(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】レーザースキャンセンサ
(51)【国際特許分類】
G08B 13/181 20060101AFI20250204BHJP
G01S 17/88 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
G08B13/181
G01S17/88
(21)【出願番号】P 2023572314
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2022000368
(87)【国際公開番号】W WO2023132057
(87)【国際公開日】2023-07-13
【審査請求日】2024-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】317006258
【氏名又は名称】オプテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 邦夫
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-140343(JP,A)
【文献】特開2007-058416(JP,A)
【文献】特開平09-101376(JP,A)
【文献】特許第5263692(JP,B2)
【文献】特開2020-053959(JP,A)
【文献】特開2013-210903(JP,A)
【文献】特開2013-101566(JP,A)
【文献】特開2010-102511(JP,A)
【文献】特開2009-093428(JP,A)
【文献】特開平06-068364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 1/00 - 31/00
G01S 17/00 - 17/95
H04N 7/18
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を出射してその方向に存在する物体からの反射光が戻ってくるまでの時間からその物体までの距離を測定するレーザー距離計と、
このレーザー距離計による測定方向を変える走査機構部と、
この走査機構部によって測定方向を変えながら前記レーザー距離計による測定を周期的に行うことにより、検知エリアを形成するとともにその検知エリア内における前記測定方向毎の距離情報を時系列で取得する距離情報取得部と、
前記測定方向毎に基準となる距離情報を検知エリア情報として記憶するとともに、前記検知エリア内において実際に警戒する領域として設定される少なくとも1つの警戒エリアと各警戒エリアに対応して設定される判定エリアとを記憶する情報記憶部と、
前記距離情報取得部によって取得された距離情報から、検知対象物体に対応する可能性がある部分を抽出するとともに、そうして抽出された各抽出部分の時系列での移動状況に基づき、前記各抽出部分が前記検知対象物体であるか否かをそれぞれ判定する物体検知処理部と、
この物体検知処理部の判定結果に基づいて、前記警戒エリア及び前記判定エリア内に前記検知対象物体がそれぞれ存在するか否か、又は前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在するか否かを判定する物体検知エリア判定部と、
前記物体検知処理部及び前記物体検知エリア判定部の各判定結果に基づいて、前記警戒エリア内に前記検知対象物体が存在する場合に発報するか否かを制御する発報制御部と、
前記発報制御部による制御に応じて発報信号を出力する発報出力制御部と
を備えることを特徴とするレーザースキャンセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザースキャンセンサにおいて、
前記発報制御部は、前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在する場合には前記警戒エリア内にも前記検知対象物体が存在すれば発報するように制御し、前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在しない場合には前記警戒エリア内に前記検知対象物体が存在しても発報を抑制するように制御することを特徴とするレーザースキャンセンサ。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザースキャンセンサにおいて、
前記発報制御部は、前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在する場合には前記警戒エリア内に前記検知対象物体が存在しても発報を抑制するように制御し、前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在しない場合には前記警戒エリア内に前記検知対象物体が存在すれば発報するように制御することを特徴とするレーザースキャンセンサ。
【請求項4】
請求項1に記載のレーザースキャンセンサにおいて、
前記情報記憶部には、前記発報制御部が第1制御モードと第2制御モードのいずれで制御を行うかが記憶可能とされており、
前記発報制御部は、
前記情報記憶部に前記第1制御モードと記憶されていれば、
前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在する場合には前記警戒エリア内にも前記検知対象物体が存在すれば発報するように制御し、前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在しない場合には前記警戒エリア内に前記検知対象物体が存在しても発報を抑制するように制御し、
前記情報記憶部に前記第2制御モードと記憶されていれば、
前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在する場合には前記警戒エリア内に前記検知対象物体が存在しても発報を抑制するように制御し、前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在しない場合には前記警戒エリア内に前記検知対象物体が存在すれば発報するように制御することを特徴とするレーザースキャンセンサ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のレーザースキャンセンサにおいて、
