(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートを用いたケト積重のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/19 20060101AFI20250204BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20250204BHJP
A23L 33/115 20160101ALI20250204BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250204BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20250204BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20250204BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20250204BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20250204BHJP
A61K 31/22 20060101ALI20250204BHJP
A61K 31/52 20060101ALI20250204BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20250204BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20250204BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20250204BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20250204BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20250204BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250204BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20250204BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20250204BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250204BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
A61K31/19
A23L33/10
A23L33/115
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K31/22
A61K31/52
A61P1/00
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P25/00
A61P25/08
A61P25/28
A61P29/00
A61P43/00 105
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020557977
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(86)【国際出願番号】 US2019027214
(87)【国際公開番号】W WO2019204148
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-12-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-27
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520178065
【氏名又は名称】アクセス・グローバル・サイエンシーズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】AXCESS GLOBAL SCIENCES, LLC
【住所又は居所原語表記】2157 LINCOLN STREET, SALT LAKE CITY, UTAH 84106, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ミレット,ゲーリー
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】岩下 直人
【審判官】渕野 留香
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-42644(JP,A)
【文献】特表2016-514725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L
CAplus/MEDLINE/REGISTRY/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食欲抑制、体重減少、脂肪減少、血中グルコース値の低下、精神的敏捷性の改善、身体エネルギーの増加、認知機能の改善、外傷性脳損傷の減少、糖尿病の影響の減少、神経障害の改善、癌の減少、炎症の減少、老化防止、抗糖化、てんかん性発作の減少、気分の改善、力の増加、筋肉量の増加、および、体組成の改善のうちの一つ以上をもたらすために、対象体におけるケトン体レベルを増加させるための組成物であって、
経口投与剤用の栄養学的または薬学的に許容可能な担体であって、前記経口投与剤が、粉末
剤、錠剤、カプセル剤、食料品、食品添加物、飲料品、飲料添加物、および栄養補助食品から選択され
る、栄養学的または薬学的に許容可能な担体と、
(i)ベータ-ヒドロキシ酪酸塩、
(ii)アセト酢酸塩、
(iii)ベータ-ヒドロキシ酪酸エステル、
(iv)アセト酢酸エステル、
(v)ベータ-ヒドロキシブチレートの遊離酸、および、
(vi)アセトアセテートの遊離酸、
からなる群から選択される
モノマー形態の複数のケトン体化合物と、を含み、
ここで、前
記ケトン体化合物は、
モル基準で2%~96%のケトン体エステル、モル基準で2%~96%のケトン体塩、および、モル基準で2%~96%のケトン体酸を含むケトン体の三重積重を形成する、少なくとも一つのベータ-ヒドロキシ酪酸塩、少なくとも一つのアセト酢酸塩、
少なくとも一つのケトン体エステル、および、ベータ-ヒドロキシブチレートの遊離酸を含み、
前記
組成物は、0.5g~50gのケトン体の用量を提供する、組成物。
【請求項2】
ベータ-ヒドロキシ酪酸エステル、アセト酢酸エステル、アセトアセテートの遊離酸の少なくとも1つ
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ケトン体化合物の(i)~(vi)は、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの混合物を形成するように選択され、ここで、前記ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの混合物は、約55重量%~約95重量%のベータ-ヒドロキシブチレート、および約5重量%~約45重量%のアセトアセテート、または約10重量%~約45重量%のアセトアセテート、または約20重量%~約45重量%のアセトアセテート、または約30重量%~約45重量%のアセトアセテートを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ケトン体塩化合物の(i)および/または(ii)は、カルシウム塩を少なくとも含む請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ケトン体エステル化合物の(iii)および/または(iv)は、ジオールおよび前記ケトン体化合物のそれぞれのケトン体成分のジエステルを含み、ここで、前記ケトン体エステル化合物は、エタノールのモノエステル、1-プロパノールのモノエステル、1,3-プロパンジオールのモノエステル、1,3-プロパンジオールのジエステル、S-1,3-ブタンジオールのモノエステル、1,3-ブタンジオールのジエステル、グリセリンのモノエステル、グリセリンのジエステル、またはグリセリンのトリエステル、のうちの少なくとも一つを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ベータ-ヒドロキシブチレートは、S-ベータ-ヒドロキシブチレート、ラセミ体のR,S-ベータ-ヒドロキシブチレートであり、S-ベータ-ヒドロキシブチレートに対してR-ベータ-ヒドロキシブチレートで富化されており、またはR-ベータ-ヒドロキシブチレートに対してS-ベータ-ヒドロキシブチレートで富化されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
ビタミン、ミネラル、またはカフェインもしくは他の刺激薬のうちの一つ以上をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも一つの中鎖脂肪酸、または、前記少なくとも一つの中鎖脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド、もしくは、トリグリセリドをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
(i)6個未満の炭素を有する、短鎖脂肪酸、もしくは、前記少なくとも一つの短鎖脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド、もしくは、トリグリセリド、または、(ii)12個より多くの炭素を有する、長鎖脂肪酸、もしくは、前記少なくとも一つの長鎖脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド、もしくは、トリグリセリドをさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
NAD
+をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
食欲抑制、体重減少、脂肪減少、血中グルコース値の低下、精神的敏捷性の改善、身体エネルギーの増加、認知機能の改善、外傷性脳損傷の減少、糖尿病の影響の減少、神経障害の改善、癌の減少、炎症の減少、老化防止、抗糖化、てんかん性発作の減少、気分の改善、力の増加、筋肉量の増加、および、体組成の改善のうちの一つ以上をもたらすために、対象体におけるケトンレベルを増加させる際に使用するためのキットであって、
経口投与剤用の栄養学的または薬学的に許容可能な担体であって、前記経口投与剤が、粉末剤、錠剤、カプセル剤、食料品、食品添加物、飲料品、飲料添加物、および栄養補助食品から選択され
る、栄養学的または薬学的に許容可能な担体と、
(i)ベータ-ヒドロキシ酪酸塩、
(ii)アセト酢酸塩、
(iii)ベータ-ヒドロキシ酪酸エステル、
(iv)アセト酢酸エステル、
(v)ベータ-ヒドロキシブチレートの遊離酸、および、
(vi)アセトアセテートの遊離酸、
からなる群から選択される
モノマー形態の複数のケトン体化合物を含む組成物であって、
ここで、前
記ケトン体化合物は、
モル基準で2%~96%のケトン体エステル、モル基準で2%~96%のケトン体塩、および、モル基準で2%~96%のケトン体酸を含むケトン体の三重積重を形成する、少なくとも一つのベータ-ヒドロキシ酪酸塩、少なくとも一つのアセト酢酸塩、
少なくとも一つのケトン体エステル、および、ベータ-ヒドロキシブチレートの遊離酸を含
む、組成物と、
前記組成物が入れられる容器と、
前記組成物の単位用量または前記単位用量の
画分を中に保持するように構成された
単位用量測定装置と、を含み、
前記組成物の単位用量は、約0.5g~約50gの
ケトン体を含む、キット。
【請求項12】
