(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】アラートシステム
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20250204BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
(21)【出願番号】P 2024026748
(22)【出願日】2024-02-26
【審査請求日】2024-09-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白井 雅之
(72)【発明者】
【氏名】栗野 竜輔
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-188353(JP,A)
【文献】特開2009-286526(JP,A)
【文献】特開2021-172464(JP,A)
【文献】特開2008-195519(JP,A)
【文献】特開2001-226095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラートシステムであって、
荷役車両の走行装置および荷役装置を制御する車両制御部と、
前記荷役車両に搭載され、音及び/又は光により警報を出力する警報装置と、
前記荷役車両に搭載され、前記車両制御部および前記警報装置に接続された情報処理装置と、を備え、
前記情報処理装置は、
前記車両制御部からの前記荷役車両に関する車両情報に基づいて、当該荷役車両の挙動または荷役状態に関連する複数の定義された危険事象を区別可能に検出する事象検出部と、
前記事象検出部が前記危険事象のいずれかを検出したときに前記警報装置を作動させて前記警報装置に警報を出力させる警報制御部と、
前記事象検出部が前記危険事象のうち一部の特定危険事象を検出したときに、前記車両制御部に、前記荷役車両の動作を制限するための制限指令を送信する制限指令部と、を備え、
前記車両制御部は、
前記情報処理装置から前記制限指令を受けると、前記走行装置の走行動作及び/又は前記荷役装置の荷役動作を制限する
アラートシステムにおいて、
前記特定危険事象には、第1特定危険事象と前記第1特定危険事象と異なる第2特定危険事象とがあり、
前記車両制御部は、
前記事象検出部が前記第1特定危険事象を検出した場合、前記走行動作及び前記荷役動作のうちいずれか一方だけを制限し、
前記事象検出部が前記第2特定危険事象を検出した場合、前記走行動作及び前記荷役動作の双方を制限する、
アラートシステム。
【請求項2】
アラートシステムであって、
荷役車両の走行装置および荷役装置を制御する車両制御部と、
前記荷役車両に搭載され、音及び/又は光により警報を出力する警報装置と、
前記荷役車両に搭載され、前記車両制御部および前記警報装置に接続された情報処理装置と、を備え、
前記情報処理装置は、
前記車両制御部からの前記荷役車両に関する車両情報に基づいて、当該荷役車両の挙動または荷役状態に関連する複数の定義された危険事象を区別可能に検出する事象検出部と、
前記事象検出部が前記危険事象のいずれかを検出したときに前記警報装置を作動させて前記警報装置に警報を出力させる警報制御部と、
前記事象検出部が前記危険事象のうち一部の特定危険事象を検出したときに、前記車両制御部に、前記荷役車両の動作を制限するための制限指令を送信する制限指令部と、を備え、
前記車両制御部は、
前記情報処理装置から前記制限指令を受けると、前記走行装置の走行動作及び/又は前記荷役装置の荷役動作を制限する
アラートシステムにおいて、
前記車両制御部は、
前記走行動作及び/又は前記荷役動作の制限中に、前記荷役車両を操縦するための操作部が所定の方法で操作されたことを検出すると、前記制限を解除する、
アラートシステム。
【請求項3】
アラートシステムであって、
荷役車両の走行装置および荷役装置を制御する車両制御部と、
前記荷役車両に搭載され、音及び/又は光により警報を出力する警報装置と、
前記荷役車両に搭載され、前記車両制御部および前記警報装置に接続された情報処理装置と、を備え、
前記情報処理装置は、
前記車両制御部からの前記荷役車両に関する車両情報に基づいて、当該荷役車両の挙動または荷役状態に関連する複数の定義された危険事象を区別可能に検出する事象検出部と、
前記事象検出部が前記危険事象のいずれかを検出したときに前記警報装置を作動させて前記警報装置に警報を出力させる警報制御部と、
前記事象検出部が前記危険事象のうち一部の特定危険事象を検出したときに、前記車両制御部に、前記荷役車両の動作を制限するための制限指令を送信する制限指令部と、を備え、
前記車両制御部は、
前記情報処理装置から前記制限指令を受けると、前記走行装置の走行動作及び/又は前記荷役装置の荷役動作を制限する
