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特許7629165ポリビニルアルコール及び親水性かつ水分散性のフィラーを含む複合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】ポリビニルアルコール及び親水性かつ水分散性のフィラーを含む複合体
(51)【国際特許分類】
   A61Q 5/04 20060101AFI20250205BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20250205BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
A61Q5/04
C08L29/04 B
C08L1/02
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019239104
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107497
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】荏原 充宏
(72)【発明者】
【氏名】宇都 甲一郎
(72)【発明者】
【氏名】牟 鳴薇
(72)【発明者】
【氏名】モハメド・マイドゥル・アラム
(72)【発明者】
【氏名】アドリヤン・ケゼール
(72)【発明者】
【氏名】笹井 淳
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0014744(US,A1)
【文献】特開2016-047807(JP,A)
【文献】特開昭60-067404(JP,A)
【文献】特開2010-242063(JP,A)
【文献】特開2008-044941(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0022700(US,A1)
【文献】特開2002-146053(JP,A)
【文献】特開昭63-308069(JP,A)
【文献】特開2001-316228(JP,A)
【文献】特開2004-231615(JP,A)
【文献】特開2019-218506(JP,A)
【文献】特開2001-142389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリビニルアルコール及び少なくとも1種の親水性かつ水分散性のフィラーを含む複合体を含有する、水性若しくはアルコール溶液、又は水性、アルコール若しくは油性ゲルの形態の、ケラチン繊維のための化粧用ヘアスタイリング組成物であって、前記フィラーの濃度が、前記複合体の総質量に対して30質量%以下であり、前記親水性かつ水分散性のフィラーが、微結晶性セルロースでり、前記複合体が、前記ポリビニルアルコールと前記親水性かつ水分散性のフィラーとの共有結合された集合体である、化粧用ヘアスタイリング組成物(ただし、マンダリンオレンジ抽出物を含む組成物を除く)。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコールの加水分解度が、70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上、かつ100%未満、好ましくは98%以下、より好ましくは95%以下、最も好ましくは90%以下である、請求項1に記載の化粧用ヘアスタイリング組成物。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコールの重合度が、150以上、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、最も好ましくは700以上、かつ2500以下、好ましくは2200以下、より好ましくは2000以下、最も好ましくは1800以下である、請求項1又は2に記載の化粧用ヘアスタイリング組成物。
【請求項4】
前記ポリビニルアルコールが、以下の単位(I):
【化1】
及び
以下の任意選択の単位(II):
【化2】
を有するポリマーであり、前記単位(II)が存在しないか、又は1mol%以上、好ましくは5mol%以上、より好ましくは10mol%以上、かつ20mol%以下、好ましくは18mol%以下、より好ましくは15mol%以下の量で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧用ヘアスタイリング組成物。
【請求項5】
前記親水性かつ水分散性のフィラーの濃度が、前記複合体の総質量に対して、25質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、最も好ましくは10質量%以下、かつ1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化粧用ヘアスタイリング組成物。
【請求項6】
