(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】サーバ装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G08G 3/00 20060101AFI20250204BHJP
【FI】
G08G3/00 A
(21)【出願番号】P 2023546675
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2021033333
(87)【国際公開番号】W WO2023037502
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2024-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正浩
(72)【発明者】
【氏名】松本 令司
【審査官】宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-159506(JP,A)
【文献】特開2021-076567(JP,A)
【文献】特開2001-215119(JP,A)
【文献】特許第6132961(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第111831966(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川での水位予測地点ごとの予測水位を表す予測水位情報を記憶する予測水位情報記憶手段と、
複数の船舶から、
前記予測水位と当該予測水位に対応する前記水位予測地点で当該船舶が計測した計測水位
との差分値と、当該差分値のばらつきを表す指標と、を含む計測水位情報を受信する受信手段と、
前記指標を重み付け値として、前記差分値の重み付き平均値を算出し、当該重み付き平均値に基づき前記予測水位情報を更新する更新手段と、
更新された前記予測水位情報を配信する配信手段と、
を有するサーバ装置。
【請求項2】
前記更新手段は、前記水位予測地点ごとに収集した前記差分値
の前記重み付き平均値に基づき、当該水位予測地点における前記予測水位を更新する、請求項
1に記載のサーバ装置。
【請求項3】
前記予測水位情報は、前記水位予測地点での複数の時刻に対応する前記予測水位を表し、
前記更新手段は、現在時刻より後の時刻に対応する前記予測水位を更新する、請求項1
または2に記載のサーバ装置。
【請求項4】
前記複数の船舶の各々は、前記船舶に設けられた計測装置が出力する計測データに基づき前記水位予測地点での前記計測水位を算出し、
前記受信手段は、前記水位予測地点での前記計測水位に関する前記計測水位情報を受信する、請求項1~
3のいずれか一項に記載のサーバ装置。
【請求項5】
河川での水位予測地点ごとの予測水位を表す予測水位情報を記憶する記憶装置を参照するコンピュータが実行する制御方法であって、
複数の船舶から、
前記予測水位と当該予測水位に対応する前記水位予測地点で当該船舶が計測した計測水位
との差分値と、当該差分値のばらつきを表す指標と、を含む計測水位情報を受信し、
前記指標を重み付け値として、前記差分値の重み付き平均値を算出し、当該重み付き平均値に基づき前記予測水位情報を更新し、
更新された前記予測水位情報を配信する、
制御方法。
【請求項6】
河川での水位予測地点ごとの予測水位を表す予測水位情報を記憶する記憶装置を参照するコンピュータが実行するプログラムであって、
複数の船舶から、
前記予測水位と当該予測水位に対応する前記水位予測地点で当該船舶が計測した計測水位
との差分値と、当該差分値のばらつきを表す指標と、を含む計測水位情報を受信し、
前記指標を重み付け値として、前記差分値の重み付き平均値を算出し、当該重み付き平均値に基づき前記予測水位情報を更新し、
更新された前記予測水位情報を配信する処理を前記コンピュータに実行させるプログラム。
【請求項7】
請求項
6に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、河川の水位情報の管理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザスキャナなどの計測装置を用いて計測した周辺物体の形状データを、予め周辺物体の形状が記憶された地図情報と照合(マッチング)することで、移動体の自己位置を推定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、空間を所定の規則で分割したボクセル中における検出物が静止物か移動物かを判定し、静止物が存在するボクセルを対象として地図情報と計測データとのマッチングを行う自律移動システムが開示されている。また、特許文献2には、ボクセル毎の静止物体の平均ベクトルと共分散行列とを含むボクセルデータとライダが出力する点群データとの照合により自己位置推定を行うスキャンマッチング手法が開示されている。さらに、特許文献3には、船舶の自動着岸を行う自動着岸装置において、ライダから照射される光が着岸位置の周囲の物体に反射してライダにより受光できるように、船舶の姿勢を変化させる制御を行う手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開WO2013/076829
【文献】国際公開WO2018/221453
【文献】特開2020-59403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
橋梁を船舶が安全に通過できる運航ルートを決定するには、河川の地点ごとの正確な水位の予測情報(予測水位情報)が必要となる。この場合、予測水位情報を提供するサーバ装置は、河川の実際の状況に合わせて予測水位情報を適宜更新する必要がある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、高精度な予測水位情報を好適に配信することが可能なサーバ装置を提供することを主な目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、
河川での水位予測地点ごとの予測水位を表す予測水位情報を記憶する予測水位情報記憶手段と、
複数の船舶から、前記予測水位と当該予測水位に対応する前記水位予測地点で当該船舶が計測した計測水位との差分値と、当該差分値のばらつきを表す指標と、を含む計測水位情報を受信する受信手段と、
前記指標を重み付け値として、前記差分値の重み付き平均値を算出し、当該重み付き平均値に基づき前記予測水位情報を更新する更新手段と、
更新された前記予測水位情報を配信する配信手段と、
を有するサーバ装置である。
【0007】
また、請求項に記載の発明は、
河川での水位予測地点ごとの予測水位を表す予測水位情報を記憶する記憶装置を参照するコンピュータが実行する制御方法であって、
複数の船舶から、前記予測水位と当該予測水位に対応する前記水位予測地点で当該船舶が計測した計測水位との差分値と、当該差分値のばらつきを表す指標と、を含む計測水位情報を受信し、
前記指標を重み付け値として、前記差分値の重み付き平均値を算出し、当該重み付き平均値に基づき前記予測水位情報を更新し、
更新された前記予測水位情報を配信する、
制御方法である。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、
河川での水位予測地点ごとの予測水位を表す予測水位情報を記憶する記憶装置を参照するコンピュータが実行するプログラムであって、
複数の船舶から、前記予測水位と当該予測水位に対応する前記水位予測地点で当該船舶が計測した計測水位との差分値と、当該差分値のばらつきを表す指標と、を含む計測水位情報を受信し、
前記指標を重み付け値として、前記差分値の重み付き平均値を算出し、当該重み付き平均値に基づき前記予測水位情報を更新し、
更新された前記予測水位情報を配信する処理を前記コンピュータに実行させるプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】運航支援システムに含まれる船舶及びライダの視野範囲を例示した図である。
【
図3】(A)情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。(B)サーバ装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】船舶の出発地及び目的地と河川に存在する橋梁とを明示した地図である。
【
図5】ある候補ルート上に存在する橋梁の周辺を表す俯瞰図である。
【
図6】(A)水位予測地点での予測水位の推移を表すグラフを表す。(B)水位予測地点での予測水位の推移を表すグラフと、橋梁通過地点での橋梁予測水位の推移を表すグラフとを表す。
【
図7】船舶が橋梁通過地点に存在すると仮定した場合に船舶を後方から観察した図である。
【
図8】候補ルート上に存在する各橋梁の通過予定時刻、橋梁予測水位及び予測間隔を関連付けたテーブルを示す。
【
図9】運航ルート決定処理に関するコントローラの機能ブロックの一例である。
【
図10】運航ルート決定処理のフローチャートの一例である。
【
図11】第2実施例に係る情報処理装置のブロック図である。
【
図12】運航ルート上に存在する橋梁の周辺を表す俯瞰図である。
【
図13】登録地物がライダの計測範囲内に存在する場合において船舶を後方から観察した図である。
【
図14】(A)船舶が存在する地点での予測水位と計測水位との時間変化を表す。(B)直前の所定期間内において算出した複数の水位差分値の度数分布の一例である。
【
図15】船舶が未通過の運航ルート上に存在する各橋梁の通過予定時刻、橋梁補正水位及び予測間隔を関連付けたテーブルを示す。
【
図16】第2実施例における水位補正情報の生成に関する予測水位補正部の機能ブロックの一例である。
【
図17】第2実施例における水位補正情報の生成処理の手順を示すフローチャートの一例である。
【
図18】第3実施例に係る情報処理装置のブロック図である。
【
図19】船舶の位置を3次元直交座標で表した図である。
【
図20】ボクセルデータの概略的なデータ構造の一例を示す。
【
図21】自己位置推定部の機能ブロック図の一例である。
【
図23】(A)船舶が存在する地点での予測水位と計測水位との時間変化を表す。(B)直前の所定期間内において算出した複数の水位差分値の度数分布の一例である。
【
図24】第3実施例における水位補正情報の生成に関する予測水位補正部の機能ブロックの一例である。
【
図25】第3実施例における水位補正情報の生成処理の手順を示すフローチャートの一例である。
【
図26】第4実施例に係る運航支援システムの概略構成である。
【
図27】第4実施例に係るサーバ装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図28】(A)予測水位データベースのデータ構造の一例である。(B)計測水位情報のデータ構造の一例である。
【
図29】第4実施例に係るサーバ装置のコントローラの機能ブロックの一例である。
【
図30】(A)第3実施例に係る情報処理装置が実行するフローチャートの一例である。(B)第3実施例に係るサーバ装置が実行するフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、サーバ装置は、河川での水位予測地点ごとの予測水位を表す予測水位情報を記憶する予測水位情報記憶手段と、複数の船舶から、当該船舶が計測した計測水位に関する計測水位情報を受信する受信手段と、前記計測水位情報に基づき、前記予測水位情報を更新する更新手段と、更新された前記予測水位情報を配信する配信手段と、を有する。この態様によれば、サーバ装置は、複数の船舶から供給される計測水位情報に基づき予測水位情報を更新し、高精度な予測水位を表す予測水位情報を配信することができる。
【0011】
上記サーバ装置の一態様では、前記計測水位情報には、前記予測水位と、当該予測水位に対応する前記水位予測地点での前記計測水位との差分値が少なくとも含まれ、前記更新手段は、前記差分値に基づき、前記予測水位情報を更新する。この態様により、サーバ装置は、複数の船舶から供給される予測水位と計測水位との差分値に基づき予測水位情報を的確に補正することができる。
【0012】
上記サーバ装置の一態様では、前記計測水位情報には、当該予測水位に対応する前記水位予測地点での前記計測水位との差分の標準偏差が更に含まれ、前記更新手段は、前記標準偏差を重み付け値として、前記差分値の重み付き平均値を算出して、前記予測水位情報を更新する。この態様により、サーバ装置は、複数の船舶から供給される予測水位と計測水位との差分値と差分値の標準偏差に基づき予測水位情報を的確に補正することができる。
【0013】
上記サーバ装置の他の一態様では、前記受信手段は、前記計測水位が少なくとも含まれる前記計測水位情報を受信し、前記更新手段は、前記予測水位と、当該予測水位に対応する前記水位予測地点での前記計測水位との差分値を算出し、前記差分値に基づき、前記予測水位情報を更新する。この態様により、サーバ装置は、複数の船舶から供給される計測水位に基づき予測水位と計測水位との差分値を算出し、予測水位情報を的確に補正することができる。
