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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】アクセルペダルシステム
(51)【国際特許分類】
   B60K 28/10 20060101AFI20250205BHJP
   G05G 1/30 20080401ALI20250205BHJP
   G05G 1/60 20080401ALI20250205BHJP
   G05G 5/00 20060101ALI20250205BHJP
   F02D 11/02 20060101ALI20250205BHJP
   F02D 11/10 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
B60K28/10 Z
G05G1/30 E
G05G1/60
G05G5/00 Z
F02D11/02 S
F02D11/10 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021137424
(22)【出願日】2021-08-25
(65)【公開番号】P2023031744
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木野内 惣一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 優介
(72)【発明者】
【氏名】北 卓人
(72)【発明者】
【氏名】森 秀之
(72)【発明者】
【氏名】小松 新始
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-165891(JP,A)
【文献】独国実用新案第202008007799(DE,U1)
【文献】特開2021-075171(JP,A)
【文献】特開2006-117102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 28/10
G05G 1/30
G05G 1/60
G05G 5/00
F02D 11/02
F02D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏込操作に応じて動作するペダルレバー(20)と、
前記ペダルレバーの動作を規制可能であるロック機構(50)と、
前記ロック機構により前記ペダルレバーの動作が規制されているロック状態と、規制されていない非ロック状態とを切り替えるアクチュエータ(40)と、
前記アクチュエータの駆動を制御するアクチュエータ制御部(65)を有する制御部(60)と、
を備え、
前記アクチュエータ制御部は、
前記ロック状態での走行中において外乱が検出された場合、前記アクチュエータの通電量を変更し、
前記ロック状態での走行中において、外乱が検出されている状態にて前記ロック状態が解除された場合、前記ペダルレバーが再ロックされるように前記アクチュエータの通電量を変更するアクセルペダルシステム。
【請求項2】
前記外乱は、車両減速時に印加される減速加速度である請求項1に記載のアクセルペダルシステム。
【請求項3】
前記外乱は、車両上下方向の振動である請求項1に記載のアクセルペダルシステム。
【請求項4】
前記外乱は、ドライバの運転外動作である請求項1に記載のアクセルペダルシステム。
【請求項5】
前記ロック機構は、前記アクチュエータへの通電をオフした状態にて前記ロック状態を保持可能であって、
前記アクチュエータ制御部は、前記外乱が検出された場合、前記アクチュエータへの通電をオフしている状態から前記アクチュエータへの通電を開始する請求項1~のいずれか一項に記載のアクセルペダルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセルペダルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペダル踏み込み反力を高めてアクセルペダルにフットレスト機能を備えた車両要走行制御装置が知られている。例えば特許文献1では、オートスピードコントロールデバイス(ASCD)作動時から非作動時への切換要求をアクセルペダルの踏み込み圧力(または開度)によって検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-60484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、例えば車両急減速時や振動等である外乱によりペダルが踏み込まれると、ドライバに加速意思がない場合でもフットレスト状態が解除され、ドライバの意図しない加速が生じる虞がある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アクセルペダルのロック状態を適切に制御可能なアクセルペダルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアクセルペダルシステムは、ペダルレバー(20)と、ロック機構(50)と、アクチュエータ(40)と、制御部(60)と、を備える。ペダルレバーは、踏込操作に応じて動作する。ロック機構は、ペダルレバーの動作を規制可能である。アクチュエータは、ロック機構によりペダルレバーの動作が規制されているロック状態と、規制されていない非ロック状態とを切り替える。