食欲抑制、体重減少、脂肪減少、血中グルコース値の低下、精神的敏捷性の改善、身体エネルギーの増加、認知機能の改善、外傷性脳損傷の減少、糖尿病の影響の減少、神経障害の改善、癌の減少、炎症の減少、老化防止、抗糖化、てんかん性発作の減少、気分の改善、力の増加、筋肉量の増加、および、体組成の改善のうちの一つ以上をもたらすために、対象体におけるケトン体を増加させるための薬剤を製造するための組成物の使用方法であって、
前記組成物は、
経口投与剤用の栄養学的または薬学的に許容可能な担体であって、前記経口投与剤が、粉末剤、錠剤、カプセル剤、食料品、食品添加物、飲料品、飲料添加物、および栄養補助食品から選択され
る、栄養学的または薬学的に許容可能な担体と、
(i)ベータ-ヒドロキシ酪酸塩、
(ii)アセト酢酸塩、
(iii)ベータ-ヒドロキシ酪酸エステル、
(iv)アセト酢酸エステル、
(v)ベータ-ヒドロキシブチレートの遊離酸、および
(vi)アセトアセテートの遊離酸、
からなる群から選択される
モノマー形態の複数のケトン体化合物を含む組成物であって、
ここで、前
記ケトン体化合物は、
モル基準で2%~96%のケトン体エステル、モル基準で2%~96%のケトン体塩、および、モル基準で2%~96%のケトン体酸を含むケトン体の三重積重を形成する、少なくとも一つのベータ-ヒドロキシ酪酸塩、少なくとも一つのアセト酢酸塩、
少なくとも一つのケトン体エステル、および、ベータ-ヒドロキシブチレートの遊離酸を含み、
前記
組成物は、0.5g~50gのケトン体の用量を提供す
る、使用方法。
【請求項13】
前記ケトン体化合物の(i)~(vi)は、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの混合物を形成するように選択され、前記ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの混合物は、約55重量%~約95重量%のベータ-ヒドロキシブチレート、および約5重量%~約45重量%のアセトアセテートを含む、請求項12に記載の使用方法。
【請求項14】
前記組成物は、アセトアセテートを含まない、または、割合的に不十分なアセトアセテートを含む同様の用量のベータ-ヒドロキシブチレートよりも、前記対象体におけるNAD
+レベルの低下に対して小さい影響を有する、請求項13に記載の使用方法。
【請求項15】
前記アセトアセテートは、血中のNAD
+レベルを増加させる、請求項13または14に記載の使用方法。
【請求項16】
前記ベータ-ヒドロキシ酪酸エステルは、
ベータ-ヒドロキシ酪酸-アルキル
エステル、
ベータ-ヒドロキシ酪酸-アルケニル
エステル、
ベータ-ヒドロキシ酪酸-アリール
エステル、および、
ベータ-ヒドロキシ酪酸-アシル
エステルからなる群から選択され
る、請求項2に記載の組成物。
【請求項17】
前記アセト酢酸エステルは、
アセト酢酸-アルキル
エステル、
アセト酢酸-アルケニル
エステル、
アセト酢酸-アリール
エステル、および
アセト酢酸-アシル
エステルからなる群から選択され
る、請求項2に記載の組成物。
【請求項18】
前記アセト酢酸塩は、アセト酢酸カルシウム塩を含む請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本明細書には、ベータ-ヒドロキシブチレート(beta-hydroxybutyrate)およびアセトアセテート(acetoacetate)の有効な比率を含む組成物、二つ以上の異なる形態のケトン体を含む積重(stack)された組成物、ならびに哺乳動物においてケトン体の血中レベルの上昇を生じさせるために前記組成物を使用する方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術
絶食、極度の運動、および/または低炭水化物消費の期間において、体内のグルコースおよびグリコーゲンの貯蔵は急速に使用され、急速に枯渇し得る。グルコースの貯蔵が枯渇したときに補給しないと、身体は代謝的にエネルギーのためのケトン体の生成(「ケトーシス」)にシフトする。ケトン体は、脳および心臓を含む身体のエネルギー需要を満たすための燃料として身体の細胞によって使用され得る。長時間の絶食の間に、例えば、血中ケトンレベルが2mmol/L~3mmol/L以上に上昇する場合がある。血中ケトンが0.5mmol/Lを上回ると、心臓、脳および末梢組織が一次的燃料源としてケトン体(例えば、ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテート)を使用することが従来から理解されている。この状態はケトーシスと呼ばれている。1.0mmol/Lから3.0mmol/Lの間では、この状態は「栄養学的ケトーシス」と呼ばれている。
【0003】
ケトーシスに移行すると、または言い換えれば、肝臓内でのケトジェニック代謝の間、身体は一次的エネルギー源として食事脂肪および体脂肪を使用する。結果として、ケトーシスに入ったら、食事脂肪の摂取量を抑え、低炭水化物を維持してケトーシスを持続させることによって、体脂肪の減少を誘導することができる。
【0004】
ケトーシスの間、身体はケトン生成状態にあり、本質的にケトン生成の一次的燃料のために脂肪を燃焼している。身体で脂肪が脂肪酸およびグリセロールに切断され、脂肪酸がアセチルCoA分子に変換された後に、アセチルCoA分子は肝臓内でケトン生成によって、水溶性ケトン体であるベータ-ヒドロキシブチレート(「β-ヒドロキシブチレート」または「ベータ-ヒドロキシブチレート」)、アセトアセテート、およびアセトンへと変換される。ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートは、エネルギーのために身体により使用されるケトン体であるのに対して、アセトンはケトン生成の副産物として除去される。
【0005】
ケトン体の代謝は、抗痙攣効果、脳による代謝の強化、神経保護、筋腱温存特性、ならびに認知能力および身体能力の改善を含む、幾つかの有益な効果と関連している。ケトン補給によって管理される、細胞代謝の効率における科学に基づく改善は、身体的健康、認知的健康、および心理的健康に有益な影響を及ぼし、肥満、心血管疾患、神経変性疾患、糖尿病、および癌等の一般的な回避可能な疾患に関して健康に長期的な影響を与え得る。
【0006】
ケトン食または生活様式を追求し、栄養学的ケトーシスの状態を維持することの多くの健康上の利点にもかかわらず、ケトーシス状態を追求および維持することへの重大な障壁がある。これらの障壁の一つはケトジェニック状態への移行の難しさである。ケトーシスに入る最も迅速な内因的な方法は、運動と組み合わせた絶食によって体内のグルコース貯蔵の枯渇によってなされる。しかしながら、これは肉体的および感情的に厳しいものであり、最も意欲的で規律のある人にとっても極めて困難となり得る。
【0007】
さらに、ケトーシスへの移行はしばしば低血糖を伴い、低血糖は多くは無気力および朦朧状態を引き起こし得ることから、通常「低炭水化物インフルエンザ(low-carb flu)」と呼ばれる不快な生理学的および精神的状態がもたらされる。さらに、多くの人は、身体が「省エネ」モードに入るため代謝のダウンレギュレーションを経験する。これらの一時的な症状は2週間~3週間ほど続く場合があるという説もある。この移行期間の間に、制限された量を超える炭水化物を含む食事または軽食が消費されると、ケトン生成が即座に停止し、身体は一次的燃料としてグルコースに戻るため、身体はケトーシスの状態から抜けて、ケトーシスへの移行を新たに開始せねばならない。
【0008】
対象体がケトーシスの確立に成功した場合に、炭水化物およびタンパク質の脂肪に対する厳格な食事比率を維持する必要があるため、ケトーシスを持続させる行為は、より困難でないにしろ、同様に困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
絶食および運動を介してケトーシスを誘導することに関連する困難を克服するために、ケトン体の直接投与を介してケトーシスを誘導する方法が提案されてきた。これらの幾つかは個人にケトーシスを誘導するように作用し得るが、幾つかの制限が残っている。特に、血中ケトン体レベルの比較的短時間のスパイクが達成され得る一方で、そのようなスパイクは、所望されるよりもはるかに速く衰える傾向にある。したがって、ケトーシスを長期間にわたって促進および維持することができる組成物および方法に対する長年にわたる切実な継続的な要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の概要)
本明細書には、ケトーシスを促進および維持するための組成物および方法が開示される。外因性ケトン体(すなわち、ベータ-ヒドロキシブチレート(beta-hydroxybutyrate)およびアセトアセテート(acetoacetate))は、三つの一般的な形態、1)塩形態、2)エステル形態、および3)遊離酸形態(すなわち、ベータ-ヒドロキシ酪酸(beta-hydroxybutyric acid)および/またはアセト酢酸(acetoacetic acid))で提供され得る。これらの各形態は特定の利点をもたらすが、望ましくない副作用を有し得る。
【0011】
本明細書に記載される組成物は、これらの形態の少なくとも二つを組み合わせた「積重された」混合物として提供され得る。そのような積重された組成物は、望ましくない副作用の発生および/もしくは重症度を有利に制限することができ、ならびに/または、より高用量の外因性ケトン体の投与を可能にし得る。したがって、積重された組成物は、実質的により大量の外因性ケトン体の送達を可能にする一方で、1のタイプの外因性ケトン体の過剰な送達の有害な影響を低減または最小化する。
【0012】
さらに、積重された組成物は、単一形態で他の点では同様の量で提供するのと比較して、血中のケトン体のより高いおよび/またはより持続的なレベルを提供することができる。例えば、積重された配合物は、より好ましい、または、より最適化された放出プロファイル、例えば、より迅速な開始の利点とより延長された放出の利点とを兼ね備えたプロファイル、および/または、全体的により大きな薬物動態的な曲線下面積(AUC)をもたらすプロファイルを提供するように調整され得る。したがって、積重された組成物は、ケトン体の時限(timed)送達または利用可能性を提供することにより、例えば積重された組成物を消費してから1時間~8時間後に、ケトン体のより均一な血中濃度および外因性ケトン体の大幅に長い「尾を引く(tail)」送達がもたらされる。
【0013】
積重された組成物により、異なる個人または群の種々の栄養上および/または健康上の要求に対処するために、様々な形態のベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートの種々の比率および組み合わせの選択および調整が可能となる。例えば、種々のタイプの外因性ケトン体の種々の比率および/または組み合わせを選択することで、人の年齢、性別、健康状態、病状等に基づいて種々の状態に対処することができる。
【0014】
本明細書に開示される実施形態は、対象体においてケトーシスを誘導および持続させるために配合されたケトジェニック組成物を対象とする。例示的な組成物はベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートの混合物を含み、ここで、前記ベータ-ヒドロキシブチレートは、前記混合物の約55%~約95%の量で含まれ、前記アセトアセテートは、前記混合物の約5%~約45%の量で含まれる。ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの混合物は、栄養学的または薬学的に許容可能な担体と組み合わせることができる。
【0015】
以下でより詳細に説明されるように、外因性アセトアセテートは、外因性ベータ-ヒドロキシブチレートと比べて、対象体の利用可能なNAD+の減少をより少なくし、ケトン分解の間のエネルギーに利用され得る。したがって、本明細書に記載される特定の組成物は、同様の用量のベータ-ヒドロキシブチレートのみまたは不十分なアセトアセテートと組わせた同様の用量のベータ-ヒドロキシブチレートと比べて、利用可能なNAD+の望ましくない減少を制限するのに割合的に十分なアセトアセテートを含むように配合される。
【0016】
