(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】ギアボックス中の歯の動力損失を低減するシステム
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20250204BHJP
F16H 1/06 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/04 Z
F16H1/06
(21)【出願番号】P 2023548921
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2022052258
(87)【国際公開番号】W WO2022171479
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-12-25
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523306612
【氏名又は名称】フレンダー-グラフェンスタデン エス.アー.エス.
【氏名又は名称原語表記】FLENDER-GRAFFENSTADEN S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ジャラット,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ゴリエ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マルマーニュ,トーマス
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-521291(JP,A)
【文献】特表2017-516965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
F16H 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギアボックス(1)中の歯の動力損失を低減するシステムであって、
夫々、軸受(15、16)によって支持される回転軸(13、14)に取り付けられて、ハウジング(10)内に取り付けられる少なくとも2つの噛み合い歯車(11、12)と、
前記軸受(15、16)と前記歯車(11、12)との間で、前記歯車(11、12)の各側に1つずつ、前記ハウジング(10)内に設置されるように構成された2つの垂直プレート(2)と、
を含み、
前記垂直プレート(2)は、前記ハウジング(10)内の複数のオイルフローを隔てるように構成された1つ又は複数のシールドを備え、
前記1つ又は複数のシールド(以下、内部シールドと参照する)は、前記歯車(11、12)に向かって配向された垂直プレート(2)の側面に取り付けられ、
前記内部シールドは、再循環防止プレート(230、240)を備え、
少なくとも1つの前記再循環防止プレート(230、240)は、1つ又は複数の垂直フィン(233)を備えて、空気とオイルの混合物の軸方向の流れをはばむようにしたことを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記垂直プレート(2)は、夫々、上部プレート(21)及び下部プレート(22)を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記再循環防止プレート(230、240)は、前記垂直プレート(2)に対して摺動可能に取り付けられる、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記再循環防止プレート(230、240)は、水平面に対して傾斜しており、収集されたオイルが、前記歯車(11、12)に近い位置から、前記ハウジング(10)の壁に向かって流れることを可能にした、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記再循環防止プレート(230、240)は、第1の傾斜面(231、241)を備え、前記最も近い歯車(11)の歯に向かう前記第1の傾斜面の延長部(E)が、その歯の内の1つの歯底円直径にて、前記歯車(11、12)と交差し、前記歯底円直径に対して接線であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記垂直プレート(2)は、1つ又は複数のシールド(以下、外部シールドと参照する)を備え、これは、前記ハウジング(10)の外部に向かって配向された前記垂直プレート(2)の側部に取り付けられる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記外部シールドは、夫々、前記軸受(15、16)のうちの1つを取り囲むように、逆U字形状に形成される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記外部シールドは、第1の部分(210)及び第2の部分(220)を備え、夫々、湾曲プレート及び平板に形成されて、合せて、前記軸受(15、16)の周りで、前記逆U字形状を形成する請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の部分(210)は、
上部プレート(21)に取り付けられ、前記第2の部分(220)は、
下部プレート(22)に取り付けられる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
冷却システム(30)を備え、当該冷却システム(30)は、1つ又は複数の冷却ノズル(31A、31B)を含み、これらは、前記歯車(11、12)の下方に位置して、冷却用オイルフローを、前記歯車(11、12)の外面に向かって導くように構成された、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
第1の冷却用オイルフローを、
第1の歯車(11)に向かって配向させた少なくとも1つの冷却ノズル(31A)と、
