(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】ミラーゲートネットワークに基づく自己適応時間間隔の船舶航跡予測方法
(51)【国際特許分類】
G06N 3/0895 20230101AFI20250205BHJP
G06N 3/0442 20230101ALI20250205BHJP
G08G 3/00 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
G06N3/0895
G06N3/0442
G08G3/00 A
(21)【出願番号】P 2024158898
(22)【出願日】2024-09-13
【審査請求日】2024-09-13
(31)【優先権主張番号】202410170188.8
(32)【優先日】2024-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515352847
【氏名又は名称】大連海事大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】左 毅
(72)【発明者】
【氏名】江 俊豪
(72)【発明者】
【氏名】▲トン▼ 紹成
(72)【発明者】
【氏名】李 鉄山
(72)【発明者】
【氏名】章 文俊
(72)【発明者】
【氏名】肖 楊
【審査官】大倉 崚吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2023/0093630(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第117093889(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第116629116(CN,A)
【文献】JIANG, Junhao et al.,"Prediction of Ship Trajectory in Nearby Port Waters Based on Attention Mechanism Model",Sustainability,MDPI,2023年,Vol. 15,Issue 9,p. 1-31,[2024年10月07日検索],インターネット<URL:https://www.mdpi.com/2071-1050/15/9/7435>,DOI: 10.3390/su15097435
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
G06F 18/00-18/40
G08G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーゲートネットワークを構築する工程S1と、
等時間間隔の航跡特徴点を抽出する工程S2と、
入力航跡データを構築する工程S3と、及び、
可変長時間間隔の自己適応航跡予測モデルを構築する工程S4と、を含み、
S1において、前記ミラーゲートネットワークは順方向ゲートユニットと逆方向ゲートユニットとを備え、
S1は、以下のS11~S14のステップを含み、
S11、前記ミラーゲートネットワークの前記順方向ゲートユニットを設定し、
S11において、前記順方向ゲートユニットが順方向合流ゲートと順方向分流ゲートと順方向再生ゲートとを備え、前記順方向ゲートユニットは、航跡情報の入力と出力の制御に用いられ、
S11は、以下のS111~S113のステップを含み、
S111、前記順方向合流ゲートが、現在の航跡情報入力状態x
tと前のゲートユニットのユニット状態
【数1】
と前のゲートユニットの隠れ層状態
【数2】
とを備え、前記順方向合流ゲートがすべての入力情報の集約を担当し、計算式は、以下の通りであり、
【数3】
ここで、
【数4】
は、それぞれ
【数5】
の重みを表し、sigmoidは、起動関数を表し、
S112、前記順方向分流ゲートが、前記順方向合流ゲートを通した情報を、それぞれ前のゲートユニットのユニット状態
【数6】
と前のゲートユニットの隠れ層状態
【数7】
とともに分流を形成して新しいユニット状態
【数8】
と隠れ層状態
【数9】
を得て、計算式は、以下の通りであり、