しかしながら同時に、ベータ-ヒドロキシブチレートに対してアセトアセテートが多すぎると、他の望ましくない副作用が引き起こされる場合がある。過剰なアセトアセテートは、血中の高レベルのアセトンと関連している。このアセトンの多くは、呼吸を通じて対象体の体から排出されることから、ケトーシス状態の対象体に関連した、隠しきれない、しばしば不快な「ケト呼吸」が引き起こされる。
【0017】
開示される組成物は、ケトーシスを効果的に促進および/または持続させ、対象体において利用可能なNAD+の減少を比較的制限し、そして血中の過剰なアセトンレベルを制限する、それぞれの割合が含まれることによって、ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートの種々の利点と制限のバランスをとるように有利に配合される。それぞれの別個のケトン体成分の量を調節する、および/または、外因性ケトン体の種々の積重された形態を提供することで、特定の用途の要求または好みに最適化された、目的に合わせた(tailored)組成物を有利に可能とする。
【0018】
本明細書に記載されるケトジェニック組成物は、減量サプリメント、高血糖またはII型糖尿病の治療、健脳剤、運動能力向上薬、代謝機能障害、ミトコンドリア欠損、および/またはインスリン抵抗性に対する予防、ケトン食の補助、アンチエイジングサプリメント、ならびに、代謝の健康の改善に関連する、他の用途のうちの一つ以上として有用であり得る。
【0019】
一実施形態では、ケトジェニック組成物は、(i)ベータ-ヒドロキシ酪酸塩、(ii)アセト酢酸塩、(iii)ベータ-ヒドロキシ酪酸エステル、(iv)アセト酢酸エステル、(v)ベータ-ヒドロキシブチレートの遊離酸(すなわち、ベータ-ヒドロキシ酪酸)、および(vi)アセトアセテートの遊離酸(すなわち、アセト酢酸)からなる群から選択される少なくとも二つの別個の外因性ケトン体を含む。積重されたケトン体組成物は、好ましくは、(A)一つ以上のケトン体塩、(B)一つ以上のケトン体エステル、および(C)一つ以上のうちのケトン体の遊離酸の少なくとも二つが存在するように(i)~(vi)から選択されるケトン体化合物の組み合わせを含む。
【0020】
さらに、ベータ-ヒドロキシブチレートはキラル中心を有するので、ベータ-ヒドロキシブチレートの塩、エステル、および酸の形態のいずれかは、R-ベータ-ヒドロキシブチレート、S-ベータ-ヒドロキシブチレート、R,S-ベータ-ヒドロキシブチレートのラセミ混合物、S-ベータ-ヒドロキシブチレートに対してR-ベータ-ヒドロキシブチレートで富化された混合物、またはR-ベータ-ヒドロキシブチレートに対してS-ベータ-ヒドロキシブチレートで富化された混合物であり得る。R-ベータ-ヒドロキシブチレートは、身体により生成されるベータ-ヒドロキシブチレートの内因性の形態であるが、S-ベータ-ヒドロキシブチレートは、例えばキラル中心を有しないアセトアセテートに酵素的転化された後にR-ベータ-ヒドロキシブチレートに転化されることにより、R-ベータ-ヒドロキシブチレートに転化され得る。R-ベータ-ヒドロキシブチレートは内因性の形態であるため、身体によってより迅速に利用される。それに対して、S-ベータ-ヒドロキシブチレートは、利用可能なケトン体をよりゆっくりと遅れて利用可能となる。それというのも、S-ベータ-ヒドロキシブチレートは、エネルギーとして使用され得る前に、最初にR-ベータ-ヒドロキシブチレートに転化されなければならないからである。それにもかかわらず、S-ベータ-ヒドロキシブチレートは、シグナル伝達等のエネルギーとは関係のない他の利点を有し得る。上記したことを考慮して、積重された組成物はまた、種々の量または比率のR-ベータ-ヒドロキシブチレートおよびS-ベータ-ヒドロキシブチレートを含み得る。
【0021】
追加の特徴および利点は、部分的には以下の説明に示され、部分的には当該説明から明らかであるか、または本明細書に開示される実施形態の実施によって理解され得る。上記した概要および以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものにすぎず、本明細書に開示されるまたは特許請求の範囲に記載される実施形態を限定するものではないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】ケトーシスの代謝経路の一部を概略的に示しており、肝臓におけるケトン生成および筋肉等の末梢組織内でのケトン分解を示している。
【
図2A】「積重された」用量の少なくとも二つの異なる形態の外因性ケトン体を使用した場合に、単一形態の外因性ケトン体と比較して、より高レベルの外因性ケトン体が投与され得ることを示す。
【
図2B】外因性ケトン体の様々な配合物での治療から得られる望ましくない副作用の予想される相対率を示し、ここで、1)塩形態の外因性ケトン体、2)エステル形態の外因性ケトン体、および3)遊離酸形態の外因性ケトン体(すなわち、ベータ-ヒドロキシ酪酸および/またはアセト酢酸)を含む「三重積重」配合物は、二つのそのような形態の外因性ケトン体のみを含む「二重積重」配合物と比較して、より大量の外因性ケトン体の投与および/またはより少ない副作用の発生もしくは強度を可能にすることが期待され、そして三重積重配合物および二重積重配合物の両者は、単一のそのような形態の外因性ケトン体のみを含む「単一形態」の投与と比較して、より大量の外因性ケトン体の投与および/またはより少ない副作用の発生もしくは強度を可能にすることが期待される。
【
図3】積重された組成物(例えば、遊離酸、塩、およびエステルの各形態を含むR-ベータ-ヒドロキシブチレートならびにR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート)の予想される放出プロファイルを、遊離酸、塩、およびエステルの各単一形態と比較しており、ここで、積重された組成物が、延長される全体的な放出プロファイルを提供し、より大きな曲線下面積(AUC)を有し得ることが示される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
I.定義
β-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチレート、βHB、ベータ-ヒドロキシブチレート、またはベータ-ヒドロキシブチレートとしても知られる化合物「ベータ-ヒドロキシブチレート」は、一般式CH3CH2OHCH2COOHを有するヒドロキシカルボン酸であるベータ-ヒドロキシ酪酸の脱プロトン化形態である。典型的な生物学的pHレベルで存在する脱プロトン化形態はCH3CH2OHCH2COO-である。以下に示される一般化学構造は、開示された組成物中で利用され得るベータ-ヒドロキシブチレート化合物を表す。
【0024】
【化1】
(式中、Xは、水素、金属イオン、アミノ酸由来のようなアミノカチオン、アルキル、アルケニル、アリール、またはアシルであり得る。)
【0025】
Xが水素である場合に、前記化合物はベータ-ヒドロキシ酪酸である。Xが金属イオンまたはアミノカチオンである場合に、前記化合物はベータ-ヒドロキシ酪酸塩である。Xがアルキル、アルケニル、アリール、またはアシルである場合に、前記化合物はベータ-ヒドロキシ酪酸エステルである。上記した化合物は、結晶、粉末、固体、液体、溶液、懸濁液、またはゲル等の任意の所望の物理的形態であり得る。
【0026】
ベータ-ヒドロキシブチレートは、対象体において低グルコースレベルである場合に、または患者の体に使用可能な形態のベータ-ヒドロキシブチレートが補給されている場合に、患者の体によってエネルギー源として利用され得る。技術的には「ケトン」ではないが、当業者は、ケトーシスの文脈において、ベータ-ヒドロキシブチレートが一般に「ケトン体」と呼ばれることを認識するであろう。
【0027】
ベータ-ヒドロキシブチレート化合物は、エナンチオマーのラセミ混合物、または合成的に生産され得るR,S-ベータ-ヒドロキシブチレート(DL-ベータ-ヒドロキシブチレートとしても知られる)として提供され得る。ヒトでは、エナンチオマーのR-ベータ-ヒドロキシブチレート(「D-3-ヒドロキシブチレート」、「D-ベータ-ヒドロキシブチレート(D-beta hydrobutyrate」、または「D-ベータ-ヒドロキシブチレート」)は、絶食時に産生される最初のケトンであるアセトアセテートから肝臓内で合成される。したがって、効力を高めるために、R-エナンチオマーとしてベータ-ヒドロキシブチレートを、S-ベータ-ヒドロキシブチレート(「L-3-ヒドロキシブチレート」、「L-ベータ-ヒドロキシブチレート(L-beta hydrobutyrate)」、または「L-ベータ-ヒドロキシブチレート」)に関して富化されたまたはS-ベータ-ヒドロキシブチレートから単離された精製形態のいずれかで提供することが望ましい場合がある。
【0028】
あるいは、S-エナンチオマーとしてベータ-ヒドロキシブチレートを、R-ベータ-ヒドロキシブチレートに関して富化されたまたはR-ベータ-ヒドロキシブチレートから単離された精製形態のいずれかで提供することが望ましい場合がある。S-ベータ-ヒドロキシブチレートは、R-ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートの内因性産生の増加、S-ベータ-ヒドロキシブチレートのR-ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートの一方または両方への内因性転化、S-ベータ-ヒドロキシブチレートの脂肪酸およびステロールへの内因性転化、長期のケトーシス、R-ベータ-ヒドロキシブチレートおよび/またはアセトアセテートへの転化とは独立したS-ベータ-ヒドロキシブチレートの代謝、胎児の発育の増加、成長年数の増加、ケトーシスの間のアセトンの内因性産生の減少、R-ベータ-ヒドロキシブチレートおよびグルコースの代謝を調節するS-ベータ-ヒドロキシブチレートによるシグナル伝達、抗酸化活性、ならびにアセチルCoAの産生のうちの一つ以上と関連している場合がある。
【0029】
内因性の形態であるR-ベータ-ヒドロキシブチレートを投与すると、比較的急速なケトーシスの上昇の達成がもたらされるが、S-ベータ-ヒドロキシブチレートを投与すると、エネルギー源として使用される前に最初にR型に転化されるまで、より遅く、より長期のケトーシスがもたらされる。S型は、シグナル伝達等、およびS型がR型に転化されるときに中間体として形成されるアセトアセテートの供給源としての他の利点を提供し得る。したがって、種々のエナンチオマーを種々の割合で組み合わせることで、特定の用途の要求または好みに応じて、所望の時間放出プロファイルを調整することができる。
【0030】
化合物「アセトアセテート」は、化学式CH3COCH2COOHを有するカルボン酸であるアセト酢酸の脱プロトン化形態である。したがって、典型的な生物学的pHレベルで存在する脱プロトン化形態はCH3COCH2COO-である。ベータ-ヒドロキシブチレートと同様に、アセトアセテートはケトーシスの間のエネルギー源として利用され得る。以下の一般化学構造は、開示された組成物中で利用され得るアセトアセテート化合物(その化合物の立体異性体も利用され得る)を表す。
【0031】
【化2】
(式中、Xは、水素、金属イオン、アミノ酸由来のようなアミノカチオン、アルキル、アルケニル、アリール、またはアシルであり得る)を表す。
【0032】
Xが水素である場合に、前記化合物はアセト酢酸である。Xが金属イオンまたはアミノカチオンである場合に、前記化合物はアセト酢酸塩である。Xがアルキル、アルケニル、アリール、またはアシルである場合に、前記化合物はアセト酢酸エステルである。上記した化合物は、結晶、粉末、固体、液体、溶液、懸濁液、またはゲル等の任意の所望の物理的形態であり得る。
【0033】
上記したベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテート化合物は、本明細書では、まとめて「ケトン体」、「外因性ケトン体」、「ケトン体成分」、または「外因性ケトン」と呼ばれ得る。
【0034】
用語「積重された組成物」、「ケト積重物」、「積重物」、「ケトン体積重物」、その変形形態等は、本明細書では、(i)ベータ-ヒドロキシ酪酸塩、(ii)アセト酢酸塩、(iii)ベータ-ヒドロキシ酪酸エステル、(iv)アセト酢酸エステル、(v)ベータ-ヒドロキシブチレートの遊離酸(すなわち、ベータ-ヒドロキシ酪酸)、および(vi)アセトアセテートの遊離酸(すなわち、アセト酢酸)からなる群から選択される少なくとも二つの別個の外因性ケトン体を含む組成物を指すために使用される。