前記発報制御部は、前記判定エリア内に存在していた前記検知対象物体が消失しても、予め定められた第1所定時間は前記検知対象物体が存在する状態を継続することを特徴とするレーザースキャンセンサ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のレーザースキャンセンサにおいて、
前記発報制御部は、前記警戒エリア内で前記検知対象物体が検知されても、予め定められた第2所定時間は発報を待機させることを特徴とするレーザースキャンセンサ。
【請求項7】
請求項2~6のいずれか1項に記載のレーザースキャンセンサにおいて、
さらに表示器を備え、
前記発報出力制御部は、前記発報制御部が発報を抑制する制御を行ったときは前記表示器による表示を行うことを特徴とするレーザースキャンセンサ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のレーザースキャンセンサにおいて、
前記発報出力制御部は、確定した前記警戒エリアの発報情報を外部へ通知することを特徴とするレーザースキャンセンサ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のレーザースキャンセンサにおいて、
さらに外部入力及び画像処理結果のいずれかを
判定条件として選択できる操作部を備え、
前記発報制御部は、前記操作部によって選択された外部入力又は画像処理結果のいずれか
の前記判定条件に応じて、
前記判定条件に予め対応付け
られた前記判定エリアにおける前記検知対象物体の存在
に基づいて発報するか否かを制御することを特徴とするレーザースキャンセンサ。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載のレーザースキャンセンサにおいて、
さらに撮像器を備え、
前記発報制御部は、前記撮像器の取得画像の画像処理結果に基づいて検知した前記検知対象物体の前記取得画像中の位置から対応する前記距離情報を求め、前記警戒エリア内に前記検知対象物体が存在する場合に発報するか否かを制御することを特徴とするレーザースキャンセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の敷地内への侵入者などを検知するレーザースキャンセンサに関し、特に、関係者の往来が多い時間帯などに必要な警戒範囲の制限などを、手動操作、外部機器接続、又は時刻連動などではなく、より的確に行うことが可能なレーザースキャンセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー光を光源としたレーザー距離計を使用し、警戒エリア設定後に自動車などが進入して駐車されたり新たに無害な障害物が設置されたりした場合であっても、本来検知すべき侵入者を的確に検知可能なレーザースキャンセンサが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この「レーザースキャンセンサ」は、レーザー距離計110と、スキャン機構120と、距離データ取得部130と、設置状態情報と測定方向毎の検知エリア情報とを記憶するメモリ160と、取得された距離データから、前記検知エリア情報との比較によって判明する侵入または移動した物体のうちで人体に対応する可能性がある部分を抽出するとともに、そうして抽出された各抽出部分の時系列での移動状況に基づき、所定時間内の移動距離が所定距離内である前記抽出部分を除外した上で、残りの前記各抽出部分が人体であるか否かをそれぞれ判定する人体判定部140と、前記検知エリア情報を所定条件下で更新する検知エリア情報更新部と、警告出力制御部150とを備えることを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図19(a)及び(b)は、従来のレーザースキャンセンサ900によって形成される検知エリアA900の概略説明図であって、(a)は深夜の警戒状況を例示し、(b)は昼間の警戒状況を例示している。
【0006】
図19(a)に示すように、関係者10の往来がない深夜は検知エリアA900の全域を警戒できる。しかし、関係者10の往来が多い昼間は、
図19(b)に示すように、出入口20及びその周辺をマスク機能などで除外(物体検知機能を無効化)して警戒範囲を制限する必要がある。このための設定変更は、レーザースキャンセンサ900に予め設けたDIPスイッチなどの手動操作か有線又は無線接続した外部機器による通信などで行うか、又は時刻などに連動して自動的に行わせる必要があった。
【0007】
従来技術のこのような課題に鑑み、本発明の目的は、手動操作や外部機器などを使用することなく、刻々と変化する状況に応じて警戒範囲を動的に設定又は有効/無効化を行うことが可能なレーザースキャンセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のレーザースキャンセンサは、レーザー光を出射してその方向に存在する物体からの反射光が戻ってくるまでの時間からその物体までの距離を測定するレーザー距離計と、このレーザー距離計による測定方向を変える走査機構部と、この走査機構部によって測定方向を変えながら前記レーザー距離計による測定を周期的に行うことにより、検知エリアを形成するとともにその検知エリア内における前記測定方向毎の距離情報を時系列で取得する距離情報取得部と、前記測定方向毎に基準となる距離情報を検知エリア情報として記憶するとともに、前記検知エリア内において実際に警戒する領域として設定される少なくとも1つの警戒エリアと各警戒エリアに対応して設定される判定エリアとを記憶する情報記憶部と、前記距離情報取得部によって取得された距離情報から、検知対象物体に対応する可能性がある部分を抽出するとともに、そうして抽出された各抽出部分の時系列での移動状況に基づき、前記各抽出部分が前記検知対象物体であるか否かをそれぞれ判定する物体検知処理部と、この物体検知処理部の判定結果に基づいて、前記警戒エリア及び前記判定エリア内に前記検知対象物体がそれぞれ存在するか否か、又は前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在するか否かを判定する物体検知エリア判定部と、前記物体検知処理部及び前記物体検知エリア判定部の各判定結果に基づいて、前記警戒エリア内に前記検知対象物体が存在する場合に発報するか否かを制御する発報制御部と、前記発報制御部による制御に応じて発報信号を出力する発報出力制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