【0007】
制御部は、アクチュエータ制御部(65)を有する。アクチュエータ制御部は、アクチュエータの駆動を制御する。アクチュエータ制御部は、ロック状態での走行中において外乱が検出された場合、アクチュエータの通電量を変更する。アクチュエータ制御部は、ロック状態での走行中において、外乱が検出されている状態にてロック状態が解除された場合、ペダルレバーが再ロックされるようにアクチュエータの通電量を変更する。これにより、アクセルペダルのロック状態を適切に制御可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態によるアクセルペダルシステムを示す模式図である。
図2】第1実施形態によるアクセルペダルシステムにてペダルレバーがロックされた状態を示す模式図である。
図3】第1実施形態によるアクセルペダルシステムの制御構成を示すブロック図である。
図4】第1実施形態によるロック動作制御処理を説明するフローチャートである。
図5】(a)は車両急減速状態を説明する図であり、(b)は減速Gによる外乱踏力を説明する図である。
図6】(a)は車両に振動が発生した状態を説明する図であり、(b)は振動による外乱踏力を説明する図である。
図7】カメラによる外乱検出を説明する説明図である。
図8】第1実施形態によるロック動作制御処理を説明するタイムチャートである。
図9】第2実施形態によるロック動作制御処理を説明するフローチャートである。
図10】第2実施形態によるロック動作制御処理を説明するタイムチャートである。
図11】第3実施形態によるロック動作制御処理を説明するフローチャートである。
図12】第3実施形態による駆動力抑制を説明する説明図である。
図13】第3実施形態によるロック動作制御処理を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明によるアクセルペダルシステムを図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態を図1図8に示す。図1に示すように、アクセルペダルシステム1は、ペダルレバー20、アクチュエータ40、動力伝達機構45、ロック機構50、および、制御部としてのECU60等を備える。
【0011】
ペダルレバー20は、パッド21、アーム31、および、ペダル35を有し、ドライバの踏込操作等により、一体に駆動される。パッド21は、ドライバにより踏込操作可能に設けられる。パッド21は、ハウジングHに設けられる支点部材23により、回転可能に支持される。図1では、パッド21がハウジングHの一面に沿う方向に延びて設けられる、いわゆる床置き型(オルガン型)を示しているが、吊り下げ型(ペンダント型)であってもよい。また、本実施形態では、ペダルハウジングやモータハウジング等、モータ41の駆動およびペダルレバー20の踏込操作等により駆動されない筐体部分を、まとめて「ハウジングH」とする。
【0012】
アーム31は、パッド21とペダル35とを連結する。ペダル35は、一端がハウジングHに回転可能に支持され、他端がアーム31と連結される。これにより、ドライバによるパッド21の操作により、パッド21、アーム31およびペダル35が一体となって駆動される。ペダル35の一端側には、ペダル開度θを検出するペダル開度センサ39が設けられている。
【0013】
ペダル付勢部材37は、圧縮コイルばねであって、一端がペダル35に固定され、他端がハウジングHに固定され、ペダル35をアクセル閉方向に付勢する。図1および図2では、アクセル全閉状態を実線、アクセル全開状態を破線で示した。
【0014】
アクチュエータ40は、モータ41、および、動力伝達機構45を有する。モータ41は、例えばDCモータであって、ECU60により駆動が制御される。モータ41の駆動力は、動力伝達機構45を介して、ペダルレバー20に伝達される。ここで、駆動源であるモータ41から動力伝達機構45を介してペダルレバー20に動力を伝達する一連の構成がアクチュエータ40である、といえる。
【0015】
