IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東和薬品株式会社の特許一覧

特許7629146多孔質キャリア粒子、機能性成分担持粒子及び多孔質キャリア粒子の製造方法
<>
  • 特許-多孔質キャリア粒子、機能性成分担持粒子及び多孔質キャリア粒子の製造方法 図1
  • 特許-多孔質キャリア粒子、機能性成分担持粒子及び多孔質キャリア粒子の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-03
(45)【発行日】2025-02-12
(54)【発明の名称】多孔質キャリア粒子、機能性成分担持粒子及び多孔質キャリア粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20250204BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K9/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024538651
(86)(22)【出願日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2023028068
(87)【国際公開番号】W WO2024029516
(87)【国際公開日】2024-02-08
【審査請求日】2024-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2022122676
(32)【優先日】2022-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100214215
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼梨 航
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】奥嶋 智明
(72)【発明者】
【氏名】奥田 豊
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-518110(JP,A)
【文献】特表2009-524646(JP,A)
【文献】特開平07-313870(JP,A)
【文献】国際公開第2019/138957(WO,A1)
【文献】KADOTA K. et al.,Development of porous particles using dextran as an excipient for enhanced deep lung delivery of rif,International Journal of Pharmaceutics,2019年,Vol.555,pp.280-290
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコースを単位とする螺旋構造を有する水溶性高分子を含有し、BET比表面積が40m /g以上である、多孔質キャリア粒子。
【請求項2】
前記水溶性高分子は水溶性多糖である、請求項1に記載の多孔質キャリア粒子。
【請求項3】
前記水溶性多糖は、デキストリン、デキストラン、アガロース、及びプルランからなる群より選択される1種以上である、請求項2に記載の多孔質キャリア粒子。
【請求項4】
球形である、請求項1又は2に記載の多孔質キャリア粒子。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の多孔質キャリア粒子に機能性成分を担持させた、機能性成分担持粒子。
【請求項6】
前記機能性成分は医薬品薬効成分である、請求項5に記載の機能性成分担持粒子。
【請求項7】
BET比表面積が40m /g以上である多孔質キャリア粒子の製造方法であって、
グルコースを単位とする螺旋構造を有する水溶性高分子を含む溶液を噴霧乾燥して、前駆体粒子を得る工程と、
前記前駆体粒子と有機溶媒とを混合して混合物を得た後、前記混合物から液体を除去する工程とを含む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質キャリア粒子、機能性成分担持粒子及び多孔質キャリア粒子の製造方法に関する。
本願は、2022年8月1日に、日本に出願された特願2022-122676号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
医薬品薬効成分等の機能性成分を体内に投与する方法としては、局所投与、経腸投与、及び非経口投与がある。投与された機能性成分は、体内に導入された場所からその機能が発現する目的の部位へと輸送される必要がある。
経腸投与の一つである経口投与の場合、機能性成分は口と胃を通過して、小腸で吸収される。このため、機能性成分は小腸まで輸送される必要がある。
【0003】
