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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】複合糸及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/83 20060101AFI20250204BHJP
   C01B 32/158 20170101ALI20250204BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20250204BHJP
   D02G 3/16 20060101ALI20250204BHJP
   D06M 10/00 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
D06M11/83
C01B32/158
C25D7/00 R
D02G3/16
D06M10/00 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020070160
(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公開番号】P2021167471
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-03-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年1月29日~1月31日 第19回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(於:東京ビッグサイト)に発表
(73)【特許権者】
【識別番号】502225707
【氏名又は名称】杉田電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080012
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 橘馬
(74)【代理人】
【識別番号】100168206
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 健二
(72)【発明者】
【氏名】仲 健太
(72)【発明者】
【氏名】飯島 徹
(72)【発明者】
【氏名】須永 祐市
(72)【発明者】
【氏名】杉田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 秀志
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-065431(JP,A)
【文献】特開2019-067657(JP,A)
【文献】特開2019-049077(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0223826(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
D06M 10/00 - 11/84
D06M 16/00
D06M 19/00 - 23/18
C01B 32/158
C25D 1/00 - 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブからなる撚り糸と、前記撚り糸の表面を被覆する金属メッキ層とからなり、さらに前記撚り糸の内部に金属を含有する複合糸を製造する方法であって、
前記カーボンナノチューブからなる撚り糸を、電圧を印加しない状態で、メッキ液に0.1~360分間浸漬するメッキ液浸漬処理工程と、前記メッキ液浸漬処理した撚り糸を電解メッキ処理する電解メッキ処理工程とからなり、
前記電解メッキ処理工程が、0.1~3 Vの印加電圧で行う第1のメッキ処理工程と、前記第1のメッキ処理の後に、3~15 Vの印加電圧で行う第2のメッキ処理工程とを有することを特徴とする複合糸の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の複合糸の製造方法において、
前記メッキ液浸漬処理工程の前に、有機溶剤に0.1~360分間浸漬する有機溶剤処理工程と、前記有機溶剤処理した撚り糸を水に0.1~360分間浸漬する水処理工程とを有することを特徴とする複合糸の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合糸の製造方法において、
前記第1のメッキ処理工程で前記カーボンナノチューブからなる撚り糸の内部に金属を析出させ、
前記第2のメッキ処理工程で前記カーボンナノチューブからなる撚り糸の表面に金属を被覆させることを特徴とする複合糸の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の複合糸の製造方法において、
前記複合糸の断面において、前記カーボンナノチューブからなる撚り糸の内部に析出した金属が、5~70%の面積比Sm/S [ただし、Smはカーボンナノチューブからなる撚り糸の内部に存在する金属部分の断面積、Sはカーボンナノチューブからなる撚り糸部分の断面積である]となるように前記第1のメッキ処理工程の電圧及び時間を設定することを特徴とする複合糸の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の複合糸の製造方法において、
前記カーボンナノチューブからなる撚り糸の表面に、1μm以上の金属を被覆させるように前記第2のメッキ処理工程の電圧及び時間を設定することを特徴とする複合糸の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の複合糸の製造方法において、
前記金属が銅であることを特徴とする複合糸の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の複合糸の製造方法において、
前記カーボンナノチューブからなる撚り糸は、カーボンナノチューブアレイを紡績して得られ、
前記カーボンナノチューブアレイは、配向方向に平行な断面で撮影したSEM写真において、[基板に平行な方向(水平方向)に幅20μm]×[基板からの高さ方向(垂直方向)に8μm]の範囲を二次元フーリエ変換処理し、得られた振幅スペクトルの中心から水平方向(0°の方向)に空間周波数20μm-1までの振幅を積算した値をfv、中心から20°の方向に空間周波数20μm-1までの振幅を積算した値をf20としたとき、式:
f20/fv≦0.35
を満たすことを特徴とする複合金属の製造方法。
【請求項8】
カーボンナノチューブからなる撚り糸と、前記撚り糸の表面を被覆する金属メッキ層とからなる複合糸であって、
前記金属メッキ層の厚みが1μm以上であり、
前記撚り糸の内部に、前記撚り糸の表面を被覆する金属と同じ金属が、前記撚り糸の断面の5~70%の面積比Sm/S [ただし、Smはカーボンナノチューブからなる撚り糸の内部に存在する金属部分の断面積、Sはカーボンナノチューブからなる撚り糸部分の断面積である]で析出していることを特徴とする複合糸。
【請求項9】
請求項8に記載の複合糸において、
前記撚り糸の内部に含有する金属の面積率をS0、
