(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】化合物および有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
C07D 471/22 20060101AFI20250204BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20250204BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
C07D471/22 CSP
H05B33/14 B
C09K11/06 650
(21)【出願番号】P 2020216562
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮碕 栄吾
(72)【発明者】
【氏名】稲山 智
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光則
(72)【発明者】
【氏名】今村 敦
(72)【発明者】
【氏名】キム サンモ
(72)【発明者】
【氏名】カン ホソク
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111574519(CN,A)
【文献】特開2022-091124(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111606906(CN,A)
【文献】特開2008-247887(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110981871(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/22
H10K 50/10
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化合物
5~10、12~13、15~23、および25~27のいずれかである、化合物:
【化1】
【化2】
前記化合物16および17中、Phは無置換のフェニル基を表す。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物を含む有機層を有する、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記有機層は発光層である、請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物および有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
映像表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス素子の開発が活発に行われている。有機エレクトロルミネッセンス素子は、第1電極および第2電極から注入された正孔および電子を発光層で再結合させることで、発光層に含まれる有機発光材料を発光させて表示を実現する、いわゆる自発光型表示装置である。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子としては、例えば、第1電極、第1電極の上に配置された発光層、および発光層の上に配置された第2電極を含む構成の素子が知られている。この素子では、第1電極からは正孔が注入され、正孔は発光層に注入される。一方、第2電極からは電子が注入され、電子は発光層に注入される。発光層に注入された正孔と電子が再結合されることで、発光層内で励起子が生成される。そして、この素子は、励起子が基底状態に落ちる際に発生する光を利用して発光する。
【0004】
有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられる発光材料としては、種々の化合物が検討されている。特に、青色発光材料としては、ヘテロ原子を含む縮合環化合物が検討されている(特許文献1~4)。
【0005】
また、一重項励起子に加えて三重項励起子を利用して、有機エレクトロルミネッセンス素子をさらに効率的に発光させることが期待されている。このような背景から、近年、熱活性化遅延蛍光を示す材料の研究がなされている(非特許文献1)。
【0006】
TADF(Thermally Activated Delayed Fluorescence、熱活性化遅延蛍光)は、一重項準位と三重項準位とのエネルギー差(ΔEST)の小さな材料を用いた場合に、三重項励起子から一重項励起子への逆項間交差が熱的に生じる現象を利用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国特許出願公開第110790782号明細書
【文献】国際公開第2018/186404号
【文献】中国特許出願公開第107501311号明細書
【文献】国際公開第2015/102118号
【非特許文献】
【0008】
【文献】T.Taniguchi et al.,Chem.Lett.2019,48,1160-1163
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
有機エレクトロルミネッセンス素子では、広い色域を網羅するために、赤、緑および青(R,G、B)のそれぞれについて、高色純度の発光材料が要求されている。色純度は、発光スペクトル幅に関係しており、発光スペクトル幅が狭いほど高色純度となる。
【0010】
しかしながら、特に青色発光材料において、高色純度の発光の実現は難しいことが知られている。上記特許文献および非特許文献に記載の材料では、発光スペクトル幅が広く、色純度が十分ではないという問題がある。
【0011】
そこで本発明は、発光スペクトル幅が狭く、高色純度を実現することができ、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率を向上させうる、新規な青色発光材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は、以下の手段によって解決されうる。すなわち本発明の一形態は、下記式(1)および式(2)で表される化合物である:
【0013】
【0014】
上記式(1)および上記式(2)において、
Ar1~Ar5は、それぞれ独立して、環形成原子数6以上14以下の芳香族炭化水素環、または環形成原子数5以上14以下の芳香族複素環であり、
R1~R5は、それぞれ独立して、重水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のハロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアルキルチオ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、または置換もしくは無置換のアミノ基であり、
n1は、0、1、2、3、4、5、または6であり、
n2およびn5は、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、または8でありであり、
n3およびn4は、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、または7であり、
n1~n5のいずれかが2以上である場合、各R1、各R2、各R3、各R4または各R5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、
前記式(2)の2つの結合手*は、前記式(1)のAr1の環形成原子、前記式(1)のAr2の環形成原子、または前記式(1)のAr3の環形成原子と結合する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発光スペクトル幅が狭く、高色純度を実現することができ、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率を向上させうる、新規な青色発光材料が提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を示す断面模式図である。
【
図2】本発明の他の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を示す断面模式図である。
【
図3】本発明のその他の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を示す断面模式図である。
【
図4】化合物(15)の
1H-NMRスペクトルを示す図である。
【
図5】化合物(16)の
1H-NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で測定する。
【0018】
本明細書において、「XおよびYは、それぞれ独立して」とは、XおよびYが同一であってもよいし、異なっていてもよいことを意味する。
【0019】
また、本明細書において、「環から誘導された基」とは、環構造から、環形成原子に直接結合する水素原子を価数の分だけ外し、遊離原子価とした基を表す。
【0020】
<縮合環化合物>
本発明の一形態は、下記式(1)および(2)で表される化合物である:
【0021】
【0022】
上記式(1)および上記式(2)において、
Ar1~Ar5は、それぞれ独立して、環形成原子数6以上14以下の芳香族炭化水素環、または環形成原子数5以上14以下の芳香族複素環であり、
R1~R5は、それぞれ独立して、重水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のハロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアルキルチオ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、または置換もしくは無置換のアミノ基であり、
n1は、0、1、2、3、4、5、または6であり、
n2およびn5は、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、または8でありであり、
n3およびn4は、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、または7であり、
n1~n5のいずれかが2以上である場合、各R1、各R2、各R3、各R4または各R5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、
上記式(2)の2つの結合手*は、上記式(1)のAr1の環形成原子、上記式(1)のAr2の環形成原子、または上記式(1)のAr3の環形成原子と結合する。
【0023】
上記式(1)および上記式(2)において、n1、n2、n3、n4またはn5が0であるとは、これらに対応するR1、R2、R3、R4またはR5が存在しないことを意味する。すなわち、上記式(1)および上記式(2)において、置換基であるR1、R2、R3、R4またはR5が結合してもよいように記載された環形成原子は無置換であって、当該環形成原子には水素原子が結合していることを表す。
【0024】
以下、本発明に係る化合物を、単に「縮合環化合物」とも称する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子を、単に「有機EL素子」とも称する。
【0025】
本発明に係る縮合環化合物は、発光スペクトル幅が狭く、高色純度を実現することができ、また有機EL素子の発光効率を向上させうる。
【0026】
本発明者らは、上記構成によって課題が解決されるメカニズムを以下のように推定している。
【0027】
上記式(1)および上記式(2)で表される化合物は、芳香族炭化水素環または芳香族複素環が縮合した剛直な構造を有するため、励起状態の構造緩和が抑制される。その結果、当該化合物の青色発光スペクトルの幅は狭くなり高色純度を示す。また、上記式(1)および上記式(2)で表される化合物は、HOMOとLUMOとが空間的に分離されているため、ΔESTが小さくなり、有機EL素子の発光効率を向上させることができる。
【0028】
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。また、本明細書における他の推測事項についても同様に、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
