IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和ハウス工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-入浴介助支援システムおよびプログラム 図1
  • 特許-入浴介助支援システムおよびプログラム 図2
  • 特許-入浴介助支援システムおよびプログラム 図3
  • 特許-入浴介助支援システムおよびプログラム 図4
  • 特許-入浴介助支援システムおよびプログラム 図5
  • 特許-入浴介助支援システムおよびプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】入浴介助支援システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20240101AFI20250204BHJP
   A61H 33/00 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
G06Q50/22
A61H33/00 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021057914
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154738
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 夏海
(72)【発明者】
【氏名】高田 昌太
(72)【発明者】
【氏名】西口 絵里子
(72)【発明者】
【氏名】西田 竜太
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-149242(JP,A)
【文献】特開2018-072886(JP,A)
【文献】特開2020-071741(JP,A)
【文献】特開2003-044593(JP,A)
【文献】特開2020-112902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/22
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入浴介助スタッフによって複数の入居者の入浴介助が順次行われる介護施設に適用される入浴介助支援システムであって、
前記介護施設における各担当スタッフが保持する端末と、ネットワークを介して前記端末と接続されたサーバと、入浴設備への担当スタッフの到着を検知する到着検知手段とを備え、
前記サーバは、
入居者と担当スタッフと当該担当スタッフが保持する端末IDとを対応付けた担当情報、および、時間帯の項目と利用者である入居者の項目とを含む、入居者の入浴スケジュール情報を記憶するケアプラン記憶手段と、
前記到着検知手段により担当スタッフの到着が検知された場合に、前記担当情報において当該担当スタッフの端末IDに関連付けられた入居者を絞り込むとともに、前記入浴スケジュール情報において現在の時間帯の利用者として記録されている入居者を、前記入浴設備の利用者である第1の入居者として特定する特定手段と、
前記入浴設備に設けられ、浴室と脱衣室とを仕切る扉の開閉を検知する扉開閉検知手段と、
少なくとも前記到着検知手段および前記扉開閉検知手段からの情報に基づいて、前記特定手段により特定された前記第1の入居者の入浴介助状況として、入浴介助開始、入浴開始、入浴終了、および入浴介助終了を順に予測する予測手段と、
前記担当情報および前記入浴スケジュール情報に基づいて前記入浴設備を次に利用予定の第2の入居者の担当スタッフを特定し、特定した担当スタッフの前記端末に、前記予測手段により予測された入浴介助状況を通知する通知処理手段とを含む、入浴介助支援システム。
【請求項2】
前記サーバは、
前記予測手段による予測処理と連動して、入浴介助時間を計測する計測処理手段と、
入居者ごとに、前記計測処理手段により過去に計測された入浴介助時間を含む履歴データを記憶する履歴記憶手段と、
前記履歴記憶手段に記憶された前記第1の入居者の過去の入浴介助時間と、前記予測手段により予測された入浴介助状況とに基づいて、残り時間を推定する推定手段とをさらに含み、
前記通知処理手段は、前記第1の入居者の入浴介助状況とともに、前記推定手段により推定された残り時間を前記端末に通知する、請求項1または2に記載の入浴介助支援システム。
【請求項3】
前記推定手段は、前記第1の入居者を対象として算出した過去の入浴介助平均時間に、今回の入浴介助スタッフの技量レベルに応じた重み付けを行うことにより、入浴介助予定時間を算出することにより、入浴介助スタッフに応じて残り時間を推定する、請求項に記載の入浴介助支援システム。
