IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

特許7629332ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法
<>
  • 特許-ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法 図1
  • 特許-ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法 図2
  • 特許-ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法 図3
  • 特許-ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法 図4
  • 特許-ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法 図5
  • 特許-ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法 図6
  • 特許-ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法 図7
  • 特許-ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法 図8
  • 特許-ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法 図9
  • 特許-ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法 図10
  • 特許-ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法 図11
  • 特許-ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法 図12
  • 特許-ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法 図13
  • 特許-ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法 図14
  • 特許-ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法 図15
  • 特許-ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法 図16
  • 特許-ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/12 20220101AFI20250205BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20250205BHJP
【FI】
B61L27/12
G06Q50/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021067091
(22)【出願日】2021-04-12
(65)【公開番号】P2022162317
(43)【公開日】2022-10-24
【審査請求日】2024-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】賀沢 唯
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中川 香織
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-255766(JP,A)
【文献】特開2010-018221(JP,A)
【文献】特開2008-062729(JP,A)
【文献】特開2004-122900(JP,A)
【文献】特開2019-073146(JP,A)
【文献】特開2020-032964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理部と記憶部を有するダイヤ変更支援システムであって、
前記記憶部は、
運行計画情報及び車両位置情報と、車両が停車する各駅を利用する旅客の出発駅、前記出発駅への到着時刻、目的駅及び前記出発駅から前記目的駅までの第1のルートを含む移動需要予測情報と、を記憶し、
前記処理部は、
ダイヤ変更要否判定を行うダイヤ変更要否判定部を有し、
前記ダイヤ変更要否判定部は、
前記車両位置情報に基づいて各車両の各駅における予測到着時刻を推定し、予測ダイヤ情報を生成する運行状況予測部と、
前記予測ダイヤ情報と、前記旅客の乗継が想定される2車両及び接続駅を含む乗継情報とに基づいて、前記車両の到着遅れにより接続が確保できなくなる駅、接続元車両及び接続先車両によって定義される乗継失敗箇所を推定する乗継失敗箇所推定部と、
駅間の接続を表す路線ネットワーク情報及び前記予測ダイヤ情報に基づいて、前記接続が確保できなくなる駅において、前記第1のルートを利用する場合に乗り継ぐと想定される車両とは異なる車両に乗り継いで前記目的駅へ向かう第2のルートを探索する別ルート探索部と、
前記乗継失敗箇所及び前記別ルート探索部の探索結果に基づいて、前記接続先車両の前記接続駅における出発時刻を変更する必要があるか否かを判定する評価部と、
を有するダイヤ変更支援システム。
【請求項2】
前記別ルート探索部は、
前記乗継失敗箇所のそれぞれについて、前記接続元車両の遅延により接続が確保できなくなった2車両間を乗り継ぐ前記旅客を抽出し、前記旅客のそれぞれに対し、前記第2のルートが存在するか否かを探索する請求項1に記載のダイヤ変更支援システム。
【請求項3】
前記評価部は、
前記第2のルートが存在しない旅客数に基づいて前記接続先車両に対する評価値を算出し、前記評価値に基づいて前記接続先車両の前記出発時刻を変更する必要があるか否かを判定する請求項2に記載のダイヤ変更支援システム。
【請求項4】
前記処理部は、
前記乗継失敗箇所のうち、前記評価部によって前記接続先車両の出発時刻を変更する必要があると判定された前記乗継失敗箇所のそれぞれについて、
前記接続先車両を一意に識別するための情報、前記接続駅を一意に識別するための情報及び前記接続先車両の推奨出発時刻を含む出発時刻提案情報を作成する請求項1に記載のダイヤ変更支援システム。
