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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】アスファルト混合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 95/00 20060101AFI20250204BHJP
   C08L 61/18 20060101ALI20250204BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250204BHJP
   E01C 7/18 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
C08L95/00
C08L61/18
C08K3/013
E01C7/18
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023179697
(22)【出願日】2023-10-18
(65)【公開番号】P2024059607
(43)【公開日】2024-05-01
【審査請求日】2024-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2022167094
(32)【優先日】2022-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋野 雄亮
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111944323(CN,A)
【文献】特開平09-012896(JP,A)
【文献】特開2000-169719(JP,A)
【文献】特開2017-206634(JP,A)
【文献】特開平10-057834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
E01C 7/18
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
新規アスファルト、下記のポリマー金属塩(P)、及びアスファルト再生骨材を含有するアスファルト混合物。
ポリマー金属塩(P):芳香族モノマーに由来する構成単位を有し、かつ、該構成単位に酸性基を有するポリマーの金属塩
【請求項2】
前記酸性基が、スルホン酸基である、請求項1に記載のアスファルト混合物。
【請求項3】
前記芳香族モノマーが、主鎖に芳香環骨格を有する芳香族モノマーである、請求項1又は2に記載のアスファルト混合物。
【請求項4】
前記ポリマーが、縮合重合法によって得られたポリマーである、請求項1又は2に記載のアスファルト混合物。
【請求項5】
前記芳香族モノマーが、ナフタレン骨格を有する芳香族モノマーである、請求項1又は2に記載のアスファルト混合物。
【請求項6】
前記新規アスファルトが、ストレートアスファルト又は改質アスファルトである、請求項1又は2に記載のアスファルト混合物。
【請求項7】
前記アスファルト混合物が更にポリエステル樹脂を含有する、請求項1又は2に記載のアスファルト混合物。
【請求項8】
前記ポリマー金属塩(P)の含有量が、前記新規アスファルト及び前記再生骨材由来のアスファルトの合計量100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下である、請求項1又は2に記載のアスファルト混合物。
【請求項9】
ポリマー金属塩(P)の含有量が、前記再生骨材由来のアスファルトの合計量100質量部に対して、2質量部以上60質量部以下である、請求項1又は2に記載のアスファルト混合物。
【請求項10】
新規アスファルト、下記のポリマー金属塩(P)、及びアスファルト再生骨材を加熱条件下で混合する工程を含む、アスファルト混合物の製造方法。
ポリマー金属塩(P):芳香族モノマーに由来する構成単位を有し、かつ、該構成単位に酸性基を有するポリマーの金属塩
【請求項11】
前記新規アスファルト、前記ポリマー金属塩(P)、及び前記アスファルト再生骨材を加熱条件下で混合する工程以前で、油を添加しない、請求項10に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項12】
混合する加熱温度が、160℃以上350℃以下である、請求項10又は11に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項13】
前記加熱条件下で混合する工程は、前記新規アスファルトと前記アスファルト再生骨材とを混合し混合物Xを得る工程、及び、前記混合物Xと前記ポリマー金属塩(P)を混合する工程を含む、請求項10又は11に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項14】
前記アスファルト混合物におけるポリマー金属塩(P)の含有量が、前記新規アスファルト及び前記再生骨材由来のアスファルトの合計量100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下である、請求項10又は11に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項15】
前記アスファルト混合物におけるポリマー金属塩(P)の含有量が、前記再生骨材由来のアスファルトの合計量100質量部に対して、2質量部以上60質量部以下である、請求項10又は11に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項16】
請求項1又は2に記載のアスファルト混合物を道路に施工し、アスファルト舗装材層を形成する工程を有する、道路舗装方法。
【請求項17】
締固め施工を含み、アスファルト混合物の締固め温度が100℃以上200℃以下である、請求項16に記載の道路舗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト混合物及びその製造方法、並びに道路舗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車道や駐車場、貨物ヤード、歩道等の舗装には、敷設が比較的容易であり、舗装作業開始から交通開始までの時間が短くてすむことから、アスファルト混合物を用いるアスファルト舗装が行われている。このアスファルト舗装は、骨材をアスファルトで結合したアスファルト混合物によって路面が形成されているので、舗装道路は良好な硬度や耐久性を有している。
【0003】
