IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧

特許7628979高抵抗・高耐食セラミックス材料及びウエハ載置台
<>
  • 特許-高抵抗・高耐食セラミックス材料及びウエハ載置台 図1
  • 特許-高抵抗・高耐食セラミックス材料及びウエハ載置台 図2
  • 特許-高抵抗・高耐食セラミックス材料及びウエハ載置台 図3
  • 特許-高抵抗・高耐食セラミックス材料及びウエハ載置台 図4
  • 特許-高抵抗・高耐食セラミックス材料及びウエハ載置台 図5
  • 特許-高抵抗・高耐食セラミックス材料及びウエハ載置台 図6
  • 特許-高抵抗・高耐食セラミックス材料及びウエハ載置台 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】高抵抗・高耐食セラミックス材料及びウエハ載置台
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20250204BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20250204BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20250204BHJP
   C04B 35/582 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/205
C04B35/582
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022042036
(22)【出願日】2022-03-17
(65)【公開番号】P2023136387
(43)【公開日】2023-09-29
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 亮誉
(72)【発明者】
【氏名】上田 晃司
(72)【発明者】
【氏名】西尾 仁志
(72)【発明者】
【氏名】溝口 智久
【審査官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-254164(JP,A)
【文献】特開2006-128603(JP,A)
【文献】特開2014-058418(JP,A)
【文献】特表2020-526939(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0318575(US,A1)
【文献】特開2007-191383(JP,A)
【文献】特開2004-172637(JP,A)
【文献】特開2003-221279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H01L 21/205
C04B 35/582
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム-アルミニウム酸窒化物を含有するセラミックス材料であって、
炭素含有率が0.005~0.275質量%であり、
CuKα線を用いたときのXRDピークが少なくとも2θ=47~50°に現れるマグネシウム-アルミニウム酸窒化物相を主相とする、
高抵抗・高耐食セラミックス材料。
【請求項2】
500℃における体積抵抗率が1×109Ωcm以上である、
請求項1に記載のセラミックス材料。
【請求項3】
チタンを含有する、
請求項1又は2に記載のセラミックス材料。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載のセラミックス材料で形成され、上面にウエハを載置可能なセラミックス基体と、
前記セラミックス基体の内部に配置された電極と、
を備えたウエハ載置台。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載のセラミックス材料で形成され、上面にウエハを載置可能なセラミックス基体と、
前記セラミック基体の下面に設けられ、前記セラミック基体よりも熱伝導率の高い高熱伝導基体と、
前記セラミックス基体の内部、前記高熱伝導基体の内部又は前記セラミック基体と前記高熱伝導基体との間に配置された電極と、
前記高熱伝導基体の内部であって前記電極よりも下方に配置された抵抗発熱体と、
を備えたウエハ載置台。
【請求項6】
