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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/16 20060101AFI20250204BHJP
   H05K 1/11 20060101ALI20250204BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20250204BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
H05K1/16 B
H05K1/11 A
H01F17/00 B
H01F27/28 104
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023545427
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2022031070
(87)【国際公開番号】W WO2023032671
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2021140101
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 幸枝
(72)【発明者】
【氏名】新田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】野口 航
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-294085(JP,A)
【文献】実開昭58-133906(JP,U)
【文献】特開2002-262468(JP,A)
【文献】特開昭58-140104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/16
H05K 1/11
H01F 17/00
H01F 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有するベースフィルムと、
前記主面上に形成されているコイル配線と、
前記コイル配線の一方端及び他方端に接続されている第1接続ランド及び第2接続ランドとを備え、
前記主面は、第1主面と、前記第1主面の反対面である第2主面とを有し、
前記コイル配線は、前記第1主面上に渦巻状に形成されている第1コイル配線と、前記第2主面上に渦巻状に形成されており、かつ前記第1コイル配線に電気的に接続されている第2コイル配線とを有し、
前記第1接続ランド及び前記第2接続ランドは、前記第2主面上に形成されており、
前記第1コイル配線の巻き数は、前記第2コイル配線の巻き数よりも多い、プリント配線板。
【請求項2】
前記第1コイル配線の巻き数は、前記第2コイル配線の巻き数の1.1倍以上4.3倍以下である、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記第1コイル配線は、前記第2コイル配線よりも長い、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記第1コイル配線の面積率は、前記第2コイル配線の面積率よりも大きい、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記第1コイル配線の長さは、前記第2コイル配線の長さの1.1倍以上3.0倍以下である、請求項3に記載のプリント配線板。
【請求項6】
前記第1コイル配線の面積率は、前記第2コイル配線の面積率の1.1倍以上2.5倍以下である、請求項4に記載のプリント配線板。
【請求項7】
前記第1主面が磁石と対向するように配置される、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項8】
平面視において隣り合う前記第1コイル配線の2つの部分の間の間隔及び平面視において隣り合う前記第2コイル配線の2つの部分の間の間隔は、20μm以下である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリント配線板に関する。本出願は、2021年8月30日に出願した日本特許出願である特願2021-140101号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2016-9854号公報(特許文献1)には、プリント配線板が記載されている。特許文献1に記載のプリント配線板は、ベースフィルムと、配線とを有している。ベースフィルムは、第1主面と、第1主面の反対面である第2主面とを有している。配線は、第1主面上に配置されている第1配線と、第2主面上に配置されている第2配線とを有している。第1配線及び第2配線は、ベースフィルムに形成されているスルーホールの内壁面上に配置されているめっき層を介して互いに電気的に接続されている。