また、昨今の原油価格高騰、カーボンニュートラルの潮流を受けて、アスファルト舗装の廃材を解砕し、新規骨材の一部に使用して舗装工事を行うことが望まれている。
例えば、特許文献1には、再生用添加剤及び/または施工性改善剤が添加されて養生されたアスファルト再生骨材と新規の骨材及び新規のアスファルトとが混合されてなる再生アスファルト混合物が開示されている。そして、再生用添加剤として石油潤滑油系のもの、施工性改善剤として脂肪酸系化合物やグリコールエーテル系化合物等が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-37798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アスファルト再生骨材に由来するアスファルトは、長期の熱履歴及び紫外線暴露により劣化が著しく進行しているため、アスファルト再生骨材を用いたアスファルト組成物は、劣化したアスファルトの影響により舗装した際の物性が劣る課題がある。
特許文献1に記載の技術は、予め、アスファルト再生骨材に再生用添加剤及び/又は施工性改善剤を添加した後に養生しておく必要がある。
本発明は、アスファルト再生骨材を使用するアスファルト混合物において、耐久性、たわみ性等の両立困難な舗装物性が優れるアスファルト舗装が提供できるアスファルト混合物及びその製造方法、並びに道路舗装方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の〔1〕~〔3〕に関する。
〔1〕 新規アスファルト、下記のポリマー金属塩(P)、及びアスファルト再生骨材を含有するアスファルト混合物
ポリマー金属塩(P):芳香族モノマーに由来する構成単位を有し、かつ、酸性基を有するポリマーの金属塩
〔2〕 新規アスファルト、下記のポリマー金属塩(P)、及びアスファルト再生骨材を加熱条件下で混合する工程を含む、アスファルト混合物の製造方法。
ポリマー金属塩(P):芳香族モノマーに由来する構成単位を有し、かつ、酸性基を有するポリマーの金属塩
〔3〕 上記〔1〕に記載のアスファルト混合物を道路に施工し、アスファルト舗装材層を形成する工程を有する、道路舗装方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アスファルト再生骨材を使用し、かつ、耐久性、たわみ性等の舗装物性が優れるアスファルト舗装が提供できるアスファルト混合物及びその製造方法、並びに道路舗装方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[アスファルト混合物]
本発明のアスファルト混合物は、新規アスファルト、下記のポリマー金属塩(P)、及びアスファルト再生骨材を含有する。
ポリマー金属塩(P):芳香族モノマーに由来する構成単位を有し、かつ、酸性基を有するポリマーの金属塩
本発明のアスファルト混合物は、新規アスファルト、ポリマー金属塩(P)、及びアスファルト再生骨材を配合してなるものであってよい。
【0009】
本発明者らは、新規アスファルト、特定のポリマー金属塩、及びアスファルト再生骨材を含有するアスファルト混合物であれば、アスファルト再生骨材を含むアスファルト混合物であっても、耐久性、たわみ性等の舗装物性が優れるアスファルト舗装が提供できることを見出した。
以下、本明細書において単に「舗装物性」という場合、耐久性、たわみ性等の舗装物性を意味する。アスファルト舗装の耐久性は、例えばマーシャル安定度の値により評価することができる。アスファルト舗装のたわみ性は、例えば、マーシャル安定度試験におけるフロー値により評価することができる。
耐久性に優れるアスファルト舗装は、例えば耐わだち掘れ性に優れる。たわみ性に優れるアスファルト舗装は、例えば耐クラック性に優れる。
【0010】
本発明の効果が得られる詳細な機構は不明であるが、一部は以下のように考えられる。
本発明のポリマー金属塩は、アスファルト再生骨材に由来する劣化したアスファルト中のアスファルテンとn-n相互作用及び構造由来の親和性により吸着し、アスファルテンとポリマーとの複合体を形成する。そして、アスファルテンとポリマーとの複合体は、電離したポリマーの酸アニオン基同士が反発するため、劣化したアスファルトが付着する再生骨材のアスファルト中での分散性が向上し、耐久性、たわみ性等の物性が優れるアスファルト舗装が提供できると考えられる。すなわち、ポリマー金属塩は、劣化したアスファルトの粘度を低下させるのではなく、劣化したアスファルトが付着する再生骨材の新規アスファルト中の分散性を向上させると推定される。
【0011】
<新規アスファルト>
新規アスファルトはバージンアスファルト又は未使用アスファルトともいい、アスファルト舗装に使用された経歴のないアスファルトを意味する。
新規アスファルトとしては、アスファルト舗装に使用された経歴のないアスファルトであれば、種々のアスファルトが使用できる。例えば舗装用石油アスファルトであるストレートアスファルトの他、改質アスファルトが挙げられる。改質アスファルトとしては、ブローンアスファルト;熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂等の高分子材料で改質したポリマー改質アスファルト等が挙げられる。ストレートアスファルトとは、原油を常圧蒸留装置、減圧蒸留装置等にかけて得られる残留瀝青物質のことである。また、ブローンアスファルトとは、ストレートアスファルトと重質油との混合物を加熱し、その後空気を吹き込んで酸化させることによって得られるアスファルトを意味する。アスファルトは、ストレートアスファルト及びポリマー改質アスファルトから選択されることが好ましく、アスファルト舗装の耐久性の観点からはポリマー改質アスファルトがより好ましく、汎用性の観点からはストレートアスファルトがより好ましい。ポリマー改質アスファルトとしては、熱可塑性エラストマーで改質されたアスファルトがより好ましい。
改質アスファルトは、好ましくはポリマー改質アスファルトであり、より好ましくは熱可塑性エラストマーで改質したポリマー改質アスファルトである。
【0012】
(熱可塑性エラストマー)
熱可塑性エラストマーで改質したポリマー改質アスファルトにおける熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレンランダム共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン共重合体、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、イソブチレン/イソプレン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、上記以外の合成ゴム、及び天然ゴムから選択される少なくとも1種が挙げられる。改質アスファルトにおける熱可塑性エラストマーとしては、好ましくは、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレンランダム共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、及びエチレン/アクリル酸エステル共重合体から選択される少なくとも1種である。
