(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】マーキング装置
(51)【国際特許分類】
H05K 3/00 20060101AFI20250205BHJP
B43K 8/02 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
H05K3/00 P
B43K8/02
(21)【出願番号】P 2021030737
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昇悟
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-067778(JP,U)
【文献】実開平01-087577(JP,U)
【文献】実開平07-027181(JP,U)
【文献】特開2000-015170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/00
B43K 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに搭載された上下駆動機構と、
前記上下駆動機構によって上下方向に駆動される可動ブロックと、
フェルト、合成繊維、または合成樹脂からなるペン先が下向きとされたマーキングペンを備え、前記可動ブロックに上下方向に移動可能に支持されたマーキングヘッドと、
前記マーキングヘッドの自重に抗する上向きの付勢力を前記マーキングヘッドに印加するコイルバネを含み、前記コイルバネの長さを調整することより、前記マーキングペンによってワークにマーキングする際のペン圧を調整するペン圧調整機構と、
を含むマーキングユニットを有
し、
前記コイルバネは、前記マーキングヘッドと前記可動ブロックとの間で上下方向に圧縮された状態に配置された圧縮コイルバネであり、
前記ペン圧調整機構は、前記マーキングヘッドに設けられた第1バネ受け部材と、位置調整用の固定具によって前記可動ブロックに固定され、前記第1バネ受け部と上下方向で対向する部分の間に前記圧縮コイルバネが配置された第2バネ受け部材と、を備え、
前記固定具によって前記可動ブロックに固定される前記第2バネ受け部材の上下方向の位置の調整によって前記圧縮コイルバネの上下方向の長さが調整されることを特徴とするマーキング装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のマーキング装置において、
前記第1バネ受け部材は、前記圧縮コイルバネが周りに配置される軸部と、前記軸部の上端側で突出して前記圧縮コイルバネの上端が当接する受け部と、を備え、
前記第2バネ受け部材は、上下方向の途中位置が前記固定具によって前記可動ブロックに固定された第1板部と、前記第1板部から折れ曲がって前記圧縮コイルバネの下端が当接する第2板部と、を備えていることを特徴とするマーキング装置。
【請求項3】
ベースと、
前記ベースに搭載された上下駆動機構と、
前記上下駆動機構によって上下方向に駆動される可動ブロックと、
フェルト、合成繊維、または合成樹脂からなるペン先が下向きとされたマーキングペンを備え、前記可動ブロックに上下方向に移動可能に支持されたマーキングヘッドと、
前記マーキングヘッドの自重に抗する上向きの付勢力を前記マーキングヘッドに印加するコイルバネを含み、前記コイルバネの長さを調整することより、前記マーキングペンによってワークにマーキングする際のペン圧を調整するペン圧調整機構と、
を含むマーキングユニットを有し、
前記ベースに搭載された回転駆動機構を有し、
前記マーキングヘッドは、前記マーキングペンを保持するペンホルダを含み、
前記ペンホルダは、中心から径方向にずれた偏心位置に前記マーキングペンを保持する円盤状の内側部材と、ラジアル軸受を介して前記内側部材を前記内側部材の中心を通って上下方向に延在する回転中心軸線周りに回転可能に支持する外側部材と、を含み、
前記回転駆動機構は、前記回転中心軸線周りに前記内側部材を回転させることを特徴とするマーキング装置。
【請求項4】
請求項
3に記載のマーキング装置において、
前記内側部材は、中心から径方向にずれた偏心位置に前記マーキングペンを保持する円盤状の第1部材と、前記ラジアル軸受を介して前記回転中心軸線周りに回転可能に前記外側部材に支持され、前記回転中心軸線から径方向にずれた偏心位置に前記第1部材が固定された第2部材と、を備え、
前記第1部材は、前記第2部材に固定する際の角度位置を変更可能であることを特徴とするマーキング装置。
【請求項5】
