(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】超低炭素クリンカーフリーセメント、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C04B 28/08 20060101AFI20250204BHJP
C04B 7/17 20060101ALI20250204BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20250204BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20250204BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
C04B28/08
C04B7/17
C04B18/14 A
C04B22/14 B
C04B22/06 Z
(21)【出願番号】P 2023527292
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 CN2022119169
(87)【国際公開番号】W WO2023001320
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】202210047686.4
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210720479.0
(32)【優先日】2022-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514283423
【氏名又は名称】河北工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】周 健
(72)【発明者】
【氏名】徐 名鳳
(72)【発明者】
【氏名】李 輝
(72)【発明者】
【氏名】王 里
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3048275(JP,U)
【文献】特開2016-023105(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101525217(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1405108(CN,A)
【文献】国際公開第2010/095417(WO,A1)
【文献】特開2010-285301(JP,A)
【文献】特開2016-056083(JP,A)
【文献】中内 善貴 他,土木学会関東支部技術研究発表会講演概要集,2013年第40回5部門,日本,2013年,V-1,http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00061/2013/40-05-0001.pdf
【文献】檀 康弘,高炉スラグ微粉末,コンクリート工学,52巻5号,日本,2014年,p. 387-392,https://www.jstage.jst.go.jp/article/coj/52/5/52_387/_article/-char/jp
【文献】高炉スラグ微粉末 スピリッツ カタログ,日鉄セメント株式会社
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超低炭素クリンカーフリーセメントであって、
重量百分率で79.47%~79.82%の高炉水砕スラグ、20%の石膏、及び遊離酸化カルシウムの含有量が30~80%である酸化カルシウム系原料で構成され、原料総重量に対する遊離酸化カルシウムの重量百分率は0.16%であり、前記原料の比表面積は500m
2/kgであり、
前記遊離酸化カルシウムは、原料における酸性酸化物と結合していない遊離状態の酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの形で原料に存在する成分であることを特徴とする、超低炭素クリンカーフリーセメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材料の技術分野に関し、特に、超低炭素クリンカーフリーセメント及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントは、現代社会を構築するのに不可欠な基礎素材であり、インフラストラクチャー建設の膨大な需要に応える一方で、その生産は高い炭素排出量を伴っている。
【0003】
超硫酸塩セメントとは、通常、高炉水砕スラグを主原料、石膏を硫酸塩活性化剤、珪酸塩クリンカー又は石灰をアルカリ性活性化剤とする新しい低炭素セメントである。超硫酸塩セメントは、水和熱が低く、不浸透性が強く、硫酸塩侵食に強いなどの優れた性能特性を有し、製造プロセスが簡単で、コストが低く、エネルギー消費が少ない。1940年代から1960年代にかけて、超硫酸塩セメントは、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグで広く使用されていた。しかし、1970年代以降、製鉄技術の発達に伴い、高炉水砕スラグの化学組成が変化して高炉水砕スラグの反応性が低下し、元の材料組成と製造プロセスでは、技術的性能がプロセスの要求を満たすゲル材料を生産することは困難であった。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の目的は、セメント分野に存在する二酸化炭素排出量と強度発現との間の矛盾を解決するために超低炭素クリンカーフリーセメントを提供することである。
【0006】
本発明の第2の目的は、プロセスが簡単で、工業生産に適するという利点を有する超低炭素クリンカーフリーセメントの製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
第1の態様では、本発明によれば、高炉水砕スラグ、石膏及び酸化カルシウム系原料で製造され、得られたセメント原料総重量に対する酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの重量百分率が、0.05%~0.75%であり、好ましくは得られたセメント原料総重量に対する酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの重量百分率が、0.05%~0.7%、より好ましくは0.05%~0.6%、より好ましくは0.05%~0.5%、さらに好ましくは0.1%~0.5%、最も好ましくは0.16%~0.5%である超低炭素クリンカーフリーセメントが提供される。
【0008】
好ましい実施形態では、前記高炉水砕スラグは、原料総重量の65%~95%であり、前記石膏は、原料総重量の4.5%~34.5%であり、より好ましくは、前記高炉水砕スラグは、原料総重量の68%~92%であり、前記石膏は、原料総重量の7.5%~31.5%であり、さらに好ましくは、前記高炉水砕スラグは、原料総重量の70%~90%であり、前記石膏は、原料総重量の9.5%~29.5%であり、さらに好ましくは、前記高炉水砕スラグは、原料総重量の70%~90%であり、前記石膏は、原料総重量の9.8%~25%である。
【0009】
同じ考えに基づいて、本発明によれば、高炉水砕スラグ、石膏、セメント混合材及び酸化カルシウム系原料で製造され、得られたセメント原料総重量に対する酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの重量百分率が、0.05%~0.75%であり、好ましくは得られたセメント原料総重量に対する酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの重量百分率が、0.05%~0.7%、より好ましくは0.05%~0.6%、より好ましくは0.05%~0.5%、さらに好ましくは0.10%~0.5%、最も好ましくは0.16%~0.5%である超低炭素クリンカーフリーセメントがさらに提供される。
