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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】フレキシブル管用継手および施工方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/00 20060101AFI20250204BHJP
   F16L 37/088 20060101ALI20250204BHJP
   F16L 33/26 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
F16L33/00 B
F16L37/088
F16L33/26
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020165894
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057569
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】724014121
【氏名又は名称】桑名金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(72)【発明者】
【氏名】猪谷 崇明
(72)【発明者】
【氏名】西方 伸広
(72)【発明者】
【氏名】遠山 康
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-281066(JP,A)
【文献】実公昭50-027926(JP,Y1)
【文献】特開2018-173108(JP,A)
【文献】特開2010-053973(JP,A)
【文献】特開2012-210666(JP,A)
【文献】特開平06-226382(JP,A)
【文献】特開2010-131653(JP,A)
【文献】特開2002-267064(JP,A)
【文献】特開平07-239077(JP,A)
【文献】特開2000-055261(JP,A)
【文献】実開平02-005689(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の山部と谷部が軸方向に沿って交互に配置された蛇腹状のフレキシブル管を接続するフレキシブル管用継手であって、
前記フレキシブル管は、少なくとも外周の一部が前記山部よりも外径側に拡がって形成された変形部を有し、
前記フレキシブル管用継手は、前記変形部よりも前記フレキシブル管の先端とは逆側に装着される押ナットと、前記押ナットの端部とともに前記フレキシブル管の先端が挿入される継手本体と、前記継手本体に対して前記押ナットを係合させる係合機構と、前記継手本体内に配置され、前記フレキシブル管に密着するリング状のシール部材とを備え、
前記押ナットと前記継手本体とが係合することで、前記フレキシブル管が接続され、その接続状態において、前記フレキシブル管の前記変形部が前記押ナットの継手本体奥側の端部に係止され、前記フレキシブル管が抜け止めされ
前記係合機構は、ストップリングと、前記継手本体の内面に形成された内周溝と、前記ストップリングを拡径した状態で前記内周溝内に保持する保持部材と、前記押ナットの外面に形成された外周溝とを有し、前記フレキシブル管に装着された前記押ナットの挿入により、前記保持部材が押圧されるとともに前記ストップリングの拡径状態が解除されて、前記ストップリングが前記外周溝と前記内周溝に跨がって係合される機構であることを特徴とするフレキシブル管用継手。
【請求項2】
前記保持部材は、前記押ナットに押圧される中空円板状の基部と、前記基部の外周縁から軸方向に延びた円筒部とを有し、前記円筒部の先端には、円周方向に沿って分割され、かつ、外方に折り曲げられた複数の突起が設けられており、
前記押ナットが挿入される前の状態において、前記保持部材は、前記複数の突起を、前記内周溝よりも継手本体入口側に形成された係合溝に係合させることで、前記ストップリングを拡径状態で保持することを特徴とする請求項に記載のフレキシブル管用継手。
【請求項3】
前記継手本体内において、前記シール部材と、前記継手本体の内径が縮径した段部との間に弾性部材が配置されており、
前記弾性部材は、前記押ナットが挿入される前の状態よりも、前記フレキシブル管に接続された状態の方が圧縮されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフレキシブル管用継手。
【請求項4】