【請求項4】
前記通知処理手段は、前記第1の入居者の担当スタッフの端末にも、前記予測手段により予測された入浴介助状況を通知する、請求項1~のいずれかに記載の入浴介助支援システム。
【請求項5】
前記到着検知手段は、前記端末の位置を検知する位置検知手段を含む、請求項1~のいずれかに記載の入浴介助支援システム。
【請求項6】
入浴介助スタッフが保持する介助スタッフ端末をさらに備え、
前記サーバは、
前記第1の入居者または前記第2の入居者の担当スタッフの前記端末から、前記入浴設備への往訪予定通知を受ける受信手段と、
前記受信手段が往訪予定通知を受けた場合に、前記介助スタッフ端末に、前記第1の入居者または前記第2の入居者の担当スタッフが往訪予定であることを通知する往訪通知手段とをさらに含む、請求項1~のいずれかに記載の入浴介助支援システム。
【請求項7】
記憶手段から、入居者と担当スタッフと当該担当スタッフが保持する端末IDとを対応付けた担当情報、および、時間帯の項目と利用者である入居者の項目とを含む、入居者の入浴スケジュール情報を読み出すステップと、
到着検知手段により担当スタッフの到着が検知された場合に、前記担当情報において当該担当スタッフの端末IDに関連付けられた入居者を絞り込むとともに、前記入浴スケジュール情報において現在の時間帯の利用者として記録されている入居者を、入浴設備の利用者である第1の入居者として特定するステップと、
少なくとも前記到着検知手段、および、浴室と脱衣室とを仕切る扉の開閉を検知する扉開閉検知手段からの情報に基づいて、特定された前記第1の入居者の入浴介助状況として、入浴介助開始、入浴開始、入浴終了、および入浴介助終了を順に予測するステップと、
前記担当情報および前記入浴スケジュール情報に基づいて前記入浴設備を次に利用予定の第2の入居者の担当スタッフを特定するステップと、
特定した担当スタッフの端末に、予測された入浴介助状況を通知するステップとをコンピュータに実行させる、入浴介助支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴介助支援システムおよび入浴介助支援プログラムに関し、特に、入浴介助スタッフによって複数の入居者の入浴介助が順次行われる介護施設に適用される入浴介助支援システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
入浴者の異常を検知するための入浴監視システムが従来から提案されている。たとえば特開2019-100642号公報(特許文献1)では、浴室および脱衣室に設けた温湿度センサの上昇下降傾向の変動状態により入浴開始および入浴終了を判定して、入浴者の異常を検知可能することが開示されている。
【0003】
また、特開2005-190251号公報(特許文献2)では、家庭内で複数の人が1つの浴室を使用することを想定して、入浴監視システムが、入浴者を特定する個人特定手段と、入浴者ごとの入浴時間を記憶するデータベースとを備えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-100642号公報
【文献】特開2005-190251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
介護施設では、入居者ごとに担当スタッフが付くが、入浴設備での入浴介助は専用の介助スタッフにより行われる。そのため、入浴介助スタッフが複数の入居者の入浴介助を順次行うためには、無線機器(インカム)を用いた入浴介助スタッフと担当スタッフ間での情報伝達が必須であった。
【0006】
ところが、介護施設での入浴スケジュールは過密であるため、伝達忘れなどのヒューマンエラーが生じる可能性がある。その場合、次の利用者の入浴介助業務が遅れることによるタイムロスが生じたりたり、利用中の入居者と次の利用者とがはち合わせたりする可能性があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、介護施設における入浴介助スタッフのマルチタスクを不要とし、入浴介助業務を効率良く行うことのできる入浴介助支援システムおよびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従う入浴介助支援システムは、入浴介助スタッフによって複数の入居者の入浴介助が順次行われる介護施設に適用される入浴介助支援システムであって、介護施設における各担当スタッフが保持する端末と、ネットワークを介して端末と接続されたサーバと、入浴設備への担当スタッフの到着を検知する到着検知手段とを備える。サーバは、入居者と担当スタッフとを対応付けた担当情報、および、入居者の入浴スケジュール情報を記憶するケアプラン記憶手段と、到着検知手段により担当スタッフの到着が検知された場合に、担当情報および入浴スケジュール情報に基づいて、入浴設備の利用者である第1の入居者を特定する特定手段と、特定手段により特定された第1の入居者の入浴介助状況を予測する予測手段と、担当情報および入浴スケジュール情報に基づいて入浴設備を次に利用予定の第2の入居者の担当スタッフを特定し、特定した担当スタッフの端末に、予測手段により予測された入浴介助状況を通知する通知処理手段とを含む。