マグネシウム-アルミニウム酸窒化物を含有し、炭素含有率が0.005~0.275質量%であるセラミックス材料で形成され、上面にウエハを載置可能なセラミックス基体と、
前記セラミック基体の下面に設けられ、前記セラミック基体よりも熱伝導率の高く、AlNとYAGとを含む高熱伝導基体と、
前記セラミックス基体の内部、前記高熱伝導基体の内部又は前記セラミック基体と前記高熱伝導基体との間に配置された電極と、
前記高熱伝導基体の内部であって前記電極よりも下方に配置された抵抗発熱体と、
を備えたウエハ載置台。
【請求項7】
前記高熱伝導基体は、チタンを含む、
請求項に記載のウエハ載置台。
【請求項8】
前記セラミックス材料は、500℃における体積抵抗率が1×10 9 Ωcm以上である、
請求項6又は7に記載のウエハ載置台。
【請求項9】
前記セラミックス材料は、チタンを含有する、
請求項6~8のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【請求項10】
前記セラミックス材料は、CuKα線を用いたときのXRDピークが少なくとも2θ=47~50°に現れるマグネシウム-アルミニウム酸窒化物相を主相とする、
請求項6~9のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高抵抗・高耐食セラミックス材料及びウエハ載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造におけるドライプロセスやプラズマコーティングなどに用いられる半導体製造装置には、エッチング用やクリーニング用として、反応性の高いF、Cl等のハロゲン系プラズマが使用される。このため、そのような半導体製造装置に組み付けられる部材には、高い耐食性が要求される。高い耐食性を有する材料としては、特許文献1に示されるように、マグネシウム-アルミニウム酸窒化物相を主相とするセラミックス材料が知られている。このセラミックス材料は、半導体製造プロセスにおいて使用される反応性の高いハロゲン系プラズマに長期間耐えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5680645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年は、高品質な膜を生成するためプロセス温度が高温化(500℃以上)している。そのため、高温で十分な耐食性を有するだけでなく、高温でウエハを静電吸着できることも要求される。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、高温で十分な耐食性を有すると共に、高温での体積抵抗率を高くすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の高抵抗・高耐食セラミックス材料は、
マグネシウム-アルミニウム酸窒化物を含有するセラミックス材料であって、
炭素含有率が0.005~0.275質量%
のものである。
【0007】
このセラミックス材料によれば、炭素を適切な範囲で含有しているため、高温で十分な耐食性を有すると共に、高温での体積抵抗率を高くすることができる。
【0008】
本発明のウエハ載置台は、
上述したセラミックス材料で形成され、上面にウエハを載置可能なセラミックス基体と、
前記セラミックス基体の内部に配置された電極と、
を備えたものであるか、
上述したセラミックス材料で形成され、上面にウエハを載置可能なセラミックス基体と、
前記セラミック基体の下面に設けられ、前記セラミック基体よりも熱伝導率の高い高熱伝導基体と、
前記セラミックス基体の内部、前記高熱伝導基体の内部又は前記セラミック基体と前記高熱伝導基体との間に配置された電極と、
前記高熱伝導基体の内部であって前記電極よりも下方に配置された抵抗発熱体と、
を備えたものである。
【0009】
こうしたウエハ載置台によれば、セラミックス基体は上述したセラミックス材料で形成されているため、高温で十分な耐食性を有すると共に、高温での体積抵抗率を高くすることができる。ここで、「電極」は、例えば、静電電極であってもよいし、ヒータ電極(抵抗発熱体)であってもよいし、プラズマ発生用の高周波(RF)電極であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ウエハ載置台10の縦断面図。