ベースと、
前記ベースに搭載された上下駆動機構と、
前記上下駆動機構によって上下方向に駆動される可動ブロックと、
フェルト、合成繊維、または合成樹脂からなるペン先が下向きとされたマーキングペンを備え、前記可動ブロックに上下方向に移動可能に支持されたマーキングヘッドと、
前記マーキングヘッドの自重に抗する上向きの付勢力を前記マーキングヘッドに印加するコイルバネを含み、前記コイルバネの長さを調整することより、前記マーキングペンによってワークにマーキングする際のペン圧を調整するペン圧調整機構と、
を含むマーキングユニットを有し、
前記マーキングヘッドが上方で待機している期間、前記ペン先に被さるキャップが前記ベースに保持されていることを特徴とするマーキング装置。
【請求項6】
請求項
5に記載のマーキング装置において、
前記キャップは、前記マーキングペンの外周面または前記ペンホルダの下面に当接する円環状のシール部材を備えることを特徴とするマーキング装置。
【請求項7】
ベースと、
前記ベースに搭載された上下駆動機構と、
前記上下駆動機構によって上下方向に駆動される可動ブロックと、
フェルト、合成繊維、または合成樹脂からなるペン先が下向きとされたマーキングペンを備え、前記可動ブロックに上下方向に移動可能に支持されたマーキングヘッドと、
前記マーキングヘッドの自重に抗する上向きの付勢力を前記マーキングヘッドに印加するコイルバネを含み、前記コイルバネの長さを調整することより、前記マーキングペンによってワークにマーキングする際のペン圧を調整するペン圧調整機構と、
を含むマーキングユニットを有し、
前記マーキングペンによって前記ワークにマーキングしたマークを監視する監視装置が前記ベースに保持されていることを特徴とするマーキング装置。
【請求項8】
請求項1から
7までの何れか一項に記載のマーキング装置において、
前記ワークは平板状であり、
前記ワークと前記マーキングユニットとを前記ワークの面内方向で交差する2方向に相対移動させる駆動機構を有することを特徴とするマーキング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーキングペンを備えたマーキング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板等の平板状のワークについては、検査工程において不具合品と判定されたものに対し、不具合の発生個所にマーキングを行い、不具合の発生原因の解析等を行うことがある。かかるマーキングを人手によりマーキングするのは非常に効率が悪い。そこで、検査工程において不具合品と判定されたものをマーキング装置において、サインペン等のマーキングペンによって不具合の発生個所に自動的にマーキングする技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マーキングペンは、ペン先がフェルト、合成繊維、または合成樹脂によって構成されており、ペン先の形状や寸法が変化しやすい。また、マーキングペンでは、毛管現象によってペン先へのインクの供給が行われるため、ペン先へのインクの供給が変化しやすい。このため、マーキングペンによってマーキングを施す際、ペン圧が低すぎると、マークが掠れてしまう一方、ペン圧が高すぎると、ペン先が潰れてしまう等、適正にマーキングを行うことが難しいという問題点がある。しかしながら、特許文献1には、かかる問題点に対する対策が開示されていない。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、マーキングペンによって適正にマーキングを行うことのできるマーキング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るマーキング装置は、ベースと、前記ベースに搭載された上下駆動機構と、前記上下駆動機構によって上下方向に駆動される可動ブロックと、フェルト、合成繊維、または合成樹脂からなるペン先が下向きとされたマーキングペンを備え、前記可動ブロックに上下方向に移動可能に支持されたマーキングヘッドと、前記マーキングヘッドの自重に抗する上向きの付勢力を前記マーキングヘッドに印加するコイルバネを含み、前記コイルバネの長さを調整することより、前記マーキングペンによってワークにマーキングする際のペン圧を調整するペン圧調整機構と、を含むマーキングユニットを有することを特徴とする。
【0007】
