付き容器
(51)【国際特許分類】
B65D 85/50 20060101AFI20250204BHJP
【FI】
B65D85/50 100
(21)【出願番号】P 2018117736
(22)【出願日】2018-06-21
【審査請求日】2021-02-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390007537
【氏名又は名称】株式会社ケーピープラテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 一成
【合議体】
【審判長】神山 茂樹
【審判官】稲葉 大紀
【審判官】葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-165422(JP,A)
【文献】実開平7-4356(JP,U)
【文献】特開2016-199285(JP,A)
【文献】実開昭56-84970(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
料理の持帰りに用いられる容器であって、
上方開口を画定する環状の第1の外周縁部を含む容器本体と、
前記第1の外周縁部に着脱可能に嵌合する環状の第2の外周縁部及び前記第2の外周縁部の内方に延在する底部を含み、前記第1の外周縁部と前記第2の外周縁部との嵌合により前記上方開口を閉じるように前記容器本体に装着される中皿と、
前記容器本体に着脱可能に装着され、前記中皿を蓋する上蓋とを有する中皿付き容器であって、
前記底部は、下側に凸状態をなす第1の状態と上側に凸状態をなす第2の状態との間に弾性変形可能な反転変形部を含み、前記反転変形部は初期状態において前記第1の状態をなし、
前記底部は、前記反転変形部の中央部から上方に突出した突起部を含み、前記突起部の上部のみに空気抜き孔が設けられており、
前記中皿が、前記容器本体に気密状態で嵌合し、かつ、前記上蓋が孔を有することなく、前記中皿に取り付けられることにより、前記中皿を介して前記容器本体を密閉する、中皿付き容器。
【請求項2】
前記底部は前記反転変形部の外縁を取り囲むべく延在した少なくとも一つの環状の突条部を含む請求項1に記載の中皿付き容器。
【請求項3】
前記底部は平面視で円形である請求項1又は2に記載の中皿付き容器。
【請求項4】
前記第1の外周縁部は円筒状内周面を含み、前記第2の外周縁部は前記円筒状内周面に気密に嵌合する円筒状外周面を含む請求項1から3の何れか一項に記載の中皿付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中皿付き容器に関し、更に詳細には、容器本体と上蓋との間に中皿を有する食品の収容に適した中皿付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
牛丼、中華丼、カレーライスやパスタ料理等の持帰り用の販売に用いられる容器として、容器本体と上蓋との間に中皿を有する中皿付き容器が知られている。中皿付き容器は、容器本体に米飯あるいは麺類及びスープ、出汁類を収容し、中皿に具材を収容することにより、米飯あるいは麺類と具材とを分離して収容することができる。
【0003】
この種の中皿付き容器としては、上方開口を画定する環状の第1の外周縁部を含む容器本体と、前記第1の外周縁部に着脱可能に嵌合する環状の第2の外周縁部を含み、前記第1の外周縁部と前記第2の外周縁部との嵌合により前記容器本体の上方開口を閉じるように前記容器本体に装着される中皿と、前記容器本体に着脱可能に装着され、前記中皿を蓋する上蓋とを有するものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の中皿付き容器においては、容器本体の収容物が外部に漏洩せず、且つ容器本体収容物と中皿の収容物とが混じらないことを要求される。このためには、中皿が容器本体に対して気密に嵌合し、容器本体内の気密性が高いことを要求される。
【0006】