【0035】
化合物(i)および(ii)は、種々の形態の「ケトン体塩」を表す。化合物(iii)および(iv)は、種々の形態の「ケトン体エステル」を表す。そして、化合物(v)および(vi)は、種々の形態の「ケトン体の遊離酸」を表す。積重されたケトン体組成物は、好ましくは、(A)一つ以上のケトン体塩、(B)一つ以上のケトン体エステル、および(C)一つ以上のケトン体の遊離酸のうちの少なくとも二つが存在するように(i)~(vi)から選択されるケトン体化合物の組み合わせを含む。
【0036】
少なくとも幾つかの場合には、特定の外因性ケトン体(すなわち、ベータ-ヒドロキシブチレートまたはアセトアセテート)は「ケトン体成分」と呼ばれるのに対して、特定の塩、エステル、または遊離酸部分は「キャリア成分」と呼ばれる。例えば、ベータ-ヒドロキシ酪酸ナトリウム化合物は、前記キャリア成分としてナトリウムおよび前記ケトン体成分としてベータ-ヒドロキシブチレートを利用し、アセト酢酸は、前記キャリア成分として水素および前記ケトン体成分としてアセトアセテートを利用し、ベータ-ヒドロキシ酪酸メチルは、前記キャリア成分としてメチル基および前記ケトン体成分としてベータ-ヒドロキシブチレートを利用する。前記ケトン体のエステルおよび/または塩の形態は、純粋な酸形態と比較して酸性度およびえぐみ(harshness)を減らすので、酸形態のための「キャリア」と考えることができる。
【0037】
幾つかの実施形態、特に外因性ケトン体の遊離酸形態を含む実施形態は、より投与可能な形態で前記外因性ケトン体を提供するように機能する「安定剤」も含み得る。例えば、ベータ-ヒドロキシ酪酸および/またはアセト酢酸は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩、塩基性アミノ酸等のような強塩基または弱塩基を使用して部分的に中和され得る。そのような部分的な中和に続いて、溶液はまた、本明細書で定義される「塩」形態を含む。しかしながら、中和が部分的にすぎず、特定のモル過剰のH+イオンが存在したままであれば、溶液には、ある割合の遊離酸の形態も含まれる。
【0038】
幾つかの実施形態は、少なくとも一つのベータ-ヒドロキシブチレート化合物と少なくとも一つのアセトアセテート化合物とを組み合わせる。
【0039】
幾つかの実施形態は、任意に、脂肪酸またはそのエステルの形態のケトン体前駆体の補給源を含む。脂肪酸の典型的なエステル形態は、モノグリセリド、ジグリセリド、またはトリグリセリドである。脂肪酸およびそれらの脂肪酸のエステルの好ましい形態は中鎖脂肪酸であるが、短鎖および/または長鎖脂肪酸ならびにそれらのエステルもまた利用され得る。ケトン体前駆体の補給源を提供することで、ケトーシスの効果を有利に拡張および/または高めることができる。すなわち、そのような補給源は、投与された外因性ケトン体と併せてケトーシスを開始および維持するために、身体が手元に十分な「蓄え」を有することを確実にすることができる。
【0040】
特段の指示がない限り、「塩」という用語は、結晶、粉末、他の固体形態、水に溶解された液体溶液の形態、液体に分散された懸濁液の形態、またはゲル等、任意の特定の物理的状態を意味または暗示するものではない。例えば、ベータ-ヒドロキシ酪酸および/またはアセト酢酸をアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩、塩基性アミノ酸等のような強塩基または弱塩基により少なくとも部分的に中和することによって、塩は溶液中で形成され得る。
【0041】
例示的な塩形態には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩が含まれる。幾つかの実施形態は、一つ以上の遷移金属塩を含む。塩の一部として使用するのに適した遷移金属カチオンには、リチウム、クロム、マンガン、コバルト、銅、亜鉛、鉄(例えば、鉄(II)カチオンまたは鉄(III)カチオンとして)、モリブデン、およびセレンが含まれる。他の適切な塩形態には、リジン、ロイシン、フェニルアラニン、イソロイシン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、クレアチン、アグマチン、およびシトルリン等のアミノ酸またはそれらの誘導体のカチオンが含まれる。リジンおよびロイシンは、ケトジェニックであるため好ましい。フェニルアラニン、イソロイシン、トレオニン、トリプトファン、およびチロシンはまた、ケトジェニックおよびグルコジェニックの両方であるため好ましい。他のアミノ酸はグルコジェニックであり、ケトジェニックアミノ酸を使用することが望ましい範囲ではあまり好ましくない場合がある。
【0042】
適切なエステル形態には、エタノールのモノエステル、1-プロパノールのモノエステル、1,3-プロパンジオールのモノエステル、1,3-プロパンジオールのジエステル、S-1,3-ブタンジオールのモノエステル、1,3-ブタンジオールのジエステル、グリセリンのモノエステル、グリセリンのジエステル、およびグリセリンのトリエステルが含まれる。1,3-ブタンジオールは、ベータ-ヒドロキシブチレートおよび/またはアセトアセテート化合物の供給源として追加的または代替的に利用され得る代謝性ベータ-ヒドロキシブチレート前駆体である。
【0043】
本明細書で使用される場合に、「対象体」または「患者」は、ヒトおよび他の霊長類を含む哺乳動物を指す。前記対象体は、代謝療法、治療、もしくは予防を必要とする任意の哺乳動物、または代謝療法、治療、もしくは予防を必要とすることが疑われる任意の哺乳動物であり得る。予防とは、糖尿病またはその他の代謝障害の高いリスクが特定された場合のような、発症の可能性を防ぐためにレジメン(regiment)に取りかかることを意味する。「患者」および「対象体」は、本明細書では区別なく使用される。
【0044】
「単位用量」という用語は、特定の量または用量の組成物またはその組成物の成分を送達するように構成された剤形を指す。剤形の例には、限定されるものではないが、錠剤(tablet)、カプセル剤、粉剤、食料品、食品添加物、飲料、飲料添加物、キャンディー、棒つきキャンディー(suckers)、錠剤(pastilles)、栄養補助食品、スプレー、注射剤、および坐剤が含まれる。そのような剤形は、完全な単位用量またはその単位用量の一部(例えば、単位用量の二分の一、三分の一、または四分の一)を提供するように構成され得る。
【0045】
組成物またはその成分の単位用量を提供するために使用することができる別の剤形は、完全な単位用量またはその画分(fraction)(例えば、単位用量の二分の一、三分の一、または四分の一)に等しい測定された量の組成物を中に保持するように構成されるカップ、スクープ、シリンジ、スプーン、または結腸洗浄装置等の単位用量測定装置である。例えば、カートン、ボックス、缶、ジャー、バッグ、パウチ、ボトル、ジャグ、または樽等の、組成物の幾つかの単位用量(例えば、5~250単位用量または10~150単位用量)を収容するバルク容器は、組成物またはその成分の単位用量またはその画分を提供するように構成された単位用量測定装置と共に使用者に提供される。
【0046】
本明細書に開示される組成物をバルク形態で提供する際に使用するためのキットは、前記組成物の単位用量を提供しつつ、ある量の組成物を中に保持するバルク容器と、組成物またはその成分の単位用量またはその画分を提供するように構成された単位用量測定装置とを含み得る。一つ以上の単位用量測定装置は、一つ以上のバルク容器と共に使用するために、販売時点で前記バルク容器の内側に入れられているか、前記バルク容器の外側に取り付けられているか、より大きなパッケージ内に前記バルク容器と一緒に予め包装されているか、または販売業者もしくは製造業者によって提供され得る。
【0047】
キットには、単位用量またはその画分のサイズ、ならびに投与の方法および回数に関する説明書が含まれ得る。前記説明書は、上記バルク容器上に設けられているか、前記バルク容器と共に予め包装されているか、前記バルク容器と共に販売される包装材上に配置されているか、または販売業者もしくは製造業者によって提供され得る(例えば、ウェブサイト、メーラー、チラシ、製品資料等で)。前記使用説明書は、単位用量またはその画分を適切に送達するために前記単位用量測定装置を使用する方法に関する参照を含み得る。前記説明書は、追加的または代替的に、前記バルク容器に付属していないスプーン、スパチュラ、カップ等のような一般的な単位用量測定装置への参照を含み得る(例えば、提供された単位用量測定装置を紛失または無くした場合)。そのような場合に、前記バルク容器上もしくはバルク容器と共に提供されるか、またはそうでなければ製品に関する販売業者によって提供される説明書、および組成物の単位用量またはその画分を適切に送達する方法に従うときにエンドユーザーによって、キットが構築され得る。
【0048】
本明細書で使用される「ケトーシス」は、約0.5mmol/L~約16mmol/Lの範囲内の血中ケトンレベルを有する対象体を指す。ケトーシスは、ミトコンドリア機能を改善し、活性酸素種の産生を減少させ、炎症を軽減し、神経栄養因子の活性を増加させる場合がある。本明細書で使用される「ケト適応」は、持続的な非病理学的「軽度ケトーシス」もしくは「治療的ケトーシス」を達成するための長期の栄養学的ケトーシス(一週間超)を指し、または脂肪が主要なエネルギー源となり、結果として身体を脂肪貯蔵状態から脂肪酸化状態へとシフトする代謝の変化を示す。
【0049】
「中鎖トリグリセリド」(MCT)という用語は、三つの中鎖脂肪酸に結合したグリセロール骨格を有する分子を指す。中鎖脂肪酸の長さは、6個~12個の炭素原子の範囲である。例示的な脂肪酸は、8個の炭素分子を含むオクタン酸としても知られるカプリル酸、および10個の炭素分子を含むデカン酸としても知られるカプリン酸である。MCTはケトン体前駆体であるため、一つ以上のMCTを含むと、ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテート化合物とは独立してケトン体を産生するための追加の供給源が提供され得るため、望ましい治療レベルまでのケトンレベルの持続的な上昇を促進するのに役立つ。
【0050】
「短鎖トリグリセリド」(SCT)という用語は、MCT分子に類似しているが、グリセロール骨格に結合した短鎖脂肪酸(6個以下の長さの炭素原子、例えば5個以下の炭素原子)を有する分子を指す。これらは、モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリド、他のエステル、塩、または遊離酸の形で提供され得る。
【0051】
「長鎖トリグリセリド」(LCT)という用語は、MCT分子に類似しているが、上記グリセロール骨格に結合した長鎖脂肪酸(12個以上の長さの炭素原子、例えば13個以上の炭素原子)を有する分子を指す。
【0052】
短鎖脂肪酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、およびカプロン酸が含まれる。中鎖脂肪酸の例には、カプリル酸、カプリン酸、およびラウリン酸が含まれる。飽和長鎖脂肪酸の例には、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、およびセロチン酸が含まれる。
【0053】
「投与」または「投与する」という用語は、本明細書では、ケトジェニック組成物が対象体に送達される過程を説明するために使用される。前記組成物は、とりわけ、経口、胃内、または非経口(静脈内および動脈内ならびに他の適切な非経口経路を指す)を含む様々な方法で投与され得る。
【0054】
II.ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートのバランス
ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートを組み合わされたケトジェニック組成物の上記投与は、ケトン体の血中レベルの上昇および持続をもたらし、それにより、持続性ケトーシスの代謝的および生理学的利点が活用される。対象体におけるケトン生成の上記成分を再現するために血中のケトン体の上記レベルを上昇させることで、食事のみに基づいてケトーシスを誘導および持続させることを目的とする方法と比較して、食事の選択肢においてより大きな柔軟性を対象体に提供する(例えば、絶食および/または炭水化物摂取量制限に基づく)。例えば、適切な量のベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートが投与された対象体は、ケトジェニック状態を危険にさらしたり、グルコースベースの代謝状態に戻ったりすることなく、より高レベルの炭水化物または糖ベースの食品を食べることができるため、解糖とケトーシスとの間を切り替えることにより、代謝の混乱のリスクなしにケトーシスを持続させるためのはるかに簡単な経路が可能となる。
【0055】
対象体におけるケトン体レベルの増加の有益な効果の例には、食欲抑制、体重減少、脂肪減少、血中グルコース値の低下、精神的敏捷性の改善、身体エネルギーの増加、認知機能の改善、外傷性脳損傷の減少、糖尿病(例えば、II型糖尿病)の影響の減少、神経障害(例、ALS、アルツハイマー病、パーキンソン病)の改善、癌の減少、炎症の減少、老化防止、抗糖化、てんかん性発作の減少、気分の改善、力の増加、筋肉量の増加、または体組成の改善のうちの一つ以上が含まれる。
【0056】
さらに、そのような投与は、しばしば「ケト・インフルエンザ」と呼ばれる、非常に望ましくない影響であり、しばしばケトジェニックに有利な状態に入ることを高い水準で引き留める、ケトーシスに入るのに通常関連する有害な影響を減少または排除しつつ、ケトジェニック状態へのより簡単な移行を促進する。
【0057】
本明細書に開示される実施形態は、治療的有効量のベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物を提供する。有利には、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテート組成物は、使用者におけるケトジェニック状態の誘導および/または持続を最適化するために、生物学的にバランスのとれた割合のベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートを提供するように配合される。例えば、本明細書に開示されるベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ実施形態は、ベータ-ヒドロキシブチレート単独またはアセトアセテート単独の他の点では同様の投与計画と比較して、哺乳動物においてより効果的にケトーシスを誘導および/または持続させることができる。同様に、本明細書に開示される特定のベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ実施形態は、幾らかの不特定の量のアセトアセテート(幾らかの些細な量である可能性がある)を含む組成物と比較して、哺乳動物においてより効果的にケトーシスを誘導および/または持続させることができる。
【0058】
図1は、ケトン生成とケトン分解との間の相互作用を概略的に示している。ケトン生成は肝臓内で起こり、異化過程の組み合わせにより、アミノ酸、脂肪酸、および/またはグリコーゲンが分解されて、ケトン体のアセトアセテートおよびベータ-ヒドロキシブチレートが生成される。これらのケトン体の大部分は、典型的には、脂肪酸酸化によって産生される。
【0059】
ベータ-ヒドロキシブチレートは、より還元された化合物であるが、ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートの両方が血流中を通過し、末梢組織に送達されて、エネルギー源として使用される。示されるように、アセトアセテートはTCA回路(すなわち、クエン酸回路)で直接利用され得るのに対して、ベータ-ヒドロキシブチレートは最初にNAD+によってアセトアセテートに酸化されてから、結果として生じるアセトアセテートがTCA回路に組み込まれる。
【0060】
図1を再び参照して、本明細書に記載されるベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物の利点を、特にNAD
+節約の利点に関して説明する。対象体がケトーシス状態にあるとき、エネルギープロファイルは、グルコースが主にエネルギーに使用される場合と比較して、NAD
+節約について既に好ましい。以下に説明されるように、別々のケトン体成分であるベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートを積重することで、NAD
+をさらに節約することができる。
【0061】
示されるように、ケトン分解の間に、利用可能なアセトアセテートはTCA回路に直接組み込まれ、NAD+分子によって最初に酸化される必要はない。内因性ケトーシスの間に(例えば、絶食の結果として)、末梢組織内でベータ-ヒドロキシブチレートをアセトアセテートに転化する(ケトン分解)ためのこれらのNAD+分子の使用は、肝臓内でアセトアセテートをベータ-ヒドロキシブチレートに転化する(ケトン生成)ためのNAD+分子の対抗的生成によって本質的にバランスがとられている。
【0062】
しかしながら、使用者に外因性ベータ-ヒドロキシブチレートが補給されると、末梢組織内のNAD+の使用は、肝臓でのNAD+の生成によって同じようにバランスがとられない。したがって、外因性ベータ-ヒドロキシブチレートの補給は、使用者に対するNAD+の需要の増加を引き起こす。低レベルのNAD+は、老化およびミトコンドリア機能の低下に関連している。例えば、Shin-ichiro Imai and Leonard Guarente, “NAD+and Sirtuins in Aging and Disease,” Trends Cell Biol. 2014 Aug, 24(8), 464-471、Massudi H et al,“Age-associated changes in oxidative stress and NAD+ metabolism in human tissue,” PLoS One, 2012, 7(7):e42357、Carlos Canto and Johan Auwerx,“Targeting Sirtuin 1 to Improve Metabolism: All you Need is NAD+?” Pharm. Rev. Jan 2012, 64(1) 166-187を参照のこと。さらに、NADHに対して低いNAD+は、実際の酸素レベルが正確であっても、低い酸素レベルに関連する低いNAD+に対する同じ生理学的応答の幾つかを作動させ得る。Gomes AP et al.“Declining NAD(+) induces a pseudohypoxic state disrupting nuclear-mitochondrial communication during aging” Cell, 2013 Dec 19, 155(7)を参照のこと。
【0063】
したがって、ベータ-ヒドロキシブチレートと比較してアセトアセテートの割合を増やした外因性ケトジェニック組成物は、より高レベルのベータ-ヒドロキシブチレートを有する組成物と比較して、NAD+の枯渇を減少させることができる。本明細書に記載される組成物は、これらの利益を達成するために、ベータ-ヒドロキシブチレートと組み合わせて有効レベルのアセトアセテートを含む。
【0064】
一般に、ベータ-ヒドロキシブチレートは、一次的「エネルギー」のケトン体であり、アセトアセテート対ベータ-ヒドロキシブチレートの比率が高すぎると、所望のエネルギーブーストを得る能力が制限され得る。場合によっては、過剰なアセトアセテートも望ましくない影響を及ぼす可能性がある。
図1を再び参照すると、血液中を循環しているアセトアセテートの量は自発的にCO
2およびアセトンに転化する。高レベルのアセトンは望ましくない場合がある。アセトンレベルの上昇は、例えば、アセトアセテートがベータ-ヒドロキシブチレートに転化されていないこと、またはTCA回路で適切に使用されていないことの指摘によって、エネルギーの非効率的な使用を表し得る。さらに、人体は典型的にはケトーシスに関連する正常なアセトンレベルを管理することができるが、過剰なアセトンを生理学的に除去することは肝臓に負担がかかり得る。これらの一次的な生理学的影響に加えて、過剰なアセトンは不快な「ケト呼吸」も引き起こす。ベータ-ヒドロキシブチレートは典型的に、使用される末梢組織に到達するまでアセトアセテートへと転化されないため、外因性ベータ-ヒドロキシブチレートの補給はアセトンの生成を最小限に抑える。
【0065】
これらの理由から、ベータ-ヒドロキシブチレートに対するアセトアセテートのレベルを高めることの利点は、過剰なアセトアセテートの有害な影響に対してバランスをとらねばならない。一実施形態では、ケトジェニック組成物は、ベータ-ヒドロキシブチレートとアセトアセテートとの組み合わせを含み、その際、アセトアセテートは、ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートの混合物の、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、または少なくとも約40%(重量/重量)である量で含まれる。
【0066】
同時に、ベータ-ヒドロキシブチレートとアセトアセテートとの最適化されたバランスは、典型的には、アセトアセテート成分がベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートの混合物の約45%以下に制限される場合である。言い換えれば、ベータ-ヒドロキシブチレート対アセトアセテートの最適化された重量比は、約19:1、約16:1、約14:1、約12:1、約9:1、約6:1、約4:1、約3:1、約7:3、約1.5:1、約1.22:1、およびこれらの比率によって規定される範囲であり得る。これらの比率を有する配合物は、過剰のアセトアセテートに関連する有害な影響を及ぼすことなく、本明細書に記載される効果的なケトジェニック特性を提供するのに十分なアセトアセテートがベータ-ヒドロキシブチレートの割合に応じて存在することを有利に保証する。それぞれの別個のケトン体成分の量を調節することで、特定の用途の要求または好みに最適化された調整された組成物が有利に可能となる。以下でより詳細に記載されるように、ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートの相対量は、例えば、対象体の年齢、健康、活動レベル、所望の投与計画、および/または肝臓感受性に基づいて調節および最適化され得る。
【0067】
一般に、より高齢な(例えば、55歳を上回る年配者、60歳を上回る年配者、65歳を上回る年配者、または70歳を上回る年配者)または虚弱な人々のような、NAD+が欠乏している可能性のある対象体は、ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートの混合物の約25%から約45%の間のアセトアセテート、または約30%から約45%の間のアセトアセテート、または約35%から約45%の間のアセトアセテートのような、より高い相対量のアセトアセテートから恩恵を受ける場合がある。さらに、本明細書に開示される組成物は、補足的なNAD+を含み得る。
【0068】
同様に、より健康でより若い人々のような、NAD+が欠乏していない対象体は、ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートの混合物の約5%から約25%の間のアセトアセテート、または約8%から約22%の間のアセトアセテート、または約10%から約20%の間のアセトアセテートのような、より低い相対量のアセトアセテートから恩恵を受ける場合がある。
【0069】
本明細書に記載されるケトジェニック組成物は、ケトーシスを誘導および持続させるのに有効な投薬計画内で提供され得る。例えば、一日量におけるベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートを組み合わせた質量は、約0.5グラム~約50グラム、または約0.75グラム~約25グラム、または約1グラム~約15グラム、または約1.5グラム~約12グラムの範囲であり得る。前記一日量は、一日一回投与または複数回投与(例えば、一日二回、一日三回、または一日四回)として提供され得る。
