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▶ DIPPERホクメイ株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】浴室用手摺
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/12 20060101AFI20250205BHJP
【FI】
A47K3/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021176792
(22)【出願日】2021-10-28
(65)【公開番号】P2023066209
(43)【公開日】2023-05-15
【審査請求日】2023-09-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年3月1日~令和3年10月28日、DIPPERホクメイ株式会社において製造・販売
(73)【特許権者】
【識別番号】505397014
【氏名又は名称】DIPPERホクメイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】北村 明夫
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-074352(JP,A)
【文献】特開2013-017624(JP,A)
【文献】特開平08-164060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02-4/00
E04F 11/18
A47B 96/14
A47B 97/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスタブ(1)の洗い場に臨むタブ壁(2)に固定される手摺ベース(3)と、手摺ベース(3)に組付けられて洗い場の床面で受止められる手摺支柱(4)とを備え、
手摺ベース(3)は、手摺支柱(4)を抱持固定するベース本体(7)と、ベース本体(7)に設けられてタブ壁(2)を前後から挟持するクランプ構造とを備え、
クランプ構造は、ベース本体(7)に設けられてタブ壁(2)の前面(2a)に接当する前クランプ具(26)と、タブ壁(2)を跨ぐ状態でベース本体(7)に前後方向に進退可能に支持される挟持アーム(27)と、挟持アーム(27)に支持されてタブ壁(2)の後面(2b)に接当する後クランプ具(28)と、挟持アーム(27)をベース本体(7)に対して前後操作して両クランプ具(26・28)の挟持間隔を調整する調整構造とを備え、
後クランプ具(28)は、挟持アーム(27)の後部に設けられた複数個の後支持構造(52)と、タブ壁(2)の後面(2b)に接当するとともに、各後支持構造(52)を介して挟持アーム(27)に対して全方向に傾動可能に支持された挟持プレート(56)とを備え、
前クランプ具(26)は、ベース本体(7)に固定されるベース枠(29)と、ベース枠(29)に設けられた複数個の前支持構造(34)と、タブ壁(2)の前面(2a)に接当するとともに、各前支持構造(34)を介してベース枠(29)に対して全方向に傾動可能、且つ各前支持構造(34)を介してベース枠(29)に対して前後方向にスライド移動可能に支持された挟持ブロック(30)とを備え、
ベース枠(29)と挟持ブロック(30)のいずれか一方に、前後の両クランプ具(26・28)のタブ壁(2)に対する挟持力の適否を表示するための表示体(46)が設けられていることを特徴とする浴室用手摺。
【請求項2】
前支持構造(34)は、ベース枠(29)と挟持ブロック(30)のいずれか一方に設けられた軸部(37)と、ベース枠(29)と挟持ブロック(30)の他方に設けられて軸部(37)の挿入を許す穴部(40)と、挟持ブロック(30)を後方に移動付勢する挟持ばね(43)と、軸部(37)を穴部(40)に対して抜止め保持するストッパー(44)とを備え、
軸部(37)が穴部(40)に案内支持されることで、挟持ブロック(30)がベース枠(29)に対して前後スライド移動可能であり、
軸部(37)が穴部(40)に対して傾くことで、挟持ブロック(30)がベース枠(29)に対して全方向に傾動できるように構成されている、請求項1に記載の浴室用手摺。
【請求項3】
