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特許7629401がんの治療又は予防に使用するための貪食可能な粒子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】がんの治療又は予防に使用するための貪食可能な粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20250205BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20250205BHJP
   A61K 39/385 20060101ALI20250205BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20250205BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20250205BHJP
   A61K 47/58 20170101ALI20250205BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20250205BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250205BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20250205BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20250205BHJP
【FI】
A61K39/00 H ZNA
A61K9/14
A61K39/385
A61K39/39
A61K47/32
A61K47/58
A61K47/69
A61P35/00
C07K14/47
C12N15/12
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021534628
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2019087029
(87)【国際公開番号】W WO2020136209
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】1821205.0
(32)【優先日】2018-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521259633
【氏名又は名称】ネオギャップ・セラピューテックス・アーベー
【氏名又は名称原語表記】Neogap Therapeutics AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレンルンド・ハンス
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/102921(WO,A1)
【文献】Journal of Immunological Methods,2018年06月12日,460,51-62
【文献】Bioconjugate Chemistry,2018年02月27日,29,771-775
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61K 9/14
A61K 39/385
A61K 39/39
A61K 47/32
A61K 47/58
A61K 47/69
A61P 35/00
C07K 14/47
C12N 15/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のがんの治療又は予防に使用するための貪食可能な粒子であって、
コアと、前記コアに強固に会合した新生抗原性構築物とを含み、前記貪食可能な粒子は0.5から2.5μmの最大寸法を有し、前記コアはポリマーを含み、
前記新生抗原性構築物が、前記対象のがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドの一部のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するネオエピトープペプチドを含み、前記タンパク質又はペプチドの前記一部が少なくとも1個の体細胞変異アミノ酸を有し;
前記対象のがんの治療又は予防は、前記貪食可能な粒子を前記対象に投与する工程を含む、貪食可能な粒子。
【請求項2】
前記新生抗原性構築物が、2個以上の共有結合したネオエピトープペプチドを含む、請求項1に記載の使用のための貪食可能な粒子。
【請求項3】
前記新生抗原性構築物が、3個以上の共有結合したネオエピトープペプチドを含む、請求項2に記載の使用のための貪食可能な粒子。
【請求項4】
前記新生抗原性構築物が、3個、4個又は5個の共有結合したネオエピトープペプチドを含む、請求項2又は3に記載の貪食可能な粒子。
【請求項5】
前記共有結合したネオエピトープペプチドが、スペーサー部分を介して共有結合している、請求項2から4のいずれか一項に記載の使用のための貪食可能な粒子。
【請求項6】
前記スペーサー部分が、1から15個のアミノ酸の配列である、請求項5に記載の使用のための貪食可能な粒子。
【請求項7】
前記スペーサー部分が、アミノ酸配列VVR及び/又はアミノ酸配列GGSを含む、請求項5又は6に記載の使用のための貪食可能な粒子。
【請求項8】
前記共有結合したネオエピトープペプチドのそれぞれが、3から25アミノ酸長である、請求項2から7のいずれか一項に記載の使用のための貪食可能な粒子。
【請求項9】
前記新生抗原性構築物が前記コアに共有結合的に付着している、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のための貪食可能な粒子。
【請求項10】
前記貪食可能な粒子が、前記コアに強固に会合した2個以上の異なる新生抗原性構築物を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のための貪食可能な粒子。
【請求項11】
前記貪食可能な粒子が、前記コアに強固に会合した2個、3個、4個又は5個の異なる新生抗原性構築物を含む、請求項10に記載の使用のための貪食可能な粒子。
【請求項12】
前記異なる新生抗原構築物のそれぞれが、異なるネオエピトープペプチド配列又はネオエピトープペプチドの異なる組み合わせを含む、請求項10又は11に記載の使用のための貪食可能な粒子。
【請求項13】
前記貪食可能な粒子が、0.5から2μmの最大寸法、又は約1μmの最大寸法を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用のための貪食可能な粒子。
【請求項14】
前記コアが常磁性又は超常磁性である、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用のための貪食可能な粒子。
【請求項15】
前記コアがポリスチレンを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用のための貪食可能な粒子。
【請求項16】
前記貪食可能な粒子が、アジュバントと共に投与されるか、又は前記コアに強固に会合したアジュバントを含む、
請求項1から15のいずれか一項に記載の使用のための貪食可能な粒子。
【請求項17】
前記アジュバントが、IL-2、IL-15、IL-17及びIL-4からなる群から選択される、請求項16に記載の使用のための貪食可能な粒子。
【請求項18】
コアと、前記コアに強固に会合した新生抗原性構築物とを含む貪食可能な粒子を含む注射可能な医薬組成物であって、前記貪食可能な粒子は0.5から2.5μmの最大寸法を有し、前記コアはポリマーを含み、及び前記新生抗原性構築物が、前記対象においてがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドの一部のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するネオエピトープペプチドを含み、前記タンパク質又はペプチドの前記一部が、少なくとも1個の体細胞変異アミノ酸を有する、注射可能な医薬組成物。
