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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】金属-有機構造体の高収量合成法
(51)【国際特許分類】
   C07C 65/105 20060101AFI20250204BHJP
   C07F 3/02 20060101ALI20250204BHJP
   C07F 13/00 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
C07C65/105
C07F3/02 A
C07F13/00 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022564192
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 US2021018248
(87)【国際公開番号】W WO2021216174
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】63/014,309
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523025539
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】アブニー,カーター ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】イバシュコ,アナ シー
(72)【発明者】
【氏名】マハノ,ヘラルド ホタ
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/068996(WO,A1)
【文献】特表2013-511385(JP,A)
【文献】特表2015-504000(JP,A)
【文献】国際公開第2013/059527(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0159713(US,A1)
【文献】Thomas M. McDonald, et al. ,Cooperative insertion of CO2 in diamine-appended metal-organic frameworks,Nature,2015年,Vol.519, No.7543,pp.303-308
【文献】Phillip J. Milner, et al. ,Overcoming double-step CO2 adsorption and minimizing water co-adsorption in bulky diamine-appended variants of Mg2(dobpdc) ,Chemical Science ,2018年,Vol.9, No.1,pp.160-174
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 65/105
C07F 3/02
C07F 13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中に複数の固体試薬及び緩衝剤を溶解させて、合成溶液を準備するステップであって固体試薬は、少なくとも1種の金属塩及び少なくとも1種のリンカーを含む、ステップと、
ある量複数の固体試薬合成溶液に添加して、135mM~400mMの固体試薬の反応濃度を有する反応溶液を生成するステップ
を含む、金属-有機構造体を作成する方法であって、
金属有機構造体は、式:
(2-x) (A)
[式中、M 及びM は、金属カチオンであり、xは、0~2の範囲であり、及びAは、ジサリチレート有機リンカーである。]
で示され、
金属は、Mg、Mn、Ni及びZnの少なくとも1種を含み、
緩衝剤は、ブレンステッド酸及びその共役塩基又はブレンステッド塩基及びその共役酸を含み、及び
溶媒は、水、アセトニトリル及びテトラヒドロフランを含む、方法
【請求項2】
溶媒中において、ある量の複数の固体試薬及び緩衝剤を混合して、反応混合物を準備するステップであって固体試薬は、少なくとも1種の金属塩及び少なくとも1種のリンカーを含み、及複数固体試薬量は溶媒によって18℃~22℃で溶解され得るような量を超えており、反応混合物は、飽和した懸濁液となっている、ステップ
を含む、金属-有機構造体を作成する方法であって、
金属有機構造体は、式:
(2-x) (A)
[式中、M 及びM は、金属カチオンであり、xは、0~2の範囲であり、及びAは、ジサリチレート有機リンカーである。]
で示され、
金属は、Mg、Mn、Ni及びZnの少なくとも1種を含み、
緩衝剤は、ブレンステッド酸及びその共役塩基又はブレンステッド塩基及びその共役酸を含み、及び
溶媒は、水、アセトニトリル及びテトラヒドロフランを含む、方法
【請求項3】
固体試薬量を固体試薬が溶液中にもはや溶解可能でなくなるまで増加させるステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
反応混合物は、530mM~2.852Mの固体試薬の反応濃度を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
反応溶液又反応混合物は、24~96時間にわたって静的状態でない、請求項1又は2に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
【請求項6】
反応溶液又反応混合物は、100℃~160℃で加熱される、請求項1又は2に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
【請求項7】
リンカーは、2つ以上のフェニル環又はビニル基若しくはアルキニル基によって結合された2つのフェニル環を有する複数の架橋されたアリールを含む、請求項1又は2に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
【請求項8】
リンカーは、4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート(DOBPDC)、4,4’’-ジオキシド-[1,1’:4’,1’’-テルフェニル]-3,3’’-ジカルボキシレート(DOTPDC)、ジオキシドビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート(パラ-カルボキシレート-DOBPDC)及び以下の化合物:
【化1】
からなる群から選択される少なくとも1種のパラ-カルボキシレート(「pc-リンカー」)を含む、請求項1又は2に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
【請求項9】
リンカーは、HDOBPDCである、請求項1又は2に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
【請求項10】
金属塩は、金属イオンの酸又は塩基を中和することによって調製される、請求項1又は2に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
【請求項11】
金属塩中の対イオンは、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩及び/又は炭酸塩を含む、請求項1又は2に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
【請求項12】
金属塩は、Mg(NO・6HO及びMnCl・4HOである、請求項1又は2に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
【請求項13】
緩衝剤は、本質的に、アルキル基によって架橋されたモルホリン及びスルホン酸を含むファミリーのものである、請求項1又は2に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
【請求項14】
緩衝剤は、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムのファミリーのものである、請求項1又は2に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
【請求項15】
緩衝剤は、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、NaMOPS又はNaHCOである、請求項1又は2に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
【請求項16】
金属-有機構造体は、MOF-274である、請求項1又は2に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
【請求項17】
反応溶液の公称pHは、リンカーの脱プロトン化を可能にする、請求項1又は2に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
【請求項18】
溶媒は、ハンセン溶解度パラメーターの評価によって選択される、請求項1又は2に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
【請求項19】
反応溶液又反応混合物は、静的、転動又は撹拌条件において加熱される、請求項1又は2に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属-有機構造体を合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属-有機構造体を作成するための従来の合成法は、溶媒中に固体を完全に溶解させて反応溶液を形成することを含み、これは、その後、高温で金属-有機構造体の成長を促進する。多くの場合、そのような合成法の前提条件は、試薬を溶解させるのに必要とされる大量の溶媒である。しかしながら、結晶を成長させるには、金属-有機構造体を作成するために必要とされる固体試薬の量が制限因子となることが多い。
【0003】