第2の冷却用オイルフローを、
第2の歯車(12)に向かって配向させた少なくとも1つの冷却ノズル(31B)と、を備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記冷却ノズル(31A、31B)の出口側の前記冷却用オイルの噴出の方向と、前記冷却用オイルの噴出によって冷却される前記歯車(11、12)の前記外面とによって定められる角度は、90°から180°までの範囲内に含められる、請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
夫々、軸受(15、16)によって支持される回転軸(13、14)に取り付けられて、ハウジング(10)内に取り付けられる少なくとも2つの噛み合い歯車(11、12)と、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のシステムと、
を含む、ギアボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式歯車を備えるギアボックス(伝達機構又はトランスミッションとも呼ばれる)に関し、より具体的には、そのようなギアボックス中の歯の動力損失に関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野で公知のように、歯車機構は、少なくとも2つの歯車、即ち、歯付き部品である、第1の歯車及び第2の歯車を備えて、通常、ハウジング(又はケース若しくはケーシング)内に設けられる。2つの歯車は、夫々、ハウジングに設けられた軸受内で回転する軸に対して取り付けられている。上記複数の歯車の歯は、互いに係合することで、複数の歯車の内の一方の歯車の回転が、他方の歯車を回転させている。ハウジングは、伝達機構のケースを形成するが、例えば、タービンによる発電機の駆動用に利用されている。ハウジングと、当該ハウジング内に嵌め合わされる歯車機構とは、所謂ギアボックスを形成する。ギアボックスは、典型的に、一方の回転機械(例えば、回転動力源)からのトルク及び速度を、別の回転機械又は装置に適合したトルク及び速度へと変換するために用いられている。
【0003】
本発明は、より具体的には、ターボギアボックス、即ち、高速(特に、60m/sから180m/sまでの範囲内のピッチ線速度によって特徴付けられる)の伝達機構に関する。
【0004】
トルク及び速度を変換することは、確実に電力損失をもたらすが、製造業者は、その最小化のために努力している。本発明は、より具体的には、特にターボギアボックス内に生じる歯の動力損失(以下、「TPL:teeth power losses」という)に焦点を当てる。TPLは、以下に由来し得る。
-ギアボックス内の摩擦、特に複数の歯車間の摩擦、
-複数の歯車の噛み合い領域を潤滑するために用いられる潤滑油の量が適当でない場合に由来する、圧送(pumping)効果、
-周囲の流体の動きをもたらす歯車の回転速度に由来する、風損(windage)、
-向きが適当に配向されていないオイル噴出、又は、過度の量のオイル噴出。
【0005】
TPLを低減するために、様々な解決策が製造業者から提案されている。ある解決策は、空力学的損失を低減するために、機械式歯車のハウジング内に生じる真空、例えば、部分的真空に基づいている。他の解決法は、風損の損失を低減するために、歯車を閉じた覆いに基づいている。また、他の解決法は、ギアの冷却に焦点を当てたシステムに基づいている。実際、動作中に複数の歯車の歯が係合する噛み合い領域内で誘発される熱は、主に潤滑油(又は潤滑剤)によって拡散できることが知られているが、その潤滑油は、同時に、その領域の潤滑に用いられている。この領域での潤滑油の流れを増加することは、一方では、その領域をさらに冷却させるものの、他方では、好ましくないことに、電力損失を相当に増加させる。このため、製造業者は、潤滑油の流れを合理的な値に保ちながら、即ち、電力損失を増加させないように保ちながら、システムの効率を保つようにした追加の冷却装置が提案されている。当該技術分野で公知の冷却装置は、例えば、複数の歯車を取り囲む包囲壁を冷却するように構成された、冷却ダクトを備えている。しかしながら、このような解決策は、ギアボックス内の異なる部分へ容易にアクセスすることを妨げるため、メンテナンス作業をより複雑で困難なものにしている。
【0006】
米国特許出願公開第2019/195335号明細書では、請求項1の前段部に記載の特徴を備えた、ギアボックス内のTPLを低減するためのシステムが開示されている。
【0007】
米国特許出願公開第2020/132183号明細書では、噛み合い歯車を有するギアボックスが開示されているが、ギアボックスのハウジング内の複数の歯車の一部を覆うように内部シールドが設けられている。
【0008】
米国特許出願公開第2018/313443号明細書では、2つの噛み合い歯車を有する円筒形状の歯車装置が開示されているが、各歯車は、夫々のプレート内で双方の軸方向に支持される軸を備えている。複数のプレートの間にシールドが設けられているが、この歯車の周囲部分を囲む関連する歯車に対して、わずかに間隔を空けて設けられている。
【0009】
従って、従来公知の解決策は、通常、複雑に構成されている。このため、特にメンテナンス動作を複雑化させないように、より単純で、効率的な解決策が依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2019/195335号明細書
【文献】米国特許出願公開第2020/132183号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/313443号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ギアボックス内のTPLを低減するための、簡単で、効率的なシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、特許請求の範囲の独立請求項に記載された解決手段に基づいて解決される。さらに有利な実施形態は、従属請求項で提案されている。