体内の目的の部位に機能性成分を輸送するため、キャリアと呼ばれる担体に機能性成分を担持する仕組みが有用である。キャリアには、例えば小さい粒径で、大きな機能性成分の容量を発揮することが求められる。このような材料として、多孔質の無機材料が検討されている。
【0004】
例えば特許文献1は、ゼオライト型のミクロ孔の骨格(ナノメートルサイズの構造ユニットと明示)を有する、X線回折においてブラッグ回折を生じない結晶性メソ多孔質シリカ材料と、薬剤を伝達する、該材料の使用を開示している。特許文献1は、ゼオライト材料を用いた場合に、薬剤の放出率は80%未満であることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2007-523817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無機化合物から形成される多孔質材料は比表面積を増大させやすい。
一方、無機化合物は非水溶性であり、体内で溶解することができない。この場合、キャリアに担持された機能性成分が全て放出されず、所望の用量を体内に投与できないという課題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、機能性成分の担持が可能であり、高いBET比表面積を有する水溶性の多孔質キャリア粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の[1]~[7]を包含する。
[1]グルコースを単位とする螺旋構造を有する水溶性高分子を含有し、BET比表面積が1m/g以上である、多孔質キャリア粒子。
[2]前記水溶性高分子は水溶性多糖である、[1]に記載の多孔質キャリア粒子。
[3]前記水溶性多糖は、デキストリン、デキストラン、アガロース、及びプルランからなる群より選択される1種以上である、[1]又は[2]に記載の多孔質キャリア粒子。[4]球形である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の多孔質キャリア粒子。
[5][1]~[4]のいずれか1つに記載の多孔質キャリア粒子に機能性成分を担持させた、機能性成分担持粒子。
[6]前記機能性成分は医薬品薬効成分である、[5]に記載の機能性成分担持粒子。
[7]BET比表面積が1m/g以上である水溶性の多孔質キャリア粒子の製造方法であって、グルコースを単位とする螺旋構造を有する水溶性高分子を含む溶液を噴霧乾燥して、前駆体粒子を得る工程と、前記前駆体粒子に有機溶媒を混合し、混合物を得た後、前記混合物から液体を除去する工程とを含む製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機能性成分の担持が可能であり、高いBET比表面積を有する水溶性の多孔質キャリア粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1で製造した多孔質キャリア粒子の電子顕微鏡写真である。
図2】実施例2で製造した多孔質キャリア粒子の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<多孔質キャリア粒子>
本発明の多孔質キャリア粒子は水溶性高分子を含有しており、水溶性である。以下において、本発明の多孔質キャリア粒子を「キャリア粒子」と呼称する場合がある。水溶性のキャリア粒子は生体内で完全に溶解する。このため、担持させた機能性成分とキャリア粒子の双方が生体内で完全に溶解し、機能性成分を完全に放出することができる。また、多孔質であることにより、周囲の媒液との接触面積が大きくなるため、速溶性も発揮できる。
【0012】
水溶性の多孔質粒子として、例えば特開平4-335870に記載されている公知の水溶性の多孔質粒子はBET比表面積が0.2m/g以下と比表面積が非常に小さい。
【0013】
これに対し、本発明のキャリア粒子は従来の水溶性の多孔質粒子よりも比表面積が高い。このため、従来の水溶性の多孔質粒子よりも機能性成分の担持量を増大することができる。
【0014】
「水溶性」とは、25℃、1気圧における蒸留水100gに対して、1g以上の溶解度を有することを意味する。
【0015】
「多孔質」とは、多数の細孔を有し、BET比表面積が1m/g以上である状態を意味する。
【0016】
キャリア粒子は実質的に水溶性高分子からなることが好ましい。
ここで、「実質的に水溶性高分子からなる」とは、キャリア粒子が水溶性高分子のみからなる形態と、機能性成分の担体としての機能を低下させない程度の他の成分を含む形態とを意味する。
【0017】
「機能性成分等の担体としての機能を低下させない」とは、機能性成分の担持量を低下させないことや、医薬品として用いた場合に生体内に投与可能であること等を意味する。具体的には、他の成分の含有割合が、キャリア粒子全体に対して1質量%以下であることを意味し、0.1質量%以下であることが好ましい。