【0070】
ベータ-ヒドロキシブチレートは、遊離酸として、塩として、混合塩として、エステルとして、または以下でより詳細に説明されるように、それらの「積重された」組み合わせとして提供され得る。塩の形態で提供される場合に、ベータ-ヒドロキシ酪酸塩は、例えば、カチオンとして、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、または適切な遷移金属(例えば、亜鉛、鉄、モリブデン、またはセレン)を含み得る。幾つかの実施形態は、追加的または代替的に、ベータ-ヒドロキシ酪酸塩が生成されるpHで正味の正電荷を有する一つ以上のアミノ酸または他の有機化合物としてカチオンを含み得る。この目的に適したアミノ酸には、ベータ-ヒドロキシ酪酸アニオンの対カチオンを提供し得る、プロトン化されて正味の正電荷を有する化合物を形成することができる二つ以上のアミン基を含むアミノ酸が含まれ得る。例としては、アルギニン、リジン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン、オルニチン、シトルリン、L-グルタミン、または他の適切なアミノ酸もしくはアミノ酸の代謝産物(例えば、クレアチン)が含まれる。
【0071】
幾つかの実施形態では、ケトジェニック組成物はまた、一つ以上の中鎖脂肪酸または一つ以上の中鎖脂肪酸の一つ以上のモノグリセリド、ジグリセリド、もしくはトリグリセリド等の他のケトン体前駆体を含み得る。一つ以上の中鎖脂肪酸、または一つ以上の中鎖脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド、もしくはトリグリセリドが含まれると、ベータ-ヒドロキシブチレートまたはアセトアセテートとは独立したケトン体の産生のための追加の供給源が提供され得る。言い換えれば、ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテート化合物は、体内でのケトーシスのより迅速な達成を促進する一方で、中鎖脂肪酸または中鎖脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド、もしくはトリグリセリドは、外因性ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテート分子が既に身体により消費されたのであれば、前記身体をケトーシスの状態に持続させるのに役立つ。MCT、中鎖脂肪酸、または中鎖脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド、もしくはトリグリセリドのうちの少なくとも一つが含まれると、より多くの外因性ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートを提供する必要なく、より長い期間にわたってケトーシスを持続させるのに役立ち得る。
【0072】
少なくとも一つの中鎖脂肪酸は、6個~12個の炭素、好ましくは8個~10個の炭素を有する。ベータ-ヒドロキシブチレートと中鎖脂肪酸またはそのエステルとの組み合わせに関連する組成物および方法は、米国特許第9,138,420号に開示されており、この特許は、全体を参照により本明細書に援用される。
【0073】
一つ以上の中鎖脂肪酸または一つ以上の中鎖脂肪酸の一つ以上のモノグリセリド、ジグリセリド、もしくはトリグリセリドに加えてまたはその代わりに、ケトジェニック組成物は、一つ以上の短鎖脂肪酸および/もしくは長鎖脂肪酸、または一つ以上の短鎖脂肪酸および/もしくは長鎖脂肪酸の一つ以上のモノグリセリド、ジグリセリド、もしくはトリグリセリドを含み得る。短鎖脂肪酸は典型的には、6個未満の炭素を含み、長鎖脂肪酸は典型的には、12個より多くの炭素を含む。
【0074】
中鎖脂肪酸、または中鎖トリグリセリド等のそのエステルの例および供給源には、ココナッツオイル、ココナッツミルク粉末、ヤシオイル、パームオイル、パーム核オイル、カプリル酸、単離された中鎖脂肪酸、例えば、単離されたヘキサン酸、単離されたオクタン酸、単離されたデカン酸、ココナッツオイル等の精製されたまたは天然形態のいずれかの中鎖トリグリセリド、および、中鎖脂肪酸のエトキシル化トリグリセリドのエステル誘導体、エノントリグリセリド誘導体、アルデヒドトリグリセリド誘導体、モノグリセリド誘導体、ジグリセリド誘導体、およびトリグリセリド誘導体、ならびに、中鎖トリグリセリドの塩が含まれる。エステル誘導体には、任意に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル等のアルキルエステル誘導体が含まれる。
【0075】
上記にかかわらず、個人が摂取することができるMCTまたは他の中鎖脂肪酸源の量には事実上の制限があり、ここで、MCTまたは他の中鎖脂肪酸源(例えば、これらは胃腸の問題を引き起こし得る)に対する許容性がより低い個体もある。
【0076】
幾つかの実施形態では、ケトジェニック組成物は、固体または粉末の形態として提供され得る。固体または粉末のケトジェニック組成物は、当該組成物の吸湿性を低下させるように構成された一つ以上の追加の成分を含み得る。例えば、消費に安全なタイプおよび量の様々な固化防止剤、流動剤、および/または吸湿剤が含まれ得る。そのような追加の成分には、アルミノケイ酸塩、フェロシアン化物、炭酸塩または重炭酸塩、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カルシウム)、リン酸塩(例えば、リン酸三カルシウム)、タルク、粉末セルロース等のうちの一つ以上が含まれ得る。
【0077】
代替的な実施形態では、ケトジェニック組成物は、迅速な送達および吸収のためのショットもしくはマウススプレーの形態等の液体として、またはゲルとして提供され得る。液体またはゲルの形態は、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテート化合物が溶解または分散される、水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール等のような一つ以上の担体を含み得る。前記組成物は、ベータ-ヒドロキシブチレート化合物の多少芳しくない味をマスクするのを助ける着香料(flavoring agent)を含み得る。これらの着香料には、ペパーミント等の精油、天然甘味料および人工甘味料、ならびに当該技術分野で知られている他の香料(flavorant)が含まれ得る。
【0078】
上記ケトジェニック組成物は、ビタミン類、ミネラル類、およびカフェインまたは他の刺激剤(stimulant)等の、当該技術分野で知られている一つ以上の補助剤を含み得る。例えば、上記ケトジェニック組成物は、例えば、約5μg~約200μg、または約10μg~約100μg、もしくは約15μg~約75μgの量、または約200IU~約8000IU、もしくは約400IU~約4000IU、もしくは約600IU~約3000IUの量で、ビタミンD3をさらに含み得る。カフェインは、約10mg~約250mg、または約25mg~約170mg、または約40mg~約120mgの量で含まれ得る。
【0079】
III.異なる形態のケトン体の積重
上記のように、本明細書に記載される外因性ケトン体は、三つの一般的な形態:1)塩形態、2)エステル形態、および3)遊離酸形態(すなわち、ベータ-ヒドロキシ酪酸またはアセト酢酸)で提供され得る。ベータ-ヒドロキシブチレートは、R-エナンチオマー、S-エナンチオマー、ラセミ混合物として提供され得るか、または、前記R-エナンチオマーもしくは前記S-エナンチオマーで富化され得る。本明細書に記載される組成物は、これらの形態のいずれか一つで、またはこれらの形態の少なくとも二つを組み合わせた「積重された」混合物として提供され得る。
【0080】
異なる形態のそれぞれは、独自の特性と、独自の潜在的な利点および制限とを有する。例えば、ベータ-ヒドロキシブチレートまたはアセトアセテートのエステル形態は、一般的に、他の形態に対して芳しくない感覚受容特性を有する。さらに、ベータ-ヒドロキシブチレートまたはアセトアセテートのエステル形態は、しばしば刺激的な味および/または臭いを有すると説明される。
【0081】
ベータ-ヒドロキシブチレートまたはアセトアセテートの塩形態は、一般に、エステル形態よりも味が良いと考えられている。しかしながら、塩の形態での外因性ケトン体の臨床的または栄養学的に有効な用量の投与は、本質的に、比較的高レベルの対応するカチオンの投与を必要とする。例えば、ナトリウムは、ケトン体塩における前記カチオンとしてしばしば使用され、高レベルのナトリウムは健康に悪影響を与えることがよく知られている。カリウムおよびカルシウムの過剰な量も避けられるべきである。種々のカチオンを有する種々の塩を混合して単一のカチオンの影響を薄めることができるが、対象体/患者の電解質バランスを乱さずに有効量のベータ-ヒドロキシブチレートおよび/またはアセトアセテートを提供することは依然として困難であり得る。
【0082】
遊離酸形態も利用することができる。しかしながら、ベータ-ヒドロキシ酪酸は4.70のpKaを有するため、生理的pHで脱プロトン化してH+を生成する。同様に、アセト酢酸は3.59のpKaを有し、同様に生理的pHで脱プロトン化してH+を生成する。生じる過剰な酸性度は、潰瘍または逆流等の胃腸の問題の惹起または悪化を含む望ましくない副作用を引き起こす可能性がある。
【0083】
アセトアセテートの遊離酸形態は最も安定性の低い形態であり(アセトンおよび二酸化炭素に分解し得ることを意味する)、ここで、前記塩形態は幾らかより安定性が高く、前記エステル形態は大幅により安定性が高い。前記酸形態は、水中で37℃にて140分の半減期を有するのに対して、塩基性形態(塩形態におけるアニオン)の130時間の半減期を有する。すなわち、前記塩基性形態は、約55倍より遅く分解する。エステルははるかに安定性が高く、貯蔵条件に応じて数週間、数か月、または数年間持続し得る。
【0084】
異なる形態の外因性ケトン体を組み合わせることで、これらの望ましくない副作用の発生および/もしくは重症度を有利に制限することができ、ならびに/または、より高用量の外因性ケトン体の投与を許容することができる。例えば、ケトン体の積重は、副作用の同様の発生および/または重症度を引き起こすことなく、単一形態と同量の外因性ケトンを送達することができる。同様に、形態の組み合わせは、副作用の同様の発生および/または重症度に至る前に、単一形態より多量の外因性ケトンを送達することができる。
【0085】
これは、
図2Aおよび
図2Bに概略的に示されている。
図2Aは、単一形態(配合物1~3)、二重積重(配合物4~6)、および三重積重(配合物7)を使用した場合の種々の外因性ケトン用量を示している。個々の許容量は変動する可能性があるため、示された用量は例示であるにすぎないが、典型的な対象体は、対応する副作用を回避するために、任意の単一形態の外因性ケトンの過剰量を避けることを望むであろう。
【0086】
したがって、異なる形態の外因性ケトンを積重することにより、単一形態の使用と比較して、ある用量でより多くの外因性ケトンの送達が可能となり、および/またはより高い投与頻度が可能となる。例えば、異なる形態の外因性ケトンを単一用量で積重することで、当該用量でより多量の外因性ケトンが可能となり、および/または、異なる形態の外因性ケトンを一日を通して異なる用量で服用することで、より多くの投与頻度が可能となり、したがって外因性ケトンのより高い全体的な毎日の送達が可能となる。
【0087】
単一用量の積重されたケトンは、また、単一形態で他の点で同様の量で提供するのと比較して、血中のケトン体のより持続的なレベルを提供することもできる。例えば、積重された配合物は、より好ましい放出プロファイル、例えば、より迅速な開始の利点とより延長された放出の利点とを兼ね備えたプロファイル、および/または、全体的により大きな薬物動態的な曲線下面積(AUC)をもたらすプロファイルを提供するように調整され得る。
【0088】