第1配線及び第2配線は、渦巻状に巻回されていることにより、コイルを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-9854号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示のプリント配線板は、主面を有するベースフィルムと、主面上に形成されているコイル配線と、コイル配線の一方端及び他方端に接続されている第1接続ランド及び第2接続ランドとを備える。主面は、第1主面と、第1主面の反対面である第2主面とを有する。コイル配線は、第1主面上に渦巻状に形成されている第1コイル配線と、第2主面上に渦巻状に形成されており、かつ第1コイル配線に電気的に接続されている第2コイル配線とを有する。第1接続ランド及び第2接続ランドは、第2主面上に形成されている。第1コイル配線の巻き数は、第2コイル配線の巻き数よりも多い。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、プリント配線板100の平面図である。
図2図2は、プリント配線板100の底面図である。
図3図3は、図1のIII-IIIにおける断面図である。
図4図4は、図1のIV-IVにおける断面図である。
図5図5は、図1のV-Vにおける断面図である。
図6図6は、プリント配線板100を用いたアクチュエータの模式図である。
図7図7は、プリント配線板100の製造方法を示す工程図である。
図8図8は、シード層形成工程S2を説明する断面図である。
図9図9は、レジスト形成工程S3を説明する断面図である。
図10図10は、第1電解めっき工程S4を説明する断面図である。
図11図11は、レジスト除去工程S5を説明する断面図である。
図12図12は、エッチング工程S6を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1に記載のプリント配線板では、配線の一方端及び他方端が接続ランドに電気的に接続されている必要がある。接続ランドは、別のプリント配線板に配置することが考えられる。しかしながら、この場合、特許文献1に記載のプリント配線板以外のプリント配線板が必要になるため、特許文献1に記載のプリント配線板を用いたコイル装置の厚さが増大してしまう。
【0007】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。本開示は、コイル装置の厚さを小さくすることが可能なプリント配線板を提供するものである。
【0008】
[本開示の効果]
本開示のプリント配線板によれば、コイル装置の厚さを小さくすることが可能である。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
まず、本開示の実施形態を列記して説明する。
【0010】
(1)プリント配線板は、主面を有するベースフィルムと、主面上に形成されているコイル配線と、コイル配線の一方端及び他方端に接続されている第1接続ランド及び第2接続ランドとを備えている。主面は、第1主面と、第1主面の反対面である第2主面とを有する。コイル配線は、第1主面上に渦巻状に形成されている第1コイル配線と、第2主面上に渦巻状に形成されており、かつ第1コイル配線に電気的に接続されている第2コイル配線とを有する。第1接続ランド及び第2接続ランドは、第2主面上に形成されている。第1コイル配線の巻き数は、第2コイル配線の巻き数よりも多い。
【0011】
上記(1)のプリント配線板によると、コイル装置の厚さを小さくすることが可能である。
【0012】
(2)上記(1)のプリント配線板では、第1コイル配線の巻き数が、第2コイル配線の巻き数の1.1倍以上4.3倍以下であってもよい。
【0013】
(3)上記(1)又は(2)のプリント配線板では、第1コイル配線が、第2コイル配線よりも長くてもよい。
【0014】
(4)上記(1)から(3)のプリント配線板では、第1コイル配線の面積率が、第2コイル配線の面積率よりも大きくてもよい。
【0015】
(5)上記(3)のプリント配線板では、第1コイル配線の長さが、第2コイル配線の長さの1.1倍以上3.0倍以下であってもよい。
【0016】
(6)上記(4)のプリント配線板では、第1コイル配線の面積率が、第2コイル配線の面積率の1.1倍以上2.5倍以下であってもよい。
【0017】
(7)上記(1)から上記(6)のプリント配線板は、第1主面が磁石と対向するように配置されてもよい。
【0018】
上記(7)のプリント配線板によると、コイル装置の厚さを小さくしつつ、コイル装置の推力を確保することが可能である。
【0019】
(8)上記(1)から上記(7)のプリント配線板では、隣り合うコイル配線の2つの部分の間の間隔が、20μm以下であってもよい。
【0020】