図2】ウエハ載置台20の縦断面図。
図3】ウエハ載置台30の縦断面図。
図4】ウエハ載置台40の縦断面図。
図5】実験例3のXRDチャートである。
図6】実験例5のXRDチャートである。
図7】C含有率と500℃での体積抵抗率との関係を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。図1図4はウエハ載置台10~40の縦断面図である。なお、本明細書において、「上」「下」は、絶対的な位置関係を表すものではなく、相対的な位置関係を表すものである。そのため、ウエハ載置台10~40の向きによって「上」「下」は「下」「上」になったり「左」「右」になったり「前」「後」になったりする。また、本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0012】
本実施形態の高抵抗・高耐食セラミックス材料は、マグネシウム-アルミニウム酸窒化物を含有し、炭素含有率が0.005~0.275質量%のものである。炭素含有率がこの範囲であれば、高温で十分な耐食性を有すると共に、高温での体積抵抗率を高くすることができる。例えば、このセラミックス材料を、ウエハ載置面を有する静電電極内蔵のセラミックス基体に用いた場合には、高温でウエハを静電吸着したり、高温でウエハを処理する際にウエハと電極との間にリーク電流が流れるのを抑制したりすることができる。また、このセラミックス材料を、ヒータ電極(抵抗発熱体)又はRF電極を内蔵するセラミックス基体に用いた場合には、高温でウエハを処理する際にウエハと電極との間にリーク電流が流れるのを抑制することができる。炭素含有率が0.005質量%未満の場合や0.275質量%を超える場合、500℃における体積抵抗率が低くなる。炭素含有率は0.005~0.21質量%であることが好ましい。本実施形態のセラミックス材料は、マグネシウム-アルミニウム酸窒化物を主相として含有していることが好ましい。ここで、主相とは、全体に占める相の中で最も多く含まれる相をいう。
【0013】
本実施形態のセラミックス材料は、500℃における体積抵抗率が1×109Ωcm以上であることが好ましい。500℃における体積抵抗率が×109Ωcm以上であれば、このセラミックス材料をウエハ載置面を有する電極内蔵のセラミック基体として利用した場合に、高温でウエハを処理する際にウエハと電極との間にリーク電流が流れるのを十分抑制することができる。また、このセラミックス材料を静電チャックに用いた場合に、高温においてジョンソン-ラーベック力によりウエハを確実に静電吸着することができる。また、500℃における体積抵抗率が5×1011Ωcm以下であることが好ましい。こうすれば、このセラミックス材料を静電チャックに用いた場合に、ウエハの吸脱着応答性を良好にすることができる。
【0014】
本実施形態のセラミックス材料は、チタンを含有していてもよい。チタンを含有させることにより、セラミックス材料の色を黒色にすることができる。そのため、セラミックス材料の色むらを目立たなくすることができる。チタンの含有率は、耐食性が低下せず、500℃における体積抵抗率が上述した範囲から逸脱しないように設定すればよく、例えば、酸化物換算で0.1~1質量%の範囲で設定すればよい。
【0015】
本実施形態のセラミックス材料は、CuKα線を用いたときのXRDピークが少なくとも2θ=47~50°(好ましくは47~49°)に現れるマグネシウム-アルミニウム酸窒化物相を主相とすることが好ましい。こうしたセラミックス材料は、ハロゲン化プラズマに対する耐食性がスピネルと同等かそれより高いため、好ましい。この主相は、特許文献1(特許第5680645号)に係るマグネシウム-アルミニウム酸窒化物のピークと一致していることが好ましい。なお、特許文献1に係るマグネシウム-アルミニウム酸窒化物のピークは、例えば、参考文献1(J. Am. Ceram. Soc.,93[2] 322-325(2010))や参考文献2(特開2008-115065)に示されているMgAlON(又はマグアロン)のピークとは一致しない。一般に、これらのMgAlONはスピネルにN成分が固溶したものとして知られており、特許文献1に係るマグネシウム-アルミニウム酸窒化物とは異なる結晶構造を有すると考えられる。
【0016】