【数10】
ここで、
【数11】
は、それぞれ
【数12】
を計算する過程に対応する重みを表し、tanhは起動関数を表し、
S113、前記順方向再生ゲートが、前記順方向合流ゲートを通した情報を、現在の航跡情報入力状態x
tと現在のユニットのユニット状態
【数13】
及び隠れ層状態
【数14】
とともに新しい状態
【数15】
を生成し、計算式は、以下の通りであり、
【数16】
ここで、
【数17】
は、それぞれ
【数18】
を生成する過程において
【数19】
に対応する重みを表し、
S12、前記ミラーゲートネットワークの前記逆方向ゲートユニットを設定し、
S12において、前記逆方向ゲートユニットは逆方向合流ゲートと逆方向分流ゲートと逆方向再生ゲートとを備え、前記逆方向ゲートユニットは入力情報に対して逆方向操作を行い、
S12は、以下のS121~S123のステップを含み、
S121、前記逆方向合流ゲートが、現在の航跡情報入力状態x
tと次のゲートユニットのユニット状態
【数20】
と次のゲートユニットの隠れ層状態
【数21】
とを備え、前記逆方向合流ゲートはすべての入力情報の集約を担当し、計算式は、以下の通りであり、
【数22】
ここで、
【数23】
は、それぞれ
【数24】
の重みを表し、
S122、前記逆方向分流ゲートが、次の式に従って、前記逆方向合流ゲートを通した情報を、それぞれ次のゲートユニットのユニット状態
【数25】
と次のゲートユニットの隠れ層状態
【数26】
とともに分流を形成して新しいユニット状態
【数27】
と隠れ層状態
【数28】
を得、計算式は、以下の通りであり、
【数29】
ここで、
【数30】
は、それぞれ逆方向分流ゲートを計算する過程において
【数31】
に対応する重みを表し、
S123、前記逆方向再生ゲートが、前記逆方向合流ゲートを通した情報を、現在の航跡情報入力状態x
tと現在のユニットのユニット状態
【数32】
及び隠れ層状態
【数33】
とともに新しい状態
【数34】
を生成し、計算式は、以下の通りであり、
【数35】
ここで、
【数36】
は、それぞれ
【数37】
を生成する過程において
【数38】
に対応する重みを表し、
S13、前記順方向ゲートユニットを順方向に逐次接続し、前記逆方向ゲートユニットを逆方向に逐次接続し、同じ時間距離での前記順方向ゲートユニットと前記逆方向ゲートユニットの状態を合併して、前記ミラーゲートネットワークを構築し、計算式は以下の通りであり、
【数39】
ここで、
【数40】
は、合併操作を表し、
S14、前記ミラーゲートネットワークで計算を行って、次のような予測出力情報を得、
【数41】
ここで、w
gyは、
【数42】
の重みを表し、
S2は、以下のS21~S24のステップを含み、
S21、自己適応時間間隔の特徴点を抽出する方式により、同じ海域で収集されたAISデータ中の航跡P
kを定義して、航跡特徴ベクトルで表し、計算式は、以下の通りであり、
P
k={p
1
k,p
2
k,...,p
i
k,...,p
l
k}
ここで、p
i
kは、タイムスタンプがiとなる時の海域内のk番目の船の航跡P
kの航跡点を表し、p
i
kの特徴は以下の式で表し、
p
i
k=(lon
i
k,lat
i
k,cog
i
k,sog
i
k)
ここで、lon
i
kは船の経度値を表し、lat
i
kは船の緯度値を表し、cog
i
kは船の対地針路を表し、sog
i
kは船の対地速度を表し、
自己適応時間間隔とtとして定義し、次の式で表し、
t=(t
1,t
2,...,t
i,...,t
n)
ここで、t
iは、P
k中のi番目の航跡点の時間距離を表し、
S22、区間[t
i,t
i+1]において、次の式で表される補間関数を定義し、
X
i(t
i)=a
it
i
3+b
it
i
2+c
it
i+d
i
X
i+1(t
i+1)=a
it
i+1
3+b
it
i+1
2+c
it
i+1+d
i
上記関数に対して一次導関数を求めて、次の式を得、
X
i(t
i)′=3a
it
i
2+2b
it
i+c
i
X
i+1(t
i+1)′=3a
it
i+1
2+2b
it
i+1+c
i
前記補間関数と前記補間関数の導関数を結合し、方程式を解くことでa
i、b