組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、かつ20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の量の前記複合体を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の化粧用ヘアスタイリング組成物。
【請求項7】
好ましくは毛髪の優れた感触等の優れた美容効果を毛髪に与えると共に、毛髪をスタイリングする方法であって、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物を毛髪に適用する工程を含む、方法。
【請求項8】
高湿度条件下でヘアスタイルを元のスタイルに戻せるようにヘアスタイルを記憶する、又は高湿度条件下で長時間ヘアスタイルを維持する方法であって、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物を毛髪に適用する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のポリビニルアルコール及び少なくとも1種の親水性かつ水分散性のフィラーを含む湿度応答性複合体であって、フィラーの濃度が、複合体の総質量に対して30質量%以下である、湿度応答性複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
頭髪用化粧品の分野において、消費者は、高湿度条件下で長時間ヘアスタイルを維持できるヘアスタイリング製品を要望している。現在、ジェル、ミスト、ワックス、及びクリーム等の様々な形態を持つ多くのスタイリング製品が使用されているが、上記の要望を満たすことができる製品は存在しない。
【0003】
相対湿度に応じて特性が変化する湿度応答性材料は公知である。例えば、このような材料は、米国特許第6,627,673(B2)号及び米国特許第8,790,450(B2)号で開示されている。しかしながら、これらは、安全性の懸念があり、美容特性を欠くため、化粧品に使用することは困難である。
【0004】
したがって、高湿度条件下でヘアスタイルを維持でき、許容可能な美容特性を有する、湿度応答性の頭髪用化粧品が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第6,627,673(B2)号
【文献】米国特許第8,790,450(B2)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高湿度条件下で長時間ヘアスタイルを維持できるだけでなく、優れた美容効果を毛髪に付与することも可能な頭髪用化粧品に使用できる、湿度応答性を有する材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、少なくとも1種のポリビニルアルコール及び少なくとも1種の親水性かつ水分散性のフィラーを含む複合体であって、フィラーの濃度が、複合体の総質量に対して30質量%以下である、複合体によって達成することができる。
【0008】
ポリビニルアルコールの加水分解度は、70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上、かつ100%未満、好ましくは98%以下、より好ましくは95%以下、最も好ましくは90%以下であってもよい。
【0009】
ポリビニルアルコールの重合度は、150以上、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、最も好ましくは700以上、かつ2500以下、好ましくは2200以下、より好ましくは2000以下、最も好ましくは1800以下であってもよい。
【0010】
ポリビニルアルコールは、以下の単位(I):
【0011】
【化1】
【0012】
及び
以下の任意選択の単位(II):
【0013】
【化2】
【0014】
を有するポリマーであってもよく、単位(II)は存在しないか、又は1mol%以上、好ましくは5mol%以上、より好ましくは10mol%以上、かつ20mol%以下、好ましくは18mol%以下、より好ましくは15mol%以下の量で存在する。
【0015】
親水性かつ水分散性のフィラーは、無機及び有機フィラーから選択することができる。
【0016】
無機フィラーは、シリカ(SiO2)粒子、酸化鉄(Fe3O4)粒子、及び二酸化チタン(TiO2)粒子から選択することができる。
【0017】
有機フィラーは、セルロース又はその誘導体、好ましくは微結晶性セルロースであってもよい。
【0018】
親水性かつ水分散性のフィラーの濃度は、複合体の総質量に対して、25質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、最も好ましくは10質量%以下、かつ1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であってもよい。
【0019】
