(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】セラミック電子部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20250205BHJP
【FI】
H01G4/30 201K
H01G4/30 201C
H01G4/30 201M
H01G4/30 311F
H01G4/30 512
H01G4/30 513
H01G4/30 517
(21)【出願番号】P 2020121926
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 隼也
(72)【発明者】
【氏名】木下 不器男
(72)【発明者】
【氏名】岩井 大輔
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072486(JP,A)
【文献】特開2014-036219(JP,A)
【文献】特開平10-312933(JP,A)
【文献】特開2016-143764(JP,A)
【文献】特開2016-149487(JP,A)
【文献】特開2013-165178(JP,A)
【文献】特開2014-183186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/00-4/224
H01G 4/255-4/40
H01G 13/00-13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックを主成分とする誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成された積層構造と、積層方向において前記積層構造の上面および下面に設けられたカバー層と、を有する積層チップと、
前記2端面から前記積層チップの少なくともいずれかの側面にかけて形成された1対の外部電極と、を備え、
前記積層チップの短手方向の幅に対する前記積層方向における厚みの割合は、0.7以下であり、
異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層同士が対向する容量領域の前記積層方向における厚みは、前記カバー層の少なくとも一方の前記積層方向における厚みの2.2倍以上
かつ4.1倍以下であり、
前記容量領域の前記積層方向の厚みに対して複数の前記内部電極層の前記積層方向の合計厚みが占める割合は、12%以上かつ60%以下である、
ことを特徴とするセラミック電子部品。
【請求項2】
前記容量領域の前記積層方向の厚みに対して複数の前記内部電極層の前記積層方向の合計厚みが占める割合は、20%以上かつ32%以下である、
請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記容量領域の前記積層方向における厚みは、前記カバー層の少なくとも一方の前記積層方向における厚みの2.3倍以上
かつ4.1倍以下である請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記容量領域の前記積層方向における厚みは、前記カバー層の少なくとも一方の前記積層方向における厚みの3.0倍以上
かつ4.1倍以下である請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記容量領域の前記積層方向における厚みは、前記カバー層の少なくとも一方の前記積層方向における厚みの3.5倍以上
かつ4.1倍以下である請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記容量領域の前記積層方向における厚み10μmあたりの前記内部電極層の積層数が1層以上10層以下である、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記内部電極層の総数に対する、前記2端面の対向方向における前記内部電極層と前記外部電極との間の距離が1.5μm以下である内部電極層の数の比率が80%以上である、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記積層チップの前記積層方向における厚みは、0.110mm以下である、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記積層チップの前記積層方向における厚みは、0.06mm以下である、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項記載のセラミック電子部品。
【請求項10】
セラミック誘電体層グリーンシートと、内部電極層形成用導電ペーストと、を交互に積層し、最外層をカバーシートとし、積層された複数の内部電極層形成用導電ペーストを交互に対向する2端面に露出させることによって、略直方体形状のセラミック積層体を形成する工程と、
前記セラミック積層体の前記2端面から、前記セラミック積層体の少なくともいずれかの側面にかけて金属ペーストを塗布する工程と、
前記金属ペーストと前記セラミック積層体とを焼成し、誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、積層された複数の前記内部電極層が交互に前記2端面に露出するように形成された積層構造と、前記積層構造の積層方向の上面及び下面に設けられたカバー層と、を備える積層チップと、前記2端面から前記積層チップの少なくともいずれかの側面にかけて形成された1対の外部電極と、を得る工程と
を含み、
前記積層チップの短手方向の幅に対する前記積層方向における厚みの割合が0.7以下となり、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層同士が対向する容量領域の前記積層方向における厚みが、前記カバー層の少なくとも一方の前記積層方向における厚みの2.2倍以上