【請求項19】
前記貪食可能な粒子が、請求項2から17のいずれか一項に定義される、請求項18に記載の注射可能な医薬組成物。
【請求項20】
対象のがんの治療又は予防に使用するための、請求項18又は19に記載の注射可能な医薬組成物。
【請求項21】
前記がんが、固形がんである、
請求項1から17のいずれか一項に記載の使用のための貪食可能な粒子又は
請求項20に記載の使用のための注射可能な医薬組成物。
【請求項22】
前記固形がんが、乳がん、結腸がん、肝臓がん、肺がん(非小細胞及び小細胞)、肺カルチノイド腫瘍、膵臓がん、前立腺がん、卵巣がん及び膀胱がんから選択されるがんである、請求項21に記載の使用のための貪食可能な粒子又は注射可能な医薬組成物。
【請求項23】
がんの前記治療又は予防が、さらに、
前記貪食可能な粒子又は注射可能な医薬組成物の1以上の後続の用量を前記対象に投与することを含み、前記対象は、前記対象においてがん細胞に対する免疫応答を誘発するのに十分な用量の前記貪食可能な粒子又は注射可能な医薬組成物を以前に投与された者である、
請求項1から17のいずれか一項に記載の使用のための貪食可能な粒子、又は
請求項2021又は22に記載の使用のための注射可能な医薬組成物。
【請求項24】
前記対象における前記がんの前記治療又は予防が、さらに、
a)前記貪食可能な粒子を前記対象に投与した後に、前記対象からAPC及び抗がんT細胞を採取する工程と、
b)前記対象から採取した抗がんT細胞を増殖させる工程と、
c)治療用量の前記増殖した抗がんT細胞を前記対象に投与する工程とを含む、
請求項1から17のいずれか一項に記載の使用のための貪食可能な粒子、又は
請求項20に記載の使用のための注射可能な医薬組成物、又は
請求項21から23に記載の使用のための貪食可能な粒子又は注射可能な医薬組成物。
【請求項25】
前記APC及び抗がんT細胞を前記対象に由来するPBMC試料から採取する、請求項24に記載の使用のための貪食可能な粒子又は注射可能な医薬組成物。
【請求項26】
前記APC及び抗がんT細胞を同じPBMC試料から採取するか、又は前記APC及び抗がんT細胞を異なるPBMC試料から採取する、請求項25に記載の使用のための貪食可能な粒子又は注射可能な医薬組成物。
【請求項27】
前記抗がんT細胞の活性化及び増殖工程b)が、
i.コアと、前記コアに強固に会合した新生抗原性構築物とを含む貪食可能な粒子を提供する工程であって、
前記新生抗原性構築物が、前記対象においてがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドの一部のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するネオエピトープペプチドを含み、前記タンパク質又はペプチドの前記一部が、少なくとも1個の体細胞変異アミノ酸を有する、工程と、
ii.APCを提供する工程と、
iii.前記APCによる前記貪食可能な粒子の食作用を可能にする条件下で、前記貪食可能な粒子を前記APCとインビトロで接触させる工程と、
iv.前記対象から採取された抗がんT細胞を提供する工程と、
v.前記APCによって提示されたネオエピトープに応答して抗がんT細胞の特異的活性化を可能にする条件下で、前記抗がんT細胞を工程iii)からのAPCとインビトロで接触させる工程とを含む、
請求項2425又は26に記載の使用のための貪食可能な粒子又は注射可能な医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんの治療又は予防に使用するためのコアに強固に会合した新生抗原性構築物を含む貪食可能な粒子に関する。本発明はまた、がんの治療又は予防に使用するための注射可能な医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
がんを治療するために対象の免疫系を調節するための様々なアプローチが存在しており、そのようなアプローチは、しばしば「免疫療法」と呼ばれる。免疫療法の例としては、免疫チェックポイント阻害剤、養子細胞移入(ACT)療法、及びがんワクチンが挙げられる。
【0003】
免疫活性化のチェックポイントに重要な結合相互作用を標的とするモノクローナル抗体の使用など、がんを治療するために免疫チェックポイント阻害剤を使用することについては多くの成功例がある。免疫チェックポイント阻害剤は、様々ながんの治療に使用されており、例えば、黒色腫、肺がん、膀胱がん及び胃腸がんの治療に使用されている。
【0004】
養子細胞移入(ACT)もある程度成功を収めている。例えば、進行結腸がんを有する患者を養子免疫療法プロトコルを用いて治療した研究がKarlssonら、Ann Surg Oncol.、2010、17(7):1747~57によって報告された。この治療は、腫瘍を自然に排出する最初のリンパ節(センチネル節)から手術中に単離された自己腫瘍反応性リンパ球の単離及びインビトロ増殖に基づくものであった。センチネル節獲得リンパ球を収集し、活性化し、自己腫瘍抽出物に対して増殖させ、輸血として患者に戻した。毒性副作用又は他の有害な作用は観察されなかった。疾患の完全な又は顕著な退縮が、肝臓転移及び肺転移を有する4人の患者において生じ、12人の患者が、部分的な退縮又は病状の安定を示した。
【0005】
ACTにおける大きな制約は、対象へ投与するために、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)などの抗がんT細胞を十分な量調製する必要があるということである。例えば、現在の方法では、抗がんT細胞を得るために、対象のがん又はがん細胞を除去する侵襲的外科手術を用いることがしばしば必要となる。さらに、その得られた細胞は、数が少なく、がん由来の免疫抑制機序のために、不応答性(反応不顕性)のことがよくある。これにより、インビトロ増殖が遅くなる可能性があり、このことは、治療に使用する十分な量の抗がんT細胞を得るのに長い時間がかかる可能性があることを意味する。
【0006】
遺伝子操作されたT細胞は、ACTに関する制約のいくつかを克服するために開発された。遺伝子操作されたT細胞は、抗原受容体の導入によりT細胞の特異性を患者のがんに向けて遺伝子的にその方向を変えること、又は、「キメラ抗原受容体」と呼ばれる合成された認識構造体をT細胞に導入することによって得ることができる。遺伝子操作されたT細胞は血液がんの治療に成功しているが、固形がんの治療に関しては、遺伝子操作されたT細胞の安全性及び選択性は依然として改善を要する。
【0007】
免疫チェックポイント阻害剤及びACTの代替アプローチは、抗がん免疫応答を誘発するために対象へがん抗原を投与することである。抗がん免疫応答を誘発する組成物は、しばしば「がんワクチン」と呼ばれる。がんワクチンは、典型的には、腫瘍関連抗原(TAA)又は腫瘍特異的抗原(TSA)のようながん抗原を含む。TAAはがん細胞によって異常に発現され、例えば、TAAは、正常細胞とがん細胞の双方によって発現され得るが、がん細胞によって有意により高いレベルで発現されるタンパク質又はペプチドである。
TSAは、正常細胞によっては発現されず、がん細胞によって発現される抗原である。腫瘍特異的抗原の注目すべき例は新生抗原である。新生抗原は、正常細胞ではなくがん細胞によって発現される変異タンパク質又はペプチドであり、抗体又はT細胞のT細胞受容体(TCR)などの免疫系の分子に結合され得る。1以上のがん特異的なアミノ酸の変異を含み、免疫系の分子に直接結合されることが知られているか若しくは疑われる新生抗原の領域は、しばしばネオエピトープと呼ばれる。ネオアンチゲンなどのTSAを標的とする治療薬又はワクチンは、より効果的で安全ながん治療を提供することが期待されている。
【0008】
がん治療のための免疫療法に関心が寄せられているにもかかわらず、現在までのところ、それらの成功は限られている。これは、免疫療法の安全性及び選択性に関連する課題と並んで、抗がん免疫応答の調節又は誘導に効果がないことがその原因である。