従来の合成プロトコールは、長い反応時間及び低い収率という2つの大きい欠点を有する。従来のソルボサーマル方法を使用して得られる収率は、実験室での使用であれば妥当であるものの、工業的スケールでは、その方法は、時間、溶媒の分離及び加熱の点で非効率的である。金属-有機構造体の合成法の最適化及びスケールアップは、その原料の性質のために特に課題であり、なぜなら、それらは、多くの場合、大量の溶媒を必要とし、少量の固形物を取り込み得るためである。この結果、必然的に物質の収量が乏しくなり、試験のための十分な物質を製造するには、極端に集約的なプロセスとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、高品質の金属-有機構造体を得るのに典型的に必要とされるよりも少ない労力でより高い収量の金属-有機構造体を生成する、金属有機構造体の合成法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
金属-有機構造体を作成する方法は、溶媒中に複数の固体試薬及び緩衝剤を溶解させて、合成溶液を提供するステップと、ある量の複数の固体試薬を合成溶液に添加して、リンカーの脱プロトン化及び金属-有機構造体の形成を生じさせる反応溶液を生成するステップとを含む。固体試薬は、少なくとも1種の金属塩及び少なくとも1種のリンカーを含む。反応溶液は、従来のソルボサーマル合成法の試薬濃度の約3倍~約7倍の試薬濃度を有する。
【0006】
溶媒中において、ある量の複数の固体試薬及び緩衝剤を混合して、反応混合物を提供するステップを含む、金属-有機構造体を作成する方法も提供される。固体試薬は、少なくとも1種の金属塩及び少なくとも1種のリンカーを含み、及び複数の固体試薬の量は、溶媒中に溶解され得る量を超える。反応混合物は、飽和した懸濁液であり、リンカーの脱プロトン化及び金属-有機構造体の形成を生じさせる。1つの態様では、方法は、固体試薬の量を、固体試薬が溶媒中にもはや溶解可能でなくなるまで増加させるステップをさらに含む。
【0007】
さらに提供されるのは、溶媒中において、1種又は複数の金属塩及び1種又は複数のリンカーを含む試薬を緩衝剤と混合して、飽和した懸濁液である反応混合物を生成するステップを含む、金属-有機構造体を合成する方法である。反応混合物が加熱されて、同じ試薬の従来のソルボサーマル合成法と比較して約3倍~約45倍の、容積について正規化された質量基準の収量が増量した状態の金属-有機構造体を形成する。
【0008】
さらに提供されるのは、溶媒中に複数の固体試薬及び緩衝剤を溶解させて、合成溶液を提供するステップと、ある量の複数の固体試薬を合成溶液に添加して、従来のソルボサーマル合成法における試薬濃度の量と比較して約3倍~約7倍の試薬濃度の量を有する反応溶液を生成するステップとを含む、金属有機-構造体を合成する方法である。固体試薬は、少なくとも1種の金属塩及び少なくとも1種のリンカーを含む。反応溶液は、同じ試薬の従来のソルボサーマル合成法による金属-有機構造体の収量と比較して約3倍~約15倍の、容積について正規化された質量基準の収量でリンカーの脱プロトン化及び金属-有機構造体の形成を生じさせる。
【0009】
1つの態様では、反応溶液又は反応混合物は、約96時間にわたって静的状態である。
【0010】
1つの態様では、反応溶液又は反応混合物は、約24時間にわたり、室温、すなわち約18℃~約22℃又は室温より高い温度で撹拌、転動、振盪、混合又は他に混ぜられる。
【0011】
1つの態様では、緩衝剤は、ブレンステッド酸及びその共役塩基又はブレンステッド塩基及びその共役酸を含む。1つの態様では、反応溶液又は反応混合物は、約25℃~約160℃で加熱される。
【0012】
1つの態様では、反応溶液を、自発的に決まる加圧にかける。1つの態様では、リンカーは、ビニル基若しくはアルキニル基によって結合された2つ以上のフェニル環又は2つのフェニル環を有する複数の架橋されたアリール化学種を含む。1つの態様では、リンカーは、HDOBDPCである。1つの態様では、金属塩は、金属イオンの酸又は塩基を中和することによって調製される。1つの態様では、金属塩は、Mg(NO・6HO及びMnCl・4HOである。1つの態様では、緩衝剤は、Na MOPSである。1つの態様では、金属-有機構造体は、1種又は複数の別々の元素の金属イオン及び複数の有機リンカーを含み、それぞれの有機リンカーは、2つ以上の別々の元素の金属イオンの1つに結合される。1つの態様では、金属-有機構造体は、MOF-274である。1つの態様では、反応溶液の公称pHは、リンカーの脱プロトン化を可能にする。1つの態様では、溶媒は、水、アセトニトリル及びテトラヒドロフランを含む。1つの態様では、溶媒は、ハンセン溶解度パラメーターの評価によって選択される。1つの態様では、反応溶液は、静的条件において加熱される。1つの態様では、反応溶液は、約120℃で加熱される。1つの態様では、金属-有機構造体は、約0.1~約0.9の相対圧力において約25mmol/g~約40mmol/gのN吸収を有する。1つの態様では、金属-有機構造体は、約4゜~約6゜及び約7゜~約9゜の2θ値で粉体X線回折ピークを生じる。1つの態様では、金属-有機構造体は、従来の合成法によって作成された金属-有機構造体にほぼ等しい2θ値で粉体X線回折ピークを生じる。
【0013】
1つの態様では、金属-有機構造体は、六方晶系の単位格子に割り当てられ得る単位格子を有するX線回折パターンを提供する。1つの態様では、単位格子は、International Tables for Crystallographyで規定された空間群168~194から選択される。1つの態様では、本発明の金属有機構造体は、Schoedel,Li,Li,O’Keeffe,and Yaghi,Chem.Rev.,2016,116,12466~12535により同定され、Lidin-Anderssonによってヘリックスと記述されているような、面を共有する(face-sharing)八面体で構成される金属ロッド構造をさらに含む。1つの態様では、金属有機構造体は、金属ロッド構造に対して平行に配向された六方晶系の細孔を有する。1つの態様では、本発明の金属有機構造体は、Schoedel,Li,Li,O’Keeffe,and Yaghi,Chem.Rev.,2016,116,12466~12535に記載の手法に従い、(3,5,7)-c msiネットを示す。1つの態様では、金属有機構造体は、Schoedel,Li,Li,O’Keeffe,and Yaghi,Chem.Rev.,2016,116,12466~12535に記載の手法に従い、(3,5,7)-c msgネットを示す。
【0014】
1つの態様では、本主題の金属有機構造体は、250℃においてN下で30分間乾燥させた後、30℃において、以下のX線回折パターンでのピーク極大値を呈する。
【0015】
【表1】
【0016】
1つの態様では、金属有機構造体は、250℃においてN下で30分間乾燥させた後、30℃において、以下のX線回折パターンでのピーク極大値を呈する。
【0017】
【表2】
【0018】
1つの態様では、単位格子のA軸及び単位格子のB軸は、それぞれ18Å超であり、及びc軸は、6Å超である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】出発混合物中の試薬の量を増やすにつれて、Mg/Mn-MOF-274の収量が増加することを示すチャートである。
図2】従来の合成法、高固形分合成法及び高濃度合成法を使用して調製したMOF-274の粉体X線回折データを示す。
図3A-3H】それぞれ高固形分合成法、従来のソルボサーマル合成法、高濃度の固形物合成法及び従来の濃度の固形物合成法から得られた金属-有機構造体(「MOF」)物質のSEM画像であり、それらのMOF物質は、合成法とは無関係に、ロッド形状、すなわちMOF-274で典型的なモルホロジーを有することを示す。
図4】以下の条件下で合成されたMOF-274のN吸着を示すmmol/グラム対P/POのプロットである:(a)DMF/MeOH溶媒中において、低濃度の試薬を用いた、McDonald,T.,Mason,J.,Kong,X.,et al,Cooperative insertion of CO in diamine-appended metal-organic frameworks,Nature,519,303-08(2015)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載の従来の合成法、(b)水/THF/MeCN溶媒中で低濃度の試薬、(c)水/THF/MeCN溶媒での高濃度合成法、及び(d)高固形分合成法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に記載されるように、金属-有機構造体は、以下のいずれかから合成される:(1)高めた試薬濃度を含む反応溶液(本明細書では「高濃度合成法」と呼ぶ)、又は(2)反応溶媒中において、それらの溶解限度を超える試薬の懸濁液(本明細書では「高固形分合成法」と呼ぶ)。いずれの手法でも、化学的緩衝剤(「緩衝剤」)を内在させることにより、試薬の溶解度を最大化させ、反応溶液の公称pHを固定して、リンカーの脱プロトン化を可能とし、次いで金属-有機構造体を形成する。これらの技法により、金属-有機構造体(「MOF」)物質の収率及びスケールアップを改良することができる。典型的には、金属-有機構造体を作成するための従来の合成法では、最終的な反応生成物の収率が低く、そのため、スケールアップ、増強及び商業化のための、課題材料である。この場合、金属-有機構造体の作成のスケールアップは、溶媒の容積に対して、利用可能な固体試薬の量を増大させることによって強化される。スケールアッププロセスにより、金属-有機構造体の品質が犠牲とならないようにすることが必須である。本明細書で提示されるように、いくつかの特性解析法により、増強プロセスによって得られるMOF物質が、同等の又はより良好な物理的性質、例えば結晶化度及び/又は表面積を有する同一の物質を与えることが示されている。
【0021】