これらの中でも、熱可塑性エラストマーとしては、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくはスチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレンランダム共重合体及びエチレン/アクリル酸エステル共重合体から選択される少なくとも1種、より好ましくはスチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体及びスチレン/イソプレンランダム共重合体から選択される少なくとも1種、更に好ましくはスチレン/ブタジエンランダム共重合体及びスチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体から選択される少なくとも1種である。
ポリマー改質アスファルト中の熱可塑性エラストマーの含有量は、アスファルト舗装の耐久性及び表面美観の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0013】
<ポリマー金属塩(P)>
本発明のアスファルト組成物は、下記のポリマー金属塩(P)を含有する。
ポリマー金属塩(P):芳香族モノマーに由来する構成単位を有し、かつ、酸性基を有するポリマーの金属塩
なお、「ポリマー金属塩(P)」とは、アスファルト混合物が電離したポリマー由来アニオン及び金属カチオンを含有する態様を包含する。
【0014】
ポリマー金属塩(P)のポリマー部分は、芳香族モノマーに由来する構成単位を有し、かつ、酸性基を有する。
上記芳香族モノマーは、主鎖又は側鎖に芳香族骨格を有することができるが、アスファルテンとの親和性の観点から、主鎖に芳香族骨格を有することが好ましい。
上記芳香環骨格としては、アスファルテンとの相溶性の観点から、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、テトラセン骨格、ペンタセン骨格、トリフェニレン骨格、ピレン骨格等が挙げられ、中でも、入手性および性能の観点から、好ましくはナフタレン骨格、ベンゼン骨格、より好ましくはナフタレン骨格である。
上記芳香環骨格は置換基を有してもよい。置換基としては、メチル基、エチル基、ブチル基等のアルキル基が挙げられ、中でも、アスファルテンとの相溶性担保の観点から、好ましくはメチル基又はエチル基である。置換基の個数は、好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1個である。
上記ポリマーが有する酸性基は、ポリマー中の芳香族モノマーに由来する構成単位又はそれ以外の部分に存在する。好ましくは、芳香族モノマーに由来する構成単位が酸性基を有する。
上記酸性基としては、スルホン酸基、カルボン酸基が挙げられ、好ましくはスルホン酸基である。
【0015】
ポリマー金属塩(P)のポリマー部分としては、連鎖重合法のうち特にラジカル重合法により得られるもの、付加重合法により得られるもの、逐次重合法のうち特に縮合重合法により得られるもの、開環重合法により得られるもの、リビング重合法によって得られるもの、芳香族求核置換反応法(芳香族求電子置換反応法ともいう)により得られるもの、その他ポリフェニレンサルファイド等が挙げられ、中でも、好ましくは付加重合法により得られるもの又は縮合重合法により得られるもの、より好ましくは縮合重合法により得られるものである。
【0016】
付加重合法により得られるポリマーとして、スチレンスルホン酸塩由来の構成単位を有するポリスチレンスルホン酸が挙げられる。
【0017】
縮合重合法により得られるポリマーとして、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物が挙げられる。芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物は、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物であり、当該芳香族スルホン酸としては、クレゾールスルホン酸、フェノールスルホン酸等の単環芳香族スルホン酸;α-ナフタレンスルホン酸、β-ナフタレンスルホン酸、α-ナフトールスルホン酸、β-ナフトールスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸及びブチルナフタレンスルホン酸等のアルキルナフタレンスルホン酸、クレオソート油スルホン酸等の多環芳香族スルホン酸;リグニンスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはメチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ブチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、α-ナフタレンスルホン酸、及びβ-ナフタレンスルホン酸である。
【0018】
ポリマー金属塩(P)は、上記ポリマーの塩基塩であり、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、又はカルシウム塩、より好ましくはナトリウム塩である。
【0019】
ポリマー金属塩(P)の重量平均分子量は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは2,500以上であり、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは75,000以下、更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは20,000以下である。
【0020】
ポリマー金属塩(P)は、主鎖に芳香族骨格を有するポリマーの金属塩として、メチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、ブチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、α-ナフタレンスルホン酸、及びβ-ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物の金属塩;側鎖に芳香族骨格を有するポリマーの金属塩として、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩等のポリスチレンスルホン酸の金属塩等が挙げられる。
