(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】測距イメージセンサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10F 30/225 20250101AFI20250204BHJP
H10F 39/18 20250101ALI20250204BHJP
【FI】
H10F30/225
H10F39/18 A
(21)【出願番号】P 2021114410
(22)【出願日】2021-07-09
(62)【分割の表示】P 2021521315の分割
【原出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2019236237
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 光人
(72)【発明者】
【氏名】平光 純
(72)【発明者】
【氏名】島田 明洋
(72)【発明者】
【氏名】石井 博明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡典
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐馬
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/131651(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/174090(WO,A1)
【文献】特表2018-530176(JP,A)
【文献】特開2011-222893(JP,A)
【文献】特開2009-014460(JP,A)
【文献】特開2009-047661(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0192090(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0187260(US,A1)
【文献】特開2019-004149(JP,A)
【文献】特開2019-079968(JP,A)
【文献】国際公開第2008/004547(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10F 30/225
H10F 39/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1側の第1表面、及び、前記第1側とは反対側である第2側の第2表面を有し、前記第1表面に沿って配置された複数の画素を構成する半導体層と、
前記第1表面に設けられ、前記複数の画素を構成する電極層と、を備え、
前記複数の画素のそれぞれは、
前記半導体層に形成された第1導電型の第1増倍領域、及び、前記半導体層において前記第1増倍領域の前記第1側に形成された第2導電型の第2増倍領域を含むアバランシェ増倍領域と、
前記半導体層において前記第2増倍領域の前記第1側に形成され、前記第2増倍領域と接続された第2導電型の電荷振分領域と、
前記半導体層
において前記第2増倍領域の前記第1側に形成され、前記電荷振分領域と接続された第2導電型の第1電荷転送領域と、
前記半導体層
において前記第2増倍領域の前記第1側に形成され、前記電荷振分領域と接続された第2導電型の第2電荷転送領域と、
前記半導体層の厚さ方向から見た場合に前記電荷振分領域の
所定部分に対して前記第1電荷転送領域側に位置するように、前記電極層において前記電荷振分領域の前記第1側に形成された第1転送ゲート電極と、
前記半導体層の厚さ方向から見た場合に前記電荷振分領域の前記
所定部分に対して前記第2電荷転送領域側に位置するように、前記電極層において前記電荷振分領域の前記第1側に形成された第2転送ゲート電極と、有し、
前記アバランシェ増倍領域は、
前記複数の画素に渡って繋がっているか、又は、前記複数の画素のそれぞれを互いに分離するように前記半導体層に形成されたトレンチに至っている、測距イメージセンサ。
【請求項2】
前記トレンチは、前記第1表面に形成されており、
前記トレンチの底面は、前記アバランシェ増倍領域に対して前記第2側に位置している、請求項
1に記載の測距イメージセンサ。
【請求項3】
前記トレンチは、前記第1表面に形成されており、
前記トレンチの底面は、前記アバランシェ増倍領域内に位置している、請求項
1に記載の測距イメージセンサ。
【請求項4】
前記複数の画素のそれぞれは、
前記半導体層において前記第2増倍領域の前記第1側に形成され、前記第1電荷転送領域及び前記第2電荷転送領域の少なくとも一方と電気的に接続された読出し回路を構成する第1導電型のウェル領域と、
前記半導体層において前記第2増倍領域と前記ウェル領域との間に形成された第2導電型のバリア領域と、を更に有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の測距イメージセンサ。
【請求項5】
前記バリア領域は、前記半導体層の厚さ方向から見た場合に前記ウェル領域を含んでいる、請求項
4に記載の測距イメージセンサ。
【請求項6】
前記複数の画素のそれぞれは、
前記半導体層において前記バリア領域の前記第1側に形成され、前記バリア領域と接続された第2導電型のシンク領域を更に有する、請求項
4又は
5に記載の測距イメージセンサ。
【請求項7】
前記シンク領域は、前記第2電荷転送領域と接続されている、請求項
6に記載の測距イメージセンサ。
【請求項8】
前記電極層を覆うように前記第1表面に設けられ、前記複数の画素のそれぞれと電気的に接続された配線層を更に備える、請求項1~
7のいずれか一項に記載の測距イメージセンサ。
【請求項9】
請求項1に記載の測距イメージセンサの製造方法であって、
前記アバランシェ増倍領域、前記電荷振分領域、前記第1電荷転送領域及び前記第2電荷転送領域を半導体基板に形成することで、前記半導体層を形成する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記第1転送ゲート電極及び前記第2転送ゲート電極を前記半導体層の前記第1表面に形成することで、前記電極層を形成する第2工程と、を備え、
前記第1工程においては、
前記複数の画素に渡って繋がるように前記半導体基板に前記アバランシェ増倍領域を形成する、測距イメージセンサの製造方法。
【請求項10】
前記第1工程においては、少なくとも前記アバランシェ増倍領域を前記半導体基板に形成した後に
、前記第1表面に
前記トレンチを形成する、請求項
9に記載の測距イメージセンサの製造方法。
【請求項11】
前記第2工程の後に、前記電極層を覆うように前記第1表面に配線層を形成し、前記配線層を前記複数の画素のそれぞれと電気的に接続する第3工程を更に備える、請求項1
0に記載の測距イメージセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測距イメージセンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
間接TOF(Time of Flight)方式を利用して対象物の距離画像を取得する測距イメージセンサとして、光感応領域が設けられた半導体層と、半導体層上に画素ごとに設けられたフォトゲート電極及び転送ゲート電極と、を備えるものが知られている(例えば特許文献1,2参照)。このような測距イメージセンサによれば、光の入射によって光感応領域で発生した電荷を高速で転送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-133464号公報