図2Bは、積重された配合物を含む、外因性ケトンの様々な配合物による治療から生ずる望ましくない副作用の予想される相対的な重症度を示している。1)外因性ケトンの塩形態、2)外因性ケトンのエステル形態、および3)外因性ケトンの遊離酸形態のそれぞれを含む三重積重配合物は、より大量の外因性ケトンの投与を可能にし、および/またはそのような形態の外因性ケトンを二つだけ含む二重積重と比較して低減された副作用を有することが期待される。前記三重積重および前記二重積重の両方は同様に、より大量の外因性ケトンの投与を可能にし、および/または外因性ケトンの一つだけの形態を含む単一形態と比較して低減された副作用を有することが期待される。
【0089】
言い換えれば、所与の用量の外因性ケトンの場合に、前記三重積重は、前記二重積重または単一形態と比較して、1)感覚受容性の副作用、2)電解質平衡異常の副作用、および/または、3)酸性度の副作用がより少なく引き起こされるように配合され得る。例えば、単一形態のケトン体エステルは、負の感覚受容性の副作用のため典型的な使用者が超えないであろう閾値投与量を有する可能性があり、単一形態のケトン体塩は、前記塩と共に投与される電解質の推奨される食事制限によって制限される閾値投与量を有する可能性があり、単一形態のケトン体遊離酸は、前記酸性度の悪影響のため典型的な使用者が超えないであろう閾値投与量を有する可能性がある。積重された形態の外因性ケトン、特に外因性ケトンの三重積重により、感覚受容性、電解質、または酸性度の副作用に関連する個別の閾値のいずれも超えずに、より多量の外因性ケトンの補給が可能となる。
【0090】
幾つかの実施形態では、ベータ-ヒドロキシブチレートの積重は、(i)一つ以上の外因性ケトン塩、(ii)一つ以上の外因性ケトンエステル、および(iii)外因性ケトン体酸(ベータ-ヒドロキシ酪酸および/またはアセト酢酸)のうちの少なくとも二つを含む。例えば、外因性ケトンの二重積重は、成分(i)、(ii)、および(iii)のうちの少なくとも二つを含み得て、各成分はケトン体成分のモル基準で、約2%~約98%、または約5%~約95%、または約10%~約90%、または約20%~約80%、または約30%~約70%、または約40%~約60%で提供される。
【0091】
幾つかの実施形態では、ケトン体の三重積重は、ケトン体エステルをケトン体成分のモル基準で、約2%~約96%、または約5%~約90%、または約10%~約80%、または約20%~約60%で含み、ケトン体塩をケトン体成分のモル基準で、約2%~約96%、または約5%~約90%、または約10%~約80%、または約20%~約60%で含み、遊離酸形態をケトン体成分のモル基準で、約2%~約96%、または約5%~約90%、または約10%~約80%、または約20%~約60%で含む。幾つかの実施形態では、三重積重は、3つの前記キャリア成分の各形態を、ケトン体成分のモル基準でほぼ等しい量で含む。
【0092】
ケトン体の積重はまた、より有利な消化放出プロファイルをもたらし得る。異なるキャリア成分の各形態は、摂取時に幾らか異なる相互作用を示し得る。例えば、前記遊離酸形態は、使用可能なケトン体として血流に容易に送達され得るが、塩形態でできたケトン体は一般に、利用される特定の塩または塩混合物の溶解特性に応じて、血流に到達するのにわずかに長くかかることがあり、エステル形態は、エステル結合が加水分解を受ける速度に応じて、一般に血流に到達するまでに最も長い時間がかかり得る。したがって、積重された配合物は、より好ましい放出プロファイル、例えば、より迅速な開始の利点とより延長された放出の利点とを兼ね備えたプロファイル、および/または全体的により大きな薬物動態的な曲線下面積(AUC)をもたらすプロファイルを提供するように調整され得る。
【0093】
これは
図3に示されており、この図では、ケト積重組成物(例えば、遊離酸、塩、およびエステルの各形態を含む)の予想される放出プロファイルを、遊離酸、塩、およびエステルの単一形態のそれぞれと比較している。前記ケト積重組成物は、より多くの全体的な外因性ケトン体を提供することが可能であり、それらの外因性ケトン体が異なる放出特性を有する複数の異なる形態で提供されるため、全体的な放出プロファイルは拡張され、より大きなAUCが提供される。
【0094】
図3は、S-ベータ-ヒドロキシブチレートおよびR-ベータ-ヒドロキシブチレートの種々の相対量を利用することによって、放出プロファイルがどのように調節され得るかも示している。示されるように、「R積重」内のベータ-ヒドロキシブチレートは、実質的にR-ベータ-ヒドロキシブチレートから構成されるのに対して、「R/S積重」は、R-ベータ-ヒドロキシブチレートの一部をS-ベータ-ヒドロキシブチレートに置き換えて、放出プロファイルを平坦化して延長する。
【0095】
三つの別個の「キャリア成分」形態および二つの異なる「ケトン体成分」タイプがあることを考慮に入れると、配合することができる複数のケト積重の組み合わせが存在する。以下で再現されるように、表1は、前記積重を構成する二つ、三つ、四つ、五つ、または六つの異なる化合物タイプを有する幾つかの例示的な積重された組み合わせを示している。
【0096】
【0097】
IV.投与
本明細書に記載されるケトジェニック組成物は、治療的に有効な投与量で、および/または、ケトーシスを誘導もしくは持続させる頻度で対象体に投与され得る。一日量における上記ベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートを組み合わせた質量は、約0.5グラム~約50グラム、または、約0.75グラム~約25グラム、または、約1グラム~約15グラム、または、約1.5グラム~約12グラムの範囲であり得る。
【0098】
幾つかの実施形態では、組成物は、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせだけが単独で使用された場合と比較してより長い期間にわたりケトーシスを持続させるためのケトン体の追加の供給源を提供するために、一つ以上の中鎖脂肪酸、脂肪酸エステル、または中鎖脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド、もしくはトリグリセリドをさらに含み得る。幾つかの実施形態では、前記組成物は、好ましくは、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテート対中鎖脂肪酸(または、そのエステル)の比率が約4:1~約1:4、または約2:1~約1:2、または約1.5:1~約1:1.5の範囲であるように投与される。
【0099】
代替的な実施形態では、組成物は、ケトーシスを持続させるためのケトン体の追加の供給源を提供するために、一つ以上の短鎖脂肪酸および/もしくは長鎖脂肪酸、脂肪酸エステル、または短鎖脂肪酸および/もしくは長鎖脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド、もしくはトリグリセリドをさらに含み得る。幾つかの実施形態では、前記組成物は、好ましくは、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテート対中鎖脂肪酸、短鎖脂肪酸および/もしくは長鎖脂肪酸(そのエステル)の比率が約4:1~約1:4、または約2:1~約1:2、または約1.5:1~約1:1.5の範囲であるように投与される。
【0100】
幾つかの実施形態では、対象体は、好ましくは、組成物の投与期間の間に炭水化物およびタンパク質の摂取を制限するケトン食療法に従う。一例の実施形態では、前記対象体は、食事摂取量を約65%の脂肪、約25%のタンパク質、および約10%の炭水化物の比率に制限し得る。生ずる治療的ケトーシスは、広範囲な代謝障害のための代謝療法として迅速かつ持続的なケト適応をもたらし、治療的絶食、体重減少、および能力向上のための栄養サポートを提供する。したがって、前記組成物は、典型的には、一日一回、一日二回、または一日三回、ケトーシスの状態を促進および/または持続させることを望む対象体に投与される。
【0101】
好ましい実施形態では、ケトジェニック組成物は、固体、粉末形または液体で、例えば、粉末混合物(例えば、粉末充填ゼラチンカプセル)、ハードプレス錠剤での組成物の経口投与、または当業者に知られる他の経口投与経路を介して投与される。
【0102】
幾つかの実施形態では、組成物の複数の用量が投与される。前記組成物の投与頻度は、以前の治療からの治療のタイミング、治療の目的等のような様々な要因のいずれかに応じて変動し得る。前記組成物の投与期間(例えば、前記薬剤が投与される期間)は、対象体の応答、所望の治療の効果等を含む様々な要因のいずれかに応じて変動し得る。
【0103】
投与されるべき組成物の量は、個体の感受性の度合い、個体の年齢、性別、および体重、個体の特異体質反応等のような要因にしたがって変動し得る。「治療的有効量」は、in vivoで治療的に有効な結果(すなわち、治療的ケトーシス)を促進するために必要な量である。本開示によれば、適切な単回用量サイズは、適切な期間にわたって一回以上投与した場合に、患者の症状を予防または緩和(軽減または排除)することができる用量である。
【0104】
投与される組成物の量は、組成物の成分の効力、吸収、分布、代謝、および排泄速度、投与方法、ならびに、治療される特定の障害だけでなく、当業者に知られる他の要因にも依存する。用量は、緩和されるべき状態の重症度を考慮に入れて、特定の障害または状態に対する治療的または予防的応答等の所望の応答に影響を与えるのに十分であるべきである。化合物は、所与の期間にわたって一回(例えば、一日一回)投与することができ、または時間間隔にわたって分けて投与することができる。投与は、個々の必要性および組成物を投与するまたは投与を監督する人の専門的な判断にしたがって調節され得ることが理解されるべきである。
【実施例】
【0105】
V.実施例
以下は、投与される対象体においてケトジェニック状態を誘導および/または持続させるのに有用な例示的なベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物の説明である。本明細書で論じられるように、実施例に記載されているベータ-ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテート化合物は、塩、エステル、二量体、三量体、オリゴマー、およびポリマーの形態であり得ることを理解されたい。組成物はまた、中鎖脂肪酸、エステル、グリセリド、および本明細書に開示される他の補充物と組み合わせて、所望のレベルの高められたケトン体および他の効果をもたらすこともできる。
【0106】
実施例1
ベータ-ヒドロキシブチレートをアセトアセテートと混合することによって、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物を調製する。アセトアセテートは、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの混合物の重量の10%で添加される。アセトアセテートを含まない同様の投与量のベータ-ヒドロキシブチレートと比較して、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物は、対象体において利用可能なNAD+の減少を制限する。同時に、アセトアセテートの量は、血中の高レベルのアセトンに関連する望ましくない影響を及ぼすほど高くはない。
【0107】
上記ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組成物は、ケトジェニック組成物として、例えば、粉末、液体もしくはゲル形態で食品もしくは飲料と混合された栄養補助食品として、一つ以上のカプセル剤もしくは錠剤の形態で、またはマウススプレーもしくはエナジーショット等の液体形態で容易に投与される。
【0108】
実施例2
ベータ-ヒドロキシブチレートをアセトアセテートと混合することによって、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物を調製する。アセトアセテートは、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの混合物の重量の15%で添加される。アセトアセテートを含まない同様の投与量のベータ-ヒドロキシブチレートと比較して、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物は、対象体において利用可能なNAD+の減少を制限する。同時に、アセトアセテートの量は、血中の高レベルのアセトンに関連する望ましくない影響を及ぼすほど高くはない。