【0009】
好ましくは、入浴介助支援システムは、入浴設備に設けられ、浴室と脱衣室とを仕切る扉の開閉を検知する扉開閉検知手段をさらに備える。この場合、予測手段は、少なくとも到着検知手段および扉開閉検知手段からの情報に基づいて、入浴介助開始、入浴開始、入浴終了、および入浴介助終了を順に予測することが望ましい。
【0010】
好ましくは、サーバは、予測手段による予測処理と連動して、入浴介助時間を計測する計測処理手段と、入居者ごとに、計測処理手段により過去に計測された入浴介助時間を含む履歴データを記憶する履歴記憶手段と、履歴記憶手段に記憶された第1の入居者の過去の入浴介助時間と、予測手段により予測された入浴介助状況とに基づいて、残り時間を推定する推定手段とをさらに含む。この場合、通知処理手段は、第1の入居者の入浴介助状況とともに、推定手段により推定された残り時間を端末に通知することが望ましい。
【0011】
履歴データは、入浴開始から入浴終了までの入浴時間、および、入浴終了から入浴介助終了までの着衣時間を個別に含んでいてもよい。この場合、推定手段は、通知処理手段による通知タイミングにおいて、履歴データに含まれる入浴時間および着衣時間に基づいて残り時間を補正してもよい。
【0012】
また、推定手段は、入浴介助スタッフに応じて残り時間を推定してもよい。
【0013】
好ましくは、通知処理手段は、第1の入居者の担当スタッフの端末にも、予測手段により予測された入浴介助状況を通知する。
【0014】
一実施形態として、到着検知手段は、端末の位置を検知する位置検知手段を含む。
【0015】
入浴介助支援システムは、入浴介助スタッフが保持する介助スタッフ端末をさらに備えていてもよい。この場合、サーバは、第1の入居者または第2の入居者の担当スタッフの端末から、入浴設備への往訪予定通知を受ける受信手段と、受信手段が往訪予定通知を受けた場合に、介助スタッフ端末に、第1の入居者または第2の入居者の担当スタッフが往訪予定であることを通知する往訪通知手段とをさらに含んでもよい。
【0016】
この発明の他の局面に従う入浴介助支援プログラムは、記憶手段から、入居者と担当スタッフとを対応付けた担当情報、および、入居者の入浴スケジュール情報を読み出すステップと、到着検知手段により担当スタッフの到着が検知された場合に、担当情報および入浴スケジュール情報に基づいて、入浴設備の利用者である第1の入居者を特定するステップと、特定された第1の入居者の入浴介助状況を予測するステップと、担当情報および入浴スケジュール情報に基づいて入浴設備を次に利用予定の第2の入居者の担当スタッフを特定するステップと、特定した担当スタッフの端末に、予測された入浴介助状況を通知するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、介護施設における入浴介助スタッフのマルチタスクを不要とし、入浴介助業務を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)は、介護施設の入浴設備を模式的に示す図であり、(B)は、介護施設における入居者の入浴介助業務の流れを示した説明図である。
図2】(A)は、本発明の実施の形態に係る入浴介助支援システムの概略構成を示すブロック図であり、(B)は、サーバの概略構成を示すブロック図であり、(C)は、端末の概略構成を示すブロック図である。
図3】(A)~(C)は、それぞれ、担当情報、入浴スケジュール情報、および入浴介助履歴情報のデータ構造例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態における入浴介助支援処理を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態における入浴介助支援処理を示すフローチャートである。
図6】(A)~(C)は、本発明の実施の形態において端末に表示される画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0020】
<入浴介助支援システムの概要>