【文献】特開2013-206903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような測距イメージセンサにおいては、例えば測距可能距離の長距離化のために、受光感度の向上が求められる場合がある。
【0005】
本開示は、複数の画素において均一に受光感度の向上を図ることができる測距イメージセンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面の測距イメージセンサは、第1側の第1表面、及び、第1側とは反対側である第2側の第2表面を有し、前記第1表面に沿って配置された複数の画素を構成する半導体層と、第1表面に設けられ、複数の画素を構成する電極層と、を備え、複数の画素のそれぞれは、半導体層に形成された第1導電型の第1増倍領域、及び、半導体層において第1増倍領域の第1側に形成された第2導電型の第2増倍領域を含むアバランシェ増倍領域と、半導体層において第2増倍領域の第1側に形成され、第2増倍領域と接続された第2導電型の電荷振分領域と、半導体層において第2増倍領域の第1側に形成され、電荷振分領域と接続された第2導電型の第1電荷転送領域と、半導体層において第2増倍領域の第1側に形成され、電荷振分領域と接続された第2導電型の第2電荷転送領域と、電極層において電荷振分領域の第1側に形成されたフォトゲート電極と、フォトゲート電極に対して第1電荷転送領域側に位置するように、電極層において電荷振分領域の第1側に形成された第1転送ゲート電極と、フォトゲート電極に対して第2電荷転送領域側に位置するように、電極層において電荷振分領域の第1側に形成された第2転送ゲート電極と、有し、アバランシェ増倍領域は、複数の画素に渡って繋がっているか、又は、複数の画素のそれぞれを互いに分離するように半導体層に形成されたトレンチに至っている。
【0007】
この測距イメージセンサでは、半導体層に形成されたアバランシェ増倍領域が、複数の画素に渡って繋がっているか、又は、複数の画素のそれぞれを互いに分離するように半導体層に形成されたトレンチに至っている。これにより、複数の画素間での受光感度のばらつき及び1つの画素内での場所による受光感度のばらつきが抑制された状態で、複数の画素のそれぞれにおいて高感度化が実現される。よって、この測距イメージセンサによれば、複数の画素において均一に受光感度の向上を図ることができる。
【0008】
本開示の一側面の測距イメージセンサでは、トレンチは、第1表面に形成されており、トレンチの底面は、アバランシェ増倍領域に対して第2側に位置していてもよい。これにより、隣り合う画素間でのクロストークの発生を抑制することができる。
【0009】
本開示の一側面の測距イメージセンサでは、トレンチは、第1表面に形成されており、トレンチの底面は、アバランシェ増倍領域内に位置していてもよい。これにより、トレンチを形成する時間の短縮化を実現しつつ、隣り合う画素間でのクロストークの発生を十分に抑制することができる。
【0010】
本開示の一側面の測距イメージセンサでは、複数の画素のそれぞれは、半導体層において第2増倍領域の第1側に形成され、第1電荷転送領域及び第2電荷転送領域の少なくとも一方と電気的に接続された読出し回路を構成する第1導電型のウェル領域と、半導体層において第2増倍領域とウェル領域との間に形成された第2導電型のバリア領域と、を更に有してもよい。これにより、アバランシェ増倍領域に高電圧が印加されることで、アバランシェ増倍領域に形成された空乏層が第1導電型のウェル領域に向かって広がったとしても、第2導電型のバリア領域によって、空乏層が第1導電型のウェル領域に至ることが抑制される。つまり、空乏層がウェル領域に至ることに起因してアバランシェ増倍領域とウェル領域との間において電流が流れるのを抑制することができる。
【0011】
本開示の一側面の測距イメージセンサでは、バリア領域は、半導体層の厚さ方向から見た場合にウェル領域を含んでいてもよい。これにより、空乏層がウェル領域に至ることに起因してアバランシェ増倍領域とウェル領域との間において電流が流れるのを抑制することができる。
【0012】
本開示の一側面の測距イメージセンサでは、複数の画素のそれぞれは、半導体層においてバリア領域の第1側に形成され、バリア領域と接続された第2導電型のシンク領域を更に有してもよい。これにより、第2導電型のバリア領域の周辺に集まった電荷が第2導電型のシンク領域に引き込まれるため、バリア領域の周辺に集まった電荷が寄生電荷としてノイズとなるのを抑制することができる。
【0013】
本開示の一側面の測距イメージセンサでは、シンク領域は、第2電荷転送領域と接続されていてもよい。これにより、第2電荷転送領域を不要電荷排出領域として用いた場合に、シンク領域に引き込まれた電荷を第2電荷転送領域に排出することができる。
【0014】
本開示の一側面の測距イメージセンサは、電極層を覆うように第1表面に設けられ、複数の画素のそれぞれと電気的に接続された配線層を更に備えてもよい。これにより、複数の画素のそれぞれに対する電気信号の入出力を、配線層を介して実施することがきる。
【0015】
本開示の一側面の測距イメージセンサの製造方法は、上記測距イメージセンサの製造方法であって、アバランシェ増倍領域、電荷振分領域、第1電荷転送領域及び第2電荷転送領域を半導体基板に形成することで、半導体層を形成する第1工程と、第1工程の後に、フォトゲート電極、第1転送ゲート電極及び第2転送ゲート電極を半導体層の第1表面に形成することで、電極層を形成する第2工程と、を備え、第1工程においては、複数の画素に渡って繋がるように半導体基板にアバランシェ増倍領域を形成する。
【0016】
この測距イメージセンサの製造方法では、複数の画素に渡って繋がるように半導体基板にアバランシェ増倍領域が形成される。これにより、製造された測距イメージセンサにおいては、複数の画素間での受光感度のばらつき及び1つの画素内での場所による受光感度のばらつきが抑制された状態で、複数の画素のそれぞれにおいて高感度化が実現される。よって、この測距イメージセンサの製造方法によれば、複数の画素において均一に受光感度の向上を図られた測距イメージセンサを得ることができる。
【0017】
本開示の一側面の測距イメージセンサの製造方法は、第1工程においては、少なくともアバランシェ増倍領域を半導体基板に形成した後に、第1表面にトレンチを形成してもよい。これにより、アバランシェ増倍領域がトレンチに至っている構成を容易に且つ確実に得ることができる。
【0018】