本発明の方法及び装置を開示及び説明する前に、特に断らない限り、本発明は、特定の化合物、成分、組成物、反応物、反応条件、リガンド、触媒構造物、メタロセン構造物などに限定されず、従って特に断らない限り変動し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記述することのみを目的とし、限定的でないことも理解されたい。
【0022】
本開示の目的のため、以下の定義が適用される。
【0023】
本明細書で使用するとき、本明細書で使用される冠詞「1つの」及び「その」は、単数と同様に複数も包含すると理解されたい。
【0024】
本明細書で使用するとき、「ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)及びケイ素(Si)、ホウ素(B)及びリン(P)を含む。
【0025】
「アリール」という用語は、特に断らない限り、単一の環又は互いに縮合若しくは共有結合的に結合され得る多不飽和の芳香族の置換基を意味する。1つの態様では、置換基は、1~11個の環、より特に1~3つの環を有する。「ヘテロアリール」という用語は、N、O及びSから選択される1~4つのヘテロ原子を含む、アリール置換基(又は複数の環)を指し、ここで、窒素原子及び硫黄原子は、任意選択的に酸化され、窒素原子は、任意選択的に四級化される。代表的なヘテロアリール基は、六員のアジン、例えばピリジニル、ジアジニル及びトリアジニルである。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合され得る。アリール基及びヘテロアリール基の非限定的な例としては、以下が挙げられる:フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル及び6-キノリル。上で述べたアリール環構造及びヘテロアリール環構造のそれぞれに対する置換基は、以下で述べる受容可能な置換基の群から選択される。
【0026】
本明細書で使用するとき、「アルキル」,「アリール」及び「ヘテロアリール」という用語は、任意選択的に、示した化学種の置換された形態及び非置換の形態の両方を含むことができる。アリール基及びヘテロアリール基のための置換基は、一般的には、「アリール基置換基」と呼ばれる。それらの置換基は、例えば、炭素又はヘテロ原子(例えば、P、N、O、S、Si又はB)を介してヘテロアリール又はヘテロアレーン核に結合される基から選択され、非限定的に以下が挙げられる:置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、-OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R’’、-SR’、-ハロゲン、-SiR’R’’R’’’、-OC(O)R’、-C(O)R’、-CO.sub.2R’、-CONR’R’’、-OC(O)NR’R’’、-NR’’C(O)R’、-NR’-C(O)NR’’R’’’、-NR’’C(O).sub.2R’、-NR-C(NR’R’’R’’’).dbd.NR’’’’、-NR-C(NR’R’’)=NR’’’、-S(O)R’、-S(O)R’、-S(O)NR’R’’、-NRSOR’、-CN及び-R’、-、-CH(Ph)、フルオロ(C~C)アルコキシ及びフルオロ(C~C)アルキル(数は、ゼロ~芳香環構造上の開放原子価の合計数である)。上述の基のそれぞれが、ヘテロ原子(例えば、P、N、O、S、Si又はB)を介してアリール又はヘテロアリール核に直接結合され、ここでR’、R’’、R’’’及びR’’’’は、好ましくは、独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアルキル、置換若しくは非置換のアリール及び置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択される。本発明の化合物が2つ以上のR基を含む場合、例えば、R基のそれぞれは、独立して、それぞれR’、R’’、R’’’及びR’’’’基(これらの基の2つ以上が存在する場合)として選択される。
【0027】
「アルキル」という用語は、それ自体又は別の置換基の一部として、特に断らない限り、直鎖若しくは分岐鎖若しくは環状の炭化水素基又はそれらの組合せを意味し、それらは、完全に飽和であるか又は不飽和若しくは多不飽和であり得、指定された炭素原子数(すなわち、C~C10は、1~10個の炭素を意味する)を有する二価、三価及び多価の基を含み得る。飽和炭化水素基の例としては、例えば、以下の基が挙げられるが、これらに限定されない:メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル並びに例えばn-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどの同族体及び異性体。「不飽和アルキル基」は、1つ又は複数の二重結合又は三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-及び3-プロピニル、3-ブチニル並びにより高級な同族体及び異性体。「アルキル」という用語は、特に断らない限り、任意選択的に、以下でより詳細に定義される、例えば「ヘテロアルキル」などのアルキルの誘導体を含むことも意味する。
【0028】
「ヘテロアルキル」という用語は、それ自体又は別の用語との組合せにおいて、特に断らない限り、指示された数の炭素原子並びにO、N、Si及びSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子からなる安定な直鎖若しくは分岐鎖若しくは環状の炭化水素基又はそれらの組合せを意味し、ここで、窒素原子及び硫黄原子は、任意選択的に酸化され得、窒素ヘテロ原子は、任意選択的に四級化され得る。ヘテロ原子のO、N、S及びSiは、ヘテロアルキル基の内部の任意の位置又はアルキル基が分子の残り部分に結合された位置に存在することができる。例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:-CH-CH-O-CH、-CH-CH-NH-CH、-CH-CH-N(CH)-CH、-CH-S-CH-CH、-CH-CH、-S(O)-CH、-CH-CH-S(O)-CH、-CH=CH-O-CH、-Si(CH、-CH-CH=N-OCH及び-CH=CH-N(CH)-CH。2つまでのヘテロ原子は、例えば、-CH-NH-OCH及び-CH-O-Si(CHのように連続し得る。同様に、「ヘテロアルキレン」という用語は、それ自体又は別の置換基の一部として、ヘテロアルキルから誘導された二価の基、例えば-CH-CH-S-CH-CH-及び-CH-S-CH-CH-NH-CH-(これらに限定されない)を意味する。ヘテロアルキレン基の場合、ヘテロ原子は、鎖の一端又は両端を占め得る(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらに、アルキレン及びヘテロアルキレン結合基の場合、結合基の式を記述する際、結合基の配向に方向が示されるわけではない。例えば、式-COR’-は、-C(O)OR’と-OC(O)R’との両方を表す。
【0029】
本明細書で使用するとき、「リガンド」という用語は、ルイス塩基(電子供与体)として機能することが可能な1つ又は複数の置換基を含む分子を意味する。1つの態様では、リガンドは、酸素、リン又は硫黄であり得る。1つの態様では、リガンド、1~10個のアミン基を含む単一のアミン又は複数のアミンであり得る。
【0030】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、それ自体又は別の置換基の一部として、特に断らない限り、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素の原子を意味する。
【0031】
記号の「R」は、置換基を表す一般的な略称であり、それは、H、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール及び置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル基から選択される。
【0032】
本明細書で使用するとき、「周期律表」という用語は、Periodic Table of the Elements of the International Union of Pure and Applied Chemistry(IUPAC)(2015年12月)を意味する。
【0033】
「塩」という用語は、本明細書に記載された化合物上に見出される特定のリガンド又は置換基に応じて、酸又は塩基を中和することによって調製される化合物の塩を含む。本発明の化合物が比較的酸性の官能性を有する場合、そのような化合物を十分な量の所望の塩基とニート又は適切な不活性な溶媒中で接触させることにより、中性の形で塩基付加塩を得ることができる。塩基付加塩の例としては、以下が挙げられる:ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ若しくはマグネシウムの塩又は類似の塩。酸付加塩の例としては、以下が挙げられる:無機酸、例えば塩酸、臭素酸、硝酸、カルボン酸、一水素カルボン酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸又は亜リン酸などから誘導されたもの、さらに比較的非毒性の有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などから誘導された塩。本開示の特定の化合物は、塩基性及び酸性の両方の官能基を含み、そのため、化合物は、塩基付加塩又は酸付加塩のいずれにも転換可能である。塩の水和物も含まれる。
【0034】
本明細書に記載された、1つ又は複数のキラル中心を有するいかなる化合物でも、絶対的な立体化学が明示されない場合、それぞれの中心は、独立して、R-配置又はS-配置又はそれらの混合物のいずれをとることも可能であることを理解されたい。従って、本明細書で提供される化合物は、鏡像異性体的に純粋であり得るか、又は立体異性体的な混合物であり得る。加えて、本明細書に記載された、E又はZで定義することが可能な幾何異性体を形成する1つ又は複数の二重結合を有するいかなる化合物でも、それぞれの二重結合は、独立して、E又はZ又はそれらの混合物であり得ることも理解されたい。同様に、記載されたいかなる化合物でも、すべての互変異性体の形態が含まれるように意図されることも理解されたい。