このような構成のレーザースキャンセンサによれば、手動操作や外部機器などを使用することなく、刻々と変化する状況に応じて警戒範囲を動的に設定又は有効/無効化を行うことが可能になる。さらに、特定形状の物体のみを検知したり、特定方向に移動する物体のみを検知するなど、検知対象を識別することも可能になる。
【0010】
本発明のレーザースキャンセンサにおいて、前記発報制御部は、前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在する場合には前記警戒エリア内にも前記検知対象物体が存在すれば発報するように制御し、前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在しない場合には前記警戒エリア内に前記検知対象物体が存在しても発報を抑制するように制御してもよい。又は、前記発報制御部は、前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在する場合には前記警戒エリア内に前記検知対象物体が存在しても発報を抑制するように制御し、前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在しない場合には前記警戒エリア内に前記検知対象物体が存在すれば発報するように制御してもよい。いずれの制御にするかは、設置場所や検知対象物体に応じて決定すればよい。
【0011】
このような構成のレーザースキャンセンサによれば、いずれの制御にするかを適切に選択することで設置場所や検知対象物体などに応じた適切な警戒を行うことができる。
【0012】
また、本発明のレーザースキャンセンサにおいて、前記情報記憶部には、前記発報制御部が第1制御モードと第2制御モードのいずれで制御を行うかが記憶可能とされており、前記発報制御部は、前記情報記憶部に前記第1制御モードと記憶されていれば、前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在する場合には前記警戒エリア内にも前記検知対象物体が存在すれば発報するように制御し、前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在しない場合には前記警戒エリア内に前記検知対象物体が存在しても発報を抑制するように制御し、前記情報記憶部に前記第2制御モードと記憶されていれば、前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在する場合には前記警戒エリア内に前記検知対象物体が存在しても発報を抑制するように制御し、前記判定エリア内に前記検知対象物体が存在しない場合には前記警戒エリア内に前記検知対象物体が存在すれば発報するように制御することを特徴としてもよい。
【0013】
このような構成のレーザースキャンセンサによれば、前記情報記憶部の記憶を書き換えるだけで設置場所や検知対象物体などに応じた適切な警戒を行うことができる。
【0014】
また、本発明のレーザースキャンセンサにおいて、前記発報制御部は、前記判定エリア内に存在していた前記検知対象物体が消失しても、予め定められた第1所定時間は前記検知対象物体が存在する状態を継続してもよい。又は、前記発報制御部は、前記警戒エリア内で前記検知対象物体が検知されても、予め定められた第2所定時間は発報を待機させてもよい。
【0015】
このような構成のレーザースキャンセンサによれば、設置場所や検知対象物体などに応じたより適切な警戒を行うことができる。
【0016】
また、本発明のレーザースキャンセンサにおいて、さらに表示器を備え、前記発報出力制御部は、前記発報制御部が発報を抑制する制御を行ったときは前記表示器による表示を行ってもよい。又は、前記発報出力制御部は、確定した前記警戒エリアの発報情報を外部へ通知してもよい。
【0017】
また、本発明のレーザースキャンセンサにおいて、さらに外部入力及び画像処理結果のいずれかを選択できる操作部を備え、前記発報制御部は、前記操作部によって選択された外部入力又は画像処理結果のいずれかに応じて、予め対応付けた前記判定エリアにおける前記検知対象物体の存在として扱ってもよい。
【0018】
また、本発明のレーザースキャンセンサにおいて、さらに撮像器を備え、前記発報制御部は、前記撮像器の取得画像の画像処理結果に基づいて検知した前記検知対象物体の前記取得画像中の位置から対応する前記距離情報を求め、前記警戒エリア内に前記検知対象物体が存在する場合に発報するか否かを制御してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のレーザースキャンセンサによれば、手動操作や外部機器などを使用することなく、刻々と変化する状況に応じて警戒範囲を動的に設定又は有効/無効化を行うことが可能になる。さらに、特定形状の物体のみを検知したり、特定方向に移動する物体のみを検知するなど、検知対象を識別することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るレーザースキャンセンサ100の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】レーザースキャンセンサ100によって形成される検知エリアA100を示す概略平面図である。
【
図3】レーザースキャンセンサ100の検知エリアA100内に形成される警戒エリアB100及び判定エリアC100を例示する概略説明図である。
【
図4】(a)~(d)はレーザースキャンセンサ100の発報の有無を制御するアクションを設定する2つのモード、すなわち発報促進モード及び発報抑制モードにおける発報制御の説明図である。
【
図5】レーザースキャンセンサ100による警戒エリアB100及び判定エリアC100の物体検知状態を評価するタイミング設定を例示するタイムチャートである。
【