以下、各成分について説明する。
【0018】
≪水溶性高分子≫
本実施形態における水溶性高分子は、グルコースを単位とする螺旋構造をもつ。
キャリア粒子がグルコースを単位とする螺旋構造を有する水溶性高分子を含むか否かは、以下の方法により確認できる。
【0019】
第十八回生日本薬局方、1150頁に記載のデキストリンの確認方法に従い、0.1gのキャリア粒子に水100mLを加え、ヨウ素試液1滴を加える。ヨウ素試液を加えた後、液が淡赤褐色又は淡赤紫色を呈した場合には、キャリア粒子がグルコースを単位とする螺旋構造を有する水溶性高分子を含むと判断する。
【0020】
本実施形態に用いる水溶性高分子は、キャリア粒子を医薬品用途で使用する場合に安全に服用する観点から、天然高分子が好ましい。天然高分子としては、具体的には水溶性多糖を使用できる。
【0021】
本実施形態に用いる水溶性多糖は、グルコースが鎖状に重合し、螺旋構造を有する水溶性の高分子である。水溶性多糖は、多岐に分岐した3次元網目構造を有することが好ましい。
【0022】
3次元網目構造を有する水溶性多糖は、デキストリン、デキストラン、アガロース、及びプルランからなる群より選択される1種以上が好ましく、なかでもデキストリンがより好ましい。
【0023】
また、安全に服用する観点から、水溶性高分子は金属元素を含まないことが好ましい。また、キャリア粒子全体中にも金属元素を含まないことが好ましい。
【0024】
キャリア粒子の製造方法の詳細は後述するが、水溶性高分子を含む溶液を噴霧乾燥して、前駆体粒子を得た後、得られた前駆体粒子を有機溶媒と混合し、混合物を得る。得られた混合物から液体を除去することでキャリア粒子が得られる。
【0025】
水溶性高分子が3次元網目構造を有すると、その3次元網目構造(前駆体粒子)中に含まれるグルコース鎖の一部(例えば、マルトース、マルトトリオース等)が有機溶媒で抽出除去され、被抽出物が存在した箇所が微細孔となり、キャリア粒子が形成される。
【0026】
≪任意成分≫
キャリア粒子は、後述する有機酸を含まないことが好ましいが、わずかに含んでいてもよい。
「キャリア粒子が有機酸を含まない」とは、キャリア粒子に含まれる有機酸の量を測定した際に、測定される有機酸の量が検出限界以下であることを意味する。
【0027】
キャリア粒子の製造工程において、有機酸は使用してもよく、使用しなくてもよいが、使用した場合は最終的には除去される。除去方法によっては、有機酸がキャリア粒子内にわずかに残留する場合がある。この場合には、下記の方法により測定される、キャリア粒子中の有機酸の量が、1%以下であることが好ましい。
【0028】
[キャリア粒子中の有機酸の測定方法]
有機酸は、キャリア粒子をリン酸水溶液に溶解させた後、高速液体クロマトグラフ(HPLC)で分析することにより検出できる。
【0029】
≪BET比表面積≫
キャリア粒子は、BET比表面積が1m/g以上であり、40m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましく、100m/g以上が特に好ましく、150m/g以上がさらに好ましい。BET比表面積の上限値は、例えば1000m/g以下、900m/g以下、800m/g以下である。
BET比表面積の上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。組み合わせの例としては、1m/g以上1000m/g以下、40m/g以上1000m/g以下、50m/g以上1000m/g以下、100m/g以上900m/g以下、150m/g以上800m/g以下が挙げられる。
【0030】
[BET比表面積の測定方法]
キャリア粒子のBET比表面積は、比表面積測定装置を用い、窒素吸着BET(Brunauer,Emmett,Teller)法により測定する。比表面積測定装置としては、例えばマウンテック社製の比表面積測定装置(装置名;Macsorb)が使用できる。
【0031】
≪形状≫
キャリア粒子の形状は特に限定されないが、球状であることが好ましい。
粒子形状は、静的画像解析により確認できる。
静的画像解析は、静的自動画像分析装置により行うことができる。静的自動画像分析装置としては例えば、マルバーン・パナリティカル社製のモフォロギ4が使用できる。
【0032】
≪粒子径≫
キャリア粒子の平均粒子径は、例えば、5μm以上1000μm以下、10μm以上800μm以下、20μm以上600μm以下、30μm以上500μm以下、40μm以上400μm以下、50μm以上300μm以下の範囲とすることができる。
【0033】
[平均粒子径の測定方法]
キャリア粒子の平均粒子径は、レーザー回折、レーザー散乱によって測定できる。
【0034】
以下、本発明のキャリア粒子の製造方法を説明する。
【0035】
<キャリア粒子の製造方法>
キャリア粒子の製造方法について、球状のキャリア粒子を製造する場合を例に説明する。