【0021】
ポリマー金属塩(P)の市販品としては、花王株式会社製「デモール MS」、「デモール SN-B」、「デモール N」、「マイテイ100」等(以上、いずれも商品名)が挙げられる。
【0022】
〔アスファルト再生骨材〕
本発明のアスファルト混合物は、骨材としてアスファルト再生骨材を含む。
アスファルト再生骨材とは、使用済みのアスファルト舗装体を回収し、破砕及び分級したものである。
アスファルト再生骨材が由来する使用済みのアスファルト舗装体は、アスファルト及び骨材を含み、必要に応じて他の添加剤を含むことができる。
【0023】
なお、アスファルト再生骨材に含まれるアスファルトは、熱及び光等の環境因子の影響によって物理的及び化学的性状が、新規アスファルトと比較して劣化している。アスファルトの物理的及び化学的性状は、アスファルトの針入度、軟化点、曲げ強度、破断時歪み、アスファルト組成等を測定することで評価することができる。一般的には、アスファルト中のマルテン留分がアスファルテンに移行し、針入度が低下したアスファルトを劣化アスファルトと呼ぶことが多い。ただし、再生アスファルトの針入度が新規アスファルトの針入度と同等であったとしても、他の性状が変化することで新規アスファルトと同等の性能を発揮できないことがある。
【0024】
使用済みのアスファルト舗装体が由来するアスファルト混合物は、骨材を含む。このような骨材としては、例えば、砕石、玉石、砂利、砂、セラミックス等の道路舗装用アスファルト混合物に一般的に使用されている骨材が挙げられる。また、当該使用済みのアスファルト舗装体が由来するアスファルト混合物自体が、骨材としてアスファルト再生骨材を使用したものであってもよい。
【0025】
〔新規骨材〕
本発明のアスファルト混合物は、アスファルト再生骨材に加えて、新規骨材を含むことができる。新規骨材とは、
具体的な骨材としては、例えば、砕石、玉石、砂利、砂、セラミックス等を任意に選択して用いることができる。また、骨材としては、粒径2.36mm以上の粗骨材、粒径0.075mm以上2.36mm未満の細骨材、粒径0.075mm未満のフィラーを使用することができる。
粗骨材としては、例えば、粒径範囲2.36mm以上4.75mm未満の砕石、粒径範囲4.75mm以上12.5mm未満の砕石、粒径範囲12.5mm以上19mm未満の砕石、粒径範囲19mm以上31.5mm未満の砕石が挙げられる。
細骨材としては、例えば、川砂、丘砂、山砂、海砂、砕砂、細砂、スクリーニングス、砕石ダスト、シリカサンド、人工砂、ガラスカレット、鋳物砂が挙げられる。
粗骨材及び細骨材の粒径は、JIS A5001:2008に規定されるふるい分け試験方法に基づく値である。
【0026】
フィラーとしては、砂、フライアッシュ、石灰石粉末等の炭酸カルシウム粉末、消石灰等が挙げられる。これらの中でも、アスファルト舗装の強度向上の観点から、炭酸カルシウム粉末が好ましい。
フィラーの平均粒径は、アスファルト舗装の強度向上の観点から、好ましくは0.001mm以上であり、そして、好ましくは0.05mm以下、より好ましくは0.03mm以下、更に好ましくは0.02mm以下である。
ここで、平均粒径とは、体積累積50%の平均粒径(D50)を意味し、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定することができる。
【0027】
骨材として、粗骨材と細骨材を併用することが好ましい。
この場合、粗骨材と細骨材との質量比率(粗骨材/細骨材)は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは15/85以上、更に好ましくは20/80以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下である。
【0028】
<ポリエステル樹脂>
本発明のアスファルト混合物は、更にポリエステル樹脂を含むことができる。
ポリエステル樹脂は、アルコール成分由来の構成単位と、カルボン酸成分由来の構成単位とを含む、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である。
ポリエステル樹脂としては、非晶質ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂が挙げられ、好ましくは非晶質ポリエステル樹脂である。
以下、アルコール成分及びカルボン酸成分について説明する。
【0029】
(アルコール成分)
アルコール成分としては、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール、3価以上の多価アルコール等が挙げられる。これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
脂肪族ジオールとしては、好ましくは主鎖の炭素数2以上12以下の直鎖又は分岐の脂肪族ジオールであり、より好ましくは主鎖の炭素数2以上8以下の直鎖又は分岐の脂肪族ジオールである。
また、脂肪族ジオールは好ましくは飽和脂肪族ジオールである。
脂肪族ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
【0031】
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、水素添加ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
【0032】
芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、下記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
【0033】
【化1】
【0034】
〔式中、OR1及びR1Oはアルキレンオキシドであり、R1は炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示す正の数を示し、xとyの和は好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは4以下である。〕