前記撚り糸の中心から前記撚り糸の半径の1/2の円で囲まれる領域に占める金属の面積率をS1としたとき、
0.1≦S1/S0≦0.6
であることを特徴とする複合糸。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の複合糸において、
前記金属が銅であることを特徴とする複合糸。
【請求項11】
請求項8~10のいずれかに記載の複合糸において、
電気伝導度が1×106S/m以上であることを特徴とする複合糸。
【請求項12】
請求項8~11のいずれかに記載の複合糸において、
電気伝導度が1×107S/m以上であることを特徴とする複合糸。
【請求項13】
請求項8~12のいずれかに記載の複合糸において、
前記カーボンナノチューブからなる撚り糸は、表面の凹凸が1μm以下であることを特徴とする複合糸。
【請求項14】
請求項8~13のいずれかに記載の複合糸において、
前記カーボンナノチューブからなる撚り糸は、密度が0.2~2 g/cm3であることを特徴とする複合糸。
【請求項15】
請求項8~14のいずれかに記載の複合糸において、
前記面積比Sm/Sが15~60%であることを特徴とする複合糸。
【請求項16】
請求項8~15のいずれかに記載の複合糸において、
前記金属メッキ層は2種類の異なる金属のメッキ層が積層されてなり、それぞれのメッキ層の厚みが1μm以上であることを特徴とする複合糸。
【請求項17】
請求項16に記載の複合糸において、前記2種類の異なる金属が、撚り糸の表面側から銅及び錫であることを特徴とする複合糸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合糸及びその製造方法に関し、詳しくは、カーボンナノチューブからなる撚り糸と、前記撚り糸の表面を被覆する金属メッキ層とからなる複合糸、及びそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボンナノチューブ(以下、CNTと略す場合もある。)の電気的特性を改善する技術としてカーボンナノチューブにメッキを施すことが試みられている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2017-184105号)は、銀メッキを施したCNT糸を当面導電膜の表面に密着配置してなる導電性膜状体を開示している。しかしながら、CNT糸に銀メッキを施す具体的な方法は記載されていない。
【0004】
CNT糸に類似した炭素表面を持つ炭素繊維糸にメッキを行う方法として、特許文献2(特開沼63-264968)は、炭素繊維の束(糸)を不活性雰囲気で300~800℃で焼成処理した後で電解めっきする方法を開示している。
【0005】
特許文献3(特開平3-206173)は、炭素繊維の束の表面にカチオン性界面活性剤水溶液中でパラジウムコロイドを付着させてから無電解めっきを行って金属被覆炭素繊維を製造する方法を開示している。
【0006】
特許文献4(特開2009-220209)は、CNT配向膜を金属メッキ液に浸漬して、CNT配向膜の基板と巻取り機との間に電流を印加して巻取り機を回転させながらCNT繊維を製造する方法を開示しており、電界の発生による金属メッキ液からの金属ブリッジによりCNT束同士を連続的に接合して非常に長いCNT繊維を製造できると記載している。
【0007】
特許文献5(特開2010-70826)は、前処理として有機錯体金属を含む溶液で超臨界処理した後に、メッキ液に浸漬して無電解メッキ処理を行うことでメッキされた炭素繊維を製造する方法を開示している。
【0008】
従来、CNT表面の毛羽立ち又はCNT糸の低電気伝導度等の理由により、CNT表面への電解金属メッキが容易でないために無電解めっきが提案されてきた。ところが、無電解めっきでは、曲げ等により容易に被覆金属が剥がれるため、電解メッキを実施する方法が望まれてきた。
【0009】
CNTからなる糸に電解メッキを施す方法として、非特許文献1(金太成、他、「電気めっき処理によるカーボンナノチューブ/銅複合配線の創製および許容電流評価」、日本機械学会論文集、2017/12/14)は、ダイスによって成形した撚り角のない無撚CNT糸を水酸化ナトリウム水溶液及び塩酸水溶液で処理した後、硫酸銅水溶液に48時間浸漬し、低電流密度で長時間(5時間)の電解メッキを行う方法を開示している。硫酸銅水溶液を用いた前処理により、CNT糸内部に硫酸銅水溶液を染み込ませて、CNT糸内部への析出金属核を供給することができ、また、低電流密度で長時間の電解メッキによりCNT糸外周部に金属析出が偏らないように内部にも析出させることができると記載している。非特許文献1は、このようにCNT糸内部にも金属を析出させることにより、電流容量が高まると記載している。
【0010】
しかしながら、非特許文献1に記載の方法は、CNT糸内部へ金属を析出させるため、硫酸銅水溶液に48時間浸漬し、さらに低電流密度で5時間の電解メッキを行う必要があり、工業的に製造する方法としては処理時間がかかりすぎる。従って、もっと短時間で効率よく糸表面及び内部に金属が析出した複合糸を製造する方法の開発が望まれている。
【0011】
非特許文献2(J. Zou、他、ACS Applied Materials & InterfaceS10, 8197-8204 (2018))は、CNT/Cu複合糸を作製する方法として、2層で直径4nmの垂直成長CNTを撚って得られたCNT糸(直径15・、撚り角20ー、強度1.21ア0.05 GPa)に、電解ニッケルメッキを前処理として行い、その後に電解銅メッキを連続して行う方法を開示している。この前処理方法は目的の銅メッキ処理と連続で操作可能であるので工業化に適していると考えられる。非特許文献2は、CNT/Cu複合糸の断面のエネルギー分散型X線分光(EDS)測定において、CNT/Cu複合糸内部に銅の析出が発生していないことを示している。
【0012】
しかしながら、非特許文献2に記載されたように、連続でニッケルと銅の電解メッキを行う場合、ニッケルと銅の電流密度が異なるので、メッキ厚みの制御を精度良く行うことが難しい。メッキ厚みの精度良く制御するためには、それぞれのメッキを別々に行わなければならず、結局、工数が増加する。また、先にニッケルでメッキ被覆を行うので、CNT糸内部の接触抵抗を減じるためのCNT糸内部への銅の析出が妨げられることになる。
【0013】
また非特許文献2では、CNT糸の電気伝導度が比較的大きいために、直接CNT糸に電解メッキを行っているが、CNT表面と銅の密着性が不十分で所望の性能に達していなかった。そのため、ニッケルの電解メッキを前処理で行うことでニッケルの表面に銅の被覆を行っている。しかし、前述したように、ニッケル被覆のためにCNT糸内部に金属粒子の析出が妨げられるので、電気伝導は主に被覆された銅に依存し、結果的に軽量化には資するものの、メッキ糸全体の電気的物性改善に寄与していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2017-184105号公報
【文献】特開63-264968号公報
【文献】特開平3-206173号公報
【文献】特開2009-220209号公報
【文献】特開2010-70826号公報
【非特許文献】
【0015】