本開示の一側面の測距イメージセンサの製造方法は、第2工程の後に、電極層を覆うように第1表面に配線層を形成し、配線層を複数の画素のそれぞれと電気的に接続する第5工程を更に備えてもよい。これにより、製造された測距イメージセンサにおいて、複数の画素のそれぞれに対する電気信号の入出力を、配線層を介して実施することがきる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、複数の画素において均一に受光感度の向上を図ることができる測距イメージセンサ及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、第1実施形態の測距イメージセンサを備える光検出装置の構成図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の測距イメージセンサの画素部の平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示されるIII-III線に沿っての断面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示されるIV-IV線に沿っての断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の測距イメージセンサの製造方法を説明するための断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の測距イメージセンサの製造方法を説明するための断面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の測距イメージセンサの一部分の平面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示されるVIII-VIII線に沿っての断面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態の測距イメージセンサの一部分の平面図である。
【
図11】
図11は、第4実施形態の測距イメージセンサの一部分の平面図である。
【
図14】
図14は、第5実施形態の測距イメージセンサの一部分の平面図である。
【
図16】
図16は、変形例の測距イメージセンサの断面図である。
【
図17】
図17は、変形例の測距イメージセンサの断面図である。
【
図18】
図18は、変形例の測距イメージセンサの断面図である。
【
図19】
図19は、変形例の測距イメージセンサの断面図である。
【
図20】
図20は、変形例の測距イメージセンサの断面図である。
【
図21】
図21は、変形例の測距イメージセンサの断面図である。
【
図22】
図22は、変形例の測距イメージセンサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
[光検出装置の構成]
【0022】
図1に示されるように、光検出装置1は、光源2と、測距イメージセンサ10Aと、信号処理部3と、制御部4と、表示部5と、を備えている。光検出装置1は、間接TOF方式を利用して対象物OJの距離画像(対象物OJまでの距離dに関する情報を含む画像)を取得する装置である。
【0023】
光源2は、パルス光Lを出射する。光源2は、例えば赤外LED等によって構成されている。パルス光Lは、例えば近赤外光であり、パルス光Lの周波数は、例えば10kHz以上である。測距イメージセンサ10Aは、光源2から出射されて対象物OJで反射されたパルス光Lを検出する。測距イメージセンサ10Aは、画素部11及びCMOS読出し回路部12が半導体基板(例えばシリコン基板)にモノリシックに形成されることで、構成されている。測距イメージセンサ10Aは、信号処理部3に実装されている。
【0024】
信号処理部3は、測距イメージセンサ10Aの画素部11及びCMOS読出し回路部12を制御する。信号処理部3は、測距イメージセンサ10Aから出力された信号に所定の処理を施して検出信号を生成する。制御部4は、光源2及び信号処理部3を制御する。制御部4は、信号処理部3から出力された検出信号に基づいて対象物OJの距離画像を生成する。表示部5は、制御部4によって生成された対象物OJの距離画像を表示する。
[測距イメージセンサの構成]
【0025】
図2、
図3及び
図4に示されるように、測距イメージセンサ10Aは、画素部11において、半導体層20と、電極層40と、を備えている。半導体層20は、第1表面20a及び第2表面20bを有している。第1表面20aは、半導体層20の厚さ方向における一方の側の表面である。第2表面20bは、半導体層20の厚さ方向における他方の側の表面である。電極層40は、半導体層20の第1表面20aに設けられている。半導体層20及び電極層40は、第1表面20aに沿って配置された複数の画素11aを構成している。測距イメージセンサ10Aでは、複数の画素11aは、第1表面20aに沿って2次元に配列されている。以下、半導体層20の厚さ方向をZ方向といい、Z方向に垂直な一方向をX方向といい、Z方向及びX方向の両方向に垂直な方向をY方向という。また、Z方向における一方の側を第1側といい、Z方向における他方の側(第1側とは反対側)を第2側という。なお、
図2では、後述する配線層60の図示が省略されている。
【0026】
各画素11aは、半導体層20において、半導体領域21と、アバランシェ増倍領域22と、電荷振分領域23と、1対の第1電荷転送領域24,25と、1対の第2電荷転送領域26,27と、複数の電荷阻止領域28と、ウェル領域31と、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)領域33と、バリア領域34と、1対のシンク領域35と、を有している。各領域21~28,31~35は、半導体基板(例えばシリコン基板)に対して各種処理(例えば、エッチング、成膜、不純物注入等)を実施することで形成されている。
【0027】
半導体領域21は、p型(第1導電型)の領域であって、半導体層20において第2表面20bに沿って設けられている。半導体領域21は、光吸収領域(光電変換領域)として機能する。一例として、半導体領域21は、1×1015cm-3以下のキャリア濃度を有するp型の領域であり、半導体領域21の厚さは、10μm程度である。なお、アバランシェ増倍領域22等も光吸収領域(光電変換領域)として機能する。
【0028】
アバランシェ増倍領域22は、第1増倍領域22a及び第2増倍領域22bを含んでいる。第1増倍領域22aは、p型の領域であって、半導体層20において半導体領域21の第1側に形成されている。一例として、第1増倍領域22aは、1×1016cm-3以上のキャリア濃度を有するp型の領域であり、第1増倍領域22aの厚さは、1μm程度である。第2増倍領域22bは、n型(第2導電型)の領域であって、半導体層20において第1増倍領域22aの第1側に形成されている。一例として、第2増倍領域22bは、1×1016cm-3以上のキャリア濃度を有するn型の領域であり、第2増倍領域22bの厚さは、1μm程度である。第1増倍領域22a及び第2増倍領域22bは、pn接合を形成している。
【0029】
電荷振分領域23は、n型の領域であって、半導体層20において第2増倍領域22bの第1側に形成されている。一例として、電荷振分領域23は、5×1015~1×1016cm-3のキャリア濃度を有するn型の領域であり、電荷振分領域23の厚さは、1μm程度である。
【0030】
各第1電荷転送領域24,25は、n型の領域であって、半導体層20において第2増倍領域22bの第1側に形成されている。各第1電荷転送領域24,25は、電荷振分領域23と接続されている。1対の第1電荷転送領域24,25は、電荷振分領域23のうちの第1側の部分を挟んで、X方向において向かい合っている。一例として、各第1電荷転送領域24,25は、1×1018cm-3以上のキャリア濃度を有するn型の領域であり、各第1電荷転送領域24,25の厚さは、0.2μm程度である。なお、電荷振分領域23のうちの第2側の部分は、各第1電荷転送領域24,25と第2増倍領域22bとの間に入り込んでいる。本実施形態では、各第1電荷転送領域24,25は、電荷蓄積領域として機能する。