本発明では、マーキングペンを含むマーキングヘッドを上下駆動機構によって駆動することによって、マーキングペンのペン先でワークにマーキングを施す。また、マーキングヘッドには、圧縮コイルバネによって、マーキングヘッドの自重に抗する上向きの付勢力が印加されているため、マーキングヘッドの自重と圧縮コイルバネの付勢力との差によって、ペン圧が規定される。従って、ペン圧調整機構によって圧縮コイルバネの上下方向の長さを調整することによって、圧縮コイルバネの付勢力を変化させることができるので、ペン圧を適正なレベルに調整することができる。それ故、マーキングする際の掠れの発生やペン先の潰れの発生を抑制することができる等、マーキングペンによって適正にマーキングを行うことができる。
【0008】
本発明において、前記コイルバネは、前記マーキングヘッドと前記可動ブロックとの間で上下方向に圧縮された状態に配置された圧縮コイルバネであり、前記ペン圧調整機構は、前記マーキングヘッドに設けられた第1バネ受け部材と、位置調整用の固定具によって前記可動ブロックベースに固定され、前記第1バネ受け部と上下方向で対向する部分の間に前記圧縮コイルバネが配置された第2バネ受け部材と、を備え、前記固定具によって前記可動ブロックに固定される前記第2バネ受け部材の上下方向の位置の調整によって前記圧縮コイルバネの上下方向の長さが調整される態様を採用することができる。
【0009】
本発明において、前記第1バネ受け部材は、前記圧縮コイルバネが周りに配置される軸部と、前記軸部の上端側で突出して前記圧縮コイルバネの上端が当接する受け部と、を備え、前記第2バネ受け部材は、上下方向の途中位置が前記固定具によって前記可動ブロックベースに固定された第1板部と、前記第1板部から折れ曲がって前記圧縮コイルバネの下端が当接する第2板部と、を備えている態様を採用することができる。
【0010】
本発明において、前記ベースに搭載された回転駆動機構を有し、前記マーキングヘッドは、前記マーキングペンを保持するペンホルダを含み、前記ペンホルダは、中心から径方向にずれた偏心位置に前記マーキングペンを保持する円盤状の内側部材と、ラジアル軸受を介して前記内側部材を前記内側部材の中心を通って上下方向に延在する回転中心軸線周りに回転可能に支持する外側部材と、を含み、前記回転駆動機構は、前記回転中心軸線周りに前記内側部材を回転させる態様を採用することができる。かかる態様によれば、ワークを円弧状に移動させることができるので、円弧状あるいは円形のマークをワークに付すことができる。
【0011】
本発明において、前記内側部材は、中心から径方向にずれた偏心位置に前記マーキングペンを保持する円盤状の第1部材と、前記ラジアル軸受を介して前記回転中心軸線周りに回転可能に前記外側部材に支持され、前記回転中心軸線から径方向にずれた偏心位置に前記第1部材が固定された第2部材と、を備え、前記第1部材は、前記第2部材に固定する際の角度位置を変更可能である態様を採用することができる。かかる態様によれば、第2部材に第1部材を固定した際の角度位置によって、回転中心軸線とペン先との距離が変化するので、ワークに付すマークの曲率半径を変化させることができる。
【0012】
本発明において、前記マーキングヘッドが上方で待機している期間、前記ペン先に被さるキャップが前記ベースに保持されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、ペン先からのインクの蒸発や凝固を抑制することができる。
【0013】
本発明において、前記キャップは、前記マーキングペンの外周面または前記ペンホルダの下面に当接する円環状のシール部材を備える態様を採用することができる。かかる態様によれば、ペン先からのインクの蒸発や凝固を効果的に抑制することができる。
【0014】
本発明において、前記マーキングペンによって前記ワークにマーキングしたマークを監視する監視装置が前記ベースに保持されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、ワークに付したマークの監視結果に基づいて、掠れの発生を予期することができる。
【0015】