【0013】
従って、本発明は、ギアボックス内のTPLを低減するシステムに関する。当該システムは、ギアボックスのハウジング内に設置されるように構成された、2つの独立した垂直プレートの一組を含み、これは、ギアボックスの複数の歯車の歯を冷却及び/又は潤滑するために用いられる第1のオイルフローを、ギアボックスの回転軸を支持している流体力学的な軸受を冷却及び/又は潤滑するために用いられる第2のオイルフローから分離又は隔てるために設置される。複数の歯車は、上記回転軸に取り付けされ又は固定される。各垂直プレートは、ギアボックスの複数の歯車と、それら歯車が固定される回転軸を支持する軸受との間で、側方向又は横方向(回転軸の軸方向に対して)に取り付けられ、複数の歯車は、2つの垂直プレートの間で挟まれる。これらプレートは、回転軸に対して実質的に垂直に取り付けられるため、「垂直プレート」として参照される。好ましくは、歯車と垂直プレートとの間の横方向の間隔は、10mmから40mmまでの範囲内に定められて、必要に応じて、軸方向の変位を可能にする。
【0014】
本発明は、TPLを低減する上記システムを備えたギアボックスにも関する。
当該技術分野で公知なように、上記ギアボックスは、少なくとも2つの噛み合い歯車(又は噛み合い係合する歯車)を備え、少なくとも2つの歯車の夫々は、上記回転軸に取り付けられて、その回転の中心軸の周りを回転可能にされる。従って、各回転軸は、好ましくは、ギアボックス・ハウジングによって支持される軸受内で、上記回転の中心軸の周りを回転可能に取り付けられている。
【0015】
従って、一組の垂直プレートは、少なくとも2つの垂直プレートを備え、各垂直プレートは、回転軸を支持する軸受と、複数の歯車との間に、上記ハウジングの内側に取り外し可能に設置されるように構成される。この際、複数の歯車の各側に1つの垂直プレートが設けられて、複数の垂直プレートの間に複数の歯車が挟まれるようにする。上記垂直プレートは、互いに独立しており、それらは、上記ハウジング内で次々と設置できるようにされている。即ち、それら垂直プレートは、溶接などのようにそれらを固定する確実な固定手段を用いていない。この利点として、本発明に従うシステムを、既存のギアボックスに対して組付けたり、分解することを可能にしている。本発明では、各垂直プレートは、2つの開口部を備え、各開口部は、上記回転軸の内の1つに嵌め合わされる。
【0016】
特に、本発明に従う垂直プレートは、ギアボックスのハウジング内で、オイルフローを分離するための一組のシールドを備える。つまり、次の2つのうちの双方又はいずれかを備える。
歯車を冷却及び/又は潤滑するように構成された第1のオイルフローを、軸受を冷却及び/又は潤滑するように構成された第2のオイルフローから分離するための1つ又は複数の外部シールドを備える。この外部シールドは、ハウジング10の外部に向かって配向された垂直プレート2の側に取り付けられる、つまり、垂直プレート2と、ハウジング10の壁との間の空間内に取り付けられる。
複数の歯車の回転によって飛散された、歯車の冷却用オイルが再循環することを制限又は防止するための1つ又は複数の内部シールドを備える。このオイルフローは、より正確には、空気とオイルの混合物の流れ又はフローに相当する。この内部シールドは、複数の歯車11、12に向かって配向された垂直プレート2の側に取り付けられる、つまり、2つの垂直プレート2の間の空間内に取り付けられる。
【0017】
好ましくは、各垂直プレートは、下部プレートと、上部プレートとを含み、又はこれらから形成される。これらプレートは、上記垂直プレートを形成するため、一方を他方の上に垂直に取り付ける、又は取り外すように構成される。好ましくは、下部プレートに属する縁部と、上部プレートに属する他の縁部とから上記開口部が形成されることで、回転軸の周りで下部プレートと上部プレートとを組付けることを可能にする。この組付けによって、上記縁部と、上記他の縁部とを、回転軸の周囲に従わせて、その回転軸を取り囲むようにする。実際、本発明では、各垂直プレートは、2つの開口部を、夫々、1つの回転軸の周りに嵌め合わせて、上記ハウジングの内部で取り付けられるように構成される。
【0018】
好ましくは、各垂直プレートは、第1のオイルフローを第2のオイルフローから分離させるために、各軸受について、上記外部シールドを備える。上記外部シールドは、軸受の上部を取り囲むように構成され、従って、一種のフェンダ又はフードのように構成されて、上記第2のオイルフローを収集するように構成されたレセプタクルに向かって、第2のオイルフローを案内する。好ましくは、上記外部シールドは、上部プレートに取り付けられた第1の部分と、下部プレートに取り付けられた第2の部分とを備える。好ましくは、第1の部分及び第2の部分は、湾曲プレート及び平板である。好ましくは、第2の部分は、2つの二次プレート、例えば、長方形のプレートを含み、向きを定めるが、例えば、上記長方形のプレートの長さに従って、下部プレートの底部に向かって(例えば、上記レセプタクルに向かって)向きを定める。この際、外部シールドの第1の部分は、上記軸受の上部を取り囲み、2つの二次プレートとの間で嵌め合わされる(即ち、上記軸受の各側に位置する端部で嵌め合わされる)。このため、二次プレートは、下部プレート上にシールドの第1の部分の延長部を形成し、当該延長部は下部プレートの底部に向かって延出する。従って、上記外部シールドの各々(回転軸を支持する各軸受に1つ)は、ギアボックスの軸受の動作中に、飛散される第2のオイルフローを収集して、その第2のオイルフローをギアボックスの底部に向かって、即ち上記レセプタクルに向かって案内するように構成される。本発明では、上記二次プレートの1方の各点は、他方の二次プレートの点から、取り囲む軸受の直径よりも大きい距離で離間されることで、ハウジング内への下部プレートへの容易な設置を可能にする。上述した技術的構造によって提供される長所として、上記第2のオイルフローの油滴が、ギアボックスの作動中に、上記外部シールドの内壁に到達し(即ち、シールド壁が軸受に向かって配方され、即ち、その表面の法線ベクトルが、軸受に向かって方向付けられ)、重力によって、レセプタクルに向かって、上記壁に沿って流れることができる。さらに、垂直プレートは、上記外部シールドを備える垂直プレートの側面に取り付けられる複数のチョックを備えて、ハウジングの側壁と当接するように構成して、垂直プレート用のストッパとして作用させてもよい。