【0031】
各第2電荷転送領域26,27は、n型の領域であって、半導体層20において第2増倍領域22bの第1側に形成されている。各第2電荷転送領域26,27は、電荷振分領域23と接続されている。1対の第2電荷転送領域26,27は、電荷振分領域23のうちの第1側の部分を挟んで、Y方向において向かい合っている。一例として、各第2電荷転送領域26,27は、1×1018cm-3以上のキャリア濃度を有するn型の領域であり、各第2電荷転送領域26,27の厚さは、0.2μm程度である。なお、電荷振分領域23のうちの第2側の部分は、各第2電荷転送領域26,27と第2増倍領域22bとの間に入り込んでいる。本実施形態では、各第2電荷転送領域26,27は、電荷排出領域として機能する。
【0032】
各電荷阻止領域28は、p型の領域であって、半導体層20において各第1電荷転送領域24,25と電荷振分領域23(電荷振分領域23のうちの第2側の部分)との間に形成されている。一例として、各電荷阻止領域28は、1×1017~1×1018cm-3のキャリア濃度を有するp型の領域であり、各電荷阻止領域28の厚さは、0.2μm程度である。
【0033】
ウェル領域31は、p型の領域であって、半導体層20において第2増倍領域22bの第1側に形成されている。ウェル領域31は、Z方向から見た場合に電荷振分領域23を包囲している。LOCOS領域33は、半導体層20においてウェル領域31の第1側に形成されている。LOCOS領域33は、ウェル領域31と接続されている。ウェル領域31は、LOCOS領域33と共に複数の読出し回路(例えば、ソースフォロワアンプ、リセットトランジスタ等)を構成している。各読出し回路は、各第1電荷転送領域24,25と電気的に接続されている。一例として、ウェル領域31は、1×1016~5×1017cm-3のキャリア濃度を有するp型の領域であり、ウェル領域31の厚さは、1μm程度である。なお、画素部と読出し回路部とを電気的に分離するための構造として、LOCOS領域33に代えて、STI(Shallow Trench Isolation)を用いてもよいし、或いは、単にウェル領域31のみを用いてもよい。
【0034】
バリア領域34は、n型の領域であって、半導体層20において第2増倍領域22bとウェル領域31との間に形成されている。バリア領域34は、Z方向から見た場合にウェル領域31を含んでいる。つまり、ウェル領域31は、Z方向から見た場合にバリア領域34内に位置している。バリア領域34は、電荷振分領域23を包囲している。バリア領域34のn型不純物の濃度は、第2増倍領域22bのn型不純物の濃度よりも高い。一例として、バリア領域34は、第2増倍領域22bのキャリア濃度から第2増倍領域22bのキャリア濃度の倍程度までのキャリア濃度を有するn型の領域であり、バリア領域34の厚さは、1μm程度である。
【0035】
各シンク領域35は、n型の領域であって、半導体層20においてバリア領域34の第1側に形成されている。各シンク領域35における第2側の端部は、バリア領域34と接続されている。各シンク領域35における第1側の端部は、各第2電荷転送領域26,27と接続されている。各第2電荷転送領域26,27のn型不純物の濃度は、各シンク領域35のn型不純物の濃度よりも高く、各シンク領域35のn型不純物の濃度は、バリア領域34のn型不純物の濃度及びウェル領域31のp型不純物の濃度よりも高い。一例として、各シンク領域35は、ウェル領域31のキャリア濃度以上のキャリア濃度を有するn型の領域であり、各シンク領域35の厚さは、各第2電荷転送領域26,27とバリア領域34との間の距離に依存する。
【0036】
各画素11aは、電極層40において、フォトゲート電極41と、1対の第1転送ゲート電極42,43と、1対の第2転送ゲート電極44,45と、有している。各ゲート電極41~45は、絶縁膜46を介して半導体層20の第1表面20aに形成されている。絶縁膜46は、例えば、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜等である。
【0037】
フォトゲート電極41は、電極層40において電荷振分領域23の第1側に形成されている。フォトゲート電極41は、導電性及び光透過性を有する材料(例えばポリシリコン)によって形成されている。一例として、フォトゲート電極41は、Z方向から見た場合に、X方向において向かい合う2辺、及びY方向において向かい合う2辺を有する矩形状を呈している。
【0038】
第1転送ゲート電極42は、フォトゲート電極41に対して第1電荷転送領域24側に位置するように、電極層40において電荷振分領域23の第1側に形成されている。第1転送ゲート電極43は、フォトゲート電極41に対して第1電荷転送領域25側に位置するように、電極層40において電荷振分領域23の第1側に形成されている。各第1転送ゲート電極42,43は、導電性及び光透過性を有する材料(例えばポリシリコン)によって形成されている。一例として、各第1転送ゲート電極42,43は、Z方向から見た場合に、X方向において向かい合う2辺、及びY方向において向かい合う2辺を有する矩形状を呈している。
【0039】
第2転送ゲート電極44は、フォトゲート電極41に対して第2電荷転送領域26側に位置するように、電極層40において電荷振分領域23の第1側に形成されている。第2転送ゲート電極45は、フォトゲート電極41に対して第2電荷転送領域27側に位置するように、電極層40において電荷振分領域23の第1側に形成されている。各第2転送ゲート電極44,45は、導電性及び光透過性を有する材料(例えばポリシリコン)によって形成されている。一例として、各第2転送ゲート電極44,45は、Z方向から見た場合に、X方向において向かい合う2辺、及びY方向において向かい合う2辺を有する矩形状を呈している。
【0040】
測距イメージセンサ10Aは、画素部11において、対向電極50と、配線層60と、を更に備えている。対向電極50は、半導体層20の第2表面20bに設けられている。対向電極50は、Z方向から見た場合に複数の画素11aを含んでいる。対向電極50は、Z方向において電極層40と向かい合っている。対向電極50は、例えば金属材料によって形成されている。配線層60は、電極層40を覆うように半導体層20の第1表面20aに設けられている。配線層60は、各画素11a及びCMOS読出し回路部12(
図1参照)と電気的に接続されている。配線層60のうち各画素11aのフォトゲート電極41と向かい合う部分には、光入射開口60aが形成されている。
【0041】
半導体層20には、各画素11aを互いに分離するようにトレンチ29が形成されている。トレンチ29は、半導体層20の第1表面20aに形成されている。トレンチ29の底面29aは、アバランシェ増倍領域22に対して第2側に位置している。つまり、トレンチ29は、アバランシェ増倍領域22を完全に分離している。トレンチ29内には、シリコン酸化物等の絶縁材料47が配置されている。なお、絶縁材料47の代わりに、タングステン等の金属材料、ポリシリコン等がトレンチ29内に配置されていてもよい。
【0042】
各画素11aにおいて、アバランシェ増倍領域22は、トレンチ29に至っている。アバランシェ増倍領域22は、アバランシェ増倍を引き起こす領域である。つまり、各画素11aでは、所定値の逆方向バイアスが印加された場合に3×105~4×105V/cmの電界強度を発生し得るアバランシェ増倍領域22が、トレンチ29によって包囲された領域全体に広がっている。