本発明はまた、水等の水性媒体中でポリビニルアルコールと親水性かつ水分散性のフィラーとを混合する工程を含む、本発明の複合体を調製する方法にも関し得る。
【0020】
本発明はまた、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、かつ20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の量の本発明の複合体を含む組成物にも関し得る。
【0021】
本発明はまた、少なくとも1種のポリビニルアルコール及び少なくとも1種の親水性かつ水分散性のフィラーを含む組成物であって、フィラーの濃度が、ポリビニルアルコール及びフィラーの総質量に対して30質量%以下であり、ポリビニルアルコール及びフィラーが組み合わされて複合体を形成している、組成物にも関し得る。
【0022】
本発明による組成物は、毛髪等のケラチン繊維のための化粧用組成物、好ましくはヘアスタイリング組成物であってもよい。
【0023】
本発明はまた、好ましくは毛髪の優れた感触等の優れた美容効果を毛髪に与えると共に、毛髪をスタイリングする方法であって、本発明による複合体又は組成物を毛髪に適用する工程を含む、方法にも関し得る。
【0024】
本発明はまた、高湿度条件下でヘアスタイルを元のスタイルに戻せるようにヘアスタイルを記憶する、又は高湿度条件下で長時間ヘアスタイルを維持する方法であって、本発明による複合体又は組成物を毛髪に適用する工程を含む、方法にも関し得る。
【0025】
本発明はまた、少なくとも1種のポリビニルアルコールと少なくとも1種の親水性かつ水分散性のフィラーとの組み合わせの使用であって、フィラーの濃度がポリビニルアルコール及びフィラーの総質量に対して30質量%以下である、湿度応答性複合体を形成するための、使用にも関し得る。
【発明を実施するための形態】
【0026】
鋭意検討の結果、本発明者らは、(i)高湿度条件下で長時間ヘアスタイルを維持する特性と(ii)良好な毛髪美容効果(毛髪の優れた感触等)との間で良好なバランスを有する頭髪用化粧品が、少なくとも1種のポリビニルアルコール及び少なくとも1種の親水性かつ水分散性のフィラーを含む、フィラーの濃度が複合体の総質量に対して30質量%以下である、複合体によって提供できることを発見した。
【0027】
したがって、本発明の一態様は、少なくとも1種のポリビニルアルコール及び少なくとも1種の親水性かつ水分散性のフィラーを含む複合体であって、フィラーの濃度が、複合体の総質量に対して30質量%以下である、複合体である。
【0028】
以下に、本発明の複合体を、より詳細に説明する。
【0029】
[複合体]
本発明の複合体は、少なくとも1種のポリビニルアルコール及び少なくとも1種の親水性かつ水分散性のフィラーを含み、フィラーの濃度は、複合体の総質量に対して30質量%以下でなければならない。好ましくは、複合体は、少なくとも1種のポリビニルアルコール及び少なくとも1種の親水性かつ水分散性のフィラーから本質的になる、又はそれらからなる。
【0030】
複合体は、水性媒体、すなわち、水及び任意選択により水溶性溶媒中にポリビニルアルコール及び親水性かつ水分散性のフィラーを含む溶液から調製することができる。例えば、複合体は、水等の水性媒体中でポリビニルアルコールと親水性かつ水分散性のフィラーとを混合することによって調製することができる。
【0031】
水溶性溶媒の中でも、特に、アルコール、例えば、1から5個の炭素原子を含有する低級一価アルコール、例えばエタノール及びイソプロパノール、2から8個の炭素原子を含有するグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、及びジプロピレングリコール、C3及びC4ケトン並びにC2~C4アルデヒドを挙げることができる。
【0032】
本発明の複合体は、ポリビニルアルコールと親水性かつ水分散性のフィラーとの凝集体、例えばポリビニルアルコールと親水性かつ水分散性のフィラーとの共有結合された集合体と見なすことができる。
【0033】
複合体は、湿度応答性を有する。したがって、複合体は、高湿度条件下で長時間ヘアスタイルを維持することができる。更に、複合体は、高湿度条件下でヘアスタイルを元のスタイルに戻せるようにヘアスタイルを記憶することができる。したがって、複合体を毛髪に適用した後、毛髪が乱れたとしても、高湿度条件下で毛髪は元のスタイルに戻る。
【0034】
更に、良好なヘアスタイル維持特性に加えて、複合体は、優れた美容効果(やわらかさ、滑らかさ、及びほぐしやすさ等)を有する毛髪をもたらすことができる。
【0035】
加えて、複合体は水溶性のポリビニルアルコールを含むことにより、容易に複合体を毛髪から水で洗い落とすことができる。
【0036】
ポリビニルアルコールと親水性かつ水分散性のフィラーの総濃度は、複合体の総質量に対して、70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%であってもよい。
【0037】