図1および図2を参照して、入浴介助支援システム1の概要について説明する。図1(A)は、介護施設の入浴設備100を模式的に示す図であり、(B)は、介護施設における入居者の入浴介助業務の流れを示した説明図である。入浴設備100は、浴室101および脱衣室102を備えている。図2(A)は、入浴介助支援システム1の概略構成を示すブロック図である。
【0021】
図1(A)に示されるように、介護施設では、入居者ごとに担当スタッフが付くが、入浴設備100での入浴介助は専用の介助スタッフにより行われる。そのため、入居者が入浴をするためには、図1(B)に示されるように、(1)居室での担当スタッフによる入浴準備および入浴設備100への誘導、(2)脱衣室102での入浴介助スタッフによる脱衣介助、(3)浴室101での入浴介助スタッフによる中間浴・機械浴の介助、(4)脱衣室102での入浴介助スタッフによる着衣介助が、この順序で行われる。入浴介助スタッフによる(2)~(4)の一連の入浴介助が終了した後、再び担当スタッフが利用者を迎えに来て(5)居室での静養介助が行われる。
【0022】
本実施の形態に係る入浴介助支援システム1は、上記のように、入浴介助スタッフによって複数の入居者の入浴介助が順次行われる介護施設に適用されるシステムであって、図2(A)に示されるように、サーバ2と、入浴設備100に設けられたセンシング部3と、各担当スタッフが保持する端末4とを備えている。サーバ2は、ネットワークを介して複数の端末4と接続されている。
【0023】
図1(A)および図2(A)を参照して、センシング部3は、少なくとも、担当スタッフの位置を検知する位置検知手段31と、入浴設備100に設けられ、浴室101と脱衣室102とを仕切る扉103の開閉を検知する扉開閉検知手段(以下「扉開閉センサ」という)32とを含む。位置検知手段31は、入浴設備100への担当スタッフの到着を検知する到着検知手段として機能する。
【0024】
位置検知手段31は、たとえば入浴設備100の入口付近に設けられたビーコン発信機31aを含む。この場合、端末4が、ビーコン発信機31aが発信した信号(電波)を受信する受信機として作動するため、端末4も位置検知手段31の構成要素として機能する。
【0025】
センシング部3は、後述するように、風呂栓開閉センサ33および給湯器34を含んでいてもよい。また、到着検知手段は、位置検知手段31に限定されず、たとえば担当スタッフが所持するICカードを読み取るカードリーダなどによって実現されてもよい。
【0026】
図2(B)に示されるように、サーバ2は、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)21と、各種データおよびプログラムを記憶する記憶部22と、計時動作を行う計時部23と、ネットワークを介して端末4等の通信機器と通信する通信部24と、不揮発性の記憶装置25と、外部機器からの信号を入出力する入出力部27とを備えている。サーバ2は、汎用コンピュータにより実現される。
【0027】
図2(C)に示されるように、端末4は、各種演算処理を実行するCPU41と、各種データおよびプログラムを記憶する記憶部42と、計時動作を行う計時部43と、ネットワークを介してサーバ2等の通信機器と通信する通信部44と、ユーザ(担当スタッフ)により操作される操作部45と、各種情報を表示する表示部46とを備えている。端末4は、たとえばスマホなどの携帯端末により実現される。
【0028】
<サーバの機能構成>
図2(B)を参照して、サーバ2の機能構成について説明する。サーバ2は、その機能構成として、特定部51と、状況予測部52と、計測処理部53と、推定部54と、通知処理部55と、ケアプラン記憶部25aと、履歴記憶部25bとを含む。
【0029】
ケアプラン記憶部25aは、入居者と担当スタッフとを対応付けた担当情報61、および、入居者の入浴スケジュール情報62を記憶する。ケアプラン記憶部25aに記憶されたこれらの情報は、図示しない操作部を介して、介護施設の管理者等により事前に入力された情報である。あるいは、別の管理サーバ(図示せず)から取得した情報であってもよい。
【0030】
履歴記憶部25bは、過去の入浴介助時間を含む履歴データを、入浴介助履歴情報63(図3(C))として記憶する。担当情報61、入浴スケジュール情報62、および入浴介助履歴情報63のデータ構造例については後述する。
【0031】
特定部51は、入浴設備100の利用者である入居者(以下「第1の入居者」ともいう)を特定する。具体的には、位置検知手段31からの検知情報およびケアプラン記憶部25aに記憶された担当情報61に基づいて、第1の入居者を特定する。
【0032】