【0029】
式(2)には、2つのアスタリスク「*」があるが、この2つの「*」は、式(1)で表される部分構造との結合点を表す。2つの「*」は、式(1)のAr1の環形成原子、式(1)のAr2の環形成原子、または式(1)のAr3の環形成原子と結合して、化合物を構成する。
【0030】
上記式(2)で表される基は、化合物中に1つ有してもよいし、2つ有してもよいし、3つ有してもよい。すなわち、上記式(2)で表される基の、上記式(1)で表される部分構造への結合する形態の例としては、以下のような例が挙げられる:
1.上記(2)で表される基を1つ有する形態
(1-1)式(2)で表される基がAr1の環形成原子のみに結合する形態
(1-2)式(2)で表される基がAr2の環形成原子のみに結合する形態
(1-3)式(2)で表される基がAr3の環形成原子のみに結合する形態
2.上記(2)で表される基を2つ有する形態
(2-1)1つの式(2)で表される基がAr1の環形成原子に結合し、もう1つの式(2)で表される基がAr2の環形成原子に結合する形態
(2-2)1つの式(2)で表される基がAr1の環形成原子に結合し、もう1つの式(2)で表される基がAr3の環形成原子に結合する形態
(2-3)1つの式(2)で表される基がAr2の環形成原子に結合し、もう1つの式(2)で表される基がAr3の環形成原子に結合する形態
3.上記(2)で表される基を3つ有する形態
(3-1)1つの式(2)で表される基がAr1の環形成原子に結合し、もう1つの式(2)で表される基がAr2の環形成原子に結合し、さらにもう1つの式(2)で表される基がAr3の環形成原子に結合する形態
が挙げられる。好ましくは、(1-1)上記式(2)で表される基がAr1の環形成原子のみに結合する形態である。
【0031】
上記式(1)および上記式(2)で表される化合物は、下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。下記式(3)で表される構造を有することにより、青色発光スペクトルの幅がより狭くなり、より高い色純度を実現することができ、また有機EL素子の発光効率をより向上させることができる。
【0032】
【0033】
上記式(3)において、
Ar31~Ar35は、それぞれ独立して、環形成原子数6以上14以下の芳香族炭化水素環、または環形成原子数5以上14以下の芳香族複素環であり、
R31~R35は、それぞれ独立して、重水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のハロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアルキルチオ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、または置換もしくは無置換のアミノ基であり、
m1は、0、1、2、3、4、5、または6であり、
m2およびm5は、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、または8であり、
m3およびm4は、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、または7であり、
m1~m5のいずれかが2以上である場合、各R31、各R32、各R33、各R34または各R35は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
上記式(3)において、m1、m2、m3、m4またはm5が0であるとは、これらに対応するR31、R32、R33、R34またはR35が存在しないことを意味する。すなわち、上記式(3)において、置換基であるR31、R32、R33、R34またはR35が結合してもよいように記載された環形成原子は無置換であって、当該環形成原子には水素原子が結合していることを表す。
【0035】
上記式(1)または上記式(2)で表される化合物は、下記式(4)で表される化合物であることもまた好ましい。下記式(4)で表される構造を有することにより、青色発光スペクトルの幅がより狭くなり、より高い色純度を実現することができ、また有機EL素子の発光効率をより向上させることができる。
【0036】
【0037】
上記式(4)において、
Ar41~Ar45は、それぞれ独立して、環形成原子数6以上14以下の芳香族炭化水素環、または環形成原子数5以上14以下の芳香族複素環であり、
R41~R45は、それぞれ独立して、重水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のハロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアルキルチオ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ基、または置換もしくは無置換のアミノ基であり、
l1は、0、1、2、3、4、5、または6であり、
l2およびl5は、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、または8であり、
l3およびl4は、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、または7であり、
l1~l5のいずれかが2以上である場合、各R41、各R42、各R43、各R44または各R45は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0038】
上記式(4)において、l1、l2、l3、l4またはl5が0であるとは、これらに対応するR41、R42、R43、R44またはR45が存在しないことを意味する。すなわち、上記式(4)において、置換基であるR41、R42、R43、R44またはR45が結合してもよいように記載された環形成原子は無置換であって、当該環形成原子には水素原子が結合していることを表す。
【0039】
上記式(1)~上記式(4)において、芳香族炭化水素環は、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族炭化水素環の環形成原子数は6以上14以下であり、6以上10以下であることが好ましく、6であることがより好ましい。環形成原子数が6以上14以下である芳香族炭化水素環の具体例としては、特に制限されないが、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられる。これらの中でも、ベンゼン環が好ましい。
【0040】
上記式(1)~上記式(4)において、芳香族複素環は、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族複素環としては、環形成原子として1以上のヘテロ原子(例えば、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S)、ケイ素原子(Si)等)を有し、残りの環形成原子が炭素原子(C)である環が挙げられる。これらの中でも、N、OまたはSが好ましく、Nがより好ましい。芳香族複素環の環形成原子数は、5以上14以下であり、5以上13以下であることが好ましい。また、芳香族複素環の環形成原子数は、5以上12以下であることがより好ましく、5以上10以下であることがさらに好ましい。芳香族複素環のヘテロ原子数は、特に制限されないが、1以上3以下であることが好ましい。また、芳香族複素環のヘテロ原子数は、1以上2以下であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。芳香族複素環としては、特に制限されないが、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、イソインドール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾ(c)チオフェン環、セレノフェン環、ベンゾセレノフェン環、ベンゾ(c)セレノフェン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、プリン環、ピラゾール環、インダゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピラジン環、キノキサリン環、アクリジン環、ピリミジン環、キナゾリン環、ピリダジン環、シンノリン環、フタラジン環、1,2,3-トリアジン環、1,2,4-トリアジン環、1,3,5-トリアジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環等が挙げられる。これらの中でも、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、またはピラジン環が好ましい。
【0041】
本発明の効果をより効率的に得るという観点から、本発明の一実施形態において、上記式(1)中のAr1は、ベンゼン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、またはピラジン環であることが好ましい。さらに、上記式(1)および上記式(2)中のAr1~Ar5は、全てベンゼン環であることがより好ましい。
【0042】
本発明の効果をより効率的に得るという観点から、本発明の一実施形態において、上記式(3)中のAr31は、ベンゼン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、またはピラジン環であることが好ましい。さらに、上記式(3)中のAr31~Ar35は、全てベンゼン環であることがより好ましい。
【0043】
本発明の効果をより効率的に得るという観点から、本発明の一実施形態において、上記式(4)中のAr41は、ベンゼン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、またはピラジン環であることが好ましい。さらに、上記式(4)中のAr41~Ar45は、全てベンゼン環であることがより好ましい。
【0044】
上記式(1)~上記式(4)において、アルキル基は、それぞれ、直鎖状、分岐状、または環状のいずれであってもよいが、直鎖状または分岐状であることが好ましい。アルキル基の炭素数は、特に制限されないが、1以上であることが好ましい。また、アルキル基の炭素数は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。アルキル基の具体例としては、特に制限されないが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、2-エチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、1-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘプチル基、2,2-ジメチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、2-ブチルヘプチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、2-エチルオクチル基、2-ブチルオクチル基、2-ヘキシルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0045】
上記式(1)~上記式(4)において、ハロアルキル基は、それぞれ、直鎖状、分岐状、または環状のいずれであってもよいが、直鎖状または分岐状であることが好ましい。ハロアルキル基の炭素数は、特に制限されないが、1以上であることが好ましい。また、ハロアルキル基の炭素数は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。ハロアルキル基の具体例としては、特に制限されないが、上記で例示したアルキル基の水素原子の少なくとも1つをハロゲン原子で置換した基等が挙げられる。なお、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれでもよい。さらに具体的には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、ヨードメチル基、ジヨードメチル基、トリヨードメチル基、フルオロエチル基、クロロエチル基、ブロモエチル基、ヨードエチル基等が挙げられる。
【0046】