ベース枠(29)が、ベース本体(7)に連結される台座部(31)と、台座部(31)から突設されて後向きに開口するブロック受枠(32)を備えており、ブロック受枠(32)の内面に臨む台座壁(39)に穴部(40)が形成されており、
挟持ブロック(30)は、前向きに開口するブロック台(36)と、ブロック台(36)の内面から前向きに突設される軸部(37)と、ブロック台(36)の後部に固定される弾性材製の接合マット(38)とを備えており、
挟持ブロック(30)は、ブロック台(36)がブロック受枠(32)の外周に重なる状態でベース枠(29)に組付けられており、
表示体(46)がブロック受枠(32)の外周面に形成され、挟持ばね(43)が軸部(37)の周囲に配置されている請求項1または2に記載の浴室用手摺。
【請求項4】
ベース枠(29)に4個の挟持ブロック(30)が設けられている請求項1から3のいずれかひとつに記載の浴室用手摺。
【請求項5】
接合マット(38)の接合面に溝(41)が格子状に刻設されており、
接合面が溝(41)で区画された区分接合面(42)の一群で構成されている請求項に記載の浴室用手摺
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスタブの洗い場側のタブ壁に装着して使用される浴室用手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、この種の手摺を先に提案している(特許文献1)。特許文献1の手摺は、洗い場に臨むタブ壁に装着される手摺ベースと、手摺ベースで支持される手摺体と、洗い場の床面に接当する脚柱などで構成される。手摺ベースには、同ベースをタブ壁に固定するためのクランプ構造が設けられており、このクランプ構造は、ベース本体に固定されてタブ壁の外側面に接当する左右一対の固定クランプ体と、ベース本体で進退自在に支持されるクランプアームと、クランプアームに支持されてタブ壁の内側面に接当する左右一対の可動クランプ体と、クランプアームを進退操作する調整構造とを備えている。固定クランプ体の接合面は、タブ壁の外側面に向かって外突状に湾曲する湾曲面で形成されている。また、可動クランプ体は、クランプアームに設けた自在継手で前後および左右傾動可能に支持されている。
【0003】
特許文献1の浴室用手摺をタブ壁に装着した状態では、左右一対の固定クランプ体の接合面が、タブ壁の外側面の左右2個所で受止められる。また、異なる向きに傾動できる一対の可動クランプ体の接合面が、湾曲するタブ壁の内側面の2個所で受止められる。したがって、タブ壁が平坦である場合はもちろん、タブ壁が内外いずれかに一方に湾曲している場合であっても、手摺ベースをタブ壁に対して安定した状態で装着できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6868672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年におけるバスタブの外観は、複数の湾曲面が不規則に連続する形状など、デザイン性が重視される傾向にある。そのため、特許文献1の浴室用手摺であっても、タブ壁の湾曲の度合によっては、手摺ベースをタブ壁に安定した状態で強固に固定できないことがある。これは、自由度の大きな可動クランプ体においては、タブ壁の湾曲面の変化に追随してクランプ体の接合面を密着させて、当該タブ壁に対する接合面の接触面積を大きくするのが容易であるのに対して、自由度が皆無の固定クランプ体においては、外突状に湾曲する接合面の2個所のみがタブ壁の湾曲面に接当するだけとなるなど、タブ壁に対する接合面の接触面積が小さくなりやすく、結果として、固定クランプ体がズレ動いて、手摺りをタブ壁に強固に固定できないことに拠る。
【0006】
本発明の目的は、バスタブのタブ壁を前後から挟持するクランプ構造を備える浴室用手摺において、タブ壁の湾曲の度合が多様に変化する場合でも、タブ壁の湾曲面に沿って、クランプ構造を構成する前後のクランプ具を確実に密着させることが可能であり、タブ壁に安定した状態で強固に固定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る浴室用手摺は、バスタブ1の洗い場に臨むタブ壁2に固定される手摺ベース3と、手摺ベース3に組付けられて洗い場の床面で受止められる手摺支柱4とを備える。手摺ベース3は、手摺支柱4を抱持固定するベース本体7と、ベース本体7に設けられて前記タブ壁2を前後に挟持するクランプ構造とを備える。