i、c
i及びd
iの値を求め、
S23、X
i(t
i)′及びX
i+1(t
i+1)′の値を計算し、ここで、補間関数のすべての中間点をM
j(t
j,x
j)として定義し、次の式に従ってM
jの左右座標点の1階差分商をそれぞれk
jとk
j+1で表し、
【数43】
次の式に従って、中間点M
jの左と右にある2つの隣接する期間の重みをそれぞれω
j及びω
j+1と定義し、
【数44】
次の式に従って、中間点M
jにおける1次導関数X
j(t)′を近似に求め、
【数45】
S24、航跡記録期間を均等に分割してから得られた時系列を、各期間における経度と緯度の補間関数に代入して、当該航跡の等時間間隔で抽出された特徴点を求め、
S3は、以下のS31~S32のステップを含み、
S31、航跡データの時系列特性、動的パターン及び相関情報を保持し、モデルに航跡データの変化/進化プロセスをよりよく学習させるために、移動時間ウィンドウを確立する移動時間ウィンドウ処理を行い、前記移動時間ウィンドウの長さをL、移動距離をL/qと設定し、ここで、qが柔軟に選択された整数であり、qが小さいほど、データの前後相関性が強くなることを表し、
S32、自己適応時間間隔の特徴抽出と移動時間ウィンドウ処理を行ったAISデータを、前記ミラーゲートネットワークに入力して、前記順方向ゲートユニットと前記逆方向ゲートユニットをそれぞれ訓練し、前記ミラーゲートネットワークにより1つ又は複数の軌跡を訓練及び予測し、時刻tにおける入力データI
tと出力データO
tを次の式で表し、
【数46】
ここで、rは予測された航跡の数を表し、S
t
kは、時刻tにおいて処理されたk番目の船舶の航跡データを表し、lon
t
kは時刻tにおける補間後の経度を表し、lat
t
kは時刻tにおける補間後の緯度を表し、cog
t
kは、時刻tにおける補間後の緯度と経度に対応する針路を表し、sog
t
kは時刻tにおける補間後の緯度と経度に対応する航行速度を表し,Lは時刻tにおける移動時間ウィンドウの長さを示し、uはモデルの予測された軌跡の長さを表し、
S4において、各入力データをN個の順方向ゲートユニットとN個の逆方向ゲートユニットを介して訓練し、ミラーゲートネットワークの最終結果に基づいて自己適応可変長Nを決めて、そして最適な航跡予測結果を取得する、
ことを特徴とするミラーゲートネットワークに基づく自己適応時間間隔の船舶航跡予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶航跡予測の技術分野に関し、特にミラーゲートネットワークに基づく自己適応時間間隔の船舶航跡予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人工知能技術の継続的な発展に伴い、深層学習は船舶航跡予測の分野で飛躍的進歩を成し遂げた。代表的な軌跡予測法は、人工ニューラルネットワーク(Artificial Neural Network、ANN)や再帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network、RNN)や長短期記憶ネットワーク(Long Short Term Memory、 LSTM)やゲート再帰型ユニット(Gate Recurrent Unit、GRU)等を含む。その上、時間畳み込みネットワーク(Temporal Convolutional Network、TCN)は、時系列モデル化及び特徴捕捉における利点から、ますます注目を集めている。その後、提案された注意力機制は新たな潮流となり、この最先端の方法が軌跡予測の分野に徐々に応用されてから多くの変異型を導き出した。注意力機制の導入は、モデルがデータ内の重要な情報の抽出に役立つようにする。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、航跡予測における誤差を最小限に抑えるために損失関数を用いてモデル学習を行う予測モデルを開示しているが、航跡前後の依存関係や動的パターンを捉えることが困難であり、予測モデルの優劣を評価するための損失関数が必要であり、汎化学習や適応力不足などの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第117093889号明細書