【請求項5】
前記出発時刻提案情報を出力する出力部を更に有する請求項4に記載のダイヤ変更支援システム。
【請求項6】
前記記憶部は、
交通機関を利用する前記旅客を一意に特定できる情報と、前記旅客が前記交通機関における前記ダイヤ変更要否判定の結果被った不利益に応じて付与されるポイントの累計とを含む旅客ポイント情報を更に記憶し、
前記ダイヤ変更要否判定部は、
前記ダイヤ変更要否判定の結果不利益を被る前記旅客を抽出し、各旅客が被った不利益の度合いに応じたポイントを算出し、前記旅客ポイント情報を更新する旅客ポイント更新部を更に有し、
前記評価部は、
前記乗継失敗箇所、前記別ルート探索部の探索結果及び前記旅客ポイント情報に基づいて、前記接続先車両の前記接続駅における前記出発時刻を変更する必要があるか否かを判定する請求項1に記載のダイヤ変更支援システム。
【請求項7】
前記評価部は、
前記第2のルートが存在しない旅客数及び前記旅客ポイント情報に基づいて、前記接続先車両に対する評価値を算出し、
前記評価値に基づいて、前記接続先車両の前記出発時刻を変更する必要があるか否かを判定する請求項6に記載のダイヤ変更支援システム。
【請求項8】
前記旅客ポイント更新部は、
前記乗継失敗箇所を一意に識別できる情報及びダイヤ変更が行われたか否かを識別できる情報を含む識別情報を取得し、
前記乗継失敗箇所のそれぞれについて、
ダイヤ変更が行われた場合には、前記接続先車両の前記接続駅における出発時刻以前から前記接続先車両に乗車している旅客を抽出し、前記接続先車両の出発時刻を変更した時間量に基づいて設定したポイントを付与し、
前記ダイヤ変更が行われなかった場合には、前記接続元車両から前記接続先車両へ乗り継ぐ旅客を抽出し、前記接続元車両の到着遅れ及び前記ダイヤ変更が行われなかったことに伴う移動時間の増分に基づいて設定したポイントを付与する請求項6に記載のダイヤ変更支援システム。
【請求項9】
ダイヤ変更支援システムと、運行管理システムと、チケッティングシステムと、が回線を介して接続された交通システムであって、
前記ダイヤ変更支援システムは、
運行計画情報及び車両位置情報と、車両が停車する各駅を利用する旅客の出発駅、前記出発駅への到着時刻、目的駅及び前記出発駅から前記目的駅までの第1のルートを含む移動需要予測情報と、を記憶する記憶部と、
前記車両位置情報に基づいて各車両の各駅における予測到着時刻を推定し、予測ダイヤ情報を生成する運行状況予測部と、
前記予測ダイヤ情報と、前記旅客の乗継が想定される2車両及び接続駅を含む乗継情報とに基づいて、前記車両の到着遅れにより接続が確保できなくなる駅、接続元車両及び接続先車両によって定義される乗継失敗箇所を推定する乗継失敗箇所推定部と、
駅間の接続を表す路線ネットワーク情報及び前記予測ダイヤ情報に基づいて、前記接続が確保できなくなる駅において、前記第1のルートを利用する場合に乗り継ぐと想定される車両とは異なる車両に乗り継いで前記目的駅へ向かう第2のルートを探索する別ルート探索部と、
前記乗継失敗箇所及び前記別ルート探索部の探索結果に基づいて前記接続先車両の前記接続駅における出発時刻を変更する必要があるか否かを判定する評価部と、を有する処理部を有し、
前記運行管理システムは、
運行計画に沿って運行する交通機関の運行計画及び前記車両の運行状況を管理し、前記運行計画情報及び前記車両位置情報を前記ダイヤ変更支援システムに送り、
前記チケッティングシステムは、
前記交通機関を利用する旅客が前記交通機関の利用に対して運賃を支払い、前記移動需要予測情報を前記ダイヤ変更支援システムに送る交通システム。
【請求項10】
前記運行管理システムは、
所定の時間ごとに最新の前記車両位置情報を前記ダイヤ変更支援システムに送信し、
前記ダイヤ変更支援システムの前記処理部は、
最新の前記車両位置情報に基づいて、前記記憶部に記憶された前記車両位置情報を更新する請求項9に記載の交通システム。
【請求項11】
前記チケッティングシステムは、
所定の時間ごとに最新の前記移動需要予測情報を前記ダイヤ変更支援システムに送信し、
前記ダイヤ変更支援システムの前記処理部は、
最新の前記移動需要予測情報に基づいて、前記記憶部に記憶された前記移動需要予測情報を更新する請求項9に記載の交通システム。
【請求項12】
前記ダイヤ変更支援システムは、
前記評価部が前記出発時刻を変更する必要があると判定した場合、前記運行管理システムに、前記接続先車両を一意に識別するための情報、前記接続駅を一意に識別するための情報及び前記接続先車両の推奨出発時刻を含む出発時刻提案情報を送信する送信部を更に有する請求項9に記載の交通システム。
【請求項13】
前記ダイヤ変更支援システムは、
前記出発時刻提案情報を受信した前記運行管理システムから、前記乗継失敗箇所を一意に識別できる情報及びダイヤ変更が行われたか否かを識別できる情報を含む識別情報を取得する受信部を更に有する請求項12に記載の交通システム。
【請求項14】
前記ダイヤ変更支援システムは、
前記評価部が前記出発時刻を変更する必要がないと判定した場合、前記別ルート探索部が前記第2のルートが存在すると判定した旅客を一意に識別できる情報及び前記別ルート探索部が探索した前記第2のルートとを含む別ルート情報を前記チケッティングシステムに送信する送信部を更に有する請求項9に記載の交通システム。
【請求項15】
車両の出発時刻を変更する必要があるか否かを判定するためのダイヤ変更支援方法であって、
運行計画情報及び車両位置情報と、前記車両が停車する各駅を利用する旅客の出発駅、前記出発駅への到着時刻、目的駅及び前記出発駅から前記目的駅までの第1のルートを含む移動需要予測情報と、を記憶する記憶ステップと、
前記車両位置情報に基づいて各車両の各駅における予測到着時刻を推定し、予測ダイヤ情報を生成する運行状況予測ステップと、
前記予測ダイヤ情報と、前記旅客の乗継が想定される2車両及び接続駅を含む乗継情報とに基づいて、前記車両の到着遅れにより接続が確保できなくなる駅、接続元車両及び接続先車両によって定義される乗継失敗箇所を推定する乗継失敗箇所推定ステップと、
駅間の接続を表す路線ネットワーク情報及び前記予測ダイヤ情報に基づいて、前記接続が確保できなくなる駅において、前記第1のルートを利用する場合に乗り継ぐと想定される車両とは異なる車両に乗り継いで前記目的駅へ向かう第2のルートを探索する別ルート探索ステップと、