クランプ構造は、ベース本体7に設けられてタブ壁2の前面2aに接当する前クランプ具26と、タブ壁2を跨ぐ状態でベース本体7に前後方向に進退可能に支持される挟持アーム27と、挟持アーム27に支持されてタブ壁2の後面2bに接当する後クランプ具28と、挟持アーム27をベース本体7に対して前後操作して両クランプ具26・28の挟持間隔を調整する調整構造とを備える。後クランプ具28は、挟持アーム27の後部に設けられた複数個の後支持構造52と、タブ壁2の後面2bに接当するとともに、各後支持構造52を介して挟持アーム27に対して全方向に傾動可能に支持された挟持プレート56とを備える。前クランプ具26は、ベース本体7に固定されるベース枠29と、ベース枠29に設けられた複数個の前支持構造34と、タブ壁2の前面2aに接当するとともに、各前支持構造34を介してベース枠29に対して全方向に傾動可能、且つ各前支持構造34を介してベース枠29に対して前後方向にスライド移動可能に支持された挟持ブロック30とを備えることを特徴とする。
【0008】
前支持構造34は、ベース枠29と挟持ブロック30のいずれか一方に設けられた軸部37と、ベース枠29と挟持ブロック30の他方に設けられて軸部37の挿入を許す穴部40と、挟持ブロック30を後方に移動付勢する挟持ばね43と、軸部37を穴部40に対して抜止め保持するストッパー44とを備える。軸部37が穴部40に案内支持されることで、挟持ブロック30がベース枠29に対して前後スライド移動可能であり、軸部37が穴部40に対して傾くことで、挟持ブロック30がベース枠29に対して全方向に傾動できるように構成されている。
【0009】
ベース枠29と挟持ブロック30のいずれか一方に、前後の両クランプ具26・28のタブ壁2に対する挟持力の適否を表示するための表示体46が設けられている。
【0010】
ベース枠29が、ベース本体7に連結される台座部31と、台座部31から突設されて後向きに開口するブロック受枠32を備えており、ブロック受枠32の内面に臨む台座壁39に穴部40が形成されている。挟持ブロック30は、前向きに開口するブロック台36と、ブロック台36の内面から前向きに突設される軸部37と、ブロック台36の後部に固定される弾性材製の接合マット38とを備えている。挟持ブロック30は、ブロック台36がブロック受枠32の外周に重なる状態でベース枠29に組付けられている。表示体46がブロック受枠32の外周面に形成され、挟持ばね43が軸部37の周囲に配置されている。
【0011】
ベース枠29に4個の挟持ブロック30が設けられている。
【0012】
接合マット38の接合面に溝41が格子状に刻設されている。接合面が溝41で区画された区分接合面42の一群で構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る浴室用手摺では、後クランプ具28を、挟持アーム27の後部に設けられた複数個の後支持構造52と、タブ壁2の後面2bに接当するとともに、各後支持構造52を介して挟持アーム27に対して全方向に傾動可能に支持された挟持プレート56とを備えるものとする。また前クランプ具26を、ベース本体7に固定されるベース枠29と、ベース枠29に設けられた複数個の前支持構造34と、タブ壁2の前面2aに接当するとともに、各前支持構造34を介してベース枠29に対して全方向に傾動可能、且つ各前支持構造34を介してベース枠29に対して前後方向にスライド移動可能に支持された挟持ブロック30とを備えるものとする。こうした浴室用手摺によれば、タブ壁2の湾曲の度合が多様に変化するような場合でも、後クランプ具28の挟持プレート56、および前クランプ具26の各挟持ブロック30のそれぞれをタブ壁2の湾曲面に沿うように傾動させて密着させることができるので、従来の浴室用手摺に比べて、手摺ベース3をタブ壁2に安定した状態で強固に固定することができる。特に、前クランプ具26の複数個の挟持ブロック30のそれぞれをタブ壁2の前面2aの湾曲面に沿うように湾曲させて密着させることができるので、従来の浴室用手摺に比べて、手摺ベース3をタブ壁2に安定した状態で強固に固定することができる。
【0014】