アラートシステムにおいて、
前記警報制御部は、
前記危険事象の検出後、前記荷役車両を操縦するための操作部が所定の方法で操作されたことを前記車両情報に基づいて検出するまで、音及び/又は光により警報を出力し続ける、
アラートシステム。
【請求項4】
前記走行動作の制限は、前記荷役車両の最高走行速度を制限前の最高走行速度より低い値であってゼロではない値に設定することである、
請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載のアラートシステム。
【請求項5】
前記荷役装置は、荷物を支持するためのフォークを備えたものであり、
前記荷役動作の制限は、前記フォークの最高リフト速度を制限前の最高リフト速度より低い値であってゼロでない値に設定することである、
請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載のアラートシステム。
【請求項6】
前記情報処理装置は、
前記事象検出部を含む処理ユニットと、
前記警報制御部および前記制限指令部を含む追加処理ユニットと、を備える、
請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載のアラートシステム。
【請求項7】
前記処理ユニットは、前記事象検出部として第1事象検出部を備え、
前記追加処理ユニットは、さらに、前記事象検出部として第2事象検出部を備え、
前記第2事象検出部は、前記第1事象検出部が検出しない前記危険事象を検出する、
請求
項6に記載のアラートシステム。
【請求項8】
前記荷役車両は、フォークリフトである、
請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載のアラートシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、荷役車両に適用されて、当該荷役車両のオペレータに危険事象の発生を知らせるためのアラートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
稼働管理システムが、フォークリフトといった荷役車両の稼働状況を管理するために、オプションとして採用されることがある(例えば、特許文献1~4など参照)。
【0003】
例えば、このようなシステムでは、データロガーを含む車載器が、荷役車両に搭載されており、荷役車両の車両情報(例えば、車体の加速度、速度、荷物の荷重など)を取得し、これを稼働状況としてネットワークサーバに送信する。また、車載器は、車両情報に基づいて、危険事象(例えば、急発進、急旋回など)を検出する。車載器は、危険事象を検出したとき、その旨もネットワークサーバに送信し、さらに、カメラによって取得された危険事象発生前後の荷役車両の周囲の様子の動画をネットワークサーバに送信する。
【0004】
管理者は、自己の端末からネットワークサーバにアクセスをすることで、危険事象の発生を含む稼働状況や動画を確認することができ、オペレータの危険運転を適切に防止するための施策に役立てることができる。
【0005】
特許文献1、2のシステムは、アラートシステムとしても機能しており、その車載器は、危険事象の発生をオペレータに知らせて自身の操縦を改めさせるべく、危険事象の発生をトリガーとして、音や光により警報を出力する。特許文献2のシステムは、さらに、危険度を算出し、危険度に応じて警報の出力を変化させている。
【0006】
このような音や光といった警報だけでは、オペレータが警報に慣れてしまうと、警報を無視して自身の操縦を改めず、危険行為の抑止には不十分かもしれない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-3512号公報
【文献】特開2006-1888353号公報
【文献】特開2020-191828号公報
【文献】特開2020-1172464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願は、特定の危険事象が発生した場合に、荷役車両のオペレータにそのことを強く認識させるためのアラートシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願のアラートシステムは、
荷役車両の走行装置および荷役装置を制御する車両制御部と、
前記荷役車両に搭載され、音及び/又は光により警報を出力する警報装置と、
前記荷役車両に搭載され、前記車両制御部および前記警報装置に接続された情報処理装置と、を備え、
前記情報処理装置は、
前記車両制御部からの前記荷役車両に関する車両情報に基づいて、前記荷役車両の挙動または荷役状態に関連する複数の定義された危険事象を区別可能に検出する事象検出部と、