図6】レーザースキャンセンサ100の判定動作開始タイミングを調整するために設定する判定延長時間及び発報待機時間を説明するタイムチャートである。
【
図7】トラック専用の駐車スペースなどでトラック16とそれ以外の乗用車17などを区別して検知する使用例の概略説明図である。
【
図8】駐車場などにおける車上荒らしを検知する使用例の概略説明図である。
【
図9】建物などの構内への侵入者11を検知する使用例の概略説明図である。
【
図10】建物などの構内への出入口で警備員監視下での侵入者11を検知する使用例の概略説明図である。
【
図11】レーザースキャンセンサ100の全体処理を示すフローチャートである。
【
図12】(a)は判定/警戒エリア発報情報更新サブルーチンを示すフローチャートであり、(b)は判定延長時間処理サブルーチンを示すフローチャートであり、(c)は発報待機時間処理サブルーチンを示すフローチャートであり、(d)は判定処理サブルーチンを示すフローチャートである。
【
図13】判定動作に関するフローチャートであって、(a)は常時処理サブルーチンを示すフローチャートであり、(b)は発報待機時間中処理サブルーチンを示すフローチャートである。
【
図14】アクションに関するフローチャートであって、(a)は促進処理サブルーチンを示すフローチャートであり、(b)は抑制処理サブルーチンを示すフローチャートである。
【
図15】発報出力サブルーチンを示すフローチャートである。
【
図16】(a)は本発明の第2実施形態に係るレーザースキャンセンサ200の正面図であり、(b)は内蔵カメラ201による撮像範囲R201とレーザー照射範囲R202とを対比した概略平面図である。
【
図17】(a)は水平設置時の内蔵カメラ201による取得画像を例示する概略図であり、(b)は
図16(b)におけるレーザー照射範囲R202内のステップ番号を例示する概略平面図である。
【
図18】(a)は垂直設置されたレーザースキャンセンサ200による侵入物体検知時のレーザースキャン画像の概略説明図であり、(b)は内蔵カメラ201による取得画像を例示する概略図である。
【
図19】(a)及び(b)は、従来のレーザースキャンセンサ900によって形成される検知エリアA900の概略説明図であって、(a)は深夜の警戒状況を例示し、(b)は昼間の警戒状況を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0022】
<第1実施形態>
1.1 レーザースキャンセンサ100の概略構成
図1は本発明の第1実施形態に係るレーザースキャンセンサ100の概略構成を示すブロック図である。
図2はこのレーザースキャンセンサ100によって形成される検知エリアA100を示す概略平面図である。なお、
図2では隣接する距離測定方向の間隔を実際の間隔よりも遙かに広く描画してあるが、あくまでも説明の便宜のためである。
【0023】
図1に示すように、レーザースキャンセンサ100は、レーザー距離計110と、スキャン機構120と、距離データ取得部130と、物体検知処理部135と、物体検知エリア判定部140と、物体検知エリア発報制御部145と、発報出力制御部150と、メモリ160とを備えている。
【0024】
レーザー距離計110は、パルスレーザー光を出射し、その方向に存在する物体からの反射光が戻ってくるまでの微小な時間を精密に測定することによって、その物体までの距離を正確に測定する。レーザー距離計110におけるレーザー光の発光素子としては、例えば半導体レーザーダイオード(LD)などが挙げられる。受光素子としては、例えばアバランシェフォトダイオード(APD)などが挙げられる。発光素子の駆動制御や反射光が戻ってくるまでの時間測定などには専用のハードウェア回路などを設けることが望ましい。レーザー距離計の一般的な特徴としては、かなりの長距離まで精密な距離測定が可能であり、例えば、最大で数十m、場合によってはそれより遙かに長距離であっても測定可能であるが、このレーザー距離計110では最大検知距離を30mとしておく。
【0025】
スキャン機構120は、不図示のモータなどを内蔵することで回転可能としてあり、レーザー距離計110による距離の測定方向(角度)を変えられるようにレーザー距離計110の少なくとも一部と機械的に連結されている。例えば、レーザー距離計110のうちで光学系の部分のみを回転させるような構成が考えられるが、レーザー距離計110全体を回転させるような構成でもよいし、それ以外の構成でもかまわない。そして、スキャン機構120が一定速度で所定方向に回転することにより、それに連動してレーザー距離計110による距離の測定方向が変化する。
【0026】
距離データ取得部130は、スキャン機構120によって測定方向を変えながらレーザー距離計110による測定を周期的に繰り返すことによって、
図2に示すような検知エリアA100を形成するとともにその検知エリアA100内における所定角度間隔の測定方向(「ステップ」ともいう)毎の距離データを所定時間毎に時系列で取得する。なお、距離データ取得部130の動作開始直後または一定時間経過後などに取得した測定方向毎の距離データを基準距離データとしてメモリ160に記憶させておく。
【0027】
例えば、スキャン機構120によるスキャン周期Tを50ms(1秒間に20回のスキャンを行う)、1回転の半分の180度の範囲でパルスレーザー光を発光して距離を測定するものとして、パルスレーザー光のパルス幅を10ns、その発光周期を34.7μsとすれば、180度の範囲で720回の距離測定ができる。この場合の距離測定の角度間隔は0.25度で、これは30m先でも
図2に示すように約13cmに過ぎないから、検知エリアA100内の空間分解能としてはかなり高い。そのため、距離データ取得部130によって取得される距離データに基づいて検知物体の位置、大きさ(幅)、形状などをかなり正確に識別して人体か否かなどの判定をすることが可能であり、検知エリアA100内に複数の人体が存在する場合であってもそれらを個別に識別することも可能である。そして、そのような距離データがスキャン周期Tである50ms毎に得られることになる。なお、ここに示した数値はあくまでも例示に過ぎない。
【0028】