【0010】
好ましい実施形態では、前記高炉水砕スラグは、原料総重量の33%~94%であり、前記石膏は、原料総重量の4.5%~34.5%であり、前記セメント混合材は、原料総重量の0.65%~32%であり、好ましくは、前記高炉水砕スラグは、原料総重量の35%~90%であり、前記石膏は、原料総重量の9.5%~29.5%であり、前記セメント混合材は、原料総重量の0.65%~25%であり、さらに好ましくは、前記高炉水砕スラグは、原料総重量の47%~80%であり、前記石膏は、原料総重量の19.5~20%であり、前記セメント混合材は、原料総重量の0.65%~5%であり、さらに好ましくは、前記高炉水砕スラグは、原料総重量の54%~80%であり、前記石膏は、原料総重量の9.8%~19.5%であり、前記セメント混合材は、原料総重量の10%~20%である。
【0011】
同じ考えに基づいて、本発明によれば、高炉水砕スラグ、石膏、凝結調節・強度増進成分及び酸化カルシウム系原料で製造され、得られたセメント原料総重量に対する酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの重量百分率が、0.05%~0.75%であり、好ましくは得られたセメント原料総重量に対する酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの重量百分率が、0.05%~0.7%、より好ましくは0.05%~0.6%、より好ましくは0.05%~0.5%、さらに好ましくは0.10%~0.3%、最も好ましくは0.16%~0.2%である超低炭素クリンカーフリーセメントがさらに提供される。
【0012】
好ましい実施形態では、前記高炉水砕スラグは、原料総重量の63%~94%であり、前記石膏は、原料総重量の4.5%~34.5%であり、前記凝結調節・強度増進成分は、原料総重量の0.9%~1.95%であり、好ましくは、前記高炉水砕スラグは、原料総重量の65%~90%であり、前記石膏は、原料総重量の9.5%~29.5%であり、前記凝結調節・強度増進成分は、原料総重量の1%~1.5%であり、さらに好ましくは、前記高炉水砕スラグは、原料総重量の77.5%~79%であり、前記石膏は、原料総重量の9.8%~19.5%であり、前記凝結調節・強度増進成分は、原料総重量の1%~1.2%である。
【0013】
同じ考えに基づいて、本発明によれば、高炉水砕スラグ、石膏、セメント混合材、凝結調節・強度増進成分及び酸化カルシウム系原料で製造され、得られたセメント原料総重量に対する酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの重量百分率が、0.05%~0.75%であり、好ましくは得られたセメント原料総重量に対する酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの重量百分率が、0.05%~0.7%、より好ましくは0.05%~0.6%、より好ましくは0.05%~0.5%、さらに好ましくは0.10%~0.5%、最も好ましくは0.16%~0.2%である超低炭素クリンカーフリーセメントがさらに提供される。
【0014】
好ましい実施形態では、前記高炉水砕スラグは、原料総重量の31%~93%であり、前記石膏は、原料総重量の4.5%~34.5%であり、前記セメント混合材は、原料総重量の0.65%~32%であり、前記凝結調節・強度増進成分は、原料総重量の0.9%~1.95%であり、好ましくは、前記高炉水砕スラグは、原料総重量の35%~85%であり、前記石膏は、原料総重量の9.5%~29.5%であり、前記セメント混合材は、原料総重量の1%~20%であり、前記凝結調節・強度増進成分は、原料総重量の1%~1.5%であり、さらに好ましくは、前記高炉水砕スラグは、原料総重量の50%~80%であり、前記石膏は、原料総重量の9.8%~19.5%であり、前記セメント混合材は、原料総重量の1%~15%であり、前記凝結調節・強度増進成分は、原料総重量の1%~1.2%である。
【0015】
本発明で提供される超低炭素クリンカーフリーセメントでは、前記酸化カルシウム系材料は、遊離酸化カルシウムを主成分とし、かつ遊離酸化カルシウムの含有量が30%~80%の材料である。前記遊離酸化カルシウムとは、酸性酸化物と結合していない遊離状態の酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの形で原料に存在する成分の総称である。国家規格GB/T 176-2017に規定の試験方法により遊離酸化カルシウムの含有量を測定することができる。本発明における「セメント原料総重量中の酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウム的の重量百分率を制御する」という記載は、セメント原料総重量に対する遊離酸化カルシウムの重量百分率を制御することを意味する。そのため、後述する「遊離酸化カルシウム」は、セメント原料に遊離状態の酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの形で存在する成分の総称である。本発明の超低炭素クリンカーフリーセメントでは、好ましくは、前記酸化カルシウム系材料は、生石灰、消石灰、工業用酸化カルシウム、工業用水酸化カルシウム、カーバイドスラグ、酸化カルシウム系膨張剤、エトリンガイト系膨張剤のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせである。より好ましくは、前記酸化カルシウム系材料は、生石灰、消石灰、カーバイドスラグのうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせである。
【0016】
本発明で提供される超低炭素クリンカーフリーセメントでは、前記石膏は、天然二水石膏、天然硬石膏、半水石膏、α型高強度石膏、脱硫石膏、リン酸石膏又はフッ酸石膏のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせであり、好ましくは、前記石膏は、天然二水石膏、天然硬石膏、半水石膏、脱硫石膏のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせである。
【0017】
本発明の上記実施形態では、前記セメント混合材は、フライアッシュ、鉄鋼スラグ、石灰岩、ドロマイト、ポゾラン混合材又は砂岩のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせである。前記セメント混合材の導入は、本発明に記載のセメントの二酸化炭素排出量をさらに減少させることができる。
【0018】
本発明の上記実施形態では、前記凝結調節・強度増進成分は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アルミニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、珪酸ナトリウム、塩化リチウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム又はグルコン酸ナトリウムから選択されるいずれか1種又は2種以上の組み合わせであり、好ましくは、前記凝結調節・強度増進成分は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、炭酸リチウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム又はグルコン酸ナトリウムから選択されるいずれか1種又は2種以上の組み合わせである。
【0019】