【0019】
再循環を防止する上記内部シールドは、好ましくは、再循環防止プレートを含むが、これは、第1のオイルフローの冷却用オイルが再循環されることを防止又は制限するように構成される。再循環防止プレートは、ハウジングの内部で、歯車の外面上に位置する噴霧領域の(歯車の回転方向に従う)後方に配置されて、ハウジングの内部に設けられた歯の冷却システムによって定められる。上記再循環防止プレートは、空気とオイルの混合物が、歯車の回転によって押し流されて、噛み合い領域に向かう(即ち、実質的に円形の、湾曲経路に従って、噛み合い領域に導かれる)ことを防ぐように構成される。この際、上記空気とオイルの混合物は、噴霧領域内での噴射と、冷却システムの冷却ノズルとによって生じるが、後者の冷却オイルは、歯車の外面に向かって、配向される。特に、再循環防止プレートは、複数の垂直プレートの内の少なくとも1つに取り付けられるように構成される。垂直プレートへの取り付けと協働するように、他の取り付け手段を用いることは可能であり、あるいは、垂直プレートへの取り付けに替えて、例えば、再循環防止プレートをハウジングに対して直接的に取り付けるための、ねじ等の固定手段を用いることも可能である。本発明に従うシステムでは、好ましくは、ギアボックスの各歯車に1つずつ、少なくとも2つの再循環防止プレートを備える。好ましくは、各再循環防止プレートは、歯車に向かって配方されるように構成された第1の端部と、ハウジングに向かって配方されるように構成された第2の反対側の端部とを備える。第1の端部は、回転軸と実質的に平行な縁部を有し、歯車の幅、好ましくは全幅に沿って延在する長さを有する。上記縁部は、上記歯車の円周に近接して位置される。一方、第2の端部は、ハウジングの壁と近接して位置し、好ましくは、その壁の幾何学的形状に従い、例えば、その壁の上に置かれる。上記第2の端部の縁部は、ハウジングの上記壁に沿って延在するが、好ましくは、歯車の上記幅と等しい長さで延在する。好ましくは、各再循環防止プレートは、少なくとも1つの垂直プレートに対して取り付けられ、好ましくは、双方の垂直プレートに対して取り付けられ、そして、特に、垂直プレートに対して実質的に垂直な面を画定する。好ましくは、各再循環防止プレートは、垂直プレートに対して摺動可能に取り付けられて、歯車から、再循環防止プレートを隔てる(即ち、歯車の外面から上記第1の端部まで)空間を調整することを可能にする。有利には、再循環防止プレートは、歯車のハウジングの内部に2つの区別された容積を画定し、その内の第1の容積は、再循環防止プレート及び歯車の上方に位置し、第2の容積は、再循環防止プレート及び歯車の下方に位置する。この際、第2の容積内の冷却システムによって生じる空気とオイルの混合物(従って、その対応する流れ)が、少なくとも部分的に、第1の容積に到達することが、再循環防止プレートによって防がれる。
【0020】
好ましくは、本発明に従う冷却システムは、歯車の下方に配置されて、歯車の外面に向って冷却オイルのフローを導くように構成された、1つ又は複数の冷却ノズルを含む。特に、複数の歯車の一方に向って第1の冷却用オイルフローを配向させる少なくとも1つの冷却ノズルと、複数の歯車の他方に向って第2の冷却用オイルフローを配向させる少なくとも1つの冷却ノズルとを含み、夫々の冷却ノズルは、対応する歯車の外面上に上記冷却オイルを噴出させるように構成される。好ましくは、冷却ノズルの出口にて冷却オイルの噴出(又はジェット)の方向(又は向き)と、当該冷却オイルの噴出によって冷却される歯車の外面との成す角度は、90°(即ち、ノズルの噴出、より具体的には、上記方向は、歯車の外面に対して半径方向に向かう)と180°(即ち、上記方向は、外面に対して接線方向に向かう)との間にある。特に、上記角度は、2つの線から成る角度として定められるが、それら線は、歯車の外面を横切る(カットする)ように延長されるときの上記方向又は向きの交差である共通点から開始し、一方の線は、上記共通点まで延長されるときの上記方向又は向きによって定められる。他方の線は、上記共通点から開始して、上記共通点での歯車の外面への接線として歯車の回転の方向に延長される。そして、上記角度は、本発明では、[90°、180°]の範囲内に含まれる。本発明では、上記冷却ノズルは、歯車の回転方向を考慮して、噛み合い領域の後方に位置し、通常、歯車の下方に位置する。このため、歯車の回転によって飛散される冷却オイルは、第1の容積に達することが防がれて、重力によって、油受け部(レセプタク)に向かって落下する。好ましくは、冷却システムは、潤滑ノズルとも呼ばれる少なくとも1つの追加のノズルを備える。これは、噛み合い領域の冷却及び/又は潤滑のために設けられ、即ち、歯車の歯の係合に向けられたオイル・ジェット(噴出)を有するように構成される。この際、上記冷却/潤滑に用いられるオイルのフロー(流れ)は、ハウジング内の温度の関数であるフィードバックループによって制御される。あるいは、潤滑ノズルが冷却システムと協働する独立した潤滑システムの一部であってもよく、そして、上記フィードバックループによって制御されてもよい。
【0021】