動力伝達機構45は、ギアセット46および動力伝達部材47等を有する。ギアセット46は、モータシャフトと一体に回転するモータギア、および、モータギアと噛み合う複数のギアから構成され、モータ41の駆動力を動力伝達部材47に伝達する。ここで、ギアセット46には、後述する被ロック部52が設けられるギア461が含まれる。ギア461には、回転位置を検出する位置センサ49が設けられる。以下、ギア461を紙面反時計方向に回転させるときのモータ41およびギア461等の回転方向を正、ギア461を紙面時計方向に回転させるときのモータ41およびギア461等の回転方向を負とする。
【0016】
動力伝達部材47は、例えばカムであって、一端側がギアセット46と噛み合うことでモータ41の駆動により回転駆動される。動力伝達部材47の他端側は、ペダルレバー20に当接する。これにより、モータ41の駆動力がペダルレバー20に伝達される。図1では、動力伝達部材47の他端はパッド21と当接しているが、アーム31またはペダル35と当接するように構成してもよい。
【0017】
動力伝達部材47とペダルレバー20とが当接している状態にて、モータ41を正方向に回転させることで、ペダルレバー20に戻し方向の反力を与えることができる。また、ペダルレバー20に反力を付与しない場合、モータ41を負方向に回転させ、ペダルレバー20の全閉から全開までの全領域において、ペダルレバー20と動力伝達部材47とが当接しないように、動力伝達部材47を退避させておくことが望ましい。これにより、反力を付与しないとき、動力伝達機構45側からのコギングトルク等が踏力に影響を与えるのを避けることができる。
【0018】
モータ41により、ペダルレバー20に能動的に戻し方向の反力を与えることで、例えば運転状況を基に、パッド21を踏み込むと燃費悪化を判断するポイントで反力を与えることで壁感を出し、ドライバによるパッド21の踏込を抑制する。これにより、燃費を向上させることができる。また例えば、ペダルレバー20を戻し方向にパルス駆動することで、自動運転から手動運転への切替通知等の情報伝達として活用することもできる。
【0019】
ロック機構50は、ロック部材51、被ロック部52、および、弾性部材55等を有する。ロック部材51は、一端側に形成されるテーパ面にて被ロック部52と当接可能に設けられている。ロック部材51の他端側は、ハウジングHに形成される収容室56に収容され、軸方向に往復移動可能に設けられている。被ロック部52は、ギアセット46を構成するギア461から突出して設けられており、ギア461と一体に回転する。被ロック部52は、テーパ面にてロック部材51と当接する。
【0020】
弾性部材55は、ハウジングHに設けられる収容室56に収容されている。弾性部材55の一端はロック部材51と当接し、他端はハウジングHに係止されており、ロック部材51を被ロック部52に向かう側に付勢している。
【0021】
図1は、ロック仕掛かり開始状態を示している。被ロック部52とロック部材51とが当接した状態にて、モータ41の駆動力によりギア461を紙面反時計方向に回転させると、被ロック部52がロック部材51を押し込むことで弾性部材55が押し縮められる。さらにギア461を反時計方向に回転させ、被ロック部52がロック部材51を乗り越えて紙面上側に回り込むと、弾性部材55の付勢力により、ロック部材51が初期位置に戻る。
【0022】
図2に示すように、ロック状態において、ロック部材51が、弾性部材55の付勢力により、被ロック部52を係止することで、ギア461の回転を規制する。また、動力伝達部材47が、ロック力伝達部として機能することで、ペダルレバー20の動作が規制される。これにより、モータ41への通電をオフにした無通電状態にて、ペダルレバー20の動作を規制することができる。
【0023】
以下、ペダルレバー20の動作を規制することを、単に「ロックする」という。例えば自動運転時等において、ペダルレバー20をロックし、パッド21をフットレスト化することで、快適性を確保することができる。本実施形態では、ペダルレバー20は、全閉位置にてロックされるものとして説明する。
【0024】
図2に示すロック状態より、モータ41の駆動力によりギア461を紙面時計方向に回転させると、被ロック部52がロック部材51を押し込むことで弾性部材55が押し縮められる。被ロック部52がロック部材51を乗り越えて紙面下側に回り込むと、ロック状態が解除され、弾性部材55の付勢力により、ロック部材51が初期位置に戻る。ペダルレバー20に所定以上の踏力が加わった場合も同様にロック状態を解除可能である。
【0025】
ペダルレバー20をロックしない場合、図1に示す状態から、ギア461をさらに反時計方向に回転させることで、ロック部材51と被ロック部52とが当接しないように、退避させておくことが望ましい。
【0026】
図3に示すように、ECU60は、マイコン等を主体として構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、RAM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。ECU60における各処理は、ROM等の実体的なメモリ装置(すなわち、読み出し可能非一時的有形記録媒体)に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理であってもよい。