前記事象検出部が前記危険事象のいずれかを検出したときに前記警報装置を作動させて前記警報装置に警報を出力させる警報制御部と、
前記事象検出部が前記危険事象のうち一部の特定危険事象を検出したときに、前記車両制御部に、前記荷役車両の動作を制限するための制限指令を送信する制限指令部と、を備え、
前記車両制御部は、
前記情報処理装置から前記制限指令を受けると、前記走行装置の走行動作及び/又は前記荷役装置の荷役動作を制限する。
【0010】
例えば、前記特定危険事象には、第1特定危険事象と前記第1特定危険事象と異なる第2特定危険事象とがあり、
前記車両制御部は、
前記事象検出部が前記第1特定危険事象を検出した場合、前記走行動作及び前記荷役動作のうちいずれか一方だけを制限し、
前記事象検出部が前記第2特定危険事象を検出した場合、前記走行動作及び前記荷役動作の双方を制限してもよい。
【0011】
例えば、前記走行動作の制限は、前記荷役車両の最高走行速度を制限前の最高走行速度より低い値であってゼロではない値に設定することでよい。
【0012】
例えば、前記荷役装置は、荷物を支持するためのフォークを備えたものであり、
前記荷役動作の制限は、前記フォークの最高リフト速度を制限前の最高リフト速度より低い値であってゼロでない値に設定することでよい。
【0013】
例えば、前記車両制御部は、前記走行動作及び/又は前記荷役動作の制限中に、前記荷役車両を操縦するための操作部が所定の方法で操作されたことを検出すると、前記制限を解除してよい。
【0014】
例えば、前記警報制御部は、前記危険事象の検出後、前記荷役車両を操縦するための操作部が所定の方法で操作されたことを前記車両情報に基づいて検出するまで、音及び/又は光により警報を出力し続けてよい。
【0015】
一例では、前記情報処理装置は、
前記事象検出部を備える処理ユニットと、
前記警報制御部および前記制限指令部を備える追加処理ユニットと、を備えてよい。
【0016】
この例示では、前記処理ユニットは、前記事象検出部として第1事象検出部を備え、
前記追加処理ユニットは、さらに、前記事象検出部として第2事象検出部を備え、
前記第2事象検出部は、前記第1事象検出部が検出しない危険事象を検出してもよい。
【0017】
前記荷役車両は、典型的には、フォークリフトであるが、フォークリフト以外の他の荷役車両であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、例示のアラートシステムの概略的な構成図である。
【
図2】
図2は、
図1のアラートシステムが適用された例示の荷役車両(フォークリフト)の概略的な側面図である。
【
図3】
図3は、危険事象および各危険事象に対して設定された警報態様および車両制限態様を例示する表である。
【
図4】
図4は、別の例示のアラートシステムの概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して、本願の例示の実施形態が説明される。なお、図面に示される構成要素は、必ずしも正確な寸法や比率ではなく、その機能または動作を表すにすぎない。また、図全体を通して同じ参照符号を使用して同一または類似の構成要素を表していることも理解されたい。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、一例に係るアラートシステムを示す。このアラートシステムは、背景技術で説明したように荷役車両の稼働状況を管理するための稼働管理システムでもある。
【0021】
アラートシステムは、荷役車両1と、車載器2と、ネットワークサーバ6と、管理者端末7とを備える。
【0022】
荷役車両1は、車両制御部(車両コントローラ)10と、荷役車両1を走行させるための走行装置11と、荷役を行うための荷役装置12と、荷役車両1の車両情報を取得するセンサ群13とを備える。
【0023】
図2の通り、荷役車両1は、この実施形態では、フォークリフトである。荷役車両1は、操作部14および運転席15を有する車体16を備える。操作部14は、ハンドル、アクセル、ブレーキ、シフトレバー、荷役レバー(リフトレバー等)などを含む。
【0024】
荷役装置12は、車体16の前方に設けられている。荷役装置12は、荷物を支持するためのフォーク17や、フォーク17を昇降させるマスト装置18を備える。荷役装置12は、さらに、フォーク17をティルトさせるティルト装置や、フォーク17およびマスト装置18を車体16に対して前後動させるリーチ装置などを備えてもよい。
【0025】
図1の車両制御部10は、車体16内に設けられ、走行装置11は、車体16に設けられた駆動輪およびこれを駆動および操舵する駆動系からなる。
【0026】