第2の態様では、本発明によれば、前記超低炭素クリンカーフリーセメントの製造方法が提供される。具体的なステップは、全ての原料を混合した後、比表面積が300~700m2/kgになるまで一緒に粉砕し、原料中の遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.05%~0.75%に制御し、好ましくは原料中の遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.05%~0.7%、より好ましくは0.05%~0.6%、より好ましくは0.05%~0.5%、さらに好ましくは0.10%~0.5%、最も好ましくは0.16%~0.2%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0020】
本発明の好ましい前記超低炭素クリンカーフリーセメントの製造方法では、一緒に粉砕する前に、重量百分率で、前記高炉水砕スラグの1%~50%をセメント混合材に置き換えてから、他の原料と一緒に粉砕し、前記超低炭素クリンカーフリーセメントを得てもよい。
【0021】
本発明の好ましい前記超低炭素クリンカーフリーセメントの製造方法では、一緒に粉砕する前に、重量百分率で、前記高炉水砕スラグの0.1%~3%を凝結調節・強度増進成分に置き換えてから、他の原料と一緒に粉砕し、前記超低炭素クリンカーフリーセメントを得てもよい。
【0022】
本発明の好ましい前記超低炭素クリンカーフリーセメントの製造方法では、一緒に粉砕する前に、重量百分率で、前記高炉水砕スラグをセメント混合材及び凝結調節・強度増進成分に置き換えてから、他の原料と一緒に粉砕し、前記超低炭素クリンカーフリーセメントを得てもよい。ここで、前記高炉水砕スラグの1%~50%をセメント混合材に置き換え、前記高炉水砕スラグの0.1%~3%を凝結調節・強度増進成分に置き換える。
【0023】
本発明に記載の製造方法の好ましい製造方法の実施形態では、具体的なステップは、全ての原料を混合した後、比表面積が300~700m2/kgになるまで一緒に粉砕し、原料中の遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.05%~0.75%に制御し、好ましくは原料中の遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.05%~0.7%、より好ましくは0.05%~0.6%、より好ましくは0.05%~0.5%、さらに好ましくは0.10%~0.5%、最も好ましくは0.16%~0.2%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0024】
本発明の別の好ましい製造方法の実施形態では、具体的なステップは、前記高炉水砕スラグを単独で比表面積が200~1200m2/kgになるまで粉砕し、他の全ての原料を一緒に比表面積が300~700m2/kgになるまで粉砕し、その後、粉砕された高炉水砕スラグを加えて混合し、原料中の遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.05%~0.75%に制御し、好ましくは、原料中の遊離酸化カルシウムの重量百分率に0.05%~0.7%、より好ましくは0.05%~0.6%、より好ましくは0.05%~0.5%、さらに好ましくは0.10%~0.5%、最も好ましくは0.16%~0.2%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0025】
第3の態様では、本発明によれば、コンクリート、モルタル又はセメント製品の製造における前記超低炭素クリンカーフリーセメントの使用がさらに提供される。前記使用では、本発明の超低炭素クリンカーフリーセメントを、鉱物混合材、骨材、繊維、添加剤、水などの原料のうちの複数種と一緒に混合して撹拌し、コンクリート、モルタル又はセメント製品を製造することができる。
【0026】
従来技術では、高炉水砕スラグを活性化するために、通常、ポルトランドセメント、ポルトランドセメントクリンカー、酸化カルシウムなどのアルカリ性活性化剤を添加する必要がある。既存の研究では、セメントクリンカーが少なすぎると十分な活性化効果が得られず、セメントクリンカーが多すぎると高炉水砕スラグの水和が阻害されることが示されている。実際、ポルトランドセメント、ポルトランドセメントクリンカー、酸化カルシウムなどは、成分が比較的複雑な活性化剤原料であり、その主成分と作用機序についてはまだ十分に理解されていないため、上記のアルカリ性活性化剤の適切な量を決定することは困難である。使用量が少なすぎると、高炉水砕スラグの活性を効果的に活性化することができず、製造されたセメントは硬化速度が遅く、初期強度と後期強度が低く、硬化速度が遅いため、セメントが炭酸化して腐食される場合がある。使用量が多すぎると、初期強度は大幅に向上するが、後期強度が大幅に低下し、プロセス要求を満たすことができなくなる。本発明者らは、実験により、適量の生石灰などの遊離状態の酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムを主成分とする酸化カルシウム系材料が高炉水砕スラグを効果的に活性化し、優れた性能を有するセメントを製造できることを発見した。まず、生石灰などの酸化カルシウム系材料の主成分である遊離状態の酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムが水と接触すると迅速に反応し、大量のOH-を放出して高炉水砕スラグの水和を促進し、[Al(OH)4]-を放出すると同時に、生石灰が水と接触すると別の物質Ca2+を放出し、[Al(OH)4]-の一部及び石膏が放出したSO4
2-と反応してエトリンガイトを生成し、残りの[Al(OH)4]-はアルミゲルを生成する。エトリンガイトは、繊維状結晶であり、比較的高い強度を有し、空隙を埋めることができる一方、アルミゲルは、コロイドであり、ゲル化作用を有し、エトリンガイト結晶を互いに接着して緻密な硬化体を形成し、セメントに高い初期強度と後期強度を与えることができる。また、本発明者らは、生石灰などの酸化カルシウム系材料の活性化による強度向上は、低配合量(様々な酸化カルシウム系原料に伴って配合される遊離状態の酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの重量百分率は0.05%~0.75%である)ですでに限界に近づいており、最適な配合量範囲となる。この配合量範囲は、適量のOH-を提供して高炉水砕スラグを効果的に活性化できるだけでなく、適量のCa2+を提供して適量のエトリンガイト及びアルミゲルを生成することもできる。しかし、より多い生石灰などの酸化カルシウム系材料の添加により、過剰なCa(OH)2が生成され、Ca(OH)2はアルミゲル及びエトリンガイトと反応して強度が低く、炭酸化されやすく、耐食性のないモノスルホアルミン酸カルシウム水和物を生成する。この反応により、生成物の体積が小さくなり、硬化体が緩み、空隙率が増加することが引き起こされる。また、この反応は、ゲル化作用を奏するアルミゲルを消耗することで、システム内のコロイド量が他の物質を接着するのに不十分となり、セメントの強度が顕著に低下し、生成したモノスルホアルミン酸カルシウム水和物が炭酸化されやすいことで、セメントは炭酸化して腐食されやすい。さらに、生石灰などの酸化カルシウム系材料は、システムにおける水和反応速度及びCa2+とOH-の放出速度が適切であり、このような材料における酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの活性が高く、水と接触すると反応速度が速く、高炉水砕スラグをできるだけ速く活性化するのに有利であることで、セメントは初期に比較的高い強度を有し、セメントの硬化が遅すぎることによる炭酸化と腐食が回避される。実際、セメント強度に対する影響について、反応速度は酸化カルシウム系材料の添加量よりも重要である。従来技術では、添加されるポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカー系アルカリ性活性化剤は、ケイ酸三カルシウム及びケイ酸二カルシウムを主成分とし、Ca2+及びOH-を放出できるが、反応速度が遅すぎ、通常、十分な効果的な活性化成分を生成するには1~7日間かかり、これにより、セメントの初期強度が低くなり、硬化速度が遅すぎ、重度の炭酸化腐食が発生する。セメントの硬化速度及び初期強度を向上させるために、通常、アルカリ性活性化剤の配合量を増加させる。しかし、これらの物質は、後期に放出する過剰なCa2+及びOH-が後期強度の大幅な低下を引き起こす恐れがある。従来技術では、水酸化ナトリウム又は珪酸ナトリウム系アルカリ性活性化剤も使用している。このような材料は、OH-を迅速に放出して高炉水砕スラグの水和反応を開始できるが、Ca2+を提供できないため、エトリンガイト結晶のような高強度水和生成物を生成できない。そのため、このセメント系の強度も高くない。従来技術では、酸化カルシウム又は水酸化カルシウム系アルカリ性活性化剤も使用されるが、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムと高炉水砕スラグの作用メカニズムを十分に理解せず、酸化カルシウム又は水酸化カルシウム過剰による危害及びそのメカニズムを理解できないため、このような活性化剤の配合量はいずれも過剰であるため、優れた性能を有するセメントは製造されていない。