状況予測部52は、特定部51により特定された第1の入居者の入浴介助状況を予測する。具体的には、「介助開始(脱衣介助開始)」、第1の入居者の「入浴開始」、「入浴終了(着衣介助開始)」、および「介助終了(着衣介助終了)」を順に予測する。これにより、図1(B)に示した(2)~(4)のいずれかの状況かを予測できる。「介助開始」は、第1の担当スタッフの1回目の到着を検知したこと応じて判定できる。つまり、特定部51により第1の入居者が特定されたときに、「介助開始」と判定できる。第1の入居者の「入浴開始」および「入浴終了」は、少なくとも扉開閉センサ32からの検知信号に基づいて予測可能である。「介助終了」は、第1の担当スタッフの2回目の到着を検知したこと応じて判定できる。
【0033】
計測処理部53は、入浴設備100での入居者の入浴介助に要した入浴介助時間を計測する。入浴介助時間は、「介助開始」から「介助終了」までに要した時間である。つまり、計測処理部53は、状況予測部52が「介助開始」と予測したことに応じて入浴介助時間の計測を開始し、状況予測部52が「介助終了」と予測したことに応じて入浴介助時間の計測を終了する。このように、計測処理部53は、状況予測部52による予測処理と連動して、計測処理を行う。
【0034】
推定部54は、状況予測部52により予測された第1の入居者の入浴介助状況と履歴記憶部25bに記憶された第1の入居者の過去の入浴介助時間とに基づいて、「介助終了」までの残り時間を推定する。典型的には、所定期間(たとえば1ヶ月)分の入浴介助時間の平均値を入浴介助予定時間として算出し、入浴介助予定時間から、計測処理部53により計測されている時間(「介助開始」からの経過時間)を引くことにより算出される。
【0035】
通知処理部55は、入浴スケジュール情報62および担当情報61に基づいて、入浴設備を次に利用予定の入居者(以下「第2の入居者」という)の担当スタッフ(以下「第2の担当スタッフ」ともいう)を特定する。そして、通信部24を介して、第2の担当スタッフの端末4に、状況予測部52により予測された第1の入居者の入浴介助状況とともに、推定部54により推定された残り時間を通知する処理を実行する。
【0036】
図3(A)~(C)には、担当情報61、入浴スケジュール情報62、および入浴介助履歴情報63のデータ構造例がそれぞれ示されている。これらの情報61~63は、たとえばデータテーブルに保持されている。
【0037】
図3(A)を参照して、担当情報61のデータテーブルは、介護施設の入居者の項目と、担当スタッフの項目とを含む。入居者の項目には、入居者の識別情報(以下「入居者ID」という)が記録され、担当スタッフの項目には、担当スタッフの識別情報(以下「担当ID」という)が記録されている。ここでは、理解を容易にするために、入居者IDと担当IDとが1対1で対応付けられた例を示しているが、時間帯ごとに担当スタッフが異なっていてもよく、その場合には、入居者IDと担当IDとが1対複数で対応付けられていてもよい。担当情報61は、日々更新されてもよい。
【0038】
図3(A)に示されるように、担当情報61のデータテーブルは、端末の項目をさらに含んでいてもよい。端末の項目には、各担当スタッフが保持する端末4の識別情報(以下「端末ID」という)が記録される。これにより、入居者ごとに、その担当スタッフが保持する端末4の端末IDが関連付けられて記憶されるので、端末IDに基づいて入居者を特定することができる。なお、担当情報61とは別に、担当IDと端末IDとを対応付けた端末対応情報が、ケアプラン記憶部25aに記憶されていてもよい。
【0039】
図3(B)を参照して、入浴スケジュール情報62のデータテーブルは、時間帯の項目と、利用者の項目とを含んでいる。時間帯の項目には、入浴設備100を利用可能な時間帯がたとえば1時間単位で記録されている。利用者の項目には、対応する時間帯ごとに、入浴設備100を利用する複数の入居者の入居者IDが記録されている。介護施設では通常、1時間に複数人の入居者の入浴介助が行われる。入居者の日常生活動作に応じて、各時間帯の人数が異っていてもよい。入浴スケジュール情報62もまた、日々更新されてもよい。
【0040】
図3(B)では、入浴スケジュール情報62のデータテーブルに介助スタッフの項目が含まれているが、本実施の形態では必須ではない。なお、介助スタッフの項目には、時間帯ごとに入浴設備100で業務を行う入浴介助スタッフの識別情報(以下「介助者ID」という)が記録されている。
【0041】
図3(C)を参照して、入浴介助履歴情報63のデータテーブルは、日付の項目と、利用者の項目と、入浴介助時間の項目とを含んでいる。日付の項目には、計時部23により計測された月日(時間を含んでもよい)が記録される。利用者の項目には、対応する日付ごとに、入浴設備100を利用した入居者の入居者IDが記録され、入浴介助時間の項目には、対応する日付および入居者IDごとに、計測処理部53により計測された入浴介助時間が記録される。なお、入浴介助履歴情報63のデータテーブルにも、介助スタッフの項目が含まれているが、本実施の形態では必須ではない。