前支持構造34は、ベース枠29と挟持ブロック30のいずれか一方に設けた軸部37と、ベース枠29と挟持ブロック30の他方に設けられて軸部37の挿入を許す穴部40と、挟持ブロック30を後方に移動付勢する挟持ばね43と、軸部37を穴部40に対して抜止め保持するストッパー44とを備えるものとし、軸部37が穴部40に案内支持されることで、挟持ブロック30がベース枠29に対して前後スライド移動可能であり、軸部37が穴部40に対して傾くことで、挟持ブロック30がベース枠29に対して全方向に傾動できるように構成することができる。以上のような構成を採ることで、挟持ブロック30がベース枠29に対して全方向に傾動可能に、且つベース枠29に対して前後方向にスライド移動可能に支持させることができる。したがって、前クランプ具26の複数個の挟持ブロック30のそれぞれをタブ壁2の前面2aの湾曲面に沿うように湾曲させて密着させることができるので、従来の浴室用手摺に比べて、手摺ベース3をタブ壁2に安定した状態で強固に固定することができる。
【0015】
ベース枠29と挟持ブロック30のいずれか一方に、前後の両クランプ具26・28のタブ壁2に対する挟持力の適否を表示するための表示体46を設けることができる。これによれば、前後の両クランプ具26・28が締付操作される際の、ベース枠29と挟持ブロック30の相対移動動作に応じて、表示体46の視認状況が変化するため、当該表示体46の視認状況を確認しながら、両クランプ具26・28を調整構造で締付操作することにより、手摺ベース3を過不足なく適正な締付力でタブ壁2に締結固定することができる。
【0016】
ベース枠29が、ベース本体7に連結される台座部31と、台座部31から突設されて後向きに開口するブロック受枠32を備えており、ブロック受枠32の内面に臨む台座壁39に穴部40が形成されており、挟持ブロック30は、前向きに開口するブロック台36と、ブロック台36の内面から前向きに突設される軸部37と、ブロック台36の後部に固定される弾性材製の接合マット38とを備えており、挟持ブロック30は、ブロック台36がブロック受枠32の外周に重なる状態でベース枠29に組付けられており、表示体46がブロック受枠32の外周面に形成され、挟持ばね43が軸部37の周囲に配置されている構成を採ることができる。このように表示体46がブロック受枠32の外周面に形成されていると、表示体46の全体がブロック台36で覆われる状況を確認しながら、前後の両クランプ具26・28を調整構造で締付操作することにより、手摺ベース3を過不足なく適正な締付力でタブ壁2に締結固定できる。したがって、前後の両クランプ具26・28によるタブ壁2の締付力が不足して、手摺ベース3がタブ壁2に沿ってずれ動くのを防止でき、あるいは前後の両クランプ具26・28によるタブ壁2の締付力が過剰になって、タブ壁2が傷つくことを防止できる。
【0017】
ベース枠29に4個の挟持ブロック30を設けると、4個の挟持ブロック30のそれぞれをタブ壁2の湾曲面に沿って傾動させて密着させることができるので、前クランプ具26をさらに安定した状態でタブ壁2に密着させて、手摺ベース3をタブ壁2に対してさらに強固に固定できる。
【0018】
接合マット38の接合面に溝41が格子状に刻設され、接合面が溝41で区画された区分接合面42の一群で構成されていると、個々の区分接合面42を独立して弾性変形させることができるので、接合マット38をタブ壁2の前面2aの湾曲面に沿ってさらに確実に密着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る浴室用手摺を構成する前クランプ具の横断平面図である。
図2】浴室用手摺の使用例を示すバスタブおよび手摺の平面図である。
図3】浴室用手摺の側面図である。
図4図2におけるA-A線断面図である。
図5図6におけるB-B線断面図である。
図6図5におけるC-C線断面図である。
図7】手摺ベースの分解断面図である。
図8図5におけるD-D線断面図である。
図9図4におけるE-E線断面図である。
図10】浴室用手摺を構成する後クランプ具の支持構造を示す分解斜視図である。
図11】挟持アームの固定構造を示す分解斜視図である。
図12】べース枠と挟持ブロックの関係構造を示す一部破断平面図である。
図13】本発明の第2実施形態に係る浴室用手摺を示す側面図である。