前記乗継失敗箇所及び前記別ルート探索ステップの探索結果に基づいて前記接続先車両の前記接続駅における前記出発時刻を変更する必要があるか否かを判定する評価ステップと、
を有するダイヤ変更支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤ変更支援システム、交通システム及びダイヤ変更支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道輸送サービスに代表される公共交通機関は、運行乱れや旅客の需要変動などの状況の変化に応じて日々の運行計画に対するダイヤ変更を行っている。例えば、車両の到着遅れが発生し他車両の接続が確保できなくなった場合に、接続車両と被接続車両との接続を確保するために被接続車両の出発時刻を調整することがある。このようなダイヤ変更要否判定は合理性の確保を要する高度な作業であり、相応の労力と時間を要する。
【0003】
特許文献1には、他路線との接続時の各路線・各社間の車両運行ダイヤ調整を円滑に行い得る技術が開示されている。特許文献1によれば、まず、第1の車両を管理する第1の運行管理システムおよび第2の車両を管理する第2の運行管理システムから第1および第2の各車両に関する運行情報をそれぞれ取得し、各車両に関する運行情報から各車両の各駅における予測到着時刻を算出する。各車両の各駅における予測到着時刻の算出結果および過去の乗継に関する実績データに基づいて、被接続車両の出発時刻を変更する必要があるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-255766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術によれば、接続駅における乗継時間が確保されているか否か、および乗継客数の多寡に基づいた合理的なダイヤ変更要否判定を行うことができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、旅客の目的駅が考慮されていない。例えば、旅客が当初意図していた経路とは異なる経路によって目的駅へ到達可能な場合がある。不必要なダイヤ変更は交通事業者のコスト増加および旅客満足度の低下につながる。このため、接続を確保しなくても旅客の利便性が大きく損なわれない場合にはダイヤを変更しないことが望ましい。
【0007】
旅客の移動需要に対応しつつ必要最小限のダイヤ変更を行うためには、車両間の乗継を行う旅客が当初意図していた経路の情報を取得し、目的駅へ到達可能な別の経路が存在しない乗継客数に基づいてダイヤ変更要否判定を行う必要がある。
【0008】
本発明の目的は、ダイヤ変更支援システムにおいて、旅客の移動需要に対応しつつ必要最小限のダイヤ変更を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様のダイヤ変更支援システムは、処理部と記憶部を有するダイヤ変更支援システムであって、前記記憶部は、運行計画情報及び車両位置情報と、車両が停車する各駅を利用する旅客の出発駅、前記出発駅への到着時刻、目的駅及び前記出発駅から前記目的駅までの第1のルートを含む移動需要予測情報と、を記憶し、前記処理部は、ダイヤ変更要否判定を行うダイヤ変更要否判定部を有し、前記ダイヤ変更要否判定部は、前記車両位置情報に基づいて各車両の各駅における予測到着時刻を推定し、予測ダイヤ情報を生成する運行状況予測部と、前記予測ダイヤ情報と、前記旅客の乗継が想定される2車両及び接続駅を含む乗継情報とに基づいて、前記車両の到着遅れにより接続が確保できなくなる駅、接続元車両及び接続先車両によって定義される乗継失敗箇所を推定する乗継失敗箇所推定部と、駅間の接続を表す路線ネットワーク情報及び前記予測ダイヤ情報に基づいて、前記接続が確保できなくなる駅において、前記第1のルートを利用する場合に乗り継ぐと想定される車両とは異なる車両に乗り継いで前記目的駅へ向かう第2のルートを探索する別ルート探索部と、前記乗継失敗箇所情報及び前記別ルート探索部の探索結果に基づいて、前記接続先車両の前記接続駅における前記出発時刻を変更する必要があるか否かを判定する評価部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、ダイヤ変更支援システムにおいて、旅客の移動需要に対応しつつ必要最小限のダイヤ変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】交通機関の構成の一例を示す図である。
図2】交通システム10の構成の一例を説明する図である。
図3図2のダイヤ変更支援システムの概略ハードウェア構成を示す図である。
図4】実施例1のダイヤ変更支援システムの機能ブロック図である。
図5】予測ダイヤ情報の一例を示す図である。
図6】乗継情報の一例を示す図である。
図7】乗継失敗箇所情報の一例を示す図である。
図8】移動需要予測情報の一例を示す図である。
図9】出発時刻変更提案情報の一例を示す図である。
図10図4のダイヤ変更要否判定部が行うダイヤ変更要否判定処理を説明するためのフローチャートである。
図11】ダイヤ変更要否判定の結果を出力部に表示した一例を示す図である。
図12図10に示したダイヤ変更要否判定処理のうち、評価値算出処理を詳細に説明するためのフローチャートである。
図13図12に示した評価値算出処理のうち、別ルート探索処理を詳細に説明するためのフローチャートである。
図14】実施例2のダイヤ変更支援システムの機能ブロック図である。
図15】旅客ポイント情報の一例を示す図である。
図16図14のダイヤ変更要否判定部が行うダイヤ変更要否判定処理を説明するためのフローチャートである。
図17図16に示したダイヤ変更要否判定処理のうち、旅客ポイント情報更新処理を詳細に説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るダイヤ変更支援システムの実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1を参照して、交通機関の構成の一例について説明する。
【0014】
交通機関1は、複数の駅A~H、駅A~Hに停車する車両1~4から構成される。なお本明細書において「駅」とは、旅客が乗降可能な地点を指す。車両1~4は複数のユーザが一緒に移動する乗り物であり、後述する運行管理システム(図2)によって運行計画および運行状況が管理される。