【0014】
上記サーバ装置の他の一態様では、前記予測水位情報は、前記水位予測地点での複数の時刻に対応する前記予測水位を表し、前記更新手段は、前記計測水位情報に基づき、現在時刻より後の時刻に対応する前記予測水位を更新する。この態様により、サーバ装置は、未経過の時刻での予測水位を表す予測水位情報を的確に補正することができる。
【0015】
上記サーバ装置の他の一態様では、前記複数の船舶の各々は、前記船舶に設けられた計測装置が出力する計測データに基づき前記水位予測地点での前記計測水位を算出し、前記受信手段は、前記水位予測地点での前記計測水位に関する前記計測水位情報を受信する。この態様により、サーバ装置は、予測水位情報の更新に必要な情報を好適に取得することができる。
【0016】
本発明の他の好適な実施形態によれば、河川での水位予測地点ごとの予測水位を表す予測水位情報を記憶する記憶装置を参照するコンピュータが実行する制御方法であって、複数の船舶から、当該船舶が計測した計測水位に関する計測水位情報を受信し、前記計測水位情報に基づき、前記予測水位情報を更新し、更新された前記予測水位情報を配信する。コンピュータは、この制御方法を実行することで、複数の船舶から供給される計測水位情報に基づき予測水位情報を更新し、高精度な予測水位を表す予測水位情報を配信することができる。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態によれば、河川での水位予測地点ごとの予測水位を表す予測水位情報を記憶する記憶装置を参照するコンピュータが実行するプログラムであって、複数の船舶から、当該船舶が計測した計測水位に関する計測水位情報を受信し、前記計測水位情報に基づき、前記予測水位情報を更新し、更新された前記予測水位情報を配信する処理を前記コンピュータに実行させる。コンピュータは、このプログラムを実行することで、複数の船舶から供給される計測水位情報に基づき予測水位情報を更新し、高精度な予測水位を表す予測水位情報を配信することができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な各実施例について説明する。
【0019】
<第1実施例>
(1-1)
運航支援システムの概要
図1及び
図2は、第1実施例に係る運航支援システムの概略構成である。具体的には、
図1は、運航支援システムのブロック構成図を示し、
図2(A)は、運航支援システムに含まれる船舶及び後述のライダ3の視野範囲(測距可能範囲)90を例示した上面図であり、
図2(B)は、船舶及びライダ3の視野範囲90を後ろから示した図である。運航支援システムは、移動体である船舶と共に移動する情報処理装置1と、当該船舶に搭載されたセンサ群2と、サーバ装置7と、を有する。
【0020】
情報処理装置1は、センサ群2と電気的に接続し、センサ群2に含まれる各種センサの出力と、サーバ装置7から送信される後述の予測水位情報「D1」とに基づき、情報処理装置1が設けられた船舶の運航支援を行う。本実施例では、情報処理装置1は、船舶の橋梁下の通過可否を事前に的確に判定することにより、船舶の運航ルートを決定する。なお、運航支援には、自動接岸(着岸)などの接岸支援が含まれてもよい。情報処理装置1は、船舶に設けられたナビゲーション装置であってもよく、船舶に内蔵された電子制御装置であってもよい。
【0021】
センサ群2は、船舶に設けられた種々の外界センサ及び内界センサを含んでいる。本実施例では、センサ群2は、例えば、ライダ(Lidar:Light Detection and Ranging、または、Laser Illuminated Detection And Ranging)3と、GPS(Global Positioning Satellite)受信機5とを含んでいる。なお、センサ群2は、GPS受信機5に代えて、GPS以外のGNSSの測位結果を生成する受信機を有してもよい。情報処理装置1は、後述する河川地図データベースを参照する際に必要な船舶の水面上の位置を、GPS受信機5などから取得する。
【0022】
ライダ3は、水平方向の所定の角度範囲(
図2(A)参照)および垂直方向(即ち仰俯角の方向)の所定の角度範囲(
図2(B)参照)に対してパルスレーザを出射することで、外界に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の位置を示す3次元の点群データを生成する外界センサである。
図2(A)及び
図2(B)の例では、ライダ3として、船舶の左側面方向に向けられたライダと、船舶の右側面方向に向けられたライダとが夫々船舶に設けられている。なお、ライダ3の船舶への設置個数は2個に限らず、1個であってもよく、3個以上であってもよい。ライダ3は、照射方向を変えながらレーザ光を照射する照射部と、照射したレーザ光の反射光(散乱光)を受光する受光部と、受光部が出力する受光信号に基づくスキャンデータを出力する出力部とを有する。レーザ光を照射する方向(走査位置)ごとに計測されるデータは、受光部が受光したレーザ光に対応する照射方向と、上述の受光信号に基づき特定される当該レーザ光の応答遅延時間とに基づき生成される。なお、ライダ3は、上述したスキャン型のライダに限らず、2次元アレイ状のセンサの視野にレーザ光を拡散照射することによって3次元データを生成するフラッシュ型のライダであってもよい。ライダ3は、本発明における「計測装置」の一例である。
【0023】
また、本実施例では、ライダ3が計測する垂直方向の範囲は、少なくとも、水平方向より上方(即ち仰角が正となる方向)と、水平方向より下方(即ち俯角が正となる方向)とを含む範囲となっている。これにより、ライダ3の計測範囲には、船舶が橋梁を通過する際の橋梁と船舶が浮かぶ水面との両方が含まれる。なお、ライダ3が複数存在する場合には、少なくとも1つのライダ3の計測範囲が水平方向より上方を含み、少なくとも1つのライダ3の計測範囲が水平方向より下方を含んでいればよい。
【0024】
サーバ装置7は、河川上の複数の地点における所定時間先の水位として予測された水位(「予測水位」とも呼ぶ。)を表す予測水位情報D1を情報処理装置1に送信する。以後では、予測水位が算出される各地点を「水位予測地点」とも呼ぶ。サーバ装置7は、例えば、情報処理装置1から情報処理装置1の現在位置を含む要求情報を受信した場合に、当該現在位置から所定距離以内に存在する水位予測地点での予測水位を表す予測水位情報D1を情報処理装置1に送信する。他の例では、サーバ装置7は、情報処理装置1が運航中又は運航予定の河川を指定する情報を情報処理装置1から受信した場合に、指定された河川上の水位予測地点の予測水位情報D1を情報処理装置1に送信する。なお、水位(水面高さ)は、河川の場所によって異なり、かつ、水位の時間変化についても、河川の場所によって位相が異なる。
【0025】
(1-2)
装置構成
図3(A)は、情報処理装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置1は、主に、インターフェース11と、メモリ12と、コントローラ13と、を有する。これらの各要素は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0026】
インターフェース11は、情報処理装置1と外部装置とのデータの授受に関するインターフェース動作を行う。本実施例では、インターフェース11は、ライダ3及びGPS受信機5などのセンサ群2の各センサから出力データを取得し、取得したデータをコントローラ13へ供給する。また、インターフェース11は、サーバ装置7から予測水位情報D1を受信し、予測水位情報D1をコントローラ13に供給する。また、インターフェース11は、例えば、コントローラ13が生成した船舶の制御に関する信号を、船舶の運転を制御する船舶の各構成要素に供給する。例えば、船舶は、エンジンや電気モータなどの駆動源と、駆動源の駆動力に基づき進行方向の推進力を生成するスクリューと、駆動源の駆動力に基づき横方向の推進力を生成するスラスターと、船舶の進行方向を自在に定めるための機構である舵等とを備える。そして、自動着岸などの自動運転時には、インターフェース11は、コントローラ13が生成した制御信号を、これらの各構成要素に供給する。なお、船舶に電子制御装置が設けられている場合には、インターフェース11は、当該電子制御装置に対し、コントローラ13が生成した制御信号を供給する。インターフェース11は、無線通信を行うためのネットワークアダプタなどのワイヤレスインターフェースであってもよく、ケーブル等により外部装置と接続するためのハードウェアインターフェースであってもよい。また、インターフェース11は、入力装置、表示装置、音出力装置等の種々の周辺装置とのインターフェース動作を行ってもよい。
【0027】
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどの各種の揮発性メモリ及び不揮発性メモリにより構成される。メモリ12は、コントローラ13が所定の処理を実行するためのプログラムが記憶される。なお、コントローラ13が実行するプログラムは、メモリ12以外の記憶媒体に記憶されてもよい。
【0028】
また、メモリ12は、河川地図データベース(DB:DataBase)10と、最高点情報IHとを記憶する。
【0029】
河川地
図DB10は、河川上又は河川付近に存在する地物(ランドマーク)に関するデータである地物データを記憶する。上述の地物には、少なくとも、船舶が通行可能な河川に設けられた橋梁が含まれる。地物データには、地物が設けられた位置を示す位置情報、及び、地物の種類、サイズなどの種々の属性を表す属性情報が含まれている。なお、橋梁に対応する地物データの属性情報には、少なくとも、橋梁の桁下(言い換えると、河川上における橋梁の底面)の高さ(例えば標高)に関する情報が含まれている。
【0030】
なお、河川地
図DB10には、地物データの他、例えば、着岸場所(岸、桟橋を含む)に関する情報、船舶が移動可能な水路に関する情報などがさらに含まれてもよい。また、河川地
図DB10は、インターフェース11を介して情報処理装置1と接続されたハードディスクなどの情報処理装置1の外部の記憶装置に記憶されてもよい。上記の記憶装置は、情報処理装置1と通信を行うサーバ装置であってもよい。また、上記の記憶装置は、複数の装置から構成されてもよい。また、河川地
図DB10は、定期的に更新されてもよい。この場合、例えば、コントローラ13は、インターフェース11を介し、地図情報を管理するサーバ装置から、自己位置が属するエリアに関する部分地図情報を受信し、河川地
図DB10に反映させる。
【0031】
最高点情報IHは、船舶を基準とした座標系である船舶座標系において最も高い位置に存在する船舶の部位(最高点)の高さに関する情報である。例えば、最高点情報IHは、船舶の基準位置(「船舶基準位置」とも呼ぶ。)から最高点までの高さ(高さ方向の距離)を表す。船舶基準位置は、言い換えると、ライダ3が出力する点群データにおいて採用される座標系における原点であり、例えばライダ3の設置位置に相当する。最高点情報IHは、事前の計測結果に基づき生成され、メモリ12に予め記憶されている。
【0032】
また、メモリ12には、河川地
図DB10の他、本実施例において情報処理装置1が実行する処理に必要な情報が記憶される。例えば、メモリ12には、ライダ3が1周期分の走査を行った場合に得られる点群データに対してダウンサンプリングを行う場合のダウンサンプリングのサイズの設定に用いられる情報が記憶される。他の例では、メモリ12には、船舶が通行すべき運航ルートの候補ルートに関する情報が記憶されている。
【0033】
コントローラ13は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、TPU(Tensor
Processing Unit)などの1又は複数のプロセッサを含み、情報処理装置1の全体を制御する。この場合、コントローラ13は、メモリ12等に記憶されたプログラムを実行することで、運航支援等に関する処理を行う。
【0034】
また、コントローラ13は、機能的には、候補ルート取得部15と、候補ルート適性判定部16と、運航ルート決定部17と、を有する。
【0035】
候補ルート取得部15は、船舶の運航ルートの候補となる1又は複数のルート(「候補ルート」とも呼ぶ。)を取得する。この場合、候補ルート取得部15は、候補ルートをルート探索処理に基づき生成してもよく、決定された候補ルートを表す情報をメモリ12から又はインターフェース11を介して他の装置から取得してもよい。候補ルートを生成する場合、例えば、候補ルート取得部15は、インターフェース11を介して入力装置から供給される入力データにより指定された出発地(現在位置であってもよい)と目的地との組に基づき、出発地から目的地までの河川上のルートを候補ルートとして探索する。この場合、候補ルート取得部15は、任意のルート探索手法に基づき、河川地