【文献】金太成、他、「電気めっき処理によるカーボンナノチューブ/銅複合配線の創製および許容電流評価」、日本機械学会論文集、2017/12/14
【文献】J. Zou、他、ACS Applied Materials & InterfaceS10, 8197-8204 (2018).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
さらに本願発明者らが研究を重ねた結果、非特許文献1に記載の方法で製造した電解メッキ処理が施された複合糸(単に複合糸とも言う)は、メッキ処理前のCNT糸に比べて破断強度が低下することがわかった。例えば、これらの複合糸を用いてモーターを製造する際に、複合糸をコアに巻き付ける過程で、複合糸が断線する場合があるため、複合糸にはある程度の引張強度が要求される。従って、十分な引張強度を有するメッキ処理が施されたCNT複合糸の開発が望まれている。
【0017】
従って、本発明の第1の目的は、表面が金属メッキ層で被覆され、かつ内部にも金属を含むカーボンナノチューブからなる複合糸、及び従来の工業的電解メッキ法を用いて前記複合糸を効率よく製造する方法を提供することである。
【0018】
本発明の第2の目的は、前記メッキ処理を施しても引張強度が十分に確保できる複合糸、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、電圧を印加しない状態でメッキ液に浸漬する前処理を行ったカーボンナノチューブからなる撚り糸を、0.1~3 Vの印加電圧で電解メッキ処理(第1のメッキ処理)を行った後、印加電圧を3~15 Vに上げて電解メッキ処理(第2のメッキ処理)を行うことにより、引張強度をほとんど低下させずにカーボンナノチューブからなる撚り糸の表面にメッキ層を形成できることを見出し、本発明に想到した。
【0020】
すなわち、本発明の複合糸は、
カーボンナノチューブからなる撚り糸と、前記撚り糸の表面を被覆する金属メッキ層とからなる複合糸であって、
前記金属メッキ層の厚みが1μm以上であり、
前記撚り糸の内部に、前記撚り糸の表面を被覆する金属と同じ金属が、前記撚り糸の断面の5~70%の面積比Sm/S [ただし、Smはカーボンナノチューブからなる撚り糸の内部に存在する金属部分の断面積、Sはカーボンナノチューブからなる撚り糸部分の断面積である]で析出しており、
前記複合糸の破断荷重が、0.80 N以上であり、かつ前記カーボンナノチューブからなる撚り糸の破断荷重の80%以上であることを特徴とする。
【0021】
前記撚り糸の内部に含有する金属の面積率をS0、
前記撚り糸の中心から前記撚り糸の半径の1/2の円で囲まれる領域に占める金属の面積率をS1としたとき、
0.1≦S1/S0≦0.6
であるのが好ましい。
【0022】
前記金属は銅であるのが好ましい。
【0023】
電気伝導度は1×106 S/m以上であるのが好ましく、1×107S/m以上であるのがより好ましい。
【0024】
前記複合糸の破断荷重は、前記金属メッキ層を有さないカーボンナノチューブからなる撚り糸の破断荷重の90%以上であるのが好ましい。
【0025】
前記複合糸において、前記被覆された金属表面にφ1~10 mmでハンダ付け処理を行って前記複合糸の引張試験を行ったとき、はんだ付けをした部分がはんだ付けをしていない部分より先に断裂しないのが好ましい。
【0026】
前記カーボンナノチューブからなる撚り糸は、表面の凹凸が1μm以下であるのが好ましい。
【0027】
前記カーボンナノチューブからなる撚り糸は、孤立したカーボンナノチューブのバンドルの数が、撚り糸長さ10μmあたり10本以下であるのが好ましい。
【0028】
前記カーボンナノチューブからなる撚り糸は、破断強度が700 MPa以上であるのが好ましい。
【0029】
前記カーボンナノチューブからなる撚り糸は、密度が0.2~2 g/cm3であるのが好ましい。
【0030】
前記面積比Sm/Sは15~60%であるのが好ましい。
【0031】
前記複合糸において、前記金属メッキ層が2種類の異なる金属のメッキ層が積層されてなり、それぞれのメッキ層の厚みが1μm以上であってもよい。
【0032】
前記2種類の異なる金属は、撚り糸の表面側から銅及び錫であるのが好ましい。
【0033】
カーボンナノチューブからなる撚り糸と、前記撚り糸の表面を被覆する金属メッキ層とからなり、さらに前記撚り糸の内部に金属を含有する複合糸を製造する本発明の方法は、
前記カーボンナノチューブからなる撚り糸を、電圧を印加しない状態で、メッキ液に0.1~360分間浸漬するメッキ液浸漬処理工程と、前記メッキ液浸漬処理した撚り糸を電解メッキ処理する電解メッキ処理工程とからなり、
前記電解メッキ処理工程が、0.1~3 Vの印加電圧で行う第1のメッキ処理工程と、前記第1のメッキ処理の後に、3~15 Vの印加電圧で行う第2のメッキ処理工程とを有することを特徴とする。
【0034】
本発明の方法において、前記メッキ液浸漬処理工程の前に、有機溶剤に0.1~360分間浸漬する有機溶剤処理工程と、前記有機溶剤処理した撚り糸を水に0.1~360分間浸漬する水処理工程とを有するのが好ましい。
【0035】
本発明の方法において、前記第1のメッキ処理工程で前記カーボンナノチューブからなる撚り糸の内部に金属を析出させ、
前記第2のメッキ処理工程で前記カーボンナノチューブからなる撚り糸の表面に金属を被覆させるのが好ましい。
【0036】
本発明の方法において、前記複合糸の断面において、前記カーボンナノチューブからなる撚り糸の内部に析出した金属が、5~70%の面積比Sm/S [ただし、Smはカーボンナノチューブからなる撚り糸の内部に存在する金属部分の断面積、Sはカーボンナノチューブからなる撚り糸部分の断面積である]となるように前記第1のメッキ処理工程の電圧及び時間を設定するのが好ましい。
【0037】
本発明の方法において、前記カーボンナノチューブからなる撚り糸の表面に、1μm以上の金属を被覆させるように前記第2のメッキ処理工程の電圧及び時間を設定するのが好ましい。
【0038】
本発明の方法において、前記第1のメッキ処理工程後の破断荷重が、前記カーボンナノチューブからなる撚り糸の破断荷重の80%以上であるのが好ましい。
【0039】
本発明の方法において、前記金属が銅であるのが好ましい。
【0040】
本発明の方法において、前記カーボンナノチューブからなる撚り糸は、カーボンナノチューブアレイを紡績して得られ、
前記カーボンナノチューブアレイは、配向方向に平行な断面で撮影したSEM写真において、[基板に平行な方向(水平方向)に幅20μm]×[基板からの高さ方向(垂直方向)に8μm]の範囲を二次元フーリエ変換処理し、得られた振幅スペクトルの中心から水平方向(0°の方向)に空間周波数20μm-1までの振幅を積算した値をfv、中心から20°の方向に空間周波数20μm-1までの振幅を積算した値をf20としたとき、式:
f20/fv≦0.35
を満たすのが好ましい。
【発明の効果】
【0041】