独立して、ギアボックス中の歯の動力損失を低減するためのさらなるシステムが提供される。当該システムは、少なくとも2つの噛み合い歯車を備え、各々は軸受によって支持される回転軸に取り付けられて、ハウジング内に取り付けられる。上記ハウジングの内部で、軸受と歯車との間に設置されるように構成された2つの垂直プレートが、歯車の各側面に1つずつ、設けられる。垂直プレートは、1つ又は複数のシールドを備えるが、これらは「外部シールド」と参照することができ、ハウジングの外部に向かって配向された垂直プレートの側に取り付けられる。この際、各外部プレートは、複数の軸受の1つを取り囲むように構成された、「U字形状」に形成される。特に、このシステムは、1つ又は複数のシールドを備えるが、これらは「内部シールド」と参照することができ、歯車に向かって配向された垂直プレートの側に取り付けられる。この際、特に、少なくとも1つの再循環防止プレートが、空気とオイルの混合物の軸方向の流れをはばむように、1つ又は複数の垂直フィンを含む。このシステムは、上述又は後述するように、さらに構成することができる。
【0022】
本発明のさらなる説明及び詳細は以下の複数の図に例示される複数の実施形態に基づいて説明される。この際、これら図では、同様の部品及び対応する部品については、同様の参照番号が用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明に従うギアボックスの概略図であって、断面を示した図である。
【
図3】
図3は、本発明に従う再循環防止プレートの実施形態を例示した図である。
【
図4】
図4は、本発明に従う冷却システムの好適な実施形態の概略図である。
【
図5】
図5は、本発明に従う再循環防止プレートをより詳細に示した概略図である。
【
図6】
図6は、本発明に従う再循環防止プレートをより詳細に示した概略図である
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には、本発明の好適な実施形態に従って、TPLを低減するシステムを備えたギアボックス(又は変速装置)1が例示されている。ギアボックス1は、複数の歯車を備えており、つまり、当該技術分野で公知なように、第1の歯車11と第2の歯車12とを備える。これら歯車の歯は、互いに噛み合っている。この噛み合いは、噛み合い領域Mで行われる(
図4参照)。この噛み合いにより、回転方向w1(
図4の対応する矢印を参照)に従った第1の歯車11の回転によって、第2の歯車が、回転方向w2(
図4の対応する矢印を参照)に従って回転される。逆も同様である。各歯車は、ギアボックス・ハウジング10内に取り付けられた少なくとも1つの軸受(又はベアリング)によって支持された回転軸に固定されている。この際、回転軸は、その回転の中心軸の周りを回転することが可能にされている。例えば、第1の歯車11は、少なくとも1つの軸受15によって支持された第1の回転軸13に対して取り付けられており、そして、第2の歯車12は、少なくとも1つの軸受16によって支持された第2の回転軸14に取り付けられている。典型的には、双方の軸受15、16は、ハウジング10に支持されている。好適には、2つの軸受は、回転軸が取り付けられる歯車の各側で1つずつ、回転軸13、14を支持している。
【0025】
TPLを低減するシステムには、1つ又は複数の垂直プレート2が備えられている。この際、ギアボックスの各軸受について、少なくとも1つの垂直プレート2を設置して、上記軸受15、16を、歯車11、12から隔てている。上述したように、「垂直」とは、回転軸に対して実質的に垂直な方向を意味する。垂直プレートは、歯車11、12の各側面側に取り付けられた単純なサイドパネル(又は側板)であって、回転軸13、14を支持する軸受15、16と、歯車11、12との間に取り付けられる。このため、各垂直プレート2は、薄板、好ましくは、金属板であり、2つの側面を備え、そのうちの一方は歯車11、12に向かって配向され、即ち歯車11、12に面し、他方はハウジング10の外側に向かって配向され、即ちハウジングの壁に面している。
【0026】
図1に例示するように、垂直プレート2は、歯車11、12を軸受15、16から隔てる軸方向空間内に設置される。同じことが歯車11、12の他方の側面についても当てはまり、つまり、別の垂直プレート2が設置されている。各垂直プレートは、好適には、回転軸13、14の回転の中心軸に対して垂直である。しかしながら、ハウジング、軸受、及び歯車の幾何学的形状に応じて、他の構成も想定され得る。従って、本発明では、軸受15、16によって歯車の両側に支持された回転軸13、14に取り付けられる歯車11、12用に、ハウジング10内に2つの垂直プレート2を設置することができ、この際、一方の垂直プレートは、複数の歯車の一方の側面側に設けられ、他方の垂直プレートは、複数の歯車の他方の側面側に設けられる。このため、
図1に例示するように、複数の歯車は、上記複数の垂直プレートの間に挟まれる。
【0027】
本発明に従う垂直プレート2は、以下のように構成される。
即ち、歯車を冷却及び/又は潤滑するために設けられる第1のオイルフロー(油の流れ)を、軸受を冷却及び/又は潤滑するために設けられる第2のオイルフローから隔てる(又は分離する)ように構成される。及び/又は、
第1のオイルフローに関して、歯車を冷却するように設けられるオイルフロー(当該オイルフローは、歯車の回転に関して噛み合い領域の後方に位置する吹付け面に向けられる)を、主に歯車を潤滑するように設けられるオイルフロー(当該フローは、従って、噛み合い領域に向かって向けられる)から隔てる(又は分離する)ように構成される。
【0028】
異なるオイルフローの上記分離のために、本発明に係る垂直プレートは、1つ又は複数のシールドから成るシールドシステムを備えることで、ギアボックスのハウジング内の異なるオイルフローを分離させている。特に、上記1つ又は複数のシールドは、フェンダ又はフードのように作用し、好ましくは、金属製シールドであって、垂直プレートに取り付けられるように構成される。各垂直プレート2は、好ましくは取り外し可能なプレートであって、ハウジング10から容易に取外すことや、その内部に容易に設置することを可能にしている。各垂直プレート2は、好ましくは、2つの別々のプレートから成り、即ち、上部プレート21及び下部プレート22から成り、一方が他方の上に取り付けられ、例えば、一方が他方の上に垂直に並ぶように取付けられて、上記垂直プレート2を形成する。各垂直プレート2には、少なくとも2つの開口部が備えられ、これら2つの開口部は、夫々、上記回転軸13、14のうちの一つに嵌め合わされるが、このため、円形状の開口部として備えられる。好ましくは、各開口部は、上部プレート及び下部プレートの両方に設けられ、つまり、上部プレートの一部である円弧状の形態の一方の縁部と、下部プレートの一部である円弧状の形態の他方の縁部とを有する。このため、上部プレート及び下部プレートを組み付けるとき、これらの2つの縁部は、対応する回転軸の直径と嵌め合わされるように、上記円形の開口部を共に形成する。下部プレート及び上部プレートで各開口部の2つの縁部を配分することで、ギアボックスのハウジング内への垂直プレートの容易な取り付けを可能にしている。