キャリア粒子の製造方法は、下記の製造方法1または製造方法2が挙げられる。
【0036】
≪製造方法1≫
キャリア粒子の製造方法1は、水溶性高分子(製造原料)を用いて前駆体粒子を得る工程と、キャリア粒子を得る工程と、を含む。
【0037】
[前駆体粒子を得る工程]
まず、製造原料としての水溶性高分子を水に溶解させ、水溶液を得る。その後、得られた水溶液を噴霧乾燥し、前駆体粒子を得る。噴霧乾燥には公知の噴霧乾燥装置が使用できる。
水溶液が含む固形分(溶質)の濃度は、30%以上80%以下の範囲が好ましく、40%以上60%以下がより好ましい。
【0038】
水溶液中の固形分の濃度が上記下限値以上であると、中身の詰まった中実構造の前駆体粒子が得られ、後の工程で有機溶媒と混合して液体を除去した時に、より多くの細孔が形成される。水溶液の固形分の濃度が上記上限値以下であると、噴霧乾燥がし易く、且つ、前駆体粒子及び後工程で得られるキャリア粒子が球状に近づく。
【0039】
噴霧乾燥条件の一例は、入口温度を120℃~160℃とし、出口温度を80℃~120℃とし、水溶液の供給速度を5kg/時間~25kg/時間とする条件である。
水溶性高分子は、上記<多孔質キャリア粒子>における説明と同様である。
【0040】
[キャリア粒子を得る工程]
前駆体粒子と有機溶媒とを混合し、混合物から液体を除去する。
有機溶媒としては、公知の有機溶媒が使用できる。本実施形態においては、親水性の有機溶媒が好ましく、親水性の有機溶媒としては例えばエタノール、メタノールが好ましい。
【0041】
加熱した有機溶媒に前駆体粒子を懸濁し、所定時間以上、保持することにより前駆体粒子と有機溶媒とを混合できる。加熱温度及びその時間は、使用する有機溶媒に合わせて、適宜、調整可能だが、例えば、0℃~70℃で、10分間以上120分間以下で保持する。
【0042】
続いて、混合物から液体を除去することで、前駆体粒子から、水溶性高分子(製造原料)を構成するグルコース鎖の一部(例えば、マルトース、マルトトリオースといったグルコースを基本単位とした糖)が除去され、その除去痕が細孔となり、キャリア粒子が得られる。
【0043】
ここで除去する液体は、水溶性高分子(製造原料)を構成するグルコース鎖の一部を含む有機溶媒である。
【0044】
製造方法1において、製造原料として用いる水溶性高分子としては、例えばデキストリンが挙げられる。
製造原料としてのデキストリンのデンプンの糖化率は、特に限定されず、DE値が10以下のデキストリンであってもよく、DE値が10を超え20以下のマルトデキストリンであってもよく、DE値が20を超えるデキストリンであってもよい。
【0045】
混合物からの液体の除去法としては、公知の方法を使用でき、例えば、濾過法、デカンテーション法が適用可能である。また、液体を除去して得られた粒子に、再度、有機溶媒を混合し、混合物から液体を除去することを繰り返すことで、得られるキャリア粒子の比表面積を高めることが可能である。
【0046】
なかでも、製造原料として用いるデキストリンに、マルトースやマルトトリオースの含有量が高いデキストリンを使用すると、マルトースやマルトトリオースの除去痕が細孔となり、BET比表面積が高いキャリア粒子が得られやすくなる。
【0047】
≪製造方法2≫
キャリア粒子の製造方法2は、水溶性高分子(製造原料)の粒子である前駆体粒子を得る工程と、キャリア粒子を得る工程と、を含む。
上記製造方法1との相違点は、前駆体粒子を得る工程において、水溶液にテンプレート(型剤)を添加する点である。テンプレートとしては、有機酸、糖又は糖アルコールが使用できる。
【0048】
(有機酸)
有機酸は、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、アジピン酸が好ましく、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸がより好ましい。
【0049】
(糖又は糖アルコール)
糖は、例えば単糖又は二糖である。
単糖は、グルコース、フルクトース、ガラクトースが使用できる。
二糖は、例えばスクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオースが使用できる。中でも二糖は、マルトース又はトレハロースが好ましく、トレハロースが特に好ましい。
【0050】
糖アルコールとしては、マンニトール、エリスリトール、又はキシリトールが挙げられる。
製造方法2は、マルトースやマルトトリオースの含有量の低いデキストリンを製造原料に用いる場合に好ましく用いられる。この製造方法2では、製造原料として用いたデキストリン中のマルトースやマルトトリオースの代わりに、添加したテンプレートの除去痕が細孔となり、BET比表面積が高いキャリア粒子が得られやすくなる。
【0051】
<機能性成分担持粒子>
本発明は、上記キャリア粒子に、機能性成分を担持させた機能性成分担持粒子である。
