(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】電子式線量計
(51)【国際特許分類】
G01T 7/00 20060101AFI20250205BHJP
【FI】
G01T7/00 A
(21)【出願番号】P 2023580336
(86)(22)【出願日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2023004962
(87)【国際公開番号】W WO2023153520
(87)【国際公開日】2023-08-17
【審査請求日】2024-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2022020208
(32)【優先日】2022-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591031430
【氏名又は名称】株式会社千代田テクノル
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100203105
【氏名又は名称】江口 能弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏和
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0237419(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0270430(US,A1)
【文献】特表2014-509463(JP,A)
【文献】特表2016-525674(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0290081(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0095887(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00
G01T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
前記電子式線量計に搭載される加速度センサ及び/又はジャイロセンサにより前記電子式線量計を身体へ装着していないことを検知し、所定期間、前記電子式線量計を装着していないと判断した場合、前記アドバタイズ信号の送信を停止させる、又は前記放射線検出部への電力供給を停止する制御部を備えたことを特徴とする、請求項1記載の電子式線量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線業務従事者が装着し、放射線量データを無線で外部の受信装置へ送信する電子式線量計に関する。
【背景技術】
【0002】
現行の法令では、放射線業務従事者は、放射線業務中の放射線被ばく線量を測定しなければならず、個人用の小型の線量計(個人線量計)を装着することが義務付けられている。個人線量計としては、主にシリコン半導体が放射線検出部として用いられ、電池などにより稼働する電子式線量計と呼ばれる線量計が利用されている。
【0003】
近年、この種の電子式線量計は、外部の受信装置とのデータ通信が可能なタイプのものが提案され、装着者は、自身の被ばく線量を他の装置を介して把握することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外部装置とのデータ通信が可能な電子式線量計で測定した放射線量データは、個人被ばく線量として、装着者が電子式線量計の線量表示部から直接読み取るか、又は装着者のデータ送信の操作に基づいて受信装置へのデータ通信により読み取り、一定の期間、管理しなければならない。
【0006】
前者の方法では、装着者が線量表示部から読み取った後に、記録しなければならず、面倒である。
後者の方法では、例えば、装着者がデータを送信する操作を怠った場合には、前記受信装置へのデータ通信が行われず、被ばく線量の評価ができない。したがって、直近の放射線量データの取得は、装着者各々の管理に委ねられることとなり、これは放射線被ばく線量管理の観点から適切でない。
【0007】
また、電子式線量計は電源として主に電池を使用しており、電子式線量計が常時、放射線測定又はデータ送信を行っていると、装着していない期間も電力を消費し、短期間で電池を交換する必要がある。
だからといって、電子式線量計に電源スイッチを設け、装着者に電源の入り切りの操作を行わせるようにすると、電源の入れ忘れ、電源の切り忘れが発生する可能性がある。
【0008】
本発明は、当該電子式線量計の使用者が意識することなく、放射線量データを外部の受信装置へ送信する電子式線量計を提供することを目的とする。
また、本発明は、使用者が当該電子式線量計を装着していない場合に、電力消費を抑制する電子式線量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、放射線量データを、ブルートゥース(登録商標)のアドバタイズ信号により電子式線量計の外部へ送信することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
(1)電子式線量計に搭載される放射線検出部で計測される放射線量データを、前記電子式線量計に搭載される通信部が、ブルートゥースで用いるアドバタイズ信号により、継続的かつ一方的に送信することを特徴とする、電子式線量計。
【0011】
(1)の電子式線量計は、使用者が意識することなく、放射線量データを外部の受信装置へ送信することができる。
【0012】