図2では、レーザー距離計110を水平方向に設置するとともに、スキャン機構120によって地面と平行に測定方向を変えながらレーザー距離計110による測定を周期的に繰り返す場合を示しているが、このような設置状態に限らない。例えば、地面から一定高さの位置に真下または斜め下に向けてレーザー距離計110を設置してもよい。この場合、そのような設置状態の情報、具体的には設置高さや測距向きなどをメモリ160に記憶させておけば、それらも併せて参照することで対象物の高さも算出することができる。
【0029】
物体検知処理部135は、まず、距離データ取得部130によって取得された距離データを解析する。測定方向毎の距離データを、メモリ160に記憶されている対応する基準距離データと比較することで、距離データに変化があった測定方向にはなんらかの物体が侵入してきたか、または既に存在していた物体が移動した可能性があることが判明する。そして、距離データの各測定方向に基づいて2次元展開することによって、侵入または移動した物体の形状や範囲などから検知対象物体の形状に対応すると推測される部分を抽出する。
【0030】
距離データは距離データ取得部130によって時系列で取得されているので、次に、距離データ中に検知対象物体である可能性があると推測されて抽出された部分が、それ以降の距離データではどのように変化しているか、移動状況を把握する。移動の軌跡が著しく不連続であるときなどは検知対象物体ではない可能性が高いと判別できる。一方、完全に静止しているか、移動距離がごくわずかであるときは、少なくとも警戒すべき侵入者ではないと判別できる。さらに、移動方向なども考慮することによっても、警戒すべき侵入者であるのか、単に検知エリアA100の境界付近を歩行している通行人なのかなどの判別をより的確に行うことができる。以上の判別結果などを総合して、警戒すべき人体などの検知対象物体が存在しているか否かを判定する。
【0031】
物体検知エリア判定部140は、物体検知処理部135による判定結果に基づいて、警戒エリアB100(
図3を参照して後述)及び判定エリアC100(
図3を参照して後述)内に検知対象物体15がそれぞれ存在するか否かを判定する。あるいは、物体検知エリア判定部140は、物体検知処理部135による判定結果に基づいて、判定エリアC100内に検知対象物体15が存在するか否かだけを判定してもよい。複数の警戒エリアB100が存在する場合は、それに応じて判定エリアC100も存在するので、それぞれについて判定を行う。
【0032】
なお、判定エリアC100内に検知対象物体15が存在するか否かに限らず、例えばレーザースキャンセンサ100に設けた外部入力端子を判定条件として使用するようにしてもよい。具体的には、警備員の操作で特定の警戒エリアを無効にする用途などに使用することができる。また、
図16~18を参照して後述するように、内蔵カメラによる取得画像の画像処理結果を判定条件として使用することも考えられる。さらに、外部入力端子や内蔵カメラのいずれを使用するかを選択できるようにスイッチなどを設けてもよい。
【0033】
物体検知エリア発報制御部145は、物体検知処理部135及び物体検知エリア判定部140の各判定結果に基づいて、警戒エリアB100内に検知対象物体15が存在する場合に発報するか否かを制御する。具体的には、次のようなアクションを設定する2つのモードがある(
図4(a)~(d)を参照して後述)。
【0034】
[発報促進モード]
判定エリアC100内に検知対象物体15が存在する場合には警戒エリアB100内にも検知対象物体15が存在すれば発報するように制御し、判定エリアC100内に検知対象物体15が存在しない場合には警戒エリアB100内に検知対象物体15が存在しても発報を抑制するように制御する。
【0035】
[発報抑制モード]
判定エリアC100内に検知対象物体15が存在する場合には警戒エリアB100内に検知対象物体15が存在しても発報を抑制するように制御し、判定エリアC100内に検知対象物体15が存在しない場合には警戒エリアB100内に検知対象物体15が存在すれば発報するように制御する。
【0036】
これらのモードのいずれを適用するかを必要に応じて選択できることが好ましい。例えば、適用するモードをメモリ160に記憶するようにしておき、記憶されているモードに応じたモードに従った制御を行うようにしてもよい。
【0037】
また、例えば手動操作で特定の警戒エリアB100を無効化したい場合、そのためのスイッチを設け、外部入力としてこの物体検知エリア発報制御部145に接続するようにしてもよい。
【0038】
発報出力制御部150は、物体検知エリア判定部140によって警戒エリアB100に物体が存在していると判定された場合に発報信号を出力端子へ出力するか、又はLEDによる表示を行ってもよい。あるいは、確定した警戒エリアB100の発報情報を、イーサネットを介して外部へ通知するようにしてもよい。ただし、出力先や出力方法などはこれらに限らない。
【0039】
なお、距離データ取得部130、物体検知処理部135、物体検知エリア判定部140、物体検知エリア発報制御部145、発報出力制御部150、及びメモリ160などは、例えば、機器組み込み用のワンチップマイコンとそのソフトウェア処理によって構成することが好ましい。上述した各判別処理などは、パターンマッチングなどの手法によって実現できるので、比較的コストの安いワンチップマイコンを採用することもでき、レーザースキャンセンサ100全体としてのコストダウンに貢献することができる。ただし、必ずしもワンチップマイコンを使用しなくてもよい。
【0040】
1.2 レーザースキャンセンサ100の基本動作
図3はレーザースキャンセンサ100の検知エリアA100内に形成される警戒エリアB100及び判定エリアC100を例示する概略説明図である。
【0041】
ここで、警戒エリアB100は、検知エリアA100内で物体15の侵入を実際に警戒したい領域として設定される。判定エリアC100は、警戒エリアB100内での物体検知を制御するために使用する領域として設定され、この判定エリアC100自体で物体15を検知したことだけでは発報させない。つまり、判定エリアC100内での物体15の検知結果に従って、警戒エリアB100内で検知された物体15により発報させたり、その逆に発報を抑制したりすることができる。
【0042】
図4(a)~(d)はレーザースキャンセンサ100の発報の有無を制御するアクションを設定する2つのモード、すなわち発報促進モード及び発報抑制モードにおける発報制御の説明図である。なお、設置時などに設置場所や設置対象などに応じてこれらの2つのモードのいずれかに設定するとともに、必要な1つ以上の警戒エリアB100とそれぞれに応じた判定エリアC100とを適切に設定しておく。