【0015】
車両1~4は例えば、列車、バス、船舶、航空機などである。車両1~4は、ここでは、それぞれ異なる運行管理システムによって運行計画および運行状況が管理されることを想定しているが、同一の運行管理システムによって運行計画および運行状況を管理されても良い。車両1は路線R1を走行する車両であり、A駅→D駅→E駅の順に走行する。車両2および車両4は路線R2を走行する車両であり、B駅→D駅→F駅→H駅の順に走行する。車両3は路線R3を走行する車両であり、C駅→D駅→G駅→H駅の順に走行する。
【0016】
D駅は路線R1、路線R2および路線R3上の駅であり、路線R1を走行する車両の乗客は、D駅において路線R2または路線R3を走行する車両に乗り継ぐことが可能である。また、路線R2を走行する車両の乗客は、D駅において路線R1または路線R3を走行する車両に乗り継ぐことが可能である。また、路線R3を走行する車両の乗客は、D駅において路線R1または路線R2を走行する車両に乗り継ぐことが可能である。なお、本明細書では、D駅のように、ある路線を走行する車両から別の路線を走行する車両へと乗り継ぐ際に利用される駅を接続駅と記載する。接続駅は、異なる建物に設置された異なる駅であっても、同一構内に設置された異なるホームの駅であっても良い。
【0017】
実施例1は、車両1~4がD駅に停車する場合であって、かつ運行計画において車両1のD駅到着時刻および車両2のD駅出発時刻が、車両1から車両2への乗り継ぎが可能であるように設定されている場合であって、かつ車両1の遅延により車両1から車両2への接続が確保できなくなった場合であって、車両1から車両2へ乗り継ぐ乗客のうち、当初意図していた経路とは異なる経路によって目的駅へ到達することができない乗継客の人数に基づいて、車両2のD駅出発時刻を変更する必要があるか否かを判定するものである。
【0018】
図2は、交通システム10の構成の一例を説明する図である。
【0019】
交通システム10は、ダイヤ変更支援システム100と、チケッティングシステム200と、運行管理システム300と、運行管理システム400と、運行管理システム500と、を備えて構成される。ダイヤ変更支援システム100、チケッティングシステム200、運行管理システム300、運行管理システム400および運行管理システム500は図示しない回線によって接続されている。
【0020】
ダイヤ変更支援システム100は、運行管理システム300および運行管理システム400および運行管理システム500から得られる車両の運行計画および車両の走行位置を取得する。また、ダイヤ変更支援システム100は、チケッティングシステム200から移動需要(例えば、誰が、いつ、どこからどこまで移動しようとしているか)の情報を取得する。
【0021】
運行管理システム300は車両1の運行計画および運行状況を管理する。また、運行管理システム400は車両2および車両4の運行計画および運行状況を管理する。また、運行管理システム500は車両3の運行計画および運行状況を管理する。各運行管理システムによる各車両の運行計画および運行状況の管理については、公知の技術を用いれば良いため、ここでは説明を省略する。
【0022】
チケッティングシステム200は、交通機関1を利用する旅客が、交通機関1の利用に対して適切に運賃を支払うためのシステムである。チケッティングシステム200は、例えば、サーバコンピュータであり、図示しない回線を介して携帯端末201との情報の授受および運賃の決済処理を行う。携帯端末201は、交通機関1を利用する旅客が操作する可搬型のコンピュータであり、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ノート型コンピュータなどである。携帯端末201とチケッティングシステム200との間の各種情報の送受信およびチケッティングシステム200による運賃の決済については、公知の技術を用いれば良いため、ここでは説明を省略する。
【0023】
図3はダイヤ変更支援システム100の概略ハードウェア構成を示す図である。
【0024】
ダイヤ変更支援システム100は、例えば、パーソナルコンピュータやサーバコンピュータである。図3に示すようにダイヤ変更支援システムは、互いにバスBで接続された入力部101と、出力部102と、通信部103と、記憶部104と、処理部105と、を備える。
【0025】
入力部101は、例えば、キーボードおよびマウスで構成されており、ダイヤ変更支援システムに関する操作をユーザが入力するインターフェースである。出力部102は、例えば、ディスプレイ装置で構成されており、ダイヤ変更支援システムに関する情報を表示するインターフェースである。
【0026】
通信部103は図示しない通信回線に接続されており、チケッティングシステム200、運行管理システム300、400および500の各種運行管理システムと、ダイヤ変更支援システムとの間で各種情報の送受信を行うインターフェースである。このように、通信部103は、送信部と受信部とから構成される。
【0027】
記憶部104は、例えばハードディスク装置で構成されており、ダイヤ変更支援システム100に関するプログラムおよびデータを不揮発的に記憶する。処理部105は、例えば、CPU(Central Processing Unit)で構成されたプロセッサと、プロセッサの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)と、を有している。処理部105は、記憶部104に記憶された各種処理プログラムをプロセッサが実行することで各種情報処理を行う。
【0028】
図4は、実施例1に係るダイヤ変更支援システム100の機能ブロック図である。
【0029】
ダイヤ変更要否判定部110は、遅延により接続を確保できなくなる車両(以下、接続元車両)および接続駅を推定し、遅延が発生した車両の接続先の車両(以下、接続先車両)の出発時刻を変更する必要があるか否かを判定する機能を有する。
【0030】
本実施例1において、ダイヤ変更要否判定部110は、記憶部104に記憶された各種処理プログラムを上述の処理部105(図3)が実行することにより実現される。ダイヤ変更要否判定部110は、図4に示すように、運行状況予測部120と、乗継失敗箇所推定部130と、評価部140と、別ルート探索部150と、を有する。