機能性成分としては、医薬品薬効成分、医薬品添加物、機能性食品成分、色素、香料等が挙げられる。
【0052】
本実施形態のキャリア粒子は、速溶性を備え、担持した成分を全て放出できるため、医薬品薬効成分の担体として好適に使用できる。
【0053】
担持させる医薬品薬効成分としては、例えば、解熱鎮痛消炎薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、睡眠鎮静薬、鎮痙薬、中枢神経作用薬、脳代謝改善薬、脳循環改善薬、抗てんかん薬、交感神経興奮薬、胃腸薬、制酸剤、抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、制吐剤、呼吸促進剤、気管支拡張剤、アレルギー用薬、歯科口腔用薬、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿薬、血圧降下剤、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、高脂血症用剤、利胆剤、抗生物質、化学療法剤、糖尿病用剤、骨粗しょう用剤、抗リウマチ薬、鎮けい剤、ホルモン剤、アルカロイド系麻薬、サルファ剤、痛風治療剤、血液凝固阻止剤、抗悪性腫瘍剤、滋養強壮保健薬などから選ばれた1種もしくは2種以上の成分が用いられる。
【0054】
機能性食品成分としては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE等のビタミン類、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、肝油等の高級不飽和脂肪酸類が挙げられる。
【0055】
キャリア粒子に機能性成分を担持させる方法は、キャリア粒子に所望の機能性成分を含浸させることが好ましい。このような方法としては、例えばUS10004682B2に記載の方法が使用できる。
【0056】
また、キャリア粒子に機能性成分を担持させる方法の例として、以下の方法が挙げられる。
まず、機能性成分を有機溶媒に溶解させ、機能性成分溶液を得る。有機溶媒は、例えばエタノールである。この際、機能性成分の溶解度を向上させる目的で、有機溶媒に少量の水(機能性成分溶液の全量に対して1%前後)を添加してもよい。
その後、キャリア粒子と機能性成分溶液とを混合する。
キャリア粒子と機能性成分溶液とを混合する方法としては、キャリア粒子に対して、得られた機能性成分溶液を滴下又は噴霧する方法が挙げられる。
所定量の機能性成分溶液とキャリア粒子とを混合した後、20℃以上60℃以下の温度で減圧乾燥することで、機能性成分を担持したキャリア粒子が得られる。
【0057】
<油性物質の粉末化基材>
本実施形態のキャリア粒子は、油性物質との親和性が高く、油性物質の粉末化基材として好適に使用できる。
【0058】
<触媒又は触媒担体>
本実施形態のキャリア粒子は、触媒として使用してもよく、触媒担体として使用してもよい。
担持する触媒としては、例えば白金、パラジウム、イリジウムを主成分とする触媒、酸化チタン等が挙げられる。
【実施例
【0059】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。以下において、実施例3は参考例とする。
【0060】
<実施例1>
[前駆体粒子を得る工程]
70℃に加温した3.0kgの水にデキストリン(GLUCIDEX IT47) 2.0kgを溶解させ、水溶液1を得た。なお、使用したデキストリンのDE値は47であった。
下記条件で水溶液1をスプレードライヤーで噴霧し、前駆体粒子1を得た。
(噴霧条件)
入口温度:140℃
出口温度:96~100℃
ディスク回転数:5000 rpm
水溶液の供給速度:液速7kg/時間
【0061】
[キャリア粒子を得る工程]
前駆体粒子3gに無水エタノール60mlを加え、50℃の水浴内で10分間振盪混合した。振盪終了後、2分間静置し、上清をデカンテーションにて除去した。ここに、再度、無水エタノール60mlを加え、上記と同様に振盪、デカンテーションし、これを最初からのトータルで10回繰り返した。最終のデカンテーション後、40℃、-0.1MPaで終夜乾燥し、83M篩を通してキャリア粒子1を得た。
【0062】
キャリア粒子1は、本明細書に定義する水溶性と多孔質の条件を満たしていた。
【0063】
キャリア粒子1の電子顕微鏡写真(倍率2000倍)を図1に示す。図1に示す通り、キャリア粒子1は球状であった。
【0064】
上記[BET比表面積の測定方法]により測定したキャリア粒子1の比表面積は、174m/gであった。
【0065】
キャリア粒子1の細孔径は11.9nmであり、細孔容積は0.52cm/gであった。
【0066】
<実施例2>
[前駆体粒子を得る工程]
9kgの水(水温70℃)と、12.6kgのトレハロース(株式会社林原社製、トレハロースP)と、6.3kgのデキストリン(三和澱粉工業株式会社製、サンデック♯300)及び2.1kgの無水クエン酸を混合し、固形分濃度70%の水溶液2を得た。