【0042】
図2(B)に示した特定部51、状況予測部52、計測処理部53、推定部54、および通知処理部55の機能は、CPU21がソフトウェアを実行することにより実行される。なお、これらのうちの少なくとも一つはハードウェアにより実現されてもよい。ケアプラン記憶部25aおよび履歴記憶部25bは、不揮発性の記憶装置25により実現される。
【0043】
<動作について>
図4および図5は、サーバ2が実行する入浴介助支援処理を示すフローチャートである。入浴介助支援処理は、サーバ2のCPU21が、記憶部22に予め記憶されたプログラム(入浴介助支援プログラム)を読み出して実行することにより実現される。なお、この処理は、典型的には、毎日、所定時間(たとえば午前9時など)に開始される。また、この処理の開始時に、ケアプラン記憶部25aから担当情報61および入浴スケジュール情報62を読み出して内部メモリに展開しているものとする。
【0044】
図4を参照して、はじめに、CPU21は、担当スタッフが入浴設備100に到着するまで待機する(ステップS2)。本実施の形態では、位置検知手段31からの検知情報に基づいて、入浴設備100の入口付近に近付いた端末4があるか否かを判断する。
【0045】
いずれかの端末4が入浴設備100の入口付近に近付いてきたことを検知した場合に、端末4を保持する担当スタッフが到着したと判断し(ステップS2にてYES)、ケアプラン記憶部25aに記憶された担当情報61および入浴スケジュール情報62に基づき、利用者を特定する(ステップS4)。具体的には、特定部51が、まず、担当情報61において端末4の端末IDに関連付けられた入居者を絞り込む。そして、絞り込んだ入居者が、入浴スケジュール情報62において現在の時間帯の利用者(ここでは最初の利用者)として記録されている場合に、その入居者を利用者として特定する。このとき、利用者の担当スタッフ(第1の担当スタッフ)が保持する端末4の端末IDを内部メモリに一時記憶する。
【0046】
利用者としての第1の入居者が特定されると、状況予測部52は、「入浴介助開始」と判断する(ステップS6)。また、計測処理部53が、タイマカウントを開始し、入浴介助時間の計測を開始する(ステップS8)。
【0047】
また、たとえばこのタイミングで、第1の入居者の入浴介助予定時間Txが算出される(ステップS10)。具体的には、計測処理部53が、入浴介助履歴情報63から第1の入居者の履歴データを抽出し、たとえば過去1ヶ月分の入浴介助時間の平均値を、入浴介助予定時間Txとして算出する。
【0048】
状況予測部52が「入浴介助開始」と判定した後、通知処理部55は、次の利用者の担当スタッフを特定する(ステップS12)。具体的には、入浴スケジュール情報62において、第1の入居者の次の利用者として定められた入居者(第2の入居者)を判別するとともに、担当情報61において第2の入居者に対応付けられた担当スタッフ(第2の担当スタッフ)を特定する。より具体的には、第2の担当スタッフの端末4の端末IDを特定する。なお、ステップS12の処理(第2の担当スタッフの特定)は、後述のステップS18の通知処理までに行われればよく、この順序に限定されない。
【0049】
その後、状況予測部52は、第1の入居者が脱衣室102から浴室101に入室したか否かを判断する(ステップS14)。具体的には、扉開閉センサ32からの信号に基づき、浴室101の扉103が開いたか否かを判断する。加えて、給湯器34から湧き上がり通知を受信したか否かを判断する。浴室101の扉103が開き、かつ、風呂水の湧き上がりを検知した場合に(ステップS14にてYES)、状況予測部52は、「入浴開始」と判断(予測)する(ステップS15)。このように、扉103の開放だけでなく、風呂水の沸き上がりを検知することにより、「入浴開始」の予測精度を向上させることができる。
【0050】
状況予測部52により「入浴開始」が予測されると、計測処理部53が、タイマのカウント値taに基づき、残り時間Tyを算出する(ステップS16)。具体的には、ステップS10で算出した入浴介助予定時間Txから、タイマのカウント値taを差し引いた時間を、残り時間Tyとして算出する。なお、ここでのカウント値taは、第1の入居者の脱衣時間に相当する。
【0051】