【0043】
[発報促進モード]
このモードでは、判定エリアC100内で物体15が検知されている場合、
図4(a)に示すように警戒エリアB100内でも物体15を検知すると発報する。
【0044】
一方、
図4(b)に示すように判定エリアC100内で物体15が検知されていなければ、たとえ警戒エリアB100内で物体15を検知しても発報を抑制する。
【0045】
[発報抑制モード]
このモードでは、判定エリアC100内で物体15が検知されている場合、
図4(c)に示すように警戒エリアB100内で物体15を検知しても発報を抑制する。
【0046】
一方、
図4(d)に示すように判定エリアC100内で物体15が検知されていなければ、警戒エリアB100内で物体15を検知すると発報する。
【0047】
図5はレーザースキャンセンサ100による警戒エリアB100及び判定エリアC100の物体検知状態を評価するタイミング設定を例示するタイムチャートである。なお、判定動作としては、判定を発報待機時間中にのみ行う動作と、常時行う動作とのいずれかに設定できるが、このタイムチャートは前者の動作に対応している。
【0048】
レーザースキャンセンサ100は設置時などに予め設定されたアクション設定に従って、発報待機時間中のみ警戒エリアB100及び判定エリアC100の物体検知状態の評価を行う。
図5の左側の波形に示すように、発報待機時間経過後、警戒エリアB100の物体15が消失するまで評価結果が保持され、発報信号出力が継続される。
【0049】
図5の中央の波形に示すように、発報待機時間中に警戒エリアB100の物体15が存在しなくなっても、発報待機時間中に発報条件が成立していれば、発報条件成立を知らせるために短時間発報することが好ましい。
【0050】
また、
図5の右側の波形に示すように、判定エリアC100で物体15を検知していなければ、たとえ警戒エリアB100で物体15を検知しても、発報待機時間経過後にも判定エリアC100で物体15を検知しない状態が継続していれば、発報を抑制する。
【0051】
一方、警戒エリアB100及び判定エリアC100での物体検知状態の評価を常時行うように動作させる設定も可能である。
【0052】
図6はレーザースキャンセンサ100の判定動作開始タイミングを調整するために設定する判定延長時間及び発報待機時間を説明するタイムチャートであり、
図6(a)は判定延長時間を示し、(b)は発報待機時間を示す。
【0053】
判定延長時間とは、
図6(a)に示すように、判定エリアC100で検知された物体15が消失しても、判定エリアC100の物体15が存在する状態を継続する時間である。
【0054】
一方、発報待機時間とは、
図6(b)に示すように、警戒エリアB100で物体15が検知されても、警戒エリアB100の発報を待機させる時間である。
【0055】
1.3 レーザースキャンセンサ100の使用例
図7はトラック専用の駐車スペースなどでトラック16とそれ以外の乗用車17などを区別して検知する使用例の概略説明図である。
【0056】
この
図7に示すように、レーザースキャンセンサ100は駐車スペースの上方に下向きに設置されており、検知エリアA100は垂直方向に形成されている。警戒エリアB100は地面から所定の高さ(トラック16の車高よりは低く、乗用車17の車高よりは高い)まで矩形状に形成されるとともに、その上方に隣接して判定エリアC100が矩形状に形成されている。
【0057】
設定項目毎の設定値は次のとおりである。
【0058】
アクション :発報抑制
動作 :発報待機時間中
判定条件 :判定エリア
発報待機時間:2秒
判定延長時間:0秒
この使用例では、トラック専用の駐車スペースにトラック16が侵入するとき、前方の低いキャビンが先に警戒エリアB100に入り、後方の高い荷台が少し遅れて後から検知されるのを利用する。
【0059】
判定エリアC100に届かない乗用車17であれば発報し、判定エリアC100に届くトラック16であれば発報しない。
【0060】
図8は駐車場などにおける車上荒らしを検知する使用例の概略説明図である。
【0061】
この
図8に示すように、レーザースキャンセンサ100は駐車場の端に内向きに設置されており、検知エリアA100は水平方向に形成されている。
判定エリアC100は車17用の駐車スペースに対応して矩形状に形成されるとともに、それを取り囲むように
警戒エリアB100が形成されている。
【0062】
設定項目毎の設定値は次のとおりである。
【0063】
アクション :発報促進
動作 :発報待機時間中
判定条件 :判定エリア
発報待機時間:300秒(5分)
判定延長時間:0秒
この使用例では、判定エリアC100に車17が停車された状態で警戒エリアB100に窃盗犯11が侵入して、5分以上、車17周辺に存在したら発報する。
【0064】
5分以内に窃盗犯11がいなくなっても、警戒エリアB100になんらかの物体15が存在したことを知らせるために短時間発報する。
【0065】
判定エリアC100に車17が存在しない場合、5分以上、人11が存在しても発報しない。
【0066】
図9は建物などの構内への侵入者11を検知する使用例の概略説明図である。
【0067】
この
図9に示すように、レーザースキャンセンサ100は構内への通路の側壁21に向けてその通路の反対側に設置されており、検知エリアA100は水平方向に形成されている。警戒エリアB100は通路の所定の長さの区間で矩形状に形成されるとともに、それに外部側(図中に太い矢印で示した構内方向とは反対側)から隣接して判定エリアC100が矩形状に形成されている。なお、判定エリアC100の方が警戒エリアB100より通過時間が短くなるように、相対的に小さく形成されている。
【0068】
設定項目毎の設定値は次のとおりである。
【0069】
アクション :発報促進
動作 :常時
判定条件 :判定エリア
発報待機時間:0秒
判定延長時間:5秒
この使用例では、構内に侵入(図中の太い矢印の方向)する人11であれば発報し、構内から出ていく人11であれば発報しない。
【0070】
図10は建物などの構内への出入口で警備員監視下での侵入者11を検知する使用例の概略説明図である。