上記式(1)~上記式(4)において、アルコキシ基は、それぞれ、直鎖状、分岐状、または環状のいずれであってもよいが、直鎖状または分岐状であることが好ましい。アルコキシ基の炭素数は、特に制限されないが、1以上であることが好ましい。また、アルコキシ基の炭素数は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。アルコキシ基の具体例としては、特に制限されないが、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、2-エチルブチルオキシ基、3,3-ジメチルブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、2-エチルペンチルオキシ基、4-メチル-2-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、1-メチルヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、2-ブチルヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4-メチルシクロヘキシルオキシ基、4-tert-ブチルシクロヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、1-メチルヘプチルオキシ基、2,2-ジメチルヘプチルオキシ基、2-エチルヘプチルオキシ基、2-ブチルヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、2-エチルオクチルオキシ基、2-ブチルオクチルオキシ基、2-ヘキシルオクチルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、アダマンチル基オキシ等が挙げられる。
【0047】
上記式(1)~上記式(4)において、アリール基とは、一部または全体として芳香族性を有する炭化水素環に由来する基を表す。アリール基が2以上の、一部または全体として芳香族性を有する炭化水素環を含む場合、これらの環は、互いに単結合で結合または縮合していてもよい。また、アリール基が2以上の、一部または全体として芳香族性を有する炭化水素環を含む場合、1つの原子が、任意の2つのこれらの環の環形成原子を兼ねていてもよい。アリール基の炭素数は、特に制限されないが、6以上30以下であることが好ましい。アリール基の炭素数は、6以上12以下であることがより好ましく、6であることがさらに好ましい。アリール基の具体例としては、特に制限されないが、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基、テルフェニル基、クォーターフェニル基、キンクフェニル基、セクシフェニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ベンゾフルオレニル基、クリセニル基、およびこれらの組み合わせからなる基等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
【0048】
上記式(1)~上記式(4)において、ヘテロアリール基とは、一部または全体として芳香族性を有する複素環に由来する基を表す。ヘテロアリール基が2以上の、一部または全体として芳香族性を有する複素環を含む場合、これらの環の一部または全部は、互いに単結合で結合していてもよい。ヘテロアリール基が2以上の、一部または全体として芳香族性を有する複素環、またはその他の環を含む場合、これらの環は、互いに縮合していてもよい。また、ヘテロアリール基が2以上の、一部または全体として芳香族性を有する複素環、またはその他の環を含む場合、1つの原子が、これらの環の環形成原子を兼ねていてもよい。ヘテロアリール基が有するヘテロ原子としては、特に限定されないが、例えば、環形成原子として1以上のヘテロ原子(例えば、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S)、ケイ素原子(Si)、セレン原子(Se)、ゲルマニウム原子(Ge))等が挙げられる。ヘテロアリール基の炭素数は3以上30以下が好ましい。また、ヘテロアリール基の環形成原子数は、特に制限されないが、5以上30以下であることが好ましい。さらに、ヘテロアリール基の環形成原子数は、5以上14以下であることがより好ましく、5以上13以下であることがさらに好ましい。ヘテロアリール基のヘテロ原子数は、特に制限されないが、1以上3以下であることが好ましい。また、ヘテロアリール基のヘテロ原子数は、1以上2以下であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。ヘテロアリール基の具体例としては、特に制限されないが、チエニル基、フラニル基、ピロニル基、イミダゾニル基、チアゾニル基、オキサゾニル基、オキサジアゾニル基、トリアゾニル基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、ピリジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フェノキサジニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、チエノチオフェニル基、ベンゾフラニル基、フェナントロリニル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、ジベンゾシロリル基、ジベンゾフラニル基、キサントニル基(xanthonyl基)、これらの組み合わせからなる基等が挙げられる。
【0049】
上記式(1)~上記式(4)において、アリールオキシ基の炭素数は、特に制限されないが、6以上30以下であることが好ましい。アリールオキシ基の炭素数は、6以上12以下であることがより好ましく、6であることがさらに好ましい。アリールオキシ基の具体例としては、特に制限されないが、フェニルオキシ基、ビフェニルオキシ基、ターフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、フルオレニルオキシ基、アントラセニルオキシ基、テルフェニルオキシ基、クォーターフェニルオキシ基、キンクフェニルオキシ基、トリフェニレニルオキシ基、ピレニルオキシ基、ベンゾフルオレニルオキシ基、クリセニルオキシ基、およびこれらの組み合わせからなる基等が挙げられる。
【0050】
上記式(1)~上記式(4)において、アリールチオ基の炭素数は、特に制限されないが、6以上30以下であることが好ましい。アリールチオ基の炭素数は、6以上12以下であることがより好ましく、6であることがさらに好ましい。アリールチオ基の具体例としては、特に制限されないが、フェニルチオ基、ビフェニルチオ基、ターフェニルチオ基、ナフチルチオ基、フルオレニルチオ基、アントラセニルチオ基、テルフェニルチオ基、クォーターフェニルチオ基、キンクフェニルチオ基、トリフェニレニルチオ基、ピレニルチオ基、ベンゾフルオレニルチオ基、クリセニルチオ基、およびこれらの組み合わせからなる基等が挙げられる。
【0051】
上記式(1)~上記式(4)において、ヘテロアリールオキシ基が有する環形成原子としてのヘテロ原子は、特に限定されないが、例えば、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S)、ケイ素原子(Si)等が挙げられる。ヘテロアリールオキシ基の環形成原子数は、特に制限されないが、5以上30以下であることが好ましい。また、ヘテロアリールオキシ基の環形成原子数は、5以上14以下であることがより好ましく、5以上13以下であることがさらに好ましい。ヘテロアリールオキシ基の環形成原子としてのヘテロ原子数は、特に制限されないが、1以上3以下であることが好ましい。また、ヘテロアリールオキシ基の環形成原子としてのヘテロ原子数は、1以上2以下であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。ヘテロアリールオキシ基の具体例としては、特に制限されないが、チエニルオキシ基、フラニルオキシ基、ピロニルオキシ基、イミダゾニルオキシ基、チアゾニルオキシ基、オキサゾニルオキシ基、オキサジアゾニルオキシ基、トリアゾニルオキシ基、ピリジルオキシ基、ビピリジルオキシ基、ピリミジルオキシ基、トリアジニルオキシ基、トリアゾリルオキシ基、アクリジニルオキシ基、ピリダジニルオキシ基、ピリジニルオキシ基、キノリニルオキシ基、キナゾリニルオキシ基、キノキサリニルオキシ基、フェノキサジニルオキシ基、フタラジニルオキシ基、ピリドピリミジニルオキシ基、ピリドピラジニルオキシ基、ピラジノピラジニルオキシ基、イソキノリニルオキシ基、インドリルオキシ基、カルバゾリルオキシ基、ベンゾオキサゾリルオキシ基、ベンゾイミダゾリルオキシ基、ベンゾチアゾリルオキシ基、ベンゾカルバゾリルオキシ基、ベンゾチオフェニルオキシ基、ジベンゾチオフェニルオキシ基、チエノチオフェニルオキシ基、ベンゾフラニルオキシ基、フェナントロリニルオキシ基、チアゾリルオキシ基、イソオキサゾリルオキシ基、オキサジアゾリルオキシ基、チアジアゾリルオキシ基、フェノチアジニルオキシ基、ジベンゾシロリルオキシ基、ジベンゾフラニルオキシ基、キサントニルオキシ基、およびこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。
【0052】
上記式(1)~上記式(4)において、ヘテロアリールチオ基が有する環形成原子としてのヘテロ原子は、特に限定されないが、例えば、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S)、ケイ素原子(Si)等が挙げられる。ヘテロアリールチオ基の環形成原子数は、特に制限されないが、5以上30以下であることが好ましい。また、ヘテロアリールチオ基の環形成原子数は、5以上14以下であることがより好ましく、5以上13以下であることがさらに好ましい。ヘテロアリールチオ基の環形成原子としてのヘテロ原子数は、特に制限されないが、1以上3以下であることが好ましい。また、ヘテロアリールチオ基の環形成原子としてのヘテロ原子数は、1以上2以下であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。ヘテロアリールチオ基の具体例としては、特に制限されないが、チエニルチオ基、フラニルチオ基、ピロニルチオ基、イミダゾニルチオ基、チアゾニルチオ基、オキサゾニルチオ基、オキサジアゾニルチオ基、トリアゾニルチオ基、ピリジルチオ基、ビピリジルチオ基、ピリミジルチオ基、トリアジニルチオ基、トリアゾリルチオ基、アクリジニルチオ基、ピリダジニルチオ基、ピリジニルチオ基、キノリニルチオ基、キナゾリニルチオ基、キノキサリニルチオ基、フェノキサジニルチオ基、フタラジニルチオ基、ピリドピリミジニルチオ基、ピリドピラジニルチオ基、ピラジノピラジニルチオ基、イソキノリニルチオ基、インドリルチオ基、カルバゾリルチオ基、ベンゾオキサゾリルチオ基、ベンゾイミダゾリルチオ基、ベンゾチアゾリルチオ基、ベンゾカルバゾリルチオ基、ベンゾチオフェニルチオ基、ジベンゾチオフェニルチオ基、チエノチオフェニルチオ基、ベンゾフラニルチオ基、フェナントロリニルチオ基、チアゾリルチオ基、イソオキサゾリルチオ基、オキサジアゾリルチオ基、チアジアゾリルチオ基、フェノチアジニルチオ基、ジベンゾシロリルチオ基、ジベンゾフラニルチオ基、キサントニルチオ基、およびこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。
【0053】
上記式(1)~上記式(4)において、ハロゲン原子としては、特に制限されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等が挙げられる。これらの中でも、フッ素原子が好ましい。
【0054】
上記式(1)~上記式(4)において、アミノ基は、-NH2基であっても、-NHRで表される一置換アミノ基であっても、-NRR’で表される二置換アミノ基であってもよい(ここで、RおよびR’は有機基である)。ここで、RおよびR’としては、特に制限されないが、例えば、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基等が挙げられる。なお、RおよびR’は、同一であっても異なっていてもよい。
【0055】