本発明の複合糸は、CNT撚り糸内部に銅等の金属の析出粒子を含み、かつ表面に前記金属被膜を有するCNT/金属複合糸であり、CNT表面に銅等の金属が良好に密着して形成されているので、引張強度が硬銅と同等以上であり、CNTと被覆金属との密着性に優れ、かつ導電性に優れている。本発明の複合糸は、比重が同径の銅電線に比べて55%以下、さらにメッキ部分に従来のはんだ付け加工が可能なので、ワイヤハーネスやモーター電機子の軽量化に適している。さらに、本発明によって得られる銅錫積層電解メッキ複合糸は、放射線遮蔽に効果のある錫を繊維として扱うことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1(a)】本発明の複合糸(実施例1)の表面を示すSEM写真である。
図1(b)】本発明の複合糸(実施例1)の長手方向に垂直な断面を示すSEM写真(二次電子像)である。
図1(c)】本発明の複合糸(実施例1)の長手方向に垂直な断面を示すSEM写真(反射電子像)である。
図2】本発明の複合糸の一例を模式的に示す長手方向に垂直な断面図である。
図3(a)】本発明の複合糸を構成するカーボンナノチューブからなる撚り糸の一例を示すSEM写真である。
図3(b)】本発明の複合糸を構成するカーボンナノチューブからなる撚り糸の一例を示すSEM写真である。
図4】カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブを紡績し撚り糸を作製する工程を示す模式図である。
図5(a)】カーボンナノチューブアレイを配向方向に平行な断面で撮影した基板付近のSEM写真である。
図5(b)】図5(a)のSEM写真から二次元フーリエ変換処理して得られた振幅スペクトルから、f20及びfvを求める方法を説明するための図である。
図6(a)】比較例1で用いたカーボンナノチューブからなる撚り糸を示すSEM写真である。
図6(b)】比較例1で用いたカーボンナノチューブからなる撚り糸を示すSEM写真である。
図7(a)】比較例1で作製した複合糸の表面を示すSEM写真である。
図7(b)】比較例1で作製した複合糸の長手方向に垂直な断面を示すSEM写真(二次電子像)である。
図7(c)】比較例1で作製した複合糸の長手方向に垂直な断面を示すSEM写真(反射電子像)である。
図8(a)】比較例2で作製した複合糸の表面を示すSEM写真である。
図8(b)】比較例2で作製した複合糸の長手方向に垂直な断面を示すSEM写真(二次電子像)である。
図8(c)】比較例2で作製した複合糸の長手方向に垂直な断面を示すSEM写真(反射電子像)である。
図9(a)】比較例3で作製した複合糸の表面を示すSEM写真である。
図9(b)】比較例3で作製した複合糸の長手方向に垂直な断面を示すSEM写真(二次電子像)である。
図9(c)】比較例3で作製した複合糸の長手方向に垂直な断面を示すSEM写真(反射電子像)である。
図10】比較例3で作製した複合糸の引張試験における変位と荷重との関係を示すグラフである。
図11】比較例3で作製した複合糸の引張試験によりCNT撚り糸と表面に被覆した銅とが剥離した様子を示すSEM写真である。
図12(a)】実施例2で作製した複合糸の表面を示すSEM写真である。
図12(b)】実施例2で作製した複合糸の長手方向に垂直な断面を示すSEM写真(二次電子像)である。
図12(c)】実施例2で作製した複合糸の長手方向に垂直な断面を示すSEM写真(反射電子像)である。
図13】比較例4で作製した複合糸の表面を示すSEM写真である。
図14(a)】参考例1で作製した複合糸の表面を示すSEM写真である。
図14(b)】参考例1で作製した複合糸の長手方向に垂直な断面を示すSEM写真(二次電子像)である。
図14(c)】参考例1で作製した複合糸の長手方向に垂直な断面を示すSEM写真(反射電子像)である。
図15】はんだ付け処理を行って引張試験を行う方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[1] 複合糸
本発明の複合糸は、カーボンナノチューブからなる撚り糸と、前記撚り糸の表面を被覆する金属メッキ層とからなり、
前記金属メッキ層の厚みが1μm以上であり、
前記撚り糸の内部に、前記撚り糸の表面を被覆する金属と同じ金属が、前記撚り糸の断面の5~70%の面積比Sm/S [ただし、Smはカーボンナノチューブからなる撚り糸の内部に存在する金属部分の断面積、Sはカーボンナノチューブからなる撚り糸部分の断面積である]で析出しており、
前記複合糸の破断荷重が、0.80 N以上であり、かつ前記カーボンナノチューブからなる撚り糸の破断荷重の80%以上であることを特徴とする。なお、本願明細書において、「カーボンナノチューブ」を「CNT」と略して表記する場合がある。
【0044】
本発明の複合糸は、CNTからなる撚り糸(以下、「CNT撚り糸」又は単に「撚り糸」とも言う)を電解メッキ処理することによって得られる。図1(a)及び図1(b)にそれぞれ複合糸の表面及び長手方向に垂直な断面のSEM写真を示し、図2に複合糸の長手方向に垂直な断面の模式図を示す。これらの図に示すように、本発明の複合糸1は、CNT撚り糸2の表面に金属メッキ層3を有するとともに、CNT撚り糸2の内部にも表面を被覆する金属と同じ金属からなる内部金属4を含有する。以下、CNT撚り糸の表面を被覆する金属を「被覆金属」、CNT撚り糸の内部に含有する金属を単に「内部金属」とも言う。なお図1(b)において、複合糸の周りを取り囲んでいる繊維状のものは包埋に用いた樹脂である。以下の写真についても同様である。
【0045】
(1) 金属メッキ層
CNT撚り糸の表面を被覆する金属メッキ層の厚さは、1μm以上である。金属メッキ層の厚さが1μm以上であることにより、本発明の複合糸は1×106 S/m以上の高い電気伝導度を有することができる。金属メッキ層が厚すぎると金属線並みの重量となるので、その厚さは直径の1/3以下でかつ10μm以下であるのが好ましい。
【0046】
CNT撚り糸2の表面を被覆する金属メッキ層3は1種類の金属(被覆金属)から構成されていても良いし、2種以上の金属(被覆金属)が積層された構成であっても良い。被覆金属が2種以上である場合、それぞれの金属の厚みが1μm以上であるのが好ましい。
【0047】
CNT撚り糸2の表面を被覆する金属としては、特に限定されず、遷移金属及び典型金属であればどの金属であっても良いが、特に金、銀、銅及び錫から選ばれる金属が好ましい。特に銅又は錫が好ましく、銅が最も好ましい。2種の金属を被覆する場合、銅及び錫の組み合わせが好ましい。このとき、CNT撚り糸2の表面側から順に、銅及び錫が積層された構成が好ましい。
【0048】
(2)内部金属
本発明の複合糸1は、CNT撚り糸2の内部にも金属メッキ層3を構成する被覆金属と同じ金属(内部金属4)を含有する。被覆金属が2種以上である場合、内部金属4は前記2種の被覆金属のうち、内側(CNT撚り糸に接する側)に配置された金属と同じ金属であるのが好ましい。
【0049】
内部金属4は、CNT撚り糸2の断面の5~70%(面積比)を占めて含有する。すなわち、CNT撚り糸2の内部に存在する金属部分の断面積をSm、CNT撚り糸2部分の断面積(CNT撚り糸2と内部金属4とを含む部分)をSとしたとき、面積比Sm/Sが5~70%である。図1(b)に示すように、CNT撚り糸2内部に存在する金属(銅)は、断面観察で微粒状に点在して分布している。内部金属4が、CNT撚り糸2の断面の5%(面積比)以上を占めていることにより、外周への金属被覆(内部金属4)のみの場合より導電率が向上しやすく、また内部金属4とCNT撚り糸2との間の密着性が向上する。内部金属4が、CNT撚り糸2の断面の70%(面積比)を超えて存在すると、破断強度の低下及び脆性の低下が起こる。複合糸1の断面における内部金属4の面積は、CNT撚り糸2部分の断面積の10%以上であるのが好ましく、15%以上であるのがより好ましい。またCNT撚り糸2内部に存在する金属の断面積は、CNT撚り糸部分の断面積の65%以下であるのが好ましく、60%以下であるのがより好ましい。