【0071】
この
図10に示すように、
図9と同様に、レーザースキャンセンサ100は構内への通路の側壁21に向けてその通路の反対側に設置されており、検知エリアA100は水平方向に形成されている。警戒エリアB100も同様に、通路の所定の長さの区間で矩形状に形成されている。一方、判定エリアC100は、警戒エリアB100の近傍で警備員12の居場所に矩形状に形成されている。
【0072】
設定項目毎の設定値は次のとおりである。
【0073】
アクション :発報抑制
動作 :常時
判定条件 :判定エリア
発報待機時間:5秒
判定延長時間:0秒
この使用例では、警備員12が判定エリアC100に立っているときは、人11が警戒エリアB100を通過しても発報しない。
【0074】
警備員12が判定エリアC100から離れた状態で、侵入者11が警戒エリアB100に侵入して5秒通過すると発報する。ただし、5秒以内に警備員12が判定エリアC100に戻ってきた場合は発報しない。
【0075】
1.4 レーザースキャンセンサ100の処理フロー
図11はレーザースキャンセンサ100の全体処理を示すフローチャートである。
【0076】
この
図11に示すように、まず判定/警戒エリア物体有無情報記録を行い(ステップS1)、次に判定/警戒エリア発報情報更新サブルーチンを呼び出し(ステップS2)、最後に発報出力サブルーチンを呼び出して(ステップS3)、全体処理を終了する。
【0077】
図12(a)は判定/警戒エリア発報情報更新サブルーチンを示すフローチャートであり、
図12(b)は判定延長時間処理サブルーチンを示すフローチャートであり、
図12(c)は発報待機時間処理サブルーチンを示すフローチャートであり、
図12(d)は判定処理サブルーチンを示すフローチャートである。
【0078】
図12(a)に示す判定/警戒エリア発報情報更新サブルーチンでは、まず判定延長時間処理サブルーチンを呼び出し(ステップS21)、発報待機時間処理サブルーチンを呼び出し(ステップS22)、判定処理サブルーチンを呼び出す(ステップS23)。
【0079】
次に残警戒エリアなしかどうかを判定し(ステップS24)、判定結果がYESであればそのままリターンし(ステップS25)、判定結果がNOであればステップS21に戻る。
【0080】
図12(b)に示す判定延長時間処理サブルーチンでは、まず判定エリアの物体が有→無に変化したかどうかを判定し(ステップS211)。判定結果がYESであれば判定延長時間計測を開始してから(ステップS212)ステップS213に進み、判定結果がNOであれば直接ステップS213に進む。
【0081】
次に、判定延長時間内かどうかを判定し(ステップS213)、判定結果がYESであれば判定エリア物体”有”上書を行ってから(ステップS214)リターンし(ステップS215)、判定結果がNOであれば直接ステップS215に進んでリターンする。
【0082】
図12(c)に示す発報待機時間処理サブルーチンでは、まず警戒エリアの物体が無→有に変化したかどうかを判定し(ステップS221)。判定結果がYESであれば発報待機時間計測を開始し(ステップS222)、発報待機中物体出現フラグを“無”に設定してから(ステップS223)、ステップS224に進み、判定結果がNOであれば直接ステップS224に進む。
【0083】
次に、発報待機時間内かどうかを判定し(ステップS224)、判定結果がYESであれば警戒エリア物体”無”上書を行ってから(ステップS225)ステップS226に進み、判定結果がNOであれば直接ステップS228に進んでリターンする。さらに、判定エリア物体が”有”かどうかを判定し(ステップS226)、判定結果がYESであれば発報待機中物体出現フラグを“有”に設定してから(ステップS227)リターンし(ステップS228)、判定結果がNOであれば直接ステップS228に進んでリターンする。
【0084】
図12(d)に示す判定処理サブルーチンでは、まず判定動作が“常時”かどうかを判定し(ステップS231)。判定結果がYESであれば常時処理サブルーチンを呼び出してから(ステップS232)リターンし(ステップS234)、判定結果がNOであれば発報待機時間中処理サブルーチンを呼び出してからリターンする(ステップS234)。
【0085】
図13は判定動作に関するフローチャートであって、
図13(a)は常時処理サブルーチンを示すフローチャートであり、
図13(b)は発報待機時間中処理サブルーチンを示すフローチャートである。
【0086】
図13(a)に示す常時処理サブルーチンでは、まずアクションが“促進” かどうかを判定し(ステップS2321)。判定結果がYESであれば促進処理サブルーチンを呼び出してから(ステップS232
2)ステップS2324に進み、判定結果がNOであれば抑制処理サブルーチンを呼び出してから(ステップS2323)ステップS2324に進む。
【0087】
次に、判定エリア発報フラグを“無”に設定してから(ステップS2324)、リターンする(ステップS2325)。
【0088】
図13(b)に示す発報待機時間中処理サブルーチンでは、まず発報待機時間内かどうかを判定し(ステップS2331)。判定結果がYESであれば直接ステップS2326に進み、判定結果がNOであれば判定エリア物体を発報待機中物体出現で上書きする(ステップS2332)。さらに、アクションが“促進”かどうかを判定し(ステップS23
33)、判定結果がYESであれば促進処理サブルーチンを呼び出してから(ステップS23
34)ステップS23
36に進み、判定結果がNOであれば抑制処理サブルーチンを呼び出してから(ステップS23
35)ステップS23
36に進む。
【0089】
次に、判定エリア発報フラグを“無”に設定してから(ステップS2336)、リターンする(ステップS2337)。
【0090】
図14はアクションに関するフローチャートであって、
図14(a)は促進処理サブルーチンを示すフローチャートであり、
図14(b)は抑制処理サブルーチンを示すフローチャートである。
【0091】