【0027】
ECU60は、機能ブロックとして、ペダル開度検出部61、情報取得部62、目標反力演算部63、ロック作動判定部64、アクチュエータ制御部65、報知制御部67、および、車両駆動制御部68等を有する。図3では、1つのECU60として記載しているが、一部の機能が別途のECU等により構成されていてもよい。
【0028】
ペダル開度検出部61は、ペダル開度センサ39の検出値に基づき、ペダル開度θを検出する。情報取得部62は、位置センサ49、走行状態検出部71、外乱検出部72、運転操作検出部73、車両周辺情報取得部74、車速検出部75、位置情報検出部76および音声検出部77等から各種情報を取得する。
【0029】
目標反力演算部63は、ペダルレバー20に付与する目標反力を演算する。ロック作動判定部64は、情報取得部62にて取得された各種情報に基づき、ペダルレバー20がロックされているロック状態と、ロックされていない非ロック状態との切り替えに係る判定を行う。以下適宜、非ロック状態からロック状態への切り替えを「ロック起動」、ロック状態から非ロック状態への切り替えを「ロック解除」とする。アクチュエータ制御部65は、目標反力、および、ロック作動判定部64の判定結果等に基づき、モータ41の駆動を制御する。
【0030】
報知制御部67は、ドライバに報知する情報を報知装置80に指令する。本実施形態では、ペダルレバー20のロック起動およびロック解除に係る情報を報知する。車両駆動制御部68は、車両100(図5(a)等参照)の駆動を制御する。
【0031】
走行状態検出部71は、走行状態としての運転モードを検出する。運転モードには、自動運転モードおよび手動運転モードに加え、オーバーライドモードが含まれる。自動運転モードにおける制御は、ACC(Adaptive Cruise Control)等の巡行制御であるが、制御詳細は問わない。オーバーライドモードでは、自動運転による制御側からの入力と、ドライバからの踏込入力とが共に入っている状態であって、オーバーライドモードにおいては、ドライバの踏込操作による入力が常に優先される。
【0032】
外乱検出部72は、加速度を検出するGセンサ、サスペンション挙動検出装置、および、室内カメラ95(図7参照)等の情報に基づき、外乱を検出する。外乱には、例えば、比較的急な減速により生じる減速G、路面段差等により生じる車両振動等が含まれる。また、ドライバの座り直し、シートベルトの着脱、落ちたものを拾う、ストレッチ、ドライバの意識状態等、通常の運転動作以外の動作である運転操作外動作を外乱としてもよい。
【0033】
運転操作検出部73は、ドライバによるウィンカー操作やハンドル操舵を検出する。車両周辺情報取得部74は、路車間通信、車車間通信、車載カメラ、レーダ等により、他車両の接近や障害物等を検出する。
【0034】
車速検出部75は、車両100の走行速度である車速を検出する。車速検出部75は、車速センサを用いることに限らず、GPS等の位置データを用いて演算することで車速を検出するように構成してもよい。位置情報検出部76は、地図情報、GPS、路車間通信、車載カメラ等の情報に基づき、車両100の現在位置を検出する。位置情報検出部76は、例示した情報を単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。また、ここで例示した以外の情報を用いても差し支えない。
【0035】
音声検出部77は、乗員の発話による音声を検出する。報知装置80は、ディスプレイ等である表示装置81、および、スピーカ82を有し、各種情報をドライバに報知する。
【0036】
ところで、例えば車両100の急減速により減速加速度(以下、「減速G」)がかかった場合や路面段差による振動が発生した場合等、ドライバに加速の意思がなくても、フットレスト化したペダルレバー20に踏力が印加される虞がある。また本実施形態では、ロック機構50は無通電にてロック状態を保持可能であるので、ロック作動中はモータ41への通電を行っていない。そこで本実施形態では、外乱が検出された場合、モータ41への通電を行ってロック保持力を高めることで、ドライバの意図しないロック解除がなされないようにする。
【0037】
本実施形態のロック動作制御処理を図4のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、ECU60にて所定の周期で実行される処理である。以下、ステップS101等の「ステップ」を省略し、単に記号「S」と記す。
【0038】