【0027】
従来技術と比較して、本発明は、以下の有益な効果を有する。
本発明で提供される超低炭素クリンカーフリーセメントでは、遊離状態の酸化カルシウムが豊富なノンクリンカー成分である生石灰、消石灰などを直接加え、処方における遊離酸化カルシウムの割合を適切な範囲内に制御することによって、前記遊離状態の酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムは、水和の初期に適量のCa2+及びOH-を迅速に放出して高炉水砕スラグの反応を誘起することで石膏と反応させて高強度、微膨張、高炭酸化耐性、耐食のエトリンガイトを生成することができる。遊離状態の酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの含有量を制御することによって、Ca2+及びOH-の過剰によりアルミゲル及びエトリンガイトと反応して強度が低く、炭酸化されやすく、耐食性のないモノスルホアルミン酸カルシウム水和物を生成することが回避される。本発明の超低炭素クリンカーフリーセメントは、初期強度が高く、後期強度が非常に高く、収縮が小さく、耐炭酸化性で、二酸化炭素排出量が低いなどの技術的な優位性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施例1のセメントを用いた場合と比較例2のセメントを28日間養生した場合の水和生成物のDTA曲線の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明によれば、超低炭素クリンカーフリーセメントが提供される。前記超低炭素クリンカーフリーセメントは、高炉水砕スラグ、石膏及び酸化カルシウム系原料で製造される。得られるセメント原料総重量に対する遊離酸化カルシウムの重量百分率は、0.05%~0.75%に制御される。好ましくは、得られるセメント原料総重量に対する遊離酸化カルシウムの重量百分率は0.05%~0.7%、より好ましくは0.05%~0.6%、より好ましくは0.05%~0.5%、さらに好ましくは0.10%~0.5%、最も好ましくは0.16%~0.2%に制御される。さらに好ましくは、原料総重量に対する前記高炉水砕スラグの百分率は、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%であってもよい。さらに好ましくは、原料総重量に対する前記石膏の百分率は、4.5%、5.0%、8%、10%、12.5%、15%、18%、20%、22.5%、25%、27.5%、30%、32%又は34.5%であってもよい。さらに好ましくは、得られるセメント原料総重量に対する遊離酸化カルシウムの含有量は、0.05%、0.08%、0.1%、0.12%、0.16%、0.18%、0.25%、0.28%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%又は0.75%である。
【0030】
本発明で提供される別の超低炭素クリンカーフリーセメントは、高炉水砕スラグ、石膏、セメント混合材、及び酸化カルシウム系原料で製造される。得られるセメント原料総重量に対する遊離酸化カルシウムの重量百分率は0.05%~0.75%である。好ましくは、得られるセメント原料総重量に対する遊離酸化カルシウムの重量百分率は0.05%~0.7%、より好ましくは0.05%~0.6%、より好ましくは0.05%~0.5%、さらに好ましくは0.10%~0.5%、最も好ましくは0.16%~0.2%である。さらに好ましくは、原料総重量に対する前記高炉水砕スラグの百分率は、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%であってもよい。さらに好ましくは、原料総重量に対する前記石膏の百分率は、4.5%、5.0%、8%、10%、12.5%、15%、18%、20%、22.5%、25%、27.5%、30%、32%又は34.5%であってもよい。さらに好ましくは、原料総重量に対する前記セメント混合材の百分率は、0.65%、1.5%、5.5%、7.5%、10.5%、12.5%、15.5%、17.5%、20.5%、22.5%、25.5%、27.5%、30.5%又は32%であってもよい。さらに好ましくは、得られるセメント原料総重量に対する遊離酸化カルシウムの含有量は、0.05%、0.08%、0.1%、0.12%、0.16%、0.18%、0.25%、0.28%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%又は0.75%である。
【0031】
本発明で提供される別の超低炭素クリンカーフリーセメントは、高炉水砕スラグ、石膏、凝結調節・強度増進成分、及び酸化カルシウム系原料で製造される。得られるセメント原料総重量に対する遊離酸化カルシウムの重量百分率は0.05%~0.75%である。好ましくは、得られるセメント原料総重量に対する遊離酸化カルシウムの重量百分率は0.05%~0.7%、より好ましくは0.05%~0.6%、より好ましくは0.05%~0.5%、さらに好ましくは0.10%~0.5%、最も好ましくは0.16%~0.2%である。さらに好ましくは、原料総重量に対する前記高炉水砕スラグの百分率は、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%であってもよい。さらに好ましくは、原料総重量に対する前記石膏の百分率は、4.5%、5.0%、8%、10%、12.5%、15%、18%、20%、22.5%、25%、27.5%、30%、32%又は34.5%であってもよい。さらに好ましくは、原料総重量に対する前記凝結調節・強度増進成分の百分率は、0.9%、1.0%、1.2%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%又は1.95%であってもよい。さらに好ましくは、得られるセメント原料総重量に対する遊離酸化カルシウムの重量百分率は、0.05%、0.08%、0.1%、0.12%、0.16%、0.18%、0.25%、0.28%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%又は0.75%である。
【0032】