【0035】
加えて、本明細書で提供される化合物は、そのような化合物を構成する原子の1つ又は複数において、不自然な割合で原子の同位体を含有し得る。例えば、それらの化合物は、例えば、トリチウム(H)、ヨウ素-125(125I)又は炭素-14(14C)のような放射性同位体を用いて放射線標識され得る。本主題の化合物の同位体的変種のすべては、放射性であるか否かに関わらず、本開示の範囲に包含されるものとする。
【0036】
本明細書で使用するとき、「金属有機構造体」は、混合された金属有機構造体若しくは金属-有機構造体系又は米国特許出願第62/839,261号明細書に記載されているような混合された金属の混合された有機構造体系であり得る。
【0037】
従来の合成法
従来、金属-有機構造体は、予備合成されるか又は市場で入手可能なリンカーを、金属イオンと反応させることによって調製される。別の手法(「インサイチューリンカー合成法」と呼ばれる)では、特定の有機リンカー(複数のリンカー)を、反応媒体中で、出発物質からインサイチューで生成させることができる。
【0038】
金属-有機構造体の合成では、有機分子は、構造的配向剤だけでなく、構造体の構造の一部として組み込まれる反応物としても使用される。これを配慮に入れて、慣用される合成法では、高い反応温度が一般的に採用される。ソルボサーマル反応条件法、構造的配向剤法、鉱化剤法、さらにマイクロ波援用合成法又は水蒸気援用転化法なども最近では投入されている。
【0039】
本明細書に記載するように、従来の合成法は、典型的には、慣用される電気加熱により実施され、いかなる並発反応も含まない応用反応である。従来の合成法では、反応温度が、金属-有機構造体の合成のメインパラメーターであり、通常、2種の温度範囲、ソルボサーマル法及び非ソルボサーマル法は、区別され、それらは、使用される反応の設定条件のタイプを表す。ソルボサーマル反応は、一般的に、密閉容器中、使用した溶媒の沸点の近傍で、自動的に決まる圧力下で実施される。非ソルボサーマル反応は、周囲圧力下、沸点以下又は沸点で実施され、合成の要件を簡略化する。非ソルボサーマル反応は、室温又は高温にさらに分類され得る。
【0040】
従来の金属-有機構造体の合成法は、溶媒中、室温~ほぼ250℃の温度範囲で実施される。熱は、熱源のオーブンから対流によって伝達される。別の方法として、エネルギーを、電位、電磁放射、メカニカルウェーブ(超音波)又は機械的に加えることも可能である。エネルギー源は、系に導入される、時間の長さ、圧力及び1分子あたりのエネルギーに密接に関連し、これらのパラメーターのそれぞれが、形成される金属-有機構造体及びそのモルホロジーに強い影響を及ぼすことができる。
【0041】
従来の金属-有機構造体の合成法は、以下の文献に記載されている:McDonald,T.,Mason,J.,Kong,X.,et al,Cooperative insertion of CO in diamine-appended metal-organic frameworks,Nature,519,303~08(2015)(参照により本明細書に組み込まれる)。一般的に、0.10mmolのリンカー、0.25mmolの金属塩及び10mLの溶媒、すなわちメタノール/ジメチルホルムアミド(DMF)を、20mLのガラスのシンチレーションバイアル内で互いに混合する。次いで、バイアルを密封し、393゜Kの加熱板の上、深さ2cmのウェルプレート内に約12時間置くと、その後、バイアルの底部及び壁面に粉体が生成する。次いで、金属-有機構造体物質をデカントし、残っている粉体を、DMF中に3回、次いでメタノール中に3回浸漬させる。次いで、金属-有機構造体を濾過により捕集し、動的真空(10μbar未満)下、523゜Kで24時間加熱することにより、溶媒を完全に除去する。この特定の技法を使用して、従来の合成方法では、約0.073mmolの金属-有機構造体、すなわち73%の収量(リンカーの最初のmmolに対する、生成した金属-有機構造体のmmolを比較)、すなわち1リットルの反応溶液あたり2.7グラムのMOFの、容積について正規化された(volume-normalized)質量基準の収量が得られる。
【0042】
Nature,2015,519,303~308(参照により本明細書に組み込まれる)に記載された従来の合成法に加えて、金属-有機構造体を作成するための合成法は、以下の文献にさらに記載されている:J.Am.Chem.Soc.,2012,134,7056~7065;Chem.Sci.,2018,9,160~174;米国特許第8,653,292号明細書並びに米国特許出願公開第2007/0202038号明細書、同第2010/0307336号明細書及び同第2016/0031920号明細書。
【0043】
金属有機構造体を作成するための本明細書の方法
本明細書において提供されるのは、金属有機構造体を作成する方法であり、そこでは、高濃度の固体試薬が組み合わされて、従来のソルボサーマル合成法で使用されるよりも約3倍~約7倍多い試薬濃度の量を有する反応溶液を提供し、且つ/又は反応混合物が固体試薬を用いて飽和され、且つ/又は懸濁液であるかのいずれかである。いずれの方法でも、金属-有機構造体が形成される。本明細書で使用するとき、「固体試薬」という用語は、1種又は複数の金属塩と、1種又は複数の有機リンカー(「リンカー」)との組合せを指す。1つの態様では、有機リンカーは、複数の架橋されたアリール化学種、例えば2つ以上のフェニル環又は例えばビニル基若しくはアルキニル基によって結合された2つのフェニル環を有する分子を含む。
【0044】
高濃度合成法では、緩衝剤をより高い濃度で存在させることにより、合成溶液中の固体試薬の溶解度を上昇させ、その結果、改良された収率が得られる。より具体的には、合成溶液において、金属塩、1種又は複数のリンカー及び緩衝剤を溶媒中に溶解させて、試薬濃度を有する合成溶液を得る。次いで、追加の固体試薬(金属塩及びリンカー)を、合成溶液に添加して、試薬濃度を上昇させて、反応溶液を得る。本明細書において提供されるように、この技法を適用することにより、MOF-274の合成における容積について正規化された質量基準の収量を、Nature,2015,519,303~308に明示されている手法と比較して15倍に上げることができる。
【0045】
高固形分合成法において、試薬の固形物を反応混合物中に十分に分散させるが、完全には溶解させない。より具体的には、固体試薬(溶融塩及びリンカー)の量が、溶解させて反応溶液を飽和させることが可能な量よりも多い。この技法では、固体試薬の量を高めて、固体試薬が反応溶液中にもはや溶解せず、懸濁液が形成されるようにする。
【0046】
高濃度合成法及び高固形分合成法の両方において、試薬濃度を従来の合成法(Nature,2015,519,303~308)と比較して7倍まで高めることにより、その合成法において使用された溶媒の容積によって正規化したときに、質量収率(「収率」)を最高約35倍まで高めることが可能である。さらに、いずれの手法でも、調製されるMOFの量(収量)を増大させ、同時に溶媒の容積及び反応器のサイズを従来同様か又は減らして、有望なスケールアップへの適用を可能とする。
【0047】
1つの態様では、高濃度合成法は、1種の緩衝剤中において、1種又は複数の金属塩と1種又は複数のリンカーとを組み合わせるステップ及び固体試薬を溶媒中に溶解させて、合成溶液を得るステップを含む金属-有機構造体を作成する方法を含む。追加の金属塩及びリンカーを、合成溶液中で分散させて、反応溶液を得る。次いで反応溶液を密封し、各種の方法の1つにより加熱する。1つの態様では、1種又は複数の金属塩の累積濃度は、約25mM~約100mMの量であり、1種又は複数のリンカーは、約10mM~約40mMの量である。1つの態様では、緩衝剤濃度は、約100mM~約260mMである。1つの態様では、反応溶液は、約135mM~約400mMの固体試薬の反応濃度を有する。1つの態様では、本発明の方法は、溶媒1mLあたり約2~約15mgの金属-有機構造体の、質量基準の、容積について正規化された収量を有し得る。
【0048】
1つの態様では、その高固形分合成法において、固体試薬が、従来の合成法における固体試薬の濃度の、約5~約35倍高い濃度を有することができる。1つの態様では、1種又は複数の金属塩は、約175mM~約867mMの量であり、1種又は複数のリンカーは、約85mM~約361mMの量である。1つの態様では、緩衝剤濃度は、約270mM~約1.624Mである。1つの態様では、反応溶液は、約530mM~約2.852Mの固体試薬の反応濃度を有する。
【0049】
本発明の方法は、従来の合成法における質量基準の、容積について正規化された収量よりも約10~約40倍又は約14~約35倍高い、金属-有機構造体の質量基準の、容積について正規化された収量を与える。
【0050】
本明細書に記載されるように、金属塩は、式MXを有する二価の第一列遷移金属塩であり得、例えばM=Mg、Mn、X=(Oac)、(HCO、(FCCO、(acac)、(Facac)、(NO、SO;M=Ni、X=(Oac)、(NO、SO;M=Zn、X+(Oac)、(NOである。1つの態様では、金属塩は、結晶又は結晶性粉体の形態であり得る。1つの態様では、金属塩は、例えば、Mg(NO・6HO及びMnCl・4HOである。
【0051】
本明細書に記載されるように、金属有機構造体は、2つ以上のマルチトピック(ポリトピック)有機リンカーで結合された1つ又は複数の異なる金属カチオン、クラスター又は鎖で形成される多孔性結晶性物質である。1つの態様では、金属-有機構造体は、Mg/Mn-MOF-274(いくつかの場合にMOF-274と呼ばれる)である。
【0052】
本明細書に記載されるように、適切なリンカーは、1,1’の炭素で結合され、3、3’の炭素上にカルボン酸及び4,4’の炭素上にアルコールを有する2つのフェニル環によって形成され得る。カルボン酸及びアルコールの位置をスイッチさせても(例えば、「pc-HDOBPDC」又は「pc-MOF-274」)、金属有機構造体のトポロジーに変化はない。1つの態様では、リンカーは、HDOBDPCである。
【0053】