図14】本発明の第3実施形態に係る浴室用手摺の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態) 図1ないし図12に、本発明に係る浴室用手摺の第1実施形態を示す。本発明における前後、左右、上下とは、図2図3、および図6に示す矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図2において符号1はバスタブ、2は洗い場に臨むタブ壁であり、タブ壁2に浴室用手摺が設置されている。なお、図2ではタブ壁2の左右中央に設置した場合を示しているが、二点鎖線で示すようにタブ壁2のコーナー部の近傍に設置することもできる。浴室用手摺は、タブ壁2に固定される手摺ベース3と、手摺ベース3に組付けられて洗い場の床面で受止められる手摺支柱4と、洗い場の天井と手摺支柱4との間に設けた上枠体5などで構成される。
【0021】
図4において手摺ベース3は、手摺支柱4を抱持固定するベース本体7と、ベース本体7に設けられてタブ壁2を前後に挟持するクランプ構造と、ベース本体7の前部上面と後部上面に固定される前上ブロック8および後上ブロック9と、ベース本体7の後部下面に固定される後下ブロック10と、これらの部材を下面側から覆う本体カバー12と、ベース本体7の上面を覆う蓋カバー13などで構成される。
【0022】
前上ブロック8および後上ブロック9は、本体カバー12、後下ブロック10および後述する前クランプ具26などをベース本体7に締結するために設けられており、各ブロック8・9には本体カバー12および後下ブロック10の下面側から挿通される3個のボルト(六角穴付きボルト)14に対応するナット15が設けられている(図4参照)。後下ブロック10の下面には、タブ壁2の上面で受止められるクッション材16が固定されている。ベース本体7、前後の上ブロック8・9、後下ブロック10、本体カバー12および蓋カバー13は、いずれもプラスチック成形品からなる。図5に示すように、後下ブロック10の後端面の左右には、後述する挟持アーム27の前後中途部を支持するアーム通口11が設けられている。
【0023】
図7に示すように、ベース本体7の中央寄りには手摺支柱4を組むためのボス18が形成されており、ボス18の中央に柱穴19が上下貫通状に形成されている。また、ボス18の左右には、後述する調整構造を支持する断面凸字状のガイド溝20が形成されており(図8参照)、ボス18の前後には前枠21および後枠22が張り出し形成されて、これら両枠21・22の上下面に先の前後の上ブロック8・9と後下ブロック10とが締結されている。ボス18の上部には、蓋カバー13の筒壁13aを組むための連結穴23が形成されている(図4参照)。後枠22の下面前部には、後述する前クランプ具26を組むための連結凹部24が形成されている。
【0024】
手摺ベース3のクランプ構造は、ベース本体7に設けられてタブ壁2の前面2aに接当する前クランプ具26と、タブ壁2を前後に跨ぐ状態でベース本体7に支持される挟持アーム27と、挟持アーム27に支持されてタブ壁2の後面2bに接当する後クランプ具28と、挟持アーム27をベース本体7に対して前後操作して両クランプ具26・28の挟持間隔を調整する調整構造とを備えている。
【0025】
図1に示すように前クランプ具26は、ベース本体7に固定されるベース枠29と、ベース枠29に前支持構造34を介して支持されてタブ壁2の前面2aに接当する4個の挟持ブロック30とを備えている。ベース枠29は、ベース本体7に連結される台座部31と、台座部31の後面の4個所に突設されて後向きに開口する四角枠状のブロック受枠32と、台座部31の前面中央に突設される締結座33を一体に備えたプラスチック成型品からなる。挟持ブロック30は、前向きに開口する四角枠状のブロック台36と、ブロック台36の内面から前向きに突設される軸部37を備えたプラスチック成型品からなり、ブロック台36の後部には弾性材製の接合マット38が固定されている。ベース枠29は、その締結座33がベース本体7の連結凹部24に連結された状態で、ボルト14でベース本体7に固定される(図4参照)。ブロック台36は、ブロック受枠32よりひと回り大きく形成されており、挟持ブロック30をベース枠29に組付けた状態においては、ブロック台36がブロック受枠32の外周に重なっている。
【0026】