図DB10を参照して候補ルートを探索する。なお、候補ルートの生成処理では、ルート上に存在する橋梁下を船舶が通過できるか否かについての判定は行われていない。即ち、生成された各候補ルートは、ルート上に存在する橋梁下を船舶が通過できることが保証されていない。
【0036】
候補ルート適性判定部16は、サーバ装置7から受信した予測水位情報D1と、ライダ3が生成する点群データと、河川地
図DB10と、最高点情報IHとに基づき、候補ルート取得部15が取得した候補ルート上に設けられた各橋梁について、橋梁下を船舶が通過できるか否かの判定(「橋梁通過可否判定」とも呼ぶ。)を行う。橋梁通過可否判定の詳細については後述する。
【0037】
運航ルート決定部17は、候補ルート適性判定部16による橋梁通過可否判定の結果に基づき、運航ルートを決定する。この場合、運航ルート決定部17は、ルート上の全ての橋梁を船舶が通過可能であると判定された候補ルートを、運航ルートとして適性を有する候補ルート(「有適性候補ルート」とも呼ぶ。)として認識し、認識した有適性候補ルートから船舶が運航すべき運航ルートを決定する。ここで、有適性候補ルートが複数存在する場合、運航ルート決定部17は、所要時間が最も短い有適性候補ルートを運航ルートとして選択してもよく、インターフェース11を介して表示部に有適性候補ルートを選択可能に表示させ(即ち有適性候補ルートの選択画面を表示部に表示し)、表示された有適性候補ルートから入力部により選択された有適性候補ルートを運航ルートとして決定してもよい。
【0038】
そして、第1実施例におけるコントローラ13は、「予測水位情報取得手段」、「候補ルート取得手段」、「橋梁予測水位算出手段」、「船舶最高点高算出手段」、「判定手段」、「運航ルート決定手段」及びプログラムを実行するコンピュータ等として機能する。
【0039】
図3(B)は、サーバ装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。サーバ装置は、主に、インターフェース71と、メモリ72と、コントローラ73と、を有する。これらの各要素は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0040】
インターフェース71は、サーバ装置と外部装置とのデータの授受に関するインターフェース動作を行う。本実施例では、インターフェース71は、コントローラ73の制御に基づき、予測水位情報D1を情報処理装置1に送信する処理を行う。この場合、インターフェース71は、無線通信を行うためのネットワークアダプタなどのワイヤレスインターフェースであってもよく、ケーブル等により外部装置と接続するためのハードウェアインターフェースであってもよい。また、インターフェース71は、入力装置、表示装置、音出力装置等の種々の周辺装置とのインターフェース動作を行ってもよい。
【0041】
メモリ72は、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどの各種の揮発性メモリ及び不揮発性メモリにより構成される。メモリ72は、コントローラ73が所定の処理を実行するためのプログラムが記憶される。なお、コントローラ73が実行するプログラムは、メモリ72以外の記憶媒体に記憶されてもよい。
【0042】
また、メモリ72は、予測水位DB70を記憶している。予測水位DB70は、河川上の各水位予測地点での予測水位を記録したデータベースである。この場合、例えば、予測水位DB70では、水位予測地点ごとに、水位予測地点の位置情報と、所定時間間隔に従い定められた時刻(日時)ごとの予測水位とが関連付けられている。なお、予測水位は、水位予測地点に設けられた水位計の過去の計測結果及び水位を予測する時刻までの天候や気圧などを総合的に勘案して決定されている。なお、予測水位DB70は、インターフェース71を介してサーバ装置7と接続されたハードディスクなどのサーバ装置7の外部の記憶装置に記憶されてもよい。上記の記憶装置は、サーバ装置7と通信を行う他のサーバ装置であってもよい。また、上記の記憶装置は、複数の装置から構成されてもよい。また、予測水位DB70は、定期的に更新されてもよい。
【0043】
コントローラ73は、CPU、GPU、TPUなどの1又は複数のプロセッサを含み、サーバ装置7の全体を制御する。この場合、コントローラ73は、メモリ72等に記憶されたプログラムを実行することで、予測水位情報D1の配信等に関する処理を行う。
【0044】
(1-3)候補ルート適性判定処理
次に、有適性候補ルートを判定する処理(「候補ルート適性判定処理」とも呼ぶ。)について説明する。候補ルート適性判定部16は、候補ルート上に存在する橋梁の各々について、船舶の通過予定時刻に応じた橋梁下での予測水位(「橋梁予測水位」とも呼ぶ。)を算出する。そして、候補ルート適性判定部16は、算出した橋梁予測水位に基づいて各橋梁下への船舶の通過可否を判定し、その判定結果に基づき、候補ルートが有適性候補ルートであるか否か判定する。
【0045】
図4(A)は、船舶の出発地及び目的地と河川に存在する橋梁とを明示した地図である。また、
図4(B)は、有適性候補ルートであると判定された候補ルート91をさらに明示した地図である。
図4(A)及び
図4(B)の例では、出発地から目的地に至るまでの航路上には橋梁が存在し、かつ、河川の分岐・合流等に起因して候補ルートが複数存在する。一方、対象の船舶が地図上の全ての橋梁を通過できるとは限らない。従って、候補ルート適性判定部16は、候補ルート上に存在する橋梁の各々について、船舶の通過予定時刻に応じた橋梁予測水位を算出し、算出した橋梁予測水位に基づいて各橋梁下への船舶の通過可否を判定する。
図4(A)及び
図4(B)の例では、候補ルート適性判定部16は、候補ルート91上に存在する4つの橋梁の各々について、橋梁予測水位に基づいて橋梁下への船舶の通過が可能であると判定し、候補ルート91が有適性候補ルートであると判定する。
【0046】
なお、候補ルートが複数存在する場合には、候補ルート適性判定部16は、候補ルートの各々に存在する各橋梁下への船舶の通過可否を判定する。以後では、橋梁予測水位の算出方法について説明した後、橋梁予測水位を用いた橋梁通過可否判定の方法について説明する。
【0047】
(1-3-1)橋梁予測水位の算出
図5は、ある候補ルート上に存在する橋梁B1及び橋梁B2の周辺を表す俯瞰図である。ここで、地点「Pa1」は、川下方向において橋梁B1及び橋梁B2に最も近い水位予測地点であり、地点「Pa2」は、川上方向において橋梁B1及び橋梁B2に最も近い水位予測地点である。また、地点「Pb1」は、対象の候補ルート上において橋梁B1の真下に位置する地点であり、地点「Pb2」は、対象の候補ルート上において橋梁B2の真下に位置する地点である。ここで、地点Pb1、Pb2は、図示の河川を船舶が通過する場合の船舶の橋梁下での通過地点(「橋梁通過地点」とも呼ぶ。)に相当する。
【0048】
この場合、候補ルート適性判定部16は、予測水位情報D1に基づき、橋梁B1及び橋梁B2に川上方向及び川下方向で夫々最も近い水位予測地点Pa1及び水位予測地点Pa2での時系列における予測水位を特定する。
図6(A)は、水位予測地点Pa1での予測水位の推移を表すグラフ「Ga1」と、水位予測地点Pa2での予測水位の推移を表すグラフ「Ga2」とを表す。
図6(A)に示すように、水位は、河川の場所によって異なり、かつ、河川の場所によって水位の時間変化の位相が異なる。
【0049】
次に、候補ルート適性判定部16は、水位予測地点Pa1及び水位予測地点Pa2での時系列における予測水位に基づき、橋梁B1に対応する橋梁通過地点Pb1及び橋梁B2に対応する橋梁通過地点Pb2での時系列における橋梁予測水位を算出する。
【0050】
この場合、例えば、候補ルート適性判定部16は、予測対象時刻ごとに、水位予測地点Pa1と橋梁通過地点Pb1との距離と、水位予測地点Pa2と橋梁通過地点Pb1との距離と、水位予測地点Pa1及び水位予測地点Pa2での各予測水位とに基づき、橋梁通過地点Pb1での橋梁予測水位を線形補間により求める。同様に、候補ルート適性判定部16は、予測対象時刻ごとに、水位予測地点Pa1と橋梁通過地点Pb2との距離と、水位予測地点Pa2と橋梁通過地点Pb2との距離と、水位予測地点Pa1及び水位予測地点Pa2での各予測水位とに基づき、橋梁通過地点Pb2での橋梁予測水位を補間(例えば線形補間)により求める。
図6(B)は、橋梁通過地点Pb1での橋梁予測水位の推移を表すグラフ「Gb1」と、橋梁通過地点Pb2での橋梁予測水位の推移を表すグラフ「Gb2」とを、グラフGa1及びグラフGa2と共に表している。
図6(B)に示すように、水位予測地点Pa2よりも水位予測地点Pa1に近い橋梁通過地点Pb1での橋梁予測水位を表すグラフGb1は、グラフGa2よりもグラフGa1への近似性が高いグラフとなっており、水位予測地点Pa1よりも水位予測地点Pa2に近い橋梁通過地点Pb2での橋梁予測水位を表すグラフGb2は、グラフGa1よりもグラフGa2への近似性が高いグラフとなっている。
【0051】
なお、候補ルート適性判定部16は、線形補間の他、任意の手法(例えば、スプライン補間や多項式近似)を用いて各橋梁通過地点での橋梁予測水位を算出してもよい。この場合、候補ルート適性判定部16は、対象の橋梁通過地点に対する近傍の3個以上の水位予測地点での予測水位に基づき、対象の橋梁通過地点での予測水位を算出してもよい。
【0052】
次に、候補ルート適性判定部16は、候補ルートに従って船舶を運航させた場合に各橋梁通過地点を船舶が通過することが予定される時刻である通過予定時刻を決定し、橋梁通過地点の各々について、通過予定時刻での橋梁予測水位を認識する。この場合、候補ルート適性判定部16は、出発予定時刻を基準として対象の候補ルートに従い船舶を運航した場合に各橋梁通過地点を夫々船舶が通過する時刻を予測する。この場合、例えば、候補ルート適性判定部16は、出発予定時刻と、想定される船舶の予測速度と、出発地から各橋梁通過地点までの所要運航距離とに基づき、各橋梁通過地点での通過予定時刻を算出する。なお、候補ルート適性判定部16は、例えば、直ちに船舶の出発が予定されている場合には現在時刻を出発予定時刻として認識し、それ以外の場合には、インターフェース11を介して入力装置から供給される入力データにより指定された時刻を出発予定時刻として認識する。そして、候補ルート適性判定部16は、各橋梁通過地点に対し、補間により算出した時系列での橋梁予測水位から、通過予定時刻での橋梁予測水位を読み取る。
【0053】
以上のように、候補ルート適性判定部16は、予測水位情報D1に基づき、候補ルート上に存在する橋梁の各々に対する橋梁予測水位を的確に算出することができる。
【0054】
(1-3-2)橋梁予測水位に基づく橋梁通過可否判定
候補ルート適性判定部16は、通過予定時刻での橋梁予測水位に基づいて、橋梁通過地点での船舶と橋梁との高さ方向での間隔(「予測間隔」とも呼ぶ。)を予測し、この予測間隔に基づき、各橋梁の橋梁通過可否判定を行う。この処理の具体例について、
図7を参照して説明する。
【0055】
図7は、予測間隔の算出方法の概要を示す図であり、船舶が橋梁通過地点に存在すると仮定した場合に船舶を後方から観察した図である。
図7の例では、船舶には2台のライダ3が設けられており、ライダ3と同一高となる位置が船舶基準位置に定められている。また、船舶には、船舶の最高点となる突起部33が存在している。また、橋梁30は、河川の上方に位置する構造部の底面を構成する桁下部32を有し、船舶が通過可能な桁下空間31を形成している。また、線L1は橋梁予測水位などにおいて採用される高さ(例えば標高)の原点位置を示し、線L2は水面位置を示し、線L3は船舶基準位置と同一高となる位置を示す。また、線L4は船舶の最高点と同一高となる位置を示し、線L5は河川上での橋梁30の底面を形成する桁下部32と同一高となる位置を示している。さらに、被計測点「m5」~「m8」は、ライダ3により計測された水面の被計測点を示す。
【0056】
まず、候補ルート適性判定部16は、船舶が通過予定の橋梁30に該当する地物データを河川地
図DB10から抽出し、抽出した地物データを参照することで橋梁30の高さ(矢印A2に相当する高さであり、「橋梁高」とも呼ぶ。)を特定する。なお、橋梁高は、河川上での橋梁の底面の高さ(即ち桁下部分の高さ)を表すものとする。また、橋梁30の橋梁予測水位は、矢印A1に相当する高さとなっている。
【0057】
また、候補ルート適性判定部16は、運航ルート決定前の任意のタイミングにおいて水面を計測したライダ3の点群データ(「水面計測データ」とも呼ぶ。)に基づき、船舶基準位置から水面までの高さ方向の距離(矢印A3に相当する距離であり、「水面距離」とも呼ぶ。)を算出する。この場合、候補ルート適性判定部16は、ライダ3が出力する点群データから、水平面より下方(即ち俯角が正となる方向)の点群データを、水面計測データとして抽出する。このとき、橋脚や岸壁や他船等、水面ではない場所を検出した点を除外するため、点群データのz座標値の最小値を求め、各計測点のz座標値がその最小値に近いものを抽出することで、水面計測データを得ることができる。