【0109】
ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組成物は、ケトジェニック組成物として、例えば、粉末、液体もしくはゲル形態で食品もしくは飲料と混合された栄養補助食品として、一つ以上のカプセル剤もしくは錠剤の形態で、またはマウススプレーもしくはエナジーショット等の液体形態で容易に投与される。
【0110】
実施例3
ベータ-ヒドロキシブチレートをアセトアセテートと混合することによって、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物を調製する。アセトアセテートは、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの混合物の重量の20%で添加される。アセトアセテートを含まない同様の投与量のベータ-ヒドロキシブチレートと比較して、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物は、対象体において利用可能なNAD+の減少を制限する。同時に、アセトアセテートの量は、血中の高レベルのアセトンに関連する望ましくない影響を及ぼすほど高くはない。
【0111】
ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組成物は、ケトジェニック組成物として、例えば、粉末、液体もしくはゲル形態で食品もしくは飲料と混合された栄養補助食品として、一つ以上のカプセル剤もしくは錠剤の形態で、またはマウススプレーもしくはエナジーショット等の液体形態で容易に投与される。
【0112】
実施例4
ベータ-ヒドロキシブチレートをアセトアセテートと混合することによって、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物を調製する。アセトアセテートは、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの混合物の重量の25%で添加される。アセトアセテートを含まない同様の投与量のベータ-ヒドロキシブチレートと比較して、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物は、対象体において利用可能なNAD+の減少を制限する。同時に、アセトアセテートの量は、血中の高レベルのアセトンに関連する望ましくない影響を及ぼすほど高くはない。
【0113】
ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組成物は、ケトジェニック組成物として、例えば、粉末、液体もしくはゲル形態で食品もしくは飲料と混合された栄養補助食品として、一つ以上のカプセル剤もしくは錠剤の形態で、またはマウススプレーもしくはエナジーショット等の液体形態で容易に投与される。
【0114】
実施例5
ベータ-ヒドロキシブチレートをアセトアセテートと混合することによって、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物を調製する。アセトアセテートは、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの混合物の重量の30%で添加される。アセトアセテートを含まない同様の投与量のベータ-ヒドロキシブチレートと比較して、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物は、対象体において利用可能なNAD+の減少を制限する。同時に、アセトアセテートの量は、血中の高レベルのアセトンに関連する望ましくない影響を及ぼすほど高くはない。
【0115】
ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組成物は、ケトジェニック組成物として、例えば、粉末、液体もしくはゲル形態で食品もしくは飲料と混合された栄養補助食品として、一つ以上のカプセル剤もしくは錠剤の形態で、またはマウススプレーもしくはエナジーショット等の液体形態で容易に投与される。
【0116】
実施例6
ベータ-ヒドロキシブチレートをアセトアセテートと混合することによって、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物を調製する。アセトアセテートは、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの混合物の重量の35%で添加される。アセトアセテートを含まない同様の投与量のベータ-ヒドロキシブチレートと比較して、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物は、対象体において利用可能なNAD+の減少を制限する。同時に、アセトアセテートの量は、血中の高レベルのアセトンに関連する望ましくない影響を及ぼすほど高くはない。
【0117】
ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組成物は、ケトジェニック組成物として、例えば、粉末、液体もしくはゲル形態で食品もしくは飲料と混合された栄養補助食品として、一つ以上のカプセル剤もしくは錠剤の形態で、またはマウススプレーもしくはエナジーショット等の液体形態で容易に投与される。
【0118】
実施例7
ベータ-ヒドロキシブチレートをアセトアセテートと混合することによって、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物を調製する。アセトアセテートは、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの混合物の重量の40%で添加される。アセトアセテートを含まない同様の投与量のベータ-ヒドロキシブチレートと比較して、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物は、対象体において利用可能なNAD+の減少を制限する。同時に、アセトアセテートの量は、血中の高レベルのアセトンに関連する望ましくない影響を及ぼすほど高くはない。
【0119】
ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組成物は、ケトジェニック組成物として、例えば、粉末、液体もしくはゲル形態で食品もしくは飲料と混合された栄養補助食品として、一つ以上のカプセル剤もしくは錠剤の形態で、またはマウススプレーもしくはエナジーショット等の液体形態で容易に投与される。
【0120】
実施例8
ベータ-ヒドロキシブチレートをアセトアセテートと混合することによって、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物を調製する。アセトアセテートは、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの混合物の重量の45%で添加される。アセトアセテートを含まない同様の投与量のベータ-ヒドロキシブチレートと比較して、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物は、対象体において利用可能なNAD+の減少を制限する。同時に、アセトアセテートの量は、血中の高レベルのアセトンに関連する望ましくない影響を及ぼすほど高くはない。
【0121】
ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組成物は、ケトジェニック組成物として、例えば、粉末、液体もしくはゲル形態で食品もしくは飲料と混合された栄養補助食品として、一つ以上のカプセル剤もしくは錠剤の形態で、またはマウススプレーもしくはエナジーショット等の液体形態で容易に投与される。
【0122】
実施例9
ベータ-ヒドロキシブチレートをアセトアセテートと混合することによって、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物を調製する。アセトアセテートは、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの混合物の重量の5%で添加される。アセトアセテートを含まない同様の投与量のベータ-ヒドロキシブチレートと比較して、ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物は、対象体において利用可能なNAD+の枯渇を減らす。同時に、アセトアセテートの量は、血中の高レベルのアセトンに関連する望ましくない影響を低く制限する。
【0123】
ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組成物は、ケトジェニック組成物として、例えば、粉末、液体もしくはゲル形態で食品もしくは飲料と混合された栄養補助食品として、一つ以上のカプセル剤もしくは錠剤の形態で、またはマウススプレーもしくはエナジーショット等の液体形態で容易に投与される。
【0124】
実施例10
ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物を栄養学的または薬学的に許容可能な担体と組み合わせることによって、上記した実施例のいずれかを改変する。
【0125】
実施例11
ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物を一つ以上の中鎖トリグリセリドおよび/または一つ以上の中鎖脂肪酸および/または中鎖脂肪酸の一つ以上のモノグリセリドもしくはジグリセリドと組み合わせることによって、上記した実施例のいずれかを改変する。
【0126】
実施例12
ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物を一つ以上の短鎖トリグリセリドおよび/または一つ以上の短鎖脂肪酸および/または短鎖脂肪酸の一つ以上のモノグリセリドもしくはジグリセリドと組み合わせることによって、上記した実施例のいずれかを改変する。
【0127】
実施例13
ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物を一つ以上の長鎖トリグリセリドおよび/または一つ以上の長鎖脂肪酸および/または長鎖脂肪酸の一つ以上のモノグリセリドもしくはジグリセリドと組み合わせることによって、上記した実施例のいずれかを改変する。
【0128】
実施例14
ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物をビタミンD3、ビタミン類、ミネラル類および当該技術分野で既知のその他等の一つ以上の補充物と組み合わせることによって、上記した実施例のいずれかを改変する。
【0129】
実施例15
ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物をNAD+と組み合わせることによって、上記した実施例のいずれかを改変する。
【0130】
実施例16
ベータ-ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの組み合わせ組成物をカフェインおよび/または当該技術分野で既知の一つ以上の刺激剤と組み合わせることによって、上記した実施例のいずれかを改変する。
【0131】
実施例17
二つ以上の異なるキャリア成分の形態を組み合わせて、積重された組成物を形成することによって、上記した実施例のいずれかを改変する。
【0132】
本発明は、本発明の趣旨または本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化することができる。説明された実施形態は、全ての点で例示として、みなされるにすぎず、限定するものとして、みなされるべきではない。したがって、本発明の範囲は、上記した説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の意味および均等の範囲内にあるすべての変更は、それらの範囲内に含まれるべきである。