本発明の方法で有用な溶媒としては、例えば、水、アセトニトリル及びテトラヒドロフランが挙げられる。より具体的には、溶媒は、約20~約30容積%の水、約35~約40容積%のアセトニトリル及び約35~約40容積%のテトラヒドロフランである。任意選択的に、溶媒は、ハンセン溶解度パラメーターの評価によって選択され得る。
【0054】
金属有機構造体は、室温で合成され得るか、又は慣用される電気加熱法、マイクロ波加熱法、電気化学法、メカノケミストリー法及び超音波法で合成され得る。慣用されるステップバイステップ法、さらに高速処理法を採用することも同様に可能である。しかしながら、いずれの合成法でも、有機リンカーを分解させることなく、所定の無機構成単位を製造するための条件を確立しなければならない。同時に、結晶化の動力学は、核生成及び所望の相の成長を起こさせることを許容するものでなければならない。
【0055】
加熱及び密封ステップは、反応溶液を静的条件下で約96時間加熱することを含み得る。加熱及び密封ステップは、反応溶液を動的(例えば、かき混ぜ、振盪、混合、撹拌)条件下で約24時間加熱することを含み得る。加熱及び密封ステップは、反応溶液を静置オーブン中において約120℃で加熱することを含み得る。加熱及び密封ステップは、反応溶液を回転オーブン中において約150℃で加熱することを含み得る。加熱を密封なしで実施し、ほぼ1barの圧力下、溶媒の還流条件下でMOFを合成し得る。1つの態様では、反応溶液を一般的に50℃~175℃(又は100℃~160℃若しくは115℃~145℃)で1時間~7日間、又は6時間~5日間、又は12時間~3日間かけて加熱する。反応溶液を遠心分離機にかけるか又は濾過して金属-有機構造体を取得し、洗浄することができる。
【0056】
本発明の方法は、高品質のMOFを得るために必要とされるコスト及び労力を削減するため、有利である。それらの方法は、より少ない時間のみを必要とし、且つより多くの物質を合成することができるため、それらは、試験及び特性解析に利用可能なより多くの物質を与え、所要時間を顕著に低減させることもでき、これは、コストに顕著な効果を与え得る。従って、この新規な方法は、MOF合成のプロセス増強を表す。
【0057】
スケールアッププロセスにより、MOFの品質が犠牲とならないようにすることが必須である。いくつかの特性解析技術(以下で詳述)は、本明細書において開示された新規な方法が、従来の合成法と比較して同等の又は優れた品質のMOFを与えることを示す。
【0058】
金属及び金属塩
金属有機構造体は、2つ以上のポリトピック有機リンカーによって結合された2つ以上の異なる金属のカチオン、クラスター又は鎖を含む。1つの態様では、本発明の方法によって作成された金属有機構造体は、独立して、Mg、Ca、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びZnの群から選択される1種又は複数の別々の元素を含む。1つの態様では、1種又は複数の別々の元素のそれぞれは、金属であり、より具体的にはMg、Mn、Ni又はZnである。
【0059】
より具体的には、本発明の金属有機構造体の金属は、周期律表の、第4周期の族IIA、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIII、IB及びIIB並びに第3周期の族IIAの元素、すなわちMg、Ca、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びZnの1つであり得る。さらに、金属有機構造体は、2種以上の別々の元素、さらに複数の金属の任意の組合せを含み得、理論的にはM ...M (A)(B)|x+y+c+z=2で表され、及びM≠M≠...≠Mであり、ここで、x、y及びzは、それぞれ0.0~2.0の独立した値である。
【0060】
金属は、一価金属であり得、それは、リンカーのプロトン化された形態を形成するであろう。例えば、金属は、Na又は族1からの1つであり得る。さらに、金属は、2つ以上の二価のカチオン(「二価金属」)又は三価のカチオン(「三価金属」)の1つであり得る。1つの態様では、金属有機構造体は、酸化状態で+2以外(すなわちちょうど二価を超える、三価、四価...)になり得る金属を含む。構造体は、異なる酸化状態の混合物を含む金属を有し得る。混合物の例としては、Fe(II)及びFe(III)、Cu(II)及びCu(I)並びに/又はMn(II)及びMn(III)が挙げられる。より具体的には、三価金属は、+3の酸化状態を有する金属である。金属有機構造体を形成するために使用されるいくつかの金属、特にFe及びMnは、比較的穏やかな条件下で+2(二価)又は+3(三価)の酸化状態をとることができる(Chem.Mater.,2017,29,6181)。同様に、Cu(II)は、穏やかな条件下でCu(I)を形成することができる。従って、任意の金属の酸化状態に対する任意のマイナーチェンジ及び/又は金属の酸化状態における選択的変更を使用して、本発明の金属有機構造体を改良することができる。さらに、異なる分子断片C、C...Cの任意の組合せが存在し得る。最後に、上述の変法のすべては、例えば、複数の原子価を有する複数の金属(2つ以上の異なる金属)と、複数の電荷をつりあわせる分子断片とのように組み合わせることも可能である。
【0061】
本発明の方法では、本明細書に記載したように、金属を二価の第一列遷移金属塩MX、例えばM=Mg、Mn;X=(Oac)、(HCO、(FCCO、(acac)、(Facac)、(NO;MX、例えばM=Mg、Mn;X=SO、CO;M=Ni、X=(Oac)、(NO、SO;M=Zn、X+(Oac)、(NOとして提供することが可能である。それら金属塩の中で使用するのに適した金属(M)の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ランタン、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、鉄、ニオブ、スカンジウム、イットリウム、ジルコニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、ローレンシウム、ラザホジウム、ドブニウム、シーボルギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ダームスタチウム、レントゲニウムなど。金属の他の供給源としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属スルフィド、金属カルコゲニド、純金属又は金属源の任意の組合せが挙げられる。
【0062】
金属塩中の対イオンの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、炭酸塩など。任意の金属が任意の塩の形態であり得、金属塩(金属/対イオンの組合せ)が溶媒中に溶解する能力を基準にして選択される。金属塩は、水和物、アルコラート又はアセトネートであり得る。
【0063】
本明細書に記載されるように、金属有機構造体は、金属塩と有機リンカーとを混合するか又はそうでなければ組み合わせることによって合成される。適切な金属イオンとしては、各種の配位構造及び酸化状態の金属及びメタロイドが挙げられる。1つの態様では、MOFは、明確に異なる配位構造を有する金属イオンを使用し、多座配位の官能基を有するリガンド及び適切な鋳型剤と組み合わせて製造される。八面体配位をとりやすい1つの金属イオンが、コバルト(II)である。四面体配位をとりやすい1つの金属イオンが、亜鉛(II)である。MOFは、以下の金属イオンの1種又は複数を使用して、作成することができる:Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Y3+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、V4+、V3+、V2+、Nb3+、Ta3+、Cr3+、Mo3+、W3+、Mn3+、Mn2+、Re3+、Re2+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Rh2+、Rh、Ir2+、Ir、Ni2+、Ni、Pd2+、Pd、Pt2+、Pt、Cu2+、Cu、Ag、Au、Zn2+、Cd2+、Hg2+、Al3+、Ga3+、In3+、Tl3+、Si4+、Si2+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Pb4+、Pb2+、As5+、As3+、As、Sb5+、Sb3+、Sb及びBi5+、Bi3+、Bi、Be2+並びに対応する金属塩の対イオン。
【0064】
「金属イオン」という用語は、金属イオンとメタロイドイオンとの両方を指す。1つの態様では、MOFの製造で使用するのに好適な金属イオンとしては、以下が挙げられる:Sc3+、Ti4+、V4+、V3+、V2+、Cr3+、Mo3+、Mg2+、Mn3+、Mn2+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Rh2+、Rh、Ir2+、Ir、Ni2+、Ni、Pd2+、Pd、Pt2+、Pt、Cu2+、Cu、Ag、Au、Zn2+、Cd2+、Al3+、Ga3+、In3+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Pb4+、Pb2+、Sb5+、Sb3+、Sb及び/又はBi5+、Bi3+、Bi、Be2+並びに対応する金属塩の対イオン。1つの態様では、MOFの製造において使用するための金属イオンとしては、以下が挙げられる:Sc3+,Ti4+、V4+、V3+、Cr3+、Mo3+、Mn3+、Mn2+、Fe3+、Fe2+、Co3+、Co2+、Ni2+、Ni、Cu2+、Cu、Ag、Zn2+、Cd2+、Al3+、Sn4+、Sn2+及び/又はBi5+、Bi3+、Bi並びに対応する金属塩の対イオン。1つの態様では、MOFの製造において使用するための金属イオンが、以下からなる群から選択される:Mg2+、Mn3+、Mn2+、Fe3+、Fe2+、Co3+、Co2+、Ni2+、Ni、Cu2+、Cu、Pt2+、Ag及びZn2+並びに対応する金属塩の対イオン。
【0065】