上記(8)のプリント配線板によると、第1コイル配線の巻き数(長さ、面積率)及び第2コイル配線の巻き数(長さ、面積率)を向上させることができるため、コイル装置の厚さを小さくしつつ、コイル装置の推力を確保することが可能である。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0022】
(実施形態に係るプリント配線板の構成)
以下に、実施形態に係るプリント配線板(「プリント配線板100」とする)の構成を説明する。
【0023】
図1は、プリント配線板100の平面図である。図2は、プリント配線板100の底面図である。図2には、図1とは反対側から見たプリント配線板100が示されている。図3は、図1のIII-IIIにおける断面図である。図4は、図1のIV-IVにおける断面図である。図5は、図1のV-Vにおける断面図である。図1から図5に示されるように、プリント配線板100は、ベースフィルム10と、コイル配線20と、第1接続ランド30及び第2接続ランド40とを有している。プリント配線板100は、コイル装置として機能する。
【0024】
ベースフィルム10は、第1主面10aと、第2主面10bとを有している。第1主面10a及び第2主面10bは、厚さ方向におけるベースフィルム10の端面を構成している。第2主面10bは、第1主面10aの反対面である。ベースフィルム10は可撓性を有する絶縁性の材料により形成されている。ベースフィルム10を構成している材料の具体例としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート及びフッ素樹脂が挙げられる。
【0025】
ベースフィルム10の厚さは、例えば、80μm以下である。ベースフィルム10の厚さは、50μm以下であることが好ましい。ベースフィルム10の厚さは、20μm以下であることが好ましい。ベースフィルム10の厚さは、第1主面10aと第2主面10bとの間の距離である。
【0026】
ベースフィルム10には、貫通穴10c及び貫通穴10dが形成されている。貫通穴10c及び貫通穴10dは、厚さ方向に沿ってベースフィルム10を貫通している。
【0027】
コイル配線20は、ベースフィルム10の主面上に配置されている。コイル配線20は、第1コイル配線21と、第2コイル配線22とを有している。第1コイル配線21は、第1主面10a上に配置されている。第2コイル配線22は、第2主面10b上に配置されている。第1コイル配線21及び第2コイル配線22は、互いに電気的に接続されている。
【0028】
第1コイル配線21は、ベースフィルム10の厚さ方向に沿って第1主面10a側から見た際に、渦巻状に巻回されている。このことを別の観点から言えば、第1コイル配線21は、コイル(第1コイル)を構成している。第1コイル配線21の一方端は、第1コイルの外側にある。第1コイル配線21の他方端は、第1コイルの内側にある。第1コイル配線21の一方端は、ランド21aになっている。第1コイル配線21の他方端は、ランド21bになっている。
【0029】
第2コイル配線22は、ベースフィルム10の厚さ方向に沿って第2主面10b側から見た際に渦巻状に巻回されている。このことを別の観点から言えば、第2コイル配線22は、コイル(第2コイル)を構成している。第2コイル配線22の一方端は、第2コイルの内側にある。第2コイル配線22の他方端は、第2コイルの外側にある。第2コイル配線22の一方端は、ランド22aになっている。ランド22aは、貫通穴10cの内壁面上に配置されている第2層23b、第1電解めっき層24及び第2電解めっき層25により、ランド21bに電気的に接続されている。なお、ランド22aは、貫通穴10c内に第1電解めっき層24及び第2電解めっき層25が充填されていることにより、ランド21bに電気的に接続されていてもよい。
【0030】
コイル配線20(第1コイル配線21及び第2コイル配線22)は、シード層23と、第1電解めっき層24と、第2電解めっき層25とを有している。
【0031】
シード層23は、ベースフィルム10の主面(第1主面10a及び第2主面10b)上に配置されている。シード層23は、第1層23aと、第2層23bとを有している。
【0032】
第1層23aは、ベースフィルム10の主面(第1主面10a及び第2主面10b)上に配置されている。第1層23aは、例えば、ニッケル-クロム合金により形成されているスパッタ層(スパッタリングにより形成されている層)である。第2層23bは、第1層23a上に配置されている。第2層23bは、例えば、銅により形成されている無電解めっき層(無電解めっきにより形成されている層)である。なお、第2層23bは、貫通穴10c及び貫通穴10dの内壁面上にも形成されている。
【0033】
第1電解めっき層24は、電解めっきにより形成されている層である。第1電解めっき層24はシード層23(第2層23b)上に配置されている。第1電解めっき層24は、例えば、銅により形成されている。なお、第1電解めっき層24は、貫通穴10c及び貫通穴10dの内壁面上にある第2層23b上にも配置されている。