【0009】
したがって、がんの治療に使用するための改善された免疫療法であって、堅牢で標的化された抗がん性免疫応答を誘発し、臨床現場での使用にも適した免疫療法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、対象におけるがんの治療又は予防に使用するための貪食可能な粒子であって、当該貪食可能な粒子が、コアと、コアに強固に会合した新生抗原性構築物とを含み、当該新生抗原性構築物が、対象におけるがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドの一部のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するネオエピトープペプチドを含み、当該タンパク質又はペプチドの一部が、少なくとも1個の体細胞変異アミノ酸を有する、貪食可能な粒子を提供する。
【0011】
本発明はまた、がんを治療又は予防する方法であって、貪食可能な粒子を対象に投与する工程を含み、当該貪食可能な粒子が、コアと、コアに強固に会合した新生抗原性の構築物とを含み、当該新生抗原性構築物が、対象のがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドの一部のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するネオエピトープペプチドを含み、当該タンパク質又はペプチドの一部が、少なくとも1個の体細胞変異アミノ酸を有する、方法を提供する。
【0012】
本発明はまた、がんを治療又は予防するための医薬品を製造するための貪食可能な粒子の使用であって、当該貪食可能な粒子が、コアと、コアに強固に会合した新生抗原性構築物とを含み、当該新生抗原性構築物が、対象のがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドの一部のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するネオエピトープペプチドを含み、当該タンパク質又はペプチドの一部が少なくとも1個の体細胞変異アミノ酸を有する、使用を提供する。
【0013】
本発明はまた、貪食可能な粒子を含む注射可能な医薬組成物であって、当該貪食可能な粒子が、コアと、コアに強固に会合した新生抗原性構築物とを含み、当該新生抗原性構築物が、対象のがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドの一部のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するネオエピトープペプチドを含み、当該タンパク質又はペプチドの一部が、少なくとも1個の体細胞変異アミノ酸を有する、注射可能な医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明はさらに、対象におけるがんの治療若しくは予防に使用するための本発明の貪食可能な粒子を提供し、又は、対象におけるがんの治療若しくは予防に使用するための本発明の注射可能な医薬組成物を提供し、又は、本発明の対象におけるがんの治療若しくは予防のための方法であって、当該がんの治療又は予防が、
1以上の後続の用量の貪食可能な粒子又は注射可能な医薬組成物を対象に投与すること
を含み、当該対象が、当該対象においてがん細胞に対する免疫応答を誘発するのに十分な用量の貪食可能な粒子又は注射可能な医薬組成物を以前に投与された者である、方法を提供する。
【0015】
本発明はさらに、対象におけるがんの治療若しくは予防に使用するための本発明の貪食可能な粒子を提供し、又は、対象におけるがんの治療若しくは予防に使用するための本発明の注射可能な医薬組成物を提供し、又は、本発明の対象におけるがんの治療若しくは予防のための方法であって、当該がんの治療又は予防が、
(a)貪食可能な粒子を上記対象に投与した後に、対象からAPC及び抗がんT細胞を採取する工程と、
(b)対象から採取した抗がんT細胞を増殖させる工程と、
(c)治療用量の増殖した抗がんT細胞を対象に投与する工程とを含む、方法を提供する。
【0016】
本発明者らは、対象へ投与した後に、本明細書に記載の貪食可能な粒子が抗原提示細胞(APC)によって取り込まれることを見出した。次いで、関連する新生抗原性構築物がAPCの表面に提示され、対象において抗がんT細胞の活性化及び増殖をもたらす。貪食可能な粒子を使用すると、驚くほど多くの新生抗原性構築物が取り込まれ、それに続いてAPC表面上の多種多様なネオエピトープが提示される。本発明者らは、マウスモデルにおいて、2種類の新生抗原性構築物を含む貪食可能な粒子を注射又は皮下によって鼠径リンパ節に投与すると、マウスから採取した血清試料中の抗ネオエピトープ抗体が用量依存的に増加することを示した。続いて、同じマウスに黒色腫がん細胞(B16F10)を注射した。有利なことに、本発明者らは、がん細胞の注射前に貪食可能な粒子をマウスに投与すると、マウスの腫瘍成長に対して用量依存的な予防効果が生じることを見出した。したがって、本発明者らは、本明細書に記載の貪食可能な粒子を対象に投与することによって、堅牢な抗がん免疫応答を対象に誘発することができ、本発明の貪食可能な粒子をがんの予防的ワクチン接種として使用してがんの増殖を減少させることができることを見出した。
【0017】
さらに、本発明者らはまた、結腸直腸がんのマウス異種移植モデルにおいて、結腸がん細胞(MC-38細胞株)の移植の前後に、6種類の新生抗原性構築物を含む貪食可能な粒子組成物を投与すると、マウスにおいて腫瘍成長を阻害する堅牢な抗がん免疫応答が生じることを示した。上述したように、本発明者らは、がんの2つのマウスモデルにおいて、本発明の貪食可能な粒子の治療的及び予防的可能性を示した。
【0018】
本発明者らはまた、本明細書に記載の貪食可能な粒子のコア(例えば、ポリマー粒子)が、新生抗原性構築物にとって非常に有効な担体として機能することを見出した。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、コア及び強固に会合した新生抗原構築物を含む貪食可能な粒子全体が、APCの食作用によってファゴソームに取り込まれるがゆえに、本明細書で定義される貪食可能な粒子は特に効果的であると考えられる。次いで、新生抗原性構築物は、粒子のコアから切断され、ファゴソーム中で処理される。次いで、新生抗原性構築物の断片は、主要組織適合性(MHC)クラスII経路を介してAPCの表面に提示され、MHCクラスII分子によって細胞表面に提示される。これは、ネオエピトープがAPCの表面に提示されるための排他的なプロセスではなく、新生抗原性構築物の一部の断片は、また、主要組織適合性(MHC)クラスI経路を介してAPCの表面に提示される場合もあり、交差提示として知られるプロセスでMHCクラスI分子によって細胞表面に提示される場合もあると考えられる。したがって、新生抗原性構築物の断片は主にMHCクラスII経路を介してAPC上に提示されると予想されるが、一部はMHCクラスI経路を介して提示されると予想されるため、本発明は双方の経路を多かれ少なかれ利用する。
【0019】
抗原がMHCクラスII分子によって提示されると、それらは通常ヘルパーT細胞(CD4+T細胞としても知られる)を活性化し、これは主にサイトカインの分泌によって免疫応答を指揮し、B細胞のクラススイッチングを誘導してB細胞が抗体を作製するのを支援し、他のT細胞型、特に細胞傷害性T細胞(例えば、CD8+T細胞)及びメモリーT細胞(例えば、CD8+メモリーT細胞)の活性化及び増殖を刺激する。さらに、CD4+T細胞は、他の細胞型(Borst他、Nat Rev Immunol、2018、18(10)、635~647)を直接死滅させることができる。これは、本明細書で定義される貪食可能な粒子を対象に投与することによって、複数の種類の免疫細胞を活性化することが可能であり、これにより、ゆっくりと開始する(したがって、副作用がほとんどない)抗がん免疫応答がもたらされ、長期持続効果を有し、(腫瘍細胞を直接攻撃することだけができるCD8+T細胞を活性化するだけはなく)全免疫系を利用することによって多くの異なる方法でがんを標的化することができることを意味する。これは、抗原(例えば、新生抗原)が遊離ペプチド又はペプチドを発現するヌクレオチド構築物として提供される場合に起こると予想されるものとは対照的である。かかる抗原はAPCの細胞質ゾルに取り込まれると予想され、その結果、新生抗原がMHCクラスI分子によってMHCクラスI経路のみを介して細胞表面に提示される。これにより、主にCD8+T細胞が活性化する。さらに、抗がん免疫応答を誘導した後、抗がんTヘルパー細胞に由来するメモリーT細胞は血液循環の中に留まり、ネオエピトープを発現するがん細胞が体内に留まる間、又は同じがんが再発する場合に、迅速かつ効果的な二次免疫応答を開始することができる。