【文献】中国特許出願公開第116629116号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術に存在する上記課題に鑑みてなされたものであって、時系列データにおける依存関係や動的パターンを理解・捕捉できる、ミラーゲートネットワークに基づく自己適応時間間隔の船舶航跡予測方法を提案することを目的とする。本発明は、ミラー学習に基づくニューラルネットワーク技術を初めて提案し、モデルの自己学習と結果の自己照合の方式を採用して、それぞれ両端からミラーが重なるまで双方向に移動することで、損失関数の評価なしに予測モデルの訓練を完了することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の解決手段は以下のとおりである。
【0007】
本発明の一形態であるミラーゲートネットワークに基づく自己適応時間間隔の船舶航跡予測方法は、以下のS1~S4の工程を含み、
S1、ミラーゲートネットワークを構築する工程、
S2、等時間間隔の航跡特徴点を抽出する工程、
S3、入力航跡データを構築する工程、及び
S4、可変長時間間隔の自己適応航跡予測モデルを構築する工程、
S1において、前記ミラーゲートネットワークは順方向ゲートユニットと逆方向ゲートユニットとを備え、
S1は、以下のS11~S14のステップを含み、
S11、前記ミラーゲートネットワークの前記順方向ゲートユニットを設定し、
S11において、前記順方向ゲートユニットが順方向合流ゲートと順方向分流ゲートと順方向再生ゲートとを備え、前記順方向ゲートユニットは、航跡情報の入力と出力の制御に用いられ、
S11は、以下のS111~S113のステップを含み、
S111、前記順方向合流ゲートが、現在の航跡情報入力状態x
tと前のゲートユニットのユニット状態
【数1】
と前のゲートユニットの隠れ層状態
【数2】
とを備え、前記順方向合流ゲートがすべての入力情報の集約を担当し、計算式は、以下の通りであり、
【数3】
ここで、
【数4】
は、それぞれ
【数5】
の重みを表し、sigmoidは、起動関数を表す。
【0008】
S112、前記順方向分流ゲートが、前記順方向合流ゲートを通した情報を、それぞれ前のゲートユニットのユニット状態
【数6】
と前のゲートユニットの隠れ層状態
【数7】
とともに分流を形成して新しいユニット状態
【数8】
と隠れ層状態
【数9】
を得て、計算式は、以下の通りであり、
【数10】
ここで、
【数11】
は、それぞれ
【数12】
を計算する過程に対応する重みを表し、tanhは起動関数を表す。
【0009】
S113、前記順方向再生ゲートが、前記順方向合流ゲートを通した情報を、現在の航跡情報入力状態x
tと現在のユニットのユニット状態
【数13】
及び隠れ層状態
【数14】
とともに新しい状態
【数15】
を生成し、計算式は、以下の通りであり、
【数16】
ここで、
【数17】
は、それぞれ
【数18】
を生成する過程において
【数19】
に対応する重みを表す。
【0010】
S12、前記ミラーゲートネットワークの前記逆方向ゲートユニットを設定し、
S12において、前記逆方向ゲートユニットは逆方向合流ゲートと逆方向分流ゲートと逆方向再生ゲートとを備え、前記逆方向ゲートユニットは入力情報に対して逆方向操作を行い、
S12は、以下のS121~S123のステップを含み、
S121、前記逆方向合流ゲートが、現在の航跡情報入力状態x
tと次のゲートユニットのユニット状態
【数20】
と次のゲートユニットの隠れ層状態
【数21】
とを備え、前記逆方向合流ゲートはすべての入力情報の集約を担当し、計算式は、以下の通りであり、
【数22】
ここで、
【数23】
は、それぞれ
【数24】
の重みを表す。
【0011】
S122、前記逆方向分流ゲートが、次の式に従って、前記逆方向合流ゲートを通した情報を、それぞれ次のゲートユニットのユニット状態
【数25】
と次のゲートユニットの隠れ層状態
【数26】
とともに分流を形成して新しいユニット状態
【数27】
と隠れ層状態
【数28】
を得、計算式は、以下の通りであり、