本発明で提供される別の超低炭素クリンカーフリーセメントは、高炉水砕スラグ、石膏、セメント混合材、凝結調節・強度増進成分、及び酸化カルシウム系原料で製造される。得られるセメント原料総重量に対する遊離酸化カルシウムの重量百分率は0.05%~0.75%である。好ましくは、得られるセメント原料総重量に対する遊離酸化カルシウムの重量百分率は0.05%~0.7%、より好ましくは0.05%~0.6%、より好ましくは0.05%~0.5%、さらに好ましくは0.10%~0.5%、最も好ましくは0.16%~0.2%である。さらに好ましくは、原料総重量に対する前記高炉水砕スラグの百分率は、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%であってもよい。さらに好ましくは、原料総重量に対する前記石膏の百分率は、4.5%、5.0%、8%、10%、12.5%、15%、18%、20%、22.5%、25%、27.5%、30%、32%又は34.5%であってもよい。さらに好ましくは、原料総重量に対する前記セメント混合材の百分率は、0.65%、1.5%、5.5%、7.5%、10.5%、12.5%、15.5%、17.5%、20.5%、22.5%、25.5%、27.5%、30.5%又は32%であってもよい。さらに好ましくは、原料総重量に対する前記凝結調節・強度増進成分の百分率は、0.9%、1.0%、1.2%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%又は1.95%であってもよい。さらに好ましくは、得られるセメント原料総重量に対する遊離酸化カルシウムの含有量は、0.05%、0.08%、0.1%、0.12%、0.16%、0.18%、0.25%、0.28%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%又は0.75%であってもよい。
【0033】
本発明で提供される超低炭素クリンカーフリーセメントでは、前記石膏は、天然二水石膏、天然硬石膏、半水石膏、α型高強度石膏、脱硫石膏、リン酸石膏又はフッ酸石膏のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせである。好ましくは、前記石膏は、天然二水石膏、天然硬石膏、半水石膏、脱硫石膏のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせである。
【0034】
本発明で提供される超低炭素クリンカーフリーセメントでは、前記酸化カルシウム系材料は、遊離酸化カルシウムを主成分とし、かつ遊離酸化カルシウムの含有量が30%~80%の材料である。例えば、遊離酸化カルシウムの含有量は≧30%、≧35%、≧40%、≧45%、≧50%、≧55%、≧60%、≧65%、≧70%、≧75%又は≧80%であってもよい。前記遊離酸化カルシウムとは、酸性酸化物と結合していない遊離状態の酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの形で原料に存在する成分の総称である。国家規格GB/T 176-2017に規定の試験方法により遊離酸化カルシウムの含有量を測定することができる。好ましくは、前記酸化カルシウム系材料は、生石灰、消石灰、工業用酸化カルシウム、工業用水酸化カルシウム、カーバイドスラグ、酸化カルシウム系膨張剤、エトリンガイト系膨張剤のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせである。より好ましくは、前記酸化カルシウム系材料は、生石灰、消石灰、カーバイドスラグのうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせである。
【0035】
本発明の上記実施形態では、前記セメント混合材は、フライアッシュ、鉄鋼スラグ、石灰岩、ドロマイト、ポゾラン混合材又は砂岩のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせである。前記セメント混合材の導入により、コストがさらに削減され、本発明に記載のセメントの二酸化炭素排出量が減少する。
【0036】
本発明の上記実施形態では、前記凝結調節・強度増進成分は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アルミニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、珪酸ナトリウム、塩化リチウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム又はグルコン酸ナトリウムから選択されるいずれか1種又は2種以上の組み合わせである。好ましくは、前記凝結調節・強度増進成分は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、炭酸リチウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム或グルコン酸ナトリウムから選択されるいずれか1種又は2種以上の組み合わせである。
【0037】
以下、実施例により本発明の実施形態及び技術的効果を詳しく説明するが、本発明の実施形態は、以下の実施例に限定されない。
【0038】
実施例1~実施例11
超低炭素クリンカーフリーセメントは、下記表1に示すように、重量百分率で78.75%~79.94%の高炉水砕スラグ、20%の天然二水石膏及び残部である生石灰を原料として製造した。ここで、生石灰中のCaO含有量は80%であった。
【0039】
製造ステップは、下記表1に示すように、全ての原料を混合した後、比表面積が500m2/kgになるまで一緒に粉砕した後、割合で均一に混合し、遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.05%~1.00%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0040】
【0041】
実施例12~実施例20
超低炭素クリンカーフリーセメントは、下記表2に示すように、重量百分率で65.30%~95.30%の高炉水砕スラグ、4.50%~34.50%の天然二水石膏及び0.2%の生石灰を原料として製造した。ここで、生石灰中のCaO含有量は80%であった。
【0042】
製造ステップは、下記表2に示すように、全ての原料を混合した後、比表面積が500m2/kgになるまで一緒に粉砕した後、割合で均一に混合し、遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.16%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0043】
【0044】
実施例21~実施例25
超低炭素クリンカーフリーセメントは、下記表3に示すように、重量百分率で79.80%の高炉水砕スラグ、20.00%の天然二水石膏和0.20%の生石灰を原料として製造した。ここで、生石灰中のCaO含有量は80%であった。
【0045】
製造ステップは、全ての原料を混合した後、比表面積が200~1200m2/kgになるまで一緒に粉砕し、割合で均一に混合し、遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.16%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0046】
【0047】
実施例26~実施例32
超低炭素クリンカーフリーセメントは、下記表4に示すように、重量百分率で79.20%~79.82%の高炉水砕スラグ、20.00%の天然二水石膏及び残部である生石灰又は消石灰を原料として製造した。ここで、酸化カルシウム系原料中のCaO含有量は20%~90%であった。
【0048】
製造ステップは、全ての原料を混合した後、比表面積が500m2/kgになるまで一緒に粉砕した後、割合で均一に混合し、遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.16%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0049】
【0050】
実施例33~実施例41
超低炭素クリンカーフリーセメントは、下記表5に示すように、重量百分率で47.80%~79.15%の高炉水砕スラグ、20%の天然二水石膏、0.65%~32%のフライアッシュ及び0.20%の生石灰を原料として製造した。ここで、生石灰中のCaO含有量は80%であった。
【0051】