次に、本実施形態のセラミックス材料の製造例について説明する。本実施形態のセラミックス材料は、酸化マグネシウムとアルミナと窒化アルミニウムと炭素源との混合粉末を、成形後焼成することにより製造することができる。例えば、酸化マグネシウムを5質量%以上60質量%以下、アルミナを60質量%以下、窒化アルミニウムを90質量%以下となるように秤量し、更にこれらに炭素源を添加した混合した粉末を成形後焼成してもよい。炭素源としては、有機バインダや有機分散剤を添加してもよいし、炭素粉末を添加してもよい。炭素源の添加量は、焼成後のセラミックス材料に含まれる炭素含有量が0.005~0.2質量%になるように設定すればよい。あるいは、焼成前の段階で脱脂することにより、焼成後のセラミックス材料に含まれる炭素含有量が0.005~0.2質量%になるように調整してもよい。この場合、脱脂温度によって炭素含有量を調整してもよい。脱脂温度は例えば300~600℃の範囲で設定するのが好ましい。成形は、例えば、混合粉末のスラリーを造粒して顆粒にした後その顆粒を粉末プレスしてもよいし、混合粉末のスラリーをドクターブレード法でグリーンシートにしてもよい。成形時の圧力は、特に制限するものではなく、形状を保持することのできる圧力に適宜設定すればよい。焼成温度は1750℃以上とすることが好ましく、1800~1950℃とするのがより好ましい。また、焼成はホットプレス焼成を採用することが好ましく、ホットプレス焼成時のプレス圧力は、50~300kgf/cm2で設定することが好ましい。焼成時の雰囲気は、酸化物原料の焼成に影響を及ぼさない雰囲気であることが好ましく、例えば窒素雰囲気やアルゴン雰囲気、ヘリウム雰囲気などの不活性雰囲気であることが好ましい。成形時の圧力は、特に制限するものではなく、形状を保持することのできる圧力に適宜設定すればよい。
【0017】
次に、ウエハ載置台10~40について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
ウエハ載置台10は、図1に示すように、セラミックス基体12の内部に配置された静電電極14と、セラミックス基体12の内部であって静電電極14よりも下方に配置された抵抗発熱体16とを備えた静電チャックヒータである。
【0019】
セラミックス基体12は、上述したセラミックス材料を円板状に形成したものであり、上面にウエハを載置可能なウエハ載置面12aを有する。
【0020】
静電電極14は、円板状の金属板又は金属メッシュであり、ウエハ載置面12aに平行に設けられている。静電電極14には円板の金属板、メッシュ以外にも箔、パンチングメタル、印刷電極などの形態を採用することもできる。なお、「平行」とは、完全に平行な場合のほか、完全に平行でなくても許容される誤差(例えば公差)の範囲内であれば平行とみなす。セラミックス基体12のうち静電電極14よりも上側の部分は、誘電層として機能する。ウエハ載置面12aに載置されたウエハは、静電電極14に直流電圧を印加すると、ジョンソン-ラーベック力(静電気力)によってウエハ載置面12aに吸着される。静電電極14に用いられる材料としては、例えば、W、Mo、W-Mo合金又はそれらの炭化物が挙げられる。
【0021】
抵抗発熱体16は、セラミックス基体12を上から見たときに全体にわたって一筆書きの要領で一端から他端まで配線され、一端と他端との間に電流を流すことにより発熱する。抵抗発熱体16は、例えば線状の導体を屈曲させ、巻回体に加工したものを使用可能である。抵抗発熱体16の線径は0.3mm~0.5mm程度が好ましく、コイル形状の場合には巻径は2mm~4mm程度が好ましく、ピッチは1mm~7mm程度が好ましい。ここで「巻径」とは、抵抗発熱体16を構成するコイルの内径を意味する。抵抗発熱体16の形状としては、コイル形状の他にも、リボン状、メッシュ状、コイルスプリング状、シート状、印刷電極等の種々の形態を採用することもできる。抵抗発熱体16に用いられる材料としては、例えば、W、Mo、W-Mo合金又はそれらの炭化物が挙げられる。
【0022】
ウエハ載置台10の下面には、円筒状のシャフト18が接合されている。接合は、例えば焼結によって行ってもよいし、接合剤(例えば無機接合剤)を用いて行ってもよい。シャフト18は、セラミックス基体12と線熱膨張係数が同じか近いものを用いることが好ましい。シャフト18の材料としては、AlN-YAGを用いることが好ましい。YAGは、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Y3Al512)の略称である。AlN-YAGは、チタンを含有していてもよく、その含有率は、例えば酸化物換算で0.1~1質量%としてもよい。チタンを添加すると、AlN-YAGの色が黒くなるため、AlN-YAGの色むらを目立たなくすることができる。