前支持構造34は、挟持ブロック30に設けた軸部37と、ベース枠29に設けた穴部40と、挟持ブロック30を後方に移動付勢する挟持ばね43と、軸部37を穴部40に対して抜止め保持するストッパー44とで構成される。より具体的には、ベース枠29と挟持ブロック30は、挟持ブロック30に設けた軸部37と、ベース枠29に設けた穴部40を介して連結されており、軸部37が穴部40に案内支持されることで、挟持ブロック30がベース枠29に対して前後スライド可能に構成されている。穴部40は、ブロック受枠32の内面に臨む台座壁39に形成されている(図12参照)。図4に示すように、接合マット38は四角形状に形成されており、その接合面には変形促進溝(溝)41が格子状に形成されており、接合面は変形促進溝41で区画された区分接合面42の一群で構成されている。
【0027】
各挟持ブロック30をタブ壁2の湾曲する前面2aに密着させて、接合マット38と前面2aの接触面積を大きくし、手摺ベース3をタブ壁2に安定した状態で強固に固定するために、各挟持ブロック30はベース枠29で全方向に傾動可能に支持されている。詳しくは、図12に示すように各穴部40の中心軸Pを想定するとき、軸部37を各穴部40で中心軸Pの周りの全方向へ傾動できる状態で支持し、さらに、軸部37の直径を穴部40の直径より大きく設定して、各挟持ブロック30をベース枠29で全方向に傾動可能に支持している。必然的に、穴部40の直径は軸部37の直径より大きく設定されており、両者の直径差の範囲内で各挟持ブロック30を傾動させて、その接合マット38をタブ壁2の湾曲面に沿って密着できるようにしている。このように、各挟持ブロック30がベース枠29に対して傾動可能に支持されていると、タブ壁2の湾曲の度合が多様に変化するような場合でも、図1に示すように各挟持ブロック30をタブ壁2の湾曲面に沿って傾動させて密着させることができるので、従来の浴室用手摺に比べて、手摺ベース3をタブ壁2に安定した状態で強固に固定できる。また、先に説明したように接合マット38の接合面が、区分接合面42の一群で構成されていると、個々の区分接合面42を独立して弾性変形させることができるので、接合マット38をタブ壁2の前面2aの湾曲面に沿ってさらに確実に密着させることができる。
【0028】
以上のように、手摺ベース3をタブ壁2に前後のクランプ具26・28で挟持固定する手摺においては、手摺ベース3を過不足なく適正な締付力でタブ壁2に締結固定できないことがある。こうした不具合を一掃して、手摺ベース3を過不足なく常に適正な締付力でタブ壁2に締結固定するために、ベース枠29と挟持ブロック30の間に、挟持ブロック30をベース枠29から遠ざかる向きに移動付勢する挟持ばね43と、軸部37を穴部40に対して抜止め保持するストッパー44とが設けられている。ストッパー44は軸部37にねじ込んだビス45で固定されている。挟持ばね43は、ベース枠29と挟持ブロック30の間の軸部37の周囲に配置されている。また、ベース枠29の左右両側に位置するブロック受枠32の外周面に、前後の両クランプ具26・28の前記タブ壁2に対する挟持力の適否を表示する表示体46が設けられている。表示体46は、ブロック受枠32の外周面に、赤色やオレンジ色などの目につきやすい色のプラスチックシートを貼付けて形成されている。
【0029】
上記のように、挟持ブロック30が挟持ばね43で移動付勢されていると、タブ壁2の前後厚みが大小に異なる場合でも、挟持ばね43のばね力はタブ壁2に作用する挟持力に比例して徐々に増加する。また、ブロック受枠32の外周面に設けた表示体46は、挟持ばね43が圧縮変形するのに応じて、徐々にブロック台36で覆われて見えにくくなる。したがって、タブ壁2に適度の挟持力が作用するときに、表示体46の全体がブロック台36で覆われるように、挟持ばね43のばね力を調整しておくことにより、手摺ベース3を過不足なく適正な締付力でタブ壁2に締結固定できることとなる。つまり、表示体46は、前後の両クランプ具26・28が調整構造で締付操作されるときの、ベース枠29と挟持ブロック30の相対移動動作に応じて、徐々にブロック台36で覆われて視認状況が変化するので、表示体46がブロック台36で覆われて目視できなくなるまで、両クランプ具26・28を調整構造で締付操作することにより、タブ壁2に装着したクランプ構造の締付力を常に適正化できることとなる。このように、表示体46の視認状況を確認しながら、両クランプ具26・28を調整構造で締付操作すると、表示体46の視認状況が所定の状態になったとき、調整構造の締付操作を停止することにより、手摺ベース3を過不足なく適正な締付力でタブ壁2に締結固定することができる。
【0030】
