(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】標準貫入試験装置
(51)【国際特許分類】
E02D 1/02 20060101AFI20250205BHJP
【FI】
E02D1/02
(21)【出願番号】P 2024091794
(22)【出願日】2024-06-05
【審査請求日】2024-06-05
【審判番号】
【審判請求日】2024-11-07
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591223404
【氏名又は名称】株式会社トラバース
(74)【代理人】
【識別番号】100160990
【氏名又は名称】亀崎 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】大野 真幸
【合議体】
【審判長】有家 秀郎
【審判官】津熊 哲朗
【審判官】土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6661160(JP,B1)
【文献】特許第6664649(JP,B1)
【文献】特開平4-238914(JP,A)
【文献】再公表特許第2016/194023(JP,A1)
【文献】特開平9-316932(JP,A)
【文献】特開2005-10122(JP,A)
【文献】特開2013-224516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00-3/115
G01N 3/00-3/62
E21B 1/00-19/24
E21B 44/00-44/10
E02D 7/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削具が下部に接続されているロッドを回転かつ下降可能に保持し、前記掘削具によって地盤に、N値を求める測定位置となる穴を掘削する掘削機構と、
前記掘削機構を
平面視で旋回可能に支持することで、前記掘削機構を前記測定位置から退避可能にする第1旋回支柱と、
前記第1旋回支柱の上端に設けられ、ギアを介して、前記掘削機構が保持するロッドを回転させる動力源となる油圧モーターと、
前記掘削機構が掘削した穴に配置されているサンプラーにロッドを介して接続されて、前記サンプラーを地盤に打ち込んでN値を求める打撃機構と、
前記打撃機構を
平面視で旋回可能に支持することで、前記打撃機構を前記測定位置から退避可能にする第2旋回支柱と、を備え
、
前記掘削機構は、平面視で、前記第1旋回支柱を中心として旋回可能であり、
前記打撃機構は、平面視で、前記第2旋回支柱を中心として旋回可能であることを特徴とする
標準貫入試験装置。
【請求項2】
前記油圧モーターに作動油を供給するためのホースを備えていることを特徴とする
請求項1に記載の標準貫入試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標準貫入試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、地盤に穴を掘削する掘削機構と、サンプラーを地盤に打ち込んでN値を求める打撃機構と、を備えている標準貫入試験装置が開示されている。
【0003】
これら標準貫入試験装置において、掘削機構は、ベース本体に対してスライドフレームが前後にスライドすることで、N値を求める測定位置から退避可能になっている。また、打撃機構は、ベース本体に対してスライドフレームが前後にスライドすると共に、当該打撃機構が旋回支柱を中心に旋回することで、N値を求める測定位置から退避可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6661160号公報
【文献】特許第6664649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような標準貫入試験装置は、ベース本体に対してスライドフレームが前後にスライドする構造を有しているため、装置の小型化に限界があった。