【0031】
運行状況予測部120は、上述の通信部103を通じて運行システム300、400および500から取得した運行計画情報D1と車両位置情報D2とを用いて、各車両の未来の運行状況の予測結果である予測ダイヤ情報D3を生成する。運行計画情報D1は、各路線の各車両に適用される運行計画であり、運行システムからダイヤ変更支援システムにあらかじめ送信され記憶部104に記憶されているものとする。また、車両位置情報D2は、運行システム300、400および500が運行状況を管理する各車両の走行位置を示す情報であり、所定の時間ごとに(例えば、5分周期など)最新の情報が送信され、記憶部104に記憶された車両位置情報D2が更新されるものとする。
【0032】
図5は、予測ダイヤ情報D3の一例を示す図である。
【0033】
予測ダイヤ情報D3には、車両を一意に識別するための情報(例えば車両1、車両2、車両3、車両4など)と、車両が走行する路線を識別するための情報(例えば路線R1、路線R2、路線R3など)と、車両が停車する駅を識別するための情報(例えばA駅、B駅、C駅など)と、運行計画情報D1に基づく各車両の各駅における到着時刻および出発時刻と、車両位置情報D2に基づいて予測した各車両の各駅における予測到着時刻および予測出発時刻と、各車両の各駅における到着時刻の遅延時分と、が含まれる。
【0034】
乗継失敗箇所推定部130は、予測ダイヤ情報D3と、車両間の乗継に関する情報である乗継情報D4とを用いて、車両間の接続を確保できなくなる接続元車両と、接続先車両と、接続駅と、の推定結果である乗継失敗箇所情報D5を生成する。
【0035】
図6は、乗継情報D4の一例を示す図である。
【0036】
乗継情報D4には、旅客の乗継が想定される2車両および接続駅について、接続元車両を識別するための情報と、接続先車両を識別するための情報と、接続駅を識別するための情報と、接続元車両の接続駅における到着時刻と、接続先車両の接続駅における出発時刻と、旅客が乗継に要する時間と、が含まれる。乗継が想定される2車両は、各路線の運行計画に基づいて定義しても良いし、旅客の乗継に関する実績データに基づいて定義しても良い。また、旅客が乗継に要する時間は、任意の値を定義しても良いし、旅客の乗継に関する実績データに基づいて定義してもよい。
【0037】
図7は、乗継失敗箇所情報D5の一例を示す図である。
【0038】
乗継失敗箇所情報D5には、各乗継失敗箇所について、乗継失敗箇所を一意に識別するための情報(例えば、乗継失敗箇所を管理するIDなど)と、接続元車両を識別するための情報と、接続先車両を識別するための情報と、乗継が行われる接続駅を識別するための情報と、接続元車両の接続駅における予測到着時刻と、接続先車両の接続駅における予測出発時刻と、車両間の接続を確保するにあたって不足している時間量である不足時間と、が含まれる。ここで不足時間は、接続先車両の接続駅における予測出発時刻と接続元車両の接続駅における予測到着時刻との差分から旅客が乗継に要する時間を差し引いた値の絶対値をとることで求まる。
【0039】
図8は、移動需要予測情報D6の一例を示す図である。
【0040】
移動需要予測情報D6には、旅客を一意に識別できる情報(例えば、チケッティングシステムを利用する際に用いるユーザIDなど)と、旅客の出発駅と、旅客が移動を開始すると推定される時刻である予測出発時刻と、旅客の目的駅と、旅客が利用すると推定される経路と、が含まれる。旅客が利用すると推定される経路は、公知のアルゴリズムを用いて求めれば良いため、ここでは説明を省略する。
【0041】
図9は、出発時刻変更提案情報D7の一例を示す図である。
【0042】
出発時刻変更提案情報D7には、接続先車両の出発時刻を変更する必要があると判定された乗継失敗箇所について、乗継失敗箇所を一意に識別するための情報と、出発時刻の変更が必要であると判定された接続先車両を一意に識別するための情報と、接続駅を一意に識別するための情報と、予測ダイヤ情報D3を参照して得られる上述の接続先車両の接続駅における予測出発時刻と、後述する推奨出発時刻と、が含まれる。
【0043】
評価部140は、各乗継失敗箇所について接続先車両の出発時刻を変更する必要があるか否かを判定し、変更が必要である場合、出発時刻変更提案情報D7を更新する。また、ダイヤ変更要否判定部110は、通信部103を介して、接続先車両の運行計画および運行状況を管理する運行管理システムに対し出発時刻変更提案情報D7を送信する。また、ダイヤ変更要否判定部110は、出力部102に出発時刻変更提案情報D7を表示する。
【0044】
別ルート探索部150は、接続元車両の遅延により車両間の接続が確保できなくなった場合に、予測ダイヤ情報D3と、乗継情報D4と、上述の通信部103を通じてチケッティングシステム200から取得した移動需要予測情報D6と、駅間の接続関係を表す路線ネットワーク情報D0と、を用いて、移動需要予測情報D6に設定された旅客が利用すると推定される経路とは異なり、かつ移動にかかる所要時間の増分が所定の値以下である経路を探索する。
【0045】
以下に、上述したダイヤ変更支援システム100の処理について詳述する。
【0046】
図10は、ダイヤ変更要否判定部110の処理を説明するためのフローチャートである。
【0047】
ダイヤ変更要否判定部110はまず、通信部103を通じて、運行管理システム300、400および500から、車両1~3の現時点における走行位置を受信する(ステップS101)。そして図5に示した予測ダイヤ情報を作成する。
【0048】
次に、ダイヤ変更要否判定部110は、図5に示した予測ダイヤ情報および図6に示した乗継情報を参照して図7に示した乗継失敗箇所情報を作成する(ステップS102)。
【0049】
例えば、車両1および車両2が図5に示した予測ダイヤ情報D3の通り運行した場合、車両1はD駅に7:35に到着し、車両2はD駅を7:35に出発する。一方、図6に示した通り、車両1から車両2の乗継には3分を要する。この場合、車両1から車両2への接続を確保することができないため、D駅における車両1から車両2への乗継が乗継失敗箇所として乗継失敗箇所情報に登録され、不足時間は3分と表される。これは、車両1と車両2の接続を確保するためには、3分不足していることを意味する。
【0050】