かつ4.1倍以下となり、前記容量領域の前記積層方向の厚みに対して複数の前記内部電極層の前記積層方向の合計厚みが占める割合が、12%以上かつ60%以下となるよう、前記形成する工程において、隣接する前記内部電極層形成用導電ペーストの間の前記セラミック誘電体層グリーンシートの厚みを調整する、
ことを特徴とするセラミック電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記容量領域の前記積層方向における厚みが、前記カバー層の少なくとも一方の前記積層方向における厚みの2.3倍以上
かつ4.1倍以下となるよう、前記形成する工程において、隣接する前記内部電極層形成用導電ペーストの間の前記セラミック誘電体層グリーンシートの厚みを調整する請求項10に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記容量領域の前記積層方向における厚みが、前記カバー層の少なくとも一方の前記積層方向における厚みの3.0倍以上
かつ4.1倍以下となるよう、前記形成する工程において、隣接する前記内部電極層形成用導電ペーストの間の前記セラミック誘電体層グリーンシートの厚みを調整する請求項10に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記容量領域の前記積層方向における厚みが、前記カバー層の少なくとも一方の前記積層方向における厚みの3.5倍以上
かつ4.1倍以下となるよう、前記形成する工程において、隣接する前記内部電極層形成用導電ペーストの間の前記セラミック誘電体層グリーンシートの厚みを調整する請求項10に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項14】
セラミック誘電体層グリーンシートと、内部電極層形成用導電ペーストと、を交互に積層し、最外層をカバーシートとし、積層された複数の内部電極層形成用導電ペーストを交互に対向する2端面に露出させることによって、略直方体形状のセラミック積層体を形成する工程と、
前記セラミック積層体を焼成し、誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、積層された複数の前記内部電極層が交互に前記2端面に露出するように形成された積層構造と、前記積層構造の積層方向の上面及び下面に設けられたカバー層と、を備える積層チップを得る工程と、
前記積層チップの前記2端面から、前記積層チップの少なくともいずれかの側面にかけて金属ペーストを塗布する工程と、
前記金属ペーストを焼き付けて外部電極を形成する工程と、
を含み、
前記積層チップの短手方向の幅に対する前記積層方向における厚みの割合が0.7以下となり、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層同士が対向する容量領域の前記積層方向における厚みが、前記カバー層の少なくとも一方の前記積層方向における厚みの2.2倍以上
かつ4.1倍以下となり、前記容量領域の前記積層方向の厚みに対して複数の前記内部電極層の前記積層方向の合計厚みが占める割合が、12%以上かつ60%以下となるよう、前記形成する工程において、隣接する前記内部電極層形成用導電ペーストの間の前記セラミック誘電体層グリーンシートの厚みを調整する、
ことを特徴とするセラミック電子部品の製造方法。
【請求項15】
前記容量領域の前記積層方向における厚みが、前記カバー層の少なくとも一方の前記積層方向における厚みの2.3倍以上
かつ4.1倍以下となるよう、前記形成する工程において、隣接する前記内部電極層形成用導電ペーストの間の前記セラミック誘電体層グリーンシートの厚みを調整する請求項14に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項16】
前記容量領域の前記積層方向における厚みが、前記カバー層の少なくとも一方の前記積層方向における厚みの3.0倍以上
かつ4.1倍以下となるよう、前記形成する工程において、隣接する前記内部電極層形成用導電ペーストの間の前記セラミック誘電体層グリーンシートの厚みを調整する請求項14に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項17】
前記容量領域の前記積層方向における厚みが、前記カバー層の少なくとも一方の前記積層方向における厚みの3.5倍以上
かつ4.1倍以下となるよう、前記形成する工程において、隣接する前記内部電極層形成用導電ペーストの間の前記セラミック誘電体層グリーンシートの厚みを調整する請求項14に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサ等のセラミック電子部品は、例えば、誘電体層と内部電極層とが交互に積層され、積層された複数の内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成された積層チップと、対向する2端面から積層チップの少なくともいずれかの側面にかけて形成された1対の外部電極と、を有する。例えば、積層セラミックコンデンサでは、内部電極層と外部電極との間の電気的接続の良否が静電容量に影響を与える(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子回路の高密度化及び高集積化に伴う実装空間の不足により、積層セラミックコンデンサ等のセラミック電子部品は、小型化、特に低背化が求められている。低背の積層セラミックコンデンサでは、内部電極層の積層数が、通常の積層セラミックコンデンサよりも少ないため、内部電極層と外部電極との間の電気的な接続不良がその容量に大きく影響する。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、内部電極層と外部電極との間の電気的接続の信頼性を向上させることができるセラミック電子部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るセラミック電子部品は、セラミックを主成分とする誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成された積層構造と、積層方向において前記積層構造の上面および下面に設けられたカバー層と、を有する積層チップと、前記2端面から前記積層チップの少なくともいずれかの側面にかけて形成された1対の外部電極と、を備え、前記積層チップの短手方向の幅に対する前記積層方向における厚みの割合は、0.7以下であり、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層同士が対向する容量領域の前記積層方向における厚みは、前記カバー層の少なくとも一方の前記積層方向における厚みの2.2倍以上かつ4.1倍以下であり、前記容量領域の前記積層方向の厚みに対して複数の前記内部電極層の前記積層方向の合計厚みが占める割合は、12%以上かつ60%以下である、ことを特徴とする。