【0050】
また、内部金属4は、CNT撚り糸2の表面近くにより多く存在するのが好ましい。内部金属4が表面近くに存在することにより、CNT撚り糸2の外周面を被覆する金属メッキ層3と連結しやすくなり、内部金属4とCNT撚り糸2との間の密着性がより向上する。CNT撚り糸2の断面における内部金属4の面積率をS0、CNT撚り糸2の中心からCNT撚り糸2の半径の1/2までの領域に占める内部金属4の面積率をS1としたとき、式:
0.1≦S1/S0≦0.6
を満たすのが好ましい。より好ましくは
0.15≦S1/S0≦0.55
である。なお内部金属4がCNT撚り糸2の内部に均一に存在する場合、S1/S0の値は1となる。
【0051】
ここで、内部金属の面積比は、複合糸の断面をSEM等で観察して得られた顕微鏡写真から、画像処理等によって、内部金属部分の合計の面積Sm、及びCNTからなる撚り糸部分の断面積S(ただし、被覆金属部分は除き、内部金属は含む。)を求め、それらの面積比Sm/Sで求めることができる。なおSEM像において、点在する金属の同定は、例えば、エネルギー分散型X線分光測定で行うことができる。
【0052】
(3)空隙率
例えば、図8(c)に示すように、CNT撚り糸の内部に空隙が存在する場合がある。このように撚り糸の内部に空隙が存在すると、複合糸を導電線としたときに、複合糸表面を流れる電流によって発生する熱によって、複合糸表面を被覆する金属が溶融するといった可能性があるため、このような空隙はできるだけ少ない方がよい。撚り糸の内部に存在する空隙部分は、前記撚り糸の断面の2%(面積比)以下であるのが好ましく、1%(面積比)以下であるのがより好ましく、0%(面積比)であるのが最も好ましい。
【0053】
(4) カーボンナノチューブからなる撚り糸
図3(a)及び図3(b)は、本発明の複合糸を構成するカーボンナノチューブからなる撚り糸(CNT撚り糸)の一例を示す。CNT撚り糸は、例えば、基板上に垂直に配向して形成された多数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブアレイを作製し、そのカーボンナノチューブアレイの端部からカーボンナノチューブを引き出して、引き出したカーボンナノチューブの短繊維に撚りをかけて紡績することによって得ることができる。各カーボンナノチューブは主に二層カーボンナノチューブからなり3~7 nm程度の外径を有しているのが好ましい。カーボンナノチューブアレイは、例えば、後述するような気相合成法によって製造することができる。
【0054】
CNT撚り糸の直径は、特に限定されないが、10~100μm程度であるのが好ましい。CNT撚り糸は、電気伝導率が103 S/m以上であるのが好ましく、104S/m以上であるのがより好ましく、5×104 S/m以上であるのがさらに好ましい。CNT撚り糸の引張強度は700 MPa以上であるのが好ましい。CNT撚り糸の密度は0.2~2 g/cm3であるのが好ましく、0.5~1.3 g/cm3であるのがより好ましい。
【0055】
CNT撚り糸の撚り角(撚り糸の長手方向に対する短繊維の角度)は5~50°であるのが好ましい。撚り角が5°未満では、撚りが不十分で空隙が大きくなり、50°超では、強度が劣る。
【0056】
CNT撚り糸は表面の凹凸が1μm以下であるのが好ましい。CNT撚り糸の表面の凹凸は、SEM観察により得られた画像から、CNT撚り糸と背景部分との境界線の幅方向の変動を測定して、その最大値で定義する。幅方向の変動は、CNT撚り糸の長手方向に少なくとも10μm測定する。
【0057】
CNT撚り糸は、孤立したCNTバンドル数が糸長さ10μmあたり10本以下であるのが好ましい。孤立したCNTバンドル数は、SEM観察により得られた画像から求めることができる。
【0058】
CNT撚り糸は、SEM像のフーリエ変換スペクトルに、撚り起因のピーク以外のピークが存在しないのが好ましい。
【0059】
(4)複合糸の物性
本発明の複合糸は、実用的な観点から、破断荷重が0.8 N以上であるのが好ましく、0.90 N以上であるのがより好ましく、0.95 N以上であるのがさらに好ましく、1.0 N以上であるのが最も好ましい。
【0060】
本発明の複合糸は、破断荷重が電解メッキ処理前のCNT撚り糸と比較して80%以上である。すなわち、本発明の複合糸は、CNT撚り糸にメッキ処理を施したときに、引張強度が80%より低下しない。このため、電解メッキ処理が施された複合糸は、処理前のCNT撚り糸と同等の引張強度が確保され、高い実用性を有する。複合糸の破断荷重は、CNT撚り糸の破断荷重の85%以上であるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましく、95%以上であるのが最も好ましい。
【0061】
さらに、本発明の複合糸の被覆金属表面にはんだ付け処理を行って引張試験を行ったとき、はんだ付けをした部分がはんだ付けをしていない部分より先に断裂しないのが好ましい。例えば、図15に示すように、複合糸101の一方の端部を銅板102(又はユニバーサル基板)にはんだ付け103し、その銅板102と複合糸101の他方の端部とを引張試験用台紙104に接着剤105で固定して、引張試験を行うことで銅メッキ層とCNT撚り糸との密着性を評価できる。
【0062】
本発明の複合糸は、電気伝導度が1×106 S/m以上であるのが好ましく、2×106S/m以上であるのがより好ましく、5×106 S/m以上であるのがさらに好ましく、1×107 S/m以上であるのが最も好ましい。
【0063】
[2] 複合糸の製造方法
カーボンナノチューブからなる撚り糸と、前記撚り糸の表面を被覆する金属メッキ層とからなり、さらに前記撚り糸の内部に金属を含有する本発明の複合糸を製造する方法は、前記カーボンナノチューブからなる撚り糸を、電圧を印加しない状態で、メッキ液に0.1~360分間浸漬するメッキ液浸漬処理工程と、前記メッキ液浸漬処理した撚り糸を電解メッキ処理する電解メッキ処理工程とからなり、
前記電解メッキ処理工程が、0.1~3 Vの印加電圧で行う第1のメッキ処理工程と、前記第1のメッキ処理の後に、3~15 Vの印加電圧で行う第2のメッキ処理工程とを有することを特徴とする。
【0064】
本発明の複合糸の製造方法において、前記メッキ液浸漬処理工程の前に、有機溶剤に0.1~360分間浸漬する有機溶剤処理工程と、前記有機溶剤処理した撚り糸を水に0.1~360分間浸漬する水処理工程とを有することを特徴とする複合糸の製造方法。
【0065】
(1)電解メッキ処理
本発明の複合糸は、CNT撚り糸に第1及び第2の電解メッキを施すことによって製造する。ここで、第1のメッキ処理は0.1~3 Vの印加電圧で行い、第2のメッキ処理は3~15 Vの印加電圧で行う。電解メッキ処理の前処理として、メッキ液をCNT撚り糸の内部に浸漬させるためにメッキ液浸漬処理を行う。またメッキ液浸漬処理の前に、有機溶剤処理及び水処理を行ってもよい。