使用したデキストリンのDEは、27であった。
下記条件で得られた水溶液2をスプレードライヤーで噴霧し、前駆体粒子2を得た。
(噴霧条件)
入口温度:140℃
出口温度:101℃
ディスク回転数:8000rpm
水溶液の供給速度:23kg/時間
【0067】
[キャリア粒子を得る工程]
得られた前駆体粒子15gに無水エタノール300mlを加え、50℃の水浴内で15分間振盪混合した。振盪終了後、2分間静置し、上清をデカンテーションにて除去した。ここに再度、無水エタノール300mlを加え、上記と同様に振盪、デカンテーションし、これを最初からのトータルで10回繰り返した。最終のデカンテーション後、40℃、-0.1MPaで2時間乾燥し、83M篩を通し、キャリア粒子2を得た。
【0068】
キャリア粒子2は、本明細書に定義する水溶性と多孔質の条件を満たしていた。
【0069】
キャリア粒子2の電子顕微鏡写真(倍率2000倍)を図2に示す。図2に示す通り、キャリア粒子2は球状であった。
【0070】
上記[BET比表面積の測定方法]により測定したキャリア粒子2の比表面積は、144m/gであった。
【0071】
キャリア粒子2の細孔径は13.8であり、細孔容積は0.50cm/gであった。
【0072】
<実施例3>
[前駆体粒子を得る工程]
400gの水(水温70℃)と、390gのトレハロース(株式会社林原社製、トレハロースP)と、180gのデキストリン(パインデックス♯3、松谷化学工業株式会社製)及び30gの無水クエン酸を混合し、固形分濃度60%の水溶液3を得た。
使用したデキストリンのDEは、25であった。
下記条件で得られた水溶液3をスプレードライヤーで噴霧し、前駆体粒子3を得た。
(噴霧条件)
入口温度:140℃
出口温度:98℃
ディスク回転数:10000rpm
水溶液の供給速度:100ml/分
【0073】
[キャリア粒子を得る工程]
得られた前駆体粒子5gに無水エタノール20mlを加え、60℃の水浴内で30分間から1時間振盪混合した。振盪終了後静置し、上清をデカンテーションにて除去した。ここに再度、無水エタノール20mlを加え、上記と同様に振盪、デカンテーションし、これを最初からのトータルで11回繰り返した。最終のデカンテーション後、無水エタノール20mlを加え軽く混合して静置した後、デカンテーションし、上清を除去した。50℃、-0.08MPaで乾燥し、キャリア粒子3を得た。
【0074】
キャリア粒子3は、本明細書に定義する水溶性と多孔質の条件を満たしていた。
【0075】
上記[BET比表面積の測定方法]により測定したキャリア粒子3の比表面積は、7.64m/gであった。
【0076】
<実施例4>
[前駆体粒子を得る工程]
1000gの水(水温70℃)と、1500gのトレハロース(株式会社林原社製、トレハロースP)と、600gのデキストリン(GLUCIDEX IT29、ROQUETTE社製)及び233gの無水クエン酸を混合し、固形分濃度70%の水溶液4を得た。
使用したデキストリンのDEは、29であった。
下記条件で得られた水溶液4をスプレードライヤーで噴霧し、前駆体粒子4を得た。
(噴霧条件)
入口温度:140℃
出口温度:99-100℃
ディスク回転数:13000rpm
水溶液の供給速度:100ml/分
【0077】
[キャリア粒子を得る工程]
得られた前駆体粒子6gに無水エタノール120mlを加え、40℃の水浴内で10分間振盪混合した。振盪終了後5分間静置し、上清をデカンテーションにて除去した。ここに再度、無水エタノール120mlを加え、上記と同様に振盪、デカンテーションし、これを最初からのトータルで10回繰り返した。最終のデカンテーション後、無水エタノール120mlを加え軽く混合して5分間静置した後、デカンテーションし、上清を除去した。50℃、-0.08MPaで乾燥し、キャリア粒子4を得た。
【0078】
キャリア粒子4は、本明細書に定義する水溶性と多孔質の条件を満たしていた。
【0079】
上記[BET比表面積の測定方法]により測定したキャリア粒子4の比表面積は、67.29m/gであった。
【0080】
<実施例5>
デキストリンをデキストリン(GLUCIDEX IT33、ROQUETTE社)に変更した以外は実施例4と同様の方法により、キャリア粒子5を得た。
【0081】
キャリア粒子5は、本明細書に定義する水溶性と多孔質の条件を満たしていた。
【0082】
上記[BET比表面積の測定方法]により測定したキャリア粒子5の比表面積は、82.17m/gであった。
【0083】
実施例1~5のキャリア粒子は多孔質であり、比表面積が高いため、機能性成分の担持量を増大することができる。また、実施例1~5の多孔質キャリア粒子は水溶性であるため、生体内で完全に溶解する。このため、担持させた機能性成分とキャリア粒子の双方が生体内で完全に溶解し、機能性成分を完全に放出することができる。
図1
図2