S101では、ECU60は、ペダルレバー20がロックされた状態での走行中か否か判断する。以下、ペダルレバー20がロックされた状態での走行を、ペダルロック走行とする。ペダルロック走行中ではないと判断された場合(S101:NO)、S102以降の処理をスキップする。ペダルロック走行中であると判断された場合(S101:YES)、S102へ移行する。
【0039】
S102では、ロック作動判定部64は、外乱が検知されたか否か判断する。外乱については、図5図7に基づいて後述する。外乱が検知されていないと判断された場合(S102:NO)、S103の処理をスキップする。外乱が検知されたと判断された場合(S102:YES)、S103へ移行する。S103では、アクチュエータ制御部65は、モータ41への電流値を変更し、ロック保持力を高める。
【0040】
ここで、外乱の具体例について説明する。図5(a)に示すように車両100が急減速すると、図5(b)に示すように、減速Gが発生し、外乱踏力Fdにより意図せずペダルレバー20を踏み込んでしまう虞がある。そこで本実施形態では、減速Gが判定閾値を超えた場合、外乱として検出する。
【0041】
図6(a)に示すように、路面段差等により車両100に振動が発生すると、図6(b)に示すように、外乱踏力Fdにより意図せずペダルレバー20を踏み込んでしまう虞がある。そこで本実施形態では、Gセンサやサスペンション挙動検出装置により検出される振動に係る検出値が判定閾値を超えた場合、外乱として検出する。
【0042】
また、図7に示すように、室内カメラ95によりドライバの運転外動作を検出した場合、外乱として検知する。運転外動作には、例えば座り直し、シートベルト脱着、落ちた物を拾う、ストレッチ、体調異変等が含まれる。
【0043】
本実施形態のロック動作制御処理を図8のタイムチャートに基づいて説明する。図8では、共通時間軸を横軸とし、上段から、外乱、モータ41に通電される電流、ロック機構50のロック保持力、ペダル開度θを示している。後述の実施形態に係るタイムチャートも同様である。
【0044】
時刻x10以前において、外乱が発生しておらず、ペダルロック走行を行っているものとする。時刻x10にて、外乱が判定閾値を超えると、モータ41への電流値を変更する。本実施形態では、無通電にてロック状態が保持されているので、時刻x10にてモータ41への通電を開始する。モータ41への通電により、無通電ロック保持力Fhに加え、通電による保持力である通電ロック保持力Feが発生するため、ロック保持力が高まり、外乱によるドライバの意図しないロック解除を防ぐことができる。
【0045】
時刻x11にて、外乱が判定閾値より小さくなると、モータ41への通電を終了する。図8では、減速Gや振動成分の閾値判定により、外乱を検知する例を示したが、室内カメラ95による外乱検知であっても、同様である。
【0046】
以上説明したように、本実施形態のアクセルペダルシステム1は、ペダルレバー20と、ロック機構50と、アクチュエータ40と、ECU60と、を備える。ペダルレバー20は、踏込操作に応じて動作する。ロック機構50は、ペダルレバー20の動作を規制可能である。ここで、「ペダルレバーの動作を規制可能」とは、ペダルレバー20を完全に固定することで移動量を0にすることに限らず、非ロック時よりも移動量が小さくなるようにすることを含む概念である。アクチュエータ40は、ロック機構50によりペダルレバー20の動作が規制されているロック状態と、規制されていない非ロック状態とを切り替える。
【0047】
ECU60は、ロック作動判定部64、および、アクチュエータ制御部65を有する。ロック作動判定部64は、ロック機構50によるロック作動の切り替えを判定する。アクチュエータ制御部65は、ロック作動判定部64の判定結果に応じてアクチュエータ40の駆動を制御する。本実施形態では、主にモータ41の駆動を制御する。
【0048】
アクチュエータ制御部65は、ロック状態での走行中において、外乱が検出された場合、アクチュエータ40の通電量を変更する。これにより、外乱の影響によるドライバの意図しない加速を抑制することができる。
【0049】
詳細には、アクチュエータ制御部65は、ロック状態での走行中において外乱が検出された場合、ロック機構50によるロック保持力が高まるようにアクチュエータ40の通電量を変更する。これにより、外乱の影響によるドライバの意図しないロック解除を抑制することができる。
【0050】
外乱は、車両減速時に印加される減速加速度である。また外乱は、車両上下方向の振動である。さらにまた外乱は、ドライバの運転外動作である。これらが検出された場合、モータ41への通電量を変更することで、ドライバの意図しない加速を抑制することができる。本実施形態では、外乱には、減速G、振動成分および運転外動作が含まれるが、一部を省略してもよいし、他の要素を外乱として検出してもよい。
【0051】