【0066】
(a)メッキ液浸漬処理工程
後工程の電解メッキ処理工程で使用するメッキ液に、電圧を印加しない状態で浸漬する処理である。浸漬時間は0.1~360分間であるのが好ましい。このメッキ液浸漬処理を行うことにより、CNT撚り糸の内部にメッキ液を浸透させることができ、後段の電解メッキ処理においてCNT撚り糸の内部に析出する金属の量を増加させることができる。なおCNT撚り糸の内部にメッキ液をより浸透させるために、メッキ液浸漬処理の前に、後述の有機溶剤処理及び水処理を行うのが好ましい。メッキ液浸漬処理の前に、有機溶剤処理及び水処理を行うことにより、メッキ処理後の破断強度の低下を防ぐこともできる。
【0067】
(b)有機溶剤処理工程
CNT撚り糸を有機溶剤に0.1~360分間浸漬する。浸漬時間はCNT撚り糸の親疎水性や太さ等によって適宜調節すれば良い。有機溶剤としては、水溶性の有機溶剤を用いるのが好ましく、例えば、アセトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、ジエチレングリコール、THF、DMF、DMSO等が挙げられる。特に、アセトンやアルコール類が好ましい。
【0068】
(c)水処理工程
有機溶剤処理工程の後、前記有機溶剤処理したCNT撚り糸を水に0.1~360分間浸漬する。浸漬時間はCNT撚り糸の親疎水性や太さ等によって適宜調節すれば良い。前段の有機溶剤処理と、水処理とを施すことにより、CNT撚り糸の内部にメッキ液が浸透しやすくなるため、電解メッキ処理工程におけるCNT撚り糸内部で金属の析出を促進することができる。
【0069】
(d)電解メッキ処理工程
電解メッキ処理工程は、0.1~3 Vの印加電圧で行う第1のメッキ処理工程と、第1のメッキ処理の後に、3~15 Vの印加電圧で行う第2のメッキ処理工程とを有する。第1のメッキ処理工程で主にCNT撚り糸の内部に金属を析出させ、第2のメッキ処理工程で主にCNT撚り糸の表面に金属メッキ層を被覆させる。
【0070】
第1のメッキ処理において、印加電圧が0.1 V未満であると電解メッキがされず、3 V超であるとメッキ速度が速すぎて、CNT撚り糸の内部に金属が析出する前に、CNT撚り糸の表面に金属メッキ層が形成されてしまうため、CNT撚り糸内部に金属の析出が起こらなくなる。第1のメッキ処理における印加電圧は、0.2~2 Vであるのが好ましく、0.3~1 Vであるのがより好ましい。
【0071】
第1のメッキ処理工程の電圧及び時間は、複合糸の断面において、CNT撚り糸の内部に析出した金属が、5~70%の面積比Sm/S [ただし、SmはCNT撚り糸の内部に存在する金属部分の断面積、SはCNT撚り糸部分の断面積である]となるように設定するのが好ましい。処理時間は1~90分の範囲であるのが好ましく、2~60分の範囲であるのがより好ましい。また処理温度(メッキ液の温度)は10~40℃の範囲であるのが好ましい。
【0072】
CNT撚り糸の内部に所望の面積比で金属を析出させた後は、印加電圧を上げてCNT撚り糸の表面に金属を被覆させる(第2のメッキ処理工程)。第2のメッキ処理工程は3~15 Vの印加電圧で行う。第2のメッキ処理において、印加電圧が3 V未満であるとCNT撚り糸の表面に金属が被覆されにくく、15 V超であるとメッキ速度が速すぎて、金属の被覆層の厚みのコントロールが難しくなる。第2のメッキ処理における印加電圧は、3.5~12 Vであるのが好ましく、4.0~10 Vであるのがより好ましい。
【0073】
第2のメッキ処理工程の電圧及び時間は、CNT撚り糸の表面に、1μm以上の所望の厚みの金属を被覆させるように設定するのが好ましい。好ましい処理時間は1~20分の範囲である。また処理温度(メッキ液の温度)は10~40℃の範囲であるのが好ましい。
【0074】
電解メッキ液としては市販のメッキ処理浴が使用できる。例えば、電解銅メッキ用のメッキ液としては、市販の工業用めっき液(例えば、清川めっき工業製 電解銅めっき液、マルイ鍍金工業製 銅めっき液)が使用できる。
【0075】
本発明の電解メッキ処理において、電解メッキする金属は銅であるのが好ましい。また銅を本発明の方法で電解メッキした後で、さらに錫等の金属を重ねて被覆してもよい。
【0076】
(2)カーボンナノチューブからなる撚り糸の製造
カーボンナノチューブからなる撚り糸(CNT撚り糸)は、基板上に垂直に配向して形成された多数のCNTからなるCNTアレイを気相合成法によって作製し、その端部からCNTの短繊維を引き出して、CNTの短繊維に撚りをかけて紡績することによって得ることができる。CNT撚り糸は、例えば、特開2019-59663号に記載の方法によって製造するのが好ましい。
【0077】
CNTアレイは、紡績性の観点からは、CNTの平均長さが80~350μmであるのが好ましく、110~200μmであるのがより好ましく、嵩密度は100~200 mg/cm3であるのが好ましく、120~180 mg/cm3であるのがより好ましい。CNTアレイを形成する基板の大きさは、特に限定されないが、紡績性の観点からは、幅2 cm程度、長さ2~4 cm程度であるのが好ましい。CNTアレイのCNTは主に二層CNTからなり3~7 nm程度の外径を有しているのが好ましい。
【0078】
(a)カーボンナノチューブアレイの作製
CNTアレイは、反応触媒が表面に形成された基板に、水素ガス雰囲気下で炭素源ガスを供給し、所定の温度及び時間反応させることによって、基板上に垂直配向した多数のCNTを形成し、その後、非酸化性雰囲気下で所定の時間保持した後、冷却することによって製造する。このような方法により得られたCNTアレイは紡績性が高いため、このCNTアレイから高品質な紡績糸を高い再現性で得ることができる。
【0079】
CNTアレイからCNTを紡績しCNT撚り糸を作製する工程を図4に模式的に示す。前述の方法によって得られたCNTアレイ10は、図4(a)に示すように、基板11上に垂直に配向して形成された多数のカーボンナノチューブ12からなる。この基板11の一つの辺から、図4(b)に示すように、3~5 mmの部分をその辺に平行に割って、小さい側の基板片11aを水平方向に引き離すと、大きい側の基板片11bと小さい側の基板片11aとの間にカーボンナノチューブ12の短繊維が連続的に配向し、複数の繊維12aを形成する(図4(c)参照)。このようにして引き出された複数の繊維12aに、例えば、基板片11bを引き出し方向を軸にして回転させて縒りをかけ、カーボンナノチューブ12からなる撚り糸2を作製する(図4(d)参照)。このようにして得られたCNT撚り糸2は、ボビン13等に巻き付ける。
【0080】
CNTアレイは、配向方向に平行な断面で撮影したSEM写真において、[基板に平行な方向(水平方向)に幅20μm]×[基板から高さ方向(垂直方向)に8μm]の範囲を二次元フーリエ変換処理し、得られた振幅スペクトルの中心から水平方向(0°の方向)に空間周波数20μm-1までの振幅を積算した値をfv、中心から20°の方向に空間周波数20μm-1までの振幅を積算した値をf20としたとき、式:
f20/fv≦0.35