RおよびR’におけるアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、それぞれ、直鎖状、分岐状、または環状のいずれであってもよいが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基の炭素数は、特に制限されないが、1以上であることが好ましい。アルケニル基、アルキニル基の炭素数は、特に制限されないが、それぞれ、2以上であることが好ましい。また、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基の炭素数は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。アルキル基の具体例としては、特に制限されないが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、2-エチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、1-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘプチル基、2,2-ジメチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、2-ブチルヘプチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、2-エチルオクチル基、2-ブチルオクチル基、2-ヘキシルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、アダマンチル基等が挙げられる。アルケニル基の具体例としては、特に制限されないが、ビニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-プロペニル基等が挙げられる。アルキニル基の具体例としては、特に制限されないが、2-ブチニル基、3-ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、デシニル基等が挙げられる。
【0056】
RおよびR’におけるアリール基は、上記の説明と同様である。また、RおよびR’におけるアリール基は、環形成原子数6以上の芳香族炭化水素環から誘導された一価の基であることが好ましい。なお、環形成原子数6以上の芳香族炭化水素環は、上記の説明と同様である。
【0057】
RおよびR’におけるヘテロアリール基は、上記の説明と同様である。また、ヘテロアリール基は、環形成原子数5以上の芳香族複素環から誘導された一価の基であることが好ましい。なお、環形成原子数5以上の芳香族複素環は、上記の説明と同様である。
【0058】
アミノ基としては、-NRR’で表される二置換アミノ基であることが好ましい、この際、RおよびR’は、それぞれ独立して、アリール基またはヘテロアリール基である基が好ましい。すなわち、アミノ基としては、N,N-ジアリールアミノ基、N,N-ジヘテロアリールアミノ基、N-アリール-N-ヘテロアリールアミノ基が好ましい。また、RおよびR’は、それぞれ独立して、環形成原子数6以上30以下の芳香族炭化水素環から誘導された一価の基、または環形成原子数5以上30以下の芳香族複素環から誘導された一価の基である基がより好ましい。そして、RおよびR’は、環形成原子数6以上30以下の芳香族炭化水素環から誘導された一価の基である基がさらに好ましい。ここで、芳香族炭化水素環の好ましい環形成原子数および具体例もまた、上記の説明と同様である。また、芳香族複素環の好ましい環形成原子数および具体例もまた、上記の説明と同様である。これらの中でも、N,N-ジフェニルアミノ基が特に好ましい。
【0059】
本発明の効果をより効率的に得るという観点から、上記式(1)および式(2)において、R1~R5のうちの少なくとも1つは、重水素原子、ハロゲン原子、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1以上20以下の無置換のアルキル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1以上20以下の無置換のハロアルキル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1以上20以下の無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数3以上30以下のヘテロアリール基、または-NRR’で表される二置換アミノ基であることが好ましい。この際、RおよびR’は、それぞれ独立して、環形成原子数6以上30以下の芳香族炭化水素環から誘導された一価の基、または環形成原子数5以上30以下の芳香族複素環から誘導された一価の基であることが好ましい。また、R1~R5のうちの少なくとも1つは、重水素原子、ハロゲン原子、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1以上20以下の無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基であることがより好ましい。
【0060】
本発明の効果をより効率的に得るという観点から、上記式(3)において、R31~R35のうちの少なくとも1つは、重水素原子、ハロゲン原子、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1以上20以下の無置換のアルキル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1以上20以下の無置換のハロアルキル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1以上20以下の無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数3以上30以下のヘテロアリール基、または-NRR’で表される二置換アミノ基であることが好ましい。この際、RおよびR’は、それぞれ独立して、環形成原子数6以上30以下の芳香族炭化水素環から誘導された一価の基、または環形成原子数5以上30以下の芳香族複素環から誘導された一価の基であることが好ましい。また、R1~R5のうちの少なくとも1つは、重水素原子、ハロゲン原子、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1以上20以下の無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基であることがより好ましい。
【0061】
本発明の効果をより効率的に得るという観点から、上記式(4)において、R41~R45のうちの少なくとも1つは、重水素原子、ハロゲン原子、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1以上20以下の無置換のアルキル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1以上20以下の無置換ハロアルキル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1以上20以下の無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数3以上30以下のヘテロアリール基、または-NRR’で表される二置換アミノ基であることが好ましい。この際、RおよびR’は、それぞれ独立して、環形成原子数6以上30以下の芳香族炭化水素環から誘導された一価の基、または環形成原子数5以上30以下の芳香族複素環から誘導された一価の基であることが好ましい。また、R1~R5のうちの少なくとも1つは、重水素原子、ハロゲン原子、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1以上20以下の無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基であることがより好ましい。
【0062】
上記式(1)~上記式(4)のR1~R5、R31~R35およびR41~R45において、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、およびアミノ基は、それぞれ、置換された基であってもよい。置換基としては、特に制限されないが、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、および重水素原子で置換されたアルキル基等が挙げられる。これらの中でも、置換基としては、アルキル基が好ましく、メチル基、tert-ブチル基、またはフッ素原子がより好ましい。そして、置換基としては、メチル基、またはフッ素原子がさらに好ましい。また、上記式(1)~上記式(4)において、アミノ基が一置換アミノ基または二置換アミノ基であって、アミノ基を構成するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基に置換基が結合する場合、置換基としては、例えば、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。アミノ基が一置換アミノ基または二置換アミノ基であって、アミノ基を構成するアリール基、ヘテロアリール基に置換基が結合する場合、置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、重水素原子で置換されたアルキル基等が挙げられる。アミノ基がN,N-ジアリールアミノ基、N,N-ジヘテロアリールアミノ基、N-アリール-N-ヘテロアリールアミノ基である場合、置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、および重水素原子で置換されたアルキル基等が挙げられる。この場合も、置換基としては、アルキル基またはハロゲン原子が好ましく、メチル基、tert-ブチル基、またはフッ素原子がより好ましい。そして、置換基としては、メチル基、またはフッ素原子がさらに好ましい。なお、置換基としてのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、および重水素原子で置換されたアルキル基のベースとなるアルキル基は、それぞれ、上記の説明と同様である。
【0063】
なお、上記置換基は同種の基を置換することはない。例えば、アルキル基を置換する置換基にはアルキル基は含まれない。また、例えば、ハロアルキル基を置換する置換基にはアルキル基およびハロゲン原子は含まれない。
【0064】
上記式(1)~上記式(4)のR1~R5、R31~R35およびR41~R45の特に好ましい具体例としては、フッ素原子、メチル基、tert-ブチル基、フェニル基、tert-ブチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基等が挙げられる。ただし、上記式(1)~上記式(4)のR1~R5、R31~R35およびR41~R45は、これらに限定されるものではない。
【0065】
本発明の一形態に係る縮合環化合物のHOMO準位は、特に制限されないが、-6.5eV以上であることが好ましい。また、当該HOMO準位は、-6.3eV以上であることがより好ましい。この範囲であると、有機EL素子の駆動電圧がより低下する。なお、発光層を構成する他の一般的な材料のエネルギーダイヤグラムとの整合の観点および、大気中での安定性の観点から、当該HOMO準位は、-5.0eV以下であることが好ましい。
【0066】
本発明の一形態に係る縮合環化合物のLUMO準位は、特に制限されないが、-2.5eV以下であることが好ましい。また、当該LUMO準位は、-2.6eV以下であることがより好ましい。この範囲であると、有機EL素子の駆動電圧がより低下する。発光層を構成する他の一般的な材料のエネルギーダイヤグラムとの整合の観点から、当該LUMO準位は、-4.0eV以上であることが好ましい。
【0067】
HOMO準位は大気中光電子分光装置を用いて、LUMO準位は大気中光電子分光装置および分光光度計を用いて、それぞれ測定・算出することができる。なお、測定・算出方法の詳細は実施例に記載する。