図7では、候補ルート適性判定部16は、水面の被計測点「m5」~「m8」に対応するデータを、水面計測データとみなし、ライダ3の点群データから抽出する。そして、候補ルート適性判定部16は、抽出した水面計測データの高さ方向の座標値の平均値又は最低値などの代表値を、水面距離として算出する。なお、候補ルート適性判定部16は、水面距離の算出を運航ルート決定前に複数回実行し、複数回の水面距離の算出結果の平均値等を、以後の処理において水面距離として用いてもよい。なお、
図7では片側(右側面側)のライダ3の計測点「m5」~「m8」のみ図示しているが、実際には両側(右側面側及び左側面側)のライダ3の点群データが使用される。
【0058】
次に、候補ルート適性判定部16は、メモリ12から最高点情報IHを参照することで、船舶基準位置から最高点までの高さ方向の幅(矢印A4参照)を特定する。そして、候補ルート適性判定部16は、橋梁予測水位(矢印A1参照)に水面距離(矢印A3参照)と船舶基準位置から最高点までの高さ方向の幅(矢印A4参照)とを加えた高さに相当する、船舶の最高点の高さ(矢印A5に相当する高さであり、「船舶最高点高」とも呼ぶ。)を算出する。
【0059】
そして、候補ルート適性判定部16は、橋梁高から船舶最高点高を減算することで得られる幅を、予測間隔(矢印A6参照)として算出する。
【0060】
その後、候補ルート適性判定部16は、算出した予測間隔が閾値(「予測間隔閾値Th」とも呼ぶ。)以上である場合に、船舶が橋梁を通過可能であると判定し、予測間隔が予測間隔閾値Th未満である場合に、船舶が橋梁を安全に通過できない虞があると判定する。予測間隔閾値Thは、メモリ12等に予め記憶された固定値に定められてもよく、変動値に定められてもよい。後者の場合、候補ルート適性判定部16は、例えば、水面距離の算出に用いた水面計測データの各データの高さ方向の値のばらつきを表す指標(例えば標準偏差)に基づき、予測間隔閾値Thを決定してもよい。この場合、候補ルート適性判定部16は、例えば、波高が大きいときは船舶の高さ方向の上下動も大きくなり、水面計測データのばらつきも大きくなること等を勘案し、上述の標準偏差が大きいほど予測間隔閾値Thを大きくする。
【0061】
このように、候補ルート適性判定部16は、橋梁予測水位と、ライダ3が出力する点群データと橋梁に関する地図データとに基づき、候補ルート上に存在する橋梁の各々に対する橋梁の通過可否判定を的確に実行することができる。
【0062】
そして、候補ルート適性判定部16は、好適には、候補ルート上に存在する各橋梁について、通過予定時刻と、橋梁予測水位と、予測間隔とを関連付けた情報をメモリ12等に記憶する。
図8は、候補ルート上に存在する各橋梁(橋梁B1、橋梁B2、橋梁B3、…)の通過予定時刻、橋梁予測水位及び予測間隔を関連付けたテーブルを示す。
図8に示すように、候補ルート適性判定部16は、候補ルート上に存在する全ての橋梁(橋梁B1、橋梁B2、橋梁B3、…)について上述した通過予定時刻、橋梁予測水位、及び予測間隔の算出を行い、その算出結果をメモリ12等に記憶する。なお、上述のテーブルにおいて、各橋梁は、橋梁B1、橋梁B2、橋梁B3などの名称に代えて、又は、これに加えて、橋梁が存在する位置を示す位置情報又はその他の識別可能な情報により表されてもよい。
【0063】
(1-4)
機能ブロック
図9は、第1実施例におけるコントローラ13の機能ブロックの一例である。候補ルート適性判定部16は、機能的には、橋梁高取得部61と、橋梁予測水位算出部62と、水面距離算出部63と、船舶最高点高算出部64と、予測間隔算出部65と、判定部66とを有する。なお、
図9では、データの授受が行われるブロック同士を実線により結んでいるが、データの授受が行われるブロックの組合せはこれに限定されない。後述する他の機能ブロックの図においても同様である。
【0064】
まず、候補ルート取得部15は、1又は複数の候補ルートを取得し、取得した候補ルートに関する情報を、橋梁高取得部61、橋梁予測水位算出部62及び運航ルート決定部17に夫々供給する。なお、候補ルート取得部15が橋梁予測水位算出部62に供給する候補ルートに関する情報には、各橋梁の通過予定時刻を算出するために必要な情報(例えば出発時刻に関する情報)が含まれている。
【0065】
橋梁高取得部61は、河川地
図DB10から候補ルート上に存在する橋梁に該当する地物データを抽出し、抽出した地物データに基づき、候補ルート上に存在する各橋梁の橋梁高を取得する。
【0066】
また、橋梁予測水位算出部62は、インターフェース11を介してサーバ装置7から受信した予測水位情報D1と、候補ルート取得部15から供給される候補ルートに関する情報とに基づき、候補ルート上に存在する各橋梁に対応する橋梁通過地点での通過予定時刻及び橋梁予測水位を算出する。また、水面距離算出部63は、水面(即ち水平方向より下方)を計測した水面計測データに基づき、水面距離を算出する。
【0067】
船舶最高点高算出部64は、水面距離算出部63が算出した水面距離と、候補ルート上に存在する各橋梁に対応する橋梁通過地点での橋梁予測水位と、最高点情報IHが示す船舶基準位置から最高点までの高さ方向の幅とに基づき、船舶最高点高を算出する。
【0068】
予測間隔算出部65は、橋梁高取得部61が取得した橋梁高と、船舶最高点高算出部64が算出した船舶最高点高とに基づき、予測間隔を算出する。また、判定部66は、候補ルート上の各橋梁の予測間隔と、予測間隔閾値Thとに基づき、候補ルート上の各橋梁の通行可否を判定する。この場合、判定部66は、水面距離算出部63が取得する水面反射データに基づき適応的に予測間隔閾値Thを設定してもよい。そして、判定部66は、候補ルート上に存在する全ての橋梁を船舶が通過可能な候補ルートを有適性候補ルートであると判定し、判定した有適性候補ルートに関する情報を、運航ルート決定部17に供給する。
【0069】
運航ルート決定部17は、判定部66から供給される有適性候補ルートに関する情報に基づき、運航ルートを決定する。この場合、有適性候補ルートが1つのみ存在する場合には、運航ルート決定部17は、当該有適性候補ルートを、運航ルートとして選択する。一方、有適性候補ルートが複数存在する場合には、運航ルート決定部17は、所要時間が最も短い有適性候補ルートを運航ルートとして選択してもよく、所要時間以外の指標(例えば,河川幅の広さや運航船舶の多さ)に基づき1つの運航ルートを選択してもよい。他の例では、運航ルート決定部17は、インターフェース11を介して電気的に接続された表示部に、有適性候補ルートを選択可能に表示し、ユーザが操作する入力装置からインターフェース11を介して入力された入力データにより指定された有適性候補ルートを、運航ルートとして選択してもよい。この場合、運航ルート決定部17は、河川地
図DB10を参照し、出発地及び目的地を含むエリアの地図上に有適性候補ルートを重ねて表示する画面の表示情報を生成し、生成した表示情報を、インターフェース11を介して表示装置に供給する。
【0070】
(1-5)
処理フロー
図10は、運航ルートを決定する処理のフローチャートの一例である。コントローラ13は、フローチャートの処理を、例えば、船舶の起動後、運行ルートの決定を指示するユーザ入力等を検知した場合に実行する。
【0071】
まず、候補ルート取得部15は、候補ルートを取得する(ステップS11)。この場合、例えば、候補ルート取得部15は、インターフェース11を介してユーザが操作する入力装置により入力された目的地と出発地(又は現在位置)に基づきルート探索処理を行うことで、候補ルートを探索する。他の例では、候補ルート取得部15は、インターフェース11を介して入力装置から候補ルートの指定を受け付けることで候補ルートを取得してもよく、候補ルートがメモリ12に記憶されている場合には、候補ルートをメモリ12から読み出すことで取得してもよい。
【0072】
次に、候補ルート適性判定部16は、各候補ルート上の水位予測地点での予測水位を示す予測水位情報D1を、サーバ装置7から受信する(ステップS12)。そして、候補ルート適性判定部16は、出発予定時刻とステップS12において取得した予測水位情報D1とに基づき、各候補ルート上の各橋梁通過地点での通過予定時刻及び橋梁予測水位を算出する(ステップS13)。
【0073】
そして、候補ルート適性判定部16は、各候補ルート上の各橋梁に対応する橋梁高を、河川地
図DB10から取得する(ステップS14)。さらに、候補ルート適性判定部16は、下方(即ち俯角が正となる方向)を計測したライダ3の点群データである水面計測データに基づき、水面距離を算出する(ステップS15)。なお、候補ルート適性判定部16は、ステップS15を複数回実行して得られる複数の水面距離の算出結果の平均値などの代表値を、その後の処理において水面距離の値として用いてもよい。また、ステップS11~ステップS15は、任意の順番により実行されてもよい。
【0074】
そして、候補ルート適性判定部16は、各候補ルート上の橋梁の各々に対し、橋梁予測水位、水面距離、及び最高点情報IHに基づき、橋梁通過地点での船舶最高点高を算出する(ステップS16)。そして、候補ルート適性判定部16は、各候補ルート上の各橋梁に対し、橋梁高と船舶最高点高とに基づき、予測間隔を算出し、当該予測間隔に基づき各候補ルート上の各橋梁下への船舶の通過可否判定を行う(ステップS17)。そして、運航ルート決定部17は、ステップS17での候補ルート適性判定部16による判定結果に基づき、ルート上に存在する全橋梁を通過可能な候補ルートである有適性候補ルートを、運航ルートとして選択する(ステップS18)。
【0075】
(1-6)変形例
以下、上述の実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、組み合わせてこれらの実施例に適用してもよい。
【0076】
候補ルート取得部15は、出発時刻が異なる同一経路の複数の候補ルートを生成してもよい。
【0077】
例えば、候補ルート取得部15は、
図10のフローチャートのステップS11において、出発地から目的地までのルートがN個(Nは1以上の整数)存在する場合、N個の各ルートから出発時刻が所定時間間隔(例えば30分)ごとに異なるM個のルートを候補ルートとして生成する。この場合、候補ルートはN×M個生成される。この場合、候補ルート適性判定部16は、ステップS13において、各候補ルートについて、各橋梁通過地点での通過予定時刻及び橋梁予測水位を算出する。なお、出発時刻のみが異なる候補ルートであっても、各橋梁通過地点での通過予定時刻及び橋梁予測水位は異なる。そして、上述したステップS11及びステップS13以外の各ステップは、上述した実施例と同様に実行される。
【0078】
本変形例によれば、情報処理装置1は、候補ルートを増やし、より適した運航ルートを決定することができる。
【0079】
以上説明したように、第1実施例に係る情報処理装置1のコントローラ13は、船舶の運航ルートの候補となる1又は複数の候補ルート上において水位が予測される水位予測地点での予測水位に関する予測水位情報D1を取得する。そして、コントローラ13は、予測水位情報D1に基づき、候補ルートの各々に存在する橋梁を船舶が通過する地点である橋梁通過地点の各々での船舶の通過予定時刻における予測水位である橋梁予測水位を算出する。そして、コントローラ13は、橋梁予測水位に基づき、候補ルートの各々の運航ルートとしての適性の有無を判定する。これにより、情報処理装置1は、候補ルート上に存在する橋梁通過地点の各々について、船舶の通過予定時刻での水位を的確に把握し、候補ルートの運航ルートとしての適性の有無を好適に判定することができる。
【0080】
<第2実施例>
第2実施例に係る情報処理装置1は、決定した運航ルートに従い船舶が運航開始後、船舶が通過する水位予測地点における水位を計測し、計測した水位と予測水位との差に基づき、サーバ装置7が提供する予測水位に対する補正情報を生成する。これにより、情報処理装置1は、運航ルート上に存在する未通過の橋梁下への船舶の通過可否の判定(例えば、実際に船舶が通過できるかの最終確認)を的確に実行する。以後では、第1実施例と同一構成要素については適宜同一符号を付し、その説明を省略する。
【0081】
(2-1)
ブロック構成
図11は、第2実施例に係る情報処理装置1Aのブロック図である。図示のように、情報処理装置1Aは、インターフェース11と、メモリ12と、コントローラ13とを有する。
【0082】
メモリ12は、第1実施例において説明した河川地
図DB10及び最高点情報IHを有する。また、河川地
図DB10には、高さ(例えば標高)が判明している橋梁以外の任意の地物(ランドマーク)に関する地物データが含まれていてもよい。この地物データには、少なくとも地物の位置及び地物の高さ(例えば標高)に関する情報が含まれている。以後では、河川地
図DB10に地物データが登録されている地物(橋梁を含む)を「登録地物」とも呼ぶ。
【0083】