センサ群13は、荷役車両1の制御のために荷役車両1の各所に設けられ、車両制御部10に接続された複数のセンサで構成されている。センサ群13を構成するセンサとしては、例えば、荷役車両1の走行速度を検出する速度センサ、荷役車両1の加速度を検出する加速度センサ、荷役車両1の走行輪の操舵角(旋回角)を検出する操舵角センサ、旋回速度を検出する旋回速度検出センサ、荷役装置12(そのフォーク17)に支持された荷物の重さを測定する荷重センサ、フォーク17の揚高を検出する揚高センサ、操作部14の各部材の操作(ハンドルの操縦、シフトレバーや荷役レバーの傾倒、アクセルやブレーキのオン・オフ等)を検出する操作センサ(リミットスイッチ等)などがある。
【0027】
オペレータが運転席15に搭乗して操作部14を操作すると、センサ群13の一部のセンサが当該操作を検出し、車両制御部10が、これに応答して、走行装置11及び/又は荷役装置12を制御し、それによって、荷役車両1が走行及び/又は荷役を行う。
【0028】
センサ群13を構成する各センサからの情報は荷役車両1の挙動や荷役状態を反映する。したがって、センサ群13からの情報は、荷役車両1に関する車両情報である。
【0029】
荷役車両1は、
図2のようなエンジン式のフォークリフトに限らず、バッテリ式のフォークリフトに適用されてもよい。荷役車両1は、フォークリフト以外の他の荷役車両であってもよい。
【0030】
車載器2は、既存の荷役車両1に搭載される。車載器2は、荷役車両1の稼働状況を記録したり、危険事象を検出したり、動画を撮影したり、稼働状況をネットワークサーバ6に送信したり、後述の通り、警報を出力したり、荷役車両1の動作を制限するための指令を送信したりする。
【0031】
図1のアラートシステムは、稼働管理システムとしても機能する。ネットワークサーバ6は、車載器2からネットワークNを介して送信されてくる稼働状況や動画などの情報を保存する。
【0032】
管理者端末7は、管理者に操作される端末であり、例えば、スマートフォン、タブレットまたはPCでよい。管理者は、管理者端末7を操作してネットワークNを介してネットワークサーバ6にアクセスし、ネットワークサーバ6に保存されている稼働状況や動画などの情報を確認することができる。ネットワークサーバ6や管理者端末7は従来と同様のものが採用されてよいので、ここではその詳細な説明は省略される。
【0033】
図1の通り、車載器2は、撮像装置3、警報装置4、および、情報処理装置5を備える。
【0034】
撮像装置3は、荷役車両1およびその周囲を動画で撮影する。撮像装置3は、この実施形態では、前カメラ30および後カメラ31の2台のカメラからなる。前カメラ30および後カメラ31は、それぞれ、例えば、360°の視野を持つ半天球カメラでよい。
図2の通り、前カメラ30は、マスト装置18の頂部に取り付けられて、荷役車両1の前側を動画撮影する。後カメラ31は、車体16のヘッドガードに取り付けられて、荷役車両1の後側を動作撮影する。これにより、荷役車両1およびその全位周の動画を撮影することができる。なお、撮像装置3のカメラは、1台でも、3台以上であってもよく、また、半天球カメラである必要はなく、さらに、その取付位置も
図2に示されるものに当然ながら限定されない。
【0035】
警報装置4は、音及び/又は光によって警報を出力するように構成されている。警報装置4は、この実施形態では、音を出力するブザー40と光を出力するランプ41とを備える。例えば、ブザー40は、ランプ41と一体化したものであってよく、この実施形態の警報装置4は、ブザー付きの2色積層灯であり、音、黄色の光、及び、赤色の光うち、いずれか1つ、又は、2つ以上の組合せの態様で警報を出力することができる。警報装置4は、オペレータに対して警報を出力するために用いられる。したがって、警報装置4は、例えば
図2のように運転席15より前方の側部といったように、オペレータの操縦の邪魔にならずかつ視認しやすい車体16の位置に配置されているとよい。警報装置4は、2色積層灯以外のものであってもよい。
【0036】
情報処理装置5は、車両制御部10に接続されており、車両制御部10から上述の車両情報を受信する。情報処理装置5は、撮像装置3に接続されており、撮像装置3によって取得された動画データを受信する。情報処理装置5は、警報装置4に接続されており、警報装置4を制御する。
【0037】
情報処理装置5は、事象検出部50を備える。事象検出部50は、車両制御部10から受信する車両情報に基づいて、荷役車両1の挙動または荷役状態に関して定義された複数の危険事象を区別可能に検出する。事象検出部50が、車両情報および必要に応じて予め設定された閾値を用いて、定義された危険事象が発生したか否かを判定する。
【0038】