(2)前記電子式線量計に搭載される加速度センサ及び/又はジャイロセンサにより前記電子式線量計を身体へ装着していないことを検知し、所定期間、前記電子式線量計を装着していないと判断した場合、前記アドバタイズ信号の送信を停止させる、又は前記放射線検出部への電力供給を停止する制御部を備えたことを特徴とする、(1)の電子式線量計。
【0013】
(2)の電子式線量計は、使用者が電子式線量計を装着していない時の電力消費を抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、放射線量データをアドバタイズ信号で常時又は定期的に送信することにより、装着者は意識することなく放射線量のデータを通信することができ、簡易的に被ばく線量の取得及び管理が可能となる。
また、電子式線量計に搭載された加速度センサ及び/又はジャイロセンサにより、電子式線量計の装着の有無を検知し、電子式線量計を装着していない期間には、放射線量データの送信を停止させる、又は放射線検出部への電力供給を停止することで、電力消費を抑えることが、可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の電子式線量計の構成を示す図である。
【
図2】本発明の電子式線量計の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面と供に説明する。
図1は、本発明の電子式線量計の構成を示す図である。
電子式線量計10は、測定した放射線被ばく線量のデータを、ブルートゥースによるアドバタイズ信号により、受信装置20へ送信する。
電子式線量計10は、加速度センサ及び/又はジャイロセンサ110、制御部120、電池130、放射線検出部140、記録部150、通信部160を備えている。
【0017】
加速度センサ及び/又はジャイロセンサ110は、加速度及び/又は角速度を測定する。
制御部120は、加速度センサ及び/又はジャイロセンサ110で測定した加速度及び/又は角速度に基づいて、使用者が電子式線量計10を装着していないことを検出し、放射線検出部140への電源供給や、通信部160の動作を制御する。
電池130は、電子式線量計10の各部への電源である。
【0018】
放射線検出部140は、主にシリコン半導体を用いており、放射線を検出する。
記録部150は、放射線検出部140が検出した放射線量データを記録する。
通信部160は、記録部150に記録された放射線量データを、常時又は定期的にブルートゥースのアドバタイズ信号により外部へ送信する。
【0019】
通信部160が、記録部150に記録された放射線量データを、常時又は定期的にブルートゥースのアドバタイズ信号により外部へ送信するので、使用者は、線量計表示部から読み取る必要がなく、また、データ送信のための操作を一々行う必要もない。
【0020】
図2は、本発明の電子式線量計の動作を示すフローチャートである。
ステップS100において、通信部160は、放射線量データをアドバタイズ信号によって外部へ送信する。また、制御部120は、電池30から放射線検出部140へ電源を供給する。
【0021】
ステップS200において、制御部120は、加速度センサ及び/又はジャイロセンサ110の出力に基づいて、使用者が電子式線量計10を装着していないことを検出する。使用者が電子式線量計10を装着せず、机の上に置いている時の加速度センサ及び/又はジャイロセンサ110の出力レベルは、使用者が電子式線量計10を装着してじっと動かない時の出力レベルよりも、はるかに小さい。したがって、制御部120は、加速度センサ及び/又はジャイロセンサ110の出力レベルに基づいて、使用者が電子式線量計10を装着していないことを検出することができる。所定期間以上、使用者が電子式線量計10を装着していない状態が継続した場合は、ステップS300へ移行する。そうでない時は、ステップS100へ移行する。
【0022】
ステップS300において、制御部120は、通信部160による放射線量データの送信を停止する。また、制御部120は、電池130から放射線検出部140への電力供給を停止させる。なお、通信部160による放射線量データの送信の停止と、電池130から放射線検出部140への電力供給の停止は、片方だけを行うこととしてもよい。
【0023】
電子式線量計10による放射線量データの送信は、受信装置20からの要求(リクエスト)に基づいて行われるわけではない。また、放射線量データを受信したことを、受信装置20が電子式線量計10に報告するわけでもない。つまり、受信装置20から電子式線量計10への方向の通信は行われないわけであるから、通信は一方向である。したがって、電子式線量計10による放射線量データの送信は、「一方的」である。
【0024】
また、放射線量データの送信は、常時又は定期的に行われるが、どこかの時点で終了して、以後、放射線量データの送信が行われなくなるわけでない。したがって、電子式線量計10による放射線量データの送信は、「継続的」である。
【0025】
以上、本発明によれば、放射線量データをアドバタイズ信号で常時又は定期的に送信することにより、装着者は意識することなく放射線量のデータを通信することができ、簡易的に被ばく線量の取得及び管理が可能となる。
また、本発明によれば、電子式線量計に搭載された加速度センサ及び/又はジャイロセンサにより、電子式線量計の装着の有無を検知し、電子式線量計を装着していない期間には、放射線量データの送信を停止させる、又は放射線検出部への電力供給を停止することで、電力消費を抑えることが、可能となる。
【符号の説明】
【0026】
10 電子式線量計
20 受信装置
110 加速度センサ及び/又はジャイロセンサ
120 制御部
130 電池
140 放射線検出部
150 記録部
160 通信部