を満たすのが好ましい。CNTアレイが前記式を満たす場合、CNTアレイ上においてCNTの水平方向の規則性が高いため、特に紡績性に優れている。
【0081】
ここで、f20及びfvを求めるために積算する振幅スペクトルの位置について、図5を用いて説明する。図5(a)はカーボンナノチューブアレイを配向方向に平行な断面で撮影した基板付近のSEM写真であり、図5(b)は、図5(a)のSEM写真において、[基板に平行な方向(水平方向)に幅20μm]×[基板から高さ方向(垂直方向)に8μm]の範囲を二次元フーリエ変換処理して得られた振幅スペクトルである。中心から水平方向(0°の方向)に空間周波数20μm-1までを線分Aで示し、中心から20°の方向に空間周波数20μm-1までを線分Bで示す。線分A上の振幅を積算した値がfvであり、線分B上の振幅を積算した値をf20である。f20/fvの値が小さいほど元画像であるCNTアレイの断面の画像において水平方向の周期性が高い(CNTが縦方向にきれいに配列している)ことを示している。逆にf20/fvの値が大きくなるほど、水平方向の周期性が低く、CNTの配列が乱れていることを示している。
【0082】
実施例1
(1)CNT撚り糸の作製
シリコンの平板(SUMCO製6インチシリコンウェハ(100)を20 mm×40 mmに切出したもの)の表面に、熱酸化によりSiO2の薄膜(約30 nm)を形成し、さらにスパッタによりAl2O3(約15 nm)を成膜した。Al2O3を成膜した後のシリコン平板に有機溶剤洗浄及びオゾン処理を施した後、電子ビーム蒸着によりFe薄膜(1.7~2.0 nm)を形成した。
【0083】
Fe薄膜を形成したシリコン平板をCVD装置(株式会社ユーテック製)の中に設置し、真空中(10 Pa以下)で150℃及び10分間加熱し、基板に残留する空気、水分等を除去した。次にCVD装置に水素ガスを供給し、水素ガス雰囲気下で400℃まで昇温し、400℃で5分間保持することにより、Fe薄膜表面の酸化膜を還元するとともにFe微粒子を形成した。
【0084】
引き続き400℃でアセチレンガスの供給を開始するとともに、1分45秒かけて800℃まで昇温し、10分間保持してカーボンナノチューブの合成を行った。アセチレンガスと水素ガスとの混合比は、100:692(モル分率0.126のアセチレンガス、全圧:800 Pa)であった。800℃で10分間保持した後、アセチレンガスの供給を止め合成を停止し、水素ガス雰囲気下(全圧:800 Pa)で800℃で10分間熱処理を行った。熱処理後、水素ガスの供給を止め、真空中で室温まで30分かけて降温させ、基板上にカーボンナノチューブが形成されてなるカーボンナノチューブアレイを得た。
【0085】
得られたカーボンナノチューブアレイ10は、図4(a)に示すように、基板11上に垂直に配向して形成された多数のカーボンナノチューブ12からなる。この基板11の一つの辺から、図4(b)に示すように、3~5 mmの部分をその辺に平行に割って、図4(c)に示すように、小さい側の基板片11aを水平方向に引き離し、大きい側の基板片11bと小さい側の基板片11aとの間に形成される複数の繊維12a(カーボンナノチューブ12の短繊維が連続的に配向してなる繊維)に、引き出し方向を軸にして基板片11bを回転させて縒りをかけ、カーボンナノチューブ12からなる撚り糸2を作製した(図4(d)参照)。このようにして得られたCNT撚り糸2は、ボビン13等に巻き付けた。
【0086】
このCNT撚り糸のSEM写真を図3(a)及び図3(b)に示す。このCNT撚り糸は、直径40μm、破断荷重が1.16 N、導電率が6.07×104 S/m、密度が約0.5 g/cm3であった。
【0087】
CNT撚り糸の表面の凹凸は、SEM観察により得られた画像から、CNT撚り糸と背景部分との境界線の幅方向の変動を長手方向に少なくとも10μm測定して、その最大値と定義した。得られたCNT撚り糸の表面の凹凸は、0.3~0.5μmであった。
【0088】
孤立バンドル数は、SEM観察により得られた画像から、CNT撚り糸の長さ10μmあたりの本数を測定して求めた。得られたCNT撚り糸の孤立バンドル数は、3本/10μmであった。
【0089】
f20/fv はCNT撚り糸を作製するのに用いたCNTアレイの配向度を示すパラメータであり、CNTアレイを配向方向に平行な断面で撮影したSEM写真において、[基板に平行な方向(水平方向)に幅20μm]×[基板から高さ方向(垂直方向)に8μm]の範囲を二次元フーリエ変換処理し、得られた振幅スペクトルの中心から水平方向(0°の方向)に空間周波数20μm-1までの振幅を積算した値をfv、中心から20°の方向に空間周波数20μm-1までの振幅を積算した値をf20としたとき、f20/fvで求められる。得られたCNT撚り糸のf20/fv値は0.29であった。
【0090】
(2)電解メッキ処理
電解銅めっき液(原液)(清川めっき工業製、H2SO4:18質量%、CuSO4・5H2O:10質量%、H2O:72質量%)を用いて、アセトン、次に純水で洗浄した銅板を陽極、作製したCNT撚り糸を陰極として、室温(25℃)にて直流安定化電源を用いて電圧を印加することで電解メッキ処理を行なった。CNT撚り糸は、前処理として予めアセトン、純水、メッキ液の順に10分間浸漬した。なお前処理としてのメッキ液浸漬は電圧を印加しない状態で行った。電解メッキ処理は、印加電圧0.5 Vで45分間処理(第1メッキ処理工程)した後、印加電圧4.5 Vで5分間処理(第2メッキ処理工程)して行った。第1メッキ処理工程で主にCNT撚り糸の内部に銅が析出し、第2メッキ処理工程で主にCNT撚り糸の表面に銅メッキ層が形成された。第1メッキ工程、及び第2メッキ工程での電流値はそれぞれ約0.2 mA及び2 mAであった。
【0091】
得られた複合糸の直径は66μm、CNT撚り糸部分の径は60μm、金属メッキ層の厚みは3μmであった。電解メッキ処理前のCNT撚り糸の径(40μm)が電解メッキ処理後に60μmと増加したのは、CNT撚り糸内部に銅が析出したためと考えられる。この複合糸の導電率は2.64×106S/mであり、破断荷重は1.09 Nであった。この破断荷重の値は、電解メッキ処理前のCNT撚り糸の破断荷重の94%であった。
【0092】
図1(a)、図1(b)及び図1(c)に得られた複合糸のSEM写真を示す。図1(a)が外観を観察した写真であり、図1(b)が断面の二次電子像であり、図1(c)が断面の反射電子像である。図1(b)において、白い部分がCuである。この結果から、この複合糸は内部に銅粒子が析出し、さらにCNT撚り糸の表面が銅で覆われていることが確認された。
【0093】
比較例1
浜松カーボニクス社製NTA05[30~40層(直径30 nm)のCNTアレイ]を用いて、図6(a)及び図6(b)に示すCNT撚り糸を作製した。このCNT撚り糸は、直径が40μm、破断荷重が0.4 N、密度が0.1 g/cm3であり、表面の凹凸は2~3μm、孤立したバンドルの数は15本/10μm以上、f20/fv値は0.48であった。
【0094】
このCNT撚り糸を用いて、実施例1と同様にして電解メッキ処理を行い、図7(a)、図7(b)及び図7(c)に示す複合糸を得た。第1メッキ工程及び第2メッキ工程での電流値はそれぞれ約0.3 mA及び2 mAであった。
【0095】