【0068】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物のフォトルミネッセンス(PL)でのピーク波長は、特に制限されないが、430nm以上であることが好ましい。また、当該ピーク波長は、435nm以上であることがより好ましく、440nm以上であることがさらに好ましい。また、当該ピーク波長は、500nm以下であることが好ましく、490nm以下であることがより好ましく、480nm以下であることがさらに好ましい。これらの範囲であると、青色発光の色味がより良好となる。
【0069】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物の上記PLでのピーク波長を有するピークにおける、発光強度が半減する半値幅(FWHM)は、値が小さい(狭い)ほど好ましい。具体的には、当該半値幅は、45nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、35nm以下であることがさらに好ましい。これらの範囲であると、発光の色純度がより向上する。
【0070】
PLでのピーク波長およびPLでの半値幅は、分光蛍光光度計を用いて、それぞれ測定・算出することができる。なお、測定・算出方法の詳細は実施例に記載する。
【0071】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物の蛍光スペクトルの一重項エネルギーS1から、燐光スペクトルの三重項エネルギーT1を差し引いた値であるΔESTは、値が小さいほど好ましい。具体的には、当該ΔESTは、0.5eV以下であることが好ましく、0.4eV以下であることがより好ましく、0.3eV以下であることがさらに好ましい。これらの範囲であると、より発光効率が向上する。
【0072】
一重項エネルギーS1、三重項エネルギーT1およびΔESTは、分光蛍光光度計を用いて、77Kにて蛍光スペクトルおよび燐光スペクトルを測定することで、それぞれ測定、算出することができる。なお、測定・算出方法の詳細は実施例に記載する。
【0073】
上記式(3)で表される化合物のより具体的な例(化合物1~22)を以下に示す。ただし、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
【0074】
【0075】
【0076】
ここで、上記化合物16および17中、Phは無置換のフェニル基を表す。
【0077】
また、上記式(4)で表される化合物のより具体的な例(化合物23~27)を以下に示す。ただし、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
【0078】
【0079】
これら化合物1~27の中でも、化合物1、2、3が好ましい。
【0080】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物の合成方法については、特に制限されず、公知の合成方法の知見に基づき合成することができる。より詳細には、実施例に記載の方法や、実施例に記載の方法に準じて合成することができる。例えば、実施例に記載の方法において、原料や反応条件等を変更することや、一部の手順を追加または除外すること、または公知の合成方法を適宜組み合わせること等によって合成することができる。
【0081】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物の構造の確認方法は、特に制限されない。本発明に係る含窒素縮合環化合物の構造は、例えば、公知の方法(例えば、NMR、LC-MS等)により確認することができる。
【0082】
<有機エレクトロルミネッセンス素子>
本発明の他の一形態は、上記の縮合環化合物を含む有機層を有する、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。かような有機エレクトロルミネッセンス素子によれば、発光スペクトルの幅が狭く、高色純度の発光を実現することができ、また、高い発光効率を実現することができる。
【0083】
以下、図を参照して、本形態に係る有機EL素子について、詳細に説明する。
図1~3は、本形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を示す模式図である。
【0084】
図1~3は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を示す断面模式図である。しかしながら、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の構造は、
図1~3に示す形態に限定されるものではない。
【0085】
図1は、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を示す断面模式図である。本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子10は、順に積層された基板1、第1電極2、正孔輸送領域3、発光層4、電子輸送領域5、および第2電極6を含む。
【0086】
図2は、本発明の他の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を示す断面模式図である。本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子10は、順に積層された基板1、第1電極2、正孔輸送領域3、発光層4、電子輸送領域5、および第2電極6を含む。
図2では、正孔輸送領域3は、順に積層された正孔注入層31および正孔輸送層32を含む。また、
図2では、電子輸送領域5は、順に積層された電子輸送層52および電子注入層51を含む。
【0087】
図3は、本発明のその他の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を示す断面模式図である。本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子10は、順に積層された基板1、第1電極2、正孔輸送領域3、発光層4、電子輸送領域5、および第2電極6を含む。
図3では、正孔輸送領域3は、順に積層された正孔注入層31、正孔輸送層32、および電子阻止層33を含む。また、
図3では、電子輸送領域5は、順に積層された正孔阻止層53、電子輸送層52、および電子注入層51を含む。
【0088】
本発明に係る縮合環化合物は、例えば、第1電極2と第2電極6との間に配置されたいずれかの有機層中に含まれる。有機層としては、正孔注入層31、正孔輸送層32、発光層4、電子輸送層52、電子注入層等51が挙げられる。本発明に係る縮合環化合物は、発光層4に含まれることがより好ましい。
【0089】
本発明の一実施形態としては、例えば、第1電極、第2電極、および単一または複数の発光層を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子が挙げられる。第2電極は、第1電極の上に配置されることが好ましい。
【0090】
本明細書において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」または「上部に」あるとする場合、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間に他の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」または「下部に」にあるとする場合、これは他の部分の「直下」にある場合だけでなく、その中間に他の部分がある場合も含む。また、本明細書において、「上に」配置されるとは、上部だけでなく下部または下側の面に配置される場合も含む。
【0091】
上記したように、本発明に係る縮合環化合物は、発光層に含まれることが好ましい。以下、本発明に係る縮合環化合物が発光層に含まれる形態について説明する。なお、発光層に含まれる本発明に係る縮合環化合物は、1種単独でもよいし2種以上組み合わせてもよい。
【0092】
<発光層>
発光層は、単一の物質からなる単一の層であってもよく、複数の互いに異なる物質からなる単一の層であってもよい。また、発光層は、複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造であってもよい。
【0093】
発光層は、特に制限されないが、例えば、ホスト材料およびドーパント材料を含んでいてもよい。上記の縮合環化合物は、ホスト材料として用いても、ドーパント材料として用いてもよいが、ドーパント材料として用いることが好ましい。
【0094】
さらに、発光層は、公知のホスト材料を含んでいてもよい。その例としては、例えば、DPEPO(ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド)、CBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、mCBP(3,3’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、mCP(1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン)、PPF(2,8-ビス(ジフェニルホスホリル)ジベンゾ[b,d]フラン)、TcTa(4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン)、およびTPBi(1,3,5-トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼン)のうち少なくとも1つを含んでもよい。ただし、これに限らず、例えば、Alq3(トリス(8-ヒドロキシキノリノ)アルミニウム)、PVK(ポリ(n-ビニルカルバゾール)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(カルバゾール-9-イル)-トリフェニルアミン)、TPBi(1,3,5-トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼン)、TBADN(3-tert-ブチル-9,10-ジ(ナフト-2-イル)アントラセン)、DSA(ジスチリルアリレン)、CDBP(4,4’-ビス(9-カルバゾリル)-2,2’-ジメチル-ビフェニル)、MADN(2-メチル-9,10-ビス(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、DPEPO(ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド)、CP1(ヘキサフェニルシクロトリホスファゼン)、UGH2(1,4-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン)、DPSiO3(ヘキサフェニルシクロトリシロキサン)、DPSiO4(オクタフェニルシクロテトラシロキサン)、PPF(2,8-ビス(ジフェニルホスホリル)ジベンゾフラン)等を含んでいてもよい。
【0095】
また、発光層は、公知のドーパント材料を含んでいてもよい。例えば、スチリル誘導体(例えば、1,4-ビス[2-(3-N-エチルカルバゾリル)ビニル]ベンゼン(BCzVB)、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-[(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]スチルベン(DPAVB)、N-(4-((E)-2-(6-((E)-4-(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン-2-イル)ビニル)フェニル)-N-フェニルベンゼンアミン(N-BDAVBi)、ペリレンおよびその誘導体(例えば、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(TBP))、ピレンおよびその誘導体(例えば、1,1-ジピレン、1,4-ジピレニルベンゼン、1,4-ビス(N,N-ジフェニルアミノ)ピレン)、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(TBP))等を含んでいてもよい。
【0096】
発光層の厚さは、特に制限されないが、1nm以上100nm以下であることが好ましく、10nm以上70nm以下であることがより好ましい。
【0097】