図5に示すように挟持アーム27は、横臥L字状のプレス金具にプラスチック被覆を施して形成されており、水平の腕部の前端寄りが2個のビス48で金属製のアーム連結枠49に締結固定されている。また、アーム連結枠49は、後述する調整構造のスライドブロック50の上面に2個のビス51で締結固定されている。挟持アーム27の垂直の腕部の前面下部に、後クランプ具28を構成する挟持プレート56が十文字状の自在継手(後支持構造)52で支持されている。詳しくは図10に示すように、挟持アーム27の垂直の腕部に設けた左右一対のブラケット53で自在継手52の左右軸を支持し、後クランプ具28を構成する挟持プレート56の後面に設けた上下一対のブラケット54で自在継手52の上下軸を支持している。このように、後クランプ具28の挟持プレート56を自在継手52で支持することにより、挟持プレート56は、タブ壁2の後面の湾曲度と傾斜度に応じて左右方向および前後方向に傾動できる。この実施形態では、挟持プレート56は、平面から見て10度ずつ左右に傾動でき、側面から見て前方へ15.5度、後方へ9.5度傾動できる。挟持プレート56の接合面55はゴムなどのクッション材で形成されている。
【0031】
調整構造は、ベース本体7に設けたガイド溝20で前後スライド自在に案内支持される、断面が凸字状の金属製のスライドブロック50と、スライドブロック50にねじ込まれて、同ブロック50を進退操作する調整ボルト58とを備えている。図5に示すように、調整ボルト58の操作頭部は、ガイド溝20の前壁で支持されて、ねじ軸がスライドブロック50のねじ穴59に前後貫通状にねじ込まれている。調整ボルト58の操作頭部は、ベース本体7に組付けた前上ブロック8で覆われており、前上ブロック8の左右には調整ボルト58をねじ込み操作するためのレンチ穴60が形成されている(図5参照)。図11に示すように、アーム連結枠49には、一定ピッチおきに4個のねじ穴61が形成されており、挟持アーム27のアーム連結枠49に対する締結位置を変更することで、前クランプ具26と後クランプ具28の挟持間隔を大小に調整することができる。
【0032】
手摺支柱4は、金属製の丸パイプに樹脂被覆を施して形成されており、その下端に接床キャップ62が固定されている。上枠体5は、手摺支柱4より小径の金属製の丸パイプからなり、その上端に天井押圧体63が設けられている。上枠体5の下部は手摺支柱4の内部に収容されて、手摺支柱4の上部に設けたロックハンドル64で固定されている。ロックハンドル64を図3に示す状態から、上部のハンドル支軸65を中心にして水平姿勢に揺動操作すると、上枠体5を手摺支柱4に対して上下動することができる。
【0033】
手摺支柱4を手摺ベース3で上下位置調整可能に支持するために、図7に示すようにベース本体7の柱穴19の下側に半円状の抱持座67を設け、抱持座67の後側に半円状の抱持座68を備えた抱持ブロック69を対向配置し、両抱持座67・68で手摺支柱4を前後に挟持固定できるようにしている。両抱持座67・68は、抱持ブロック69の左右に設けた位置決め軸70と、ベース本体7の左右に設けた位置決め穴71で位置決めされて、ベース本体7の左右に配置したボルト72と、抱持ブロック69の左右に設けたナット73で締結固定される。図7において符号74はボルト72が不必要に緩むのを防ぐ規制キャップである。
【0034】
以上のように構成した浴室用手摺は、手摺ベース3をタブ壁2に仮組みしたのち、手摺支柱4の上下高さを調整し、ボルト72を締込んで手摺支柱4を抱持座67・68で固定する。次に、調整ボルト58を締込んで後クランプ具28をタブ壁2の後面2bに密着させ、前後一対のクランプ具26・28でタブ壁2を挟持する。最後に、手摺支柱4に仮組みしておいた上枠体5の天井押圧体63を天井壁に押付けた状態で、ロックハンドル64を図3に示す状態に揺動操作することにより、上枠体5をロック固定する。このように、本実施形態の手摺では、手摺ベース3、手摺支柱4、上枠体5の3者を、タブ壁2、床面、および天井で固定支持したので、手摺支柱4および上枠体5を安定した状態で強固に固定することができる。したがって、手摺支柱4を握った状態での洗い場とバスタブ1との間の移動や、手摺支柱4を握った状態での姿勢変更などを安全に行うことができる。
【0035】