【0035】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、例えば、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が挙げられる。これらのビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
3価以上の多価アルコールとしては、好ましくは3価アルコールである。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
【0037】
アルコール成分は、物性調整の観点から、1価の脂肪族アルコールを更に含有することができる。1価の脂肪族アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。これらの1価の脂肪族アルコールは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
(カルボン酸成分)
カルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3価以上6価以下の多価カルボン酸が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
脂肪族ジカルボン酸としては、主鎖の炭素数が、好ましくは4以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、より好ましくは6以下の脂肪族ジカルボン酸、例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、炭素数1以上20以下のアルキル基若しくは炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸、又は、これらの無水物、これらのアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。置換されたコハク酸としては、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。
【0040】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、又は、これらの無水物、これらのアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。以上の芳香族ジカルボン酸の中でも、骨材飛散の抑制及び耐水性の観点から、イソフタル酸及びテレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
【0041】
3価以上6価以下の多価カルボン酸は、好ましくは3価カルボン酸である。3価以上6価以下の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、又はこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0042】
カルボン酸成分は、物性調整の観点から、1価の脂肪族カルボン酸を更に含有することができる。1価の脂肪族カルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、それらの酸のアルキル(炭素数1以上3以下)エステル等の炭素数12以上20以下の1価の脂肪族カルボン酸等が挙げられる。これらの1価の脂肪族カルボン酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
(ポリエチレンテレフタレート由来の構成単位)
ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位及びテレフタル酸由来の構成単位を含むことができる。ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコール由来及びテレフタル酸由来の構成単位の他にブタンジオールやイソフタル酸等の成分を少量含有してもよい。ポリエチレンテレフタレートは、回収されたポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール及びテレフタル酸からなる構成単位を含む場合、「アルコール成分由来の構成単位」はポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位を含み、「カルボン酸成分由来の構成単位」はポリエチレンテレフタレート由来のテレフタル酸由来の構成単位を含む。
【0044】
ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂は、具体的には、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられる。好ましい変性されたポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0045】
<各成分の含有量>
アスファルト混合物中のアスファルトの含有量は、耐久性とたわみ性を両立する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0046】
本発明において、アスファルトの含有量とは、新規アスファルトとアスファルト再生骨材に含まれるアスファルトの合計含有量である。本発明ではアスファルト再生骨材に含まれるアスファルトは、新規アスファルトと区別するために再生骨材由来のアスファルトともいう。再生骨材由来のアスファルトは、劣化アスファルトという場合もある。
新規アスファルトの含有量は、耐久性とたわみ性を両立する観点から、アスファルト中、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、そして、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。再生骨材由来のアスファルトの含有量は、耐久性とたわみ性を両立する観点から、アスファルト中、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、そして、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
アスファルト再生骨材中の再生骨材由来のアスファルトの含有量は、溶媒抽出法又は強熱減量法により測定することができる。通常、使用済みのアスファルト舗装に由来するアスファルト再生骨材に含まれるアスファルトの含有量は、概ね5.5質量%程度である。