本発明において、前記ワークは平板状であり、前記ワークと前記マーキングユニットとを前記ワークの面内方向で交差する2方向に相対移動させる駆動機構を有する態様を採用することができる。かかる態様によれば、ワークの所定位置にマーキングを行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、マーキングペンを含むマーキングヘッドを上下駆動機構によって駆動することによって、マーキングペンのペン先でワークにマーキングを施す。また、マーキングヘッドには、圧縮コイルバネによって、マーキングヘッドの自重に抗する上向きの付勢力が印加されているため、マーキングヘッドの自重と圧縮コイルバネの付勢力との差によって、ペン圧が規定される。従って、ペン圧調整機構によって圧縮コイルバネの上下方向の長さを調整することによって、圧縮コイルバネの付勢力を変化させることができるので、ペン圧を適正なレベルに調整することができる。それ故、マーキングする際の掠れの発生やペン先の潰れの発生を抑制することができる等、マーキングペンによって適正にマーキングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るマーキング装置によって付されるマークの説明図。
【
図2】本発明の実施の形態1に係るマーキング装置の側面図。
【
図3】
図2に示すマーキングユニットの上下駆動機構等を示す側面図。
【
図4】
図2に示すマーキングユニットの回転駆動機構等を示す正面図。
【
図5】
図2に示すマーキング装置のキャップ等の説明図。
【
図6】
図2に示すマーキングユニットの待機状態の説明図。
【
図7】
図2に示すマーキングユニットのマーキング状態の説明図。
【
図8】本発明の実施の形態2に係るマーキング装置の説明図。
【
図9】
図8に示す状態からマークの曲率半径を変更したときの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下に説明おいて、互いに直交する3つの方向をX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向として説明する。X軸方向は幅方向であり、Y軸方向は前後方向であり、Z軸方向は上下方向である。
[第1実施の形態]
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係るマーキング装置1によって付されるマークMの説明図である。
図2は、本発明の実施の形態1に係るマーキング装置1の側面図である。
【0019】
図1において、表示パネルやプリント配線板等の平板状のワークWにおいて、検査工程において不具合品と判定されたものに対し、不具合の発生個所にマーキングを行い、不具合合の発生原因の解析等を行うことがある。マークMは、不具合の発生個所を囲むように形成される。本形態において、マークMは円弧状あるいは円形である。本形態において、マークMは、周方向の一部M0が欠落した円弧状である。
【0020】
図2に示すように、マーキング装置1は、機台3の上方位置に、ワークWが配置されるワーク載置面2と、ワークWにマーキングを施すマーキングユニット10とが設けられている。マーキング装置1には、マーキングユニット10とワークWとをワークWの面内方向で互いに交差するX軸方向、およびY軸方向に相対移動させる駆動機構が設けられている。例えば、
図2に矢印X0、Y0で示すように、マーキング装置1には、マーキングユニット10をX軸方向に駆動するX軸駆動機構11と、マーキングユニット10をY軸方向に駆動するY軸駆動機構12とが設けられている。ワークWは、直接、あるいはトレイ等に搭載された状態でワーク載置面2に載置される。ワークWは、例えば、マーキング装置1とは別の検査機器で検査された後、不具合が発生しているワークWのみがロボット等によってワーク載置面2に搬送され、その後、マーキングユニット10によって、
図1に示すマークMがマーキングユニット10によって付される。また、検査機器がワーク載置面2に載置された状態でワークWを検査し、不具合が発生している場合に、マーキングユ
ニット10によって、
図1に示すマークMがマーキングユニット10によって付されることもある。いずれの場合も、検査機器は、ワークWにおいて不具合が発生している箇所のXY座標をマーキング装置1に出力し、マーキング装置1は、検査機器から出力されたXY座標に対応する位置にマークMを付す。また、ワーク載置面2には、ワークWが1つ載置されているが、ワークWが複数載置されることもある。
【0021】
(マーキングユニット10の構成)
図3は、
図2に示すマーキングユニット10の上下駆動機構30等を示す側面図である。
図4は、
図2に示すマーキングユニット10の回転駆動機構70等を示す正面図である。
図5は、
図2に示すマーキング装置1のキャップ80等の説明図である。
【0022】
図3および