【0023】
以上説明したウエハ載置台10によれば、セラミックス基体12は上述したセラミックス材料で形成されているため、上述したセラミックス材料と同様の効果、例えば高温で十分な耐食性を有すると共に、高温での体積抵抗率を高くすることができる。また、高温でウエハを静電吸着したり、高温でウエハを処理する際にウエハと静電電極14との間にリーク電流が流れるのを抑制したりすることができる。更に、高温でウエハを処理する際にウエハと抵抗発熱体16との間にリーク電流が流れるのを抑制することができる。
【0024】
図2に示すウエハ載置台20は、静電電極24を内蔵したセラミックス基体22の下面に、抵抗発熱体26を内蔵した高熱伝導基体23を接合した静電チャックヒータである。接合は、例えば焼結によって行ってもよいし、接合剤(例えば無機接合剤)を用いて行ってもよい。
【0025】
セラミックス基体22は、上述したセラミックス材料を円板状に形成したものであり、上面にウエハを載置可能なウエハ載置面22aを有する。静電電極24は、上述した静電電極14と同じであるため、説明を省略する。
【0026】
高熱伝導基体23は、セラミックス基体22よりも熱伝導率が高く、セラミックス基体22と線熱膨張係数が同じか近いものを用いる。AlN-YAGは、チタンを含有していてもよく、その含有率は、例えば酸化物換算で0.1~1質量%としてもよい。チタンを添加すると、AlN-YAGの色が黒くなるため、AlN-YAGの色むらを目立たなくすることができる。
【0027】
抵抗発熱体26は、上述した抵抗発熱体16と同じであるため、説明を省略する。
【0028】
ウエハ載置台20の下面には、円筒状のシャフト28が接合されている。シャフト28は、上述したシャフト18と同じであるため、説明を省略する。
【0029】
以上説明したウエハ載置台20によれば、セラミックス基体22は上述したセラミックス材料で形成されているため、上述したセラミックス材料と同様の効果、例えば高温で十分な耐食性を有すると共に、高温での体積抵抗率を高くすることができる。また、高温でウエハを静電吸着したり、高温でウエハを処理する際にウエハと静電電極14との間にリーク電流が流れるのを抑制したりすることができる。
【0030】
また、ウエハ載置台20では、セラミックス基体22の下面に高熱伝導基体23が接合されているため、ウエハ載置台10に比べてウエハ載置面22aに載置されるウエハの温度を均一にしやすい。
【0031】
更に、高熱伝導基体23は、セラミックス基体22と熱膨張係数が同じか近いため、昇温と降温とが繰り返されたとしても、セラミックス基体22から剥がれにくい。
【0032】
図3に示すウエハ載置台30は、静電電極24をセラミックス基体22と高熱伝導基体23との界面に配置した以外は、ウエハ載置台20と同様である。ウエハ載置台30も、ウエハ載置台20と同様の効果が得られる。
【0033】
図4に示すウエハ載置台40は、静電電極24をセラミックス基体22ではなく高熱伝導基体23に内蔵した以外は、ウエハ載置台20と同様である。抵抗発熱体26は、静電電極24よりも下方に配置される。ウエハ載置台40も、ウエハ載置台20と同様の効果が得られる。但し、ウエハ載置台40では、誘電体層(静電電極24よりも上側の部分)がセラミックス基体22と高熱伝導基体23とで構成されているため、誘電体層がセラミックス基体22のみで構成されているウエハ載置台10~30の方がウエハの吸着力を調整しやすい。
【0034】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0035】
例えば、ウエハ載置台10~40として、静電電極14,24を内蔵したものを例示したが、静電電極14,24を内蔵しないものとしてもよい。この場合でも、ウエハと抵抗発熱体16,26との間にリーク電流が流れるのを抑制することができる。また、静電電極14,24に代えて又は加えてRF電極を内蔵してもよいし、静電電極14,24をRF電極と兼用してもよい。
【0036】
また、高熱伝導基体23の外周(上面、側面、下面)を上述したセラミック材料により包むこともできる。これにより、側面、底面の耐食性を上げることができる。