一般的に、金属塩としては、化合物に見出される特定の置換基に応じて、酸又は塩基を中和することによって調製される化合物の各種の塩が挙げられる。化合物が比較的酸性の官能性を有する場合、そのような化合物を十分な量の所望の塩基とニート又は適切な不活性な溶媒中で接触させることにより、中性の形態で塩基付加塩を得ることができる。塩基付加塩の例としては、以下が挙げられる:ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ若しくはマグネシウムの塩又は類似の塩。酸付加塩の例としては、以下が挙げられる:無機酸、例えば塩酸、臭素酸、硝酸、カルボン酸、一水素カルボン酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸又は亜リン酸などから誘導されたもの、さらに比較的非毒性の有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などから誘導された塩。ある種の化合物には、塩基性及び酸性の両方の官能基を含むことが可能であり、そのため、化合物は、塩基付加塩又は酸付加塩のいずれにも転換可能である。塩の水和物も同様に含まれる。
【0066】
リンカー
適切な有機リンカー(本明細書では「リンカー」とも呼ばれる)は、金属有機構造体の構造及び金属有機構造体の金属ノードに結合する有機リンカーの部分に関連する対称操作から決めることができる。リガンドは、化学的及び/又は構造的に異なり、金属-有機構造体の金属ノード-結合領域をC対称軸に関連させることが可能となることに留意されたい。
【0067】
1つの態様では、リンカーは、
【化1】
(式中、Rは、R’に結合され、及びRは、R’’に結合される)
を含み得る。
【0068】
例示的なリンカーは、
【化2】
(式中、Rは、任意の分子断片である)
を含む。
【0069】
有機リンカーの追加の例としては、以下が挙げられる:パラ-カルボキシレート(「pc-リンカー」)、例えば4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート(DOBPDC);4,4’’-ジオキシド-[1,1’:4’,1’’-テルフェニル]-3,3’’-ジカルボキシレート(DOTPDC);及びジオキシドビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート(パラ-カルボキシレート-DOBPDC(PC-DOBPDCとも呼ばれる)、さらに以下の化合物:
【化3】
【0070】
1つの態様では、有機リンカーは、式:
【化4】
(式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル及びハロゲン置換メチルから選択される)
を有する。
【0071】
1つの態様では、有機リンカーは、式:
【化5】
(式中、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル及びハロゲン置換メチルから選択される)
を有する。
【0072】
1つの態様では、有機リンカーは、式:
【化6】
(式中、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル又はハロゲン置換メチルから選択され、及びR17は、置換又は非置換のアリール、ビニル、アルキニル及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択される)
を有する、
【0073】
1つの態様では、有機リンカーは、式:
【化7】
(式中、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル又はハロゲン置換メチルから選択される)
を有する。
【0074】
ここで、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル又はハロゲン置換メチルから選択され、及びR17は、置換又は非置換のアリール、ビニル、アルキニル及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択される。
【0075】
リンカーの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:4,5-ジシアノイミダゾール、置換された4,5-ジシアノイミダゾール、シュウ酸、エチルシュウ酸、フマル酸、1,3,5-ベンゼントリ安息香酸(BTB)、DCPB、ベンゼントリビフェニルカルボン酸(BBC)、5,15-ビス(4-カルボキシフェニル)亜鉛(II)ポルフィリン(BCPP)、1,4-ベンゼンジカルボン酸(BDC)、2-アミノ-1,4-ベンゼンジカルボン酸(R-BDC又はHN BDC)、1,1’-アゾ-ジフェニル4,4’-ジカルボン酸、シクロブチル-1,4-ベンゼンジカルボン酸(R-BDC)、ベンゼントリカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDC)、1,1’-ビフェニル 4,4’-ジカルボン酸(BPDC)、2,2’-ビピリジル-5,5’-ジカルボン酸、アダマンタンテトラカルボン酸(ATC)、アダマンタンジ安息香酸(ADB)、ジヒドロキシテレフタル酸(DHBDC)、ビフェニルテトラカルボン酸(BPTC)、テトラヒドロピレン2,7-ジカルボン酸(HPDC)、ジヒドロキシテレフタル酸(DHBC)、ピレン2,7-ジカルボン酸(PDC)、ピラジンジカルボン酸、アセチレンジカルボン酸(ADC)、ショウノウジカルボン酸、フマル酸、ベンゼンテトラカルボン酸、1,4-ビス(4-カルボキシフェニル)ブタジイン、ニコチン酸及びテルフェニルジカルボン酸(TPDC)、2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゼン-ジカルボン酸(HDOBDC)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル-3,3’-ジカルボン酸(HDOBPDC)、4,4’’-ジヒドロキシ-[1,1’:4’,1’’-テルフェニル]-3,3’’-ジカルボン酸(HDOTPDC)、3,3’-ジヒドロキシビフェニル-4,4’-ジカルボン酸(pc-DOBPDC)など、上述のリンカーの置換された誘導体など、並びにそれら全体の組合せ。
【0076】
リンカーのHDOBPDC又は4,4’-ジヒドロキシ-(1,1’-ビフェニル)-3,3’-ジカルボン酸は、有機リンカー化合物であり、それは、Lindsey,A.S.;Jeskey,H.,Chem.Rev.,1957,57(4),583-620(参照により本明細書に組み込まれる)に従って合成するか、又は市場で入手することができる。
【0077】
化学的緩衝剤
上述の方法のいずれにおいても、化学的緩衝剤(本明細書では「緩衝剤」と呼ぶ)を内在させ、反応溶液の公称pHを、リンカーの脱プロトン化及びその後の金属有機構造体の形成を可能とするように固定することにより、試薬の溶解度を最大化させる。緩衝剤は、酸及びその共役塩基又は塩基及びその共役酸を含み得る。緩衝剤は、緩衝化酸を添加し、それに続けて塩基性溶液を添加して、適切なpHとすることにより、インサイチューで発生させることができる。同様にして、緩衝剤を、緩衝化塩基を添加し、それに続けて酸性溶液を添加して、適切なpHとすることにより、インサイチューで発生させることもできる。1つの態様では、緩衝剤は、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(「MOPS」)又はNa MOPSであり得る。
【0078】
適切な塩基の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ピペラジン、1,4-ジメチルピペラジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウムなど、及びそれらの任意の組合せ。
【0079】
適切な酸の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:塩酸、硝酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、酢酸、過塩素酸、リン酸、リン含有酸、硫酸、ギ酸、フッ化水素酸など、及びそれらの任意の組合せ。
【0080】
公称pHに緩衝化させるために使用される適切な酸と共役塩基及び適切な塩基と共役酸の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:酢酸/酢酸塩、クエン酸/クエン酸塩、ホウ酸/ホウ酸塩など、Biochemistry,1966,5,467~477(参照により本明細書に組み込まれる)において定義された「良好な緩衝剤」として公知の緩衝剤及びAnal.Chem.,1999,71,3140~3144(参照により本明細書に組み込まれる)において定義された「より良好な緩衝剤」として公知の錯非形成第三級アミン緩衝剤。
【0081】
緩衝剤としては、MOPSの有望な変形体も挙げることができ、式:
【化8】
(式中、nは、1~10の整数であり、及びRとRとを架橋するいずれの原子も、化学置換基を用いて官能化され得るか、又は前記パラグラフ[0027]~[0030]、[0032]及び[0033]で定義された「R」であり、
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、C、O、N又はSであり、及び
は、任意のブレンステッド酸官能基若しくは対応する共役塩基、スルホン酸、ホスホン酸及び/又はスルホン酸塩、ホスホン酸塩、リン酸塩、ヒドロキシル、アンモニア又は硫酸塩である)
のものであり得る。
【0082】
溶媒