コントローラ13は、機能的には、橋梁通過可否判定部16Aと、予測水位補正部18Aとを有する。
【0084】
橋梁通過可否判定部16Aは、決定された運航ルート上に存在する橋梁下の通過可否判定を行う。また、橋梁通過可否判定部16Aは、後述する予測水位補正部18Aから水位補正情報が供給された場合、水位補正情報に基づき運航ルート上の各水位予測地点での予測水位を補正し、補正後の予測水位に基づき、運航ルート上の各橋梁を対象とした船舶の通過可否判定を実行する。
【0085】
予測水位補正部18Aは、サーバ装置7から受信した予測水位情報D1が示す各水位予測地点での予測水位を補正するための水位補正情報を生成し、生成した水位補正情報を橋梁通過可否判定部16Aに供給する。
【0086】
そして、第2実施例に係るコントローラ13は、「船舶基準高算出手段」、「計測水位算出手段」、「補正情報生成手段」、「橋梁水位算出手段」、「橋梁通過可否判定手段」及びプログラムを実行するコンピュータ等として機能する。
【0087】
なお、情報処理装置1Aは、第1実施例において説明した運航ルートの決定に関する処理を実行してもよく、当該処理を実行しなくともよい。後者の場合、例えば、情報処理装置1Aは、運航ルートに関する運航ルート情報がメモリ12等に予め記憶されており、当該運航ルート情報を参照することで認識した運航ルートに基づき船舶の運航支援を行う。この場合、情報処理装置1Aは、ユーザが操作する入力装置からインターフェース11を介して供給される、運航ルートを指定する入力データに基づき、運航ルートを決定してもよい。
【0088】
(2-2)水位補正情報の生成
次に、予測水位補正部18Aによる水位補正情報の生成処理について説明する。概略的には、予測水位補正部18Aは、運航ルート上から登録地物をライダ3により計測したデータに基づき船舶基準位置の高さ(「船舶基準高」とも呼ぶ。)を算出する。そして、予測水位補正部18Aは、水面距離と船舶基準高とに基づき算出した水位と、予測水位情報D1に基づく予測水位との比較結果に基づき、水位補正情報を生成する。水面距離と船舶基準高とに基づき算出した水位は、登録地物をライダ3により計測したデータに基づき算出した水位に相当し、以後では、「計測水位」とも呼ぶ。
【0089】
図12は、運航ルート上に存在する橋梁B3及び橋梁B4の周辺を表す俯瞰図である。ここで、地点「Pa3」は、川下方向において橋梁B3及び橋梁B4に最も近い水位予測地点であり、地点「Pa4」は、川上方向において橋梁B3及び橋梁B4に最も近い水位予測地点である。また、地点「Pb3」及び地点「Pb4」は、船舶基準高及び計測水位を算出する地点(「水位計測地点」とも呼ぶ。)である。また、破線70は、運航ルートを示している。
【0090】
まず、水位計測地点Pb3での船舶基準高及び計測水位の算出について説明する。地点Pb3に船舶が存在する時点において、予測水位補正部18Aは、GPS受信機5等に基づく船舶の位置情報と河川地
図DB10に含まれる登録地物の位置情報とに基づき、ライダ3の計測範囲内に登録地物である橋梁B3が存在することを認識する。そして、予測水位補正部18Aは、ライダ3が生成する点群データから登録地物(ここでは橋梁B3)を計測したデータ(「地物計測データ」とも呼ぶ。)を抽出し、抽出した地物計測データに基づき、船舶基準高を算出する。
【0091】
図13は、登録地物である橋梁B3がライダ3の計測範囲内に存在する場合において船舶を後方から観察した図である。線L11は橋梁予測水位などにおいて採用される高さ(例えば標高)の原点位置を示し、線L12は水面位置を示し、線L13は船舶基準位置と同一高となる位置を示す。また、線L14は河川地
図DB10に登録された対象の登録地物(ここでは橋梁B3)の高さと同一高となる位置を示す。さらに、被計測点「m9」~「m12」は、ライダ3により計測された登録地物(ここでは橋梁B3)の被計測点を示す。
【0092】
この場合、予測水位補正部18Aは、例えば、船舶の現在位置と登録地物(ここでは橋梁B3)の位置(詳しくは河川地
図DB10に登録された登録地物の位置)との距離がライダ3の最大測距距離以内となった場合に、ライダ3が出力する点群データから、水平面より上方(即ち仰角が正となる方向)の点群データを、地物計測データとして抽出する。このとき、橋脚等、橋梁ではない場所を検出した点を除外するため、点群データのz座標値の最大値を求め、各計測点のz座標値がその最大値に近いものを抽出することで、橋梁計測データを得ることができる。
図13では、予測水位補正部18Aは、桁下部32の被計測点m9~m12に対応するデータを、地物計測データとみなし、ライダ3が生成する点群データから抽出する。そして、予測水位補正部18Aは、抽出した地物計測データの高さ方向の座標値の平均値又は最低値などの代表値を、登録地物(ここでは橋梁B3)と船舶基準位置との高さ方向の距離(矢印A12に相当する距離であり、「地物距離」とも呼ぶ。)として算出する。そして、予測水位補正部18Aは、河川地
図DB10に登録された対象の登録地物の高さ(矢印A11に相当する高さであり、「地物高」とも呼ぶ。)を特定し、特定した地物高に地物距離を減算することで、矢印A13に相当する高さである船舶基準高を算出する。なお、登録地物が橋梁である場合、地物高は橋梁高を表す。
【0093】
次に、予測水位補正部18Aは、水位計測地点Pb3において得られた地物計測データに基づく上述の船舶基準高と、水位計測地点Pb3において得られた水面計測データとに基づき、水位計測地点Pb3での計測水位を算出する。この場合、予測水位補正部18Aは、水面計測データに基づき矢印A14に相当する距離である水面距離を算出し、船舶基準高から水面距離を減算することで、矢印A15に相当する高さである計測水位を算出する。
【0094】
そして、予測水位補正部18Aは、水位計測地点Pb4での船舶基準高及び計測水位についても水位計測地点Pb3と同一処理手順により算出する。
【0095】
次に、予測水位補正部18Aは、水位計測地点Pb3及び水位計測地点Pb4を含む船舶が通過済みの水位計測地点(即ち計測水位が算出済の水位計測地点)での計測水位を用いて任意の補間処理を行うことで、船舶が通過済みの運航ルートに沿って連続的な計測水位(「補間計測水位」とも呼ぶ。)を算出する。この場合、予測水位補正部18Aは、線形補間の他、スプライン補間や多項式近似などの任意の補間手法に基づき、船舶が通過済みの運航ルート上での連続的な補間計測水位を算出してもよい。また、この場合、予測水位補正部18Aは、運航ルートに沿った水位を表すモデルを示すモデル情報がメモリ12等に予め記憶されている場合には、当該モデルに水位計測地点での計測水位の値をフィッティングすることで、当該モデルのパラメータを決定してもよい。この場合、予測水位補正部18Aは、決定したパラメータが適用されたモデルに基づき、運航ルート上の任意の地点での補間計測水位を認識する。なお、上述のモデル情報は、河川ごとに予め生成されてもよく、河川を分けた区間ごとに予め生成されてもよい。また、モデル情報は、河川地
図DB10の一部であってもよい。
【0096】
そして、予測水位補正部18Aは、水位予測地点を通過する度に、通過した水位予測地点での予測水位と補間計測水位とを比較し、予測水位と補間計測水位との差分値(「水位差分値」とも呼ぶ。)を算出する。以後では、便宜上、水位差分値は、計測水位から予測水位を減じた値(即ち、「水位差分値=補間計測水位-予測水位」)であるものとする。そして、予測水位補正部18Aは、通過した複数の水位予測地点での水位差分値の平均値などの代表値を算出し、算出した平均値等を、橋梁予測水位に対する補正量として算出する。
【0097】
図14(A)は、船舶が存在する地点での予測水位と計測水位との時間変化を表す。ここで、破線丸60a~60kは、船舶が通過した各水位計測地点での計測水位を表し、実線丸68a~68eは、船舶が通過した各水位予測地点での予測水位を表す。また、グラフ69は、破線丸60a~60kが示す計測水位を補間することで生成された補間計測水位を表すグラフである。また、実線丸68a~68eに夫々対応する矢印は、水位差分値に相当する幅を示す。
【0098】
図14(A)に示すように、予測水位補正部18Aは、補間を行うことにより、通過済みの運航ルート上での連続的な補間計測水位を算出し、通過済みの水位予測地点での補間計測水位と予測水位との差に相当する水位差分値を算出する。
図14(A)の例では、予測水位補正部18Aは、実線丸68a~68eに対応する5地点における水位差分値を算出する。
【0099】
図14(B)は、直前の所定期間内において算出した複数の水位差分値の度数(即ち頻度)を表す分布の一例である。予測水位補正部18Aは、通過済みの水位予測地点ごとに算出する水位差分値を集計し、水位差分値の平均及び標準偏差などの統計量を算出する。そして、予測水位補正部18Aは、算出した水位差分値の平均及び標準偏差などを、橋梁予測水位の補正に必要な水位補正情報として橋梁通過可否判定部16Aに供給する。
【0100】
その後、橋梁通過可否判定部16Aは、予測水位補正部18Aから受信した水位補正情報に基づき運航ルート上の各水位予測地点での予測水位を補正し、補正後の予測水位(即ち補正前の予測水位と平均水位差分値との和)に基づき、第1実施例における橋梁予測水位算出部62と同様の処理により、船舶が未通過の運行ルート上での各橋梁通過地点での通過予定時刻及び橋梁予測水位を算出する。以後では、補正後の予測水位に基づき算出した橋梁予測水位を「橋梁補正水位」とも呼ぶ。そして、橋梁通過可否判定部16Aは、船舶最高点高算出部64と同様の処理により、水面距離と、橋梁補正水位と、最高点情報IHとに基づき、船舶最高点高を算出し、さらに予測間隔算出部65と同様の処理により、船舶最高点高から予測間隔を算出する。
【0101】
好適には、橋梁通過可否判定部16Aは、船舶が未通過の運航ルート上に存在する各橋梁について、算出した通過予定時刻と、橋梁補正水位と、予測間隔とを関連付けた情報をメモリ12等に記憶する。
図15は、船舶が未通過の運航ルート上に存在する各橋梁(橋梁B5、橋梁B6、橋梁B7、…)の通過予定時刻、橋梁補正水位及び予測間隔を関連付けたテーブルを示す。
図15に示すように、候補ルート適性判定部16は、船舶が未通過の運航ルート上に存在する全ての橋梁(橋梁B5、橋梁B6、橋梁B7、…)について上述した通過予定時刻、橋梁補正水位、及び予測間隔の算出を行い、その算出結果をメモリ12等に記憶する。
【0102】
(2-3)
機能ブロック
図16は、第2実施例における水位補正情報の生成に関する予測水位補正部18Aの機能ブロックの一例である。予測水位補正部18Aは、機能的には、地物高取得部81と、地物距離算出部82と、船舶基準高算出部83と、水面距離算出部84と、計測水位算出部85と、水位補正情報生成部86とを有する。
【0103】
地物高取得部81は、河川地
図DB10から船舶から所定距離以内に存在する登録地物に対応する地物情報を取得し、当該地物情報に含まれる地物高を取得する。この場合、地物高取得部81は、例えば、GPS受信機5等に基づく現在位置情報と、地物情報に含まれる位置情報とに基づき、上述の登録地物を特定する。
【0104】
地物距離算出部82は、上述の登録地物に対応する地物計測データをライダ3が出力する点群データから抽出し、抽出した地物計測データに基づき地物距離を算出する。地物計測データが生成される地点は、水位計測地点に相当する。
【0105】
船舶基準高算出部83は、地物高取得部81が取得した地物高と、地物距離算出部82が算出した地物距離とに基づき、船舶基準高を算出する。
【0106】
水面距離算出部84は、水面を計測した水面計測データをライダ3が出力する点群データから抽出し、抽出した水面計測データに基づき水面距離を算出する。計測水位算出部85は、船舶基準高算出部83が算出した船舶基準高と、水面距離算出部84が算出した水面距離とに基づき、水位計測地点での計測水位を算出する。さらに、計測水位算出部85は、過去に算出した水位計測地点での計測水位から、運航ルートの出発時点から現在までの(詳しくは直前の計測水位算出時点までの)連続的な補間計測水位を算出する。
【0107】
水位補正情報生成部86は、計測水位算出部85が算出した連続的な補間計測水位と、予測水位情報D1とに基づき、船舶が通過済みの水位予測地点での予測水位と補間計測水位とを比較し、水位差分値を算出する。そして、水位補正情報生成部86は、船舶が通過済みの水位予測地点の水位差分値の平均値その他の統計量等を含む水位補正情報を生成し、生成した水位補正情報を橋梁通過可否判定部16Aへ供給する。
【0108】
(2-4)
処理フロー
図17は、第2実施例において予測水位補正部18Aが実行する水位補正情報の生成処理の手順を示すフローチャートの一例である。予測水位補正部18Aは、フローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0109】