図4に示すように、マーキングユニット10は、以下に説明する各部材を支持するベース20と、ベース20の垂直板201に固定された上下駆動機構30と、上下駆動機構30によってベース20に対して上下方向に駆動される可動ブロック40と、可動ブロック40に上下方向に移動可能に支持されたマーキングヘッド50とを備えている。ベース20は、垂直板201、および垂直板201の端部で水平に折れ曲がった水平板202、203等を有する。上下駆動機構30は、可動ブロック40が下方に連結された流体圧シリンダ装置31であり、ベース20の垂直板201に固定されている。マーキングヘッド50は、フェルト、合成繊維、または合成樹脂からなるペン先5aが下向きとされたマーキングペン5を備えており、マーキングペン5は、油性インクを適宜補充できるタイプのペンである。
【0023】
マーキングヘッド50は、マーキングペン5を保持するペンホルダ51を含む。ペンホルダ51は、中心から径方向にずれた偏心位置にマーキングペン5を保持する円盤状の内側部材52と、円筒状のラジアル軸受53を介して内側部材52を内側部材52の中心を通って上下方向に延在する回転中心軸線L周りに回転可能に支持する外側部材54とを含む。
【0024】
図5に示すように、内側部材52は、内側にペンホルダ51を保持する円筒状のカラーからなる第1部材521と、第1部材521がボルト592によって内側に固定された第2部材522と、第1部材521の下端部にボルト593によって固定されたストッパ523とを備えており、ストッパ523は、マーキングペン5の先端側に係合している。従って、マーキングペン5は、第1部材521の内側に上方から挿入可能であるが、ストッパ523によって第1部材521から下方に抜け落ちることが防止されている。なお、第2部材522には、ラジアル軸受53を支持する支持板590がボルト591によって固定されている。
【0025】
再び
図3および
図4において、マーキングヘッド50において、外側部材54からは上方に垂直軸56が延在しており、可動ブロック40は、ペンホルダ51の垂直軸56を上下方向に移動可能に支持する筒状部材41が固定されている。従って、マーキングヘッド50は、垂直軸56を介して可動ブロック40に上下方向に移動可能に支持されている。ペンホルダ51において、外側部材54は、垂直軸56および筒状部材41によって回転不能である。
【0026】
垂直軸56の上端部には、筒状部材41に上方から当接するストッパ57が当接している。従って、流体圧シリンダ装置31が可動ブロック40を下降させると、ペンホルダ51を含むマーキングヘッド50は、垂直軸56が筒状部材41にガイドされながら自重によって下降する。また、流体圧シリンダ装置31が可動ブロック40を上昇させると、マーキングヘッド50は上昇する。本形態では、外側部材54と可動ブロック40との間には、マーキングペン5の周りに垂直軸56、筒状部材41、およびストッパ57が2組設
けられている。
【0027】
ベース20と可動ブロック40との間にはショックアブソーバー26が設けられている。ショックアブソーバー26は、可動ブロック40が下降する際に下降端での下降速度を減衰させる。可動ブロック40には、流体圧シリンダ装置31と隣り合うように垂直板42が連結されており、垂直板42とベース20との間にはショックアブソーバー27が設けられている。ショックアブソーバー27は、可動ブロック40が上昇する際に、上降端での下降速度を減衰させるとともに、可動ブロック40の上昇位置を規定するストッパとして作用する。
【0028】
マーキングユニット10は、ベース20の水平板202に搭載された回転駆動機構70を有している。回転駆動機構70は、ペンホルダ51の内側部材52を回転中心軸線L周りに回転させる。より具体的には、内側部材52からは上方に向けて垂直軸55が延在している一方、回転駆動機構70は、ロータリーアクチュエータ71と、ロータリーアクチュエータ71の出力軸72に連結された水平板73と、水平板73の端部から下方に延在する垂直板74とを備えており、垂直板74の側面には、垂直軸55に両側から当接する2つのローラ75が取り付けられている。従って、ロータリーアクチュエータ71の出力軸72が回転して水平板73および垂直板74が回転中心軸線L周りに回転した際、内側部材52が垂直軸55とともに回転する。なお、垂直軸55には、マーキングペン5の上端部が当接する押さえ部材58が固定されている。
【0029】
このように構成したマーキングユニット10では、ペンホルダ51の外側部材54が固定されている一方、内側部材52は、回転駆動機構70に接続されている。また、マーキングペン5の中心軸線L0は、回転中心軸線Lから離間している。また、回転駆動機構70は、内側部材52を360°未満の角度範囲で回転させる。このため、マーキングペン5のペン先5aは、