複合体は、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、かつ20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の量で、組成物、好ましくは毛髪等のケラチン繊維のための化粧用組成物、より好ましくはヘアスタイリング組成物に含まれていてもよい。
【0038】
[ポリビニルアルコール]
本発明の複合体は、少なくとも1種のポリビニルアルコールを含む。
【0039】
ポリビニルアルコールは、以下の式のビニルアルコール単位を有するポリマーである:
【0040】
【化3】
【0041】
ポリビニルアルコールは、ビニルエステルを重合して周知の方法によってポリマーを得た後、ポリマーを加水分解することによって得ることができる。加水分解の工程において、一般的に、酸又は塩基を使用する。好ましくは、加水分解の工程において塩基が使用される。完全に加水分解されたポリマーを、本発明のポリビニルアルコールとして使用してよい。
【0042】
任意の好適な重合法を用いてよい。重合法の例としては、溶液重合法、塊状重合法、及び懸濁重合法を挙げることができる。
【0043】
ビニルエステルの例としては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、及び安息香酸ビニルを挙げることができる。
【0044】
ポリビニルアルコールの加水分解度及び重合度は、目的とする用途に応じて適宜選択することができる。
【0045】
加水分解度は、70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上、かつ100%未満、好ましくは98%以下、より好ましくは95%以下、最も好ましくは90%以下であってもよい。加水分解度は、任意の好適な周知の方法によって制御することができる。一般的に、加水分解度は、JIS K6726に従って測定することができる。
【0046】
重合度は、150以上、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、最も好ましくは700以上、かつ2500以下、好ましくは2200以下、より好ましくは2000以下、最も好ましくは1800以下であってもよい。一般的に、重合度は、JIS K6726に従って測定することができる。
【0047】
最も好ましくは、ビニルエステルは、酢酸ビニルであってもよい。したがって、本発明の複合体に含まれるポリビニルアルコールは、酢酸ビニルを重合し、結果として得られた生成物を加水分解することによって調製されるポリマーであってもよい。そのため、ポリビニルアルコールは、以下の単位(I):
【0048】
【化4】
【0049】
及び
以下の任意選択の単位(II):
【0050】
【化5】
【0051】
を有するポリマーであってもよい。
【0052】
好ましい実施形態において、単位(II)は存在しないか、又は1mol%以上、好ましくは5mol%以上、より好ましくは10mol%以上、かつ20mol%以下、好ましくは18mol%以下、より好ましくは15mol%以下の量で存在する。例えば、単位(II)が5mol%の量で存在する場合、加水分解度は95%である。ポリビニルアルコールは、10000以上、好ましくは12000以上、より好ましくは15000以上、かつ500000以下、好ましくは300000以下、より好ましくは200000以下の平均分子量(Mw)を有し得る。
【0053】
アニオン変性ポリビニルアルコール及びカチオン変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコールの誘導体を、本発明において使用してもよい。アニオン変性ポリビニルアルコールの例としては、カルボン酸、ウンデシレン酸及び/又はスルホン酸によって修飾されたポリビニルアルコールを挙げることができる。例えば、カルボン酸変性ポリビニルアルコールは、任意の好適な周知の方法によってカルボキシ基を含む化合物をポリビニルアルコールに導入させることによって調製することができる。カチオン変性ポリビニルアルコールの例としては、アンモニウム、スルホニウム及び/又はアミノ基によって修飾されたポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0054】
最も好ましくは、SEKISUI社によって販売されている「SELVOL(商標)(Celvol(登録商標))ポリビニルアルコール」をポリビニルアルコールとして使用してもよい。
【0055】
ポリビニルアルコールの濃度は、複合体の総質量に対して、70質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更により好ましくは85質量%以上、更により好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上、かつ99質量%以下、好ましくは97質量%以下、より好ましくは96質量%以下であってもよい。
【0056】
[親水性かつ水分散性のフィラー]