【0029】
本発明に係るシールド(又は覆い)システムは、少なくとも外部シールド及び/又は内部シールドを備える。外部シールドは、第1のオイルフローを第2のオイルフローから隔てるために構成される。これは、軸受に向かって配向された垂直プレート2(即ち、その面法線が軸受に向かっている)の側面に取り付けられるため、「外部」と呼ばれる。内部シールドは、上記第1のオイルフローについて、潤滑用オイルフローから冷却用オイルフローを隔てるために構成される。これは、歯車に向かって配向された、即ちハウジングの内部に向かって配向された垂直プレート2の側面に取り付けられるため、「内部」と呼ばれる。
【0030】
外部シールドは、軸受15、16を少なくとも部分的に囲むように構成される。本発明では、各軸受15、16は、外部シールドによって部分的に囲まれていてもよい。各外部シールドは、好ましくは、逆U字形状によって特徴付けられ、これは、ハウジングの底部に向かって開口して、オイルが上記底部に向かって重力によって流れるようにする。特に、外部シールドは、湾曲部、例えば、湾曲状プレートから成る第1の部分210と、選択的に、平らな直線部、例えば、平らな直線状プレートから成る第2の部分220とを備え、上記第1の部分210と上記第2の部分220とが合わせて、上記逆U形状を形成する。好ましくは、第1の部分210は上部プレート21に取り付けられ、第2の部分220(設けられる場合)は下部プレート22に取り付けられる。第1の部分210は、軸受の遠心分離されたオイルを収集するため、軸受15、16の上部を囲むように構成される。第2の部分220は、上部210の先端をハウジング10の底部に向かって延出するように構成され、それによって、収集されたオイルをハウジング10のレセプタクル若しくは油受け部、又はオイルタンクに向かって案内して、収集されたオイルをギアボックスの動作中に重力によって上部から下部(又は底部)に流すようにする。第1の部分210は、軸受15、16の円周に従うように、半円形状を有することができ、さらに軸受15、16から離間することができる。上記第1の部分210は、軸受15、16によって飛散されたオイルを集めるように構成されたフードのように作用して、上記オイルを外部シールドによって囲まれた容積内に留まるように強いる。上部プレート21を下部プレート22上に垂直に設置して、外部シールドの第1の部分210の端部を第2の部分220の複数の二次プレートとの間で嵌め合わせて、好ましくは、各軸受15、16用に、上記逆「U」字形状を形成する。第1の部分210は、逆U字形状の湾曲部に相当し、第2の部分220は、逆U字形状の各バー(又は直線部)を構成する。好ましくは、湾曲部は、U字形状のバーとの間で嵌め合わされ、即ち、U字形状のバーを隔てる空間を溝切る(又はスロット形成する)。各外部シールドのこの幾何学的形状のため、軸受で飛散されたオイルは、U字形状の内部で収集されて、U字形状のバーに沿って、レセプタクルに向かって案内され、例えば、軸受15、16の下方に配置されたレセプタクルに向かって案内される。
図2には、外部シールドの詳細が拡大して例示されている。上記外部シールドを含む垂直プレートの側面上で、垂直プレートは、1つ又は複数のチョック(又はくさび)223をさらに備えている。
【0031】
図3には、本発明に係るギアボックスのハウジング10の内部が例示されている。上述のように、垂直プレート2は、異なるオイルフローを分離させるために、内部シールドを備えることもできる。上記内部シールドは、再循環防止プレート230、240を含むが、これらは、垂直プレート2に固定することができ、特に、歯車11、12を挟んでいる、下部プレートの一方又は双方、及び/又は、上部プレート21、22の一方又は双方に固定することができる。再循環防止プレート230、240は、歯車11、12の角度区間を冷却するように構成された冷却システム30のオイルフローを、上記冷却システム30から生じた別のオイルフローから分離するように構成されており、その場合、冷却システムは、冷却機能を有するだけでなく、噛み合い領域Mを潤滑する機能をも有している。従って、このシステムは、冷却及び潤滑システム、又は潤滑システムであって、この際、上記他のオイルフローは、基本的に、歯車11、12の噛み合い領域Mを潤滑するように構成されている。
【0032】
本発明に従う冷却システム30は、特に、1つ又は複数の冷却ノズル31A、31Bを備えており、この際、冷却システム30の冷却ノズル31Aの第1の組み合わせは、第1の歯車11の外面を噴霧するように構成され、冷却システム30の冷却ノズル31Bの第2の組み合わせは、第2の歯車12の外面を噴霧するように構成されている。上記外面は、それぞれ、歯車用に、歯車の全幅(即ち軸方向)に沿って延在する単一の角度区間を画定し、その円弧が、複数の冷却ノズルの内の1つによって噴霧される。従って、複数の冷却ノズル31A、31Bの各組み合わせは、歯車の外面上に画定された領域を噴霧するように構成されており、この領域は噛み合い領域Mの後方に位置し、例えば、噛み合い領域Mの実質的に下方に位置する。好ましくは、各ノズル・ジェット(噴出)は、[90°、180°]の範囲内に含まれるように歯車の外面と角度を成すが、
図3及び4に例示するように、90°の値が好ましい。