図1に示すように、周方向の一部M0が欠落した円弧状のマークMをワークWに付すことができる。
【0030】
(ペン圧調整機構90の構成)
図3において、マーキングユニット10では、マーキングヘッド50の自重Gを利用してマーキングペン5のペン先5aをワークWに当接させてマーキングを施す。本形態において、可動ブロック40とマーキングヘッド50との間には、マーキングヘッド50の自重Gに抗する上向きの付勢力Sをマーキングヘッド50に印加するコイルバネ94が配置されている。従って、ワークWにマーキングを施す際にペン先5aがワークWに当接する力であるペン圧は、マーキングヘッド50の自重Gからコイルバネ94の付勢力Sを減算した値である。
【0031】
マーキングユニット10には、コイルバネ94を利用して、マーキングペン5によってワークWにマーキングする際のペン圧を調整するペン圧調整機構90が設けられている。ペン圧調整機構90では、コイルバネ94の長さを調整することより、付勢力Sを調整し、ペン圧を調整する。
【0032】
本形態において、コイルバネ94は、可動ブロック40とマーキングヘッド50との間で上下方向に圧縮された状態に配置された圧縮コイルバネ95である。ペン圧調整機構90は、圧縮コイルバネ95と、マーキングヘッド50に固定された第1バネ受け部材91と、位置調整用の固定具93によって可動ブロック40に固定された第2バネ受け部材92とを備えており、第1バネ受け部材91と第2バネ受け部材92とが上下方向で対向する部分の間に圧縮コイルバネ95が配置されている。従って、固定具93によって可動ブロック40に固定された際の第2バネ受け部材92の上下方向の位置によって圧縮コイルバネ95の上下方向の長さが調整される。
【0033】
より具体的には、第1バネ受け部材91は、圧縮コイルバネ95が周りに配置される軸部911と、軸部911の上端側で突出して圧縮コイルバネ95の上端が当接する受け部912とを備えている。第2バネ受け部材92は、上下方向の途中位置が固定具93によって可動ブロック40に固定された第1板部921と、第1板部921の下端部から折れ曲がって圧縮コイルバネ95の下端が当接する第2板部922とを備えており、第1バネ受け部材91の受け部912と第2バネ受け部材92の第2板部922との間に圧縮コイルバネ95が圧縮された状態で配置される。固定具93はボルトである。第2板部922には上下方向に延在する長穴923が設けられ、可動ブロック40の側面は、固定具93が止められるネジ穴が形成されている。このため、長穴923の上下方向の範囲内において、固定具93によって第2バネ受け部材92を可動ブロック40に固定する際の上下位置を調整することができる。
【0034】
本形態のペン圧調整機構90では、圧縮コイルバネ95、第1バネ受け部材91、第2バネ受け部材92および固定具93が2組設けられている。
【0035】
かかるペン圧調整機構90では、可動ブロック40の上面からの第2バネ受け部材92の上端部分の高さhを調整する。例えば、マーキングヘッド50の自重Gが850gであり、圧縮コイルバネ95の自由長が45mmで、圧縮コイルバネ95の1本当たりのバネ定数を81g/mmであるとき、高さhを変化させたときの圧縮コイルバネ95の圧縮長(mm)、圧縮コイルバネ95の2本分の付勢力S、およびペン圧(g)は以下の通りである。
高さh 圧縮長 付勢力S ペン圧
31 39.5 891 -41
30 40.5 729 121
29 41.5 567 283
28 42.5 405 445
27 43.5 117 733
26 44.5 52 798
【0036】
従って、例えば、ペン圧の適正値が445gであれば、高さhを28mmとすることによって、最適なペン圧を実現することができる。それ故、マーキングを行う際、インクの掠れや、ペン先5aの変形等の不具合が発生しにくい。
【0037】
(監視装置60の構成)
マーキングユニット10では、マーキングペン5によってワークWにマーキングしたマークMを監視する監視装置60がベース20に保持されている。監視装置60は、マークMの掠れ度合等を監視し、マーキングペン5にインクを補充するタイミングを検出する。
【0038】
本形態では、ベース20の水平板202に固定された支持軸65の下端部に監視装置60が保持されており、監視装置60はマーキングヘッド50の側方に位置する。監視装置60は、マークMを撮像する撮像装置であり、ワークWの表面を適正に監視できるように角度を5°程度、傾けてある。
【0039】
(キャップ80の構成)