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、小型化を実現させることができる標準貫入試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、掘削具が下部に接続されているロッドを回転かつ下降可能に保持し、前記掘削具によって地盤に、N値を求める測定位置となる穴を掘削する掘削機構(例えば、後述する掘削機構3)と、前記掘削機構を平面視で旋回可能に支持することで、前記掘削機構を前記測定位置から退避可能にする第1旋回支柱(例えば、後述する第1旋回支柱4)と、前記第1旋回支柱の上端に設けられ、ギアを介して、前記掘削機構が保持するロッドを回転させる動力源となる油圧モーター(例えば、後述する油圧モーター5)と、前記掘削機構が掘削した穴に配置されているサンプラーにロッドを介して接続されて、前記サンプラーを地盤に打ち込んでN値を求める打撃機構(例えば、後述する打撃機構6)と、前記打撃機構を平面視で旋回可能に支持することで、前記打撃機構を前記測定位置から退避可能にする第2旋回支柱(例えば、後述する第2旋回支柱7)と、を備え、前記掘削機構は、平面視で、前記第1旋回支柱を中心として旋回可能であり、前記打撃機構は、平面視で、前記第2旋回支柱を中心として旋回可能であることを特徴とする標準貫入試験装置である。
(2)本発明はまた、前記油圧モーターに作動油を供給するためのホースを備えていることを特徴とする上記(1)に記載の標準貫入試験装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の標準貫入試験装置によれば、掘削機構が保持するロッドを回転させる動力源として、油圧モーターを採用し、当該油圧モーターを第1旋回支柱の上端に設け、掘削機構を第1旋回支柱に旋回可能に支持させることで、掘削機構を、N値を求める測定位置から退避可能にしたので、装置の小型化を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の実施形態に係る標準貫入試験装置の正面図であり、掘削機構及び打撃機構の各々を測定位置から退避させた状態を示す。
【
図1B】標準貫入試験装置の平面模式図であり、掘削機構及び打撃機構の各々を測定位置から退避させた状態を示す。
【
図2A】標準貫入試験装置の正面図であり、掘削機構を測定位置に配置させ、打撃機構を測定位置から退避させた状態を示す。
【
図2B】標準貫入試験装置の平面模式図であり、掘削機構を測定位置に配置させ、打撃機構を測定位置から退避させた状態を示す。
【
図3A】標準貫入試験装置の正面図であり、掘削機構を測定位置から退避させ、打撃機構を測定位置に配置させた状態を示す。
【
図3B】標準貫入試験装置の平面模式図であり、掘削機構を測定位置から退避させ、打撃機構を測定位置に配置させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1A、
図1B、
図2A、
図2B、
図3A及び
図3Bを参照して、本発明の実施形態に係る標準貫入試験装置1について詳細に説明する。なお、各図において、矢印Fは前方を、矢印Bは後方を、矢印Lは左方を、矢印Rは右方を、矢印Uは上方を、矢印Dは下方を、それぞれ示す。
【0011】
まず、
図1A、
図1B、
図2A、
図2B、
図3A及び
図3Bを用いて、実施形態に係る標準貫入試験装置1の構成について説明する。
図1Aは、標準貫入試験装置1の正面図であり、掘削機構3及び打撃機構6の各々を測定位置から退避させた状態を示す。
図1Bは、標準貫入試験装置1の平面模式図であり、掘削機構3及び打撃機構6の各々を測定位置から退避させた状態を示す。
図2Aは、標準貫入試験装置1の正面図であり、掘削機構3を測定位置に配置させ、打撃機構6を測定位置から退避させた状態を示す。
図2Bは、標準貫入試験装置1の平面模式図であり、掘削機構3を測定位置に配置させ、打撃機構6を測定位置から退避させた状態を示す。
図3Aは、標準貫入試験装置1の正面図であり、掘削機構3を測定位置から退避させ、打撃機構6を測定位置に配置させた状態を示す。
図3Bは、標準貫入試験装置1の平面模式図であり、掘削機構3を測定位置から退避させ、打撃機構6を測定位置に配置させた状態を示す。
【0012】
【0013】
標準貫入試験とは、日本産業規格(JIS A 1219:2023)に規定される標準貫入試験方法による試験のことである。標準貫入試験では、地盤の穴にサンプラーを立てて、当該サンプラーにロッドを介してガイドロッド60を連結させてから、ガイドロッド60に固定したアンビル62に、63.5±0.5kgのハンマー61を760±10mmの高さから落下させて、サンプラーを打ち込む。この標準貫入試験では、サンプラーを300mm打ち込むのに必要な打撃回数を、地盤の強度を示すN値として求める。なお、ロッド、掘削具、サンプラー、ガイドロッド60及びアンビル62は、互いの連結部分がねじになっており、互いに回転させることで連結し又は取り外される。
【0014】
具体的に、標準貫入試験装置1は、ベースマシン2と、掘削機構3と、第1旋回支柱4と、油圧モーター5と、打撃機構6と、第2旋回支柱7と、吊下げ機構8と、等を備えている。
【0015】
ベースマシン2は、標準貫入試験装置1を自走可能にする。具体的に、ベースマシン2は、ベース本体20と、左右一対のキャタピラ21と、前後左右のアウトリガ22と、等を備えている。