複数の山部と谷部が軸方向に沿って交互に配置された蛇腹状のフレキシブル管を接続するフレキシブル管用継手であって、
前記フレキシブル管は、少なくとも外周の一部が前記山部よりも外径側に拡がって形成された変形部を有し、
前記フレキシブル管用継手は、前記変形部よりも前記フレキシブル管の先端とは逆側に装着される押ナットと、前記押ナットの端部とともに前記フレキシブル管の先端が挿入される継手本体と、前記継手本体に対して前記押ナットを係合させる係合機構と、前記継手本体内に配置され、前記フレキシブル管に密着するリング状のシール部材とを備え、
前記押ナットと前記継手本体とが係合することで、前記フレキシブル管が接続され、その接続状態において、前記フレキシブル管の前記変形部が前記押ナットの継手本体奥側の端部に係止され、前記フレキシブル管が抜け止めされ、
前記継手本体内において、前記シール部材と、前記継手本体の内径が縮径した段部との間に弾性部材が配置されており、
前記弾性部材は、前記押ナットが挿入される前の状態よりも、前記フレキシブル管に接続された状態の方が圧縮されていることを特徴とするフレキシブル管用継手。
【請求項5】
前記継手本体の外面にかぎ爪部が設けられており、前記フレキシブル管との接続状態において、前記かぎ爪部は、前記押ナットの継手本体入口側の端部に係合されることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のフレキシブル管用継手。
【請求項6】
前記変形部は、少なくとも1以上の前記山部の頂部が外径側に拡がった略円盤状であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のフレキシブル管用継手。
【請求項7】
複数の山部と谷部が軸方向に沿って交互に配置された蛇腹状のフレキシブル管をフレキシブル管用継手に接続するフレキシブル管の施工方法であって、
前記フレキシブル管用継手は、押ナットと、前記押ナットの端部とともに前記フレキシブル管の先端が挿入される継手本体と、前記継手本体に対して前記押ナットを係合させる係合機構と、前記継手本体内に配置され、前記フレキシブル管に密着するリング状のシール部材とを備え、
前記施工方法は、前記フレキシブル管を外側の被覆樹脂ごと切断する第1切断工程と、前記被覆樹脂を剥離する剥離工程と、露出した前記フレキシブル管の先端を前記谷部で切断する第2切断工程と、前記フレキシブル管に前記押ナットを挿通する挿通工程と、前記フレキシブル管の挿通された前記押ナットよりも先端側に、少なくとも外周の一部が前記山部よりも外径側に拡がった変形部を形成する変形工程と、前記押ナットを前記フレキシブル管とともに前記継手本体に挿入して係合させる係合工程とを有し、
前記係合工程により、前記フレキシブル管が接続され、その接続状態において、前記フレキシブル管の前記変形部が前記押ナットの継手本体奥側の端部に係止され、前記フレキシブル管が抜け止めされることを特徴とするフレキシブル管の施工方法。
【請求項8】
前記第1切断工程、前記剥離工程、前記第2切断工程、前記挿通工程、および前記変形工程の少なくともいずれか1つの工程を自動施工機によって行うことを特徴とする請求項7に記載のフレキシブル管の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛇腹状のフレキシブル管が接続されるフレキシブル管用継手、および該フレキシブル管用継手に接続するフレキシブル管の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内ガス配管などには、金属製の蛇腹状のフレキシブル管が広く用いられている。また、このフレキシブル管とガス栓や鋼管などとを接続するための管継手が種々用いられている。近年では、工具を必要とせずに、管継手にフレキシブル管を差し込むだけで施工が完了できる、ワンタッチ式の管継手も実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されているフレキシブル管用継手(以下、単に管継手ともいう)を図14および図15に示す。図14は、フレキシブル管を挿入する前の状態を示し、図15は、フレキシブル管を接続した状態を示す。図14に示すように、管継手11は、一端部からフレキシブル管が挿入される継手本体12を備え、継手本体12内において、押ナット13の一部と、リテーナ18と、軸方向に伸縮自在な弾性部材14と、弾性部材14を圧縮状態で保持するガイド部材15と、移動部材16と、フレキシブル管の外周面に密着するリング状のシール部材17とが配置されている。
【0004】