【0007】
上記セラミック電子部品において、前記容量領域の前記積層方向における厚み10μmあたりの前記内部電極層の積層数が1層以上10層以下であるとしてもよい。
【0008】
上記セラミック電子部品において、前記内部電極層の総数に対する、前記2端面の対向方向における前記内部電極層と前記外部電極との間の距離が1.5μm以下である内部電極層の数の比率が80%以上であるとしてもよい。
【0009】
上記セラミック電子部品において、前記積層チップの前記積層方向における厚みは、0.110mm以下であるとしてもよい。
【0010】
上記セラミック電子部品において、前記積層チップの前記積層方向における厚みは、0.06mm以下であるとしてもよい。
【0011】
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、セラミック誘電体層グリーンシートと、内部電極層形成用導電ペーストと、を交互に積層し、最外層をカバーシートとし、積層された複数の内部電極層形成用導電ペーストを交互に対向する2端面に露出させることによって、略直方体形状のセラミック積層体を形成する工程と、前記セラミック積層体の前記2端面から、前記セラミック積層体の少なくともいずれかの側面にかけて金属ペーストを塗布する工程と、前記金属ペーストと前記セラミック積層体とを焼成し、誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、積層された複数の前記内部電極層が交互に前記2端面に露出するように形成された積層構造と、前記積層構造の積層方向の上面及び下面に設けられたカバー層と、を備える積層チップと、前記2端面から前記積層チップの少なくともいずれかの側面にかけて形成された1対の外部電極と、を得る工程と、を含み、前記積層チップの短手方向の幅に対する前記積層方向における厚みの割合が0.7以下となり、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層同士が対向する容量領域の前記積層方向における厚みが、前記カバー層の少なくとも一方の前記積層方向における厚みの2.2倍以上かつ4.1倍以下となり、前記容量領域の前記積層方向の厚みに対して複数の前記内部電極層の前記積層方向の合計厚みが占める割合が、12%以上かつ60%以下となるよう、前記形成する工程において、隣接する前記内部電極層形成用導電ペーストの間の前記セラミック誘電体層グリーンシートの厚みを調整する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、セラミック誘電体層グリーンシートと、内部電極層形成用導電ペーストと、を交互に積層し、最外層をカバーシートとし、積層された複数の内部電極層形成用導電ペーストを交互に対向する2端面に露出させることによって、略直方体形状のセラミック積層体を形成する工程と、前記セラミック積層体を焼成し、誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、積層された複数の前記内部電極層が交互に前記2端面に露出するように形成された積層構造と、前記積層構造の積層方向の上面及び下面に設けられたカバー層と、を備える積層チップを得る工程と、前記積層チップの前記2端面から、前記積層チップの少なくともいずれかの側面にかけて金属ペーストを塗布する工程と、前記金属ペーストを焼き付けて外部電極を形成する工程と、を含み、前記積層チップの短手方向の幅に対する前記積層方向における厚みの割合が0.7以下となり、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層同士が対向する容量領域の前記積層方向における厚みが、前記カバー層の少なくとも一方の前記積層方向における厚みの2.2倍以上かつ4.1倍以下となり、前記容量領域の前記積層方向の厚みに対して複数の前記内部電極層の前記積層方向の合計厚みが占める割合が、12%以上かつ60%以下となるよう、前記形成する工程において、隣接する前記内部電極層形成用導電ペーストの間の前記セラミック誘電体層グリーンシートの厚みを調整する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内部電極層と外部電極との間の電気的接続の信頼性を向上させることができるセラミック電子部品およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(A)は、積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図であり、
図1(B)は、積層セラミックコンデンサを積層方向の上面から見た図である。
【
図4】
図4は、
図1(B)のA-A線断面図であり、各部の厚みについて説明するための図である。
【
図5】
図5(A)は、内部電極層を10層積層した積層セラミックコンデンサの断面図であり、
図5(B)及び
図5(C)は、内部電極層を6層積層した積層セラミックコンデンサの断面図である。
【
図6】
図6(A)は、
図2のC-C線断面図であり、
図6(B)は、内部電極層と外部電極との間の距離について説明するための図である。
【
図7】