【0020】
本発明者らはまた、本明細書に記載の貪食可能な粒子を効率的に精製及び滅菌することができ、例えば、対象への投与前に、病原体(例えば、細菌、真菌及びウイルス)、エンドトキシン及び他の抗原性汚染物質などの汚染物質を貪食可能な粒子から除去することができることを見出した。このことは、本明細書に記載の貪食可能な粒子から汚染物質を除去することにより、投与後の対象における非特異的免疫応答が低下し、その結果、貪食可能な粒子の安全性及び有効性が改善されるため、特に有利である。
【0021】
本発明者らはまた、一部には、コアの不活性特性及び貪食可能な粒子の高い無菌性のために、投与後の対象において、貪食可能な粒子が十分に許容されることを理解している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、T細胞活性化における貪食性粒径の影響を示す。増殖アッセイ(チミジン取込みによる)を使用して、オボアルブミン感作マウスから得られた脾細胞の数を評価した。5.6μm、1μm及び0.2μmの直径を有する異なるサイズの貪食可能な粒子に結合したオボアルブミンの比較を示す。P値はスチューデントのT検定を用いて決定し、p<0.05の場合はその旨を記した。ステープルはSDを示す。
図2-1】図2は、ネオエピトープNA1~9の刺激によるT細胞の増殖を示す。図2Aは、培養物中の経時的な細胞数を示す。図2Bは、CD4+T細胞/全T細胞の%を示す。図2Cは、CD4+T細胞におけるT-bet発現を示す。図2Dは、CD8+T細胞におけるグランザイムB及びパーフォリンの発現を示す。
図2-2】図2-2は図2のつづきである。図2Cは、CD4+T細胞におけるT-bet発現を示す。図2Dは、CD8+T細胞におけるグランザイムB及びパーフォリンの発現を示す。
図3図3は、新生抗原性構築物の刺激によるT細胞の増殖を示す。T細胞(小さい四角)及びCD4+T細胞の総数(大きい四角)、並びに増殖CD4+細胞(丸)のパーセントを示す。
図4-1】図4は、新生抗原性構築物の刺激による抗がんT細胞の増殖を示す。図4Aは、PBMC培養物中の経時的(日)な細胞数を示す。PBMC培養物は、APC及びT細胞を含む様々な細胞型を含む。図4Aの一番上の線(Pat2 個別化NA)は、ポリスチレンコア(MyOne(商標)カルボン酸Dynabeads(登録商標))及びコアに強固に会合した個別化新生抗原性構築物(配列番号3)を含む貪食可能な粒子とのインキュベーション後のPBMC培養物中の細胞の数を示す。図4Aの下部の2本の線(Pat2 NA 1+3及びPat2 NA 4+5)は、ポリスチレンコア(MyOne(商標)カルボン酸Dynabeads(登録商標))とコアに強固に会合した予測新生抗原性構築物を含む貪食可能な粒子と共にインキュベートした後の2つの別個のPBMC培養物中の細胞数を示す。図4Bは、CD4+T細胞/総T細胞の%を示す。
図4-2】図4-2は図4のつづきである。図4Cは、CD4+T細胞についてBarnes-Hut 確率的近傍埋め込み法(BH-SNE)アルゴリズムを用いて行われた分析を可視化するものであり、試料中の全ての細胞は、選択されたマーカー(CD28、CD57、T-bet、GATA-3、パーフォリン、グランザイムB(GZB)、Ki-67、PD-1)のセットによる発現強度の類似性に従って2次元マップ上でクラスター化されている。
図5図5Aは、細胞内に貪食された粒子を有するPBMCの共焦点顕微鏡画像を示す。貪食された粒子と共にPBMCを37℃で18時間インキュベートした後に、3つのサイズの貪食可能な粒子が示されている(4.5μm、2.8μm又は1μm)。 図5Bは、手動計数によって評価した、PBMCと共に37℃で18時間インキュベートした後の2つのサイズ(4.5μm又は2.8μm)の貪食可能な粒子の細胞取込みを示す。 図5Cは、体積計算(*p<0,05 **p<0,01 ***p<0,001、スチューデントのT検定を用いて計算)によって評価した、PBMC中で37℃で18時間インキュベートした後の3つのサイズ(4.5μm、2.8μm又は1μm)の貪食可能な粒子の細胞取込み示す。
図6-1】図6Aは、実施例3a(iv)のFluoroSpotアッセイで評価した場合の、3つのサイズ(4.5μm、2.8μm又は1μm)の貪食可能な粒子で刺激されたCMV感受性健常ドナー(n=2)由来のPBMCにおけるIFNγ産生レベルの非刺激細胞と比較した相対的増加を示す。 図6Bは、実施例3a(iv)のFluoroSpotアッセイで評価した場合の、3つのサイズ(4.5μm、2.8μm又は1μm)の貪食可能な粒子で刺激されたCMV感受性健常ドナー(n=1)由来のPBMCにおけるIL22産生レベルの非刺激細胞と比較した相対的増加を示す。 図6Cは、実施例3a(iv)のFluoroSpotアッセイで評価した場合の、3つのサイズ(4.5μm、2.8μm又は1μm)の貪食可能な粒子で刺激したCMV感受性健常ドナー(n=1)由来のPBMCにおけるIL17産生レベルの非刺激細胞と比較した相対的増加を示す。
図6-2】図6-2は図6のつづきである。図6Dは、実施例3a(iv)のFluoroSpotアッセイで評価した場合の、3つのサイズ(4.5μm、2.8μm又は1μm)の貪食可能な粒子で刺激されたCMV感受性健常ドナー(n=1)由来のPBMCにおけるIFNγ及びIL-17の二重サイトカイン産生の非刺激細胞と比較した相対的増加を示す。 図6Eは、実施例3a(iv)のFluoroSpotアッセイで評価した場合の、3つのサイズ(4.5μm、2.8μm又は1μm)の貪食可能な粒子で刺激されたCMV感受性健常ドナー(n=1)由来のPBMCにおけるIL22及びIL17の二重サイトカイン産生の非刺激細胞と比較した相対的増加を示す。
図7A図7A図7B図7C及び図7Dは、低用量又は高用量の2種類の貪食可能な粒子を鼠径リンパ節内又は皮下に投与した後にマウスから採取した血清試料中の抗ネオエピトープ抗体の割合を示す(各用量及び投与経路についてn=3)。2種類の貪食可能な粒子は、1)新生抗原性構築物M272120(配列番号1)に強固に会合したポリスチレン粒子、及び、2)新生抗原性構築物M304748(配列番号2)に強固に会合したポリスチレン粒子であった。図7A及び図7Bは、貪食可能な粒子を最初に投与して22日後のマウスから採取した血清中の、新生抗原性構築物M272120(配列番号1)に対する抗ネオエピトープ抗体の割合(図7A)、又は新生抗原性構築物M304748(配列番号2)に対する抗ネオエピトープ抗体の割合(図7B)を示す。また、図7C及び図7Dは、1回目の貪食可能な粒子の投与のおよそ1ヶ月後に2回目の貪食可能な粒子を投与して23日後のマウスから採取した血清中の新生抗原性構築物M272120(配列番号1)に対する抗ネオエピトープ抗体の割合(図7C)、又は新生抗原性構築物M304748(配列番号2)に対する抗ネオエピトープ抗体の割合(図7D)を示す。コントロールとして、ナイーブマウス(n=3、貪食可能な粒子の投与なし)から採取した血清試料を併せて分析した。高用量の貪食可能な粒子を1用量又は2用量受けた(鼠径リンパ節内又は皮下に投与された)マウスは、同じ経路を介して低用量の貪食可能な粒子を1用量又は2用量受けたマウスと比較して、また、貪食可能な粒子を1用量も受けなかったマウス(すなわち、ナイーブマウス)と比較して、血清試料中の抗ネオエピトープ抗体の割合が高かった。