【実施例
【0037】
以下に、本発明の実施例について説明する。実験例2~6,9~11,13~15,17~19が本発明の実施例に相当する。なお、以下の実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0038】
[実験例1~7]
・調合
実験例1では、 MgO原料、Al23原料及びAlN原料を、表1に示す質量%となるように秤量し、イソプロピルアルコールを溶媒とし、ナイロン製のポット、直径5mmのアルミナ玉石を用いて4時間湿式混合した。混合後スラリーを取り出し、窒素気流中110℃で乾燥した。その後30メッシュの篩に通し、調合粉末とした。
【0039】
実験例2では、MgO原料、Al23原料及びAlN原料を、表1に示す質量%となるように秤量し、イソプロピルアルコールを溶媒とし、アクリル系バインダ1.0質量%及びポリカルボン酸系分散剤0.1質量%を添加し、トロンメルでアルミナ玉石を用いて4時間湿式混合し、原料スラリーを作製した。得られた原料スラリーをスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、顆粒を作製した。更に、得られた顆粒を大気中500℃で24時間加熱して、一部脱脂した顆粒を作製した。
【0040】
実験例3では、大気中500℃で5時間加熱して一部脱脂したこと以外は、実験例2と同様にして顆粒を作製した。
【0041】
実験例4では、アクリル系バインダ1.5質量%及びポリカルボン酸系分散剤0.5質量%を添加したことと、大気中450℃で5時間加熱して一部脱脂したこと以外は、実験例2と同様にして顆粒を作製した。
【0042】
実験例5では、脱脂を行わなかった以外は、実験例4と同様にして顆粒を作製した。
【0043】
実験例6では、MgO原料、Al23原料及びAlN原料を、表1に示す質量%となるように秤量し、イソプロピルアルコールを溶媒とし、カーボン粉末を0.3質量%添加し、ナイロン製のポット、直径5mmのアルミナ玉石を用いて4時間湿式混合した。混合後スラリーを取り出し、窒素気流中110℃で乾燥した。その後30メッシュの篩に通し、調合粉末とした。
【0044】
実験例7では、カーボン粉末を0.42質量%添加したこと以外は、実験例6と同様にして顆粒を作製した。
【0045】
・成形
調合粉末又は顆粒を、100kgf/cm2の圧力で一軸加圧成形し、直径35mm、厚さ10mm程度の円板状成形体を作製し、焼成用黒鉛モールドに収納した。
【0046】
・焼成
円板状成形体をホットプレス焼成することによりセラミックス基体を得た。ホットプレス焼成では、プレス圧力を200kgf/cm2とし、表1に示す焼成温度(最高温度)で焼成した。雰囲気は、焼成終了までN2雰囲気とした。焼成温度での保持時間は4時間とした。
【0047】
[評価]
(1)結晶相評価
実験例1~7で得られたセラミックス基体を乳鉢で粉砕し、X線回折装置により結晶相を同定した。測定条件はCuKα,40kV,40mA,2θ70°とし、封入管式X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス製 D8 ADVANCE)を使用した。その結果、実験例1~7のいずれにおいても、主相はマグネシウム-アルミニウム酸窒化物(2θ=47~49°にピークあり)であった。この主相は、特許文献1で同定されたマグネシウム-アルミニウム酸窒化物のピークと一致していた。図5及び図6に代表例(実験例3,5)のXRDチャートを示す。
【0048】
(2)炭素(C)含有率
C含有率は、JIS R1616:2007に記載された全炭素量の測定方法に準拠して測定した。具体的には、試料を助燃剤とともに酸素気流中で高周波加熱によって燃焼させ、生成した二酸化炭素(及び一酸化炭素)を酸素とともに赤外線分析計に送り、赤外線吸収量の変化を測定することにより、C含有率を求めた。実験例1~7で得られたセラミックス基体のC含有率を表1に示す。C含有率は、実験例1,7ではそれぞれ0.002質量%,0.30質量%であったが、実験例2~6では0.005~0.21質量%であった。実験例1は、特許文献1の実施品であり、実験例1のC含有率は、積極的に炭素源を添加しなかった場合の値(不純物として含まれるC含有率)である。
【0049】
(3)体積抵抗率(500℃)