【0033】
冷却ノズル31A、31Bに加えて、本発明に従うシステムは、1つ又は複数の潤滑ノズル32を備えるが、これらは、
図3及び4の実施形態に示された冷却システム30の一部であってもよいし、又は、別個の独立した潤滑システム(図示せず)のものでもよい。上記潤滑ノズル32によって散布されたオイルフローは、好ましくは、ハウジング10内の温度の関数であるフィードバックループによって制御される。特に、このオイルフローは、歯車の外面上に画定された接線速度ベクトルと平行に配向される。上記オイルフローは、好ましくは、噛み合い領域Mの上部に噴霧される。例えば、上記オイルフローは、実質的に垂直な方向を有し、底部に向けられて、その結果、第1及び第2の歯車の双方が同時に潤滑される。あるいは、上記オイルフローは、上記噛み合い領域(M)の直前の、近接する領域にて、最低回転速度を有する歯車14上のみに噴霧されてもよい。好ましくは、潤滑ノズル32は、オイルでそれらを供給する二次ダクト34と接続される。この二次ダクト34は、オイルで冷却ノズル31A、31Bを供給するように構成された主ダクト33と接続される。好ましくは、二次ダクト34は、再循環防止プレート230を貫通する。再循環防止プレート230は、二次ダクト34の円周の全体又は少なくとも一部に嵌め合わされる開口部234(
図1、
図5又は
図6参照)を含む。これにより、冷却ノズルによって噴霧されたオイルに起因する、空気とオイルの混合物が、上記開口部を通って、再循環防止プレート230の上方に位置する容積に達することが防止されている。
【0034】
好ましくは、
図5及び
図6に例示するように、再循環防止プレート230はU字形状プレート235を含む。U字形状プレート235は、例えば、U字形状に曲げられていて、好ましくは、再循環防止プレート230に溶接されて、U字形状の曲線で二次ダクト34を取り囲む構成を成す。その構成は、ハウジング10の壁17に向って、即ち、再循環防止プレート230の第2の縁部230Bに向かって延在するU字形状のアームを有する。上記U字形状プレート235は、再循環防止プレート230内に、二次ダクト34に嵌め合わされるように上記開口部234を形成する。実際、U字形状の湾曲部分は、二次ダクトの所定の長さを実質的に垂直に囲む表面を形成する。特に、上記表面に対する法線であって、U字形状のアームと実質的に平行な法線は、冷却システム30に向けられる。このため、U字形状の湾曲部分は、空気とオイルの混合物の流れ(これは、冷却システム30から流れて、壁17に向かう)を防ぐように構成されて。この際、U字形状のアームの間で管理される空間は、再循環防止プレート230を容易に合わせることを可能にする。U字形状プレート235は、好ましくは、再循環防止プレート230の第1の傾斜面231及び第2の傾斜面232に対して垂直である。特に、U字形状の複数のアームは、夫々、U字形状の曲面と接続される実質的に垂直な面を成し、再循環防止プレート230の垂直フィン233と平行にされる。
【0035】
図3及び
図4に例示した実施形態では、本発明に従う内部シールドは、歯車11、12の潤滑油の流れ(オイルフロー)から、冷却油の流れ(オイルフロー)を分離するため、好ましくは、2つの再循環防止プレートを含む。第1の再循環防止プレート230は、第1の歯車11と協働し、即ち、最も回転速度が速いことを特徴とする歯車と協働し、また、第2の再循環防止プレート240は、第2の歯車12と協働し、即ち、最も回転速度が低いことを特徴とする歯車と協働して、上記のように、オイルフローを分離する。以下、「再循環防止プレート」という記載は、第1及び第2の再循環防止プレートのいずれかを特定する記載がない限り、第1又は第2の再循環防止プレートの双方に含まれる特徴を記述するために用いられるものとする。ただし、それらのいずれかを特定する記述がある場合には、その限りではない。
【0036】
第1の再循環防止プレート230は、第1の歯車11の外面に向かって配方された第1の縁部230Aを備え、それは、少なくとも第1の歯車の幅と等しい長さによって特徴付けられ、調整可能な距離(典型的には半径方向に測定される)の分、上記第1の歯車の外面から離間される。上記第1の再循環防止プレート230は、第2の縁部230Bを備えるが、これは、第1の縁部230Aと対比して、第1の再循環防止プレートの反対側に配置される。これは、ハウジングの壁と、第1の縁部230Aの下方の位置とに向かって(即ち、高さがあるように)配向される。このため、第1の縁部230Aのごく近傍で再循環防止プレートによって集められたオイルは、重力によって、第2の縁部230Bに向かって流れることが可能にされている。第2の縁部230Bは、ハウジングの上記壁に取り付けられるが、好ましくは、ウジングの上記壁とは接触しないようにされる。その結果、再循環防止プレートの上を流れるオイルは、ハウジングの底部に向かって自由に流れることができる。好ましくは、第1の再循環防止プレート230Aは、上記第1の縁部230Aを含む上記第1の傾斜面231と、上記第2の縁部230Bを含む上記第2の傾斜面232とを備える。この際、水平面に対する上記第1の傾斜面231の傾斜は、上記第2の傾斜面の傾斜よりも小さく、また、好ましくは、上記傾斜面231、232は、回転軸の回転の中心軸と平行であり、互いに接合され、例えば、曲面によって互いに接合されて、第1の歯車11の幅に沿って延在する。選択的に、第1の再循環防止プレート230は、さらに、上記垂直フィン233を備えるが、これは、第1及び第2の傾斜面の双方に対して垂直に取り付けられて、空気とオイルの混合物を案内するように構成されるが、この際、歯車の回転によって生じる軸方向の流れを防ぐ又ははばむように構成される。長所として、上記フィンは、再循環防止プレート230の剛性をさらに増加させる。好ましくは、第1の再循環防止プレート230は、二次ダクト34と嵌め合わされる上記開口部234を備える。その結果、ハウジングの底部に位置し、冷却ノズル31A、31Bを備えるギアボックスの第1の容積から、ハウジングの上部に位置し、潤滑ノズル32を備えるギアボックスの第2の容積まで、上記二次ダクト34を延在させることを可能にしている。好ましくは、上記開口部234は、再循環防止プレートに固定されるU字形状のプレート235を備え、その長さに従って、実質的に垂直に延在し、即ち、再循環防止プレート230に対して垂直に、再循環防止プレート230の上下で延在するため、冷却システム30から流れる空気とオイルの混合物の流れを防止させる(