乗継失敗箇所が存在する場合(ステップS103「Yes」)、ダイヤ変更要否判定部110は、通信部103を通じて、チケッティングシステム200から、図8に示した移動需要予測情報を受信する(ステップS104)。
【0051】
なお、乗継失敗箇所が存在しない場合(ステップS103「No」)、ダイヤ変更が不要であると判断し、ダイヤ変更要否判断処理を終了する。次に、ダイヤ変更要否判定部110は、ステップS102で列挙した各乗継失敗箇所について以下の処理を行う(ステップS105a)。ただし、本実施例では乗継失敗箇所は1箇所であることを想定している。
【0052】
まず、評価値算出処理(ステップS106)処理を行う。この評価値算出処理の詳細は後述する(図12)。次に、ダイヤ変更要否判定部110は、算出した評価値に基づいて当該乗継失敗箇所における接続車両の出発時刻を変更する必要があるか否かを判定する(ステップS107)。
【0053】
例えば、評価値が所定の値を超えている場合にダイヤ変更が必要であると判定する。または、評価値算出処理(ステップS106)を行い評価値に基づいてダイヤ変更が必要であると判定するかわりに、過去の実績データを用いて構築した統計モデルを利用してダイヤ変更要否判定を行っても良い。
【0054】
当該乗継失敗箇所における接続車両の出発時刻を変更する必要がある場合(ステップS107「Yes」)、ダイヤ変更要否判定部110は、当該乗継失敗箇所における接続元車両と、接続元車両の接続駅における予測到着時刻と、接続先車両と、接続先車両の接続駅における推奨出発時刻と、を図9に示した出発時刻変更提案情報D7に登録する(ステップS108)。
【0055】
ここで、接続先車両の推奨出発時刻とは、接続元車両から接続先車両への乗継が可能となるような接続先車両の出発時刻である。例えば、図7に示した乗継失敗箇所情報に記載されたD駅における車両1から車両2への乗継を可能にする場合、接続先車両である車両2の出発時刻と接続元車両である車両1の到着時刻の差分が3分不足しているため、車両2の出発時刻を3分以上遅らせることで車両1から車両2への乗継が可能となる。
【0056】
本実施例1では、接続元車両から接続先車両への乗継が可能という制約と、運行計画との差分が最小という制約と、を用いて7:38が車両2の推奨出発時刻として設定する。なお、接続先車両の推奨出発時刻を設定する際の制約は任意の制約を用いて良い。
【0057】
上述したステップS106からステップS108までの処理を、ステップS102で列挙した各乗継失敗箇所について繰り返し行う(ステップS105b)。
【0058】
ステップS102で列挙した全ての乗継失敗箇所についてステップS106からステップS108の処理が完了した後、接続先車両の接続駅における出発時刻の変更が必要であると判定された乗継箇所が存在しない場合(ステップS109「No」)、ダイヤ変更要否判定を終了する。
【0059】
一方、接続先車両の接続駅における出発時刻の変更が必要であると判定された乗継失敗箇所が存在する場合(ステップS109「Yes」)、通信部103を通じて、出発時刻の変更が必要であると判定された車両の運行状況を管理する運行管理システムに対し、図9に示した出発時刻変更提案情報D7を送信する(ステップS110)。また、出力部に出発時刻変更提案情報D7を表示する(ステップS111)。
【0060】
なお、出発時刻変更提案情報D7を送信する前にダイヤ変更支援システム100のユーザに対し、出発時刻変更提案情報D7を接続先車両の運行計画および運行状況を管理する運行管理システムに対して送信するか否か、問いかけを行っても良い。また、出発時刻変更提案情報D7を受け取った運行管理システムがダイヤ変更を行ったか否かを受信する受信部を備えても良い。
【0061】
図11はダイヤ変更要否判定の結果を画面表示する他の例を示す。
【0062】
この例では、D駅における接続元車両の予測到着時刻および接続先車両の予測出発時刻を視覚的に示している。さらに、運行計画から変化した部分も示している。ここで、運行計画から変化した部分とは、遅延をはじめとする運行乱れによる着発時刻の変化や、ダイヤ変更要否判定部110により設定された推奨出発時刻である。また、接続元車両の予測到着時刻を表す横線と接続先車両の予測出発時刻を表す横線をつなぐ点線は、接続元車両から接続先車両への乗継が可能であることを示している。
【0063】
このような表示方法によって、ユーザは接続元車両および接続先車両の運行状況と、ダイヤ変更要否判定部110により行われた要否判定の結果と、ダイヤ変更要否判定部110により算出された推奨出発時刻等を視覚的に理解できる。ダイヤ変更要否判定部110は、上述したステップS101~ステップS111までの処理を行った後、ダイヤ変更要否判定処理を終了する。
【0064】
上記一連の処理は、周期起動で所定の時間ごとに(例えば、5分周期など)繰り返し実行されるが、ダイヤ変更支援システム100がユーザのコマンド入力を受け付けるコマンド入力部を備え、ユーザのコマンド入力のタイミングで上記一連の処理を実行するような構成としても良い。
【0065】
図12は、図10に示した評価値算出処理S106の処理を説明するためのフローチャートである。
【0066】
本実施例1によれば、評価値算出処理S106において、評価部140が接続先車両の接続駅における出発時刻を変更する必要があるか否か判定するための評価値を算出する。
【0067】
まず、評価部140は、ステップS104で受信した移動需要予測情報D6を参照し、当該乗継失敗箇所における接続元車両から接続先車両へ乗り継ぐ旅客(以下、乗継客)を抽出する(ステップS201)。例えば図8に示した移動需要予測情報において、旅客1および2は当該乗継失敗箇所における乗継客である。
【0068】
次に、ダイヤ変更要否判定部110は、ステップS201で抽出した各乗継客について以下の処理を行う(ステップS202a)。
【0069】
まず、評価部140は、別ルート探索処理(ステップS203)を行う。この別ルート探索処理の詳細は後述する(図13)。別ルートが存在しない場合(ステップS204「No」)、評価部140は当該乗継失敗箇所における接続先車両の評価値を更新する(ステップS205)。
【0070】
本実施例1において評価値Vは、例えば、下記の数式(1)により算出される。
[数式1]
V=Σ(別ルートが存在しない乗継客iの待ち時間増分)