【0043】
以上のように構成された測距イメージセンサ10Aの動作の一例は、次のとおりである。測距イメージセンサ10Aの各画素11aにおいては、フォトゲート電極41の電位を基準として負の電圧(例えば-50V)が対向電極50に印加されて(つまり、アバランシェ増倍領域22に形成されたpn接合に逆方向バイアスが印加されて)、アバランシェ増倍領域22に3×105~4×105V/cmの電界強度が発生する。この状態で、光入射開口60a及びフォトゲート電極41を介して半導体層20にパルス光Lが入射すると、パルス光Lの吸収によって発生した電子が、アバランシェ増倍領域22で増倍されて電荷振分領域23に高速で移動する。
【0044】
対象物OJ(
図1参照)の距離画像の生成に際し、各画素11aでは、まず、1対の第2転送ゲート電極44,45にリセット電圧が印加される。リセット電圧は、フォトゲート電極41の電位を基準として正の電圧である。これにより、電荷振分領域23に移動した電子が1対の第2電荷転送領域26,27から排出される。
【0045】
続いて、1対の第1転送ゲート電極42,43にパルス電圧信号が印加される。一例として、第1転送ゲート電極42に印加されるパルス電圧信号は、フォトゲート電極41の電位を基準として正の電圧及び負の電圧が交互に繰り返される電圧信号であって、光源2(
図1参照)から出射されるパルス光Lの強度信号と周期、パルス幅及び位相が同一の電圧信号である。一方、第1転送ゲート電極43に印加されるパルス電圧信号は、位相が180°ずれている点を除き、第1転送ゲート電極42に印加されるパルス電圧信号と同一の電圧信号である。
【0046】
これにより、電荷振分領域23に移動した電子が1対の第1電荷転送領域24,25に交互に高速で転送される。所定期間の転送によって各第1電荷転送領域24,25に蓄積された電子は、ウェル領域31等によって構成された読出し回路、及び配線層60を介して、信号としてCMOS読出し回路部12(
図1参照)に転送される。
【0047】
図1に示されるように、パルス光Lが光源2から出射されて、対象物OJで反射されたパルス光Lが測距イメージセンサ10Aで検出されると、測距イメージセンサ10Aで検出されるパルス光Lの強度信号の位相は、光源2から出射されるパルス光Lの強度信号の位相に対して、対象物OJまでの距離dに応じてずれることになる。したがって、各第1電荷転送領域24,25に蓄積された電子に基づく信号を画素11aごとに取得することで、対象物OJの距離画像を生成することができる。
[測距イメージセンサの製造方法]
【0048】
図5の(a)に示されるように、p型の半導体基板20sが用意され、アバランシェ増倍領域22及び電荷振分領域23が半導体基板20sに形成される。このとき、複数の画素11a(
図5の(b)参照)に渡って繋がるようにアバランシェ増倍領域22が半導体基板20sに形成される。続いて、
図5の(b)に示されるように、半導体層20の第1表面20aにトレンチ29が形成される。続いて、
図6の(a)に示されるように、1対の第1電荷転送領域24,25、1対の第2電荷転送領域26,27、複数の電荷阻止領域28、ウェル領域31、LOCOS領域33、バリア領域34及び1対のシンク領域35を各画素11aが有するように、各領域24~28,31~35が半導体基板20sに形成される。以上により、トレンチ29が形成された半導体層20が形成される(第1工程)。なお、半導体領域21は、半導体基板20sが有していた領域である。
【0049】
続いて、
図6の(b)に示されるように、フォトゲート電極41、1対の第1転送ゲート電極42,43及び1対の第2転送ゲート電極44,45を各画素11aが有するように、各ゲート電極41~45が半導体層20の第1表面20aに形成される。これにより、電極層40が形成される(第2工程)。続いて、
図3に示されるように、電極層40を覆うように半導体層20の第1表面20aに配線層60が形成され、配線層60が各画素11aと電気的に接続される(第3工程)。続いて、対向電極50が半導体層20の第2表面20bに形成される。以上の半導体基板20sへの画素部11の形成と並行して、半導体基板20sへのCMOS読出し回路部12の形成が実施される。以上により、測距イメージセンサ10Aが製造される。なお、トレンチ29の形成は、各領域24~28,31~35が半導体基板20sに形成された後、各ゲート電極41~45が半導体層20の第1表面20aに形成される前に、実施されてもよい。
[作用及び効果]
【0050】
測距イメージセンサ10Aでは、半導体層20に形成されたアバランシェ増倍領域22が、各画素11aを互いに分離するように半導体層20に形成されたトレンチ29に至っている。これにより、複数の画素11a間での受光感度のばらつき及び1つの画素11a内での場所による受光感度のばらつきが抑制された状態で、各画素11aにおいて高感度化が実現される。よって、測距イメージセンサ10Aによれば、複数の画素11aにおいて均一に受光感度の向上を図ることができる。
【0051】
測距イメージセンサ10Aでは、トレンチ29の底面29aが、アバランシェ増倍領域22に対して第2側に位置している。これにより、隣り合う画素11a間でのクロストークの発生を抑制することができる。
【0052】
測距イメージセンサ10Aでは、n型の第2増倍領域22bと、読出し回路を構成するp型のウェル領域31との間に、n型のバリア領域34が形成されている。これにより、アバランシェ増倍領域22に高電圧が印加されることで、アバランシェ増倍領域22に形成された空乏層がp型のウェル領域31に向かって広がったとしても、n型のバリア領域34によって、空乏層がp型のウェル領域31に至ることが抑制される。つまり、空乏層がウェル領域31に至ることに起因してアバランシェ増倍領域22とウェル領域31との間において電流が流れるのを抑制することができる。
【0053】
測距イメージセンサ10Aでは、バリア領域34が、Z方向から見た場合にウェル領域31を含んでいる。これにより、空乏層がウェル領域31に至ることに起因してアバランシェ増倍領域22とウェル領域31との間において電流が流れるのを抑制することができる。
【0054】
測距イメージセンサ10Aでは、バリア領域34の第1側に、バリア領域34と接続されたn型のシンク領域35が形成されている。これにより、n型のバリア領域34の周辺に集まった電子がn型のシンク領域35に引き込まれるため、バリア領域34の周辺に集まった電子が寄生電子としてノイズとなるのを抑制することができる。なお、第1電荷転送領域24と各シンク領域35との間の領域、及び第1電荷転送領域25と各シンク領域35との間の領域において不純物濃度を調整することで、寄生電子が各第1電荷転送領域24,25よりもシンク領域35に引き込まれ易くなるポテンシャル状態を形成することができる。
【0055】
測距イメージセンサ10Aでは、シンク領域35が各第2電荷転送領域26,27と接続されている。これにより、シンク領域35に引き込まれた寄生電子を、不要電荷排出領域として機能する各第2電荷転送領域26,27に排出することができる。
【0056】
測距イメージセンサ10Aは、電極層40を覆うように半導体層20の第1表面20aに配線層60が設けられており、配線層60が各画素11aと電気的に接続されている。これにより、各画素11aに対する電気信号の入出力を、配線層60を介して実施することができる。
【0057】