残り時間Tyが算出されると、通知処理部55は、第2の担当スタッフの端末4に、第1の入居者の「入浴開始」を通知するとともに、ステップS16で算出された残り時間Tyを通知する(ステップS18)。これにより、第2の担当スタッフの端末4の表示部46には、図6(A)に示されるような画面SC1が表示される。画面SC1では、第1の入居者の入浴介助状況が「入浴開始」であること、および、残り時間の目安(たとえば12分)が表示されている。
【0052】
続いて、状況予測部52は、第1の入居者が浴室101から脱衣室102に退室したか否かを判断する(ステップS20)。具体的には、扉開閉センサ32からの信号に基づき、浴室101の扉103が開いたか否かを判断する。加えて、風呂栓開閉センサ33からの信号に基づき、風呂栓が開放されたか否かを判断する。浴室101の扉103が開き、かつ、風呂栓が開放されたことを検知した場合に(ステップS20にてYES)、状況予測部52は、「入浴終了」と判断(予測)する(ステップS21)。このように、扉103の開放だけでなく、風呂栓の開放を検知することにより、「入浴終了」の予測精度を向上させることができる。
【0053】
状況予測部52により「入浴終了」が予測されると、計測処理部53が、タイマのカウント値tcに基づき、残り時間Tyを算出する(ステップS22)。具体的には、ステップS10で算出した入浴介助予定時間Txから、タイマのカウント値tcを差し引いた時間を、残り時間Tyとして算出する。なお、ここでのカウント値tcは、第1の入居者の脱衣時間(ta)+入浴時間(tb)に相当する。入浴時間(tb)は、このときのカウント値tc-前回のカウント値taとして算出できる。
【0054】
残り時間Tyが算出されると、通知処理部55は、第2の担当スタッフの端末4に、第1の入居者の「入浴終了」を通知するとともに、ステップS22で算出された残り時間Tyを通知する(ステップS24)。これにより、第2の担当スタッフの端末4の表示部46には、図6(B)に示されるような画面SC2が表示される。画面SC2では、第1の入居者の入浴介助状況が「入浴終了」であること、および、残り時間の目安(たとえば6分)が表示されている。
【0055】
その後、位置検知手段31からの検知情報に基づいて、担当スタッフが入浴設備100に到着したことを検知すると(ステップS26にてYES)、到着した担当スタッフが、利用者の担当スタッフ(第1の担当スタッフ)と一致しているか否かを判断する(ステップS28)。具体的には、位置検知手段31が検知した端末4の端末IDと、内部メモリに記憶しておいた端末IDと一致しているか否かを判断する。これらが一致していない場合(ステップS28にてNO)、第1の担当スタッフが到着するまで待機する。
【0056】
到着したスタッフが第1の担当スタッフと一致している場合(ステップS28にてYES)、第1の担当スタッフが第1の入居者を迎えに来たと判断できるので、状況予測部52は、「入浴介助終了」と判断する(ステップS29)。また、計測処理部53が、入浴介助時間の計測(タイマのカウント)を終了する(ステップS30)。このときのタイマのカウント値teが、今回の入浴介助時間として内部メモリに記憶される。入浴介助時間(te)=脱衣時間(ta)+入浴時間(tb)+着衣時間(td)に相当する。着衣時間(td)は、このときのカウント値te-前回のカウント値tcとして算出できる。
【0057】
状況予測部52が「入浴介助終了」と判定した後、通知処理部55は、第2の担当スタッフの端末4に、「入浴介助終了」を通知する(ステップS32)。これにより、第2の担当スタッフの端末4の表示部46には、図6(C)に示されるような画面SC3が表示される。画面SC3では、第1の入居者の入浴介助状況が「入浴介助終了」であり、次の利用者の入浴介助が可能であることが表示されている。
【0058】
最後に、今回の入浴介助時間(te)を含む履歴データを履歴記憶部25bに記録する(ステップS34)。
【0059】
入浴スケジュール情報62に記録されている全ての利用者の入浴が完了していない場合、すなわち第2の入居者が存在する場合(ステップS36にてNO)、ステップS2に戻り、上記処理を繰り返す。全ての利用者の入浴が完了したと判断した場合(ステップS36にてYES)、一連の入浴介助支援処理を終了する。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第2の入居者の担当スタッフ(第2の担当スタッフ)の端末4に、第1の入居者の入浴介助状況(入浴開始、入浴終了、入浴介助終了)が通知されるので、第2の担当スタッフは、余裕を持って入浴準備を行うことができる。また、第1の入居者の入浴介助状況は、センシング部3を利用して予測されるので、入浴介助スタッフは、介助業務に集中することができる。つまり、入浴介助スタッフのマルチタスクを不要とすることができる。
【0061】