【数29】
ここで、
【数30】
は、それぞれ逆方向分流ゲートを計算する過程において
【数31】
に対応する重みを表す。
【0012】
S123、前記逆方向再生ゲートが、前記逆方向合流ゲートを通した情報を、現在の航跡情報入力状態x
tと現在のユニットのユニット状態
【数32】
及び隠れ層状態
【数33】
とともに新しい状態
【数34】
を生成し、計算式は、以下の通りであり、
【数35】
ここで、
【数36】
は、それぞれ
【数37】
を生成する過程において
【数38】
に対応する重みを表す。
【0013】
S13、前記順方向ゲートユニットを順方向に逐次接続し、前記逆方向ゲートユニットを逆方向に逐次接続し、同じ時間距離での前記順方向ゲートユニットと前記逆方向ゲートユニットの状態を合併して、前記ミラーゲートネットワークを構築し、計算式は以下の通りであり、
【数39】
ここで、
【数40】
は、合併操作を表す。
【0014】
S14、前記ミラーゲートネットワークで計算を行って、次のような予測出力情報を得、
【数41】
ここで、w
gyは、
【数42】
の重みを表す。
【0015】
S2は、以下のS21~S24のステップを含み、
S21、自己適応時間間隔の特徴点を抽出する方式により、同じ海域で収集されたAISデータ中の航跡Pkを定義して、航跡特徴ベクトルで表し、計算式は、以下の通りであり、
Pk={p1
k,p2
k,...,pi
k,...,pl
k}
ここで、pi
kは、タイムスタンプがiとなる時の海域内のk番目の船の航跡Pkの航跡点を表し、pi
kの特徴は以下の式で表し、
pi
k=(loni
k,lati
k,cogi
k,sogi
k)
ここで、loni
kは船の経度値を表し、lati
kは船の緯度値を表し、cogi
kは船の対地針路を表し、sogi
kは船の対地速度を表し、
自己適応時間間隔とtとして定義し、次の式で表し、
t=(t1,t2,...,ti,...,tn)
ここで、tiは、Pk中のi番目の航跡点の時間距離を表す。
【0016】
S22、区間[ti,ti+1]において、次の式で表される補間関数を定義し、
Xi(ti)=aiti
3+biti
2+citi+di
Xi+1(ti+1)=aiti+1
3+biti+1
2+citi+1+di
上記関数に対して一次導関数を求めて、次の式を得、
Xi(ti)′=3aiti
2+2biti+ci
Xi+1(ti+1)′=3aiti+1
2+2biti+1+ci
前記補間関数と前記補間関数の導関数を結合し、方程式を解くことでai、bi、ci及びdiの値を求める。
【0017】
S23、X
i(t
i)′及びX
i+1(t
i+1)′の値を計算し、ここで、補間関数のすべての中間点をM
j(t
j,x
j)として定義し、次の式に従ってM
jの左右座標点の1階差分商をそれぞれk
jとk
j+1で表し、
【数43】
次の式に従って、中間点M
jの左と右にある2つの隣接する期間の重みをそれぞれω
j及びω
j+1と定義し、
【数44】
次の式に従って、中間点M
jにおける1次導関数X
j(t)′を近似に求める。
【数45】
【0018】
S24、航跡記録期間を均等に分割してから得られた時系列を、各期間における経度と緯度の補間関数に代入して、当該航跡の等時間間隔で抽出された特徴点を求める。
【0019】
S3は、以下のS31~S32のステップを含み、
S31、航跡データの時系列特性、動的パターン及び相関情報を保持し、モデルに航跡データの変化/進化プロセスをよりよく学習させるために、移動時間ウィンドウを確立する移動時間ウィンドウ処理を行い、前記移動時間ウィンドウの長さをL、移動距離をL/qと設定し、ここで、qが柔軟に選択された整数であり、qが小さいほど、データの前後相関性が強くなることを表す。
【0020】
S32、自己適応時間間隔の特徴抽出と移動時間ウィンドウ処理を行ったAISデータを、前記ミラーゲートネットワークに入力して、前記順方向ゲートユニットと前記逆方向ゲートユニットをそれぞれ訓練し、前記ミラーゲートネットワークにより1つ又は複数の軌跡を訓練及び予測し、時刻tにおける入力データI
tと出力データO
tを次の式で表し、
【数46】
ここで、rは予測された航跡の数を表し、S