本発明の複合体は、少なくとも1種の親水性かつ水分散性のフィラーを含む。
【0057】
本発明によれば、フィラーが親水性であるか又は疎水化であるかを決定するために、以下に定義する試験を実施することができる。直径20mmの試験管を20mlの水で充填する。フィラー2gを、振盪せずに試験管に添加し、フィラーの挙動を最長5分間、観察する。フィラーが表面に完全に残った場合、「疎水性」と見なす。これと逆の場合、「親水性」と見なす。
【0058】
また、本発明によれば、「水分散性」という用語は、フィラーが、水中にて、25℃で5質量%の濃度で、安定性の微粒子の懸濁液又は分散体を形成することを意味する。分散体を構成する粒子の平均粒径は、例えば、1μm未満、より一般的には5nm~400nm、例えば10nm~250nmの範囲であってもよい。これらの粒径は、光散乱法により測定することができる。
【0059】
「フィラー」という用語は、室温及び大気圧で固体である無着色又は白色の粒子を意味すると理解すべきであり、本発明によれば、水を室温より高い温度にしたとしても、粒子は水中で溶解しない。
【0060】
フィラーは、無機及び有機フィラーから選択することができる。フィラーが有機フィラーである場合、高分子有機フィラーである。フィラーは、それらの結晶学的形態(例えば、層状晶、立方晶、六方晶及び斜方晶)に関係なく、任意の形態、例えば小板形状、球状及び長円形の粒子であり得る。
【0061】
本明細書で用いる場合、「有機フィラー」という用語は、1種以上の有機化合物を含むフィラーであって、任意選択により、少なくとも1種の他の有機又は無機化合物で被覆されていてもよいフィラーを意味する。
【0062】
本明細書で用いる場合、「無機フィラー」という用語は、1種以上の無機化合物を含むフィラーであって、任意選択により、少なくとも1種の他の有機又は無機化合物で被覆されていてもよいフィラーを意味する。
【0063】
無機フィラーの例としては、例えば、タルク、マイカ、シリカ、ガラスマイクロカプセル、二酸化チタン、酸化鉄(α-Fe2O3、γ-Fe2O3、Fe3O4、FeO)、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリメチルシロキシケイ酸、カオリン、ベントン、炭酸カルシウム、炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、フルオロフロゴパイト、セリサイト、焼成タルク、焼成マイカ、焼成セリサイト、合成マイカ、ラウロイルリジン、金属せっけん、オキシ塩化ビスマス、硫酸バリウム、及び炭酸マグネシウムから選択される材料を含む又はこれらからなるフィラーを挙げることができる。言い換えると、無機フィラーは、タルク、マイカ、シリカ、ガラスマイクロカプセル、二酸化チタン、酸化鉄(α-Fe2O3、γ-Fe2O3、Fe3O4、FeO)、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリメチルシロキシケイ酸、カオリン、ベントン、炭酸カルシウム、炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、フルオロフロゴパイト、セリサイト、焼成タルク、焼成マイカ、焼成セリサイト、合成マイカ、ラウロイルリジン、金属せっけん、オキシ塩化ビスマス、硫酸バリウム、又は炭酸マグネシウムの粒子であってもよい。
【0064】
無機フィラーは、任意選択で親水的に表面処理されてよい。また、無機フィラーは、任意選択により被覆されていてもよい。例えば、無機フィラーは、TiO2/シリカ、マイカ/TiO2、シリカ/TiO2、及びシリカとTiO2/TiO2との錯体等、アルミナ、二酸化チタン、シリカ、酸化アルミニウム及び/又は硫酸バリウムで被覆されていてもよい。
【0065】
フィラーは、層状晶又は非層状晶の形態であってよい。
【0066】
より好ましくは、無機フィラーは、シリカ(SiO2)粒子、酸化鉄(Fe3O4)粒子、及び二酸化チタン(TiO2)粒子であってもよい。
【0067】
有機フィラーの例としては、セルロース粉末、(メタ)アクリル又は(メタ)アクリレート粉末、例えばポリメチルメタクリレート粉末、例えばPolytrap(登録商標)、ポリアクリロニトリル粉末、オルガノポリシロキサン粉末、ポリアミド粉末、例えば、Nylon(登録商標)粉末、ポリ-β-アラニン粉末、ポリエチレン粉末、フルオロエチレン粉末、ラウロイルリジン、デンプン、中空高分子微小球体、例えば、(アルキル)アクリレートを含むもの、例えばポリ塩化ビニリデン/アクリロニトリル、例えばExpancel(登録商標)、8~22個の炭素原子を含む有機カルボン酸から誘導される金属せっけん、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、及びポリウレタン粉末で構成されるフィラーを挙げることができる。
【0068】
好ましい実施形態において、本発明による親水性かつ水分散性のフィラーは、セルロース粉末であってもよい。
【0069】