この管継手に対して、図15に示すように、蛇腹状のフレキシブル管T1が挿入されると、ガイド部材15と継手本体12の係合が解除されることで弾性部材14の圧縮状態が開放される。そして、弾性部材14の伸長に伴って、シール部材17がスライドするとともに軸方向に圧縮される。これにより、シール部材17がフレキシブル管T1の外周面に密着する。また、弾性部材14の伸長に伴って、リテーナ18が縮径して爪部18aがフレキシブル管T1の谷部に収まる。これにより、リテーナ18がフレキシブル管T1の外周面に引っ掛かり、フレキシブル管T1の抜けを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-52762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来の管継手ではリテーナによってフレキシブル管の抜けが防止されている。しかし、このような管継手では、構成部材としてリテーナ(抜け止め部材)が必要になり、また、リテーナを収容することから、管継手の軸方向長さL2(図14参照)が長くなる傾向がある。そのため、管継手の小型化の面で更なる改善の余地があると考えられる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、フレキシブル管の抜けを防止しつつ、小型化を図ることができるフレキシブル管用継手およびフレキシブル管の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフレキシブル管用継手は、複数の山部と谷部が軸方向に沿って交互に配置された蛇腹状のフレキシブル管を接続するフレキシブル管用継手であって、フレキシブル管は、少なくとも外周の一部が山部よりも外径側に拡がって形成された変形部を有し、フレキシブル管用継手は、変形部よりもフレキシブル管の先端とは逆側に装着される押ナットと、押ナットの端部とともにフレキシブル管の先端が挿入される継手本体と、継手本体に対して押ナットを係合させる係合機構と、継手本体内に配置され、フレキシブル管に密着するリング状のシール部材とを備え、押ナットと継手本体とが係合することで、フレキシブル管が接続され、その接続状態において、フレキシブル管の変形部が押ナットの継手本体奥側の端部に係止され、フレキシブル管が抜け止めされることを特徴とする。
【0009】
本発明において、係合機構は、ストップリングと、継手本体の内面に形成された内周溝と、ストップリングを拡径した状態で内周溝内に保持する保持部材と、押ナットの外面に形成された外周溝とを有し、フレキシブル管に装着された押ナットの挿入により、保持部材が押圧されるとともにストップリングの拡径状態が解除されて、ストップリングが外周溝と内周溝に跨がって係合される機構であることが好ましい。
【0010】
また、本発明において、保持部材は、押ナットに押圧される中空円板状の基部と、基部の外周縁から軸方向に延びた円筒部とを有し、円筒部の先端には、円周方向に沿って分割され、かつ、外方に折り曲げられた複数の突起が設けられており、押ナットが挿入される前の状態において、保持部材は、複数の突起を、内周溝よりも継手本体入口側に形成された係合溝に係合させることで、ストップリングを拡径状態で保持することがより好ましい。
【0011】
さらに、本発明において、継手本体内において、シール部材と、継手本体の内径が縮径した段部との間に弾性部材が配置されており、弾性部材は、押ナットが挿入される前の状態よりも、フレキシブル管に接続された状態の方が圧縮されていることがより好ましい。
【0012】
また、本発明において、継手本体の外面にかぎ爪部が設けられており、フレキシブル管との接続状態において、かぎ爪部は、押ナットの継手本体入口側の端部に係合されるものであってもよい。
【0013】
また、本発明において、変形部は、少なくとも1以上の前記山部の頂部が外径側に拡がった略円盤状であってもよい。
【0014】
本発明のフレキシブル管の施工方法は、複数の山部と谷部が軸方向に沿って交互に配置された蛇腹状のフレキシブル管をフレキシブル管用継手に接続するフレキシブル管の施工方法であって、フレキシブル管用継手は、押ナットと、押ナットの端部とともにフレキシブル管の先端が挿入される継手本体と、継手本体に対して押ナットを係合させる係合機構と、継手本体内に配置され、フレキシブル管に密着するリング状のシール部材とを備え、施工方法は、フレキシブル管を外側の被覆樹脂ごと切断する第1切断工程と、被覆樹脂を剥離する剥離工程と、露出したフレキシブル管の先端を谷部で切断する第2切断工程と、フレキシブル管に押ナットを挿通する挿通工程と、フレキシブル管の挿通された押ナットよりも先端側に、少なくとも外周の一部が山部よりも外径側に拡がった変形部を形成する変形工程と、押ナットをフレキシブル管とともに継手本体に挿入して係合させる係合工程とを有し、係合工程により、フレキシブル管が接続され、その接続状態において、フレキシブル管の変形部が押ナットの継手本体奥側の端部に係止され、フレキシブル管が抜け止めされることを特徴とする。