本発明の方法において、単独又は溶媒混合物として使用することが可能な溶媒の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アセトン、アセトニトリル、ベンジルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、酢酸n-ブチル、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、1,4-ジオキサン、メタノール、エタノール、酢酸エチル、エチルベンゼン、乳酸エチル、エチレンカーボネート、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ガンマ-ブチロラクトン(GBL)、ヘプタン、ヘキサン、n-プロパノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、イソ-ブタノール、t-ブタノール、イソ-酢酸プロピル、イソホロン、d-リモネン、酢酸メチル、メチルエチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、塩化メチレン、1-ニトロプロパン、酢酸n-プロピル、プロピレンカーボネート、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、水、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチルプロピレン尿素、ヘキサメチルホスフォルアミド、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ペンタン、ベンゼン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、n-オクタン、灯油、ドデカン、メチルシクロヘキサン、トルエンなど。
【0083】
ハンセン溶解度パラメーターは、溶解度と凝集エネルギー密度の平方根との関係を示すヒルデンブランド溶解度パラメーターから求めることができる。ヒルデンブランドによって提示されたような、単一のパラメーターとして溶解度を定義することの欠点は、極性又は水素-結合の相互作用から生じるような、分子間の会合が説明できないことである。対照的に、ハンセン溶解度パラメーターは、全蒸発エネルギー、従って全凝集エネルギーが、原子分散力、永久双極子間の双極子-双極子力及び水素結合から生じるいくつかの独立した構成要素を有するという理解を前提とする。従って、それぞれ典型的にはMPa0.5の単位で測定される、以下に記載の3種のハンセン溶解度パラメーターが存在する:分子間の分散力からのエネルギー(分散パラメーター又はδとも呼ばれる)、分子間の双極分子内力からのエネルギー(極性パラメーター又はδとも呼ばれる)及び分子間の水素結合からのエネルギー(水素結合パラメーター又はδとも呼ばれる)。類似したハンセン溶解度パラメーターを有する物質は、相互に高い親和性を有し、その類似性の大きさが、相互作用の大きさを決定する。従って、ハンセン溶解度パラメーターは、「似たものは似たものと溶けあう」という格言を理解するためのより定量的な手段を提供し、第一の物質が第二の物質中に溶解して溶液を形成するかどうかを予測するために多くの場合に使用される。Hansen Solubility Parameters:A User’s Handbook,Charles M.Hansen,CRC Press,Boca Raton,FL.(2007、2nd ed.)を参照されたい。
【0084】
ある種の溶媒及び溶媒化合物(例えば、アセトン、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、シクロヘキサンなど)についてのハンセン溶解度パラメーターは、HSPiPデータベース又はHansen Solubility Parameters:A User’s Handbook,Charles M.Hansen,CRC Press,Boca Raton,FL.(2007、2nd ed.)として、市場で入手可能である。新規な分子についてのハンセン溶解度パラメーターは、公知のハンセン溶解度パラメーターで一連の溶媒中に分子を分散させることにより、実験的に求めることも可能である。いずれの溶媒が分子を溶解させるかが確認できれば、それらの溶媒についてのハンセン溶解度パラメーターを、デカルト座標を使用し、それ自体の軸にそれぞれのパラメーターを割り当てることによってプロットすると、溶解度球が得られ、これは、「ハンセン空間」とも呼ばれる。溶解度球の中心は、分子についての実験的なハンセン溶解度パラメーターを規定する。さらに、溶媒混合物についてのハンセン溶解度パラメーターは、混合物中のそれぞれの成分についてのハンセン溶解度パラメーターを容積で重み付けして平均化することにより計算され得る。1つの態様では、溶媒は、ハンセン溶解度パラメーターの評価によって選択される。
【0085】
非限定的な例を挙げれば、金属-有機構造体は、溶媒中において、1種又は複数の金属塩を、1種又は複数のリンカーと共に、0.2:1~5:1(又は0.6:1~3:1、若しくは0.8:1~2:1、若しくは1:1)の全金属塩対全リンカーのモル比で溶解させ、反応溶液を生成することによって合成することができる。
【0086】
以下の実施例で述べるように、従来の方法及び本明細書に記載された新規な方法により、金属-有機構造体を調製し、次いで特性解析した。
【実施例
【0087】
実施例1
従来の合成法、高濃度合成法及び高固形分合成法の3種の方法により、金属-有機構造体を合成した。1)高めた試薬濃度を有する溶液、又は2)試薬が飽和した懸濁液(これは、反応溶媒中へのその溶解限度を超える)のいずれかから金属-有機構造体を合成した。いずれの手法でも、緩衝剤を内在させ、反応溶液の公称pHを、リンカーの脱プロトン化及びその後の金属有機構造体の形成を可能とするように固定することにより、試薬の溶解度を最大化させる。いずれの手法もMOF物質の収量及びスケールアップを改良する。スケールアッププロセスにより、MOFの品質が犠牲とならないようにすることが必須である。いくつかの特性解析技術は、増強プロセスによって得られたMOF物質が同じ物質を与えることを示す。
【0088】
従来の合成法
MOF-274を合成するための一般的なプロトコールは、Nature,2015,519,303~308からのものである。27.4mg~41.1mg(0.1~0.15mmol)のリンカーHDOBPDCを、0.25~0.375mmolの金属塩と組み合わせ、10mLの混合溶媒中に溶解させた。この溶液を20mLのシンチレーションバイアル内に密封し、120℃で12時間加熱し、固形物を捕集し、洗浄した。物質が、23.3~54.1mgの収量で得られた。
【0089】
高濃度合成法
高濃度固体試薬でのMg/Mn-MOF-274を調製するために、0.75mmolのHDOBPDC、1.68mmolのMg(NO・6HO、0.19mmolのMnCl・4HO及び7.5mmolの緩衝剤のNa MOPSを、75mLの溶媒(0.25:0.37:0.38の水:アセトニトリル:テトラヒドロフランで作成)中に溶解させた。すべての固形物が完全に溶解したら、追加の、3mmolのHDOBPDC、6.72mmolのMg(NO・6HO、0.76mmolのMnCl・4HO及び12mmolのNa MOPSをその系に加えた。反応溶液を、125mLのTeflonライニングしたParrオートクレーブ内に移し、密封し、静的条件下で、120℃で96時間加熱した。Mg/Mn-MOF-274が1.08gの収量で得られた。
【0090】
高固形分合成法
Mg/Mn-MOF-274をより高い収量で得る目的で、高固形分条件下で、金属-有機構造体を調製した。上述の従来の合成法に従って、1.484mmolのHDOBPDC、11.696mmolのMg(NO・6HO、1.300mmolのMnCl・4HO及び24.4mmolのNa MOPS緩衝剤を、15mLの溶媒(0.25:0.37:0.38の水:アセトニトリル:テトラヒドロフランで作成)中で混合して、すべての固形物を十分に分散させた。反応溶液中には、これらの試薬が完全には溶解しないことに留意されたい。反応溶液を、23mLのTeflonライニングしたParrオートクレーブ内に移し、それを密封し、タンブリングオーブン中に、150℃で24時間置いた。Mg/Mn-MOF-274が3.6gの収量で得られた。
【0091】
上で述べた、従来の合成法、高濃度合成法及び高固形分合成法での異なる合成法のまとめを以下の表1に示す。
【0092】
【表3】
【0093】
表1に見られるように、試薬濃度を文献記載の合成法と比較して35倍まで高めると、合成法において使用した溶媒の容積で正規化すると、質量収量がほぼ45倍まで高くなるという結果が得られた。金属-有機構造体のMOF-274の質量(収量)を、それぞれの合成法の関数として、図1に示す。重要なのは、固体試薬含量を、すべての固形物が反応溶液中に完全に溶解する点(飽和懸濁液)を超えて上げたにも関わらず、図2、3及び4に見られるように物質の品質が犠牲にならないことである。
【0094】
図2に見られるように、粉体X線回折パターンから、従来の固形物(従来の合成法で作成):溶媒比率(文献記載の従来の溶媒、さらに良性溶媒により調製)に対して高い固形分:溶媒比及び高濃度の固形物:溶媒の合成法を使用しても、同じレベルの物質が調製されたことが確認された。これらの金属-有機構造体には、アミンを加えられず、それらの金属-有機構造体を官能化することも活性化することもなかった。
【0095】
粉体X線回折(「PXRD」)データは、同程度の物質結晶化度をさらに明らかにし、これは、離散したクリスタリットの形成を伴う持続性のロッド形状のモルホロジーを示すSEM画像から支持された(図3)。表面積の測定は、高濃度合成法及び高固形分合成法が、従来の合成法と比較して、同程度の表面積の金属-有機構造体を与えたことを示している。SEM画像は、バルクの物質の形状、モルホロジー及び物質の多分散性の定量的評価を示した。画像は、Hitachi SEMで、上方検出器を使用し、2keV加速で撮影したものである。
【0096】
図4に見られるように、N吸着等温線から、高濃度合成法及び高固形分合成法により調製したMOFが、従来の合成法と同程度の表面積を有することが確認された。具体的には、文献条件(DMF/MeOH中低濃度)下、水/THF/MeCN中で低濃度、水/THF/MeCN中で高濃度及び水/THF/MeCN中で高固形分合成法により、合成したMOF-274のN吸着を比較した。高濃度合成法及び高固形分合成法により調製した金属-有機構造体は、約0.1~約0.9の相対圧力において約25mmol/g~約40mmol/gのN吸収を示した。
【0097】