t
kは、時刻tにおいて処理されたk番目の船舶の航跡データを表し、lon
t
kは時刻tにおける補間後の経度を表し、lat
t
kは時刻tにおける補間後の緯度を表し、cog
t
kは、時刻tにおける補間後の緯度と経度に対応する針路を表し、sog
t
kは時刻tにおける補間後の緯度と経度に対応する航行速度を表し,Lは時刻tにおける移動時間ウィンドウの長さを示し、uはモデルの予測された軌跡の長さを表す。
【0021】
S4において、各入力データをN個の順方向ゲートユニットとN個の逆方向ゲートユニットを介して訓練し、ミラーゲートネットワークの最終結果に基づいて自己適応可変長Nを決めて、そして最適な航跡予測結果を取得する。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、従来技術に比べて次の有益な効果を有する。
【0023】
1、本発明は、新型のミラーゲートネットワークを構築したので、ミラーゲートをそれぞれデータの両端から学習させ、時間距離を調整することで、モデルによって得られた誤差が収束条件を満たす場合に、軌跡予測モデルの訓練を成し遂げる。この新型ゲート構造は、航跡前後の依存関係と動的パターンを深く捉える。
【0024】
2、本発明によって構築されたミラーネットワークは、両端から行われる学習能力により、モデルがデータ内の隠れたモードを自発的に発見して利用して自身の自律的な学習と適応能力を十分に発揮するようにするため、より高い航跡予測精度を成し遂げる。
【0025】
3、本発明は、自己適応時間間隔の特徴抽出の方式により、異なる航跡のデータ自己適応整列を成し遂げる上に、多重航跡予測用入力データを構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明のフローチャートを概略的に示す図である
【
図2】順方向ゲートと逆方向ゲートを概略的に示す図である
【
図3】ミラーゲートネットワークを概略的に示す図である。
【
図4】等時間間隔AIS点の抽出を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
我々は、次の図面と組み合わせて本発明を更に説明する。
図1に示すように、ミラーゲートネットワークに基づく自己適応時間間隔の船舶航跡予測方法は、次の工程を含む。
【0028】
S1、ミラーゲートネットワークを構築する。
図2は、順方向ゲートと逆方向ゲートの具体的な構造を示す。
図3は、順方向ゲートと逆方向ゲートに基づいて構築されたミラーゲートネットワークの細部を示す。当該構造を基本モデルとして利用する。
【0029】
S2、等時間間隔データを整列する。
図4に示すように、lon、lat、cog、及びsogという4つの異なる次元で補間関数を構築してデータ整列を成し遂げる。
【0030】
S3、入力データを構築する。
図5に示すように、整列された航跡データに対して長さがLで、歩幅がL/qとなる移動時間ウィンドウ処理を行い、様々な航跡データを合併して、多重航跡予測モデルの入力を構築する。
【0031】
S4、可変長時間間隔の自己適応航跡予測モデルを構築する。
図6に示すように、N個の順、逆方向ゲートネットワークを訓練し、順方向ゲートと逆方向ゲートの損失(loss)が最小になった時点で訓練を停止し、最終結果に応じて自己適応可変長のNを決める。
【0032】
本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明で開示された技術的範囲内における同等の発想又は変更は、何れも本発明の保護範囲に含まれる。
【0033】
(付記)
(付記1)
ミラーゲートネットワークを構築する工程S1と、
等時間間隔の航跡特徴点を抽出する工程S2と、
入力航跡データを構築する工程S3と、及び、
可変長時間間隔の自己適応航跡予測モデルを構築する工程S4と、を含み、
S1において、前記ミラーゲートネットワークは順方向ゲートユニットと逆方向ゲートユニットとを備え、
S1は、以下のS11~S14のステップを含み、
S11、前記ミラーゲートネットワークの前記順方向ゲートユニットを設定し、