図7は、積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
【
図8】
図8(A)及び
図8(B)は積層工程を例示する図である。
【
図11】
図11は、積層セラミックコンデンサの製造方法のフローの別例を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0016】
(実施形態)
図1(A)は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図であり、
図1(B)は、積層セラミックコンデンサを積層方向の上面から見た図である。
図2は、
図1(B)のA-A線断面図である。
図3は、
図1(B)のB-B線断面図である。
図1(A)~
図3で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する積層チップ10と、積層チップ10のいずれかの対向する2端面に設けられた外部電極20a,20bとを備える。なお、積層チップ10の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。外部電極20a,20bは、積層チップ10の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20a,20bは、互いに離間している。
【0017】
積層チップ10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、卑金属材料を含む内部電極層12とが、交互に積層された構成を有する。各内部電極層12の端縁は、積層チップ10の外部電極20aが設けられた端面と、外部電極20bが設けられた端面とに、交互に露出している。それにより、各内部電極層12は、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通している。その結果、積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層11が内部電極層12を介して積層された構成を有する。また、誘電体層11と内部電極層12との積層構造において、積層方向の最外層には内部電極層12が配置され、当該積層体の上面および下面は、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13の材料は、誘電体層11とセラミック材料の主成分が同じである。
【0018】
積層セラミックコンデンサ100の積層チップ10の短手方向の幅(
図3のW参照)に対する積層方向の厚み(高さ)(
図3のT参照)の割合は、0.7以下である。具体的には、積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.11mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.06mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.2mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.3mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.2mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0019】
内部電極層12は、Ni(ニッケル),Cu(銅),Sn(スズ)等の卑金属を主成分とする。内部電極層12として、Pt(白金),Pd(パラジウム),Ag(銀),Au(金)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。内部電極層12の平均厚みは、例えば、1μm以下である。誘電体層11は、例えば、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。例えば、当該セラミック材料として、BaTiO3(チタン酸バリウム),CaZrO3(ジルコン酸カルシウム),CaTiO3(チタン酸カルシウム),SrTiO3(チタン酸ストロンチウム),ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等を用いることができる。
【0020】
外部電極20a,20bは、Cu,Ni,Al(アルミニウム),Zn(亜鉛),Ag,Au,Pd,Ptなどの金属、またはこれらの2以上の合金(例えば、CuとNiとの合金)を主成分とする。
【0021】
図2で例示するように、外部電極20aに接続された内部電極層12と外部電極20bに接続された内部電極層12とが対向する領域は、積層セラミックコンデンサ100において電気容量を生じる領域である。そこで、当該電気容量を生じる領域を、容量領域14と称する。すなわち、容量領域14は、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層12同士が対向する領域である。
【0022】
外部電極20aに接続された内部電極層12同士が、外部電極20bに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域を、エンドマージン領域15と称する。また、外部電極20bに接続された内部電極層12同士が、外部電極20aに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域も、エンドマージン領域15である。すなわち、エンドマージン15領域は、同じ外部電極に接続された内部電極層12が異なる外部電極に接続された内部電極層12を介さずに対向する領域である。エンドマージン領域15は、電気容量を生じない領域である。
【0023】
図3で例示するように、積層チップ10において、積層チップ10の2側面から内部電極層12に至るまでの領域をサイドマージン領域16と称する。すなわち、サイドマージン領域16は、上記積層構造において積層された複数の内部電極層12が2側面側に延びた端部を覆うように設けられた領域である。サイドマージン16領域も、電気容量を生じない領域である。