【0016】
ベース本体20には、左右に一対のキャタピラ21が取り付けられている。このベース本体20には、前後左右にアウトリガ22が取り付けられている。
【0017】
掘削機構3は、ベース本体20の前方右寄りに設けられている第1旋回支柱4に、旋回可能に支持されている。この掘削機構3は、互いに連結され、下部に掘削具(図示省略)が接続され、上部にスイベルジョイント(図示省略)が接続されるロッド(図示省略)が上下方向に挿入可能で、当該ロッド(図示省略)を回転かつ下降可能に保持する。また、掘削機構3は、掘削具(図示省略)によって地盤に、N値を求める測定位置となる穴を掘削する。
【0018】
第1旋回支柱4は、ベース本体20の前方右寄りに設けられ、油圧シリンダ(図示省略)によって動作する。この第1旋回支柱4は、掘削機構3を旋回可能に支持することで、掘削機構3を測定位置から退避可能にする。
【0019】
油圧モーター5は、第1旋回支柱4の上端に設けられている。この油圧モーター5は、ホース(図示省略)を介して作動油が供給されることで、ギア(図示省略)を介して、掘削機構3が保持するロッドを回転させる動力源となる。
【0020】
打撃機構6は、ベース本体20の左前方に設けられている第2旋回支柱7に、旋回可能に支持されている。この打撃機構6は、掘削機構3が掘削した穴に配置されているサンプラーにロッドを介して接続されて、サンプラーを地盤に打ち込んでN値を求める。
【0021】
具体的に、打撃機構6は、ガイドロッド60と、ハンマー61と、アンビル62と、ガイドロッド用リーダ63と、ハンマーチャック64と、ハンマーチャック昇降機構(図示省略)と、等を備えている。
【0022】
ガイドロッド60は、下部にサンプラーが接続されているロッドの上端に、アンビル62を介して接続されて、ハンマー61の自由落下を案内する。このガイドロッド60は、ガイドロッド用リーダ63の前方に当該ガイドロッド用リーダ63と平行となるように、当該ガイドロッド用リーダ63に対して上下動可能に支持されている。また、ガイドロッド60は、当該ガイドロッド60の途中(例えば、下端から760±10mmの高さの位置)にこぶ60aを有している。こぶ60aは、当該こぶ60aにハンマーチャック64が到達した時に、ハンマーチャック64によるハンマー61の保持を解除して、ハンマー61を自由落下させる。
【0023】
ハンマー61は、ガイドロッド60に沿って移動可能に設けられている。このハンマー61は、ガイドロッド60に沿って自由落下してアンビル62に衝突することで、アンビル62を打撃して、サンプラーを間接的に打撃する。
【0024】
アンビル62は、下部にサンプラーが接続されているロッドの上端と、ガイドロッド60の下端と、の間に介在して、自由落下したハンマー61に打撃される。
【0025】
ガイドロッド用リーダ63は、ガイドロッド60の後方に当該ガイドロッド60と平行となるように、ベース本体20の左前方に、第2旋回支柱7を介して立設される。ガイドロッド用リーダ63には、当該ガイドロッド用リーダ63に沿って移動可能にハンマーチャック64が取り付けられている。このガイドロッド用リーダ63は、ハンマーチャック昇降機構(図示省略)を内蔵している。
【0026】
ハンマーチャック64は、ガイドロッド60及びガイドロッド用リーダ63に沿って移動可能に設けられており、ハンマー61を保持すると共に、保持したハンマー61を上方に移動させてから当該ハンマー61の保持を解除して、当該ハンマー61を自由落下させる。
【0027】
ハンマーチャック昇降機構(図示省略)は、ハンマーチャック64が固定されているエンドレスチェーン(図示省略)と、エンドレスチェーン(図示省略)を走行させるスプロケット(図示省略)と、等から構成されており、エンドレスチェーン(図示省略)の走行に伴って、ハンマーチャック64をガイドロッド用リーダ63に沿って昇降させる。
【0028】
第2旋回支柱7は、ベース本体20の左前方に設けられ、油圧シリンダ(図示省略)によって動作する。この第2旋回支柱7は、打撃機構6を旋回可能に支持することで、打撃機構6を測定位置から退避可能にすると共に、吊下げ機構8を測定位置に配置可能にする。
【0029】
吊下げ機構8は、ガイドロッド用リーダ63の後方に設けられている。この吊下げ機構8は、サンプラーを穴から吊り下げる際に用いられる。具体的に、吊下げ機構8は、ウインチ80と、ワイヤー81と、滑車82と、フック83と、等を備えている。
【0030】
ウインチ80は、ガイドロッド用リーダ63の背面に設けられている。このウインチ80は、ワイヤー81の巻取り及び繰出しを行うことで、ワイヤー81の先端に取り付けられたフック83の上げ下げを行う。