S11において、前記順方向ゲートユニットが順方向合流ゲートと順方向分流ゲートと順方向再生ゲートとを備え、前記順方向ゲートユニットは、航跡情報の入力と出力の制御に用いられ、
S11は、以下のS111~S113のステップを含み、
S111、前記順方向合流ゲートが、現在の航跡情報入力状態x
tと前のゲートユニットのユニット状態
【数47】
と前のゲートユニットの隠れ層状態
【数48】
とを備え、前記順方向合流ゲートがすべての入力情報の集約を担当し、計算式は、以下の通りであり、
【数49】
ここで、
【数50】
は、それぞれ
【数51】
の重みを表し、sigmoidは、起動関数を表し、
S112、前記順方向分流ゲートが、前記順方向合流ゲートを通した情報を、それぞれ前のゲートユニットのユニット状態
【数52】
と前のゲートユニットの隠れ層状態
【数53】
とともに分流を形成して新しいユニット状態
【数54】
と隠れ層状態
【数55】
を得て、計算式は、以下の通りであり、
【数56】
ここで、
【数57】
は、それぞれ
【数58】
を計算する過程に対応する重みを表し、tanhは起動関数を表し、
S113、前記順方向再生ゲートが、前記順方向合流ゲートを通した情報を、現在の航跡情報入力状態x
tと現在のユニットのユニット状態
【数59】
及び隠れ層状態
【数60】
とともに新しい状態
【数61】
を生成し、計算式は、以下の通りであり、
【数62】
ここで、
【数63】
は、それぞれ
【数64】
を生成する過程において
【数65】
に対応する重みを表し、
S12、前記ミラーゲートネットワークの前記逆方向ゲートユニットを設定し、
S12において、前記逆方向ゲートユニットは逆方向合流ゲートと逆方向分流ゲートと逆方向再生ゲートとを備え、前記逆方向ゲートユニットは入力情報に対して逆方向操作を行い、
S12は、以下のS121~S123のステップを含み、
S121、前記逆方向合流ゲートが、現在の航跡情報入力状態x
tと次のゲートユニットのユニット状態
【数66】
と次のゲートユニットの隠れ層状態
【数67】
とを備え、前記逆方向合流ゲートはすべての入力情報の集約を担当し、計算式は、以下の通りであり、
【数68】
ここで、
【数69】
は、それぞれ
【数70】
の重みを表し、
S122、前記逆方向分流ゲートが、次の式に従って、前記逆方向合流ゲートを通した情報を、それぞれ次のゲートユニットのユニット状態
【数71】
と次のゲートユニットの隠れ層状態
【数72】
とともに分流を形成して新しいユニット状態
【数73】
と隠れ層状態
【数74】
を得、計算式は、以下の通りであり、
【数75】
ここで、
【数76】
は、それぞれ逆方向分流ゲートを計算する過程において
【数77】
に対応する重みを表し、
S123、前記逆方向再生ゲートが、前記逆方向合流ゲートを通した情報を、現在の航跡情報入力状態x
tと現在のユニットのユニット状態
【数78】
及び隠れ層状態
【数79】
とともに新しい状態
【数80】
を生成し、計算式は、以下の通りであり、
【数81】
ここで、
【数82】
は、それぞれ
【数83】
を生成する過程において
【数84】
に対応する重みを表し、
S13、前記順方向ゲートユニットを順方向に逐次接続し、前記逆方向ゲートユニットを逆方向に逐次接続し、同じ時間距離での前記順方向ゲートユニットと前記逆方向ゲートユニットの状態を合併して、前記ミラーゲートネットワークを構築し、計算式は以下の通りであり、
【数85】
ここで、
【数86】
は、合併操作を表し、
S14、前記ミラーゲートネットワークで計算を行って、次のような予測出力情報を得、
【数87】
ここで、w
gyは、
【数88】
の重みを表し、
S2は、以下のS21~S24のステップを含み、
S21、自己適応時間間隔の特徴点を抽出する方式により、同じ海域で収集されたAISデータ中の航跡P
kを定義して、航跡特徴ベクトルで表し、計算式は、以下の通りであり、
P
k={p
1
k,p
2
k,...,p
i
k,...,p
l
k}
ここで、p
i
kは、タイムスタンプがiとなる時の海域内のk番目の船の航跡P
kの航跡点を表し、p
i
kの特徴は以下の式で表し、
p
i
k=(lon
i
k,lat
i
k,cog
i
k,sog
i
k)
ここで、lon
i