測距イメージセンサ10Aの製造方法では、複数の画素11aに渡って繋がるように半導体基板20sにアバランシェ増倍領域22が形成される。これにより、製造された測距イメージセンサ10Aにおいては、複数の画素11a間での受光感度のばらつき及び1つの画素11a内での場所による受光感度のばらつきが抑制された状態で、各画素11aにおいて高感度化が実現される。よって、測距イメージセンサ10Aの製造方法によれば、複数の画素11aにおいて均一に受光感度の向上を図られた測距イメージセンサ10Aを得ることができる。
【0058】
測距イメージセンサ10Aの製造方法では、アバランシェ増倍領域22の形成の後に、半導体層20の第1表面20aにトレンチ29が形成される。これにより、アバランシェ増倍領域22がトレンチ29に至っている構成を容易に且つ確実に得ることができる。
【0059】
測距イメージセンサ10Aの製造方法では、各ゲート電極41~45の形成の後に、電極層40を覆うように半導体層20の第1表面20aに配線層60が形成され、配線層60が各画素11aと電気的に接続される。これにより、製造された測距イメージセンサ10Aにおいて、各画素11aに対する電気信号の入出力を、配線層60を介して実施することがきる。
[第2実施形態]
【0060】
図7及び
図8に示されるように、測距イメージセンサ10Bは、X方向における電荷振分領域23の両側に第2電荷転送領域26a,26b,27a,27bが配置されている点、及びX方向におけるフォトゲート電極41の両側に複数の第2転送ゲート電極44a,44b,45a,45bが配置されている点で、上述した測距イメージセンサ10Aと主に相違している。
【0061】
測距イメージセンサ10Bの各画素11aにおいて、1対の第2電荷転送領域26a,26bは、X方向における電荷振分領域23の一方の側であって、Y方向における第1電荷転送領域24の両側に配置されている。1対の第2電荷転送領域27a,27bは、X方向における電荷振分領域23の他方の側であって、Y方向における第1電荷転送領域25の両側に配置されている。第2転送ゲート電極44aは、Z方向から見た場合にフォトゲート電極41と第2電荷転送領域26aとの間に配置されている。第2転送ゲート電極44bは、Z方向から見た場合にフォトゲート電極41と第2電荷転送領域26bとの間に配置されている。第2転送ゲート電極45aは、Z方向から見た場合にフォトゲート電極41と第2電荷転送領域27aとの間に配置されている。第2転送ゲート電極45bは、Z方向から見た場合にフォトゲート電極41と第2電荷転送領域27bとの間に配置されている。
【0062】
測距イメージセンサ10Bにおいても、上述した測距イメージセンサ10Aと同様に、半導体層20に形成されたアバランシェ増倍領域22が、各画素11aを互いに分離するように半導体層20に形成されたトレンチ29に至っている。これにより、複数の画素11a間での受光感度のばらつき及び1つの画素11a内での場所による受光感度のばらつきが抑制された状態で、各画素11aにおいて高感度化が実現される。よって、測距イメージセンサ10Bによれば、複数の画素11aにおいて均一に受光感度の向上を図ることができる。
[第3実施形態]
【0063】
図9及び
図10に示されるように、測距イメージセンサ10Cは、第1電荷転送領域24が電荷振分領域23の中央部に配置されている点、第2電荷転送領域26が環状に形成されている点、及び各電極41,42,44が環状に形成されている点で、上述した測距イメージセンサ10Aと主に相違している。
【0064】
測距イメージセンサ10Cの各画素11aにおいて、第1電荷転送領域24は、Z方向から見た場合に電荷振分領域23の中央部に配置されている。第2電荷転送領域26は、Z方向から見た場合に、例えば矩形環状を呈しており、電荷振分領域23の外縁に沿って配置されている。フォトゲート電極41は、Z方向から見た場合に、例えば矩形環状を呈しており、第1電荷転送領域24の外側且つ第2電荷転送領域26の内側に配置されている。第1転送ゲート電極42は、Z方向から見た場合に、例えば矩形環状を呈しており、第1電荷転送領域24の外側且つフォトゲート電極41の内側に配置されている。第2転送ゲート電極44は、Z方向から見た場合に、例えば矩形環状を呈しており、フォトゲート電極41の外側且つ第2電荷転送領域26の内側に配置されている。
【0065】
測距イメージセンサ10Cにおいても、上述した測距イメージセンサ10Aと同様に、半導体層20に形成されたアバランシェ増倍領域22が、各画素11aを互いに分離するように半導体層20に形成されたトレンチ29に至っている。これにより、複数の画素11a間での受光感度のばらつき及び1つの画素11a内での場所による受光感度のばらつきが抑制された状態で、各画素11aにおいて高感度化が実現される。よって、測距イメージセンサ10Cによれば、複数の画素11aにおいて均一に受光感度の向上を図ることができる。
【0066】
なお、測距イメージセンサ10Cでは、ウェル領域31、LOCOS領域33、バリア領域34及びシンク領域35(
図3参照)が半導体層20に形成されていない。したがって、測距イメージセンサ10Cによれば、複数の画素11aの高密度化、及び半導体層20の構造の単純化を図ることができる。一例として、測距イメージセンサ10Cには、各画素11a用の読出し回路、及びCMOS読出し回路部12が形成された半導体基板が第1側から接合される。
[第4実施形態]
【0067】
図11、
図12及び
図13に示されるように、測距イメージセンサ10Dは、第1電荷転送領域24が電荷振分領域23の中央部に配置されている点、複数の第2電荷転送領域26が電荷振分領域23の外縁に沿って配置されている点、フォトゲート電極41及び第1転送ゲート電極42が環状に形成されている点、複数の第2転送ゲート電極44がフォトゲート電極41を包囲するように配置されている点、並びに、半導体層20にトレンチ29が形成されておらず、アバランシェ増倍領域22が複数の画素11aに渡って繋がっている点で、上述した測距イメージセンサ10Aと主に相違している。
【0068】
測距イメージセンサ10Dの各画素11aにおいて、第1電荷転送領域24は、Z方向から見た場合に電荷振分領域23の中央部に配置されている。複数の第2電荷転送領域26は、Z方向から見た場合に、電荷振分領域23の外縁に沿って配置されている。各第2電荷転送領域26は、隣り合う2つの画素11aによって共有されている。フォトゲート電極41は、Z方向から見た場合に、例えば矩形環状を呈しており、第1電荷転送領域24の外側且つ複数の第2電荷転送領域26の内側に配置されている。第1転送ゲート電極42は、Z方向から見た場合に、例えば矩形環状を呈しており、第1電荷転送領域24の外側且つフォトゲート電極41の内側に配置されている。各第2転送ゲート電極44は、Z方向から見た場合に、フォトゲート電極41と各第2電荷転送領域26との間に配置されている。
【0069】
測距イメージセンサ10Dの各画素11aにおいて、ウェル領域31及びバリア領域34は、Z方向から見た場合に、複数の画素11aを仕切るように格子状に配置された複数の仮想ラインの交点上に配置されている。そのため、半導体層20にトレンチ29が形成されておらず、アバランシェ増倍領域22が複数の画素11aに渡って繋がっている。
【0070】