まず、予測水位補正部18Aは、登録地物がライダ3の計測範囲内に存在する場合にライダ3が生成する点群データから抽出した地物計測データに基づき、地物距離を算出する(ステップS21)。そして、予測水位補正部18Aは、ステップS21で算出した地物距離と、河川地
図DB10に基づく地物高とに基づき、船舶基準高を算出する(ステップS22)。
【0110】
そして、予測水位補正部18Aは、船舶基準高と、ライダ3が生成する点群データから抽出した水面計測データから算出した水面距離とに基づき、計測水位を算出する(ステップS23)。この場合、予測水位補正部18Aは、補間処理等により、少なくとも、水位予測地点での補間計測水位を算出する。
【0111】
そして、予測水位補正部18Aは、船舶が水位予測地点を通過した水位予測地点での予測水位と、当該水位予測地点での補間計測水位との比較結果に基づき、水位補正情報を生成する(ステップS24)。
【0112】
以上説明したように、第2実施例に係る情報処理装置1Aのコントローラ13は、船舶に設けられたライダ3が計測した地物の計測データに基づき、船舶の基準位置の高さである船舶基準高を算出する。そして、コントローラ13は、ライダ3が計測した水面の計測データである水面計測データと、船舶基準高とに基づき、水面の高さを表す計測水位を算出する。そして、コントローラ13は、河川での水位予測地点ごとの予測水位を表す予測水位情報が表す予測水位と、当該予測水位に対応する水位予測地点に最も近い地点において算出された計測水位とに基づき、予測水位情報に関する水位補正情報を生成する。したがって、生成した水位補正値を用いることで、候補ルートにある橋梁地点の水位を精度良く推定することが可能となる。これにより、情報処理装置1Aは、高さ方向に関する高精度な自己位置推定を行わない態様において、予測水位を高精度に補正する水位補正情報を生成し、水位予測運航ルート上に存在する未通過の橋梁下への船舶の通過可否の再判定を的確に実行することができる。
【0113】
<第3実施例>
第3実施例に係る情報処理装置1は、高さ方向を含む高精度な自己位置推定処理を実行することにより船舶基準高を取得する点において第2実施例と異なる。以後では、第2実施例と同一構成要素については適宜同一符号を付し、その説明を省略する。
【0114】
(3-1)
ブロック構成
図18は、第3実施例に係る情報処理装置1Bのブロック図である。図示のように、情報処理装置1Bは、インターフェース11と、メモリ12と、コントローラ13とを有する。
【0115】
インターフェース11は、センサ群2の各センサから出力データを取得し、コントローラ13へ供給する。センサ群2は、ライダ3と、船舶の速度を検出する速度センサ4と、GPS受信機5と、3軸方向における対象移動体船舶の加速度及び角速度を計測する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)6とを含んでいる。速度センサ4は、例えば、ドップラーを利用した速度計であってもよく、GNSSを利用した速度計であってもよい。
【0116】
メモリ12は、第1実施例において説明した河川地
図DB10及び最高点情報IHを有する。そして、河川地
図DB10には、ボクセルデータVDが含まれている。
【0117】
ボクセルデータVDは、3次元空間の最小単位となる立方体(正規格子)を示すボクセルごとに静止構造物の位置情報等を記録したデータである。ボクセルデータVDは、各ボクセル内の静止構造物の計測された点群データを正規分布により表したデータを含み、後述するように、NDT(Normal Distributions Transform)を用いたスキャンマッチングに用いられる。情報処理装置1Bは、NDTスキャンマッチングにより、例えば、船舶の平面上の位置、高さ位置、ヨー角、ピッチ角及びロール角の推定を行う。特に言及がない限り、自己位置は、船舶のヨー角などの姿勢角も含まれるものとする。なお、ボクセルデータVDは、河川地
図DB10の一部であってもよい。
【0118】
コントローラ13は、機能的には、橋梁通過可否判定部16Bと、予測水位補正部18Bと、自己位置推定部19Bとを有する。
【0119】
橋梁通過可否判定部16Bは、決定された運航ルート上に存在する橋梁下の通過可否判定を行う。橋梁通過可否判定部16Bが実行する処理は、第2実施例における橋梁通過可否判定部16Aと同一である。予測水位補正部18Bは、サーバ装置7から受信した予測水位情報D1が示す各水位予測地点での予測水位を補正するための水位補正情報を生成し、生成した水位補正情報を橋梁通過可否判定部16Bに供給する。
【0120】
自己位置推定部19Bは、ライダ3の出力に基づく点群データと、当該点群データが属するボクセルに対応するボクセルデータVDとに基づき、NDTに基づくスキャンマッチング(NDTスキャンマッチング)を行うことで、自己位置の推定を行う。ここで、自己位置推定部19Bによる処理対象となる点群データは、ライダ3が生成した点群データであってもよく、当該点群データをダウンサンプリング処理した後の点群データであってもよい。そして、第3実施例に係るコントローラ13は、「船舶基準高算出手段」、「計測水位算出手段」、「補正情報生成手段」、「橋梁水位算出手段」、「橋梁通過可否判定手段」及びプログラムを実行するコンピュータ等として機能する。
【0121】
(3-2)NDTスキャンマッチング
次に、自己位置推定部19Bが実行するNDTスキャンマッチングに基づく位置推定に関する説明を行う。
【0122】
図19は、船舶の位置を3次元直交座標で表した図である。図示のように、xyzの3次元直交座標上で定義された平面での自己位置は、座標「(x、y、z)」、船舶のロール角「φ」、ピッチ角「θ」、ヨー角(方位)「ψ」により表される。ここでは、ロール角φは、船舶の進行方向を軸とした回転角、ピッチ角θは、xy平面に対する船舶の進行方向の仰角、ヨー角ψは、船舶の進行方向とx軸とのなす角として定義されている。座標(x、y、z)は、例えば緯度、経度、標高の組合せに相当する絶対位置、あるいは所定地点を原点とした位置を示すワールド座標である。そして、自己位置推定部19Bは、これらのx、y、z、φ、θ、ψを推定パラメータとする自己位置推定を行う。
【0123】
次に、NDTスキャンマッチングに用いるボクセルデータVDについて説明する。ボクセルデータVDは、各ボクセル内の静止構造物の計測された点群データを正規分布により表したデータを含む。
【0124】
図20は、ボクセルデータVDの概略的なデータ構造の一例を示す。ボクセルデータVDは、ボクセル内の点群を正規分布で表現する場合のパラメータの情報を含み、本実施例では、ボクセルごとに、「ボクセルID」と、「ボクセル座標」と、「属性情報」と、「平均ベクトル」と、「共分散行列」とを含む。
【0125】
「ボクセルID」は、各ボクセルの識別情報を示す。「ボクセル座標」は、各ボクセルの中心位置などの基準となる位置の絶対的な3次元座標を示す。なお、各ボクセルは、空間を格子状に分割した立方体であり、予め形状及び大きさが定められているため、ボクセル座標により各ボクセルの空間を特定することが可能である。ボクセル座標は、ボクセルIDとして用いられてもよい。
【0126】
「属性情報」は、対象のボクセルの属性に関する情報を示す。例えば、本実施例では、橋梁に該当するボクセルの「属性情報」には、橋梁部分であることを示す情報が含まれる。なお、橋梁の桁下部(即ち河川上の構造部の底面)に該当するボクセルの「属性情報」には、桁下部であることを示す情報がさらに含まれていてもよい。
【0127】
「平均ベクトル」及び「共分散行列」は、対象のボクセル内での点群を正規分布で表現する場合のパラメータに相当する平均ベクトル及び共分散行列を示す。なお、任意のボクセル「n」内の任意の点「i」の座標を
Xn(i)=[xn(i)、yn(i)、zn(i)]T
と定義し、ボクセルn内での点群数を「Nn」とすると、ボクセルnでの平均ベクトル「μn」及び共分散行列「Vn」は、それぞれ以下の式(1)及び式(2)により表される。
【0128】
【0129】
【0130】
次に、ボクセルデータVDを用いたNDTスキャンマッチングの概要について説明する。
【0131】
船舶を想定したNDTによるスキャンマッチングは、3次元空間(ここではxyz座標とする)内の移動量及び船舶の向きを要素とした推定パラメータ
P=[tx、ty、tz、tφ、tθ、tψ]T
を推定することとなる。ここで、「tx」はx方向の移動量、「ty」はy方向の移動量、「tz」はz方向の移動量、「tφ」はロール角、「tθ」はピッチ角、「tψ」はヨー角を示す。
【0132】
また、ライダ3が出力する点群データの座標を、
XL(j)=[xn(j)、yn(j)、zn(j)]T
とすると、XL(j)の平均値「L´n」は、以下の式(3)により表される。
【0133】
【数3】
そして、上述の推定パラメータPを用い、平均値L´を公知の座標変換処理に基づき座標変換する。以後では、変換後の座標を「L
n」とする。
【0134】
そして、自己位置推定部19Bは、ワールド座標系に変換した点群データに対応付けられるボクセルデータVDを探索する。ここで、ワールド座標系は、地
図DB10(ボクセルデータVDを含む)において採用されている絶対的な座標系である。このとき、自己位置推定部19Bは、水面位置より(高さ方向において)下に位置するボクセルのボクセルデータVDを、探索対象から除外してもよい。これにより、情報処理装置1Bは、点群データとボクセルとの対応付けを行う際に、不必要な処理を省くことができ、対応付けの誤りに起因した位置推定精度の低下を抑制する。
【0135】
そして、自己位置推定部19Bは、探索したボクセルデータVDに含まれる平均ベクトルμnと共分散行列Vnとを用い、ボクセルnのマッチングに関する評価関数値(「個別評価関数値」とも呼ぶ。)「En」を算出する。
【0136】
この場合、自己位置推定部19Bは、以下の式(4)に基づき、ボクセルnの個別評価関数値Enを算出する。
【0137】
【0138】
そして、自己位置推定部19Bは、以下の式(5)により示される、マッチングの対象となる全てのボクセルを対象とした総合的な評価関数値(「スコア値」とも呼ぶ。)「E(k)」を算出する。スコア値Eは、マッチングの適合度を示す指標となる。
【0139】
【数5】
その後、自己位置推定部19Bは、ニュートン法などの任意の求根アルゴリズムによりスコア値E(k)が最大となるとなる推定パラメータPを算出する。そして、自己位置推定部19Bは、時刻kにおいてデッドレコニングにより算出した位置(「DR位置」とも呼ぶ。)「X
DR(k)」に対し、推定パラメータPを適用することで、NDTスキャンマッチングに基づく自己位置(「NDT位置」とも呼ぶ。)「X
NDT(k)」を算出する。そして、自己位置推定部19Bは、NDT位置X
NDT(k)を、現在の処理時刻kでの最終的な自己位置の推定結果(「推定自己位置」とも呼ぶ。)「X^(k)」とみなす。ここで、DR位置X
DR(k)は、推定自己位置X^(k)の算出前の暫定的な自己位置に相当し、予測自己位置「X
-(k)」とも表記する。この場合、NDT位置X
ND
T(k)は、以下の式(6)により表される。
【0140】
【0141】
図21は、自己位置推定部19Bの機能ブロック図の一例である。図示するように、自己位置推定部19Bは、デッドレコニング部91と、座標変換部92と、水面反射データ除去部93と、NDT位置算出部94とを有する。
【0142】
デッドレコニング部91は、センサ群2が出力する信号に基づき、DR位置の算出を行う。具体的には、デッドレコニング部91は、速度センサ4及びIMU6等の出力に基づく船舶の移動速度と角速度を用い、前回時刻からの移動距離と方位変化を求める。そして、デッドレコニング部91は、現在の処理時刻kに対する直前の処理時刻である時刻k-1の推定自己位置X^(k-1)に対し、前回時刻からの移動距離と方位変化を加えた時刻kでのDR位置XDR(k)を算出する。このDR位置XDR(k)は、デッドレコニングに基づき時刻kにおいて求められた自己位置であり、予測自己位置X-(k)に相当する。なお、自己位置推定開始直後であって、時刻k-1の推定自己位置X^(k-1)が存在しない場合等には、デッドレコニング部91は、例えば、GPS受信機5が出力する信号に基づき、DR位置XDR(k)を定める。
【0143】
座標変換部92は、ライダ3の出力に基づく点群データを、地
図DB10と同一の座標系であるワールド座標系に変換する。この場合、座標変換部92は、例えば、時刻kでデッドレコニング部91が出力する予測自己位置に基づき、時刻kでの点群データの座標変換を行う。なお、移動体(本実施例では船舶)に設置されたライダを基準とした座標系の点群データを移動体の座標系に変換する処理、及び移動体の座標系からワールド座標系に変換する処理等については、例えば、国際公開WO2019/188745などに開示されている。
【0144】