製造ステップは、全ての原料を混合した後、比表面積が500m2/kgになるまで一緒に粉砕した後、割合で均一に混合し、遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.16%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0052】
【0053】
実施例42~実施例50
超低炭素クリンカーフリーセメントは、下記表6に示すように、重量百分率で47.80%~79.15%の高炉水砕スラグ、20%の天然二水石膏、0.65%~32%の石灰岩粉末及び0.20%の生石灰を原料として製造した。ここで、生石灰中のCaO含有量は80%であった。
【0054】
製造ステップは、全ての原料を混合した後、比表面積が500m2/kgになるまで一緒に粉砕した後、割合で均一に混合し、遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.16%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0055】
【0056】
実施例51~実施例55
超低炭素クリンカーフリーセメントは、下記表7に示すように、重量百分率で61.80%の高炉水砕スラグ、20%の天然二水石膏、2%~16%のフライアッシュ、2%~16%の石灰岩粉末及び0.20%の生石灰を原料として製造した。ここで、生石灰中のCaO含有量は80%であった。
【0057】
製造ステップは、全ての原料を混合した後、比表面積が500m2/kgになるまで一緒に粉砕した後、割合で均一に混合し、遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.16%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0058】
【0059】
実施例56~実施例76
超低炭素クリンカーフリーセメントは、下記表8に示すように、重量百分率で77.85%~79.80%の高炉水砕スラグ、20%の天然二水石膏、0.9%~1.95%の凝結調節・強度増進成分及び0.20%の生石灰を原料として製造した。ここで、生石灰中のCaO含有量は80%であった。
【0060】
製造ステップは、全ての原料を混合した後、比表面積が500m2/kgになるまで一緒に粉砕した後、割合で均一に混合し、遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.16%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0061】
【0062】
実施例77~実施例80
超低炭素クリンカーフリーセメントは、下記表9に示すように、重量百分率で60.60%の高炉水砕スラグ、20%の天然二水石膏、18%の混合材、1.2%凝結調節・強度増進成分及び0.20%の生石灰を原料として製造した。ここで、生石灰中のCaO含有量は80%であった。
【0063】
製造ステップは、全ての原料を混合した後、比表面積が500m2/kgになるまで一緒に粉砕した後、割合で均一に混合し、遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.16%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0064】
【0065】
適用例1-11
実施例1-実施例11の超低炭素クリンカーフリーセメントと水を、水/結合材比0.4で、GB 1346のセクション7.2に従ってペーストを調製し、GB/T 17671のセクション7に従って成形し、GB/T 17671のセクション8に従って材齢1日、3日及び28日まで養生し、GB/T 17671のセクション9に従ってその圧縮強度及び曲げ強度を測定した。測定結果を表10に示す。
【0066】
【0067】
上記表10に示すように、本発明の実施例1-11の超低炭素クリンカーフリーセメントには、ポルトランドセメントクリンカーを添加しておらず、遊離酸化カルシウムリッチな生石灰を活性化剤として直接添加し、原料総量に含まれる総酸化カルシウムを所定範囲(0.05%~0.75%)に制御することにより、最終的に得られたセメントは、非常に優れた初期及び後期強度を有する。上記の実施例のセメントは、1日成形、養生された後に11-27.4MPaの圧縮強度及び3.3-8.2MPaの曲げ強度を有し、3日後に、圧縮強度が40MPa以上に達し、曲げ強度も10MPa以上に達した。これは、生石灰を介して水和反応が発生する遊離酸化カルシウムを直接加えて適量のCa2+及びOH-を迅速に放出し、水との反応が速いことで高炉水砕スラグが活性化されるため、セメントが初期に比較的高い強度を有することを示している。また、上記実施例のセメントは、28日間の成形及び養生後の圧縮強度が60~85MPa、曲げ強度が12~14MPaに達し、非常に高い後期強度を示している。
【0068】
適用例12-20
実施例12-実施例20の超低炭素クリンカーフリーセメントと水を、水/結合材比0.4で、GB 1346のセクション7.2に従ってペーストを調製し、GB/T 17671のセクション7に従って成形し、GB/T 17671のセクション8に従って材齢1日、3日及び28日まで養生し、GB/T 17671のセクション9に従ってその圧縮強度及び曲げ強度を測定した。測定結果を表11に示す。
【0069】
【0070】
上記表11に示すように、本発明の実施例12-20の超低炭素クリンカーフリーセメント中の石膏は原料総重量の4.5%~34.5%であり、1日、3日及び28日目の強度は石膏含有量の増加に伴って最初に向上し、その後低下する傾向にあり、石膏含有量が15%~20%の範囲であることが最も好ましい。この範囲内であれば、高い初期強度及び非常に高い後期強度を有する。これは、原料中の石膏含有量を適切な範囲内に制御すれば、セメントは理想的な初期及び後期強度を有することができることを示している。
【0071】
適用例21-25
実施例21-実施例25の超低炭素クリンカーフリーセメントと水を、水/結合材比0.4で、GB 1346のセクション7.2に従ってペーストを調製し、GB/T 17671のセクション7に従って成形し、GB/T 17671のセクション8に従って材齢1日、3日及び28日まで養生し、GB/T 17671のセクション9に従ってその圧縮強度及び曲げ強度を測定した。測定結果を表12に示す。
【0072】
【0073】
上記表12に示すように、本発明の実施例21-25の超低炭素クリンカーフリーセメントは、同様に高い初期強度及び非常に高い後期強度を有する。これは、原料中の遊離酸化カルシウムの含有量が適切な範囲内に制御されれば、セメントは理想的な初期及び後期強度を有することができることを示している。原料の粉砕度もセメント性能にもある程度の影響を与える。原料の粉砕度を向上させることにより原料の活性が向上し、水和反応速度が増加し、セメントの初期強度が顕著に改善されるが、過度に粉砕されると、初期の反応速度が速すぎるため、後期強度はやや低下する場合がある。
【0074】
適用例26-32
実施例26-実施例32の超低炭素クリンカーフリーセメントと水を、水/結合材比0.4で、GB 1346のセクション7.2に従ってペーストを調製し、GB/T 17671のセクション7に従って成形し、GB/T 17671のセクション8に従って材齢1日、3日及び28日まで養生し、GB/T 17671のセクション9に従ってその圧縮強度及び曲げ強度を測定した。測定結果を表13に示す。
【0075】
【0076】
上記表13に示すように、本発明の実施例26-32の超低炭素クリンカーフリーセメントは、同様に高い初期強度及び非常に高い後期強度を有する。原料中の遊離酸化カルシウムの含有量が適切な範囲内に制御されれば、セメントは理想的な初期及び後期強度を有することができる。酸化カルシウム系原料の純度及び種類は、実際の状況に応じて異なってもよい。
【0077】
適用例33-41