ロック機構50は、アクチュエータ40への通電をオフした状態にてロック状態を保持可能である。アクチュエータ制御部65は、外乱が検出された場合、アクチュエータ40への通電をオフしている状態からアクチュエータ40への通電を開始する。ロック状態にてモータ41への通電をオフにしている場合、例えばフィードバック制御等によりモータ41への通電を継続している場合と比較し、外乱等の影響によるロック解除のリスクが高い。本実施形態では、外乱が検出された場合にモータ41への通電を開始することで、ロック解除を抑制可能である。
【0052】
(第2実施形態)
第2実施形態を図9および図10に示す。第2実施形態および第3実施形態では、ロック動作制御処理が上記実施形態と異なっているので、この点を中心に説明する。S201およびS202の処理は、図4中のS101およびS102の処理と同様である。
【0053】
S203では、ロック作動判定部64は、ペダルレバー20のロック解除が検知されたか否か判断する。ペダルレバー20のロックが解除されていないと判断された場合(S203:NO)、S204以降の処理をスキップする。ペダルレバー20のロック解除が検知されたと判断された場合(S203:YES)、S204へ移行する。
【0054】
S204では、アクチュエータ制御部65は、モータ41への電流値を変更する。本実施形態では、ペダルレバー20のロック中は無通電であるので、ペダルレバー20を再ロックさせるようにモータ41への通電を行う。
【0055】
S205では、ロック作動判定部64は、ペダルレバー20が再ロックされたか否か判断する。ペダルレバー20が再ロックされていないと判断された場合(S205:NO)、モータ41への通電を継続する。ペダルレバー20が再ロックされたと判断された場合(S205:YES)、S206へ移行する。
【0056】
S206では、アクチュエータ制御部65は、モータ41への電流値変更を解除する。本実施形態では、モータ41への通電をオフにする。なお、第1実施形態と同様、ペダルレバー20のロックが解除されていなくても、外乱が検知されている間は電流値変更を継続するようにしてもよい。
【0057】
本実施形態のロック作動制御処理を図10のタイムチャートに基づいて説明する。ここでは、無通電ロック保持力Fhと通電ロック保持力Feとが等しいものとして説明するが、無通電ロック保持力Fhと通電ロック保持力Feとは異なっていてもよい。時刻x20にて外乱の発生により外乱踏力Fdが増加し、時刻x21にて外乱踏力Fdが無通電ロック保持力Fhを越えると、外乱踏力Fdによりペダルレバー20のロック状態が解除される。
【0058】
時刻x22にて外乱踏力Fdが保持されると、ペダルレバー20は、外乱踏力Fdと通電ロック保持力Feとが釣り合う位置にてペダル開度θが保持される。時刻x23にて外乱踏力Fdが低下し始め、時刻x24にて通電ロック保持力Feより小さくなると、ペダル開度θが低減する。
【0059】
時刻x25にて、ペダル開度θがロック作動位置まで戻ると、ペダルレバー20がロックされ、ペダルロックが完了した時刻x26にてモータ41への通電をオフにする。また、通電をオフにするのは、ペダルロック完了から所定時間経過後としてもよい。
【0060】
本実施形態のロック機構50は、無通電にてロック状態を保持可能であって、ロック中はモータ41への通電をオフにしているため、外乱により意図せずロック解除された場合、ドライバの意図しない加速が発生する虞がある。そこで本実施形態では、外乱によりロック解除された場合には、モータ41への通電を行うことで、ドライバの意図しない加速を防止するとともに、速やかに再ロック状態への復帰が可能である。
【0061】
本実施形態では、アクチュエータ制御部65は、ロック状態での走行中において、外乱が検出されている状態にてロック状態が解除された場合、ペダルレバー20が再ロックされるように、アクチュエータ40への通電量を変更する。これにより、外乱により意図せずロック解除された場合であっても、再度ロック状態に速やかに復帰させることができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0062】
(第3実施形態)
第3実施形態を図11図13に示す。本実施形態のロック作動制御処理を図11のフローチャートに基づいて説明する。S301~S304の処理は、図9中のS201~204の処理と同様である。
【0063】
S304に続いて移行するS305では、車両駆動制御部68は、ペダル開度θに対する車両駆動力を抑制する。詳細には、車両駆動制御部68は、駆動力抑制フラグをセットし、駆動モードを通常モードから駆動力抑制モードに切り替える。
【0064】
ペダル開度θに対する駆動力抑制の詳細を図12に基づいて説明する。図12では、横軸をペダル開度θ、縦軸をスロットル開度とし、通常モードを実線、駆動力抑制モードを破線で示す。本実施形態では、外乱によりペダルレバー20のロックが解除された場合、駆動力抑制モードとし、ペダル開度θに対するスロットル開度を小さくすることで、ペダル開度θに対する車両駆動力を抑制する。なお、車両100が電動車であれば、ペダル開度θに対する主機モータの出力を抑制すればよい。