発光層の成膜方法は、特に制限されないが、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、LB法(Langmuir-Blodgett)、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)等の公知の成膜方法が挙げられる。
【0098】
有機エレクトロルミネッセンス素子の発光波長は、特に制限されない。しかしながら、有機エレクトロルミネッセンス素子は、430nm以上500nm以下の波長領域にピークを有する光を発光することが好ましい。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、435nm以上490nm以下の波長領域にピークを有する光を発光することがより好ましく、440nm以上480nm以下の波長領域にピークを有する光を発光することがさらに好ましい。
【0099】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルの半値幅FWHM(Full Width at half Maximum)は、小さいほど好ましい。また、当該発光スペクトルの半値幅FWHMは、45nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、35nm以下であることがさらに好ましい(下限値0nm超)。
【0100】
さらに以下では、発光層以外の各領域および各層について詳細に説明する。
【0101】
(基板1)
有機エレクトロルミネッセンス素子10は、基板1を有していてもよい。基板1は、一般的な有機エレクトロルミネッセンス素子で使用される基板を使用することができる。例えば、基板1は、ガラス(glass)基板、シリコン(silicon)基板などの半導体基板、または透明なプラスチック(plastic)基板等であってもよい。
【0102】
(第1電極2)
第1電極2は、導電性を有する。本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子において、第1電極2は正極であることが好ましい。また、第1電極2は画素電極であることが好ましい。そして、第1電極2は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極であることが好ましい。
【0103】
第1電極2を構成する材料としては、特に制限されないが、例えば、金属、金属合金または導電性化合物等が挙げられる。第1電極2が透過型電極であれば、第1電極2は透明金属酸化物、例えば、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO(zinc oxide)、ITZO(indium tin zinc oxide)等を含むことが好ましい。また、第1電極2が半透過型電極または反射型電極であれば、第1電極2はAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらの化合物や混合物(例えば、AgとMgの混合物)等を含むことが好ましい。
【0104】
第1電極2は、単一の物質からなる単一の層であってもよく、複数の互いに異なる物質からなる単一の層であってもよい。また、第1電極2は、複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造であってもよい。
【0105】
第1電極2の厚さは、特に制限されないが、10nm以上1000nm以下であることが好ましく、100nm以上300nm以下であることがより好ましい。
【0106】
(正孔輸送領域3)
正孔輸送領域3は第1電極2の上に提供される。正孔輸送領域3は、正孔注入層31、正孔輸送層32、正孔バッファ層(図示せず)、および電子阻止層33のうち少なくとも1つを含む。
【0107】
正孔輸送領域3は、単一の物質からなる単一の層であってもよく、複数の互いに異なる物質からなる単一の層であってもよい。また、正孔輸送領域3は、複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造であってもよい。
【0108】
例えば、正孔輸送領域3は、正孔注入層31または正孔輸送層32の単一の層の構造を有していてもよい。また、例えば、正孔輸送領域3は、正孔注入材料および正孔輸送材料で形成された単一の層の構造を有していてもよい。また、例えば、正孔輸送領域3は、第1電極2から順に積層された、正孔注入層31/正孔輸送層32の構造を有していてもよい。また、例えば、正孔輸送領域3は、正孔注入層31/正孔輸送層32/正孔バッファ層(図示せず)の構造を有していてもよい。また、例えば、正孔輸送領域3は、第1電極2から順に積層された、正孔注入層31/正孔バッファ層(図示せず)の構造を有していてもよい。また、例えば、正孔輸送領域3は、第1電極2から順に積層された、正孔輸送層32/正孔バッファ層(図示せず)の構造を有していてもよい。また、例えば、正孔輸送領域3は、第1電極2から順に積層された、正孔注入層31/正孔輸送層32/電子阻止層33の構造を有していてもよい。ただし、正孔輸送領域の構造はこれらに限定されるものではない。
【0109】
正孔注入層31や、その他の正孔輸送領域3を構成する各層は、特に制限されないが、例えば、公知の正孔注入材料を含んでいてもよい。正孔注入材料として、例えば、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、DNTPD(N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-[4-フェニル-m-トリル-アミノ)-フェニル]-ビフェニル-4,4’-ジアミン)、m-MTDATA(4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、TDATA(4,4’,4”-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、2-TNATA(4,4’,4”-トリス{N,-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ}-トリフェニルアミン)、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルフォナート))、PANI/DBSA(ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸)、PANI/CSA(ポリアニリン/カンファースルホン酸)、PANI/PSS(ポリアニリン)/ポリ(4-スチレンスルフォナート)、NPB(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン)、トリフェニルアミンを含むポリエテールケトン(TPAPEK)、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、HAT-CN(ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル)等が挙げられる。
【0110】
また、正孔輸送層32や、その他の正孔輸送領域3を構成する各層は、特に制限されないが、例えば、公知の正孔輸送材料を含んでいてもよい。正孔輸送材料としては、例えば、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール系誘導体、フルオレン系誘導体、TPD(N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン)等のトリフェニルアミン系誘導体、NPB(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン)、TAPC(4,4’-シクロへキシリデンビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン])、HMTPD(4,4’-ビス[N,N’-(3-トリル)アミノ]-3,3’-ジメチルビフェニル)、mCP(1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン)、下記の化合物HTP1、下記の化合物AD1、下記の化合物P-1、下記の化合物FA-14等が挙げられる。
【0111】
【0112】
正孔輸送領域3は、上記の正孔注入材料や正孔輸送材料以外にも、導電性を向上するために電荷生成物質をさらに含んでいてもよい。電荷発生物質は、正孔輸送領域3内、またはこれを構成する各層内に、均一にまたは不均一に分散される。電荷発生物質としては、特に制限されないが、例えば、公知の電荷発生物質が挙げられる。電荷発生物質としては、例えば、p-ドーパント(dopant)等が挙げられる。p-ドーパントとしては、例えば、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)、F4-TCNQ(2,3,5,6-テトラフルオロ-テトラシアノキノジメタン)等のキノン誘導体、タングステン酸化物、モリブデン酸化物等の金属酸化物、シアノ基含有化合物等が挙げられる。
【0113】
正孔バッファ層(図示せず)は、発光層4から放出される光の波長による共振距離を補償して光放出効率を増加させる。正孔バッファ層(図示せず)に含まれる材料としては、特に制限されず、正孔バッファ層(図示せず)に使用される材料を使用することができる。例えば、上記のような正孔輸送領域3に含まれうる化合物を使用することができる。
【0114】
電子阻止層33は、電子輸送領域5から正孔輸送領域3への電子の注入を防止する役割をする層である。電子阻止層33に含まれる材料としては、特に制限されず、公知の電子阻止層33に使用される材料を使用することができる。
【0115】
正孔輸送領域3の厚さは、特に制限されないが、1nm以上1000nm以下であることが好ましく、10nm以上500nm以下であることがより好ましい。また、正孔輸送領域3を構成する各層については、正孔注入層31の厚さは、特に制限されないが、3nm以上100nm以下であることが好ましい。正孔輸送層32の厚さは、特に制限されないが、3nm以上100nm以下であることが好ましい。電子阻止層33の厚さは、特に制限されないが、1nm以上100nm以下であることが好ましい。なお、正孔バッファ層(図示せず)の厚さは、正孔バッファ層の機能を発揮しつつ、有機エレクトロルミネッセンス素子としての機能を妨げない範囲であれば、特に制限されない。正孔輸送領域3、正孔注入層31、正孔輸送層32、または電子阻止層33の厚さが上記範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇を抑制しつつ、より良好な正孔輸送特性が得られる。
【0116】
正孔輸送領域3や、これを構成する各層の成膜方法は、特に制限されないが、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、LB法、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法等の公知の成膜方法が挙げられる。
【0117】
(発光層4)
発光層4は正孔輸送領域3の上に配置される。発光層4の詳細は、上記説明した通りである。
【0118】
(電子輸送領域5)
電子輸送領域5は発光層4の上に配置される。電子輸送領域5は、電子注入層51、電子輸送層52および正孔阻止層53のうち少なくとも1つを含むが、実施形態はこれに限定されない。
【0119】
電子輸送領域5は、単一の物質からなる単一の層であってもよく、複数の互いに異なる物質からなる単一の層であってもよい。また、電子輸送領域5は、複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造であってもよい。例えば、電子輸送領域5は、電子注入層51または電子輸送層52の単一の層の構造を有していてもよい。また、例えば、電子輸送領域5は、電子注入材料および電子輸送材料からなる単一の層の構造を有していてもよい。また、例えば、電子輸送領域5は、発光層4から順に積層された、電子輸送層52/電子注入層51の構造を有していてもよい。また、例えば、電子輸送領域5は、発光層4から順に積層された、正孔阻止層53/電子輸送層52/電子注入層51の構造を有していてもよい。ただし、電子輸送領域5の構造はこれらに限定されるものではない。
【0120】