実施例33-実施例41の超低炭素クリンカーフリーセメントと水を、水/結合材比0.4で、GB 1346のセクション7.2に従ってペーストを調製し、GB/T 17671のセクション7に従って成形し、GB/T 17671のセクション8に従って材齢1日、3日及び28日まで養生し、GB/T 17671のセクション9に従ってその圧縮強度及び曲げ強度を測定した。測定結果を表14に示す。
【0078】
【0079】
適用例42-49
実施例42-実施例49の超低炭素クリンカーフリーセメントと水を、水/結合材比0.4で、GB 1346のセクション7.2に従ってペーストを調製し、GB/T 17671のセクション7に従って成形し、GB/T 17671のセクション8に従って材齢1日、3日及び28日まで養生し、GB/T 17671のセクション9に従ってその圧縮強度及び曲げ強度を測定した。測定結果を表15に示す。
【0080】
【0081】
適用例51-55
実施例51-実施例55の超低炭素クリンカーフリーセメントと水を、水/結合材比0.4で、GB 1346のセクション7.2に従ってペーストを調製し、GB/T 17671のセクション7に従って成形し、GB/T 17671のセクション8に従って材齢1日、3日及び28日まで養生し、GB/T 17671のセクション9に従ってその圧縮強度及び曲げ強度を測定した。測定結果を表16に示す。
【0082】
【0083】
上記表13-16に示すように、本発明の実施例26-54の超低炭素クリンカーフリーセメントは、同様に高い初期強度及び非常に高い後期強度を有する。原料中の遊離酸化カルシウムの含有量が適切な範囲内に制御されれば、セメントは理想的な初期及び後期強度を有することができる。原料に特定量のセメント混合材を添加することにより本発明に記載のセメントの二酸化炭素排出量をさらに減少させることもできる。
【0084】
適用例56-76
実施例56~76の超低炭素クリンカーフリーセメントと水を、水/結合材比0.4で、GB 1346のセクション7.2に従ってペーストを調製し、GB/T 17671のセクション7に従って成形し、GB/T 17671のセクション8に従って材齢1日、3日及び28日まで養生し、GB/T 17671のセクション9に従ってその圧縮強度及び曲げ強度を測定した。測定結果を表17に示す。
【0085】
【0086】
適用例77-80
実施例77~80の超低炭素クリンカーフリーセメントと水を、水/結合材比0.4で、GB 1346のセクション7.2に従ってペーストを調製し、GB/T 17671のセクション7に従って成形し、GB/T 17671のセクション8に従って材齢1日、3日及び28日まで養生し、GB/T 17671のセクション9に従ってその圧縮強度及び曲げ強度を測定した。測定結果を表18に示す。
【0087】
【0088】
上表17~18に示すように、本発明の実施例56~80の超低炭素クリンカーフリーセメントは、同様に高い初期強度及び非常に高い後期強度を有する。原料中の遊離酸化カルシウムの含有量が適切な範囲内に制御されれば、セメントは理想的な初期及び後期強度を有することができる。原料に特定量のセメント混合材を添加することにより本発明に記載のセメントの二酸化炭素排出量をさらに減少させることができ、原料に特定量の凝結調節・強度増進成分を添加することによりセメントの初期強度をさらに向上させることができる。
【0089】
本発明の提案過程において、本発明者らは上記の実施例の実験により理想的な超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることに加え、より大量の実験により他の配合比の原料ではセメントの性能が低下することを実証した。以下、代表的な比較例のみを選択して説明する。
【0090】
比較例1
超低炭素クリンカーフリーセメントは、下記表19に示すように、重量百分率で80%の高炉水砕スラグ及び20%の天然二水石膏を原料として製造した。
製造ステップは、全ての原料を混合した後、比表面積が500m2/kgになるまで一緒に粉砕した後、割合で均一に混合し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0091】
【0092】
比較例2
超低炭素クリンカーフリーセメントは、下記表20に示すように、重量百分率で77.50%の高炉水砕スラグ、20%の天然二水石膏及び2.5%の生石灰を原料として製造した。ここで、生石灰中のCaO含有量は80%であった。
【0093】
製造ステップは、全ての原料を混合した後、比表面積が500m2/kgになるまで一緒に粉砕した後、割合で均一に混合し、遊離酸化カルシウムの重量百分率を2%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0094】
【0095】
比較例3
超低炭素クリンカーフリーセメントは、下記表21に示すように、重量百分率で59.80%の高炉水砕スラグ、40%の天然二水石膏及び0.2%の生石灰を原料として製造した。ここで、生石灰中のCaO含有量は80%であった。
【0096】
製造ステップは、全ての原料を混合した後、比表面積が500m2/kgになるまで一緒に粉砕した後、割合で均一に混合し、遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.16%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0097】
【0098】
比較例4
超低炭素クリンカーフリーセメントは、下記表22に示すように、重量百分率で96.80%の高炉水砕スラグ、3%の天然二水石膏及び0.2%の生石灰を原料として製造した。ここで、生石灰中のCaO含有量は80%であった。
【0099】
製造ステップは、全ての原料を混合した後、比表面積が500m2/kgになるまで一緒に粉砕した後、割合で均一に混合し、遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.16%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0100】
【0101】
比較例5
超低炭素クリンカーフリーセメントは、下記表23に示すように、重量百分率で79.80%の高炉水砕スラグ、20%の天然二水石膏及び0.2%の生石灰を原料として製造した。ここで、生石灰中のCaO含有量は80%であった。
【0102】
製造ステップは、全ての原料を混合した後、比表面積が100m2/kgになるまで一緒に粉砕した後、割合で均一に混合し、遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.16%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0103】
【0104】
比較例6
超低炭素クリンカーフリーセメントは、下記表24に示すように、重量百分率で79.80%の高炉水砕スラグ、20%の天然二水石膏及び0.2%の生石灰を原料として製造した。ここで、生石灰中のCaO含有量は80%であった。
【0105】
製造ステップは、全ての原料を混合した後、比表面積が1400m2/kgになるまで一緒に粉砕した後、割合で均一に混合し、遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.16%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0106】
【0107】
比較例7
超低炭素クリンカーフリーセメントは、下記表25に示すように、重量百分率で39.80%の高炉水砕スラグ、20%の天然二水石膏、40%のフライアッシュ及び0.2%の生石灰を原料として製造した。ここで、生石灰中のCaO含有量は80%であった。
【0108】
製造ステップは、全ての原料を混合した後、比表面積が500m2/kgになるまで一緒に粉砕した後、割合で均一に混合し、遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.16%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0109】