測距イメージセンサ10Dでは、半導体層20に形成されたアバランシェ増倍領域22が、複数の画素11aに渡って繋がっている。これにより、複数の画素11a間での受光感度のばらつき及び1つの画素11a内での場所による受光感度のばらつきが抑制された状態で、各画素11aにおいて高感度化が実現される。よって、測距イメージセンサ10Dによれば、複数の画素11aにおいて均一に受光感度の向上を図ることができる。
【0071】
なお、測距イメージセンサ10Dでは、シンク領域35(
図3参照)が半導体層20に形成されていない。これは、測距イメージセンサ10Dでは、上述した測距イメージセンサ10Aに比べて、バリア領域34が第1電荷転送領域24から離れることになり、その結果、バリア領域34の周辺に集まった電子が第1電荷転送領域24に入り込み難くなるからである。
[第5実施形態]
【0072】
図14及び
図15に示されるように、測距イメージセンサ10Eは、第1電荷転送領域24が各画素11aの中央部に配置されている点、複数の第2電荷転送領域26が各画素11aの複数の角部に配置されている点、第1転送ゲート電極42が環状に形成されている点、フォトゲート電極41が各画素11aの中央部及び複数の角部を避けるように配置されている点、複数の第2転送ゲート電極44が各画素11aの複数の角部に配置されている点、並びに、半導体層20にトレンチ29が形成されておらず、アバランシェ増倍領域22が複数の画素11aに渡って繋がっている点で、上述した測距イメージセンサ10Aと主に相違している。
【0073】
測距イメージセンサ10Eの各画素11aにおいて、第1電荷転送領域24は、Z方向から見た場合に各画素11aの中央部に配置されている。複数の第2電荷転送領域26は、Z方向から見た場合に、各画素11aの複数の角部に配置されている。フォトゲート電極41は、各画素11aの中央部及び複数の角部を避けるように(すなわち、第1電荷転送領域24及び複数の第2電荷転送領域26を避けるように)配置されている。フォトゲート電極41は、複数の画素11aに渡って繋がっている。第1転送ゲート電極42は、Z方向から見た場合に、例えば矩形環状を呈しており、第1電荷転送領域24の外側且つフォトゲート電極41の内側に配置されている。各第2転送ゲート電極44は、Z方向から見た場合に、フォトゲート電極41と各第2電荷転送領域26との間に配置されている。
【0074】
測距イメージセンサ10Eの各画素11aにおいて、対応する第2電荷転送領域26及び第2転送ゲート電極44は、隣り合う4つの画素11aによって共有されている。そのため、半導体層20にトレンチ29が形成されておらず、アバランシェ増倍領域22が複数の画素11aに渡って繋がっている。
【0075】
測距イメージセンサ10Eでは、半導体層20に形成されたアバランシェ増倍領域22が、複数の画素11aに渡って繋がっている。これにより、複数の画素11a間での受光感度のばらつき及び1つの画素11a内での場所による受光感度のばらつきが抑制された状態で、各画素11aにおいて高感度化が実現される。よって、測距イメージセンサ10Eによれば、複数の画素11aにおいて均一に受光感度の向上を図ることができる。
【0076】
なお、測距イメージセンサ10Eでは、ウェル領域31、LOCOS領域33、バリア領域34及びシンク領域35(
図3参照)が半導体層20に形成されていない。したがって、測距イメージセンサ10Eによれば、複数の画素11aの高密度化、及び半導体層20の構造の単純化を図ることができる。一例として、測距イメージセンサ10Eには、各画素11a用の読出し回路、及びCMOS読出し回路部12が形成された半導体基板が第1側から接合される。
[変形例]
【0077】
本開示は、上述した第1実施形態~第5実施形態に限定されない。測距イメージセンサ10A,10B,10Cでは、トレンチ29の底面29aがアバランシェ増倍領域22内に位置していてもよい。その場合には、トレンチ29を形成する時間の短縮化を実現しつつ、隣り合う画素11a間でのクロストークの発生を十分に抑制することができる。
【0078】
測距イメージセンサ10A,10B,10Cでは、トレンチ29の底面29aがアバランシェ増倍領域22に対して第1側に位置しており、アバランシェ増倍領域22が複数の画素11aに渡って繋がっていてもよい。或いは、測距イメージセンサ10A,10Bでは、半導体層20にトレンチ29が形成されておらず、アバランシェ増倍領域22が複数の画素11aに渡って繋がっていてもよい。それらの場合にも、複数の画素11aにおいて均一に受光感度の向上を図ることができる。
【0079】
測距イメージセンサ10A,10Bでは、各シンク領域35が各第2電荷転送領域26,27と接続されていなくてもよい。測距イメージセンサ10A,10Bでは、半導体層20にシンク領域35が形成されていなくてもよい。測距イメージセンサ10A,10Bでは、半導体層20にウェル領域31及びバリア領域34が形成されていなくてもよい。測距イメージセンサ10A,10B,10Cでは、半導体層20に電荷阻止領域28が形成されていなくてもよい。
【0080】
測距イメージセンサ10Dでは、バリア領域34と接続されたシンク領域35が半導体層20に形成されていてもよい。測距イメージセンサ10Dでは、バリア領域34及び第2電荷転送領域26のそれぞれと接続されたシンク領域35が半導体層20に形成されていてもよい。測距イメージセンサ10Dでは、半導体層20にウェル領域31及びバリア領域34が形成されていなくてもよい。測距イメージセンサ10D,10Eでは、半導体層20に電荷阻止領域28が形成されていてもよい。
【0081】
図16~
図22に示されるように、測距イメージセンサ10A~10Eでは、各画素11aの半導体層20に埋込領域36が形成されていてもよい。各画素11aの半導体層20に形成された埋込領域36によって、各画素11aでの暗電流の発生が抑制される。
【0082】
図16及び
図17に示される測距イメージセンサ10Aは、各画素11aの半導体層20に複数の電荷阻止領域28が形成されていない点、及び各画素11aの半導体層20に埋込領域36が形成されている点で、上述した測距イメージセンサ10Aと主に相違している。
図16及び
図17に示される測距イメージセンサ10Aにおける各画素11aの半導体層20の構成は、次のとおりである。
【0083】
図16及び
図17に示されるように、電荷振分領域23は、Z方向から見た場合にフォトゲート電極41と重なり、且つZ方向から見た場合に複数の転送ゲート電極42,43,44,45と重ならないように、形成されている。埋込領域36は、p型の領域であって、半導体層20において電荷振分領域23の第1側に形成されている。つまり、電荷振分領域23は、埋込領域36によって、半導体層20に埋め込まれている。ウェル領域31は、電荷振分領域23のうちの第1側の部分、及び埋込領域36を包囲している。ウェル領域31の一部は、埋込領域36と各電荷転送領域24,25,26,27との間に位置している。バリア領域34は、電荷振分領域23のうちの第2側の部分を包囲している。Z方向から見た場合に、電荷振分領域23を包囲するバリア領域34の内縁は、電荷振分領域23及び埋込領域36を包囲するウェル領域31の内縁よりも内側に位置している。
【0084】
図18に示される測距イメージセンサ10Bは、各画素11aの半導体層20に複数の電荷阻止領域28が形成されていない点、及び各画素11aの半導体層20に埋込領域36が形成されている点で、上述した測距イメージセンサ10Bと主に相違している。
図18に示される測距イメージセンサ10Bにおける各画素11aの半導体層20の構成は、次のとおりである。
【0085】