数式(1)において待ち時間増分とは、各車両が予測ダイヤ情報D3の通り運行し、かつ乗継客が当初乗り継ぐ予定であった車両の後発車両に乗り継ぐと仮定した場合の接続元車両の到着時刻と接続先車両の出発時刻の差分から、各車両が運行計画情報D1の通り運行した場合の接続元車両の到着時刻と接続先車両の出発時刻の差分を差し引いた値である。
【0071】
例えば、車両1~4が運行計画通り運行した場合、図8に示した旅客1は車両1から車両2に乗り継ぐと推定され、車両1のD駅到着時刻7:29から車両2のD駅発車時刻7:35までの6分間が待ち時間である。一方で図5に示した予測ダイヤ情報の通り運行した場合、旅客1は車両2の後発車両である車両4に乗り継ぐと仮定され、車両1のD駅到着時刻7:35から車両4のD駅発車時刻7:55までの20分間が待ち時間である。したがって、旅客1の待ち時間増分は14分と算出される。
【0072】
上述したステップS203からS205までを、ステップS201で抽出した各乗継客に対し行う(S202b)。評価部140は、上述したステップS201~ステップS205までの処理を行った後、評価値算出処理を終了する。
【0073】
図13は、図12に示した別ルート探索処理S203の処理を説明するためのフローチャートである。
【0074】
本実施例1によれば、別ルート探索処理S203においては、別ルート探索部150がステップS104で受信した移動需要予測情報D6に設定されている旅客が利用すると推定される経路(以下、元ルート)とは異なり、かつ移動にかかる所要時間の増分が所定の値以下である経路(以下、別ルート)を探索する。
【0075】
まず、別ルート探索部150は、当該乗継客の目的駅と、乗継情報D4と、路線ネットワーク情報D0と、を参照し、元ルートと同一の接続駅において元ルートとは異なる車両に乗り継いで目的駅または目的駅から所定の範囲内に存在する駅へ到達する経路と、元ルートと異なる接続駅において元ルートとは異なる車両に乗り継いで目的駅または目的駅から所定の範囲内に存在する駅へ到達する経路と、を列挙する(ステップS301)。
【0076】
なお本明細書では、これらのルートを包括して元ルートと異なる経路と記載する。例えば、図8に示した旅客1は、路線1を走行する車両から路線2を走行する車両に乗り継いでA駅→D駅→F駅を移動する経路が元ルートとして設定されており、元ルートと異なる経路は存在しない。一方で図8に示した旅客2は路線1を走行する車両から路線2を走行する車両に乗り継いでA駅→D駅→F駅→H駅を移動する経路が元ルートとして設定されており、路線1から路線3に乗り継ぎA駅→D駅→G駅→H駅を移動する元ルートと異なる経路が存在する。
【0077】
元ルートと異なる経路が存在しない場合(ステップS302「No」)、別ルート探索部は当該乗継客に別ルートは存在しないと判定し(ステップS309)、別ルート探索処理を終了する。例えば、上述した旅客1は別ルートが存在しないと判定される。
【0078】
一方、元ルートと異なる経路が存在する場合(ステップS302「Yes」)、予測ダイヤ情報D3を参照し、当該旅客が元ルートを利用した場合の目的駅における到着時刻を算出する(ステップS303)。例えば、上述した旅客2は元ルートを利用した場合、車両1から車両2の後発車両である車両4に乗り継ぐと推定され、H駅到着時刻は8:14と算出される。
【0079】
次に、別ルート探索部150は、ステップS301で列挙した各経路について以下の処理を行う(ステップS304a)。
【0080】
まず、別ルート探索部150は、予測ダイヤ情報D3と、乗継情報D4と、を参照し、当該経路の目的駅または目的駅から所定の範囲内に存在する駅における到着時刻を算出する(ステップS305)。例えば、上述した旅客2は元ルートと異なる経路を利用した場合、車両1から車両3に乗り継ぐと推定され、H駅到着時刻は8:04と算出される。
【0081】
次に、ステップS303で算出した元ルートを利用した場合の目的駅における到着時刻と、ステップS305で算出した当該経路を利用した場合の目的駅または目的駅から所定の範囲内に存在する駅における到着時刻と、を比較する(ステップS306)。
【0082】
上述したステップS305およびS306を、ステップS301で探索した各経路に対し行う(ステップS304b)。
【0083】
ステップS301で探索した元ルートと異なる経路の中に、元ルートを利用した場合の目的駅における到着時刻との増分が所定の範囲内である経路が存在する場合(ステップS307「Yes」)、別ルート探索部は当該乗継客に別ルートは存在すると判定し(ステップS308)、別ルート探索処理を終了する。例えば、上述した旅客2は元ルートと異なる経路を利用した場合、元ルートを利用した場合と比較して、H駅到着時刻が10分早くなる。すなわち増分は0分である。したがって、車両1から車両3に乗り継ぎA駅→D駅→G駅→H駅を移動する経路が別ルートであると判定される。
【0084】
一方、元ルートを利用した場合の目的駅における到着時刻との増分が所定の範囲内である経路が存在しない場合(ステップS307「No」)、別ルート探索部は当該乗継客に別ルートは存在しないと判定し(ステップS309)、別ルート探索処理を終了する。
【0085】
以上のように、本実施例1のダイヤ変更支援システム100は、各車両の各駅における到着時刻を予測して乗継失敗箇所を推定し、各乗継失敗箇所について接続元車両から接続先車両へ乗り継ぐ各乗継客の別ルートを探索し、別ルート探索結果に基づいてダイヤ変更要否判定を行う。このようにしてダイヤ変更要否判定を行うことで、旅客の移動需要に対応しつつ必要最低限のダイヤ変更を行うことができる。
【実施例2】
【0086】
図14を参照して、実施例2に係るダイヤ変更支援システム100について説明する。
【0087】
本実施例2は、上述した実施例1の変形例であって、ダイヤ変更支援システム100は、記憶部104に旅客ポイント情報D8を追加で記憶している。また、ダイヤ変更要否判定部110に旅客ポイント更新部160を追加で有している。それ以外の構成は実施例1のダイヤ変更支援システム100と同じ構成なのでその説明は省略する。
【0088】
本実施例2は、車両1~4がD駅に停車する場合であって、かつ運行計画において車両1のD駅到着時刻および車両2のD駅出発時刻が、車両1から車両2への乗り継ぎが可能であるように設定されている場合であって、かつ車両1の遅延により車両1から車両2への接続が確保できなくなった場合であって、当初意図していた経路とは異なる経路によって目的駅へ到達することができない乗継客の人数と、旅客がダイヤ変更要否判定の結果被った不利益に応じて付与されるポイントの累計と、に基づいて接続先車両の出発時刻を変更する必要があるか否かを判定するものである。