図7B図7Bは、貪食可能な粒子を最初に投与して22日後のマウスから採取した血清中の新生抗原性構築物M304748(配列番号2)に対する抗ネオエピトープ抗体の割合(図7B)を示す。
図7C図7Cは、1回目の貪食可能な粒子の投与のおよそ1ヶ月後に2回目の貪食可能な粒子を投与して23日後のマウスから採取した血清中の新生抗原性構築物M272120(配列番号1)に対する抗ネオエピトープ抗体の割合(図7C)を示す。コントロールとして、ナイーブマウス(n=3、貪食可能な粒子の投与なし)から採取した血清試料を併せて分析した。
図7D図7Dは、1回目の貪食可能な粒子の投与のおよそ1ヶ月後に2回目の貪食可能な粒子を投与して23日後のマウスから採取した血清中の新生抗原性構築物M304748(配列番号2)に対する抗ネオエピトープ抗体の割合(図7D)を示す。コントロールとして、ナイーブマウス(n=3、貪食可能な粒子の投与なし)から採取した血清試料を併せて分析した。
図8図8は、予め2用量の貪食可能な粒子(M272120に強固に会合したポリスチレン粒子、及びM304748に強固に会合したポリスチレン粒子)を投与されたマウスにメラノーマがん細胞株B16F10を注射した後の腫瘍体積の経時的変化(日数、D)を示す。以下の用量の貪食可能な粒子を事前に投与したマウス(n=3)に関する腫瘍体積の経時的変化を示す(低用量の貪食可能な粒子を鼠径リンパ節に2用量投与(四角■)、高用量の貪食可能な粒子を鼠径リンパ節に2用量注入(三角▼)、低用量の貪食可能な粒子を2用量皮下注入(三角▲)、高用量の貪食可能な粒子を2用量皮下注射(菱形◆))。貪食可能な粒子の投与は、腫瘍体積に対する用量依存的な予防効果を示す。
図9図9は、6つの異なるグループの貪食可能な粒子を含む貪食可能な粒子組成物を1回及び2回投与した後のマウス(n=5)の腫瘍体積を示し、各グループは、異なるMC38新生抗原構築物(配列番号13~18)に結合したコアを含む。1回目の用量を-5日目に投与し(時点A)、2回目の用量を13日目に投与した(時点C)。0日目(時点B)にマウスにMC38腫瘍細胞を移植した。腫瘍進行を非ワクチン接種群(陰性対照、n=5)と比較した。実験終了時の腫瘍体積の差をスチューデントのt検定を用いて計算した。***p<0.001。
【発明を実施するための形態】
【0023】
新生抗原性構築物及びネオエピトープペプチド
本発明で使用するための貪食可能な粒子は、コアに強固に会合した新生抗原性構築物を含む。本発明の新生抗原性構築物は、ネオエピトープペプチドを含む。
【0024】
本発明で使用するためのネオエピトープペプチドは、対象においてがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドの一部のアミノ
酸配列に対応するアミノ酸配列を有するペプチドであり、当該タンパク質又はペプチドの一部は、少なくとも1個の体細胞変異アミノ酸を有する。ネオエピトープペプチドの「体細胞変異アミノ酸」は、タンパク質又はペプチドの上記一部が非がん性細胞(例えば、体細胞)によって発現されるときの、ネオエピトープペプチドアミノ酸配列に対応するタンパク質又はペプチドの上記一部とは異なるか又はその部分に存在しないアミノ酸である。例えば、ネオエピトープペプチドの「体細胞変異アミノ酸」は、欠失(すなわち、欠失されたアミノ酸)、付加(すなわち、付加されたアミノ酸)、又は置換(すなわち、異なるアミノ酸で置換されたアミノ酸)であり得る。そのような体細胞変異アミノ酸は、体細胞変異アミノ酸ががん細胞に存在するが正常細胞(例えば、体細胞)には存在しないことから、「がん特異的体細胞変異アミノ酸」とも呼ばれ得る。好ましくは、ネオエピトープペプチドの体細胞変異アミノ酸は、置換である(すなわち、1個以上のアミノ酸が異なるアミノ酸に置換されている)。
【0025】
細胞によって発現されるタンパク質又はペプチド中の変異体アミノ酸は、細胞のDNAへのヌクレオチドの置換、欠失又は挿入を引き起こす各細胞分裂で生じるDNA複製の不忠実性の結果として起こり得る。ヌクレオチド置換により、体細胞非変異核酸配列によってコードされるアミノ酸とは異なるアミノ酸がコードされ、その結果、タンパク質/ペプチド中に、正常な非がん性細胞(例えば、体細胞)のタンパク質/ペプチドとは異なるアミノ酸が生じ得る。ヌクレオチドの挿入及び/又は欠失は、リーディングフレームエラー(すなわち、「フレームシフト突然変異」)をもたらし、その結果として、タンパク質レベルで新しいアミノ酸配列をもたらす可能性がある(すなわち、ヌクレオチドの挿入又は欠失がDNAのリーディングフレームを変化させ、その結果、変異後に、正常細胞(例えば、体細胞)と比較して、DNAによってコードされるアミノ酸の大部分又はすべてを変化させる)。追加的又は代替的に、挿入及び/又は欠失は、終止コドンの導入をもたらし、その結果として、タンパク質レベルで短縮型タンパク質をもたらす可能性がある。ヌクレオチド置換は、コドンを個々に変更し、タンパク質レベルでアミノ酸の置換及び/又は終止コドンの導入をもたらし、その結果として、タンパク質レベルで短縮型タンパク質をもたらす可能性がある。
【0026】
本発明で使用するためのネオエピトープペプチドは、対象においてがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドの一部のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するペプチドであり、当該タンパク質又はペプチドの一部は、少なくとも1個の体細胞変異アミノ酸(例えば、1、2、3、4又は5個、又はそれ以上の体細胞変異アミノ酸)を有する。
【0027】
対象においてがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われる変異タンパク質又はペプチドは、「がん特異的変異タンパク質又はペプチド」と呼ばれる場合もある。これは、変異したタンパク質又はペプチドが、正常細胞(例えば、体細胞)ではなく、がん細胞において発現されることが知られているか若しくは疑われるからである。
【0028】
がん特異的変異タンパク質又はペプチド、及びネオエピトープペプチドのアミノ酸配列に対応し得るそのアミノ酸配列は、様々な技術を用いて同定することができる。例えば、がん特異的変異タンパク質又はペプチド、及びそのがん特異的体細胞変異アミノ酸を含むそのアミノ酸配列は、COSMICデータベース(Forbesら、Nucleic Acids Res、45(D1)、D777~D783、このデータベースはhttp://cancer.sanger.ac.uk/cosmic)でアクセス可能である)などの公的に利用可能なタンパク質データベースから同定することができる。COSMICデータベース又は同様のデータベースから同定された体細胞変異アミノ酸配列は、本明細書では「予測ネオエピトープペプチド」と呼ぶ。1個以上の「予測ネオエピトープペプチド」からなる新生抗原性構築物は、本明細書では「予測新生抗原性構築物」と呼ぶ。
【0029】
がん特異的変異タンパク質又はペプチドを同定するための代替又は追加のアプローチでは、そのアミノ酸配列、すなわち、ネオエピトープペプチドアミノ酸配列が対象のがんから得られたがん細胞のゲノム、エクソームトランスクリプトーム及び/又はプロテオームに対応することができ、その結果、がん細胞における変異が推定される。これは、例えば、プロテオーム、ゲノム、エクソーム又はトランスクリプトーム由来データと参照ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列との比較によって行うことができる。適切な参照配列は、対象から得られた非がん性細胞(例えば、体細胞)のゲノム、エクソーム若しくはトランスクリプトームから、又は、UniProtデータベース(https://www.uniprot.org/)及びEBI expression atlas(https://www.ebi.ac.uk/gxa/home)などの公的に利用可能なヌクレオチド若しくはタンパク質データベースから得ることができ、これらは組織及びがん細胞株で発現されるタンパク質及びペプチドに関する情報を提供する。代替又は追加のアプローチでは、がん特異的変異タンパク質又はペプチド、及びネオエピトープペプチドのアミノ酸配列が対応し得るそのアミノ酸配列は、対象の腫瘍のゲノム、エクソーム、トランスクリプトーム及び/又はプロテオームの分析によって事前に同定されたものであってもよい。がん細胞又は正常細胞のゲノム、エクソーム又はトランスクリプトームの塩基配列を決定するのに好適な技術は当技術分野で既知であり、例えば、サンガー配列決定法や次世代配列決定法が挙げられる。プロテオームデータを得るのに好適な技術としては、多重反応モニタリング(MRM)質量分析が挙げられる。対象から得られたゲノム、エクソーム、トランスクリプトーム又はプロテオームデータから同定された体細胞変異アミノ酸配列は、本明細書では「個別化ネオエピトープペプチド」と呼ぶ。1個以上の「個別化ネオエピトープペプチド」からなる新生抗原性構築物は、本明細書では「個別化新生抗原性構築物」と呼ぶ。