【0065】
図11に戻り、S306およびS307の処理は、図9中のS205およびS206の処理と同様である。S307に続いて移行するS308では、車両駆動制御部68は、ペダル開度θに対する車両駆動力を通常に戻す。詳細には、駆動力抑制フラグをリセットし、駆動モードを駆動力抑制モードから通常モードに切り替える。
【0066】
本実施形態のロック作動制御処理を図13のタイムチャートに基づいて説明する。図13では、図10のペダル開度θの下側に、駆動力抑制フラグが追加されている。外乱、電流保持力およびペダル開度θの挙動は図10と同様であるので説明を省略し、駆動力抑制フラグを中心に説明する。
【0067】
外乱踏力Fdによりペダルレバー20のロック状態が解除された時刻x21において、駆動力抑制フラグがセットされ、ペダル開度θに対する車両駆動力が抑制される。また、ペダルレバー20が再ロックされた時刻x25にて、駆動力抑制フラグがリセットされ、ペダル開度θに対する車両駆動力を通常に戻す。なお、ペダルロック状態においては、ペダル開度θによらず自動運転制御側にて車両100の駆動が制御される。
【0068】
外乱が発生している場合、外乱の影響により意図せずペダルレバー20のロックが解除される場合がある。そこで本実施形態では、外乱が発生している状態にてペダルレバーが解除された場合、ペダル開度θに対する車両駆動力を抑制する。これにより、ドライバの意図しない加速を抑制することができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0069】
(他の実施形態)
上記実施形態では、ロック部材51が固定側、被ロック部52が可動側に設けられている。他の実施形態では、ロック部材を可動側、被ロック部を固定側に設けてもよい。上記実施形態では、被ロック部は凸部により構成されている。他の実施形態では、被ロック部を凹部により構成してもよい。また、被ロック部またはロック部材の一方は、平歯ギアに限らず、動力伝達機構を構成する平歯ギア以外の部材に設けてもよい。
【0070】
上記実施形態では、ロック部材は、圧縮コイルばねである弾性部材の軸方向に沿って直線方向に移動可能に設けられている。他の実施形態では、ロック部材が回転することでロック状態と非ロック状態とが切り替わるように構成してもよい。ロック部材の回転によりロック状態を切り替えることで、当接部の偏摩耗を抑制することができる。また、他の実施形態では、弾性部材は圧縮コイルばねに限らず、例えばトーションスプリングであってもよい。さらにまた、ロック部材そのものをゴム等の弾性部材により形成し、弾性変形させることでロック状態が切り替わるように構成してもよい。
【0071】
その他、動力伝達機構やロック機構は、上記実施形態と異なっていてもよい。また、ロック部材や非ロック部材の形状は、部品配置等に応じ、上記実施形態とは異なっていてもよい。また上記実施形態では、ペダルレバーへの反力付与およびロック作動に、共通のアクチュエータを用いている。他の実施形態では、反力付与に係るアクチュエータと、ロック作動に係るアクチュエータとを別途に設けてもよい。
【0072】
上記実施形態では、ロック機構は、モータへの通電をオフにした無通電状態にてロック状態を保持可能である。他の実施形態では、ロック機構は、モータへの通電を継続することでロック状態を保持するように構成してもよい。
【0073】
上記実施形態では、ペダルレバーは、ロック機構により全閉位置にてロックされる。他の実施形態では、ペダルレバーのロック位置は全開位置であってもよいし、全閉位置と全開位置との中間位置であってもよい。また、複数段階でロック可能に構成してもよい。
【0074】
他の実施形態では、ロック作動時およびロック解除時の少なくとも一方においてにドライバへの報知を行うようにしてもよい。また、自動運転開始直後のロック起動時には報知を行い、自動運転中におけるオーバーライド終了時のロック起動時には報知を行わない、といった具合に、シチュエーションに応じて報知の有無を変更するようにしてもよい。また、ロック起動、解除に係り、ドライバへの意思確認を行ってもよい。
【0075】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0076】
1・・・アクセルペダルシステム
20・・・ペダルレバー
40・・・アクチュエータ
50・・・ロック機構
60・・・ECU(制御部)
65・・・アクチュエータ制御部
図1
図2
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図5
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図13