【0034】
第2電解めっき層25は、電解めっきにより形成されている層である。第2電解めっき層25は、第1電解めっき層24を覆っている。より具体的には、第2電解めっき層25は、シード層23の上並びに第1電解めっき層24の側面及び上面上に配置されている。なお、第2電解めっき層25は、貫通穴10c及び貫通穴10dの内壁面上にある第1電解めっき層24上にも配置されている。
【0035】
隣り合うコイル配線20の部分の間の間隔を間隔SPとする。コイル配線20の幅を幅Wとする。間隔SPは、例えば20μm以下である。間隔SPは、15μm以下であることが好ましい。間隔SPは、10μm以下であることがさらに好ましい。間隔SPは、幅Wよりも小さいことが好ましい。幅Wは、例えば25μm以下である。なお、コイル配線20の高さは、幅Wよりも大きいことが好ましい。コイル配線20の高さは、例えば、35μm以上である。
【0036】
間隔SP及び幅Wの測定では、第1に、コイル配線20の長さ方向において、5点の測定点が設定される。これらの測定点の間隔は、コイル配線20の長さ方向において、等間隔となるように設定される。但し、これらの測定点の間隔は、概ね等間隔であれば足り、厳密には等間隔でなくてもよい。第2に、測定点ごとに、コイル配線20の長さ方向に直交している断面において、隣り合うコイル配線20の部分の間の間隔及びコイル配線20の幅が測定される。そして、測定された値の平均値が、間隔SP及び幅Wとされる。
【0037】
第1コイル配線21の巻き数は、第2コイル配線22の巻き数よりも多くなっている。第1コイル配線21の巻き数は、第2コイル配線22の巻き数の1.1倍以上4.3倍以下であることが好ましい。
【0038】
第1コイル配線21の巻き数は、第1コイル配線21により構成されるコイルの長手方向に直交する断面において、当該コイルの中央よりも一方側にある第1コイル配線21の数及び当該コイルの中央よりも他方側にある第1コイル配線21の数の平均値である。第2コイル配線22の巻き数は、第1コイル配線21と同一の方法で算出される。なお、図1及び図2に示される例では、第1コイル配線21の巻き数は5であり、第2コイル配線22の巻き数は3.5である。
【0039】
第1コイル配線21は第2コイル配線22よりも長い。第1コイル配線21の長さは、第1コイル配線21の一方端と第1コイル配線21の他方端との間の距離である。第2コイル配線22の長さは、第2コイル配線22の一方端と第2コイル配線22の他方端との間の距離である。第1コイル配線21の長さは、第2コイル配線22の長さの1.1倍以上3.0倍以下であることが好ましい。第1コイル配線21の長さと第2コイル配線22の長さとの比をこのようにすることにより、第1コイル配線21及び第2コイル配線22を好ましい巻き数にすることができる。
【0040】
第1コイル配線21の長さは、第1コイル配線21の両端にあるランドの間における第1コイル配線21の長さである。より具体的には、第1コイル配線21の長さは、ランド21aとランド21bとの間における第1コイル配線21の長さである。第2コイル配線22の長さは、第2コイル配線22の両端にあるランドの間における第2コイル配線22の長さである。より具体的には、第2コイル配線22の長さは、ランド22aと第2接続ランド40との間における第2コイル配線22の長さである。
【0041】
第1コイル配線21の面積率は、第2コイル配線22の面積率よりも大きい。第1コイル配線21の面積率は、第2コイル配線22の面積率の1.1倍以上2.5倍以下であることが好ましい。第1コイル配線21の面積率と第2コイル配線22の面積率との比をこのようにすることにより、第1コイル配線21及び第2コイル配線22を好ましい巻き数にすることができる。
【0042】
第1コイル配線21の面積率は、第1主面10a側からベースフィルム10の厚さ方向に沿って見た際の第1コイル配線21の面積及び隣り合う第1コイル配線21の部分の間にある第1主面10aの面積の合計を第1主面10aの総面積で除した値である。第2コイル配線22の面積率は、第2主面10b側からベースフィルム10の厚さ方向に沿って見た際の第2コイル配線22の面積及び隣り合う第2コイル配線22の部分の間にある第2主面10bの面積の合計を第2主面10bの総面積で除した値である。
【0043】
第1接続ランド30及び第2接続ランド40は、第2主面10b上に配置されている。第1接続ランド30は、貫通穴10dの内壁面上に配置されている第2層23b、第1電解めっき層24及び第2電解めっき層25により、ランド21aに電気的に接続されている。なお、第1接続ランド30は、貫通穴10d内に第1電解めっき層24及び第2電解めっき層25が充填されていることにより、ランド21aに電気的に接続されていてもよい。
【0044】