水面反射データ除去部93は、水面で反射した光をライダ3が受光することで誤って生成したデータ(「水面反射データ」とも呼ぶ。)を、座標変換部92から供給される点群データから除去する。この場合、水面反射データ除去部93は、水面位置よりも下方(同一高さを含む、以下同じ。)の位置(即ちz座標値が同一又は低い位置)を表すデータを、水面反射データとして点群データから除去する。なお、水面反射データ除去部93は、例えば、船舶が岸から所定距離以上離れた位置に存在するときにライダ3が出力する点群データの座標変換処理後のz座標値に基づき、水面位置を推定するとよい。そして、水面反射データ除去部93は、座標変換部92から供給される点群データから水面位置よりも下方のデータを除去した点群データを、NDT位置算出部94に供給する。
【0145】
NDT位置算出部94は、水面反射データ除去部93から供給される点群データに基づいてNDT位置を算出する。この場合、NDT位置算出部94は、水面反射データ除去部93から供給されるワールド座標系の点群データと、同じワールド座標系で表されたボクセルデータVDとを照合することで、点群データとボクセルとの対応付けを行う。そして、NDT位置算出部94は、点群データと対応付けがなされた各ボクセルを対象として、式(4)に基づく個別評価関数値を算出し、式(5)に基づくスコア値E(k)が最大となるとなる推定パラメータPを算出する。そして、NDT位置算出部94は、式(6)に基づき、デッドレコニング部91が出力するDR位置XDR(k)に対し、時刻kで求めた推定パラメータPを適用することで定まる時刻kでのNDT位置XNDT(k)を求める。NDT位置算出部94は、NDT位置XNDT(k)を、時刻kでの推定自己位置X^(k)として出力する。
【0146】
(3-3)水位補正情報の生成
予測水位補正部18Bは、自己位置推定により得られる船舶基準高と、水面計測データに基づく水面距離とに基づき計測水位を算出し、計測水位と予測水位との比較結果に基づき、水位補正情報を生成する。
【0147】
図22は、船舶を後方から観察した図である。線L21は橋梁予測水位などにおいて採用される高さ(例えば標高)の原点位置を示し、線L22は水面位置を示し、線L23は船舶基準位置と同一高となる位置を示す。さらに、被計測点「m13」~「m16」は、ライダ3により計測された水面の被計測点を示す。この場合、予測水位補正部18Bは、水面の被計測点「m13」~「m16」に対応する水面計測データに基づき、第1実施例の候補ルート適性判定部16と同様の処理を行うことで、矢印A22に相当する距離である水面距離を算出する。そして、予測水位補正部18Bは、自己位置推定により得られる矢印21に相当する高さである船舶基準高から、矢印A22の水面距離を減算した高さ(即ち矢印A23が示す高さ)を、計測水位として算出する。
【0148】
図23(A)は、船舶が存在する地点での予測水位と計測水位との時間変化を表す。ここで、グラフ69Bは、高さ方向(z座標)の自己位置推定結果と水面計測データに基づく水面距離とにより算出された計測水位を表す。前述したように、ライダ3が点群データを検出するたびに,自己位置推定と水面距離から計測水位を算出することは可能である。よって計測水位は離散的であるものの、ライダ3の周期は短い(例えば100[ms])ためグラフ69Bは連続的な線に近くなる。実線丸68a~68eは、船舶が通過した水位予測地点での予測水位を表す。また、実線丸68a~68eに夫々対応する矢印は、水位差分値に相当する幅を示す。
【0149】
図示のように、予測水位補正部18Bは、自己位置推定部19Bにより継続的に得られる自己位置推定結果に基づき運航ルート上での計測水位を算出し、船舶が通過済みの各水位予測地点での計測水位と予測水位との差に相当する水位差分値を算出する。
図23(A)の例では、予測水位補正部18Bは、実線丸68a~68eに対応する5地点における水位差分値を算出する。
【0150】
図23(B)は、直前の所定期間内において算出した複数の水位差分値の度数(即ち頻度)を表す分布の一例である。予測水位補正部18Bは、通過済みの水位予測地点ごとに算出する水位差分値を集計し、水位差分値の平均及び標準偏差などの統計量を算出する。そして、予測水位補正部18Bは、算出した水位差分値の平均及び標準偏差などを、橋梁予測水位の補正に必要な水位補正情報として橋梁通過可否判定部16Bに供給する。その後、橋梁通過可否判定部16Bは、予測水位補正部18Bから受信した水位補正情報に基づき運航ルート上の各水位予測地点での予測水位を補正し、補正後の予測水位(即ち補正前の予測水位と平均水位差分値との和)に基づき、船舶が未通過の運行ルート上での各橋梁通過地点での通過予定時刻及び橋梁補正水位を算出する。そして、橋梁通過可否判定部16Bは、水面距離と、橋梁補正水位と、最高点情報IHとに基づき、船舶最高点高を算出し、船舶最高点高から予測間隔を算出する。なお、橋梁通過可否判定部16Bは、好適には、船舶が未通過の運航ルート上に存在する各橋梁について、算出した通過予定時刻と、橋梁補正水位と、予測間隔とを関連付けた情報(
図15参照)をメモリ12等に記憶するとよい。
【0151】
(3-4)
機能ブロック
図24は、第3実施例における水位補正情報の生成に関する予測水位補正部18Bの機能ブロックの一例である。予測水位補正部18Bは、機能的には、船舶基準高取得部83Bと、水面距離算出部84Bと、計測水位算出部85Bと、水位補正情報生成部86Bとを有する。
【0152】
船舶基準高取得部83Bは、自己位置推定部19Bから供給される自己位置推定結果に含まれるz座標値を船舶基準高として取得する。水面距離算出部84Bは、水面を計測した水面計測データをライダ3が出力する点群データから抽出し、抽出した水面計測データに基づき水面距離を算出する。なお、水面距離の算出は、自己位置推定部19Bによる自己位置推定の頻度より低い頻度により実行されてもよい。
【0153】
計測水位算出部85Bは、船舶基準高取得部83Bが取得した船舶基準高と、水面距離算出部84Bが算出した水面距離とに基づき、計測水位を算出する。計測水位算出部85Bは、自己位置推定結果が得られる度に計測水位を算出してもよく、自己位置推定結果が得られる頻度よりも低い頻度により計測水位を算出してもよい。
【0154】
水位補正情報生成部86Bは、計測水位算出部85Bが算出した計測水位と、予測水位情報D1とに基づき、船舶が通過済みの水位予測地点での予測水位と計測水位とを比較し、水位差分値を算出する。そして、水位補正情報生成部86Bは、船舶が通過済みの水位予測地点の水位差分値の平均値その他の統計量等を含む水位補正情報を生成し、生成した水位補正情報を橋梁通過可否判定部16Bへ供給する。
【0155】
(3-5)
処理フロー
図25は、第3実施例において予測水位補正部18Bが実行する水位補正情報の生成処理の手順を示すフローチャートの一例である。
【0156】
まず、予測水位補正部18Bは、自己位置推定部19Bによる自己位置推定結果に基づく船舶基準高を取得する(ステップS31)。そして、予測水位補正部18Bは、船舶基準高と、ライダ3が生成する点群データから抽出した水面計測データから算出した水面距離とに基づき、計測水位を算出する(ステップS32)。予測水位補正部18Bは、ステップS31及びステップS32の処理を、水位予測地点を船舶が通過するまで繰り返し実行する。
【0157】
そして、予測水位補正部18Bは、船舶が水位予測地点を通過した場合、当該水位予測地点での予測水位と、計測水位との比較結果に基づき、水位補正情報を生成する(ステップS33)。この場合、予測水位補正部18Bは、複数の水位差分値(即ち、通過直後の水位予測地点での水位差分値、及び、当該水位予測地点より前に通過した水位予測地点での水位差分値)に基づき、水位補正情報を生成する。
【0158】
(3-6)
変形例
ボクセルデータVDは、
図20に示すように、平均ベクトルと共分散行列とを含むデータ構造に限定されない。例えば、ボクセルデータVDは、平均ベクトルと共分散行列を算出する際に用いられる点群データをそのまま含んでいてもよい。また、ボクセルデータVDを用いた自己位置推定手法は、NDTスキャンマッチングに限られない。例えば、情報処理装置1Bは、ICP(Iterative Closest Point)に基づき、ボクセルデータVDとライダ3の点群データとの照合(マッチング)により自己位置推定を行ってもよい。
【0159】
以上説明したように、第3実施例に係る情報処理装置1Bのコントローラ13は、船舶に設けられたライダ3が計測した地物の計測データを用いた自己位置推定結果に基づき、船舶の基準位置の高さである船舶基準高を算出する。そして、コントローラ13は、ライダ3が計測した水面の計測データである水面計測データと、船舶基準高とに基づき、水面の高さを表す計測水位を算出する。そして、コントローラ13は、河川での水位予測地点ごとの予測水位を表す予測水位情報が表す予測水位と、当該予測水位に対応する水位予測地点又は当該水位予測地点に最も近い地点において算出された計測水位とに基づき、予測水位情報に関する水位補正情報を生成する。したがって、生成した水位補正値を用いることで、候補ルートにある橋梁地点の水位を精度良く推定することが可能となる。これにより、情報処理装置1Bは、高さ方向に関する高精度な自己位置推定を行う態様において、予測水位を高精度に補正する水位補正情報を自己位置推定結果を用いて生成し、水位予測運航ルート上に存在する未通過の橋梁下への船舶の通過可否の判定を的確に実行することができる。
【0160】
<第4実施例>
第4実施例では、第2実施例又は第3実施例に基づき算出される水位差分値をサーバ装置7が収集し、収集した水位差分値に基づき予測水位DB70を更新する。これにより、サーバ装置7は、計測水位に基づき補正された高精度な水位を示す予測水位情報D1を好適に情報処理装置1に配信する。
【0161】
(4-1)
構成
図26は、第4実施例に係る運航支援システムの概略構成である。第4実施例に係る運航支援システムには、第2実施例又は第3実施例のいずれかに係る処理を実行する複数の情報処理装置1C(1Ca,1Cb,…)が存在する。そして、第4実施例に係るサーバ装置7Cは、計測水位に基づく予測水位の補正に関する計測水位情報「D2」を情報処理装置1Cの各々から受信し、受信した計測水位情報D2に基づき予測水位DBを更新する。以後では、第1実施例、第2実施例、又は第3実施例と同一構成要素については適宜同一符号を付し、その説明を省略する。
【0162】
第4実施例に係る情報処理装置1Cは、夫々、
図11に示される第2実施例に係る情報処理装置1A又は
図18に示される第3実施例に係る情報処理装置1Bと同一のハードウェア構成を有する。そして、情報処理装置1Cは、夫々、河川上に存在する船舶と共に移動しており、図示しないセンサ群2に含まれる各種センサの出力と、サーバ装置7Cから送信される予測水位情報D1とに基づき、情報処理装置1が設けられた船舶の運航支援を行う。そして、情報処理装置1Cは、高さ方向を含む高精度な自己位置推定を行わない場合には、第2実施例に基づく水位差分値の算出を行い、高さ方向を含む高精度な自己位置推定(例えば、NDTスキャンマッチングに基づく自己位置推定)を行う場合には、第3実施例に基づく水位差分値の算出を行う。そして、情報処理装置1Cは、算出した水位差分値と、当該水位差分値を算出した場所(即ち水位予測地点)を表す位置情報と、当該水位差分値を算出した時刻(日時)とを含んだ計測水位情報D2を、サーバ装置7Cに送信する。
【0163】
第4実施例に係るサーバ装置7Cは、情報処理装置1Cから受信する計測水位情報D2に基づき、予測水位DB70を更新する。
図27は、サーバ装置7Cのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。サーバ装置7Cは、主に、インターフェース71と、メモリ72と、コントローラ73と、を有する。これらの各要素は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0164】
インターフェース71は、サーバ装置7Cと外部装置とのデータの授受に関するインターフェース動作を行う。本実施例では、インターフェース71は、コントローラ73の制御に基づき、情報処理装置1Cに予測水位情報D1を送信する処理及び情報処理装置1Cから計測水位情報D2を受信する処理を行う。メモリ72は、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどの各種の揮発性メモリ及び不揮発性メモリにより構成される。メモリ72は、コントローラ73が所定の処理を実行するためのプログラムが記憶される。また、メモリ72は、第1実施例において説明した予測水位DB70と、計測水位情報D2を蓄積したデータベースである計測水位情報DB75とを記憶している。予測水位DB70は、後述するように、計測水位情報DB75に基づき更新される。
【0165】
(4-2)
データ構造
図28(A)は、予測水位DB70のデータ構造の一例である。予測水位DB70は、主に、「水位予測地点」、「更新時刻」、「予測水位」の各項目を有する。
【0166】