【0015】
本発明において、第1切断工程、剥離工程、第2切断工程、挿通工程、および変形工程の少なくともいずれか1つの工程を自動施工機によって行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のフレキシブル管用継手は、このような構成にすることにより、従来構成のようなリテーナが不要になり、フレキシブル管の抜けを防止しつつ、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る管継手の第1実施形態の片側断面図である。
図2図1の保持部材の斜視図である。
図3図1の継手本体の斜視図である。
図4図1の管継手にフレキシブル管を接続した状態の片側断面図である。
図5図4のA部拡大図である。
図6】本発明に係る管継手の第2実施形態の片側断面図である。
図7】本発明に係る施工方法の概略を示す工程図である。
図8】本発明に係る施工方法に用いる自動施工機の概略図である。
図9】S1工程~S3工程の自動施工フローの説明図である。
図10】S4工程~S5工程の自動施工フローの説明図である。
図11】S6工程の説明図である。
図12】フレキシブル管の接続状態の確認動作を示す図である。
図13】S1工程~S3工程の手動施工フローの説明図である。
図14】従来の管継手の片側断面図である。
図15図14の管継手にフレキシブル管を接続した状態の片側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
本発明に係る管継手の第1実施形態を図1に基づいて説明する。図1は、管継手の片側断面図であり、管継手1の中心軸Oより上半分が断面図、下半分が側面図を表している。本発明において、管継手1の中心軸Oに沿う方向を軸方向といい、軸方向から見た平面視で中心軸Oと直交する方向を径方向といい、該平面視で中心軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0019】
図1は、管継手の主な構成部材である継手本体と押ナットが係合される前の状態を示している。管継手1は、継手本体2に対して押ナット3の一部が挿入されて係合されることで構成される。継手本体2は、一端側に押ナット3およびフレキシブル管が挿入される内孔21を有するとともに、他端側の外周面におねじ部25を有する。内孔21は、他端側に向かって内径が段階的に減少している。
【0020】
図1に示すように、円筒状の継手本体内に、弾性部材4と、リング状のシール部材5と、保持部材6と、スペーサ8aと、耐火パッキン8bと、ストップリング8cとが配置されている。なお、継手本体2には、フレキシブル管の抜け止め部材であるリテーナ18(図14参照)が配置されていない。継手本体2の一端側の内周面には内周溝22が形成されている。また、内周溝22の更に継手本体入口側には、内周溝22よりも溝深さが小さい係合溝23が形成されている。図1の状態では、内周溝22にストップリング8cが収容され、係合溝23に保持部材6の突起621が係合されている。
【0021】
弾性部材4は、軸方向に伸縮自在なスプリングである。弾性部材4は、継手本体2の内径が縮径した段部24と、シール部材5との間に配置される。図1において、シール部材5と弾性部材4との間には中空円板状のスペーサ8aが介在しており、弾性部材4の復元力がシール部材5に伝達されやすくなっている。
【0022】
シール部材5は、ゴム材料からなるシール本体51と、そのシール本体51の継手本体入口側の端面に固定された押え部材52とを有する。押え部材52はL字形断面を有しており、耐火パッキン8bを保持する構成になっている。シール本体51は、フレキシブル管と密着する内周部が円筒形状を有し、フレキシブル管の山部の外径よりもやや小さい内径を有している。シール本体51は、フレキシブル管の2山分をシールできるような長さを有している。シール本体51に用いられるゴム材料としては、長期間にわたってシール性能を保持する必要性から、耐ガス性を考慮しニトリルブタジエンゴム(NBR)が好ましい。
【0023】