しかし、容器本体内の気密性が高いと、中皿が容器本体に対する押し込みによって嵌合される際に、容器本体内の空気が圧縮され、容器本体の内圧が上昇するため、容器本体に対する中皿の押し込みに大きい力を要すると共に押し込みを迅速に行うことが難しい。このため、中皿を容器本体に装着する作業性が悪い。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、中皿付き容器において、容器本体内の気密性が高くても、容器本体に対する中皿の装着が作業性よく行われるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による中皿付き容器は、上方開口(22)を画定する環状の第1の外周縁部(24)を含む容器本体(20)と、前記第1の外周縁部(24)に着脱可能に嵌合する環状の第2の外周縁部(44)及び前記第2の外周縁部(44)の内方に延在する底部(54)を含み、前記第1の外周縁部(24)と前記第2の外周縁部(44)との嵌合により前記上方開口(22)を閉じるように前記容器本体(20)に装着される中皿(40)と、前記容器本体(20)に着脱可能に装着され、前記中皿(40)を蓋する上蓋(70)とを有する中皿付き容器(10)であって、前記底部(54)は、下側に凸状態をなす第1の状態と上側に凸状態をなす第2の状態との間に弾性変形可能な反転変形部(56)を含み、前記反転変形部(56)は初期状態において前記第1の状態をなす。
【0009】
この構成によれば、中皿(40)を容器本体(20)に取り付ける過程で、容器本体(20)の内圧が上昇しようと、容器本体(20)の内圧の上昇によって反転変形部(56)が第1の状態から第2の状態に反転し、容器本体(20)の内圧が上昇することが抑制される。これにより、容器本体(20)内の気密性が高くても、容器本体(20)に対する中皿(40)の装着が作業性よく行われる。
【0010】
上記中皿付き容器(10)において、好ましくは、前記底部(54)は前記反転変形部(56)の外縁を取り囲むべく延在した少なくとも一つの環状の突条部(58)を含む。
【0011】
この構成によれば、反転変形部(56)が反転変形し易くなり、容器本体(20)に対する中皿(40)の装着が作業性よく行われる。
【0012】
上記中皿付き容器(10)において、好ましくは、前記底部(54)は前記反転変形部(56)の中央部から上方に突出した突起部(60)を含む。
【0013】
この構成によれば、反転変形部(56)が環状になって円盤状である場合よりも反転変形部(56)が反転変形し易くなり、容器本体(20)に対する中皿(40)の装着が作業性よく行われる。
【0014】
上記中皿付き容器(10)において、好ましくは、前記突起部(58)の上部に空気抜き孔(62)が設けられている。
【0015】
この構成によれば、空気抜き孔(62)による容器本体(20)内の空気抜きによっても容器本体(20)に対する中皿(40)の装着が作業性よく行われる。
【0016】
上記中皿付き容器(10)において、好ましくは、前記中皿(40)は前記反転変形部(56)より上側に空気抜き孔(62)を含む。
【0017】
この構成によれば、空気抜き孔(62)による容器本体(20)内の空気抜きによっても容器本体(20)に対する中皿(40)の装着が作業性よく行われる。
【0018】
上記中皿付き容器(10)において、好ましくは、反転変形部(56)は平面視で円形である。
【0019】
この構成によれば、反転変形部(56)が反転変形し易く、容器本体(20)に対する中皿(40)の装着が作業性よく行われる。
【0020】
上記中皿付き容器(10)において、好ましくは、前記第1の外周縁部(24)は円筒状内周面(26)を含み、前記第2の外周縁部(44)は前記円筒状内周面(26)に気密に嵌合する円筒状外周面(46)を含む。
【0021】
この構成によれば、第2の外周縁部(44)と円筒状内周面(26)との気密な嵌合によって容器本体(20)内の気密性が高くなっても、容器本体(20)に対する中皿(40)の装着が作業性よく行われる。
【発明の効果】
【0022】
本発明による中皿付き容器によれば、容器本体内の気密性が高くても、容器本体に対する中皿の装着が作業性よく行われる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による中皿付き容器の一つの実施形態の組立状態の断面図。
【
図2】本実施形態による中皿付き容器の分離状態の断面図。
【
図3】本実施形態による中皿付き容器の中皿の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明による中皿付き容器の一つの実施形態を、
図1~
図3を参照して説明する。
【0025】
中皿付き容器10は、牛丼、中華丼、カレーライスやパスタ料理等の持帰り用の販売に用いられる密閉容器であり、容器本体20と、中皿40と、上蓋70と有する。