【0030】
本発明で使用するためのネオエピトープペプチドは、1個以上の体細胞変異アミノ酸を有する。例えば、それは、1個の体細胞変異アミノ酸を有していてもよく、又は2個以上の体細胞変異アミノ酸を有していてもよく、すなわちタンパク質又はペプチドの一部において、2個乃至すべてのアミノ酸が変異していてもよい。例えば、本発明のネオエピトープペプチドは、1から10個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)の体細胞変異アミノ酸を有していてもよく、より好ましくは1から8個(例えば、1、2、3、4、5、6、7又は8個)の変異アミノ酸を有していてもよい。又は、例えば、1から6個(例えば、1、2、3、4、5又は6個)の変異アミノ酸を有していてもよく、又は、例えば、1から5個(例えば、1、2、3、4又は5個)の体細胞変異アミノ酸を有していてもよく、又は、例えば、1から4個(例えば、1、2、3又は4個)の体細胞変異アミノ酸を有していてもよい。本発明の好ましい実施形態では、本発明のネオエピトープペプチドは、1、2又は3個の体細胞変異アミノ酸を有する。好ましい一実施形態では、本発明のネオエピトープペプチドは、1又は2個の体細胞変異アミノ酸を有する。さらにより好ましくは、本発明のネオエピトープペプチドは、1個の体細胞変異アミノ酸を有する。
【0031】
好ましい一実施形態では、本発明のネオエピトープペプチドは、そのほとんど又は全体において体細胞変異アミノ酸を有する。さらにより好ましくは、本発明のネオエピトープペプチドは、その全体において体細胞変異アミノ酸を有する。そのほとんど又は全体において体細胞変異アミノ酸を有するそのようなネオエピトープペプチドは、細胞のDNAにおけるフレームシフト型変異によって生じるタンパク質又はペプチドの一部に対応し得る。
【0032】
本発明で使用するためのネオエピトープペプチドの1個以上のアミノ酸変異は、ネオエピトープペプチドのアミノ酸配列内の任意のアミノ酸位置に位置し得る。好ましい一実施
形態では、体細胞変異アミノ酸の少なくとも1個(又はネオエピトープペプチド中に1個の体細胞変異アミノ酸のみが存在する実施形態では1個の体細胞変異アミノ酸)は、ネオエピトープペプチドの中央部分に位置する。例えば、ネオエピトープペプチドアミノ酸配列が少なくとも3アミノ酸長(例えば、少なくとも5アミノ酸長又は少なくとも7アミノ酸長)である場合、ネオエピトープペプチドの中心部は、ネオエピトープペプチドがその配列中に奇数個のアミノ酸を有する場合には、配列の中央にある1個のアミノ酸であり、また、ネオエピトープペプチドがその配列中に偶数個のアミノ酸を有する場合には、中央にある2個のアミノ酸である。例えば、ネオエピトープペプチドアミノ酸配列が少なくとも9アミノ酸長である場合、ネオエピトープペプチドの中心部は、ネオエピトープペプチドがその配列中に奇数個のアミノ酸を有する場合には、配列の中央にある3個のアミノ酸(及び、好ましくは1個の中央にあるアミノ酸)であり、また、ネオエピトープペプチドがその配列中に偶数個のアミノ酸を有する場合には、中央にある4個のアミノ酸(及び、好ましくは2個の中央にあるアミノ酸)である。例えば、ネオエピトープペプチドアミノ酸配列が少なくとも11アミノ酸長である場合、ネオエピトープペプチドの中心部は、ネオエピトープペプチドがその配列中に奇数個のアミノ酸を有する場合には、配列の中央にある5個のアミノ酸(及び、好ましくは1個の中央にあるアミノ酸)であり、また、ネオエピトープペプチドがその配列中に偶数個のアミノ酸を有する場合には、中央にある6個のアミノ酸である。より好ましくは、ネオエピトープペプチドアミノ酸配列が少なくとも11アミノ酸長である場合、ネオエピトープペプチドの中心部は、ネオエピトープペプチドがその配列中に奇数個のアミノ酸を有する場合には、配列の中央にある3個のアミノ酸(及び、好ましくは1個の中央にあるアミノ酸)であり、また、ネオエピトープペプチドがその配列中に偶数個のアミノ酸を有する場合には、中央にある4個のアミノ酸(及び、好ましくは2個の中央にあるアミノ酸)である。
【0033】
好ましい一実施形態では、ネオエピトープペプチドの体細胞変異アミノ酸の少なくとも1個(又は、ネオエピトープペプチド中に1個の体細胞変異アミノ酸のみが存在する実施形態では1個の体細胞変異アミノ酸)は、ネオエピトープペプチドがその配列中に奇数のアミノ酸を有する場合には、ネオエピトープペプチドの中央位置に位置し、また、ネオエピトープペプチドがその配列中に偶数個のアミノ酸を有する場合には、アミノ酸配列の最も中央にある2つの位置のいずれか一方に位置する。
【0034】
本発明のある実施形態では、ネオエピトープペプチドのアミノ酸のほとんど又はすべてが体細胞変異アミノ酸である。そのような実施形態では、がん細胞によって発現されるタンパク質又はペプチド中の体細胞変異アミノ酸は、コードDNAのリーディングフレームのエラーに起因して(すなわち、フレームシフト突然変異に起因して)生じた可能性があり、その結果、タンパク質又はペプチドの部分中のアミノ酸の全部又は大部分が、正常な非がん性細胞で発現されるタンパク質又はペプチドの部分とは異なる。
【0035】
本発明のネオエピトープペプチドは、3から200アミノ酸長(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、50、75、100、125、150、175又は200アミノ酸長)のアミノ酸配列を有し得る。好ましくは、本発明のネオエピトープペプチドは、3から50アミノ酸長(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45又は50アミノ酸長)、より好ましくは3から30アミノ酸長(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30アミノ酸長)、より好ましくは3から25アミノ酸(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25ア