kは船の経度値を表し、lat
i
kは船の緯度値を表し、cog
i
kは船の対地針路を表し、sog
i
kは船の対地速度を表し、
自己適応時間間隔とtとして定義し、次の式で表し、
t=(t
1,t
2,...,t
i,...,t
n)
ここで、t
iは、P
k中のi番目の航跡点の時間距離を表し、
S22、区間[t
i,t
i+1]において、次の式で表される補間関数を定義し、
X
i(t
i)=a
it
i
3+b
it
i
2+c
it
i+d
i
X
i+1(t
i+1)=a
it
i+1
3+b
it
i+1
2+c
it
i+1+d
i
上記関数に対して一次導関数を求めて、次の式を得、
X
i(t
i)′=3a
it
i
2+2b
it
i+c
i
X
i+1(t
i+1)′=3a
it
i+1
2+2b
it
i+1+c
i
前記補間関数と前記補間関数の導関数を結合し、方程式を解くことでa
i、b
i、c
i及びd
iの値を求め、
S23、X
i(t
i)′及びX
i+1(t
i+1)′の値を計算し、ここで、補間関数のすべての中間点をM
j(t
j,x
j)として定義し、次の式に従ってM
jの左右座標点の1階差分商をそれぞれk
jとk
j+1で表し、
【数89】
次の式に従って、中間点M
jの左と右にある2つの隣接する期間の重みをそれぞれω
j及びω
j+1と定義し、
【数90】
次の式に従って、中間点M
jにおける1次導関数X
j(t)′を近似に求め、
【数91】
S24、航跡記録期間を均等に分割してから得られた時系列を、各期間における経度と緯度の補間関数に代入して、当該航跡の等時間間隔で抽出された特徴点を求め、
S3は、以下のS31~S32のステップを含み、
S31、航跡データの時系列特性、動的パターン及び相関情報を保持し、モデルに航跡データの変化/進化プロセスをよりよく学習させるために、移動時間ウィンドウを確立する移動時間ウィンドウ処理を行い、前記移動時間ウィンドウの長さをL、移動距離をL/qと設定し、ここで、qが柔軟に選択された整数であり、qが小さいほど、データの前後相関性が強くなることを表し、
S32、自己適応時間間隔の特徴抽出と移動時間ウィンドウ処理を行ったAISデータを、前記ミラーゲートネットワークに入力して、前記順方向ゲートユニットと前記逆方向ゲートユニットをそれぞれ訓練し、前記ミラーゲートネットワークにより1つ又は複数の軌跡を訓練及び予測し、時刻tにおける入力データI
tと出力データO
tを次の式で表し、
【数92】
ここで、rは予測された航跡の数を表し、S
t
kは、時刻tにおいて処理されたk番目の船舶の航跡データを表し、lon
t
kは時刻tにおける補間後の経度を表し、lat
t
kは時刻tにおける補間後の緯度を表し、cog
t
kは、時刻tにおける補間後の緯度と経度に対応する針路を表し、sog
t
kは時刻tにおける補間後の緯度と経度に対応する航行速度を表し,Lは時刻tにおける移動時間ウィンドウの長さを示し、uはモデルの予測された軌跡の長さを表し、
S4において、各入力データをN個の順方向ゲートユニットとN個の逆方向ゲートユニットを介して訓練し、ミラーゲートネットワークの最終結果に基づいて自己適応可変長Nを決めて、そして最適な航跡予測結果を取得する、
ことを特徴とするミラーゲートネットワークに基づく自己適応時間間隔の船舶航跡予測方法。
【要約】 (修正有)
【課題】ミラーゲートネットワークに基づく自己適応時間間隔の船舶航跡予測方法を提供する。
【解決手段】方法は、ミラーゲートネットワークを構築する工程と、等時間間隔の航跡特徴点を抽出する工程と、入力航跡データを構築する工程と、可変長時間間隔の自己適応航跡予測モデルを構築する工程と、を含み、新型のミラーゲートネットワークを構築し、ミラーゲートをそれぞれデータの両端から学習させ、時間距離を調整することで、モデルによって得られた誤差が収束条件を満たす場合に、軌跡予測モデルの訓練を成し遂げる。
【効果】本発明によって構築されたミラーネットワークは、両端から行われる学習能力により、モデルがデータ内の隠れたモードを自発的に発見及び利用して自身の自律的な学習と適応能力を十分に発揮するようにするため、より高い航跡予測精度を成し遂げる。
【選択図】
図1