【0089】
図15は、旅客ポイント情報D8の一例を示す図である。
【0090】
旅客ポイント情報D8は、旅客が交通機関1におけるダイヤ変更要否判定の結果被った不利益に応じて付与されるポイントの累計を記憶した情報であり、旅客を一意に識別可能な情報(例えば、チケッティングシステムを利用するためのユーザIDなど)と、各旅客に付与されたポイントの累計と、を含む。
【0091】
旅客ポイント更新部160は、ダイヤ変更要否判定を行った際、ダイヤ変更要否判定の結果不利益を被る旅客を抽出し、各旅客が被った不利益の度合いに応じたポイントを算出し、各旅客に付与する。すなわち、旅客ポイント情報D8を参照し、各旅客を一意に識別可能な情報と紐づいたポイントの累計に対して、算出したポイントを加算する。
【0092】
以下に、実施例2に係るダイヤ変更支援システム100の処理について詳述する。
【0093】
図16は、ダイヤ変更要否判定部110の処理を説明するためのフローチャートである。
【0094】
実施例2に係るダイヤ変更支援システムの処理が実施例1に係るダイヤ変更支援システムの処理と異なる点は、ステップS106における評価値の算出方法およびステップS112を追加で有している点である。その他のステップは実施例1と同じであるため、その説明を省略する。
【0095】
本実施例2によれば、評価値算出処理S106において、評価部140が、旅客ポイント情報および乗継客の別ルートの有無に基づいて、接続先車両の接続駅における出発時刻を変更する必要があるか否か判定するための評価値を算出する。評価値Vは、例えば、下記の数式(2)により算出される。
【0096】
[数式2]
V= Σ(別ルートが存在しない乗継客iの待ち時間増分×wi)
数式(2)においてwiとは、旅客ポイント情報を参照して得られる旅客iに付与されたポイントの累計に基づいて設定された値である。例えば、各旅客に付与されたポイントの累計を正規化した値である。
【0097】
図17は、図16に示した旅客ポイント情報更新処理S112の処理を説明するためのフローチャートである。
【0098】
本実施例2によれば、旅客ポイント情報更新処理S112において、旅客ポイント更新部160が、運行管理システムから出発時刻変更提案の受け入れ可否を受信し、受け入れ可否結果に応じて旅客ポイント情報D8を更新する。
【0099】
まず、旅客ポイント更新部160は、出発時刻変更提案情報D7を送信した各運行管理システムから、出発時刻変更提案の受け入れ可否を受信する(ステップS401)。
【0100】
次に、旅客ポイント更新部160は、ステップS102で推定した各乗継失敗箇所について以下の処理を行う(ステップS402a)。当該乗継失敗箇所における接続先車両の接続駅における出発時刻変更が受け入れ可である場合(ステップS403「Yes」)、移動需要予測情報D6を参照し、接続駅において接続先車両に予測出発時刻以前から乗車している旅客を抽出する(ステップS404)。
【0101】
一方、当該乗継失敗箇所における接続先車両の接続駅における出発時刻変更が受け入れ不可である場合(ステップS403「No」)、乗継客を抽出する(ステップS405)。
【0102】
次に、旅客ポイント更新部160は、ステップS404またはステップS405で抽出した各旅客について、当該乗継失敗箇所の出発時刻変更提案の受け入れ可否結果に基づいてポイントを設定し、旅客ポイント情報D8のポイントの累計に加算する(ステップS406)。
【0103】
ここで、ポイントとは、旅客がダイヤ変更要否判定の結果被った不利益に応じて付与される値であり、例えば、接続駅において予測出発時刻以前から接続先車両に乗車している旅客の場合、接続先車両の出発時刻を遅らせた時間量に基づいて設定される。また例えば、乗継客の場合、接続先車両の出発時刻が変更されなかったことに伴う待ち時間の増分に基づいて設定される。
【0104】
上述したステップS403からS406までを、ステップS102で推定した各乗継失敗箇所に対し行う(S402b)。旅客ポイント更新部160は、上述したステップS401~ステップS406までの処理を行った後、旅客ポイント情報更新処理を終了する。
【0105】
以上のように、本実施例のダイヤ変更支援システム100は、各車両の各駅における到着時刻を予測して乗継失敗箇所を推定し、各乗継失敗箇所について接続元車両から接続先車両へ乗り継ぐ各乗継客の別ルートを探索し、別ルート探索結果および旅客のポイントの累計に基づいてダイヤ変更要否判定を行う。このようにしてダイヤ変更要否判定を行うことで、旅客の移動需要に対応しつつ必要最低限のダイヤ変更を行うことができることに加え、旅客間の不平等を長期的に見て平準化しつつ合理的なダイヤ変更を行うことができる。
【0106】
以上、本発明を実施例を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上述した実施例に記載の範囲に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0107】
また、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した機能、システム、および方法における動作、手順、ステップ等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうる。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0108】
1 交通機関
10 交通システム
100 ダイヤ変更支援システム
101 入力部
102 出力部
103 通信部
104 記憶部
105 処理部
110 ダイヤ変更要否判定部
120 運行状況予測部
130 乗継失敗箇所推定部
140 評価部
150 別ルート探索部
160 旅客ポイント更新部
200 チケッティングシステム
201 携帯端末
300 運行管理システム
400 運行管理システム
500 運行管理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17