以上のように本実施形態の手摺では、ベース枠29が、ベース本体7に連結される台座部31と、台座部31から突設されて後向きに開口するブロック受枠32を備えるものとし、ブロック受枠32の内面に臨む台座壁39に穴部40を形成した。また、挟持ブロック30は、前向きに開口するブロック台36と、ブロック台36の内面から前向きに突設される軸部37と、ブロック台36の後部に固定される弾性材製の接合マット38を備えることとし、さらに、挟持ブロック30は、ブロック台36がブロック受枠32の外周に重なる状態でベース枠29に組付けるようにした。そのうえで、表示体46をブロック受枠32の外周面に形成し、挟持ばね43は軸部37の周囲に配置するようにした。こうしたクランプ構造によれば、表示体46の全体がブロック台36で覆われる状況を確認しながら、前後の両クランプ具26・28を調整構造で締付操作することにより、手摺ベース3を過不足なく適正な締付力でタブ壁2に締結固定できる。したがって、前後の両クランプ具26・28によるタブ壁2の締付力が不足して、手摺ベース3がタブ壁2に沿ってずれ動くのを防止でき、あるいは前後の両クランプ具26・28によるタブ壁2の締付力が過剰になって、タブ壁2が傷つくのを防止できる。
【0036】
また、この手摺では、ベース枠29に4個の挟持ブロック30を設けるようにしたので、これら4個の挟持ブロック30をタブ壁2の湾曲面に沿って4個所で傾動させて密着させることができる。したがって、前クランプ具26をさらに安定した状態でタブ壁2に密着させて、手摺ベース3をタブ壁2に対してさらに強固に固定することができる。
【0037】
(第2実施形態) 図13に、本発明に係る浴室用手摺の第2実施形態を示す。本実施形態の手摺は、手摺支柱4の上部に手摺枠77が装着されている点が、第1実施形態の手摺と大きく異なる。手摺支柱4は、手摺ベース3のベース本体7で抱持固定される上支柱78と、上支柱78の内部に収容連結される下支柱79で構成されており、下支柱79を回転操作することで接床キャップ62の高さを調整することができる。手摺枠77は、一対の長辺部と、長辺部の端部に連続する湾曲部とで平面視が競技トラック状に形成されており、各長辺部の中途部下面側に設けた連結部80が、上支柱78の上部に固定したブラケット81に連結軸82およびボルト83を介して連結されている。このように構成した手摺は、手摺枠77を手摺支柱4の中心軸の周りに回動変位させることができ、さらにボルト83の中心軸の周りに手摺枠77を回動変位させることができる。他は第1実施形態の手摺と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0038】
上記のように、手摺支柱4の上部に手摺枠77を装着する浴槽型の手摺によれば、手摺支柱4の上部に上枠体5を設けるようにした支柱型の手摺に比べて、天井押圧体63やロックハンドル64を省略できる分だけ、手摺の全体構造を簡素化して低コスト化できる。
【0039】
(第3実施形態) 図14に、本発明の浴室用手摺の第3実施形態を示す。この第3実施形態では、穴部40の形状が第1実施形態と異なる。すなわち第1実施形態においては、ベース枠29に形成した穴部40を概ねストレート穴で形成したが、その必要はなく図14(a)に示すように、穴部40の断面が円弧面からなる双曲線状に形成してもよい。また図14(b)に示すように、穴部40の断面がテーパー面からなる双曲線状に形成してあってもよい。このように穴部40が双曲線状に形成されていると、軸部37と穴部40の直径差を大きくする必要もなく、軸部37を穴部40に対して傾動させることができる。
【0040】
上記以外に、ベース枠29に軸部37を設け、挟持ブロック30に穴部40が設けられている構成であってもよい。挟持ブロック30は、ブロック台36がブロック受枠32の内周に重なる状態でベース枠29に組付けることができ、その場合の表示体46はブロック台36の外周面に設けることができる。挟持ブロック30は、前クランプ具26を安定した状態でタブ壁2に密着させるうえで4個設けることが好ましいが、少なくとも3個設けられていればよい。
【符号の説明】
【0041】
1 バスタブ
2 タブ壁
2a 前面
2b 後面
3 手摺ベース
4 手摺支柱
7 ベース本体
26 前クランプ具
27 挟持アーム
28 後クランプ具
29 ベース枠
30 挟持ブロック
34 前支持構造
37 軸部
40 穴部
42 区分接合面
43 挟持ばね
44 ストッパー
52 後支持構造(自在継手)
56 挟持プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14