「水位予測地点」は、予測水位DB70の各レコードにおいて対象とする水位予測地点を識別する情報である。ここでは、一例として、「水位予測地点」として、水位予測地点の2次元座標値(例えば緯度及び経度の組)が記録されている。「更新日時」は、予測水位が更新された日時を示す。なお、予測水位が更新されていない場合には、「更新日時」は、予測水位の予測日時を示す。「更新日時」は、時刻ごとの予測水位の各々に対して設けられてもよい。「予測水位」は、水位が予測される時刻ごとの予測水位を示す。ここで、「予測水位」の各予測水位の値は、計測水位情報DB75に基づき更新される。
【0167】
図28(B)は、計測水位情報D2のデータ構造の一例である。計測水位情報D2は、主に、「位置情報」、「日時」、「水位差分値」、「水位差分標準偏差」、「予測水位」、「計測水位」の各項目を有する。
【0168】
「位置情報」は、水位差分値を算出した場所(即ち水位予測地点、あるいは水位予測地点に近接する場所)を表す位置情報である。ここでは、「位置情報」は、水平面上での上述の場所を表す2次元座標値により表されている。「日時」は、水位差分値(又は計測水位)を算出した日時(時刻)を表す。「水位差分値」は、水位差分の平均値を表す。「水位差分標準偏差」は、水位差分の標準偏差を表す。「予測水位」は、対応する水位差分値の算出に用いた予測水位を表す。なお、「予測水位」には、予測水位に加えて、又はこれに代えて、予測水位の予測又は更新が行われた日時(更新日時)に関する情報が含まれてもよい。この時刻に関する情報は、例えば、情報処理装置1Cが受信した予測水位情報D1に
図28(A)に示す更新日時の情報が含まれていた場合には、当該更新日時を表す。「計測水位」は、対応する水位差分値の算出に用いた計測水位を表す。
【0169】
なお、計測水位情報D2のデータ構造は図示されたデータ構造に限定されない。例えば、計測水位情報D2には、「予測水位」及び「計測水位」に関する情報が含まれていなくともよい。他の例では、計測水位情報D2は、複数のレコードを含む代わりに、1つのレコードのみを含んでもよい。この場合、情報処理装置1Cは、例えば、水位差分値を算出する度に、算出した水位差分値に関するレコードを含む計測水位情報D2をサーバ装置7Cに送信する。
【0170】
(4-3)予測水位更新処理
次に、予測水位DB70に記録された予測水位の更新処理(予測水位更新処理)について具体的に説明する。
【0171】
図29は、第4実施例に係るサーバ装置7Cのコントローラ73の機能ブロックの一例である。図示のように、第4実施例に係るサーバ装置7Cのコントローラ73は、機能的には、受信部76と、更新部77と、配信部78とを有する。
【0172】
受信部76は、インターフェース71を介して各情報処理装置1Cから計測水位情報D2を受信する。そして、受信部76は、受信した計測水位情報D2を計測水位情報DB75に記憶する。
【0173】
更新部77は、計測水位情報DB75に基づき、予測水位DB70を更新する。この場合、例えば、更新部77は、まず、計測水位情報DB75に記録されたレコード(即ち
図28に示す計測水位情報D2のレコード)の各々について、位置情報が示す水位予測地点(即ち位置情報が示す地点に最も近い水位予測地点)を特定する。そして、更新部77は、水位予測地点ごとに計測水位情報DB75のレコードに含まれる水位差分値を集計し、水位予測地点ごとの水位差分値の平均値などの代表値に基づき、予測水位DB70に記録された当該水位予測地点の予測水位を補正する。この場合、更新部77は、例えば、水位予測地点ごとの複数の情報処理装置から受信した水位差分値に対して統計処理を行い、平均値などの代表値を、対応する水位予測地点の各時刻での予測水位に加算する。
【0174】
なお、上述した複数の情報処理装置から受信した水位差分値に対する統計処理の際、更新部77は、水位差分の標準偏差を用いて、重み付き平均化処理を行ってもよい。例えば、N個の情報処理装置1Cから水位差分値μiと水位差分標準偏差σiを受信した場合(i=1,2,・・・,N)、更新部77は、以下の式(7)により、予測水位に対する補正値「Cw」を算出する。
【0175】
【数7】
式(7)では標準偏差を2乗した分散値の逆数を重み付けとしているため、水位差分値にばらつきが少なく安定的に算出された結果は重み付け値が大きくなり、水位差分値にばらつきが大きく安定性が低い結果は重み付け値が小さくなる。したがって、更新部77は、安定性の高い結果を重視した処理により信頼度の高い補正値Cwを算出することができる。
【0176】
この場合、更新部77は、好適には、予測水位DB70に記録された予測水位に対応する更新時刻より後に算出された水位差分値に基づき予測水位を補正するとよい。例えば、更新部77は、
図28(A)の1番目のレコードを更新する場合、「位置情報」が水位予測地点「(va,wa)」から所定距離(同一の地点か否か判定する閾値)以内の位置を示し、かつ、「日時」が「9月12日17:00」以降となるレコードを計測水位情報DB75から抽出し、抽出したレコードが示す水位差分値に基づき予測水位を補正する。なお、更新部77は、水位差分値の算出に用いた予測水位の更新日時を示す情報が計測水位情報DB75に含まれている場合には、この更新日時が予測水位DB70に記録された更新日時と一致する水位差分値のみを用いて予測水位を補正してもよい。これにより、情報が古い予測水位に基づき算出された水位差分値を用いた予測水位の補正を好適に抑制する。
【0177】
配信部78は、予測水位DB70から抽出した予測水位に関する情報を含む予測水位情報D1を、インターフェース71を介して情報処理装置1Cに送信する。この場合、配信部78は、情報処理装置1Cから所定の要求情報を受信した場合に、当該要求情報により指定されたエリア又は河川内の水位予測地点の予測水位に関する予測水位情報D1を情報処理装置1Cに送信してもよく、予測水位DB70が更新される度に更新された予測水位に関する予測水位情報D1を情報処理装置1Cに送信してもよい。このように、配信部78は、プッシュ型情報配信又はプル型情報配信のいずれかの方式に基づき、情報処理装置1Cに予測水位に関する情報配信を行う。
【0178】
図30(A)は、第4実施例に係る情報処理装置1Cが実行するフローチャートの一例である。情報処理装置1Cは、このフローチャートの処理を船舶の運航中において繰り返し実行する。
【0179】
情報処理装置1Cは、サーバ装置7Cから予測水位情報D1を受信し、受信した予測水位情報D1を記憶する(ステップS41)。次に、情報処理装置1Cは、第2実施例又は第3実施例に従い、船舶が通過した各水位予測地点での計測水位及び水位差分値を算出する(ステップS42)。この場合、情報処理装置1Cは、
図17又は
図25に示される水位補正情報生成処理のフローチャートを実行することで、各水位予測地点での計測水位及び水位差分値を求める。そして、情報処理装置1Cは、計測水位情報D2の送信タイミングであるか否か判定する(ステップS43)。なお、情報処理装置1Cは、例えば、所定個数分の水位算出値を算出する度に、算出した水位差分値に対応するレコードをまとめて計測水位情報D2としてサーバ装置7Cに送信してもよく、算出した全ての水位差分値に対応するレコードを運航ルートの運航完了後にまとめて計測水位情報D2としてサーバ装置7Cに送信してもよい。
【0180】
そして、情報処理装置1Cは、計測水位情報D2の送信タイミングである場合(ステップS43;Yes)、ステップS42で算出した水位差分値と、対応する日時情報及び位置情報との組を含む計測水位情報D2を、サーバ装置7Cに送信する(ステップS44)。一方、情報処理装置1Cは、計測水位情報D2の送信タイミングではないと判定した場合(ステップS43;No)、船舶が通過した水位予測地点が存在する場合に、ステップS42において引き続き当該水位予測地点での計測水位及び水位差分値を算出する。
【0181】
図30(B)は、第3実施例に係るサーバ装置7Cが実行するフローチャートの一例である。サーバ装置7Cは、このフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0182】
まず、サーバ装置7Cは、情報処理装置1Cから送信される計測水位情報D2を受信し、受信した計測水位情報D2を計測水位情報DB75に記憶する(ステップS51)。そして、サーバ装置7Cは、予測水位DB70の更新タイミングであるか否か判定する(ステップS52)。例えば、サーバ装置7Cは、所定個数以上の水位差分値が収集された水位予測地点が存在する場合に、当該水位予測地点の予測水位について更新タイミングであると判定してもよい。他の例では、サーバ装置7Cは、所定時間間隔ごとに予測水位DB70の更新タイミングであると判定し、水位差分値が収集された水位予測地点の予測水位の更新を行ってもよい。そして、サーバ装置7Cは、予測水位DB70の更新タイミングでないと判定した場合(ステップS52;No)、引き続きステップS51において計測水位情報D2の受信及び記憶を行う。
【0183】
一方、サーバ装置7Cは、予測水位DB70の更新タイミングであると判定した場合(ステップS52;Yes)、計測水位情報DB75に登録された水位差分値に基づき、予測水位の更新値を算出する(ステップS53)。この場合、サーバ装置7Cは、例えば、水位予測地点ごとに、水位差分値の平均値等と、更新前の予測水位とに基づき、予測水位の更新値を算出する。そして、サーバ装置7Cは、算出した予測水位の更新値に基づき、予測水位DB70を更新する(ステップS54)。その後、サーバ装置7Cは、更新された予測水位DB70に基づく予測水位情報D1を各情報処理装置1Cに配信する。これにより、サーバ装置7Cは、各水位予測地点で計測された水位を的確に反映した正確な予測水位を示す予測水位情報D1を、情報処理装置1Cに配信することができる。
【0184】
(4-4)変形例
サーバ装置7Cは、計測水位情報D2に含まれる水位差分値に基づき予測水位の更新値を算出する代わりに、計測水位情報D2に含まれる計測水位に基づき予測水位の更新値を算出してもよい。
【0185】
本変形例では、計測水位情報D2には、水位予測地点での計測水位と、計測水位が算出された日時及び位置を示す情報とが含まれている。そして、サーバ装置7Cは、予測水位DB70と計測水位情報D2を反映した計測水位情報DB75とを参照することで、水位差分値を算出し、算出した水位差分値に基づき上述した第4実施例の説明に従い予測水位の更新値を算出する。この場合、サーバ装置7Cは、計測水位情報DB75を参照し、水位予測地点及び時間帯(
図28(A)に示す予測水位DB70の「時刻a」、「時刻b」に対応する時間帯)ごとの水位計測値の平均値等の代表値を算出する。そして、サーバ装置7Cは、水位予測地点及び時刻ごとに、予測水位DB70に登録された予測水位と、対応する水位計測値の平均値等の代表値との差分値を水位差分値として算出する。そして、サーバ装置7Cは、算出した水位差分値の平均値等の代表値を水位予測地点ごとに算出し、算出した水位差分値に基づき、各水位予測地点での予測水位の更新値を算出する。
【0186】
本変形例においても、サーバ装置7Cは、予測水位DB70に記録される各予測水位を、各水位予測地点で計測された水位を的確に反映した正確な値に更新し、正確な予測水位を示す予測水位情報D1を情報処理装置1Cに配信することができる。
【0187】
以上説明したように、第4実施例に係るサーバ装置7Cのコントローラ73は、河川での水位予測地点ごとの予測水位を表す予測水位DB70を記憶する。そして、コントローラ73は、複数の船舶から、当該船舶が計測した計測水位に関する計測水位情報D2を受信する。そして、コントローラ73は、計測水位情報D2に基づき、予測水位DB70を更新する。そして、コントローラ73は、予測水位DB70に基づく予測水位情報D1を配信する。この態様により、サーバ装置7Cは、各水位予測地点で計測された水位を的確に反映した正確な予測水位を示す予測水位情報D1を、情報処理装置1Cに配信することができる。
【0188】
なお、上述した実施例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュ
ータであるコントローラ等に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記憶媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的な
コンピュータ可読媒体の例は、磁気記憶媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記憶媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、
RAM(Random Access Memory))を含む。
【0189】
以上、実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。すなわち、本願発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【符号の説明】
【0190】
1、1A、1B、1C 情報処理装置
2 センサ群
3 ライダ
5 GPS受信機
7、7C サーバ装置
10 河川地
図DB