耐火パッキン8bは、管継手1が火災などで高温にさらされた場合でも、ガス漏れを防止できるようにするための部材である。耐火パッキン8bは、例えば、原料ゴムと、無発泡状態で熱膨張する黒鉛層間化合物と、必要に応じて充填材、軟化材、加硫剤などを混練して得られたゴム組成物を、金型に充填して成形し、ついでプレス加硫することにより製造される。耐火パッキン8bは、火災時に熱膨張して、継手本体2とフレキシブル管との隙間に充填されることで、フレキシブル管の外周面をシールする。図1において、耐火パッキン8bは矩形断面を有している。
【0024】
保持部材6は、例えば樹脂材料(ポリアセタールなど)からなるリング状部材である。保持部材6について、図2の斜視図を参照して説明する。図2に示すように、保持部材6は、中空円板状の基部61と、基部61の外周縁から軸方向に延びた円筒部62とを有する。円筒部62の先端には、円周方向に沿って分割され、かつ、径方向外側(外方)に折り曲げられた複数の突起621が設けられている。保持部材6は、図1に示すように、継手本体内において基部61を継手本体奥側に向けて装着されており、基部61は耐火パッキン8bに当接している。この基部61は、押ナット3の挿入時に押ナット3に押圧される部分である。また、保持部材6は、複数の突起621を、係合溝23に係合させてストップリング8cを拡径状態で内周溝内に保持している。なお、ストップリング8cは、ばね性を有する金属材料からなる線材で形成されたC字状部材である。
【0025】
継手本体2の一端側の外周面には外周溝26が形成されており、この外周溝26にインジケータ7が装着されている。インジケータ7は、図3に示すように、リング部71の周方向の一か所に合い口を有しており、拡径させて外周溝26に装着される。また、インジケータ7は、リング部71から、継手本体入口側に向かって延びたかぎ爪部72を有する。かぎ爪部72は、周方向に略等間隔に複数個(図3では3個)形成されている。後述するように、フレキシブル管との接続状態において、かぎ爪部72は、押ナットの継手本体入口側の端部33(図4参照)に係合される。なお、かぎ爪部は別部材としてではなく、継手本体2の外周面から直接延びるように、継手本体2と一体に形成されていてもよい。
【0026】
図1に戻り、押ナット3は、貫通孔を有する筒状の金属部材である。押ナット3は、その一部が継手本体2の内孔21に挿入されて係合される。押ナット3の外周面には、ストップリング8cの一部が進入する外周溝31が形成されている。また、押ナット3には、Oリング8d、リップパッキン8e、選択透過性部材8fがそれぞれ装着されている。
【0027】
Oリング8dは、押ナット3の外周溝31よりも継手本体入口側に形成された外周溝に嵌入される。Oリング8dは、外部から管継手1の内部への水の浸入を防ぎ、管継手1に水密性を付与する。また、リップパッキン8eは、略L字形断面を有する環状部材であり、押ナット3の内周溝に嵌入される。リップパッキン8eは、フレキシブル管の外周面と押ナット3の内周面とを水密にシールする。
【0028】
選択透過性部材8fは、押ナット3の継手本体2の一端側に対向する位置に設けられた外気と連通する貫通孔(例えば円孔)に装着されている。選択透過性部材8fは、気体を透過し液体を透過しない多孔質部材であり、フレキシブル管からガス漏れが生じた場合に、漏出したガスを透過させて外部のガスセンサなどに検出させるために設けられる。
【0029】
ここで、管継手1は、継手本体2に対して押ナット3を係合させる係合機構を有している。この係合機構は、ストップリング8cと、保持部材6と、外周溝31と、内周溝22とを有する。後述するように、押ナット3を係合する際には、押ナット3を予めフレキシブル管に装着し、押ナット3およびフレキシブル管を継手本体2に挿入する。押ナット3が挿入されると、保持部材6は突起621が係合溝23から外れて継手本体奥側に押し込まれ、上記係合機構により押ナット3と継手本体2が係合されることでフレキシブル管が接続される。
【0030】
図4および図5には、フレキシブル管の接続状態を示す。図4の接続状態では、保持部材6が継手本体奥側に押し込まれ、ストップリング8cは保持部材6から外れる。ストップリング8cが押ナット3の外周溝31と継手本体2の内周溝22に跨がることで、押ナット3と継手本体2が係合されている。また、押ナット3の挿入によって、弾性部材4は、押ナット3が挿入される前の状態(図1の状態)よりも軸方向に圧縮されている。そして、この圧縮に伴う弾性部材4の復元力によって、シール本体51が圧縮されてフレキシブル管T1の外周面に密着している。
【0031】