【0024】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100では、
図4に示すように、容量領域14の積層方向における厚みをTaとし、カバー層13の一方の積層方向の厚みをTc1とし、カバー層13の他方の積層方向の厚みTc2とした場合に、容量領域14の積層方向における厚みTaが、カバー層13の少なくとも一方の積層方向における厚み(Tc1又はTc2)の2.2倍以上である。なお、容量領域14の積層方向における厚みTa及びカバー層13の積層方向の厚みTc1,Tc2は、積層チップ10の長さ方向(2端面の対向方向)及び幅方向(2側面の対向方向)の中央部において計測すればよい。これにより、内部電極層12と外部電極20a,20bとの電気的接続の信頼性を向上させることができる。この点について、詳細に説明する。
【0025】
図5(A)は、内部電極層12を10層積層した積層セラミックコンデンサ100Aの断面図であり、
図5(B)及び
図5(C)は、内部電極層12を6層積層した積層セラミックコンデンサ100B及び100Cの断面図である。
図5(A)~
図5(C)の断面は、
図1のA-A線断面に相当する。積層セラミックコンデンサ100A~100Cの積層チップ10の積層方向の厚みTは同一である。
【0026】
図5(B)に示す積層セラミックコンデンサ100Bでは、隣接する内部電極層12同士の間の誘電体層11の厚みTd2が、
図5(A)の積層セラミックコンデンサ100Aにおける誘電体層11の厚みTd1と同じになっており、容量領域14の積層方向における厚みTaは、カバー層13の少なくとも一方の積層方向における厚みTc1,Tc2の2.2倍未満となっている。一方、
図5(C)に示す積層セラミックコンデンサ100Cでは、隣接する内部電極層12同士の間の誘電体層11の厚みTd3が、
図5(A)の積層セラミックコンデンサ100Aにおける誘電体層11の厚みTd1よりも大きくなっている。このため、
図5(C)の積層セラミックコンデンサ100Cでは、容量領域14の積層方向における厚みTaは、カバー層13の少なくとも一方の積層方向における厚みTc1,Tc2の2.2倍以上となっている。
【0027】
内部電極層12の積層数が少ない場合に、内部電極層10間の誘電体層11の厚みを変えずに内部電極層12と誘電体層11とを積層すると、
図5(B)のように、容量領域14が積層チップ10の中央部に局在することとなる。この場合、焼成時に、内部電極層12を形成する金属導電ペーストと誘電体層11を形成する誘電体グリーンシートとが交互に積層された積層部分と、カバー層13を形成するカバーシートと、の間の収縮差によって積層チップ10の端面の形状が不整となり、内部電極層12と外部電極20a,20bとが電気的に接続されず、静電容量の低下(容量抜け)が生じる可能性が高くなる。
【0028】
一方、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100では、積層チップ10の短手方向の幅に対する積層方向における厚みの割合が0.7以下のいわゆる低背品において、容量領域14の積層方向における厚みTaは、カバー層13の少なくとも一方の積層方向における厚みTc1,Tc2の2.2倍以上となっている。これにより、積層部分とカバーシートとの間の収縮差によって積層チップ10の端面の形状が不整となることを抑制できる。そのため、内部電極層12と外部電極20a,20bとの間の電気的接続の信頼性を向上することができる。
【0029】
なお、内部電極層12と外部電極20a,20bとの間の電気的接続の信頼性をさらに向上する観点から、積層チップ10の容量領域14の積層方向における厚みTaを、カバー層13の少なくとも一方の積層方向における厚み(Tc1,Tc2)の3.0倍以上とすることが好ましく、3.5倍以上とすることがより好ましい。
【0030】
同様な観点から、容量領域14の積層方向の厚みに対して内部電極層12の積層方向の厚み(各内部電極層12の厚みの合計)が占める割合は、12%以上が好ましく、16%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。一方で、容量領域とカバーシートとの収縮差の観点から、容量領域14の積層方向の厚みに対して内部電極層12の積層方向の厚みが占める割合は、60%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、32%以下がさらに好ましい。
【0031】
また、抗折強度の観点から、容量領域14の積層方向の厚み10μmあたりの内部電極層12の積層数は、1層以上が好ましく、2層以上がより好ましい。一方で、容量領域とカバーシートとの収縮差の観点から、容量領域14の積層方向の厚み10μmあたりの内部電極層12の積層数は、10層以下が好ましく、5層以下がさらに好ましい。
【0032】
また、低背化の観点から、積層チップ10の積層方向における厚みは、0.110mm以下が好ましく、0.06mm以下がより好ましい。
【0033】
図6(A)は、
図2のC-C線断面図である。
図6(A)に示すように、内部電極層12には、外部電極20b(又は、外部電極20a)に接触していない部分が存在する場合がある。
【0034】
図6(B)は、
図6(A)のD-D線断面図である。ここで、ある断面における、積層チップ10の2端面の対向方向(以後、対向方向と記載する)での内部電極層12と外部電極20b(又は20a)との間の距離をD1とする。内部電極層12と外部電極20a,20bとが接触している場合、D1=0となる。ここで、ある断面において内部電極層12が外部電極20a,20bと接触していなくとも、D1が1.5μm以下である場合、内部電極層12は他の断面において外部電極20a,20bと接触していると考えられる(