【0110】
比較例8
超低炭素クリンカーフリーセメントは、下記表26に示すように、重量百分率で76.80%の高炉水砕スラグ、20%の天然二水石膏、3%の水酸化ナトリウム及び0.2%の生石灰を原料として製造した。ここで、生石灰中のCaO含有量は80%であった。
【0111】
製造ステップは、全ての原料を混合した後、比表面積が500m2/kgになるまで一緒に粉砕した後、割合で均一に混合し、遊離酸化カルシウムの重量百分率を0.16%に制御し、超低炭素クリンカーフリーセメントを得ることを含む。
【0112】
【0113】
適用比較例1
比較例1の超低炭素クリンカーフリーセメントと水を、水/結合材比0.4で、GB 1346のセクション7.2に従ってペーストを調製し、GB/T 17671のセクション7に従って成形し、GB/T 17671のセクション8に従って材齢1日、3日及び28日まで養生し、GB/T 17671のセクション9に従ってその圧縮強度及び曲げ強度を測定した。測定結果を表27に示す。
【0114】
【0115】
本適比較例における超低炭素クリンカーフリーセメントでは、原料に酸化カルシウム系アルカリ性活性化剤がないため、高炉水砕スラグが活性化されず、セメントが初期に強度をほぼ有せず、後期強度も極めて低かった。
【0116】
適用比較例2
比較例2の超低炭素クリンカーフリーセメントと水を、水/結合材比0.4で、GB 1346のセクション7.2に従ってペーストを調製し、GB/T 17671のセクション7に従って成形し、GB/T 17671のセクション8に従って材齢1日、3日及び28日まで養生し、GB/T 17671のセクション9に従ってその圧縮強度及び曲げ強度を測定した。測定結果28を表に示す。
【0117】
【0118】
本適用比較例で使用されたのは比較例2の超低炭素クリンカーフリーセメントであり、その原料に過剰な生石灰が添加されているため、水和反応に関与する酸化カルシウムが多すぎた。過剰な酸化カルシウムにより細孔溶液のアルカリ度が高くなりすぎ、エトリンガイトの生成が阻害されることで、システム内のエトリンガイトの生成量が減少し、強度が低下した(本発明者らは、本発明の適用例1と本適用比較例の2種類のセメント石の28日間養生した水和生成物のDTA曲線を比較したところ、本適用比較例におけるエトリンガイトのピークは適用例1におけるエトリンガイトのピークよりも明らかに低いことを見出した。これは、本適用比較例におけるエトリンガイトの生成量が適用例1におけるエトリンガイトの生成量よりも明らかに少ないことを示している。水和生成物のDTA曲線の比較を
図1に示す)。一方、過剰な遊離酸化カルシウムは、アルミゲル及びエトリンガイトと反応して強度が低く、炭酸化されやすく、耐食性のないモノスルホアルミン酸カルシウム水和物を生成する。この反応により、生成物の体積が減少し、硬化体が緩み、空隙率が高くなる。また、この反応により、ゲル化作用を奏するアルミゲルが消耗され、システム内のゲル量が他の物質と接着するに十分ではないため、セメントの強度が顕著に低下し、生成したモノスルホアルミン酸カルシウム水和物が炭酸化されやすく、セメントが炭酸化して腐食されやすい。最終的に得られたセメントは、適用比較例1のセメントと比較して顕著に改善されたが、本発明の各適用例のセメントと比較すると、初期強度と後期強度の両方とも悪かった。
【0119】
適用比較例3
比較例3の超低炭素クリンカーフリーセメントと水を、0.4水結合材比を用いてGB 1346のセクション7.2に従ってペーストを調製し、GB/T 17671のセクション7に従って成形し、GB/T 17671のセクション8に従って材齢1日、3日及び28日まで養生し、GB/T 17671のセクション9に従ってその圧縮強度及び曲げ強度を測定した。測定結果を表29に示す。
【0120】
【0121】
本適用比較例では、超低炭素クリンカーフリーセメント中の高炉水砕スラグの添加量が低すぎ、石膏の添加量が高すぎることで、システム内に石膏が残りかつ大きなサイズの棒状結晶であることでシステムが緩み、さらに割れるため、得られたセメント初期強度及び後期強度はいずれも理想的ではなかった。
【0122】
適用比較例4
比較例4の超低炭素クリンカーフリーセメントと水を、水/結合材比0.4で、GB 1346のセクション7.2に従ってペーストを調製し、GB/T 17671のセクション7に従って成形し、GB/T 17671のセクション8に従って材齢1日、3日及び28日まで養生し、GB/T 17671のセクション9に従ってその圧縮強度及び曲げ強度を測定した。測定結果を表30に示す。
【0123】
【0124】
本適用比較例では、超低炭素クリンカーフリーセメント中の高炉水砕スラグの添加量が高すぎ、石膏系原料の添加量が低すぎることで、エトリンガイトの生成に必要な反応物が減少し、主な水和生成物エトリンガイトの生成量が減少するため、得られたセメントの初期強度及び後期強度はいずれも理想的ではなかった。
【0125】
適用比較例5
比較例5の超低炭素クリンカーフリーセメントと水を、0.4水結合材比でGB 1346のセクション7.2に従ってペーストを調製し、GB/T 17671のセクション7に従って成形し、GB/T 17671のセクション8に従って材齢1日、3日及び28日まで養生し、GB/T 17671のセクション9に従ってその圧縮強度及び曲げ強度を測定した。測定結果を表31に示す。
【0126】
【0127】
本適用比較例では、超低炭素クリンカーフリーセメント原料の粉砕が十分ではないことで、石膏及び生石灰がスラグガラスを素速く破壊することが困難であり,スラグが活性化されにくいため、得られたセメントの初期強度及び後期強度はいずれも理想的ではなかった。
【0128】
適用比較例6
比較例6の超低炭素クリンカーフリーセメントと水を、水/結合材比0.4で、GB 1346のセクション7.2に従ってペーストを調製し、GB/T 17671のセクション7に従って成形し、GB/T 17671のセクション8に従って材齢1日、3日及び28日まで養生し、GB/T 17671のセクション9に従ってその圧縮強度及び曲げ強度を測定した。測定結果を表32に示す。
【0129】
【0130】
本適用比較例では、超低炭素クリンカーフリーセメント原料が粉砕されすぎるため、処理コストが高いだけではなく、エトリンガイトなどの水和生成物の生成速度が速すぎることで、セメント石内部の孔隙が増え、緻密ではないため、得られたセメントの初期強度及び後期強度はいずれも理想的ではなかった。
【0131】
適用比較例7
比較例7の超低炭素クリンカーフリーセメントと水を、水/結合材比0.4で、GB 1346のセクション7.2に従ってペーストを調製し、GB/T 17671のセクション7に従って成形し、GB/T 17671のセクション8に従って材齢1日、3日及び28日まで養生し、GB/T 17671のセクション9に従ってその圧縮強度及び曲げ強度を測定した。測定結果を表33に示す。
【0132】
【0133】
本適用比較例では、超低炭素クリンカーフリーセメントの原料における活性が比較的低いフライアッシュの添加量が高すぎ、活性が比較的高いスラグの含有量が比較的少ないため、得られたセメントの初期強度及び後期強度はいずれも理想的ではなかった。
【0134】
適用比較例8
比較例8の超低炭素クリンカーフリーセメントと水を、水/結合材比0.4で、GB 1346のセクション7.2に従ってペーストを調製し、GB/T 17671のセクション7に従って成形し、GB/T 17671のセクション8に従って材齢1日、3日及び28日まで養生し、GB/T 17671のセクション9に従ってその圧縮強度及び曲げ強度を測定した。測定結果を表34に示す。
【0135】
【0136】
本適用比較例では、超低炭素クリンカーフリーセメントの原料における凝結調節・強度増進成分である水酸化ナトリウムの添加量が高すぎることで、製造コストが高いだけでなく、過剰な水酸化ナトリウムによりシステムのアルカリ度が高すぎ、主な水和生成物エトリンガイトの生成が阻害されるため、得られたセメントの初期強度及び後期強度はいずれも理想的ではなかった。