体積抵抗率は、JIS-C2141に準じた方法により、大気中、500℃にて測定した。試験片形状は、直径50mm×(0.5~1mm)とし、主電極は直径20mm、ガード電極は内径30mm、外径40mm、印加電極は直径40mmとなるよう各電極を銀で形成した。印加電圧は500V/mmとし、電圧印加後3分時の電流値を読み取り、その電流値から室温体積抵抗率を算出した。 実験例1~7で得られたセラミックス基体の体積抵抗率を表2に示す。表2の体積抵抗率において、「E8」は108を表し、「E10」は1010を表す。500℃での体積抵抗率は、実験例2~6では1×109Ωcm以上であったが、実験例1,7ではそれよりも低い値であった。C含有率と500℃での体積抵抗率との関係を表すグラフを図7に示す。図7のグラフから500℃での体積抵抗率が1×109Ωcm以上になるC含有率は0.005~0.275質量%であることがわかる。また、0.011~0.19質量%であれば5×109Ωcm以上となりさらによい。
【0050】
(4)熱伝導率(室温)
熱伝導率は、レーザフラッシュ法により測定した。 実験例2,3,5,6で得られたセラミックス基体の室温での熱伝導率を表2に示す。
【0051】
(5)平均線熱膨張係数(40~1000℃)
1000℃での平均線熱膨張係数は、ディラトメーター(ブルカー・エイエックスエス製)を用いて、窒素雰囲気中、40~1000℃で測定した。実験例2,3,5,6で得られたセラミックス基体の1000℃での平均線熱膨張係数を表2に示す。
【0052】
(6)エッチングレート
実験例1,3,5,6で得られたセラミックス基体のエッチングレートを表2に示す。具体的には、各材料の表面を鏡面に研磨し、ICPプラズマ耐食試験装置を用いて下記条件の耐食試験を行った。そして、段差計により測定したマスク面と暴露面との段差を試験時間で割ることにより各材料のエッチングレートを算出した。その結果、実験例3,5,6は実験例1(耐食性がスピネルと同等かそれよりも高い特許文献1の実施品)と比べて同等かそれ以上の耐食性を持つことがわかった。
ICP:800W、バイアス:300W、導入ガス:NF3/Ar=75/100sccm 13Pa 、暴露時間:5h、試料温度:550℃
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
[実験例8~19]
実験例8~19では、 MgO原料、Al23原料及びAlN原料を、表1に示す質量%となるように秤量し、実験例1~7に準じて、調合粉末又は顆粒を作製し、成形及び焼成を行い、セラミックス基体を得た。得られたセラミックス基体のC含有率は表1に示した通りであった。なお、実験例8,12,16のC含有率は、積極的に炭素源を添加しなかった場合の値(不純物として含まれるC含有率)である。
【0056】
[実験例20]
実験例20は、AlN-YAG製の高熱伝導基体の一例である。まず、AlN原料、Y23原料、Al23原料及びTiO2原料を、それぞれ74.5,15,10,0.5質量%となるように秤量し、イソプロピルアルコールを溶媒とし、ナイロン製のポット、直径5mmのアルミナ玉石を用いて4時間湿式混合した。混合後スラリーを取り出し、窒素気流中110℃で乾燥した。その後30メッシュの篩に通し、調合粉末とした。この調合粉末を用いて、実験例1と同様にして成形及び焼成を行うことにより、円板状の高熱伝導基体を得た。この高熱伝導基体のXRDスペクトルを解析したところ、主相はAlN-YAGであった。また、高熱伝導基体の色は黒色であった。得られた高熱伝導基体の500℃での体積抵抗率は5×109Ωcm、室温での熱伝導率は81W/m・K、40~1000℃での熱膨張係数は6.1×10-6/Kであった。すなわち、熱伝導率は実験例2,3,5,6の約10倍、熱膨張係数は実験例2,3,5,6と同等であった。実験例20は、上述したウエハ載置台10~40のシャフト28やウエハ載置台20~40の高熱伝導基体23として用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
10 ウエハ載置台、12 セラミックス基体、12a ウエハ載置面、14 静電電極、16 抵抗発熱体、18 シャフト、20 ウエハ載置台、22 セラミックス基体、22a ウエハ載置面、23 高熱伝導基体、24 静電電極、26 抵抗発熱体、28 シャフト、30,40 ウエハ載置台。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7