フレキシブル管T1は、複数の山部と谷部が軸方向に沿って交互に配置された蛇腹状の金属管(例えばステンレス管)である。本発明において、フレキシブル管T1は、少なくとも外周の一部が山部よりも外径側に拡がって形成された変形部T11を有している。図4では、変形部T11は、フレキシブル管T1の先端部T12から4つ目および5つ目の山部で構成されている。これら山部の頂部間の距離(ピッチp)が短くなるようにフレキシブル管T1の一部が軸方向に押し潰されることで、山部の頂部が外径側に拡がり変形部T11が形成される。変形部T11は略円盤状をなし、その一部は、他の山部よりも外径側に突出しており、その突出した部分がフレキシブル管の抜け止め部として機能する。なお、変形部を構成する山部の位置は図4に限定されない。
【0032】
図5は、図4のA部拡大図である。図5に示すように、フレキシブル管T1の変形部T11は、押ナット3の継手本体奥側の端部32とシール部材5との間に係止される。より具体的には、変形部T11は、端部32の内径縁に設けられた段部321と、シール部材5の押え部材52との間に係止される。段部321は、変形部T11の一部が入り込むよう継手本体入口側に向かって窪んだ部分であり、全周にわたって形成されている。このように、変形部T11が押ナット3と継手本体内の構成部材との間に挟まれることで、フレキシブル管T1が引き抜かれるように操作された場合でも、変形部T11が押ナット3の端部32に引っ掛かり、フレキシブル管T1の抜けが防止される。そのため、従来構成のようなリテーナが不要になる。リテーナを設ける必要がなくなることにより、継手本体2にリテーナを装着する空間を設けなくてもよいので、管継手の軸方向長さを短くでき、管継手を小型化できる。また、管継手の低コスト化にも繋がる。
【0033】
本発明に係る管継手(図4参照)では、従来の管継手(図14参照)に比べて、押ナットと継手本体が係合された状態の軸方向長さを短くできる。例えば、従来の管継手の軸方向長さL2が70mm程度であるのに対して、本発明に係る管継手の軸方向長さL1は、例えば60mm以下、好ましくは50mm以下である。なお、軸方向長さL1の下限は、例えば45mm以上である。
【0034】
(第2実施形態)
本発明に係る管継手の第2実施形態を図6に基づいて説明する。なお、図1図5を用いて説明した第1実施形態と同一の構成は同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。図6は、フレキシブル管との接続状態を示す。
【0035】
上述の第1実施形態の管継手は、フレキシブル管を側面でシールする構成であったのに対して、第2実施形態の管継手は、フレキシブル管を端面でシールする構成である。図6に示すように、管継手1Aに接続されるフレキシブル管T1Aは、変形部T11Aが先端から1つ目と2つ目の山部によって構成される。このとき、変形部T11Aを先端から1つ目の山部のみで構成してもよい。また、変形部T11Aがフレキシブル管の先端に形成されるため、第1実施形態の管継手に比べて変形部を形成しやすい。また、変形部T11Aは、抜け止め部として機能するとともに、シール性にも寄与する。変形部T11Aがシール部材5Aの継手本体入口側の端面と密着することでシール性が確保される。
【0036】
シール部材5Aは、例えばL字形断面を有するゴム材料からなり、耐火パッキン8bを保持する構成になっている。ゴム材料としてはNBRなどが用いられる。また、シール性を向上させるため、シール部材5Aとしてガスケットを用いてもよい。また、図6では、弾性部材4Aとして板バネが用いられている。
【0037】
管継手1Aにおいても、変形部T11Aが押ナット3と継手本体内の構成部材(シール部材5A)との間に係止されることで、フレキシブル管T1Aの抜けが防止される。また、管継手1Aは、端面でシールする構成であるため、第1実施形態の管継手に比べて、継手本体2Aの軸方向長さを一層短くできる。
【0038】
本発明に係る管継手の構成は、上記の第1実施形態および第2実施形態のいずれの形態でもよいが、シール性の信頼性の観点では第1実施形態が好ましい。また、第1実施形態の場合、フレキシブル管の山部とシール本体51の内周面との接触で面圧が生じシール性が確保されるため、フレキシブル管の軸線に沿った方向へのシール部材の圧縮が必ずしも必要ではなく弾性部材を省略することもできる。一方、フレキシブル管の変形部の加工性や更なる小型化の観点では第2実施形態が好ましい。なお、第2実施形態の場合、シール面圧を保つために弾性部材を備えることが好ましい。
【0039】
本発明に係る管継手は、上記各実施形態の形態に限定されるものではない。例えば、インジケータ7やスペーサ8aを省略してもよい。これにより、リテーナの削減に加えて、更なる部品点数の削減を図ることができる。また、変形部を構成する山部の数は、2山に限定されず、1山でもよく、2山を越える数でもよい。