【0026】
容器本体20は、発泡ポリスチレン等の発泡樹脂による真空成形品(熱プレス成形品)であり、上部に上方開口22を画定する円環状の第1の外周縁部24を含み、丼状をなして米飯、麺類及びスープ、出汁類等を収容する。
【0027】
第1の外周縁部24は上下方向に長い母線長(軸線長)L1を有する円筒状内周面26を含む。
【0028】
容器本体20は、更に、第1の外周縁部24の上縁から略90度折曲して外方に延出した円環状のフランジ部28と、第1の外周縁部24の下縁から内方に斜め下方に延出した円環状の肩部30とを含む。
【0029】
中皿40は、ポリスチレンやポリプロピレン等の非発泡の熱可塑性樹脂からなる樹脂シートを熱プレス(真空成形)等によって成形した成形品であり、容器本体20の上方開口22を閉じるように容器本体20の上部に装着され、具材等を収容する。
【0030】
中皿40は、上方開口42を画定して第1の外周縁部24に着脱可能に嵌合する円環状の第2の外周縁部44を含む。第2の外周縁部44は上下方向に長い母線長(軸線長)L2を有する円筒状外周面46を含む。円筒状外周面46の母線長L2は円筒状内周面26の母線長L1に同じか或いは母線長L1より少し小さくてよい。円筒状外周面46は母線方向(軸線方向)の全長及び全周に亘って円筒状内周面26に気密に内接嵌合する。この内接嵌合によって容器本体20が気密状態になる。
【0031】
中皿40は、更に、第2の外周縁部44の上縁から略90度折曲して外方に延出した円環状のフランジ部48と、第2の外周縁部44の下縁から内方に延出した円環状の肩部50と、肩部50の内端から内方に斜め下方に延出した円環状の側周部52と、側周部52の下縁から内方に延出した平面視で円形の底部54とを含む。フランジ部48にはフランジ部48から外方に突出した中皿取外し用の舌片49(
図3参照)が形成されている。
【0032】
底部54は、
図1に仮想線及び
図2に示されているように、下側に凸状態をなす第1の状態と、
図1に実線により示されているように、上側に凸状態をなす第2の状態との間に弾性変形可能で、外力が作用していない初期状態においては第1の状態をなす反転変形部56と、反転変形部56の外縁を取り囲むべく延在した複数の同心円状(環状)の突条部58と、反転変形部56の中央部から上方に突出した略接頭円錐形状の突起部60とを含む。
【0033】
反転変形部56は、突条部58と突起部60との間に円環膜状に延在して底部54の主部をなし、
図1に仮想線及び
図2に示されているように、下側に凸状態をなす第1の状態と、
図1に実線により示されているように、上側に凸状態をなす第2の状態との間に弾性変形可能で、外力が作用していない初期状態においては第1の状態をなす、スナップアクションの反転ばねのように作用する。初期状態、つまり反転変形部56に外力が作用していない状態においては、第1の状態が維持されることが好ましい。
【0034】
反転変形部56と突起部60との接続は滑らかなR形状によって接続されていることが好ましい。突起部60の上部、より詳細には突起部60の上端部にはピンホールのような細孔による空気抜き孔62が貫通形成されている。
【0035】
上蓋70は、ポリスチレンやポリプロピレン等の非発泡の熱可塑性樹脂からなる樹脂シートを熱プレス(真空成形)等によって成形した成形品であり、丸形の浅皿を上下反転したような蓋体をなしている。
【0036】
上蓋70は下方開口72を画定する円環状の第3の外周縁部74及び中皿40のフランジ部48に重なる円環状の肩部76を含む。第3の外周縁部74には内方に突出した円環状の係止用突条78が形成されている。
【0037】
上蓋70の取付けは、中皿40が容器本体20に取り付けられた状態で、
図1に示されているように、肩部76が中皿40のフランジ部48に当接するまで容器本体20及び中皿40に対して押し下げることにより行われる。肩部76がフランジ部48に当接した状態下では、係止用突条78が容器本体20のフランジ部28の外延在し、乗り越えることにより、上蓋70が容器本体20に抜止め状態で固定(係止)される。
【0038】
容器本体20に対する中皿40の取り付けは、上蓋70が容器本体20に取り付けられていない状態で、且つ反転変形部56が第1の状態にある状態で、第2の外周縁部44を容器本体20の第1の外周縁部24の内側に上方から下方に押し込むようにして嵌合させることにより行われる。この嵌合において、第2の外周縁部44の円筒状外周面46が第1の外周縁部24の円筒状内周面26に気密状態で内接嵌合する。