情報処理装置5は、さらに、警報制御部51を備える。警報制御部51は、事象検出部50が危険事象のいずれかを検出したことをトリガーとして、警報装置4を作動させて、警報装置4に、音及び/又は光の態様で警報を出力させる。警報制御部51は、後述の通り、警報装置4に、各危険事象に対して予め設定された態様で警報を出力させる。
【0039】
この例示では、警報制御部51は、危険事象部50が危険事象のいずれかを検出してから、操作部14が所定の方法で操作されたことを車両制御部10からの車両情報に基づいて検出するまで、警報を出力し続ける。すなわち、操作部14を所定の方法で操作することが、警報停止の条件となっている。所定の方法での操作は、例えば、アクセルのオフ、シフトレバーのニュートラル、荷役レバーのニュートラル、及び/又は、操作部14のボタンの操作などである。
【0040】
これに代えて、警報制御部51は、危険事象が発生している間だけ、警報を出力してもよいし、または、危険事象が発生した瞬間から一定時間(例えば数十秒間)だけ、警報を出力してもよい。
【0041】
情報処理装置5は、さらに、制限指令部52を備える。制限指令部52は、事象検出部50が危険事象のうち一部の予め定めた危険事象(以下、「特定危険事象」と称することがある)を検出したときに、これをトリガーとして、荷役車両1の動作を制限させるべく、制限指令を、荷役車両1の車両制御部10に送信する。なお、後述の通り、各特定危険事象に対しての車両制限の内容は予め設定されている。
【0042】
車両制御部10は、制限指令を制限指令部52から受信すると、その内容に従って、荷役車両1の動作を制限する。具体的には、車両制御部10は、走行装置11の走行動作及び/又は荷役装置12の荷役動作を制限する。
【0043】
走行動作の制限は、荷役車両1の走行速度や加速の制限である。例えば、走行速度の制限は、最高走行速度を、制限前よりも低い値であってゼロでない値に制限することである。また、加速の制限は、アクセル操作に応じた荷役車両1の加速を制限前よりも低く設定することである。
【0044】
荷役動作の制限は、例えば、荷役装置12のフォーク17のリフト動作の制限である。具体的には、当該制限は、最高リフト速度(昇降速度)を制限前よりも低い値であってゼロでない値に制限することである。例えば、リフト動作の制限に加えてまたはこれに代えて、例えばリーチ動作(例えば、リーチ速度)の制限など他の制限があってもよい。
【0045】
なお、車両制御部10は、このような制限中において、オペレータにより操作部14が所定の方法で操作されたことに応答して、上記の制限を解除するように構成されている。すなわち、操作部14を所定の方法で操作することが、制限解除の条件となっている。例えば、車両制御部10は、走行動作制限中において、オペレータがアクセルをオフ及び/又はシフトレバーをニュートラルにしたことをセンサ群13の一部のセンサが検出したときに、これに応答して、走行動作の制限を解除してよい。例えば、車両制御部10は、荷役動作制限中において、オペレータが荷役レバー(例えばリフトレバー)をニュートラルにしたことをセンサ群13の一部のセンサが検出したときに、これに応答して、荷役動作の制限を解除してよい。
【0046】
情報処理装置5は、さらに、記録処理部53を備える。記録処理部53は、例えば、車両情報や、稼働時間、日付、時刻に関する時間情報や、オペレータの識別情報などを互いに紐づけし、これを稼働状況として、記憶媒体55に記録し、また、ネットワークNを介してネットワークサーバ6に送信する。
【0047】
また、記録処理部53は、危険事象のいずれかが発生してこれが事象検出部50によって検出されたときに、この危険事象の発生情報を、時刻情報やオペレータの識別情報と紐づけし、記憶媒体55に記録し、また、ネットワークNを介してネットワークサーバ6に送信する。
【0048】
なお、情報処理装置5は、リーダー(図示略)を備えており、リーダーが荷役車両1のオペレータが所持するIDカード(図示略)を読み取ることで、記録処理部53は、車両情報や危険事象の発生情報をオペレータと紐づけて記録することができる。これにより、オペレータ別に稼働状況を管理することができる。
【0049】
記録処理部53は、危険事象のいずれかが事象検出部50によって検出されたことをトリガーとして、撮像装置3によって撮像された動画であって危険事象発生前後の一定時間の動画を、ネットワークNを介してネットワークサーバ6に送信する。このような記録処理部53は、特許文献1等に開示されたものと実質的に同じであってよいので、その詳細は説明されない。
【0050】
情報処理装置5は、さらに、通知送信部54を備える。情報処理装置5は、メール送信機能を有しており、通知送信部54は、事象検出部50が危険事象のいずれかを検出したことをトリガーとして、ネットワークNを介して、ネットワークサーバ6を経由せずに、管理者端末7(そのメールアドレス)に、危険事象の発生を知らせる通知を含む電子メールを無線で送信してもよい。例えば、ネットワークサーバ6が情報処理装置5から危険事象の発生の通知を受けた後に管理者端末7に通知する構成では、管理者端末7が通知を受信するまでに時間がかかる。上記のようにネットワークサーバ6を介さないことにより、この時間の短縮を図れる。