【0031】
ワイヤー81は、ウインチ80からガイドロッド用リーダ63に沿って上方の滑車82に向かって延びていると共に、滑車82で折り返して下方に延びている。このワイヤー81は、ウインチ80に巻き取られ及び繰り出されることで、当該ワイヤー81の先端に設けられたフック83を上げ下げする。
【0032】
滑車82は、ガイドロッド用リーダ63の上方に設けられている。この滑車82は、ウインチ80からガイドロッド用リーダ63に沿って延びているワイヤー81を引っ掛けていて、当該ワイヤー81を下方に向けて折り返されている。
【0033】
フック83は、ワイヤー81の先端に取り付けられている。このフック83は、ワイヤー81に吊り下げられていて、ワイヤー81の巻取り及び繰出しが行われることで、上げ下げが行われる。
【0034】
【0035】
図1A及び
図1Bに示すように、標準貫入試験装置1は、初期状態において、掘削機構3及び打撃機構6の各々が測定位置から退避している。
【0036】
図2A及び
図2Bに示すように、標準貫入試験装置1は、地盤に穴を掘削する場合、掘削機構3を測定位置に配置させ、打撃機構6を測定位置から退避させておく。
【0037】
図3A及び
図3Bに示すように、標準貫入試験装置1は、N値を求める場合、掘削機構を測定位置から退避させ、打撃機構6を測定位置に配置させておく。
【0038】
すなわち、標準貫入試験装置1は、地盤に穴を掘削する場合、測定位置から退避している掘削機構3を測定位置に移動させ、測定位置から退避している打撃機構6をそのままとし、打撃機構6の測定位置から退避している状態を維持する。地盤に穴を掘削した後、標準貫入試験装置1は、掘削機構3を測定位置から退避させる。
【0039】
標準貫入試験装置1は、N値を求める場合、測定位置から退避している打撃機構6を測定位置に移動させ、測定位置から退避している掘削機構3をそのままとし、掘削機構3の測定位置から退避している状態を維持する。N値を求めた後、標準貫入試験装置1は、打撃機構6を測定位置から退避させる。
【0040】
このように、標準貫入試験装置1は、掘削具が下部に接続されているロッドを回転かつ下降可能に保持し、掘削具によって地盤に、N値を求める測定位置となる穴を掘削する掘削機構3と、掘削機構3を旋回可能に支持することで、掘削機構3を測定位置から退避可能にする第1旋回支柱4と、第1旋回支柱4の上端に設けられ、ギアを介して、掘削機構3が保持するロッドを回転させる動力源となる油圧モーター5と、掘削機構3が掘削した穴に配置されているサンプラーにロッドを介して接続されて、サンプラーを地盤に打ち込んでN値を求める打撃機構6と、打撃機構6を旋回可能に支持することで、打撃機構6を測定位置から退避可能にする第2旋回支柱7と、を備えている。
【0041】
したがって、標準貫入試験装置1によれば、掘削機構3が保持するロッドを回転させる動力源として、油圧モーター5を採用し、当該油圧モーター5を第1旋回支柱4の上端に設け、掘削機構3を第1旋回支柱4に旋回可能に支持させることで、掘削機構3を、N値を求める測定位置から退避可能にしたので、装置の小型化を実現させることができる。
【0042】
本発明は、上記各実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。すなわち、各構成の位置、大きさ、長さ、数量、形状、材質などは適宜変更できる。
【符号の説明】
【0043】
1 標準貫入試験装置
2 ベースマシン
20 ベース本体
21 キャタピラ
22 アウトリガ
3 掘削機構
4 第1旋回支柱
5 油圧モーター
6 打撃機構
60 ガイドロッド
60a こぶ
61 ハンマー
62 アンビル
63 ガイドロッド用リーダ
64 ハンマーチャック
7 第2旋回支柱
8 吊下げ機構
80 ウインチ
81 ワイヤー
82 滑車
83 フック
F 前方
B 後方
L 左方
R 右方
U 上方
D 下方
【要約】
【課題】小型化を実現させることができる標準貫入試験装置を提供する。
【解決手段】標準貫入試験装置1は、掘削具が下部に接続されているロッドを回転かつ下降可能に保持し、掘削具によって地盤に、N値を求める測定位置となる穴を掘削する掘削機構3と、掘削機構3を旋回可能に支持することで、掘削機構3を測定位置から退避可能にする第1旋回支柱4と、第1旋回支柱4の上端に設けられ、ギアを介して、掘削機構3が保持するロッドを回転させる油圧モーター5と、掘削機構3が掘削した穴に配置されているサンプラーにロッドを介して接続されて、サンプラーを地盤に打ち込んでN値を求める打撃機構6と、打撃機構6を旋回可能に支持することで、打撃機構6を測定位置から退避可能にする第2旋回支柱7と、を備えている。
【選択図】
図1B