また、第2の担当スタッフの端末4に、残り時間の目安も通知されるので、第2の担当スタッフは効率良く入浴準備を行うことができる。また、その結果、入浴設備100を効率良く利用することができる。
【0062】
また、入浴介助時間が自動的に履歴記憶部25bに記録されるので、入浴介助スタッフまたは担当スタッフによる介護記録の記入の手間を減らすことができる。
【0063】
<変形例>
本実施の形態では、通知処理部55が、第2の担当スタッフの端末4に、第1の入居者の入浴介助状況および残り時間を通知することとしたが、第1の担当スタッフの端末4にも同じ情報を通知してもよい。これにより、第1の担当スタッフは、適切なタイミングで第1の入居者を迎えに行くことができる。また、入浴を完了した入居者が脱衣室102で待つ時間がなくなる(または少なくなる)ので、入居者の負担を軽減することもできる。
【0064】
また、本実施の形態では、推定部54が、入浴介助予定時間(Tx)からタイマカウント値を差し引いた時間を、残り時間として算出する例を示したが、このような例に限定されない。たとえば、推定部54は、それぞれの通知タイミングで、過去の入浴時間および着衣時間に基づいて残り時間を補正してもよい。この場合、図5のステップS34において、入浴開始から入浴終了までの入浴時間(tb)、および、入浴終了から入浴介助終了までの着衣時間(td)を含む履歴データを、履歴記憶部25bに記憶すればよい。
【0065】
また、推定部54は、入浴介助スタッフに応じて残り時間を推定するようにしてもよい。これにより、入浴介助スタッフの技量により入浴介助時間のばらつきがある場合であっても、精度良く残り時間を推定できる。
【0066】
具体的には、図3(C)に示されるように各履歴データに入浴介助スタッフの介助者IDが含まれる場合など、履歴記憶部25bが介助者IDに関連付けて履歴データを記憶する場合に、推定部54は、今回の入浴介助スタッフの介助者IDを含む履歴データのみを抽出して、入浴介助予定時間を算出することができる。これにより、今回の入浴介助スタッフの技量に応じて、残り時間を推定することができる。
【0067】
あるいは、ケアプラン記憶部25aに、入浴介助スタッフごとの技量レベルを記憶しておき、第1の入居者を対象として算出した過去の入浴介助平均時間に、今回の入浴介助スタッフの技量レベルに応じた重み付けを行うことにより、入浴介助予定時間を算出してもよい。この場合、新たな入浴介助スタッフを採用した場合においても、精度良く残り時間を推定することができる。
【0068】
なお、上述のように、第2のスタッフの端末4に、第1の入居者の入浴介助状況とともに残り時間を通知することが望ましいものの、残り時間の通知は必須ではない。この場合、サーバ2は、計測処理部53、推定部54、および履歴記憶部25bを含まなくてもよい。
【0069】
また、本実施の形態に係る入浴介助支援システム1では、入浴介助スタッフが端末を保持する必要はないものの、担当スタッフの端末4から入浴介助スタッフの端末(図示せず)への情報伝達を可能としてもよい。この場合、サーバ2の通信部(受信手段)24が、第1の入居者または第2の入居者の担当スタッフの端末4から、入浴設備への往訪予定通知を受けた場合に、サーバ2は、介助スタッフの端末に、第1の入居者または第2の入居者の担当スタッフが往訪予定であることを通知してもよい。なお、担当スタッフは、端末4の操作部45を操作することにより、往訪予定を通知することができる。
【0070】
サーバ2により実行される入浴介助支援処理を、プログラムとして提供してもよい。このようなプログラムは、CD-ROM(Compact Disc-ROM)などの光学媒体や、メモリカードなどのコンピュータ読取り可能な一時的でない(non-transitory)記録媒体にて記録させて提供することができる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0071】
本発明にかかるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0072】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 入浴介助支援システム、2 サーバ、3 センシング部、4 端末、25a ケアプラン記憶部、25b 履歴記憶部、31 位置検知手段、32 扉開閉センサ、33 風呂栓開閉センサ、34 給湯器、51 特定部、52 状況予測部、53 計測処理部、54 推定部、55 通知処理部、61 担当情報、62 入浴スケジュール情報、63 入浴介助履歴情報、100 入浴設備、101 浴室、102 脱衣室、103 扉。
図1
図2
図3
図4
図5
図6