図5(A)参照)。そのため、ある断面において、対向方向における内部電極層12と外部電極20a,20bとの間の距離D1が1.5μm以下である場合、内部電極層12と外部電極20a,20bとは電気的に接続しているとみなせる。本実施形態における積層セラミックコンデンサ100では、内部電極層12の総数Nallに対する、対向方向における内部電極層12と外部電極20a,20bとの間の距離D1が1.5μm以下である内部電極層12の数Nの比率(N/Nall)が、80%以上となっている。
【0035】
次に、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。
図7は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の製造方法を示すフローチャートである。
【0036】
(原料粉末作製工程)
まず、誘電体層11を形成するための誘電体材料を用意する。誘電体材料は、誘電体層11の主成分セラミックを含む。誘電体層11に含まれるAサイト元素およびBサイト元素は、通常はABO3の粒子の焼結体の形で誘電体層11に含まれる。例えば、BaTiO3は、ペロブスカイト構造を有する正方晶化合物であって、高い誘電率を示す。このBaTiO3は、一般的に、二酸化チタンなどのチタン原料と炭酸バリウムなどのバリウム原料とを反応させてチタン酸バリウムを合成することで得ることができる。誘電体層11の主成分セラミックの合成方法としては、従来種々の方法が知られており、例えば固相法、ゾル-ゲル法、水熱法等が知られている。本実施形態においては、これらのいずれも採用することができる。
【0037】
得られたセラミック粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、Zr(ジルコニウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Mg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、希土類元素の酸化物、並びに、Co(コバルト)、Ni、Li(リチウム)、B(ホウ素)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)およびSi(ケイ素)の酸化物もしくはガラスが挙げられる。
【0038】
次に、エンドマージン領域15およびサイドマージン領域16を形成するためのマージン材料を用意する。マージン材料は、エンドマージン領域15およびサイドマージン領域16の主成分セラミックを含む。主成分セラミックとして、例えば、BaTiO3粉を作製する。BaTiO3粉は、誘電体材料と同様の手順により作製することができる。得られたBaTiO3粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、Zr、Ca、Sr、Mg、Mn、V、Cr、希土類元素の酸化物、並びに、Co、Ni、Li、B、Na、KおよびSiの酸化物もしくはガラスが挙げられる。
【0039】
次に、カバー層13を形成するためのカバー材料を用意する。カバー材料は、カバー層13の主成分セラミックを含む。主成分セラミックとして、例えば、BaTiO3粉を作製する。BaTiO3粉は、誘電体材料と同様の手順により作製することができる。得られたBaTiO3粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、Zr、Ca、Sr、Mg、Mn、V、Cr、希土類元素の酸化物、並びに、Co、Ni、Li、B、Na、KおよびSiの酸化物もしくはガラスが挙げられる。なお、カバー材料として、上述したマージン材料を用いてもよい。
【0040】
(積層工程)
次に、原料粉末作製工程で得られた誘電体材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリーを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に例えば厚み0.8μm以下の帯状の誘電体グリーンシート51を塗工して乾燥させる。
【0041】
次に、
図8(A)で例示するように、誘電体グリーンシート51の表面に、有機バインダを含む内部電極形成用の金属導電ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等により印刷することで、内部電極層用の第1パターン52を配置する。金属導電ペーストには、共材としてセラミック粒子を添加する。セラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層11の主成分セラミックと同じであることが好ましい。
【0042】
次に、原料粉末作製工程で得られたマージン材料に、エチルセルロース系等のバインダと、ターピネオール系等の有機溶剤とを加え、ロールミルにて混練して逆パターン層17用のマージンペーストを得る。
図8(A)で例示するように、誘電体グリーンシート51上において、第1パターン52が印刷されていない周辺領域にマージンペーストを印刷することで第2パターン53を配置し、第1パターン52との段差を埋める。
【0043】
その後、
図8(B)で例示するように、内部電極層12と誘電体層11とが互い違いになるように、かつ内部電極層12が誘電体層11の長さ方向の両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極20a,20bに交互に引き出されるように、誘電体グリーンシート51、第1パターン52および第2パターン53を積層していく。例えば、第1パターン52の積層数を6~30層とする。このとき、隣接する第1パターン52の間の誘電体グリーンシート51の厚みを調整して、焼成後の積層チップ10の短手方向の幅に対する積層方向における厚み(高さ)の割合が0.7以下となり、容量領域14の積層方向における厚みTaは、カバー層13の少なくとも一方の積層方向における厚み(Tc1,Tc2)の2.2倍以上となるようにする。具体的には、隣接する第1パターン52の間に配置する誘電体グリーンシート51の積層数を調整する。
【0044】