【0039】
中皿40の押込みは、
図1に示されているように、中皿40のフランジ部48が容器本体20のフランジ部28に重なるまで行われる。これにより、円筒状外周面46は母線方向の全長及び全周に亘って円筒状内周面26に気密に内接嵌合し、容器本体20が気密状態になる。
【0040】
中皿40の第2の外周縁部44を容器本体20の第1の外周縁部24の内側に押し込む過程では、中皿40の押し込みの進行に伴い中皿40により閉じられた容器本体20内の空気が圧縮され、容器本体20の内圧が上昇しようとすると、容器本体20の内圧の上昇によって反転変形部56が、反転ばねのように、
図1に仮想線によって示されている第1の状態から
図1に実線によって示されている第2の状態に反転するように弾性変形する。
【0041】
この反転変形部56の弾性変形によって、容器本体20の実容積(容器本体20と中皿40との間の空間容積)が拡大され、容器本体20の内圧が上昇することが抑制される。これにより、中皿40によって閉じられた容器本体20内の気密性が高くても、容器本体20に対する中皿40の装着が大きい力を要することなく迅速に作業性よく行われるようになる。
【0042】
反転変形部56が第1の状態から第2の状態に反転する弾性変形(反転変形)は、反転変形部56の外縁が突条部58によって折曲し易い節になっていることにより、反転変形部56に作用する圧力が比較的低くても確実に行われる。特に突条部58が同心円状に複数設けられてベローズをなしていることにより、反転変形部56の反転変形が、より一層確実に行われるようになる。
【0043】
更に、底部54の中央に突起部60が設けられていることにより、反転変形部56が突起部60の周りに延在する円環形状をなしていることにより、反転変形部56が円盤状である場合よりも、反転変形部56が第1の状態から第2の状態に反転変形し易くなる。このことによっても、反転変形部56の反転変形が、反転変形部56に作用する圧力が比較的低くても確実に行われる。
【0044】
これらのことにより、容器本体20に対する中皿40の装着が、より一層大きい力を要することなく迅速に作業性よく行われるようになる。
【0045】
更に、中皿40を容器本体20に取り付ける過程で、容器本体20内の内圧が上がると、空気抜き孔62によって容器本体20の空気抜きが行われる。このことによっても中皿40を容器本体20に取り付ける過程で容器本体20内の内圧が上がることが抑制され、容器本体20に対する中皿40の装着が、大きい力を要することなく迅速に作業性よく行われるようになる。
【0046】
空気抜き孔62は、底部54の主部をなす反転変形部56の上方に位置する突起部60の上端部に設けられているから、中皿40に収容される具材等の収容物の高さが突起部60の上端部以下である限り、収容物が空気抜き孔62を通って容器本体20内に漏洩することも、収容物によって空気抜き孔62が塞がれることもない。また、空気抜き孔62がピンホールのような細孔であることによっても、中皿40の収容物が空気抜き孔62を通って容器本体20内に漏洩することがない。
【0047】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、空気抜き孔62は、突起部60の上端部に限られることはなく、肩部50等、反転変形部56より上側に設けられていればよい。突起部60が省略されて反転変形部56が平面視で円形であってもよい。反転変形部56が平面視で円形であれば、反転変形部56が平面視で四角形である場合より反転変形し易い。容器本体20、中皿40、上蓋70は、パルプモールド品であってもよい。皿付き容器は、丸形に限られることはなく、楕円形、長円形、角形等の各種形状のものであってもよい。また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 :中皿付き容器
20 :容器本体
22 :上方開口
24 :第1の外周縁部
26 :円筒状内周面
28 :フランジ部
30 :肩部
40 :中皿
42 :上方開口
44 :第2の外周縁部
46 :円筒状外周面
48 :フランジ部
49 :舌片
50 :肩部
52 :側周部
54 :底部
56 :反転変形部
58 :突条部
60 :突起部
62 :空気抜き孔
70 :上蓋
72 :下方開口
74 :第3の外周縁部
76 :肩部