本発明によれば、「セルロース」という用語は、その構造中にβ-1,4結合を介して共に結合されたグルコース残基の配列を有する、任意の多糖類化合物を意味し、非置換セルロースに加えて、その誘導体を使用してもよい。例えば、セルロースエーテル、セルロースエステル及びセルロースエステルエーテル(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等)を使用してもよい。
【0070】
特に、本発明による親水性かつ水分散性のフィラーは、微結晶性又はナノ結晶性セルロース、好ましくは微結晶性セルロースであってもよい。
【0071】
微結晶性セルロースは、パルプとして繊維状の植物性素材から得られる、精製し、部分的に解重合したセルロースである。
【0072】
微結晶性セルロースは、粒子の形態であってもよく、粒子は、50μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm未満の平均粒径を好ましくは有する。平均粒径は、体積平均粒径を意味する。
【0073】
別の実施形態では、微結晶性セルロースは、繊維の形態であってもよく、繊維は、好ましくは、2~5nmの平均繊維径を有する。平均繊維径は、体積平均繊維径を意味する。
【0074】
微結晶性セルロースは、木材パルプ由来のセルロース繊維の単離された結晶部分であり、コロイド状(すなわち、可溶性親水コロイドで共処理された)又は非コロイド状の形態で使用することができることが好ましい場合がある。
【0075】
一実施形態では、微結晶性セルロースは、1μm未満の粒径を有するコロイド状形態、すなわち、棒状粒子の形状で使用することができる。初期粘度は、好ましくは、1から3wt%分散体として30から150cpsの範囲で選択される。更により好ましくは、(a)微結晶性セルロースは、加えて、0.1質量%以下の+60メッシュ及び75質量%以下の+325メッシュの篩分率(sieve fraction)を有する。
【0076】
(a)微結晶性セルロースは、単独で又は共処理微結晶性セルロースとしてカルボキシメチルセルロースナトリウムとの混合物の形態で使用することができる。
【0077】
微結晶性セルロースは、FMC Corporation社によって販売されている「Avicel(登録商標)PH微結晶性セルロース」及びACCENT社によって販売されている「微結晶性セルロース」であることがより好ましい場合がある。
【0078】
親水性かつ水分散性のフィラーの濃度は、複合体の総質量に対して30質量%以下でなければならない。複合体が、親水性かつ水分散性のフィラーを30質量%超の量で含む場合、複合体は、ヘアスタイル維持特性と毛髪美容効果との間に良好なバランスを達成することができない。
【0079】
親水性かつ水分散性のフィラーの濃度は、複合体の総質量に対して、25質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、最も好ましくは10質量%以下、かつ1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であってもよい。
【0080】
[組成物]
本発明はまた、少なくとも1種のポリビニルアルコール及び少なくとも1種の親水性かつ水分散性のフィラーを含む組成物であって、フィラーの濃度が、ポリビニルアルコール及びフィラーの総質量に対して30質量%以下であり、ポリビニルアルコール及びフィラーが組み合わされて複合体を形成している、組成物にも関し得る。
【0081】
組成物は、好ましくは、毛髪等のケラチン繊維のための化粧用組成物、好ましくはヘアスタイリング組成物であってもよい。
【0082】
本発明による組成物は、ビタミン、香料、真珠光沢剤、増粘剤、ゲル化剤、微量元素、鎮痛剤、金属イオン封鎖剤、塩基性化剤若しくは酸性化剤、保存料、日焼け止め剤、界面活性剤、酸化防止剤、脱毛防止剤、フケ防止剤、噴射剤若しくはセラミド、又はこれらの混合物等の、化粧品に一般的に使用される成分も含んでもよい。当然ながら、当業者は、確実に、この、若しくはこれらの任意選択の追加化合物、及び/又はその量を、本発明による組成物の有利な特性が、想定される添加により損なわれない、又は実質的に損なわれないように選択するであろう。
【0083】
本発明による組成物は、特に、水性、アルコール若しくは水性/アルコール溶液若しくは懸濁液の、油性懸濁液若しくは溶液の、水性相中に脂肪相を分散させること(O/W)若しくはその逆(W/O)によって得られる液体若しくは半液体粘度を有するエマルション若しくは分散体の、軟性粘度を有する分散体若しくはエマルションの、水性若しくは水性/アルコール若しくは油性(無水)ゲルの、又はマイクロカプセル若しくは微粒子の、又はイオン性及び/若しくは非イオン性タイプの小胞分散体の形態を有してもよい。
【0084】
当業者は、一般知識に基づき、一方で使用する構成成分の性質を考慮し、他方で組成物に想定される用途を考慮して、適切な化粧品形態及びその調製方法を選択することができる。
【0085】