図4において、マーキング装置1は、マーキングヘッド50が上方で待機している期間、ペン先5aに下方から被さるキャップ80を有している。キャップ80は、
図2に示す機台3から上方に延在する支柱4に、
図4に示す連結部材86、87、88、89を介して固定されており、マーキングヘッド50の下方に位置する。なお、連結部材86とベース20の水平板203との間には、マーキングユニット10をY軸方向に駆動するY軸駆
動機構12が設けられている。
【0040】
キャップ80は、ペン先5aが収容される凹部81の開口縁にマーキングペン5の外周面に当接する円環状のシール部材82を備える。シール部材82は、ゴム等からなる。ここで、キャップ80は、マーキングヘッド50の下方位置にあるが、マーキング装置1には、マーキングヘッド50を上下方向に駆動する上下駆動機構30と、マーキングユニット10をY軸方向に駆動するY軸駆動機構12が設けられている。従って、マーキングヘッド50については、ワークWにマーキングを施す際にはキャップ80を避けた位置で上下方向に移動させることができ、待機位置ではキャップ80と上下方向で重なる位置でマーキングヘッド50を上下方向に移動させることによりキャップ80への装着およびキャップ80の脱離が行われる。なお、ペンホルダ51が、後述する
図8および
図9に示す態様の場合、ペンホルダの下面に当接するように円環状のシール部材82を設けてもよい。
【0041】
(動作)
図6は、
図2に示すマーキングユニット10の待機状態の説明図である。
図7は、
図2に示すマーキングユニット10のマーキング状態の説明図である。
【0042】
本形態のマーキング装置1において、上下駆動機構30は、マーキングヘッド50の高さ位置を最上端、最下端、および中間の3段階に切り替える。
図4には、マーキングヘッド50が最上端に位置する様子が示されており、ペン先5aはキャップ80に装着されていない。
【0043】
この状態から上下駆動機構30が可動ブロック40を下降させると、マーキングヘッド50が下降する。その結果、
図6に示すように、ペン先5aがキャップ80の凹部81の内側に嵌り、マーキングペン5の外周面にシール部材82が当接する待機状態となる。従って、待機状態では、ペン先5aからのインクの蒸発やインクの凝固が発生しにくい。
【0044】
この状態で、上下駆動機構30が可動ブロック40を上昇させると、マーキングヘッド50が最上端まで上昇し、
図4に示す状態となる。次に、Y軸駆動機構12がマーキングヘッド50をY軸方向に駆動すると、マーキングヘッド50は、キャップ80と上下方向で重ならない位置に移動する。次に、上下駆動機構30が可動ブロック40を下降させると、
図7に示すように、マーキングヘッド50が最下端まで下降し、ペン先5aがワークWに当接する。その際、ペン先5aは、ペン圧調整機構90によって設定された最適なペン圧でワークWに当接する。従って、回転駆動機構70がペンホルダ51の内側部材52を回転中心軸線L周りに回転させると、ワークWにマークMが付される。
【0045】
このようにしてマーキングが終了した後は、上下駆動機構30がマーキングヘッド50を最上端まで上昇させた後、Y軸駆動機構12がマーキングヘッド50をキャップ80の真上位置に移動させ、しかる後、
図6に示すように、上下駆動機構30がマーキングヘッド50を中間位置まで下降させる。その結果、マーキングヘッド50は再び、待機状態となる。
【0046】
[実施の形態2]
図8は、本発明の実施の形態2に係るマーキング装置1の説明図である。
図9は、
図8に示す状態からマークMの曲率半径を変更したときの説明図である。
図8および
図9には、マーキングヘッド50、ペンホルダ51、および第1部材521の各々を拡大して模式的に示してある。但し、
図8および
図9において、最上段に示すマーキングヘッド50の断面では、マーキングヘッド50の切断位置を各部材が示される位置に設定してある。また、
図8および
図9には、回転中心軸線Lが通る内側部材52の中心O52(第2部材522の中心)を白丸で示し、マーキングペン5の中心軸線L0が通る位置O5を黒丸で示
し、第1部材521の中心O521を「+」で示してある。なお、本形態の基本的な構成は実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0047】