【0051】
情報処理装置5は、さらに、記憶媒体55を備える。記憶媒体55には、車両制御部10、撮像装置3、ネットワークサーバ6、管理者端末7などから取得した情報が記録され、保存される。記憶媒体55は、情報処理装置5の各機能を実現するためのプログラムが格納されている。記憶媒体55は、揮発性メモリおよび不揮発性メモリで構成されてよい。
【0052】
情報処理装置5は、さらに、通信機56を備える。通信機56は、上述の通り、情報処理装置5のネットワークNを介したネットワークサーバ6および管理者端末7との間の無線通信のために用いられている。
【0053】
情報処理装置5の上記の各部50~54は、情報処理装置5の1つ又は複数のプロセッサが記憶媒体55に格納されたプログラムを実行することにより実現される機能部である。
【0054】
図3は、本実施形態に係る検出可能な危険事象と、それぞれに対して設定された警報態様および車両制限態様の例示である。
図3中において、「〇」は、該当する警報/制限を行うことを意味し、「-」は、該当する警報/制限を行わないことを意味する。
図3の危険事象やそれに対する警報態様および車両制限態様は、あくまでも一例に過ぎないことに留意されたい。
【0055】
「スピード超過」、「急旋回」、「急減速(急ブレーキ)」、「急発進」、「物への衝突」といった荷役車両1の走行挙動に関する危険事象の発生は、特許文献1などと同様に、車両情報に含まれる走行速度、旋回速度、加速度、旋回角など走行に関係する値と予め設定された閾値との比較に基づいて、事象検出部50により判定される。
【0056】
また、「荷重オーバー」や「荷崩れ」といった荷役車両1の荷役状態に関する危険事象の発生は、車両情報に含まれる荷役に関係する情報に基づいて判定される。例えば、荷重センサによって測定されるフォーク17上の荷物の荷重が予め設定された閾値を超えたときに、「荷重オーバー」が発生したしたと事象検出部50によって判定される。
【0057】
「荷崩れ」は、フォーク17からの荷物の落下を意味する。「荷崩れ」は、車両情報に含まれる荷役に関係する情報が、フォーク17が昇降していないにも関わらずフォーク17上の荷物の荷重が減少したことを示すときに、発生したと事象検出部50によって判定される。
【0058】
「リフトアップ走行(荷有/無)」、「リフトダウン走行(荷有/無)」、「リフトアップ・走行・旋回(荷有)」、「リフトダウン・走行・旋回(荷有)」は、走行挙動兼荷役挙動(二重操作)に関する危険事象である。「リフトアップ走行(荷有/無)」/「リフトダウン走行(荷有/無)」は、フォーク17上に荷物が有るか無いかに関わらず、オペレータが、フォーク17を上昇/下降させながら荷役車両1を走行させていることを意味する。「リフトアップ・走行・旋回(荷有)」/「リフトダウン・走行・旋回(荷有)」は、オペレータが、フォーク17上に荷物を載せた状態で、フォーク17を上昇/下降させながら荷役車両1を走行かつ旋回させていることを意味する。これらの危険事象の発生は、走行装置11および荷役装置12の二重操作であるから、車両情報に含まれる走行に関する情報および荷役に関する情報に基づいて事象検出部50によって判定される。
【0059】
図3の危険事象は、単なる例示に過ぎない。また、以下で説明される各危険事象に対する警報態様および車両制限態様もまた一例に過ぎないことに留意されたい。
【0060】
警報制御部51は、事象検出部50が危険事象のいずれかを検出したことに応答して、警報装置4を作動させて警報を出力する。
図3の通り、各危険事象に対して警報の態様(音、黄色の光および赤色の光の組合せ)が割り当てられており、警報制御部51は、危険事象が検出されたとき、その検出された危険事象に対して割り当てられた態様で警報装置4に警報を出力させる。
【0061】
システムの提供者または管理者等によって危険事象の危険レベルに応じて異なる警報の態様が予め割り当てられ、設定されている。
図3の通り、この実施形態では、危険レベルが低い危険事象に対しては、黄色の点灯が、危険レベルが中程度の危険事象に対しては、警報音の吹鳴および赤色の点灯の組合せ、危険レベルが高い危険事象に対しては、警報音の吹鳴、黄色の点灯、および、赤色の点灯の組合せが割り当てられている。
【0062】
警報の出力によって、オペレータに、危険事象の発生を知らせることができる。さらに、警報の態様を異ならせることで、オペレータに、発生した危険事象の危険レベルを知らせることができる。
【0063】