図14(a)に示す促進処理サブルーチンでは、まず警戒エリア物体が”有”かどうかを判定し(ステップS23221)、判定結果がYESであればさらに判定エリア物体が”有”かどうかを判定し(ステップS23222)、判定結果がYESであれば警戒エリア発報フラグを“有”に設定してから(ステップS23223)、リターンする(ステップS23225)。ステップS23221又はステップS23222のいずれかの判定結果がNOであれば警戒エリア発報フラグを“無”に設定してから(ステップS23224)、リターンする(ステップS23225)。
【0092】
図14(b)に示す抑制処理サブルーチンでは、まず警戒エリア物体が”有”かどうかを判定し(ステップS23231)、判定結果がNOであれば直接ステップS23233に進み、判定結果がYESであればさらに判定エリア物体が”有”かどうかを判定し(ステップS23232)、判定結果がYESであれば警戒エリア発報フラグを“無”に設定してから(ステップS23233)、リターンする(ステップS232
35)。ステップS23232の判定結果がNOであれば警戒エリア発報フラグを“有”に設定してから(ステップS23234)、リターンする(ステップS23235)。
【0093】
図15は発報出力サブルーチンを示すフローチャートである。
【0094】
この
図15に示す発報出力サブルーチンでは、まず警戒エリア発報フラグが”有”かどうかを判定し(ステップS31)、判定結果がYESであれば警戒エリアの発報出力を行ってから(ステップS3
2)ステップS33に進み、判定結果がNOであれば直接ステップS33に進む。
【0095】
次に残警戒エリアなしかどうかを判定し(ステップS33)、判定結果がYESであればそのままリターンし(ステップS34)、判定結果がNOであればステップS31に戻る。
【0096】
以上で説明した第1実施形態の構成によれば、設置場所や検知対象物体などに応じて発報促進モード又は発報抑制モードのいずれかを選択するとともに、適切な警戒エリアB100及び判定エリアC100を設定することで、最適な警戒を行うことが可能となる。
【0097】
<第2実施形態>
上述した第1実施形態のレーザースキャンセンサの対象検知性能を向上させて誤報を抑制するため、内蔵カメラによって取得される画像も組み合せるようにしたものを第2実施形態として以下で説明する。なお、第1実施形態と同一部材には同一の参照符号を付すようにして、主として相違点についての説明を行う。
【0098】
図16(a)は本発明の第2実施形態に係るレーザースキャンセンサ200の正面図であり、
図16(b)は内蔵カメラ201による撮像範囲R201とレーザー照射範囲R202とを対比した概略平面図である。
図17(a)は水平設置時の内蔵カメラ201による取得画像を例示する概略図であり、
図17(b)は
図16(b)におけるレーザー照射範囲R202内のステップ番号を例示する概略平面図である。
【0099】
図16(a)に示すように、レーザースキャンセンサ200には正面のほぼ中央にレーザー照射/受光部202が設けられており、その上部近傍に内蔵カメラ201が配置されている。なお、内蔵カメラ201は、例えば第1実施形態における物体検知エリア発報制御部145に相当するユニットなどに接続すればよい。
【0100】
図16(b)に示すように、レーザー照射範囲R202は正面を中心に180度を超えるので、このレーザー照射範囲R202をすべてカバーするには、例えば内蔵カメラ201としては魚眼カメラを用いてもよいし、又は複数のカメラを内蔵してそれぞれの画像を組み合せるようにしてもよい。
【0101】
レーザー照射範囲R202の各ステップと撮像範囲R201の各画素との位置関係がわかるように、予めキャリブレーションしておく必要がある。例えば、
図17(a)に示した内蔵カメラ201による取得画像中のレーザー照射ラインL202が、
図17(a)に示すように右端でステップ20、左端でステップ740に対応している場合、例えば次のようなステップ-画素テーブルをメモリ160に記憶してもよい。
【0102】
ステップ 画素
20 1919
21 1918
22 1917
・・ ・・・・
図18(a)は垂直設置されたレーザースキャンセンサ200による侵入物体検知時のレーザースキャン画像の概略図であり、
図18(b)は内蔵カメラ201による取得画像を例示する概略図である。
【0103】
図18(a)に示すように、レーザースキャンセンサ200の検知エリアA200内には、レーザースキャンセンサ200のほぼ直下位置に第1の警戒エリアB200-1が形成されるとともに、端の方に第2の警戒エリアB200-2が形成されている。レーザースキャンセンサ200はまず内蔵カメラ201を用いて画像処理で移動体15の検知を行う。レーザーステップとカメラ画素は上述したように予めキャリブレーションされているため、画像処理で検知された移動体15のステップ数からどちらかの警戒エリアに属しているかを判定する。
【0104】
警戒エリアの判定条件として内蔵カメラ201による取得画像を割り当てることにより、レーザー距離計110による物体検知と内蔵カメラ201による移動体の検知を重ねて判定できるようになり、霧などによる誤報の防止ができる。なぜなら、例えば薄い霧でもレーザー光が反射して実在しない物体が検知されることがあるが、そういう場合に内蔵カメラ201の取得画像では霧は移動体15として検知されないので、誤報を避けることができるからである。
【0105】
<その他の実施形態>
レーザースキャンセンサは、高さ方向も検知可能な3次元タイプを用いてもよい。さらに、第2実施形態の内蔵カメラ201もステレオカメラに代えて3次元画像を取得できるものとしてもよい。このようにすることで、より正確に検知対象物体をとらえて一層適切な警戒をすることが可能となる。
【0106】
本発明は、その主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0107】
11 窃盗犯、侵入者、人体、人
12 警備員
15 物体、移動体、検知対象物体
16 トラック
17 乗用車
20 出入口
21 側壁
100 レーザースキャンセンサ(第1実施形態)
A100 検知エリア
B100 警戒エリア
C100 判定エリア
110 レーザー距離計
120 スキャン機構(走査機構部)
130 距離データ取得部(距離情報取得部)
135 物体検知処理部
140 物体検知エリア判定部
145 物体検知エリア発報制御部
150 発報出力制御部
160 メモリ(情報記憶部)
200 レーザースキャンセンサ(第2実施形態)
201 内蔵カメラ(撮像器)