第2接続ランド40は、第2コイル配線22の他方端に接続されている。このように、第1接続ランド30及び第2接続ランド40は、それぞれ、コイル配線20の一方端及び他方端に電気的に接続されている。
【0045】
プリント配線板100は、第1接続ランド30及び第2接続ランド40において、外部装置に電気的に接続される。これにより、コイル配線20が通電され、第1コイル及び第2コイルが磁場を発生される。なお、第1接続ランド30及び第2接続ランド40は、コイル配線20と同様に、シード層23、第1電解めっき層24及び第2電解めっき層25により構成されている。
【0046】
プリント配線板100は、例えば、磁石110とともにアクチュエータを構成する。図6は、プリント配線板100を用いたアクチュエータの模式図である。図6に示されるように、プリント配線板100は、好ましくは、第1主面10aが磁石110と対向するように配置される。
【0047】
(実施形態に係るプリント配線板の製造方法)
以下に、プリント配線板100の製造方法を説明する。
【0048】
プリント配線板100は、例えばセミアディティブ工法を用いて製造される。図7は、プリント配線板100の製造方法を示す工程図である。図7に示されているように、プリント配線板100の製造方法は、準備工程S1と、シード層形成工程S2と、レジスト形成工程S3と、第1電解めっき工程S4と、レジスト除去工程S5と、エッチング工程S6と、第2電解めっき工程S7とを有している。
【0049】
準備工程S1では、ベースフィルム10が準備される。準備工程S1において準備されるベースフィルムの主面上には、コイル配線20が形成されていない。
【0050】
図8は、シード層形成工程S2を説明する断面図である。シード層形成工程S2では、シード層23が形成される。シード層形成工程S2では、第1に、第1層23aが、例えばスパッタリングにより形成される。シード層形成工程S2では、第2に、第2層23bが、例えば無電解めっきにより形成される。
【0051】
図示されていないが、第1層23aが形成された後であって第2層23bが形成される前には、貫通穴10c及び貫通穴10dが形成される。貫通穴10c及び貫通穴10dの形成は、例えば、レーザ又はドリルを用いて行われる。そのため、貫通穴10c及び貫通穴10dの内壁面上には、第2層23bが形成されることになる。
【0052】
図9は、レジスト形成工程S3を説明する断面図である。図9に示されるように、レジスト形成工程S3では、シード層23上にレジスト50が形成される。レジスト50は、感光性の有機材料を塗布するとともに、塗布された感光性の有機材料を露光及び現像してパターンニングすることにより形成される。レジスト50は、シード層23上にドライフィルムレジストを貼付するとともに、貼付されたドライフィルムレジストを露光及び現像してパターンニングすることにより形成されてもよい。レジスト50は、開口を有している。レジスト50の開口からは、シード層23が露出している。
【0053】
図10は、第1電解めっき工程S4を説明する断面図である。図10に示されているように、第1電解めっき工程S4では、第1電解めっき層24が形成される。第1電解めっき工程S4では、めっき液中においてシード層23に通電を行うことにより、レジスト50の開口から露出しているシード層23上に第1電解めっき層24が成長する。図示されていないが、この際には、貫通穴10c及び貫通穴10d上にある第2層23b上にも、第1電解めっき層24が成長する。
【0054】
図11は、レジスト除去工程S5を説明する断面図である。図11に示されるように、レジスト除去工程S5では、レジスト50が除去される。レジスト50の除去後には、隣り合う第1電解めっき層24の間から、シード層23が露出している。
【0055】
図12は、エッチング工程S6を説明する断面図である。図12に示されるように、エッチング工程S6では、隣り合う第1電解めっき層24の間から露出しているシード層23が、エッチングにより除去される。
【0056】
エッチング工程S6では、第1に、第2層23bに対するエッチングが行われる。第2層23bに対するエッチングは、隣り合う第1電解めっき層24の間にエッチング液を供給することにより行われる。エッチング液は、エッチング液中の反応種のエッチング対象近傍への拡散ではなくエッチング液中の反応種とエッチング対象との反応によりエッチングが律速されるように選択される。
【0057】
より具体的には、エッチング液には、第2層23bを構成している材料(すなわち銅)に対する溶解反応速度が1.0μm/分以下となるエッチング液が用いられる。上記のエッチング液の具体例としては、硫酸過酸化水素水溶液又はペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液が挙げられる。なお、上記のエッチング液の溶解反応速度は、エッチング後に減少した銅の重量及びエッチング時間に基づいて測定される。
【0058】