【0040】
次に、本発明に係る施工方法について説明する。
【0041】
本発明に係る施工方法は、上述の管継手にフレキシブル管を接続する方法である。この施工方法は、図7に示す(S1)~(S6)の6つの工程を少なくとも備える。すなわち、(S1)フレキシブル管を外側の被覆樹脂ごと切断する第1切断工程と、(S2)被覆樹脂を剥離する剥離工程と、(S3)露出したフレキシブル管の先端を切断する第2切断工程と、(S4)加工したフレキシブル管に押ナットを挿通する挿通工程と、(S5)フレキシブル管に変形部を形成する変形工程と、(S6)押ナットを継手本体に挿入して係合させる係合工程とを備える。
【0042】
上記S1工程~S5工程の各工程は、作業者の手動操作による手動施工フロー、または自動施工機を用いる自動施工フローによって実施することができる。ただし、施工時間を短縮することができ、また、作業者による施工品質のばらつきを抑制できることから、上記S1工程~S5工程の少なくともいずれか1つの工程を自動施工機を用いて行うことが好ましい。以下には、まず自動施工機について説明する。
【0043】
図8には、自動施工機の斜視図を示す。図8に示すように、自動施工機9は、フレキシブル管の挿入口91と、挿入口91の周囲に配置され、拡縮可能なチャック92と、ダストボックス93と、押ナットを収納するマガジン94と、フレキシブル管を切断する切断刃95とを有する。また、図示は省略するが、自動施工機9は、切断面やフレキシブル管の形状を撮影可能な撮影手段や、フレキシブル管の所定の山部を塑性変形させる変形手段を有している。その他、自動施工機には、漏電対策や、挿入口91に誤って指を入れた場合の対策(自動停止機能など)が施されていることが好ましい。
【0044】
ダストボックス93には、S1工程~S3工程で生じる被覆樹脂やフレキシブル管の切れ端が溜められる。自動施工機9にダストボックスを複数個設けるなどして、被覆樹脂とフレキシブル管を分別して溜められる構成とすることが好ましい。切断刃95は、挿入されたフレキシブル管に対して相対移動可能に設けられている。例えば、フレキシブル管の軸方向および径方向に移動可能とし、所定の軸方向位置でフレキシブル管に接近するよう径方向に沿って移動させることで、フレキシブル管を切断することができる。
【0045】
図8に示すように、自動施工機9に、矢印の向きにフレキシブル管が挿入されると、そのフレキシブル管の口径に合わせてチャック92の径が自動で拡縮する。フレキシブル管の口径は特に限定されず、例えば10A~25Aである。なお、図8の自動施工機9では、挿入口91が1個の1口タイプとしているが、挿入口が複数個の複数口タイプ(例えば4口タイプ)としてもよい。その場合、挿入口を回転させると、該当する挿入口に応じてチャック径が変化するような構成としてもよい。
【0046】
以下に、自動施工フローによる各工程について、図面を参照して説明する。なお、管継手としては、上述の第1実施形態の管継手を用いて説明する。
【0047】
(S1工程)
S1工程は、フレキシブル管を外側の被覆樹脂ごと切断する工程である。図9(a)に示すS1工程では、自動施工機内に挿入されたフレキシブル管T1の先端から2山程度が切断刃95によってあら切りされる。なお、S1工程の自動施工機による所要時間は5秒程度である。
【0048】
(S2工程)
S2工程は、被覆樹脂を剥離する工程である。図9(b)に示すS2工程では、S1工程で切断された切断面から12山程度の被覆樹脂が切断刃95によって切断される。この際、内側のフレキシブル管T1に傷をつけないように切断刃95の径方向への移動が制御される。なお、S2工程の自動施工機による所要時間は5秒程度である。
【0049】
(S3工程)
S3工程は、露出したフレキシブル管を谷部で切断する工程である。図9(c)に示すS3工程では、S1工程で切断された切断面から6~7山程度が切断刃95によって切断される。切断後、この工程で生じた切断面を撮影し、画像判定によって切断面の確認を行うことが好ましい。さらに、確認結果をトレーサビリティデータとして記録することが好ましい。これにより、フレキシブル管T1の切断面を精度良く管理することができる。なお、S3工程の自動施工機による所要時間は10秒程度である。
【0050】
(S4工程)
S4工程は、加工したフレキシブル管に押ナットを挿通する工程である。図10(a)に示すS4工程では、S3工程後のフレキシブル管T1に対して、マガジンから自動で供給された押ナット3が挿通される。押ナット3は、後続のS5工程で塑性変形する山部よりも、フレキシブル管の先端とは逆側にまで挿通される。挿通後、押ナット3のリップパッキン8eは、被覆樹脂T2の外周面に密着する。