図18に示されるように、電荷振分領域23は、Z方向から見た場合にフォトゲート電極41と重なり、且つZ方向から見た場合に複数の転送ゲート電極42,43,44a,44b,45a,45b(
図7参照)と重ならないように、形成されている。埋込領域36は、p型の領域であって、半導体層20において電荷振分領域23の第1側に形成されている。つまり、電荷振分領域23は、埋込領域36によって、半導体層20に埋め込まれている。ウェル領域31は、電荷振分領域23のうちの第1側の部分、及び埋込領域36を包囲している。ウェル領域31の一部は、埋込領域36と各電荷転送領域24,25,26a,26b,27a,27b(
図7参照)との間に位置している。バリア領域34は、電荷振分領域23のうちの第2側の部分を包囲している。Z方向から見た場合に、電荷振分領域23を包囲するバリア領域34の内縁は、電荷振分領域23及び埋込領域36を包囲するウェル領域31の内縁よりも内側に位置している。
【0086】
図19に示される測距イメージセンサ10Cは、各画素11aの半導体層20に埋込領域36が形成されている点、各画素11aにおいて第1電荷転送領域24を含むように半導体層20にウェル領域31(以下、「内側のウェル領域31」という)が形成されている点、各画素11aにおいて第2電荷転送領域26を含むように半導体層20にウェル領域31(以下、「外側のウェル領域31」という)が形成されている点、並びに、内側のウェル領域31及び外側のウェル領域31のそれぞれの第2側にバリア領域34が形成されている点で、上述した測距イメージセンサ10Cと主に相違している。
図19に示される測距イメージセンサ10Cにおける各画素11aの半導体層20の構成は、次のとおりである。
【0087】
図19に示されるように、電荷振分領域23のうちの第1側の部分は、Z方向から見た場合にフォトゲート電極41と重なり、且つZ方向から見た場合に複数の転送ゲート電極42,44と重ならないように、形成されている。埋込領域36は、p型の領域であって、半導体層20において電荷振分領域23の第1側に形成されている。つまり、電荷振分領域23は、埋込領域36によって、半導体層20に埋め込まれている。埋込領域36は、Z方向から見た場合に、フォトゲート電極41と同様に、例えば、矩形環状を呈している。埋込領域36は、Z方向から見た場合に、内側のウェル領域31を包囲している。外側のウェル領域31は、Z方向から見た場合に、埋込領域36を包囲している。
【0088】
図20及び
図21に示される測距イメージセンサ10Dは、各画素11aの半導体層20に埋込領域36が形成されている点、各画素11aにおいて第1電荷転送領域24を含むように半導体層20にウェル領域31(以下、「内側のウェル領域31」という)が形成されている点、各画素11aにおいて複数の第2電荷転送領域26を含むように半導体層20にウェル領域31(以下、「外側のウェル領域31」という)が形成されている点、並びに、内側のウェル領域31及び外側のウェル領域31のそれぞれの第2側にバリア領域34が形成されている点で、上述した測距イメージセンサ10Dと主に相違している。
図20及び
図21に示される測距イメージセンサ10Dにおける各画素11aの半導体層20の構成は、次のとおりである。
【0089】
図20及び
図21に示されるように、電荷振分領域23のうちの第1側の部分は、Z方向から見た場合にフォトゲート電極41と重なり、且つZ方向から見た場合に複数の転送ゲート電極42,44と重ならないように、形成されている。埋込領域36は、p型の領域であって、半導体層20において電荷振分領域23の第1側に形成されている。つまり、電荷振分領域23は、埋込領域36によって、半導体層20に埋め込まれている。埋込領域36は、Z方向から見た場合に、フォトゲート電極41と同様に、例えば、矩形環状を呈している。埋込領域36は、Z方向から見た場合に、内側のウェル領域31を包囲している。外側のウェル領域31は、Z方向から見た場合に、埋込領域36を包囲している。
【0090】
図22に示される測距イメージセンサ10Eは、各画素11aの半導体層20に埋込領域36が形成されている点、各画素11aにおいて第1電荷転送領域24を含むように半導体層20にウェル領域31(以下、「内側のウェル領域31」という)が形成されている点、各画素11aにおいて複数の第2電荷転送領域26のそれぞれを含むように半導体層20にウェル領域31(以下、「外側のウェル領域31」という)が形成されている点、並びに、内側のウェル領域31及び外側のウェル領域31のそれぞれの第2側にバリア領域34が形成されている点で、上述した測距イメージセンサ10Eと主に相違している。
図22に示される測距イメージセンサ10Eにおける各画素11aの半導体層20の構成は、次のとおりである。
【0091】
図22に示されるように、電荷振分領域23のうちの第1側の部分は、Z方向から見た場合にフォトゲート電極41と重なり、且つZ方向から見た場合に複数の転送ゲート電極42,44と重ならないように、形成されている。埋込領域36は、p型の領域であって、半導体層20において電荷振分領域23の第1側に形成されている。つまり、電荷振分領域23は、埋込領域36によって、半導体層20に埋め込まれている。埋込領域36は、Z方向から見た場合に、内側のウェル領域31を包囲している。
【0092】
測距イメージセンサ10A~10Eでは、第1側及び第2側のいずれからも半導体層20に光を入射させることが可能である。例えば、第2側から半導体層20に光を入射させる場合には、対向電極50が導電性及び光透過性を有する材料(例えばポリシリコン)によって形成されていればよい。半導体領域21に接続される電極等、第1増倍領域22a側に接続される電極(第1導電型側の電極)は、対向電極50に限定されず、半導体層20の第1表面20aから半導体領域21に至る貫通電極、又は半導体層20の第1表面20aに至る半導体領域21の表面に形成された電極等であってもよい。測距イメージセンサ10A~10Eのいずれにおいても、1つの画素11aに対して、少なくとも1つの第1電荷転送領域、少なくとも1つの第2電荷転送領域、少なくとも1つの第1転送ゲート電極、及び少なくとも1つの第2転送ゲート電極が設けられていればよく、第1転送ゲート電極及び第2転送ゲート電極への電圧の加え方、並びに、第1電荷転送領域及び第2電荷転送領域からの電荷の取り出し方・排出のさせ方についても、上述したものに限定されない。測距イメージセンサ10A~10Eのいずれにおいても、p型及びn型の各導電型は、上述したものに対して逆であってもよい。測距イメージセンサ10A~10Eのいずれにおいても、複数の画素11aは、半導体層20の第1表面20aに沿って1次元に配列されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0093】
10A,10B,10C,10D,10E…測距イメージセンサ、11a…画素、20…半導体層、20a…第1表面、20b…第2表面、20s…半導体基板、22…アバランシェ増倍領域、22a…第1増倍領域、22b…第2増倍領域、23…電荷振分領域、24,25…第1電荷転送領域、26,26a,26b,27,27a,27b…第2電荷転送領域、29…トレンチ、29a…底面、31…ウェル領域、34…バリア領域、35…シンク領域、40…電極層、41…フォトゲート電極、42,43…第1転送ゲート電極、44,44a,44b,45,45a,45b…第2転送ゲート電極、60…配線層。