エッチング工程S6では、第2に、第1層23aに対するエッチングが行われる。第1層23aのエッチングが行われる際には、エッチング液の切り換えが行われる。切り換え後のエッチング液には、第1層23aを構成している材料(すなわち、ニッケル-クロム合金)に対する選択比が高いエッチング液が用いられる。そのため、エッチング液の切り換え後には、第1電解めっき層24に対するエッチングは進行しにくい。
【0059】
第2電解めっき工程S7では、第2電解めっき層25が形成される。第2電解めっき工程S7では、めっき液中においてシード層23及び第1電解めっき層24に通電を行うことにより、シード層23及び第1電解めっき層24を覆うように第2電解めっき層25が成長する。図示されていないが、この際には、貫通穴10c及び貫通穴10d上にある第1電解めっき層24上にも、第2電解めっき層25が成長する。以上により、図1から図5に示される構造のプリント配線板100が製造される。
【0060】
(実施形態に係るプリント配線板の効果)
以下に、プリント配線板100の効果を説明する。
【0061】
コイル配線20に通電を行うためには、コイル配線20に第1接続ランド30及び第2接続ランド40が電気的に接続されている必要がある。第1接続ランド30及び第2接続ランド40を配置する方法としては、プリント配線板100とは別のプリント配線板に第1接続ランド30及び第2接続ランド40を配置することが考えられる。しかしながら、この場合には、コイル装置を構成するためにプリント配線板100とは別のプリント配線板が必要となり、コイル装置の厚さが増大してしまうことになる。
【0062】
プリント配線板100では、第1接続ランド30及び第2接続ランド40が第2主面10b上に配置されているため、コイル装置を構成するためにプリント配線板100とは別のプリント配線板が不要となる。そのため、コイル装置をプリント配線板100のみで構成可能となり、コイル装置の薄型化が可能となる。
【0063】
プリント配線板100では、第1接続ランド30及び第2接続ランド40が第2主面10b上に配置されるため、第2コイル配線22の巻き数が第1コイル配線21の巻き数よりも小さくなる(第2コイル配線22が第1コイル配線21よりも短くなる、第2コイル配線22の面積割合が第1コイル配線21の面積割合よりも小さくなる)。
【0064】
しかしながら、後述するように、プリント配線板100では、第1主面10aが磁石110と対向するように配置されることにより、第2コイル配線22の巻き数(長さ、面積割合)の減少にもかかわらず、アクチュエータに用いる際の推力を維持することが可能である。
【0065】
従来、シード層を構成している材料に対する溶解反応速度が大きいエッチング液(すなわち、エッチング液中の反応種のエッチング対象近傍への拡散がエッチングを律速するエッチング液)が用いられていた。隣り合うコイル配線の部分の間の距離を短くすると、エッチング液が隣り合うコイル配線20の部分の間に供給されにくくなる。その結果、上記のようなエッチング液を用いる場合、シード層に対するエッチングのばらつきが大きくなり、確実なシード層の除去を行うためにエッチング量が増加する。以上のような原因により、従来は隣り合うコイル配線の部分の間の距離を短くすることができなかった。
【0066】
プリント配線板100では、エッチング工程S6において第2層23bを構成している材料に対する溶解反応速度が低いエッチング液が用いられる。その結果、エッチング工程S6のエッチングがエッチング液中の反応種とエッチング対象との反応により律速されるようになり、隣り合う第1電解めっき層24の間にエッチング液が供給されにくくても、第2層23bのエッチングにばらつきが生じにくい。
【0067】
そのため、プリント配線板100によると、隣り合うコイル配線20の部分の間の距離を短くすることができ、第1コイル配線21及び第2コイル配線22の巻き数(長さ、面積割合)を増加させることができる。その結果、プリント配線板100によると、コイル装置を薄型化しつつ、アクチュエータに用いる際の推力を維持することが可能である。
【0068】
<シミュレーション>
プリント配線板100の効果を確認するため、シミュレーションを行った。シミュレーションでは、第1コイル配線21の巻き数及び第2コイル配線22の巻き数の和が同一となるように第1コイル配線21の巻き数及び第2コイル配線22の巻き数が変化させながら、プリント配線板100が磁石110に対して発生させる推力を算出した。
【0069】
【表1】
【0070】
シミュレーションには、プリント配線板100のサンプルとして、サンプル1からサンプル5が供された。サンプル1では、第1コイル配線21の巻き数及び第2コイル配線22の巻き数が等しくされた。他方で、サンプル2からサンプル5では、第1コイル配線21の巻き数が第2コイル配線22の巻き数よりも大きくされた。サンプル1からサンプル5は、第1主面10aが磁石110と対向するように配置された。また、各々のサンプルでは、ベースフィルム10の厚さとして、2種類の厚さが適用された。