本発明において再生骨材由来のアスファルトの含有量は、強熱減量測定であるAASHTO(American Association of State Highway and Transportation Officials;米国全州道路交通運輸行政官協会) T 308-10(2015)に規定される手法に従って行う。骨材としてアスファルト再生骨材を含むため、アスファルト再生骨材の強熱減量からアスファルト量を求めて、配合計算に用いる。
【0047】
本発明のアスファルト混合物におけるポリマー金属塩(P)の含有量は、アスファルト舗装の耐久性を向上させる観点から、新規アスファルト及び再生骨材由来のアスファルトの合計量100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、そして作業性を維持する観点から好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは7質量部以下である。
【0048】
また、アスファルト混合物におけるポリマー金属塩(P)の含有量は、同様の観点から、再生骨材由来のアスファルト100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは4質量部以上であり、そして作業性を維持する観点から好ましくは60質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは25質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。
【0049】
アスファルト混合物中の骨材の含有量は、耐久性とたわみ性を両立する観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは96質量%以下である。
アスファルト混合物中のアスファルト再生骨材の含有量は、アスファルト舗装の廃材を再利用する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、耐久性とたわみ性を両立する観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
【0050】
本発明において、骨材の含有量とは、アスファルト再生骨材及び任意で含む新規骨材の合計含有量である。なお、骨材の含有量に再生骨材由来のアスファルトの含有量は算入する。
骨材が新規骨材を含む場合、新規骨材の含有量は、アスファルト再生骨材の使用と優れた舗装物性を両立する観点から、アスファルト再生骨材及び新規骨材の合計含有量100質量部中、好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上であり、そして、好ましくは80質量部以下、より好ましくは75質量部以下である。アスファルト再生骨材の含有量は、アスファルト舗装の廃材を再利用する観点から、アスファルト再生骨材及び新規骨材の合計含有量100質量部中、好ましくは15質量部以上、より好ましくは25質量部以上であり、アスファルト再生骨材の使用と優れた舗装物性を両立する観点から、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。
【0051】
アスファルト混合物における好適な骨材の配合例として、以下の(1)~(3)が挙げられる。(1)30容量%以上45容量%未満の粗骨材と、30容量%以上50容量%以下の細骨材と、5容量%以上10容量%以下のアスファルト組成物とを含む細粒度アスファルト。(2)一例のアスファルト混合物は、例えば、45容量%以上70容量%未満の粗骨材と、20容量%以45容量%以下の細骨材と、3容量%以上10容量%以下のアスファルト組成物とを含む密粒度アスファルト。(3)70容量%以上80容量%以下の粗骨材と、10容量%以上20容量%以下の細骨材と、3容量%以上10容量%以下のアスファルト組成物とを含むポーラスアスファルト。
なお、従来の骨材とアスファルトを含むアスファルト混合物におけるアスファルトの配合割合については、通常、公益社団法人日本道路協会発行の「舗装設計施工指針」に記載されている「アスファルト組成物の配合設計」から求められる最適アスファルト量に従って用いられている。
本発明においては、上記の最適アスファルト量が、アスファルト及びポリマー金属塩(P)の合計量に相当する。ただし、「舗装設計施工指針」に記載の方法に限定する必要はなく、他の方法によって決定してもよい。
【0052】
一般に、アスファルト再生骨材を含むアスファルト混合物は、再生骨材由来のアスファルトを軟化し、たわみ性を向上するために石油潤滑油系の再生用添加剤、動植物油系若しくは石油系の施工性改善剤等の油を含有することができる。具体的には、油として、石油・鉱物油、それに準ずる炭化水素、あるいは動物油・植物油、それに準ずる油脂などの添加剤が挙げられる。一方、本発明のアスファルト混合物は、耐久性の低下を抑制する観点から、好ましくは油を含有しない。
本発明のアスファルト混合物が油を含有する場合、その含有量は、耐久性抑制する観点から、再生骨材由来のアスファルト100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
また、油を含有する場合、その含有量は、好ましくはポリマー金属塩(P)の含有量よりも少ない。
【0053】
[アスファルト混合物の製造方法]
本発明のアスファルト混合物の製造方法は、新規アスファルト、ポリマー金属塩(P)、及びアスファルト再生骨材を加熱条件下で混合する工程を含む。
混合する工程は、新規アスファルト、ポリマー金属塩(P)、及びアスファルト再生骨材を同時に又は順不同で混合することができる。アスファルト舗装の耐久性及びたわみ性の観点から、好ましくは、上記ポリマー金属塩(P)を、新規アスファルトと同時又は新規アスファルトの後に、アスファルト再生骨材と混合する。
加熱条件下での混合は、加熱したアスファルト再生骨材を使用する態様であることが好ましい。
アスファルト混合物がアスファルト再生骨材に加えて新規骨材を含む場合、アスファルト再生骨材と新規骨材を、例えば上記含有量となるように、混合して使用することができる。
アスファルト混合物の具体的な製造方法としては、従来のプラントミックス方式、プレミックス方式等といわれるアスファルト混合物の製造方法が挙げられる。いずれも加熱した骨材に新規アスファルトにポリマー金属塩(P)を添加する方法である。添加方法は、例えば、新規アスファルト及びポリマー金属塩(P)を予め溶解させたプレミックス方式、又は新規アスファルトを加熱した骨材に添加し、その後に上記ポリマー金属塩(P)を同時に又は順不同で投入するプラントミックス法が挙げられる。これらの中でも、アスファルト性能を発揮する観点から、プラントミックス方式が好ましい。
より具体的には、アスファルト混合物の製造方法は、当該混合する工程において、好ましくは、