特に、本発明による組成物は、毛髪の分野で、とりわけヘアスタイルの形態の保持又は毛髪整形に使用することができる。
【0086】
毛髪組成物は、好ましくは、シャンプー、ジェル、整髪ローション、送風乾燥ローション、固定化及びスタイリング組成物(ラッカー又はスプレー等)であってもよい。ローションは、噴霧形態又は発泡形態の組成物の用途を提供するために、様々な形態、特にスプレー、ポンプ式ディスペンサー又はエアロゾル容器中に包装してよい。
【0087】
[方法及び使用]
本発明による複合体は、毛髪等のケラチン繊維のための化粧用組成物、好ましくはヘアスタイリング組成物に使用することが意図されることが好ましい。
【0088】
本発明による複合体又は組成物は、好ましくは優れた美容効果(毛髪の優れた感触等)を毛髪に与えると共に、毛髪をスタイリングする方法であって、本発明による複合体又は組成物を毛髪に適用する工程を含む、方法に使用してもよい。
【0089】
特に、本発明による複合体又は組成物は、高湿度条件下でヘアスタイルを元のスタイルに戻せるようにヘアスタイルを記憶する方法であって、本発明による複合体又は組成物を毛髪に適用する工程を含む、方法に使用してもよい。また、本発明による複合体又は組成物は、高湿度条件下でヘアスタイルを維持する方法であって、本発明による複合体又は組成物を毛髪に適用する工程を含む、方法に使用してもよい。また、本発明による複合体又は組成物は、高湿度条件下でヘアスタイルを元のスタイルに戻す方法であって、本発明による複合体又は組成物を毛髪に適用する工程と、毛髪を高湿度条件にして元に戻す工程とを含む、方法に使用してもよい。
【0090】
本発明はまた、少なくとも1種のポリビニルアルコールと少なくとも1種の親水性かつ水分散性のフィラーとの組み合わせの使用であって、フィラーの濃度がポリビニルアルコール及びフィラーの総質量に対して30質量%以下である、湿度応答性複合体を形成するための、使用にも関し得る。本発明の別の態様は、少なくとも1種のポリビニルアルコールと少なくとも1種の親水性かつ水分散性のフィラーとの組み合わせであって、フィラーの濃度が、ポリビニルアルコール及びフィラーの総質量に対して30質量%以下である、湿度応答性複合体の形成における使用のための、組み合わせである。
【0091】
本発明はまた、好ましくは優れた美容効果(毛髪の優れた感触等)を有する毛髪をもたらすと共に、毛髪をスタイリングするための、本発明による複合体又は組成物の使用にも関し得る。
【0092】
特に、本発明はまた、(i)高湿度条件下でヘアスタイルを元のスタイルに戻せるようにヘアスタイルを記憶するための、又は(ii)高湿度条件下でヘアスタイルを維持するための、本発明による複合体又は組成物の使用にも関し得る。
【0093】
本発明による複合体又は組成物は、高湿度条件下でヘアスタイルを維持することができる。また、本発明による複合体又は組成物は、高湿度条件下でヘアスタイルを元のスタイルに戻すこともできる。更に、本発明による複合体又は組成物は、優れた美容効果を毛髪に付与することができる。
【実施例
【0094】
本発明を、実施例によって、より詳細に説明することにする。しかしながら、これら実施例が本発明の範囲を限定するものとは解釈すべきでない。
【0095】
(実施例1)
本発明及び比較例の複合体で作られる膜の特性
この実施例では、微結晶性セルロースを親水性かつ水分散性のフィラーとして使用した。以下に説明するように、本発明の膜を、ポリビニルアルコール(PVA)及び微結晶性セルロースを含む、微結晶性セルロースの濃度が本発明で規定された範囲内である、「本発明の配合物」から得られた本発明の複合体から調製した。比較例の膜を、PVAのみを含む、「比較例の配合物1」から得られた比較例の複合体から調製した。また、比較例の膜は、PVA及び微結晶性セルロースを含む、微結晶性セルロースの濃度が本発明で規定された範囲外にある、「比較例の配合物2」及び「比較例の配合物3」から得られた比較例の複合体からも調製した。調製した複合膜を、形状記憶特性に関して比較した。
【0096】
1.1 ポリビニルアルコールを含む配合物の調製
PVAの濃度が10質量%になるようにポリビニルアルコール(PVA)ペレット20gを蒸留水180gに添加し、混合物を、ポリビニルアルコールペレットの溶解が完了するまで、水浴中、80℃で数時間攪拌した。溶液が均一になった後、室温まで冷却して比較例の配合物1を得た。
【0097】
1.2 PVA及び微結晶性セルロースを含む配合物の調製
PVA及び微結晶性セルロースの総濃度が10質量%になるようにPVAペレット及び微結晶性セルロースを水に添加した。複合体中の微結晶性セルロースの濃度が25質量%(本発明の配合物)、50質量%(比較例の配合物2)、又は75質量%(比較例の配合物3)になるように、PVA及び微結晶性セルロースの比を変化させた。混合物を80℃で攪拌し、次いでこれを攪拌しながら冷却した。混合物を30分間、超音波処理して、泡を除去した。
【0098】
1.3 本発明及び比較例の膜の調製