図8に示すように、本形態でも、実施の形態1と同様、ペンホルダ51は、中心O52から径方向にずれた偏心位置にマーキングペン5を保持する円盤状の内側部材52と、円筒状のラジアル軸受53を介して内側部材52を内側部材52の中心を通って上下方向に延在する回転中心軸線L周りに回転可能に支持する外側部材54とを含んでいる。内側部材52は、内側にペンホルダ51を保持する円筒状のカラーからなる第1部材521と、第1部材521が内側に固定された第2部材522と、第1部材521の下端部に固定されたストッパ523とを備えており、ストッパ523は、マーキングペン5の先端側に係合している。
【0048】
ここで、内側部材52の中心O52は、回転中心軸線Lが通る位置であり、第2部材522の中心と一致している。第1部材521は、中心O521から径方向にずれた偏心位置にマーキングペン5を保持しており、第2部材522は、ラジアル軸受53を介して回転中心軸線L周りに回転可能に外側部材54に支持されている。また、第2部材522には、回転中心軸線Lから径方向にずれた偏心位置に第1部材521がボルト592によって固定されている。また、第2部材522に止められた複数のボルト592のうちの一部のボルト592は、第1部材521の円弧状のガイド溝521aの内側に嵌って周方向のガイド軸を構成している。
【0049】
ここで、第2部材522の中心(内側部材52の中心O52)に対して第1部材521の中心O521がずれている方向は、第1部材521の中心O521に対してマーキングペン5の中心軸線L0がずれている方向と反対側である。従って、回転中心軸線Lに対してマーキングペン5がずれている距離d0は、以下に示すように、第2部材522に対して第1部材521がずれている距離d1から第1部材521に対してマーキングペン5がずれている距離d2を減算した値である。
d0=d1-d2
【0050】
例えば、第2部材522に対して第1部材521がずれている距離d1が4.5mmで、第1部材521に対してマーキングペン5がずれている距離d2が2mmである場合、第2部材522に対してマーキングペン5がずれている距離d0は2.5mmとなる。従って、
図1に示すマークMの曲率半径は2.5mmである。
【0051】
本形態では、第2部材522に第1部材521を固定する際、第1部材521の角度方向を変えることができるように、ボルト592の固定位置等が設定されている。従って、
図9に示すように、第2部材522の中心(内側部材52の中心O52)に対して第1部材521の中心O521がずれている方向を、第1部材521の中心O521に対してマーキングペン5の中心軸線L0がずれている方向と同一の側とすることができる。この場合、回転中心軸線Lに対してマーキングペン5がずれている距離d0は、以下に示すように、第2部材522に対して第1部材521がずれている距離d1に対して、第1部材521に対してマーキングペン5がずれている距離d2を加算した値である。
d0=d1+d2
【0052】
従って、第2部材522に対して第1部材521がずれている距離d1が4.5mmで、第1部材521に対してマーキングペン5がずれている距離d2が2mmである場合、第2部材522に対してマーキングペン5がずれている距離d0は6.5mmとなる。従って、
図1に示すマークMの曲率半径は6.5mmである。
【0053】
それ故、第2部材522に第1部材521を固定する際の角度位置を変更することによって、マークMの曲率半径を変更することができる。
【0054】
[その他の実施の形態]
上記の実施の形態において、マークMは、周方向の一部M0が欠落した円弧状であったが、円形のマークMを付す構成であってもよい。また、上記の実施の形態において、マークMを付す際、マーキングペン5を回転させる構成であったが、マーキングペン5を回転させずにペン先5aをワークWに当接させるタイプのマーキング装置において、ペン圧を調整する場合に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…マーキング装置、2…ワーク載置面、20…ベース、3…機台、5…マーキングペン、5a…ペン先、10…マーキングユニット、11…X軸駆動機構、12…Y軸駆動機構、30…上下駆動機構、31…流体圧シリンダ装置、40…可動ブロック、50…マーキングヘッド、51…ペンホルダ、54…外側部材、52…内側部材、53…ラジアル軸受、60…監視装置、70…回転駆動機構、71…ロータリーアクチュエータ、80…キャップ、81…凹部、82…シール部材、90…ペン圧調整機構、91…第1バネ受け部材、92…第2バネ受け部材、93…固定具、94…コイルバネ、95…圧縮コイルバネ、521…第1部材、522…第2部材、911…軸部、912…受け部、921…第1板部、922…第2板部、923…長穴、G…自重、L…回転中心軸線、L0…中心軸線、M…マーク、S…付勢力