図5及び
図6参照)。
【0037】
図5に例示されるように、第2の再循環防止プレート240は、第2の歯車12の外面に向かって配向された第1の縁部240Aを備え、これは、第2の歯車12の幅と少なくとも等しい長さを有することで特徴付けられ、かつ、調整可能な距離(典型的には半径方向に測定される)の分、上記第2の歯車の外面から離間される。上記第2の再循環防止プレート240は、第1の縁部240Aと対比して、第2の再循環防止プレートの反対側に配置された第2の縁部240Bを備え、従って、ハウジングの壁に向かって配向されて、第1の縁部240Aの下方の位置(即ち、高さがあるように)に配置される。このため、第1の縁部240Aのごく近傍で、再循環防止プレートによって収集されたオイルは、重力によって、第2の縁部240Bに向かって流れることができる。第2の縁部240Bは、ハウジングの上記壁に対して取付けられるが、好ましくは、上記壁と接触しないようにされる。このため、再循環防止プレート上を流れるオイルは、ハウジングの底部に向かって自由に流れることができる。第2の再循環防止プレート240Aは、好ましくは、第1の縁部240Aを含む第1の傾斜面241と、第2の縁部240Bを含む第2の傾斜面242とを備える。この際、第1の傾斜面241の水平面に対する傾斜は、第2の傾斜面の傾斜よりも小さく、好ましくは、上記傾斜面241、242は、回転軸の回転の中心軸と平行であって、互いに接合され、例えば、曲面によって接合されて、第1の歯車11の幅に沿って延在する。
【0038】
第1及び第2の再循環防止プレートの双方について、上記外面までの調整可能な距離は、第1の縁部230A、240Aと、歯車の外面との間の空間を最小化することを可能にし、その結果、上記第1の縁部230A、240Aは、ギアボックスの動作中に上記外面との接触がないままにされる。そして、上記空間の最小化によって、ハウジング内に追加の加熱が生じないようにしている。上記調整可能な距離を調整するために、好ましくは、再循環防止プレート230、240は、垂直プレート2に対して摺動可能(又はスライド可能)に固定される。上記の外面と第1の縁部との間の距離は、典型的には、2mmから7mmまでの範囲内で変動し得る。上記距離の高めの値は、ハウジング内のオイルフローを分離するための再循環防止プレートの効率を低下させることが示され、また、高めの値は、ハウジング10内の温度を上昇させることが示された。
【0039】
好ましくは、第1の再循環防止プレート及び/又は第2の再循環防止プレートの軸方向長さは、想定される再循環防止プレートに最も近い歯車の幅(即ち、軸方向長さ)よりも大きい。このため、歯車の側面と上記側面に隣接する垂直プレートとの間の軸方向空間が管理される。好ましくは、各垂直プレート2は、各再循環防止プレート230、240について、シェルフ・ブラケット又は棚ブラケットを備え、それに固定されることで、再循環防止プレート230、240を摺動可能に支持するように構成される。さらに、上記シェルフ・ブラケットと再循環防止プレートとの協働により、再循環防止プレート230と垂直プレート2との間の空間を、第1の縁部230Aを第2の縁部230Bから隔てる距離の少なくとも2/3に等しい延長長さに近づけることを可能にする。例えば、上記シェルフ・ブラケットは、上記延長長さに従って、長手軸方向に延在する。
【0040】
第1及び第2の再循環防止プレートの双方について、第1の傾斜面231、241は、その特徴として、最も近い歯車11の歯に向かうその延長部Eが、その歯の1つの基部で、例えば、歯の歯底円直径(root diameter)で、上記歯車と交差する。この際、想定される歯は、好ましくは、垂直方向Vと整列しない。好ましくは、その延長部は、最も近い歯車の歯底円(root circle)Rに対して接線であり、上記最も近い歯車から離れるとき、ハウジングの底部に向かって傾斜する。好ましくは、第1の傾斜面の水平面に対する傾斜は、0.55°から25°までの範囲内に含まれ、即ち、その角度αは、[0.55°、25°]の範囲内に含まれる。
【0041】
本発明によれば、内部シールドは、ハウジング10の内部の歯車11、12の周りに2つの別々の容積又は領域を区切ることを可能にしており、即ち、内部シールド、噛み合い歯車、ハウジングの壁と垂直プレート2によって、互いに分離された上部容積及び下部容積を区切ることを可能にしている。冷却ノズル31A、31Bを含む下部容積内では、歯車11、12の回転中に押し流される、オイルと空気の混合物は、内部シールド、特に上記再循環防止プレートによって、上部容積とつながることが防止される。従って、内部シールドは、垂直プレートと共に、下部容積内で生じる、オイルと空気の混合物が上部容積に達する量を制限することができる。
【0042】
上記構成のため、TPLが低減される。実際、内部シールドによって、オイルの再循環が低減されるので、圧送(ポンピング)に起因するエネルギ損失が、通風と共に低減される。その結果、歯車を冷却するのに必要なオイルフローの量も低減される。加えて、歯の上での圧送力の損失を生じさせる潤滑用オイルフローを低減させるため、潤滑ノズルによって噴霧されるオイルフローを制御させて、噛み合い領域Mに入る前に油膜を生成するのに要する潤滑油のフローを最小限に抑えることができる。
【0043】
長所として、本発明によって提案される解決策により、歯車への容易なアクセスが可能となり、従って、保守作業が容易になる。加えて、歯車は、プレートによって完全に包囲されないため(ハウジング内の容積は、単に2つの領域/容積に分離される)、追加の冷却システムを不要にしている。