まとめると、金属-有機構造体の特性解析を行って、従来の合成法により製造したものと、高濃度合成法及び高固形分合成法により製造した金属-有機構造体との類似性を解析した。全部の固形物が反応溶液中に溶解する点を超えて試薬の含量を増大させたにも関わらず、図2~4に見られるように、物質の品質が犠牲になっていない。図2に見られるように、粉体X線回折データからも、高固形分合成法及び高濃度合成法を使用しても、従来の合成法と比較して同じレベルの物質が調製されたことが確認された。具体的には、高濃度合成法及び高固形分合成法により調製された金属-有機構造体は、約4゜~約6゜及び約7゜~約9゜の2θ値で粉体X線回折ピークを示し、これらの2θ値は、従来の合成法によって製造した金属-有機構造体のものと類似する。図2における粉体X線回折データから、同程度の物質結晶化度であることも明らかになり、これは、図3における走査電子顕微鏡画像によってさらに支持される。図3における走査電子顕微鏡画像は、合成方法の関わらず、得られた物質が、MOF-274で典型的なモルホロジーであるロッド形状であることを示す。図3において、それぞれの列における画像は、異なる倍率で撮影した同じサンプルに対応する。示されるように、高濃度合成法及び高固形分合成法により調製された金属-有機構造体は、従来の合成法を用いて作成された金属-有機構造体と比較して同等の結晶化度を示した。
【0098】
一組の数字の上限と一組の数字の下限とを使用して、ある種の特徴を記述してきた。いずれかの下限からいずれかの上限までの範囲は、特に断らない限り、考慮の対象であると理解するべきである。ある種の下限、上限及び範囲が以下の1つ又は複数の請求項に現れる。すべての数値は、実験誤差及び当業者によって予想されるであろう変動を考慮する。
【0099】
各種の用語が上記で定義されている。請求項で使用される用語が上記で定義されていない場合、関連する技術分野の当業者は、公刊物又は発行された特許の少なくとも1つに反映されている、その用語に与えられた最も広い定義が与えられるべきである。さらに、本出願で引用されたすべての特許、試験手順及び他の文献は、そのような開示が本出願と矛盾しない範囲において且つそのような組み込みが許されるすべての法域について、参照により全体的に組み込まれる。
【0100】
これまでの本開示の記述は、本発明の技法を説明し、記述している。加えて、本開示は、代表的な方法を示し、記述しているが、任意の他の組合せ、修正形態及び環境が採用され得、本発明の方法は、本明細書において表された概念の範囲内において、上述の教示及び/又は関連する技術分野の技量若しくは知識に対応して変更又は修正され得ることを理解されたい。
本開示の好ましい態様は次のとおりである。
[1]
金属-有機構造体を作成する方法であって、
溶媒中に複数の固体試薬及び緩衝剤を溶解させて、合成溶液を準備するステップであって、固体試薬は、少なくとも1種の金属塩及び少なくとも1種のリンカーを含む、ステップと、
ある量の複数の固体試薬を合成溶液に添加して、ある量の試薬濃度を有する反応溶液を生成するステップであって、反応溶液の試薬濃度は、従来のソルボサーマル合成法における試薬濃度の量と比較して約3倍~約7倍である、ステップと
を含む方法。
[2]
金属-有機構造体を作成する方法であって、
溶媒中において、ある量の複数の固体試薬及び緩衝剤を混合して、反応混合物を準備するステップであって、固体試薬は、少なくとも1種の金属塩及び少なくとも1種のリンカーを含み、及び複数の固体試薬の量は、溶媒によって約18℃~約22℃で溶解され得る量を超え、及び反応混合物は、飽和した懸濁液である、ステップ
を含む方法。
[3]
固体試薬の量を、固体試薬が溶液中にもはや溶解可能でなくなるまで増加させるステップをさらに含む、[2]に記載の方法。
[4]
金属-有機構造体を合成する方法であって、
溶媒中において、1種又は複数の金属塩及び1種又は複数のリンカーを含む試薬を緩衝剤と混合して、反応溶液を生成するステップであって、反応溶液は、約18℃~約22℃における飽和した懸濁液である、ステップと、
反応混合物を加熱して、金属-有機構造体を形成するステップと
を含む方法。
[5]
反応溶液は、約24~約96時間にわたって静的状態でない、[1]~[4]のいずれか一項に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
[6]
緩衝剤は、ブレンステッド酸及びその共役塩基又はブレンステッド塩基及びその共役酸を含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
[7]
反応溶液又は反応混合物は、約100℃~約160℃で加熱される、[1]~[6]のいずれか一項に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
[8]
リンカーは、2つ以上のフェニル環又はビニル基若しくはアルキニル基によって結合された2つのフェニル環を有する複数の架橋されたアリール種を含む、[1]~[7]のいずれか一項に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
[9]
リンカーは、H DOBPDCである、[1]~[8]のいずれか一項に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
[10]
金属塩は、金属イオンの酸又は塩基を中和することによって調製される、[1]~[9]のいずれか一項に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
[11]
金属塩は、Mg(NO ・6H O及びMnCl ・4H Oである、[1]~[10]のいずれか一項に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
[12]
緩衝剤は、本質的に、アルキル基によって架橋されたモルホリン及びスルホン酸を含むファミリーのものである、[1]~[11]のいずれか一項に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
[13]
緩衝剤は、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムのファミリーのものである、[1]~[12]のいずれか一項に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
[14]
緩衝剤は、MOPS、NaMOPS又はNaHCO である、[1]~[13]のいずれか一項に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
[15]
金属-有機構造体は、式:M (2-x) (A)(式中、M 及びM は、金属カチオンであり、xは、0~2の範囲であり、及びAは、ジサリチレート有機リンカーである)のものである、[1]~[14]のいずれか一項に記載の方法。
[16]
Aは、
【化1】
(式中、R 11 、R 12 、R 13 、R 14 、R 15 、R 16 、R 17 、R 18 、R 19 及びR 20 は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル及びハロゲン置換メチルから選択され、及び
17 は、置換又は非置換のアリール、ビニル、アルキニル、置換又は非置換のヘテロアリール、ジビニルベンゼン及びジアセチルベンゼンからなる群から選択される)
からなる群から独立して選択される複数のリンカーである、[14]に記載の混合された金属有機構造体。
[17]
六方晶系の単位格子に割り当てられ得るX線回折パターンを示す、[16]に記載の混合された金属有機構造体。
[18]
単位格子は、空間群168~194から選択される、[17]に記載の混合された金属有機構造体。
[19]
面を共有する八面体から形成された金属ロッド構造をさらに含む、[16]~[18]のいずれか一項に記載の混合された金属有機構造体。
[20]
金属ロッド構造に対して平行に配向された六方晶系の細孔を有する、[19]に記載の混合された金属有機構造体。
[21]
(3,5,7)-c msiネットを示す、[16]~[20]のいずれか一項に記載の混合された金属有機構造体。
[22]
金属-有機構造体は、MOF-274である、[1]~[15]のいずれか一項に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
[23]
反応溶液の公称pHは、リンカーの脱プロトン化を可能にする、[1]~[15]又は[22]のいずれか一項に記載の方法。
[24]
溶媒は、水、アセトニトリル及びテトラヒドロフランを含む、[1]~[15]又は[22]若しくは[23]のいずれか一項に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
[25]
溶媒は、ハンセン溶解度パラメーターの評価によって選択される、[1]~[15]又は[22]~[24]のいずれか一項に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
[26]
反応溶液又は反応混合物は、静的、転動又は撹拌条件において加熱される、[1]~[15]又は[22]~[25]のいずれか一項に記載の金属-有機構造体を作成する方法。
[27]
反応溶液又は反応混合物は、約120℃で加熱される、[1]~[15]又は[22]~[26]のいずれか一項に記載の方法。
[28]
反応溶液又は反応混合物は、約150℃で加熱される、[1]~[15]又は[22]~[27]のいずれか一項に記載の方法。
[29]
金属-有機構造体は、約0.1~約0.9の相対圧力において約25mmol/g~約40mmol/gのN 吸収を有する、[1]~[15]又は[22]~[28]のいずれか一項に記載の方法。
[30]
金属-有機構造体は、約4゜~約6゜及び約7゜~約9゜の2θ値で粉体X線回折ピークを生じる、[1]~[15]又は[22]~[29]のいずれか一項に記載の方法。
[31]
金属-有機構造体は、従来の合成法によって作成された金属-有機構造体に等しい2θ値で粉体X線回折ピークを生じる、[1]~[15]又は[22]~[30]のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4