本発明の配合物及び比較例の配合物それぞれを、直径10cmのプラスチックディスクに載せた。各ディスクを60℃のオーブン中で終夜静置して、約0.1mmの厚さの膜を形成した。
【0099】
1.4 本発明及び比較例の膜の形状記憶特性の比較
本発明及び比較例の膜それぞれを0.5×6cmの断片に切った。膜をねじってカールを作り、クリップ付きのガラス棒に固定した。ガラス棒を120℃のオーブン中に30分間静置して、形状記憶加工した。ガラス棒をオーブンから取り出し、室温に冷却した。重り5gを取り付けて膜を延伸し、延伸膜を終夜静置した。重りを取り除き、膜の長さを測定した(この長さは、「加湿前の膜の長さ」に相当し、これを「L1」と称した)。次いで膜を、多湿室(湿度80%~90%)中で6時間静置した。膜を室から取り出し、膜の長さを測定した(この長さは、「加湿後の膜の長さ」に相当し、これを「Lt」と称した)。形状記憶特性の百分率(SMPの%)を、以下の式によって算出した:「[(L1-Lt)/L1]x100」。
【0100】
1.5 結果
得られた結果をTable 1(表1)に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
本発明の配合物から調製した複合体のみが、高い「SMPの%」を有する膜を形成できた。これは、PVA及び微結晶性セルロース(親水性かつ水分散性のフィラー)を含む本発明の複合体のみが、高湿度条件に晒された後に元の形状に戻すことができたことを意味する。言い換えると、本発明の複合体のみが、高い湿度応答性を有する。また、親水性かつ水分散性のフィラーの濃度が重要であり、親水性かつ水分散性のフィラーの濃度が高いとき(50質量%等)、形状記憶特性は付与されないことも実証された。更に、親水性かつ水分散性のフィラーの濃度が過度に高いとき(75質量%等)、膜を形成できないことが実証された。
【0103】
(実施例2)
毛髪に適用したときの本発明及び比較例の複合体の効果
この実施例でも、微結晶性セルロースを親水性かつ水分散性のフィラーとして使用した。実施例1と同様に、本発明及び比較例の配合物を、Table 2(表2)に示すPVA、微結晶性セルロース、及び水の量に従って調製した。
【0104】
以下に説明するように、本発明及び比較例の配合物それぞれを毛髪に適用し、高湿度条件下でヘアスタイルを維持する特性(形状記憶特性及びカール維持特性)並びに毛髪美容効果を比較した。
【0105】
2.1 形状記憶特性
本発明及び比較例の配合物それぞれ0.30gを中国人の脱色した毛髪見本1gに適用した。ヘアアイロン(直径16mm)を170~180℃で20秒間使用して形状を作った。毛髪見本に10~15gの重りを付けて終夜延伸した。重りを取り除いた後、毛髪見本の長さを測定した(この長さは、「加湿前の毛髪の長さ」に相当し、これを「L1」と称した)。延伸した毛髪見本を、30℃の多湿室(湿度75~85%)中に6時間置いた。毛髪見本を室から取り出し、長さを測定した(この長さは、「加湿後の毛髪の長さ」に相当し、これを「Lt」と称した)。形状記憶特性の百分率(%SMP)を、以下の式によって算出した:「[(L1-Lt)/L1]x100」。
【0106】
2.2 カール維持特性
本発明及び比較例の配合物それぞれ0.20gを中国人の脱色した毛髪見本2.7gに適用した。ヘアアイロン(直径16mm)を170~180℃で20秒間使用して形状を作った。カールの数を計数した(この数は、「加湿前のカール数」に相当し、これを「N1」と称した)。毛髪見本を、30℃の多湿室(湿度75~85%)中に6時間置いた。毛髪見本を室から取り出し、カール数を計数した(この数は、「加湿後のカール数」に相当し、これを「Nt」と称した)。カール維持特性の百分率を、以下の式によって算出した:「100-[(N1-Nt)/N1x100]」。
【0107】
2.3 毛髪美容効果
本発明及び比較例それぞれの配合物を適用した毛髪の美容効果を、滑らかな感触に基づいて評価した。基準は以下の通りであった:「非常に良好」は、毛髪美容効果が完全に許容可能だったことを意味し、「良好」は、毛髪美容効果が適度に許容可能だったことを意味し、「不良」は、毛髪美容効果が許容不可能だったことを意味する。
【0108】
2.4 結果
得られた結果をTable 2(表2)に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
本発明の配合物A及びBのみが、(i)高湿度条件下で毛髪の形状を元の形状に戻し(すなわち、高い「SMPの%」)、高湿度条件下でヘアスタイルを長時間の間維持する(すなわち、高い「カール維持特性の%」)ことができる特性と、(ii)優れた美容効果との間に良好なバランスを達成することができた。このバランスは、比較例の配合物A~Eでは達成できなかった。特に、上記の良好なバランスは、微結晶性セルロース(親水性かつ水分散性のフィラー)の濃度が、複合体の総質量に対して37.5質量%だった比較例の配合物Cによって得られなかったため、親水性かつ水分散性のフィラーの濃度が、複合体の総質量に対して30質量%以下である場合に上記の良好なバランスが達成できることが実証された。