次に、原料粉末作製工程で得られたカバー材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリーを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に例えば厚み10μm以下の帯状のカバーシート54を塗工して乾燥させる。
図9で例示するように、積層された誘電体グリーンシート51の上下にカバーシート54を所定数(例えば2~10層)だけ積層して熱圧着させ、所定チップ寸法(例えば0.4mm×0.2mm)にカットし、その後に外部電極20a,20bとなる金属導電ペーストを、カットした積層体の両側面にディップ法等で塗布して乾燥させる。これにより、セラミック積層体が得られる。なお、所定数のカバーシート54を積層して圧着してから、積層された誘電体グリーンシート51の上下に貼り付けてもよい。
【0045】
サイドマージン領域は、上記積層部分の側面に貼り付けまたは塗布してもよい。具体的には、内部電極層12と誘電体層11とが互い違いになるように、かつ内部電極層12が誘電体層11の長さ方向の両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極20a,20bに交互に引き出されるように、誘電体グリーンシート51、第1パターン52および第2パターン53を積層する。例えば、第1パターン52の積層数を6~30層とする。このとき、隣接する第1パターン52の間の誘電体グリーンシート51の厚みを調整して、積層チップ10の積層方向における厚みTに対する容量領域14の積層方向における厚みTaの割合が0.5以上となるようにする。具体的には、隣接する第1パターン52の間に配置する誘電体グリーンシート51の積層数を調整する。
【0046】
次に、上下にカバー層13となるカバーシート54を積層し、圧着する。その後、得られた積層体を、所定寸法にカットして、内部電極層12のパターンが1つおきに露出する2端面と、全ての内部電極層12のパターンが露出する2側面とを有する積層体を形成する。次に、
図10に示すように、積層体の側面に、サイドマージンペーストで形成したシート55を貼り付ける、またはサイドマージンペーストを塗布することで、サイドマージン領域を形成してもよい。サイドマージンペーストには、マージンペーストを用いることができる。
【0047】
(焼成工程)
このようにして得られたセラミック積層体を、N2雰囲気で脱バインダ処理した後に外部電極20a,20bの下地となるNiペーストをディップ法で塗布し、酸素分圧10-5~10-8atmの還元雰囲気中で1100~1300℃で10分~2時間焼成する。
【0048】
(再酸化処理工程)
その後、N2ガス雰囲気中で600℃~1000℃で再酸化処理を行ってもよい。
【0049】
(めっき処理工程)
その後、めっき処理により、外部電極20a,20bに、Cu,Ni,Sn等の金属コーティングを行ってもよい。
【0050】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る製造方法では、内部電極層12と誘電体層11とが互い違いになるように、かつ内部電極層12が誘電体層11の長さ方向の両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極20a,20bに交互に引き出されるように、誘電体グリーンシート51、第1パターン52および第2パターン53を積層し、隣接する第1パターン52の間の誘電体グリーンシート51の厚みを調整して、焼成によって得られる積層チップ10の短手方向の幅に対する積層方向における厚みの割合が0.7以下となり、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層同士が対向する容量領域の前記積層方向における厚みが、前記カバー層の少なくとも一方の前記積層方向における厚みの2.2倍以上となるようにする。これにより、焼成時に、第1パターン52と誘電体グリーンシート51とが交互に積層された積層部分と、カバーシート54と、の間の収縮差によって積層チップ10の端面の形状が不整となることを抑制することができる。そのため、内部電極層12と外部電極20a,20bとの電気的接続の信頼性を向上することができる。
【0051】
なお、上記製造方法では、セラミック積層体に外部電極20a,20bの下地となるNiペーストをディップ法で塗布し焼成していたが、
図11に示すように、セラミック積層体を焼成した後、得られた積層チップの端面に外部電極20a,20bの下地となる金属導電ペーストをディップ法で塗布し焼き付けてもよい。
【0052】
なお、上記各実施形態においては、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、バリスタやサーミスタなどの、他の電子部品を用いてもよい。
【実施例】
【0053】
実施形態に係る積層セラミックコンデンサを作製し、内部電極層12と外部電極20a,20bの電気的接続について調べた。
【0054】
チタン酸バリウム粉末に対して添加物を添加し、ボールミルで十分に湿式混合粉砕して誘電体材料を得た。チタン酸バリウム粉末に対して添加物を添加し、ボールミルで十分に湿式混合粉砕してマージン材料を得た。チタン酸バリウム粉末に対して添加物を添加し、ボールミルで十分に湿式混合粉砕してカバー材料を得た。
【0055】
誘電体材料に有機バインダとしてブチラール系、溶剤としてトルエン、エチルアルコールを加えてドクターブレード法にて誘電体グリーンシート51を作製した。得られた誘電体グリーンシート51に金属導電ペーストの第1パターン52を印刷した。第1パターン52の厚みは、0.8μmとした。第1パターン52を印刷した誘電体グリーンシート51の上に第1パターン52を印刷していない誘電体グリーンシート51を所定数積層し、その上に、第1パターン52の位置が交互にずれるように、第1パターン52が印刷された誘電体グリーンシート51を重ねた。これを繰り返し、第1パターン52を16層積層した積層構造を得た。
【0056】