得られた複合糸の直径は51μm、CNT撚り糸部分の径は45μm、金属メッキ層の厚みは3μmであった。この複合糸の導電率は1.87×107S/mであり、破断荷重は0.77 Nであった。この破断荷重の値は、電解メッキ処理前のCNT撚り糸の破断荷重の192%であった。破断面は、通常のCNT糸とは異なり、CNT同士が引き抜けた様相を示した。またこの試料は折り曲げることで容易に破損した。
【0096】
比較例1の複合糸は、面積比Sm/Sが85%と高い、すなわちCNT撚り糸の部分に析出した金属が比較的多く、かつS1/S0の値が比較的大きい、すなわちCNT撚り糸のより内部まで金属が析出していることがわかる(表2を参照)。このように析出した金属が多く、かつCNT撚り糸のより内部まで金属が析出している理由は、電解メッキ処理前のCNT撚り糸の密度が低い、つまり空隙が多く、めっき液が浸漬しやすいためだと考えられる。このため、この複合糸は破断荷重が0.77 Nと引張強度が低いものであった。
【0097】
比較例2
実施例1で作製したCNT撚り糸(直径:40μm、破断荷重:1.16 N、導電率:6.07×104 S/m)を用いて、第2メッキ工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして電解メッキ処理を行い、CNT撚り糸内部に銅を析出させた複合糸を得た。図8(a)、図8(b)及び図8(c)に得られた複合糸のSEM写真を示す。
【0098】
得られた複合糸の直径は46μm、CNT撚り糸部分の径は46μm、金属メッキ層の厚みはほぼ0μmであった。この複合糸の導電率は9.97×104S/mであり、破断荷重は1.02 Nであった。この破断荷重の値は、電解メッキ処理前のCNT撚り糸の破断荷重の88%であった。
【0099】
比較例3
実施例1で作製したCNT撚り糸(直径:40μm、破断荷重:1.16 N、導電率:6.07×104 S/m)を用いて、第1メッキ工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして電解メッキ処理を行い複合糸を得た。図9(a)、図9(b)及び図9(c)に得られた複合糸のSEM写真を示す。この複合糸の導電率は3.50×106 S/mであった。
【0100】
得られた複合糸の引張試験をおこなった。変位と荷重との関係を図10に示す。図11に示すように、引張試験により複合糸の破断が起こる前にCNT撚り糸と表面に被覆した銅とが剥離する結果であった。この複合糸は、図9(b)及び図9(c)から明らかなように、CNT撚り糸の内部に銅が析出しておらず、CNT撚り糸と被覆した銅との間に隙間が生じていた。このため、引張試験によりCNT撚り糸と表面に被覆した銅とが剥離したと考えられる。つまり第1メッキ工程を行わないで、第2メッキ工程のみを行った場合、CNT撚り糸の内部に金属(銅)がほとんど析出しないことがわかる。
【0101】
実施例2
実施例1で作製したCNT撚り糸(直径:40μm、破断荷重:1.16 N、導電率:6.07×104 S/m)を用いて、前処理にてアセトン及び水への浸漬は行わずメッキ液への浸漬(10分間)のみ行った以外は実施例1と同様にして電解メッキ処理を行い、CNT撚り糸内部に銅を析出させた複合糸を得た。図12(a)、図12(b)及び図12(c)に得られた複合糸のSEM写真を示す。この複合糸の導電率は7.30×106 S/mであり、破断荷重は0.95 Nであった。この破断荷重の値は、電解メッキ処理前のCNT撚り糸の破断荷重の82%であった。
【0102】
比較例4
実施例1で作製したCNT撚り糸(直径:40μm、破断荷重:1.16 N、導電率:6.07×104 S/m)を用いて、第2メッキ工程を行わなかったこと以外は実施例2と同様にして電解メッキ処理を行い、CNT撚り糸内部に銅を析出させた複合糸を得た。図13に得られた複合糸のSEM写真を示す。この複合糸の導電率は1.14×105 S/mであり、破断荷重は0.77 Nであった。この破断荷重の値は、電解メッキ処理前のCNT撚り糸の破断荷重の66%であった。
【0103】
この複合糸は比較例2と同様、CNT撚り糸の表面に銅がほとんどメッキされなかった。比較例2及び比較例4の結果から、第1メッキ工程のみで、第2メッキ工程を行わない場合、CNT撚り糸の表面に銅がほとんどメッキされないことがわかる。つまり、主に第2メッキ工程によって表面へのメッキが施されると考えられる。
【0104】
表1に、実施例1、実施例2及び比較例1~4で用いたCNT撚り糸の直径及び各メッキ処理工程を示す。
【0105】
【表1】
注1:浜松カーボニクス社製NTA05を用いて作製したCNT撚り糸
【0106】
実施例1、実施例2及び比較例1~4で作製した複合糸の断面SEM写真から求めた複合糸径、メッキ層の厚さ、内部金属の面積比Sm/S、S1/S0、及び空隙率を表2に示す。また複合糸の導電率、破断荷重、及びメッキ処理前のCNT撚り糸の破断荷重に対するメッキ処理後の複合糸の破断荷重の比率を表3に示す。
【0107】
【表2】
注1:断面観察を行っていない。
【0108】
【表3】
注1:メッキ処理前のCNT撚り糸の破断荷重に対するメッキ処理後の複合糸の破断荷重の比率
注2:CNT撚り糸と被覆したCuとが剥離して測定できなかった。
【0109】
参考例1
実施例1で作製したCNT撚り糸(直径:40μm、破断荷重:1.16 N、導電率:6.07×104 S/m)を用いて、実施例1と同様にして電解メッキ処理を行い、CNT撚り糸内部に銅を析出させた複合糸を得た後、引き続き得られた複合糸にさらに錫の電解メッキを行い、銅メッキ層の表面に錫メッキ層が形成されたCNT/銅/錫複合糸を作製した。錫の電解メッキではメッキ液としてマルイ鍍金工業株式会社製 めっき工房すずめっき液(半光沢)を使用し、3.0 Vで1分間の処理を行なった。この時の電流値は1.2 mAであった。
【0110】
得られた複合糸の直径は57μm、CNT撚り糸部分の径は51μm、銅メッキ層の厚みは2μm、錫メッキ層の厚みは1μm、面積比Sm/Sは48%、S1/S0は0.49、空隙率は0.9%であった。この複合糸の導電率は7.04×106S/mであり、破断荷重は0.80 Nであった。この破断荷重の値は、電解メッキ処理前のCNT撚り糸の破断荷重の69%であった。
【符号の説明】
【0111】
1・・・複合糸
2・・・CNT撚り糸
3・・・金属メッキ層
4・・・内部金属
10・・・カーボンナノチューブアレイ
11・・・基板
11a・・・基板片
11b・・・基板片
12・・・カーボンナノチューブ
12a・・・複数の繊維
13・・・ボビン
101・・・複合糸
102・・・銅板
103・・・はんだ付け
104・・・引張試験用台紙
105・・・接着剤
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4
図5(a)】
図5(b)】
図6(a)】
図6(b)】
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図8(a)】
図8(b)】
図8(c)】
図9(a)】
図9(b)】
図9(c)】
図10
図11
図12(a)】
図12(b)】
図12(c)】
図13
図14(a)】
図14(b)】
図14(c)】
図15