さらに、このアラートシステムは、危険事象のうち一部の危険レベルが低くない所定の特定危険事象が発生したときには上記警報の出力に加えて、荷役車両1に対して車両制限(走行制限及び/又は荷役制限)を課すように構成されている。
【0064】
システムの提供者または管理者等によって危険事象の危険レベルに応じて異なる車両制限態様が予め割り当てられ、設定されている。例えば、
図3の通り、危険レベルが低いとされる危険事象Aに対しては、走行制限および荷役制限のどちらも行わないように設定されている。危険レベルが中程度とされる危険事象B(本発明の「第1特定危険事象」の一例)に対しては、走行制限を行うが荷役制限を行わないように設定されている。さらに、危険レベルが高いとされる危険事象C(本発明の「第2特定危険事象」の一例)に対しては、走行制限および荷役制限の双方を行うと設定されている。
【0065】
したがって、事象検出部50が危険レベルの低い危険事象Aのいずれかを検出しても、制限指令部52は制限指令を車両制御部10に送信しない。すなわち、車両制限がかかることはない。
【0066】
事象検出部50が、危険事象Bのいずれかを検出すると、これをトリガーとして、制限指令部52は、走行制限をするが荷役制限をしないことを示す制限指令を車両制御部10に送信する。そして、車両制御部10は、当該制限指令を受信すると走行動作を制限する。すなわち、危険レベルが中程度の危険事象Bが発生したときに、警報に加えて走行制限がかかる。この具体例では、当該制限は、最高走行速度を制限前よりも低い値であってゼロでない値に制限することである。
【0067】
事象検出部50が、危険事象Cのいずれかを検出すると、これをトリガーとして、制限指令部52は、走行制限および荷役制限の双方を行うことを示す制限指令を車両制御部10に送信する。そして、車両制御部10は、当該制限指令を受信すると走行動作および荷役動作の双方を制限する。すなわち、危険レベルが高い危険事象Cが発生したときに、警報に加えて走行制限および荷役制限の双方がかかる。この具体例では、走行動作の制限は上記の通りであり、荷役動作の制限は、最高リフト速度を制限前よりも低い値であってゼロでない値に制限することである。
【0068】
このように、アラートシステムは、危険行為のうち、危険レベルの低い危険事象Aが発生したときには警報だけを出力する。アラートシステムは、特定危険事象B、Cが発生したときには、警報に加えて、当該警報と連動して車両制限(走行制限及び/又は荷役制限)をかける。
【0069】
オペレータは、警報だけでは慣れてしまって自己の危険運転を改めない可能性がある。危険レベルが中程度または高い特定危険事象B、Cが発生したときには車両制限がかかる。オペレータはこの車両制限を実感することで、危険事象の発生を強く認識するであろう。結果的に、危険運転の抑止の促進の効果が期待される。特に、危険レベルが高い危険事象C(第2特定危険事象)が発生したときには走行制限及び荷役制限の双方がかかるので、オペレータに一層強く認識させることができる。
【0070】
警報および車両制限(走行動作及び/又は荷役動作の制限)は、オペレータが操作部14を所定の方法で操作するまで継続することは上記の通りである。このようにオペレータが所定の操作を行わない限り、警報を停止せず、車両制限を解除しない構成も、オペレータに自身の危険運転を強く認識させることに貢献している。
【0071】
この具体例は、最高走行速度および最高リフト速度をゼロでない値に制限しており、走行動作および荷役動作を不能にするような制限を行っていない。これは、特定危険事象が発生したときに、オペレータが作業を継続できることを保証しつつもオペレータに自身の危険運転を強く自覚させるためである。
【0072】
なお、上記の具体例では、荷役制限を行うが走行制限を行わない車両制限態様が設定されていないが、当然ながらそのような車両制限態様が危険事象の内容および危険レベルに応じて設定されてもよい。
【0073】
なお、情報処理装置5は、検出可能な危険事象を定義し、追加でき、かつ、当該追加の危険事象に対して警報態様および車両制限態様を割り当てることができるように構成されていることが好ましい。一例として、情報処理装置5は、アラートシステムの提供者の装置や管理者の管理者端末7といった外部装置から更新情報(更新プログラム)を受信して記憶媒体55に格納されたプログラムを書き換えることにより、事象検出部50が新たに定義された危険事象を追加で検出でき、かつ、警報制御部51および制限指令部52がそれに対して割り当てられた態様で警報出力および制限指令送信を行えるようにする。これにより、管理者(顧客)の要望に応じて検出可能な危険事象を後から追加することができ、多くの顧客に対応できるシステムとなる。
【0074】
[第2実施形態]
第2実施形態が、
図4に示されている。第1実施形態と同様の構成については説明が省略される。