電子注入層51や、その他の電子輸送領域5を構成する各層は、特に制限されないが、例えば、公知の電子注入材料を含んでいてもよい。電子注入材料としては、例えば、LiF、Liq((8-キノリノラト)リチウム)、Li2O、BaO、NaCl、CsF、Ybのようなランタン族金属、またはRbClのようなハロゲン化金属等が挙げられる。電子注入層51は、特に制限されないが、例えば、後述する電子輸送物質と、絶縁性の有機金属塩とを含んでいてもよい。有機金属塩としては、特に制限されないが、例えば、エネルギーバンドギャップが4eV以上の物質であってもよい。有機金属塩としては、例えば、有機金属塩は、酢酸金属塩、安息香酸塩金属塩、アセト酢酸金属塩、アセチルアセトナート金属塩、またはスステアリン酸金属塩等が挙げられる。
【0121】
電子輸送層52や、その他の電子輸送領域5を構成する各層は、特に制限されないが、例えば、公知の電子輸送材料を含んでいてもよい。電子輸送材料としては、例えば、アントラセン系化合物、Alq3(トリス(8-ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム)、1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン、2,4,6-トリス(3’-ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-(N-フェニルベンゾイミダゾリル-1-イルフェニル)-9,10-ジナフチルアントラセン、TPBi(1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェニル)、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、TAZ(3-(4-ビフェニル)-4-フェニル-5-tert-ブチルフェニル-1,2,4-トリアゾール)、NTAZ(4-(ナフタレン-1-イル)-3,5-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾール)、tBu-PBD(2-(4-ビフェニル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラト-N1,O8)-(1,1’-ビフェニル-4-オラト)アルミニウム)、Bebq2(ベリリウムビス(ベンゾキノリン-10-オラト)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、KLET-01、KLET-02、KLET-03、KLET-10、KLET-M1(以上、ケミプロ化成株式会社製)等が挙げられる。
【0122】
正孔阻止層53は、正孔輸送領域3から電子輸送領域5への正孔の注入を防止する役割をする層である。正孔阻止層53に含まれる材料としては、特に制限されず、公知の正孔阻止層53に使用される材料を使用することができる。正孔阻止層53は、例えば、公知の正孔阻止材料を含んでいてもよい。正孔阻止材料としては、例えば、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)等が挙げられる。
【0123】
電子輸送領域5の厚さは、特に制限されないが、0.1nm以上210nm以下であることが好ましく、100nm以上150nm以下であることがより好ましい。また、電子輸送領域5を構成する各層については、電子輸送層52の厚さは、特に制限されないが、10nm以上100nm以下であることが好ましく、15nm以上50nm以下であることが好ましい。正孔阻止層53の厚さは、特に制限されないが、10nm以上100nm以下であることが好ましく、15nm以上50nm以下であることがより好ましい。電子注入層51の厚さは、特に制限されないが、例えば、0.1nm以上10nm以下であることが好ましく、0.3nm以上9nm以下であることがより好ましい。電子注入層51の厚さが上記範囲である場合、実質的な駆動電圧の上昇を抑制しつつ、より良好な電子注入特性が得られる。また、電子輸送領域5、電子注入層51、電子輸送層52または正孔阻止層53の厚さが上記範囲である場合、実質的な駆動電圧の上昇を抑制しつつ、より良好な電子輸送特性が得られる。
【0124】
電子輸送領域5や、これを構成する各層の成膜方法は、特に制限されないが、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、LB法、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法等の公知の成膜方法が挙げられる。
【0125】
第2電極6は、電子輸送領域5の上に配置される。第2電極6は、導電性を有する。本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子において、第2電極6は、共通電極または負極であることが好ましい。そして、第2電極6は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極であることが好ましい。
【0126】
第2電極6を構成する材料としては、特に制限されないが、例えば、金属、金属合金または導電性化合物等が挙げられる。第2電極6が透過型電極であれば、第2電極6は、透明金属酸化物、例えば、ITO、IZO、ZnO、ITZO等を含むことが好ましい。第2電極6が半透過型電極または反射型電極であれば、第2電極6は、Ag、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらを含む化合物や混合物(例えば、AgとMgの混合物)等を含むことが好ましい。
【0127】
第2電極6は、単一の物質からなる単一の層であってもよく、複数の互いに異なる物質からなる単一の層であってもよい。また、第2電極6は、複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造であってもよい。
【0128】
第2電極6の厚さは、特に制限されないが、10nm以上1000nm以下であることが好ましい。
【0129】
第2電極6は、補助電極(図示せず)と連結されていてもよい。第2電極6が補助電極と連結されることで、第2電極6の抵抗をより減少させることができる。
【0130】
また、第2電極6の上には、キャッピング層(図示せず)がさらに配置されていてもよい。キャッピング層(図示せず)は、特に制限されないが、例えば、α-NPD、NPB、TPD、m-MTDATA、Alq3、CuPc、TPD15(N4,N4,N4’,N4’-テトラ(ビフェニル-4-イル)ビフェニル-4,4’-ジアミン)、TCTA(4,4’,4”-トリ-9-カルバゾリルトリフェニルアミン)、N,N’-ビス(ナフタレン-1-イル)等を含む層であってもよい。
【0131】
なお、上記の各層および各電極を構成する材料は、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0132】
図1~3の有機エレクトロルミネッセンス素子10において、上記の縮合環化合物、または上記の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、発光層4に含まれることが好ましいが、発光層4以外の層に含まれていてもよい。また、上記の縮合環化合物、または上記の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、発光層4と、発光層4以外の層とに含まれていてもよい。
【0133】
図1~3の有機エレクトロルミネッセンス素子10において、第1電極2と第2電極6にそれぞれ電圧が印加されることで、第1電極2から注入された正孔(hole)は正孔輸送領域3を介して発光層4に移動し、第2電極6から注入された電子は電子輸送領域5を経て発光層4に移動する。電子と正孔は発光層4で再結合して励起子(exciton)を生成し、励起子が励起状態から基底状態に落ちながら発光する。
【実施例】
【0134】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、化合物の質量分析および核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定は、以下の方法で行った。
【0135】
(質量分析)
化合物をテトラヒドロフランに0.1質量%の濃度で溶解させた後、LC-MS測定装置1260 Infinity-4重極6100MS(アジレントテクノロジー株式会社製)を用いて質量分析を行った。
【0136】
(核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定)
化合物を重THF(THF-d8)に溶解させ、核磁気共鳴スペクトル測定装置AdvanceIII(Bruker社製、300 MHz)を用いて、室温でプロトンNMR(1H-NMR)スペクトルを測定した。
【0137】
[実施例1]
(合成例1:中間体(11)の合成)
【0138】
【0139】
1L三口フラスコにm-ジブロモベンゼン(10)(21g、89mmol)、アニリン(17.4g、187mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(21.4g、223mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(815mg、0.89mmol)、および(±)BINAP(2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、1.66g、2.67mmol)を入れた後にトルエン(300mL)を加え、窒素雰囲気下で3時間加熱還流させた。室温まで冷却後、反応溶液をフロリジルとシリカゲルパッドとに通した後、溶媒を留去した。得られた残渣を、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン-酢酸エチル)により精製することにより、中間体(11)を得た(収量7.5g、収率32%)。
【0140】
(合成例2:中間体(13)の合成)
【0141】
【0142】
100mLシュレンク管に、中間体(11)(1.56g、6.0mmol)、2-ヨード-1,3-ベンゼンジカルボン酸ジメチル(化合物(12)、5.8g、18mmol)、炭酸セシウム(5.5g、18mmol)、銅粉末(114mg,1.8mmol)、およびヨウ化銅(228mg、1.2mmol)を入れた後にジブチルエーテル(24mL)を加え、窒素雰囲気下で5日間加熱還流させた。室温まで冷却後、反応溶液に水を加えた。有機層を分離した後に、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤を除去した後に有機溶媒を留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ジクロロメタン-酢酸エチル)を用いて精製することにより、中間体(13)を得た(収量1.65g、収率43%)。
【0143】
(合成例3:中間体(14)の合成)
【0144】
【0145】
100mLナス型フラスコに中間体(13)(1.62g、2.5mmol)を入れた後に、ジオキサン(20mL)、エタノール(20mL)、および水(10mL)を加えた。10 M水酸化ナトリウム水溶液(10g、100mmol)を加えた後、窒素雰囲気下で2時間加熱還流させた。室温まで放冷した後、有機溶媒を留去した。残差を0℃まで冷却した後、pHが2~3になるまで塩酸を加えて溶液を酸性にした。析出した固体をろ取し、水で繰り返し洗浄を行った後、真空乾燥を行うことにより中間体(14)を得た(収量1.48g、収率100%)。
【0146】
(合成例4:化合物(15)および化合物(16)の合成)
【0147】
【0148】
300mL三口フラスコに中間体(14)(1.38g、2.34mmol)を入れた後にジクロロメタン(120mL)を加えた。次に、N,N’-ジメチルホルムアミド(3滴)、および塩化オキサリル(0.90mL、10.5mmol)を加えた後、加熱還流させた。2時間後、四塩化スズ(IV)(1Mジクロロメタン溶液、10.5mL、10.5mmol)を加えた後、さらに5時間加熱還流させた。0℃まで冷却後、1M塩酸水溶液(100mL)を加えた。有機層を分離した後、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤を濾別、シリカゲルパッドを通した後、有機溶媒を留去した。得られた残渣をジクロロメタンに懸濁させ、固体をろ取することにより、化合物(15)を得た。また、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ジクロロメタン-酢酸エチル)を用いて精製することにより、化合物(16)を得た:
化合物(15):収量0.35g、収率30%;
1H-NMR: δ 7.54(brs、2H),7.70-7.56(m、3H),8.40-8.43(m、4H),8.65-8.74(m、6H),9.40-9.43(brs、1H)(
図4参照);LC-MS:517([M+H]
+)
化合物(16):収量0.33g、収率26%;
1H-NMR: δ 7.25-7.40(m、2H),7.58-7.68(m、2H),7.73(t、1H、J=7.8Hz)7.82-7.89(m、1H),8.30(d、1H,J=9Hz)、8.34-8.40(m、2H),8.45-9.50(m、1H)、8.62-8.75(m、4H)(
図5参照);LC-MS:517([M+H]
+)。
【0149】
[実施例2]
(合成例5:中間体(17)の合成)
【0150】
【0151】
アニリンの代わりに4-tert-ブチルアニリンを用いたこと以外は、上記合成例1と同様の方法により、中間体(17)を得た(収率86%)。
【0152】
(合成例6:中間体(19)の合成)
【0153】
【0154】
中間体(11)の代わりに中間体(17)を用い、化合物(12)の代わりに化合物(18)を用いたこと以外は、上記合成例2と同様の方法により、化合物(19)を得た(収率73%)。
【0155】
(合成例7:中間体(20)の合成)
【0156】
【0157】
中間体(13)の代わりに中間体(19)を用いたこと以外は、上記合成例3と同様の方法により、中間体(20)を得た(収率100%)。
【0158】
(合成例8:化合物(21)および化合物(22)の合成)
【0159】
【0160】
中間体(14)の代わりに中間体(20)を用いたこと以外は、上記合成例4と同様の方法により、化合物(21)および化合物(22)を得た:
化合物(21):収率30%、LC-MS:741([M+H]+)
化合物(22):収率36%、LC-MS:741([M+H]+)。
【0161】
[実施例3]
(合成例9:中間体(23)の合成)
【0162】
【0163】
化合物(12)の代わりに化合物(18)を用いたこと以外は、上記合成例2と同様の方法により、中間体(23)を得た(収率62%)。
【0164】
(合成例10:化合物(24)の合成)
【0165】
【0166】
中間体(13)の代わりに中間体(23)を用いたこと以外は、上記合成例3と同様の方法により、中間体(24)を得た(収率100%)。
【0167】
(合成例11:化合物(25)および化合物(26)の合成)
【0168】
【0169】
化合物(14)の代わりに化合物(24)を用いたこと以外は、合成例4と同様の方法により、化合物(25)および化合物(26)を得た:
化合物(25):収率20%、LC-MS:629([M+H]+)
化合物(26):収率33%、LC-MS:629([M+H]+)。
【0170】
(比較例1)
[比較化合物1の準備]
下記化学式で表されるキノリノ[3,2,1-de]アクリジン-5.9-ジオンを、比較化合物1として準備した。
【0171】
【0172】
<化合物の評価>
[HOMO、LUMOの測定]
上記得られた各化合物および上記の各比較化合物を各サンプル固体として準備した。次いで、下記手順に従い、HOMO準位およびLUMO準位を測定した。
【0173】
1.測定サンプルの作製
(1)溶剤である安息香酸メチル100質量部に対して、サンプル固体が4質量部となるようにサンプル溶液を調製した。
【0174】
(2)ITO基板および石英基板のそれぞれに、上記(1)で調製したサンプル溶液を、スピンコート法にて、乾燥膜厚が50nmとなる条件で塗布し、塗膜を形成した。得られた塗膜を、10-1Pa以下の真空下において120℃にて1時間加熱し、その後、10-1Pa以下の真空下において室温まで冷却して、薄膜層(薄膜サンプル)を形成した。
【0175】
2.HOMO準位の測定
上記1.(2)で作製したITO基板上薄膜サンプルを用いて、大気中光電子分光装置AC-3(理研計器株式会社製)を用いてHOMO準位を測定した。
【0176】
3.LUMO準位の測定
上記1.(2)で作製した石英基板上の薄膜サンプルを用いて、分光光度計 U-3900(株式会社日立ハイテク製)を用いて紫外可視吸収スペクトルの吸収端からエネルギーギャップ値(Eg)を測定し、下記式からLUMO準位を算出した。算出結果を下記表1に示す。
【0177】
【0178】
[溶液のフォトルミネッセンス(PL)測定]
上記で得られた各化合物および上記の各比較化合物を、それぞれトルエンに溶解させ、1×10-5M溶液を調製した。本溶液を1cm角の4面透過セルに満たし、分光蛍光光度計F7000(株式会社日立ハイテク製)を用いて室温にてPL測定を行った。得られた発光スペクトルから、そのピーク波長、発光強度が半減する半値幅(FWHM)、およびストークスシフト(Stokes shift)を算出した。これらの評価結果を下記表1に示す。
【0179】
[S1値、T1値、およびΔEST値の測定]
1.測定サンプルの作製
(1)上記得られた各化合物または上記の各比較化合物(サンプル固体)と、ポリメチルメタクリレート(PMMA)とをそれぞれトルエンに溶解させ、PMMA:サンプル固体=99.5:0.5(質量比)となるように混合し、5質量%トルエン溶液を調製した。
【0180】
(2)上記(1)で調製したサンプル溶液を、乾燥膜厚が500nmとなる条件でスピンコーターMS-B100(ミカサ株式会社製)を用いてITO基板および石英基板にスピンコート膜を形成した。その後、120℃にて1時間加熱することにより、薄膜サンプルを作製した。
【0181】
2.S1値、T1値、およびΔEST値の測定
上記1.(2)で作製した石英基板上薄膜サンプルを用いて、分光蛍光光度計F7000(株式会社日立ハイテク製)により、77Kにて蛍光スペクトルおよび燐光スペクトルを測定した。得られた蛍光スペクトルから一重項エネルギーS1を、燐光スペクトルから三重項エネルギーT1を、それぞれ算出した。また、下記に示す式(x)に従い、ΔESTを見積もった。これらの結果を下記表1に示す。
【0182】
【0183】
[PLQYの測定]
石英基板上に、下記表1に記載された化合物を、ホスト化合物mCPに対し1重量%の重量比で、10-5Paの真空度で共蒸着し、50nm厚の薄膜フィルムを作製した。作製した薄膜フィルムの各々の発光スペクトルを、浜松ホトニクス株式会社製のQuantaurus-QY 絶対PL量子収率(PLQY)測定装置 C11347-01を用いて、PLQYを測定した。測定時には、励起波長を300nmから400nmまで10nm間隔でスキャンして測定し、化合物の吸収の値が励起光強度比10%以上を示す励起波長領域を採用した。PLQYの値は、採用された励起波長領域内で最も高い値とした。
【0184】
これらの結果を下記表1に示す。
【0185】
【0186】
<有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の作製および評価>
(実施例4)
[有機EL素子の作製]
国際公開第2011/159872号に記載のConpound Tの製法に準拠して、下記化学式で表されるポリマーP-1を合成した。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したP-1の数平均分子量(Mn)は141,000であり、重量平均分子量(Mw)は511,000であった。
【0187】
【0188】
また、米国特許出願公開第2016/0315259号明細書に記載のFA-14(下記化学式参照)を、定法により合成した。
【0189】
【0190】
第1電極(陽極)として、ストライプ(stripe)状の酸化インジウムスズ(ITO)が膜厚150nmにて成膜されたITO付きガラス基板を用意した。このガラス基板上に、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(poly(3,4-ethylene dioxythiophene)/poly(4-styrene sulfonate):PEDOT/PSS)(Sigma-Aldrich製)を、乾燥膜厚が30nmになるようにスピンコート法にて塗布し、正孔注入層を形成した。
【0191】
次に、上記のP-1およびFA-14を、溶剤であるアニソールに溶解して、正孔輸送層塗布溶液を調製した。P-1は正孔輸送層の総質量に対して80質量%となる量とし、FA-14は正孔輸送層の総質量に対して20質量%となる量とした。次いで、得られた正孔輸送層塗布溶液を、スピンコート法にて、乾燥膜厚が125nmとなる条件で正孔注入層上に塗布し、塗膜を形成した。得られた塗膜を10-1Pa以下の真空下において230℃にて1時間加熱し、その後10-1Pa以下の真空下において室温まで冷却し、正孔輸送層を形成した。
【0192】
次に、正孔輸送層上に、ホスト材料であるmCPと上記得られた化合物15とを、mCP:化合物15=98.5:1.5の質量比で真空蒸着装置にて共蒸着し、膜厚55nmの発光層を形成した。
【0193】
次に、発光層上に、(8-キノリノラト)リチウム(Liq):KLET-03(ケミプロ化成株式会社製)=2:8の質量比となるように真空蒸着装置にて共蒸着し、膜厚20nmの電子輸送層を形成した。
【0194】
次に、電子輸送層上に、(8-キノリノラト)リチウム(Liq)を真空蒸着装置にて蒸着し、膜厚3.5nmの電子注入層を形成した。
【0195】
次に、電子注入層上に、アルミニウム(Al)を真空蒸着装置にて蒸着し、膜厚100nmの第2電極(陰極)を形成した。
【0196】
[有機EL素子の評価]
下記方法に従って、発光ピーク波長、半値幅およびMaxEQEを評価した。直流定電圧電源(KEITHLEY社製、2400source meter))を用いて、有機EL素子に対して印可電圧を連続的に変化させて有機EL素子に通電して発光させ、このときの輝度、発光スペクトルを輝度測定装置(浜松ホトニクス株式会社製、マルチチャンネル分光器 PMA12)にて測定した。また測定結果から、電流値と外部量子効率EQE(%)を算出した。さらに、波長に対するEQEグラフにおいて最大値を示す波長を発光ピーク波長(nm)、その半分(half)に対応する波長幅を半値半幅、もしくは半値幅FWHM(nm)と定義した。なお、ここで示すMaxEQEは、電流駆動中に有機EL素子の面積から算出された電流密度が0.1(mA/m2)におけるEQEの値とした。ただし、表2におけるEQE(相対値)は、比較例2の値を100とした場合の相対値として表す。
【0197】
(実施例5~6および比較例2)
発光層の形成において、化合物15を下記表2に記載の化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして、各有機EL素子を作製し、評価を行った。
【0198】
これらの評価結果を下記表2に示す。
【0199】
【0200】
上記表1の結果より、本発明に係る縮合環化合物は、青色波長領域をピーク波長とする、スペクトル幅の狭い発光が確認されており、高色純度の青色発光を示すことが確認された。また、本発明に係る縮合環化合物は、狭いΔEstを有し、高効率な発光が期待されることも確認された。
【0201】
上記表2の結果より、本発明に係る縮合環化合物を用いた有機EL素子は、青色波長領域をピーク波長とする、スペクトル幅の狭い発光が確認されており、高色純度の青色発光を示すことが確認された。
【0202】
また、上記表2に示すように、本発明の範囲外である比較化合物1を用いた有機EL素子に対して、実施例4~6に示した本発明の範囲内である化合物を用いた有機EL素子においては、EQEが1.5倍以上高く、発光効率が顕著に優れていることが確認された。
【0203】
以上、本発明について実施形態および実施例を挙げて説明したが、本発明は特定の実施形態、実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0204】
1 基板、
2 第1電極、
3 正孔輸送領域、
4 発光層、
5 電子輸送領域、
6 第2電極、
10 有機エレクトロルミネッセンス素子、
31 正孔注入層、
32 正孔輸送層、
33 電子阻止層、
51 電子注入層、
52 電子輸送層、
53 正孔阻止層。