第1パターン52間に積層する誘電体グリーンシート51の数を変えることで、カバー層13の積層方向における厚み(Tc1,Tc2)に対する容量領域14の積層方向における厚みTaの割合を変えた。カバー材料に有機バインダとしてブチラール系、溶剤としてトルエン、エチルアルコールを加えてドクターブレード法にてカバーシート54を作製した。その後、重ねた誘電体グリーンシート51の上下に、カバーシート54を積層して熱圧着し、積層体を作成した。カバーシート54の積層方向の厚みは、積層チップ10の積層方向の厚みがサンプル間で同一となるように調整した。
【0057】
その後、所定チップ寸法にカットした積層体に、金属フィラー、ガラス成分、バインダ、および溶剤を含む外部電極形成用導電ペーストを塗布し、乾燥させ、焼成を行うことで積層チップを作製した。
【0058】
(実施例1~3)
表1に示すように、実施例1では、焼成後の積層チップ10の積層方向における厚みTは110μmであり、カバー層13の積層方向における厚みTc1,Tc2は26μmであり、容量領域14の積層方向における厚みTaは58μmであった。各内部電極層12の積層方向における厚みは0.8μmであり、各誘電体層11の積層方向における厚みは1.0μmであった。
【0059】
実施例2では、積層チップ10の積層方向における厚みTは110μmであり、カバー層13の積層方向における厚みTc1,Tc2は22μmであり、容量領域14の積層方向における厚みTaは66μmであった。各内部電極層12の厚み及び各誘電体層11の厚みはそれぞれ、実施例1と同じであった。
【0060】
実施例3では、積層チップ10の積層方向における厚みTは110μmであり、カバー層13の積層方向における厚みTc1,TC2は20μmであり、容量領域14の積層方向における厚みTaは70μmであった。各内部電極層12の厚み及び各誘電体層11の厚みはそれぞれ、実施例1と同じであった。
【0061】
(実施例4~6)
実施例4では、積層チップ10の積層方向における厚みTは65μmであり、カバー層13の積層方向における厚みTc1,Tc2は15μmであり、容量領域14の積層方向における厚みTaは35μmであった。各内部電極層12の積層方向における厚みは0.8μmであり、各誘電体層11の積層方向における厚みは2.0μmであった。
【0062】
実施例5では、積層チップ10の積層方向における厚みTは64μmであり、カバー層13の積層方向における厚みTc1,Tc2はそれぞれ15μm、10μmであり、容量領域14の積層方向における厚みTaは38μmであった。各内部電極層12の厚み及び各誘電体層11の厚みはそれぞれ、実施例4と同じであった。
【0063】
実施例6では、積層チップ10の積層方向における厚みTは61μmであり、カバー層13の積層方向における厚みTc1,Tc2は10μmであり、容量領域14の積層方向における厚みTaは41μmであった。各内部電極層12の厚み及び各誘電体層11の厚みはそれぞれ、実施例4と同じであった。
【0064】
(比較例1)
比較例1では、積層チップ10の積層方向における厚みTは110μmであり、カバー層13の積層方向における厚みTc1,TC2は30μmであり、容量領域14の積層方向における厚みTaは50μmであった。各内部電極層12の厚み及び各誘電体層11の厚みはそれぞれ、実施例1と同じであった。
【0065】
(比較例2及び3)
比較例2では、積層チップ10の積層方向における厚みTは60μmであり、カバー層13の積層方向における厚みTc1,Tc2は18μmであり、容量領域14の積層方向における厚みTaは24μmであった。各内部電極層12の厚み及び各誘電体層11の厚みはそれぞれ、実施例4と同じであった。
【0066】
比較例3では、積層チップ10の積層方向における厚みTは60μmであり、カバー層13の積層方向における厚みTc1,Tc2は20μmであり、容量領域14の積層方向における厚みTaは20μmであった。各内部電極層12の厚み及び各誘電体層11の厚みはそれぞれ、実施例4と同じであった。
【0067】
(接続率)
作製した積層セラミックコンデンサのチップ中央部を断面研磨した後、SEM観察を行い、チップの端面の対向方向における内部電極層12と外部電極20a,20bとの間の距離D1を各内部電極層12について測定した。距離D1が1.5μm以下の場合、当該内部電極層12は外部電極20a,20bと電気的に接続していると判定し、内部電極層12の総数に対する外部電極20a,20bと接続している内部電極層12(内部電極層12と外部電極20a、20bとの間の距離D1が1.5μm以下である内部電極層12)の数の割合を、接続率として算出した。
【0068】
表1に各結果を示す。比較例1~3ではそれぞれ、接続率が60%、50%,30%と低かった。これは、容量領域14の積層方向における厚みTaが、カバー層13の積層方向における厚みTc1,Tc2の2.2倍未満であったため、カバー層13と容量領域14との間の収縮差によって、積層チップ10の端面が不整となり、接続率が低下したためと考えられる。
【0069】
一方、実施例1~6では、接続率が80%以上となった。これは、容量領域14の積層方向における厚みTaが、カバー層13の積層方向における厚みTc1,Tc2の2.2倍以上としたため、カバー層13と容量領域14との間の収縮差によって積層チップ10の端面が不整となることを抑制できたからだと考えられる。このように、容量領域14の積層方向における厚みTaが、カバー層13の積層方向における厚みTc1,Tc2の2.2倍以上とすることで、内部電極層12と外部電極20a,20bとの間の電気的接続の信頼性を向上できることがわかった。
【表1】
【0070】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 積層チップ
11 誘電体層
12 内部電極層
13 カバー層
14 容量領域
15 エンドマージン領域
16 サイドマージン領域
20a,20b 外部電極
51 誘電体グリーンシート
52 第1パターン
53 第2パターン
54 カバーシート
100 積層セラミックコンデンサ