図4のアラートシステムでは、情報処理装置5が、処理ユニット5Aと追加処理ユニット5Bとの2つのユニットで構成されている。処理ユニット5A、撮像装置3、ネットワークサーバ6、および、管理者端末7が、稼働管理システムを構成している。この稼働管理システムに、追加処理ユニット5Bおよび警報装置4をアドオンしたことにより、稼働管理システムがアラートシステムとしても機能している。
【0075】
処理ユニット5Aは、事象検出部50A(第1事象検出部)、記録処理部53、通知送信部54、記憶媒体55、通信機56などを備え、車両制御部10および撮像装置3に接続され、さらに、追加処理ユニット5Bに接続されている。この実施形態の処理ユニット5Aは、具体的には、データロガーユニットである。
【0076】
追加処理ユニット5Bは、事象検出部50B(第2事象検出部)、警報制御部51、制限指令部52、記憶媒体55などを備え、車両制御部10、処理ユニット5A、および、警報装置4に接続されている。この実施形態の追加処理ユニット5Bは、具体的には、コントロールボックスである。
【0077】
車両情報は、車両制御部10から処理ユニット5Aおよび追加処理ユニット5Bに送信され、危険事象は、事象検出部50Aおよび事象検出部50Bによって検出される。例えば、
図3の危険事象のうち、一部の危険事象が事象検出部50Aによって検出され、残りの危険事象が事象検出部50Bによって検出される。追加処理ユニット5Bの事象検出部50Bは、既存の処理ユニット5Aの事象検出部50Aが検出しない危険事象を検出できるように構成されていることが好ましい。新たな危険事象を追加で検出できるようになるからである。
【0078】
この実施形態では、事象検出部50Aが危険事象を検出すると、記録処理部53および通知送信部54が第1実施形態と同様のことを行う。そして、アラームシステムとして、事象検出部50Aが危険事象を検出すると、その旨を追加処理ユニット5Bに送信する。追加処理ユニット5Bにて、警報制御部51は、警報装置4を作動して、検出された危険事象に対して設定された警報態様で警報を出力する。また、制限指令部52も、検出された危険事象が特定危険事象の場合には、それに対して設定された車両制限(走行制限及び/又は荷役制限)を車両制御部10に実施させるべく、車両制御部10に制限指令を送る。
【0079】
事象検出部50Bが危険事象を検出したとき、警報制御部51および制限指令部52は第1実施形態と同様のことを行う。稼働管理システムとして、事象検出部50Bは危険事象を検出すると、その旨を処理ユニット5Aに送信する。処理ユニット5Aにて、記録処理部53は、その危険事象の発生情報および撮像装置3によって取得された危険事象発生前後の動画をネットワークサーバ6に送信する。また、通知送信部54が、危険事象の発生の通知を含む電子メールを管理者端末7にネットワークサーバ6を介さずに送信する。
【0080】
第2実施形態も第1実施形態と同様の効果を期待できる。さらに、第2実施形態は、稼働管理システムに対して追加処理ユニット5Bおよび警報装置4をアドオンすることによって稼働管理システムをアラートシステムとしても機能させることができる点で有利である。
【0081】
第1実施形態および第2実施形態のどちらも単なる例示に過ぎない。本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であることは当業者であれば自明である。
【符号の説明】
【0082】
1 荷役車両
10 車両制御部
11 走行装置
12 荷役装置
14 操作部
17 フォーク
2 車載器
3 撮像装置
4 警報装置
5 情報処理装置
50 事象検出部
50A 第1事象検出部
50B 第2事象検出部
51 警報制御部
52 制限指令部
5A 処理ユニット
5B 追加処理ユニット
6 ネットワークサーバ
【要約】
【課題】特定の危険事象が発生した場合に、荷役車両のオペレータにそのことを強く認識させる。
【解決手段】アラートシステムは、走行装置11および荷役装置12を制御する車両制御部10と、音及び/又は光により警報を出力する警報装置4と、車両制御部10および警報装置4に接続された情報処理装置5とを備える。情報処理装置5は、車両制御部10からの車両情報に基づいて危険事象を検出する事象検出部50と、事象検出部50が危険事象のいずれかを検出したときに警報装置4を作動させて警報装置4に警報を出力させる警報制御部51と、事象検出部50が危険事象のうち一部の特定危険事象を検出したときに、車両制御部10に、荷役車両1の動作を制限するための制限指令を送信する制限指令部52と、を備える。車両制御部10は、情報処理装置5から制限指令を受けると、走行装置11の走行動作及び/又は荷役装置12の荷役動作を制限する。
【選択図】
図1