(i)加熱した骨材に、新規アスファルトを添加及び混合して混合物を得た後、上記ポリマー金属塩(P)を添加及び混合する、
(ii)加熱した骨材に、新規アスファルト及び上記ポリマー金属塩(P)を同時に添加及び混合する、又は
(iii)加熱した骨材に、事前に加熱混合した新規アスファルト及び上記ポリマー金属塩(P)の混合物を添加及び混合する。
これらの中でも、当該混合する工程は、(i)の方法が好ましい。
すなわち、上記加熱条件下で混合する工程は、好ましくは、前記新規アスファルトと前記アスファルト再生骨材とを混合し混合物Xを得る工程、及び、前記混合物Xと前記ポリマー金属塩(P)を混合する工程を含む。
【0054】
加熱温度は、十分な混合によって耐久性を向上させる観点から、好ましくは160℃以上、より好ましくは165℃以上、さらに好ましくは170℃以上である。そして、性能安定性の観点から、好ましくは350℃以下、より好ましくは250℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
また、混合時間は、効率的にアスファルト中に上記ポリマー金属塩(P)を均一に分散させ、アスファルト性能を発揮する観点から、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1.0時間以上、更に好ましくは1.5時間以上であり、そして、好ましくは10時間以下、より好ましくは7時間以下、更に好ましくは5時間以下、更に好ましくは3時間以下である。
【0055】
混合物を調製する方法は特に限定されないが、新規アスファルトを加熱溶融し、上記ポリマー金属塩(P)及び必要に応じて他の添加剤を添加し、通常用いられている混合機にて、各成分が均一に分散するまで撹拌混合する工程を含むことが好ましい。通常用いられている混合機としては、ホモミキサー、ディゾルバー、パドルミキサー、リボンミキサー、スクリューミキサー、プラネタリーミキサー、真空逆流ミキサー、ロールミル、二軸押出機等が挙げられる。
【0056】
本発明のアスファルト混合物は、水を実質的に含まない加熱アスファルト混合物として使用してもよく、また、上記アスファルト混合物に乳化剤や水を配合してアスファルト乳剤とし、これに骨材等を配合し、常温アスファルト混合物として使用してもよい。アスファルト、ポリエステル樹脂、及び上記ポリマー金属塩(P)を混合物は、アスファルト性能を発揮する観点から、好ましくは水を実質的に含まない。
【0057】
アスファルト再生骨材を使用するアスファルト混合物の製造方法において、再生骨材由来のアスファルトを軟化し、たわみ性を向上するために石油潤滑油系の再生用添加剤、動植物油系若しくは石油系の施工性改善剤等の油を添加し、養生する技術が知られている。具体的には、油として、石油・鉱物油、それに準ずる炭化水素、あるいは動物油・植物油、それに準ずる油脂などの添加剤が挙げられる。一方、本発明のアスファルト混合物の製造方法においては、このような処理を実施しなくても優れたたわみ性と耐久性を両立することができる。
従って、本発明のアスファルト混合物の製造方法は、好ましくは前記新規アスファルト、前記ポリマー金属塩(P)、及び前記アスファルト再生骨材を加熱条件下で混合する工程以前で、油を添加しない。換言すると、前記アスファルト再生骨材は、破砕、分級以外の処理をせずに使用することが好ましい。
また、前記加熱条件下で混合する工程は、前記新規アスファルト、前記jポリマー金属塩(P)、及び前記アスファルト再生骨材、並びに、任意選択で、前記ポリエステル樹脂などのポリマー及び再生用添加剤や施工性改善剤以外の添加剤からなる群から選択される1種以上のみを混合する工程である。
【0058】
アスファルト混合物を加熱アスファルト混合物として使用する場合のアスファルト混合物の製造方法については、特に制限はなく、いかなる方法で製造してもよいが、通常、骨材とアスファルト組成物とを含むアスファルト混合物の製造方法に準じて行えばよい。
【0059】
[道路舗装の施工方法]
本発明のアスファルト混合物は、道路舗装用として好適である。本発明の道路舗装の施工方法は、好ましくは、本発明のアスファルト混合物を道路等に施工し、アスファルト舗装材層を形成する工程を有する。アスファルト舗装材層は、通常は道路の基層又は表層であり、耐久性の効果を発揮する観点から、好ましくは道路の表層である。
【0060】
なお、道路舗装方法において、アスファルト混合物は、通常のアスファルト混合物と同様の施工機械編成で、同様の方法によって締固め施工すればよい。加熱アスファルト混合物として使用する場合のアスファルト混合物の締固め温度は、アスファルト性能を発揮する観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは170℃以下である。
【実施例
【0061】
各種物性については、以下の方法により、測定及び評価を行った。
なお、以下の実施例及び比較例において、特記しない限り、部及び%は質量基準である。
【0062】
実施例1
180℃に加熱したアスファルト再生骨材を含む骨材(骨材の組成は以下を参照)15kgをアスファルト用混合機に入れ、180℃にて60秒間混合した。次いでストレートアスファルト(三菱商事エネルギー株式会社製)520gを加え、アスファルト用混合機にて1分間混合した。次いでポリマー金属塩P-1(デモール MS(商品名)、花王株式会社製、メチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)を24g加え、アスファルト用混合機にて2分間混合し、アスファルト混合物を得た。
<骨材の組成>
6号砕石 28.0質量部
7号砕石 9.0質量部
砕砂 7.0質量部
川砂 16.0質量部
山砂 7.0質量部
石粉(炭酸カルシウム) 3.0質量部
アスファルト再生骨材 30.0質量部
通過質量%:
ふるい目 15 mm: 100 質量%
ふるい目 10 mm: 84.4質量%
ふるい目 5 mm: 61.7質量%
ふるい目 2.5 mm: 43.9質量%
ふるい目 1.2 mm: 30.8質量%
ふるい目 0.6 mm: 19.0質量%
ふるい目 0.3 mm: 10.6質量%
ふるい目 0.15mm: 4.7質量%
【0063】
アスファルト再生骨材中の再生骨材由来のアスファルトの含有量は、269gであった。新規アスファルト及び再生骨材由来のアスファルトの合計含有量は789gであり、アスファルト混合物中のアスファルトの含有量(新規アスファルト及び再生骨材由来のアスファルトの合計量)は5質量%であった。表1中、「含有量(1)」と示した。
また、ポリマー金属塩P-1の含有量は、再生骨材由来のアスファルト100質量部に対して9質量部、アスファルトの合計量100質量部に対して3質量部であった。