ミノ酸長)、より好ましくは5から25アミノ酸(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25アミノ酸長)、より好ましくは8から25アミノ酸(例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25アミノ酸長)、さらにより好ましくは11から25アミノ酸長(例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25アミノ酸長)のアミノ酸配列を有し得る。好ましい一実施形態では、本発明のネオエピトープペプチドは、3から25アミノ酸長、5から25アミノ酸長、10から25アミノ酸長、11から25アミノ酸長、12から25アミノ酸長、13から25アミノ酸長、15から25アミノ酸長、17から25アミノ酸長、19から25アミノ酸長、20から25アミノ酸長、又は21から25アミノ酸長を有する。別の好ましい実施形態では、本発明のネオエピトープペプチドは、3から23個のアミノ酸長、5から23個のアミノ酸長、10から23個のアミノ酸長、11から23個のアミノ酸長、12から23個のアミノ酸長、13から23個のアミノ酸長、15から23個のアミノ酸長、17から23個のアミノ酸長、19から23個のアミノ酸長、20から23個のアミノ酸長、又は21から23個のアミノ酸長を有する。別の好ましい実施形態では、本発明のネオエピトープペプチドは、3から21アミノ酸長、5から21アミノ酸長、10から21アミノ酸長、11から21アミノ酸長、12から21アミノ酸長、13から21アミノ酸長、15から21アミノ酸長、17から21アミノ酸長、又は19から21アミノ酸長である。別の好ましい実施形態では、本発明のネオエピトープペプチドは、3から19アミノ酸長、5から19アミノ酸長、10から19アミノ酸長、11から19アミノ酸長、12から21アミノ酸長、13から21アミノ酸長、15から21アミノ酸長、又は17から19アミノ酸長である。別の好ましい実施形態では、本発明のネオエピトープペプチドは、3から17アミノ酸長、5から17アミノ酸長、10から17アミノ酸長、11から17アミノ酸長、12から17アミノ酸長、13から17アミノ酸長又は15から17アミノ酸長を有する。別の好ましい実施形態では、本発明のネオエピトープペプチドは、3から15アミノ酸長、3から15アミノ酸長、10から15アミノ酸長、11から15アミノ酸長、12から15アミノ酸長又は13から15アミノ酸長を有する。別の好ましい実施形態では、本発明のネオエピトープペプチドは、3から19アミノ酸長、5から17アミノ酸長、5から15アミノ酸長、5から13アミノ酸長、又は5から10アミノ酸長である。別の好ましい実施形態では、本発明のネオエピトープペプチドは、3から19アミノ酸長、5から17アミノ酸長、3から15アミノ酸長、3から10アミノ酸長、又は5から10アミノ酸長である。別の好ましい実施形態では、本発明のネオエピトープペプチドは、3から19アミノ酸長、3から17アミノ酸長、3から13アミノ酸長、3から10アミノ酸長、又は3から7アミノ酸長である。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、ネオエピトープペプチドは、10から25個のアミノ酸、10から23個のアミノ酸、10から21個のアミノ酸、10から19個のアミノ酸、10から17個のアミノ酸、10から15個のアミノ酸であり、1、2、3、4若しくは5個、又は全ての体細胞変異アミノ酸を含む。好ましくは、ネオエピトープペプチドは、10から25アミノ酸長、10から23アミノ酸長、10から21アミノ酸長、10から19アミノ酸長、10から17アミノ酸長、10から15アミノ酸長であり、1、2又は3個の体細胞性アミノ酸又は全ての変異アミノ酸を含む。より好ましくは、ネオエピトープペプチドは、10から25アミノ酸長、10から23アミノ酸長、10から21アミノ酸長、10から19アミノ酸長、10から17アミノ酸長、10から15アミノ酸長であり、ネオエピトープは、1又は2個の体細胞変異アミノ酸又は全ての変異アミノ酸を含む。さらにより好ましくは、ネオエピトープペプチドは、10から25アミノ酸長、10から23アミノ酸長、10から21アミノ酸長、10から19アミノ酸長、10から17アミノ酸長、10から15アミノ酸長であり、一個の体細胞変異アミノ酸又は全ての変異アミノ酸を含む。さらにより好ましくは、ネオエピトープペプチドは、10から25アミ
ノ酸長、10から23アミノ酸長、10から21アミノ酸長、10から19アミノ酸長、10から17アミノ酸長、10から15アミノ酸長であり、一個の体細胞変異アミノ酸を含む。
【0037】
本発明の別の好ましい実施形態では、ネオエピトープペプチドは、3から25アミノ酸長、3から17アミノ酸長、3から15アミノ酸長、3から10アミノ酸長、又は5から10アミノ酸長であり、1、2、3、4個、若しくは5個、又は全ての体細胞変異アミノ酸を含む。好ましくは、ネオエピトープペプチドは、3から25アミノ酸長、3から17アミノ酸長、3から15アミノ酸長、3から10アミノ酸長又は5から10アミノ酸長であり、1、2又は3個又は全ての体細胞変異アミノ酸を含む。より好ましくは、ネオエピトープペプチドは、3から25アミノ酸長、3から17アミノ酸長、3から15アミノ酸長、3から10アミノ酸長又は5から10アミノ酸長であり、1又は2個又は全ての体細胞変異アミノ酸を含む。さらにより好ましくは、ネオエピトープペプチドは、3から25アミノ酸長、3から17アミノ酸長、3から15アミノ酸長、3から10アミノ酸長又は5から10アミノ酸長であり、1個又は全ての体細胞変異アミノ酸を含む。さらにより好ましくは、ネオエピトープペプチドは、3から25アミノ酸長、3から17アミノ酸長、3から15アミノ酸長、3から10アミノ酸長又は5から10アミノ酸長であり、1個又はすべての体細胞変異アミノ酸を含む。
【0038】
本発明者らは、有利なことに、本発明のネオエピトープ、特に、3から25アミノ酸長であるがん特異的タンパク質又はペプチドの一部のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有し、1個以上の体細胞変異アミノ酸を含むネオエピトープが、対象において抗がん免疫応答を誘発するのに特に有効であるが、対象において自己免疫又は非がん特異的免疫応答を誘発しないことを見出した。
【0039】
新生抗原性構築物は、1個のネオエピトープペプチドを含み得るか、又は2個以上のネオエピトープペプチドを含み得る。例えば、新生抗原性構築物は、1から50個のネオエピトープペプチド(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50個のネオエピトープペプチド)を含み得る。好ましくは、新生抗原性構築物は、1から20個のネオエピトープペプチド(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20のネオエピトープペプチド)を含み、より好ましくは、1から15個のネオエピトープペプチド(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のネオエピトープペプチド)を含み、より好ましくは、1から10個のネオエピトープペプチド(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)を含み、より好ましくは、1から8個のネオエピトープペプチド(例えば、1、2、3、4、5、6、7又は8個)を含み、より好ましくは、1から6個のネオエピトープペプチド(例えば、1、2、3、4、5又は6個)を含み、さらにより好ましくは、1から5個のネオエピトープペプチド(例えば、1、2、3、4、又は5個)を含む。新生抗原性構築物は、1から5個のネオエピトープペプチド(例えば、1、2、3又は4個)、さらにより好ましくは3から5個のネオエピトープペプチド、例えば3、4又は5個のネオエピトープペプチドを含むことが特に好ましい。
【0040】
本発明の一実施形態では、新生抗原性構築物は、2個以上のネオエピトープペプチドを含む。例えば、新生抗原性構築物は、2から50個のネオエピトープペプチド(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、23、24、25、26、27、2
8、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50個のネオエピトープペプチド)を含み得る。好ましくは、新生抗原性構築物は、2から20個のネオエピトープペプチド(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のネオエピトープペプチド)を含み得、より好ましくは、新生抗原性構築物は、2から15個のネオエピトープペプチド(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のネオエピトープペプチド)を含み得、より好ましくは、2から10個のネオエピトープペプチド(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)を含み得、より好ましくは、2から8個のネオエピトープペプチド(例えば、2、3、4、5、6、7又は8個)を含み得、より好ましくは、2から6個のネオエピトープペプチド(例えば、2、3、4、5又は6個)を含み得、さらにより好ましくは、2から5個のネオエピトープペプチド(例えば、2、3、4又は5個)を含み得る。新生抗原性構築物は、2から5個のネオエピトープペプチド(例えば、2、3、4又は5個)を含み、さらにより好ましくは、3から5個のネオエピトープペプチド、例えば3、4又は5個のネオエピトープペプチドを含むことが特に好ましい。