【0071】
サンプル1からサンプル5では、幅Wが25μmで一定とされた。サンプル2からサンプル5では、第1コイル配線21の巻き数を増加させることができるように、間隔SPを順次減少させた。
【0072】
サンプル2からサンプル5では、第1コイル配線21の巻き数及び第2コイル配線22の巻き数の和が同一であるにもかかわらずサンプル1よりも磁石110に対して発生させる推力が大きくなっていた。この比較から、第1コイル配線21の巻き数を第2コイル配線22の巻き数よりも大きくし、かつ第1主面10aが磁石110に対向するように配置することにより、アクチュエータに用いる際の推力を維持できることが明らかにされた。
【0073】
サンプル2からサンプル5では、第1コイル配線21の巻き数を第2コイル配線22の巻き数で除した値が大きくなるにつれて、磁石110に対して発生させる推力が大きくなっていた。このことから、第1コイル配線21の巻き数を第2コイル配線22の巻き数で除した値を大きくすることによりアクチュエータに用いる際の推力がさらに改善されることが明らかになった。
【0074】
サンプル2からサンプル5では、ベースフィルム10の厚さが小さい場合に、ベースフィルム10の厚さが大きい場合と比較して、磁石110に対して発生させる推力が大きくなっていた。このことから、ベースフィルム10の厚さを小さくすることによりアクチュエータに用いる際の推力がさらに改善されることが明らかになった。
【0075】
(付記)
本開示に係るプリント配線板の構成を、以下に付記する。
【0076】
<付記1>
主面を有するベースフィルムと、
前記主面上に形成されているコイル配線と、
前記コイル配線の一方端及び他方端に接続されている第1接続ランド及び第2接続ランドとを備え、
前記主面は、第1主面と、前記第1主面の反対面である第2主面とを有し、
前記コイル配線は、前記第1主面上に渦巻状に形成されている第1コイル配線と、前記第2主面上に渦巻状に形成されており、かつ前記第1コイル配線に電気的に接続されている第2コイル配線とを有し、
前記第1接続ランド及び前記第2接続ランドは、前記第2主面上に形成されており、
前記第1コイル配線は、前記第2コイル配線よりも長い、プリント配線板。
【0077】
付記1に係るプリント配線板によると、コイル配線の長さを調整することにより第1接続ランド及び第2接続ランドを第2主面上に形成することができるため、コイル装置の厚さを小さくすることができる。
【0078】
<付記2>
前記第1コイル配線の長さは、前記第2コイル配線の長さの1.1倍以上3.0倍以下である、付記1に記載のプリント配線板。
【0079】
<付記3>
主面を有するベースフィルムと、
前記主面上に形成されているコイル配線と、
前記コイル配線の一方端及び他方端に接続されている第1接続ランド及び第2接続ランドとを備え、
前記主面は、第1主面と、前記第1主面の反対面である第2主面とを有し、
前記コイル配線は、前記第1主面上に渦巻状に形成されている第1コイル配線と、前記第2主面上に渦巻状に形成されており、かつ前記第1コイル配線に電気的に接続されている第2コイル配線とを有し、
前記第1接続ランド及び前記第2接続ランドは、前記第2主面上に形成されており、
前記第1コイル配線の面積率は、前記第2コイル配線の面積率よりも大きい、プリント配線板。
【0080】
付記3に係るプリント配線板によると、コイル配線の面積率を調整することにより第1接続ランド及び第2接続ランドを第2主面上に形成することができるため、コイル装置の厚さを小さくすることができる。
【0081】
<付記4>
前記第1コイル配線の面積率は、前記第2コイル配線の面積率の1.1倍以上2.5倍以下である、付記3に記載のプリント配線板。
【0082】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記の実施形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全て変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0083】
10 ベースフィルム、10a 第1主面、10b 第2主面、10c 貫通穴、10d 貫通穴、20 コイル配線、21 第1コイル配線、21a ランド、21b ランド、22 第2コイル配線、22a ランド、23 シード層、23a 第1層、23b 第2層、24 第1電解めっき層、25 第2電解めっき層、30 第1接続ランド、40 第2接続ランド、50 レジスト、100 プリント配線板、110 磁石、S1 準備工程、S2 シード層形成工程、S3 レジスト形成工程、S4 第1電解めっき工程、S5 レジスト除去工程、S6 エッチング工程、S7 第2電解めっき工程、SP 間隔、W 幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図11
図12