アスファルト再生骨材が含むアスファルトの含有量は、AASHTO T 308-10(2015)に規定される手法に従って推定値を求めた。表1中、「含有量(2)」と示した。
【0064】
[評価]
<マーシャル安定度試験>
得られたアスファルト混合物1.2kgを計量し、180℃で2時間保管して熱養生に供した後、マーシャル試験つき固め機「アスファルト自動つき固め装置」(株式会社ナカジマ技販製)を用いて、片面50回ずつ合計100回突き固め、円柱状のアスファルト供試体M-1を作製した。
脱型したアスファルト供試体M-1を60℃の恒温水槽に30分間浸漬した後、マーシャル載荷装置(株式会社ナカジマ技販製)を用いて、横転したアスファルト供試体M-1を平板で50mm/分の速度で押しつぶした。破壊するまでに示す最大荷重をマーシャル安定度とした。また、変位の傾きの始点から最大荷重までの変位量を測定し、フロー値とした。その他の測定条件は、公益社団法人日本道路協会出版の「舗装調査・試験法便覧」に記載される「B001マーシャル安定度試験」に従った。
なお、マーシャル安定度の値が大きいほど、アスファルト舗装は耐久性に優れる。そして、フロー値は、アスファルト舗装の供用温度におけるたわみ性の指標として用いられる。
結果を表1に示す。
【0065】
実施例2~9、比較例1~4
アスファルト混合物の配合を表1に示した配合に変更したこと以外、実施例1と同様にして、アスファルト供試体を作製し、マーシャル安定度試験を実施し、マーシャル安定度及びフロー値を測定した。
また、表1に示したその他の成分は、実施例1のポリマー金属塩P-1を加えたタイミングで添加した。
結果を表1に示す。
【0066】
実施例1~9で用いたポリマー金属塩、及び比較例2~4で用いたポリマーを以下に示す。
ポリマー金属塩P-1:デモール MS(商品名)、花王株式会社製、メチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩
ポリマー金属塩P-2:デモール SN-B(商品名)、花王株式会社製、ブチルナフタレン/ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩
ポリマー金属塩P-3:マイテイ100(商品名)、花王株式会社製、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩 高分子量タイプ
ポリマー金属塩P-4:デモール N(商品名)、花王株式会社製、β‐ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩
ポリマー金属塩P-5:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩、試薬(Alfa Aesar社製)重量平均分子量70,000
【0067】
ポリマーp-1:未中和のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物
ポリマーp-1は、以下の製造方法により得た。
ナフタレン1モルに98%硫酸1.28モルを添加し、反応温度155℃~160℃で3時間スルホン化反応を行った。次いでホルムアルデヒド(35%ホルマリン)0.97モルを添加し、反応温度100℃、12時間で縮合反応を完結しナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物を得た。
なお、ポリマーp-1は、上記ポリマー金属塩P-3の未中和品に相当する。
【0068】
ポリマーp-2:ネオペレックGS(商品名)、花王株式会社製、アルキルベンゼンスルホン酸
【0069】
ポリエステルq-1:ポリエステルq-1は以下の方法で製造した。
ビスフェノールAのポリオキシプロピレン(2.2モル)付加物3943g(モル比40)、テレフタル酸1103g(モル比83.6)、及びPET(ポリエチレンテレフタレート、Indorama Ventures社製)3244g(エチレングルコールとしてモル比60モル)を、温度計、ステンレス製撹拌棒、脱水管、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)45gを添加し、マントルヒーター中で3時間かけて235℃まで昇温を行い235℃で5時間保持した後、8.0kPaにて1時間減圧反応を行った。反応物からPET粒が消失したことを目視で確認後、180℃まで冷却し、アルケニルコハク酸無水物710g(モル比9.4)を投入した。210℃まで2時間かけて昇温後、210℃で1時間保持し、8.3kPaにて減圧反応を行った後、軟化点が105.2℃に達するまで反応を行い、ポリエステルq-1を得た。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示す結果から、本発明によりアスファルト再生骨材を使用し、かつ、耐久性及びたわみ性が優れるアスファルト舗装が提供できるアスファルト混合物が得られることが分かる。
また、実施例9と比較例3とを対比すると更にポリエステルq-1を含有する場合でも耐久性及びたわみ性が優れるアスファルト舗装が提供できるアスファルト混合物が得られることが分かる。
【0072】
参考例1~2
参考例1は、アスファルト再生骨材を含む骨材を、アスファルト再生骨材を含まない骨材(骨材の組成は以下を参照)に変更したこと以外、比較例1と同様にして、アスファルト供試体を作製し、マーシャル安定度試験を実施し、マーシャル安定度及びフロー値を測定した。
参考例2は、アスファルト再生骨材を含む骨材を、アスファルト再生骨材を含まない骨材に変更したこと以外、実施例1と同様にして、アスファルト供試体を作製し、マーシャル安定度試験を実施し、マーシャル安定度及びフロー値を測定した。
結果を表2に示す。
<アスファルト再生骨材を含まない骨材>
骨材の組成:
6号砕石 40.0質量部
7号砕石 13.0質量部
砕砂 10.0質量部
川砂 22.0質量部
山砂 10.0質量部
石粉(炭酸カルシウム) 5.0質量部
通過質量%:
ふるい目 15 mm: 100 質量%
ふるい目 10 mm: 88.7質量%
ふるい目 5 mm: 60.5質量%
ふるい目 2.5 mm: 42.6質量%
ふるい目 1.2 mm: 29.9質量%
ふるい目 0.6 mm: 19.8質量%
ふるい目 0.3 mm: 11.5質量%
ふるい目 0.15mm: 6.2質量%
【0073】
【表2】
【0074】
表2に示す結果から、アスファルト混合物にアスファルト再生骨材を含まない場合は、ポリマー金属塩を含有させても、耐久性及びたわみ性に大きな差がないことが分かる。