【0051】
(S5工程)
S5工程は、フレキシブル管の押ナットよりも先端側の外周に、押ナット3から抜けない大きさの変形部を形成する工程である。図10(b)に示すS5工程では、自動施工機に設けられた変形手段によって、フレキシブル管T1の先端から4つ目と5つ目の山部の頂部が他の山部の頂部よりも外径側に拡がるように、フレキシブル管T1を変形する。変形部T11の周縁は他の山部よりも径方向外側に位置し、押ナット3に引っ掛かるように形成される。これにより抜け止め機能が施される。変形後、フレキシブル管の形状(変形部を含む)を撮影し、画像判定によって形状の確認を行うことが好ましい。さらに、確認結果をトレーサビリティデータとして記録することが好ましい。なお、S4工程およびS5工程の自動施工機による使用時間は10秒程度である。また、図10に示していないが、図6の第2実施形態の場合は、先端から1つ目と2つ目の山部(もしくは1つ目の山部のみ)の頂部が外径側に拡がるように、フレキシブル管の一部を軸方向に押し潰すことで変形部が形成される。
【0052】
(S6工程)
S6工程は、フレキシブル管に装着された押ナットをフレキシブル管とともに継手本体に挿入して係合させる工程である。この工程は、手動操作により実施される。図11に示すように、押ナット3およびフレキシブル管T1を管継本体2の一端側から挿入していくと、押ナット3の継手本体奥側の端部32の一部が、保持部材6の基部61に突き当たり、保持部材6が継手本体奥側に押し込まれる。それにより、保持部材6の突起621が継手本体2の係合溝23から外れる。保持部材6がさらに押し込まれると、ストップリング8cの拡径状態が解除されることによってストップリング8cが縮径し、押ナット3の外周溝31に嵌り込む。そして、ストップリング8cが内周溝22と外周溝31に跨がることで、継手本体2と押ナット3とが係合される(図4参照)。
【0053】
S6工程後、さらにフレキシブル管の接続状態を確認する作業を行ってもよい。例えば、図12に示すように、管継手1に接続されたフレキシブル管を矢印の向きに真っ直ぐ引張り、インジケータ7のかぎ爪部72に外れがなく、正常位置にあることを確認することで、接続状態をチェックできる。
【0054】
上記図9および図10のS1工程~S5工程では、自動施工機を用いた場合を示したが、手動操作によって各工程を実施してもよい。例えば、図13には、S1工程~S3工程の各工程の手順を示している。
【0055】
S1工程では、ステンレス鋼専用のフレキシブル管カッターを使用して、フレキシブル管を外側の被覆樹脂ごと切断する(図13(a)参照)。S2工程では、被覆樹脂専用のカッターを使用して、12山程度の被覆樹脂を剥離する(図13(b)参照)。S3工程では、フレキシブル管カッターを使用して、露出したフレキシブル管を6~7山程度残して谷部で切断する(図13(c)参照)。手動操作によるS1工程~S3工程の各所要時間は、40秒程度、30秒程度、60秒程度である。また、S3工程は他の工程に比べて作業スキルが必要になり、人手による施工では切断後のフレキシブル管にめくれ、欠損、へこみ、扁平、山潰れなどの変形が生じる場合がある。そのため、少なくともS3工程は、切断の品質を安定させるために自動施工機を用いて実施することが好ましい。
【0056】
なお、図示での説明は省略するが、S4工程およびS5工程も手動操作によって実施可能である。S5工程は、フレキシブル管の所定の山部を塑性変形させる専用の治具を用いて行なうことができる。
【符号の説明】
【0057】
1、1A:管継手(フレキシブル管用継手)
2、2A:継手本体
21:内孔
22:内周溝
23:係合溝
24:段部
25:おねじ部
26:外周溝
3:押ナット
31:外周溝
32:端部
321:段部
33:端部
4、4A:弾性部材
5、5A:シール部材
51:シール本体
52:押え部材
6:保持部材
61:基部
62:円筒部
621:突起
7:インジケータ
71:リング部
72:かぎ爪部
8a:スペーサ
8b:耐火パッキン
8c:ストップリング
8d:Oリング
8e:リップパッキン
8f:選択透過性部材
9:自動施工機
91:挿入口
92:チャック
93:ダストボックス
94:マガジン
95:切断刃
T1、T1A:フレキシブル管
T11、T11A:変形部
T12:先端部
T2:被覆樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
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