【0041】
本発明の別の実施形態では、新生抗原性構築物は、3個以上のネオエピトープペプチドを含む。例えば、新生抗原性構築物は、3から50個のネオエピトープペプチド(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50個のネオエピトープペプチド)を含み得る。好ましくは、新生抗原性構築物は、3から20個のネオエピトープペプチド(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のネオエピトープペプチド)を含み得、より好ましくは、新生抗原性構築物は、3から15個のネオエピトープペプチド(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のネオエピトープペプチド)を含み得、より好ましくは、3から10個のネオエピトープペプチド(例えば、3、4、5、6、7、8、9又は10)を含み得、より好ましくは3から8個のネオエピトープペプチド(例えば、3、4、5、6、7又は8)を含み得、より好ましくは、3から6個のネオエピトープペプチド(例えば、3、4、5又は6個)を含み得、さらにより好ましくは、3から5個のネオエピトープペプチド(例えば、3、4又は5個)を含み得る。新生抗原性構築物は、3から5個のネオエピトープペプチド(例えば、3、4又は5個)、さらにより好ましくは、5個のネオエピトープペプチドを含むことが特に好ましい。
【0042】
本発明のさらなる実施形態では、新生抗原性構築物は、4個以上のネオエピトープペプチド(例えば、4個のネオエピトープペプチド)、5個以上のネオエピトープペプチド(例えば、5個のネオエピトープペプチド)、又は6個以上のネオエピトープペプチド(例えば、6個のネオエピトープペプチド)を含む。
【0043】
誤解を避けるために記すと、新生抗原性構築物が2個以上のネオエピトープペプチド(例えば、1個以上のネオエピトープペプチド、2個以上のネオエピトープペプチド、又は3個以上のネオエピトープペプチド)を含み得る実施形態では、各ネオエピトープペプチドは、本発明で使用するための本明細書に記載のネオエピトープペプチドである(すなわち、新生抗原性構築物の各ネオエピトープペプチドは、対象のがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドの一部のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有し、当該タンパク質又はペプチドの一部は、少なくとも1個の体細胞変異アミノ酸を有する)。そのような実施形態では、各ネオエピトープペプチドは、本明細書に記載のネオエピトープペプチドの任意の特性及び/又は特徴を独立して有
し得る。
【0044】
新生抗原性構築物が2個以上のネオエピトープペプチド(例えば、1個以上のネオエピトープペプチド、2個以上のネオエピトープペプチド、又は3個以上のネオエピトープペプチド)を含み得る実施形態では、各ネオエピトープペプチドは同じアミノ酸配列を有し得るか、又はネオエピトープペプチドは異なるアミノ酸配列を有し得る(すなわち、新生抗原性構築物の一部のネオエピトープペプチドが異なるアミノ酸配列を有し得るか、又は新生抗原性構築物のネオエピトープペプチドのすべてが異なるアミノ酸配列を有し得る)。
【0045】
新生抗原性構築物が2個以上のネオエピトープペプチドを含み得るある好ましい実施形態では、ネオエピトープペプチドの一部又は全部が異なるアミノ酸配列を有し、より好ましくは、ネオエピトープペプチドの全部が異なるアミノ酸配列を有する。新生抗原性構築物が2個以上のネオエピトープペプチドを含む別の実施形態では、各ネオエピトープペプチドは同じアミノ酸配列を有する。
【0046】
新生抗原性構築物が2個以上のネオエピトープペプチド(例えば、1個以上のネオエピトープペプチド、2個以上のネオエピトープペプチド、又は3個以上のネオエピトープペプチド)を含み得、ネオエピトープペプチドの一部が異なるアミノ酸配列を有するか、又はネオエピトープペプチドのすべてが異なるアミノ酸配列を有する実施形態では、アミノ酸配列は、以下の理由で異なる可能性がある。すなわち、
対象においてがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドが異なる。あるいは、
対象においてがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドは同じであるが、対象においてがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドのネオエピトープペプチドのアミノ酸配列が対応する部分が異なる。
【0047】
対象においてがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドは同じであるが、対象においてがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドのネオエピトープペプチドのアミノ酸配列が対応する部分が異なる場合、これらの部分は、以下の1以上の理由で異なる可能性がある。すなわち、
少なくとも1個の同じ体細胞変異アミノ酸を有する部分がより長い、
少なくとも1個の同じ体細胞変異アミノ酸を有する部分がより短い、及び/又は、
その部分が少なくとも1個の同じ体細胞変異アミノ酸を有するが、変異アミノ酸の位置がC末端及びN末端に関して異なる、
同じタンパク質又はペプチドの一部が少なくとも1個の異なる体細胞変異アミノ酸を有して異なる(例えば、タンパク質又はペプチドがフレームシフト突然変異を有し、異なる部分がタンパク質又はペプチドのフレームシフト突然変異配列の異なる部分である)。
【0048】
ある好ましい実施形態では、各ネオエピトープペプチドに関して、対象においてがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドが異なるため、そのアミノ酸配列が異なる。
【0049】
ある好ましい実施形態では、対象においてがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドが同じであるため、アミノ酸配列が異なるが、対象においてがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドのネオエピトープペプチドのアミノ酸配列が対応する部分は、それぞれがタンパク質又はペプチドのフレームシフト変異配列の異なる部分であるため、異
なる。
【0050】
新生抗原性構築物が2個以上のネオエピトープペプチド(例えば、2個以上のネオエピトープペプチド又は3個以上のネオエピトープペプチド)を含む本発明の実施形態では、ネオエピトープペプチドは、直接連結されてもよく、又はスペーサー部分を介して連結されてもよい。
【0051】
新生抗原性構築物が2個以上のネオエピトープペプチド(例えば、1個以上のネオエピトープペプチド、2個以上のネオエピトープペプチド、又は3個以上のネオエピトープペプチド)を含むある好ましい実施形態では、ネオエピトープペプチドは共有結合している。
【0052】
2個以上のネオエピトープペプチド(例えば、2個以上のネオエピトープペプチド、又は3個以上のネオエピトープペプチド)を含む本発明の新生抗原性構築物は、直接連結されたネオエピトープペプチド及び/又はスペーサー部分を介して連結されたネオエピトープを含み得る。2以上のスペーサー部分が新生抗原性構築物中に存在する場合、新生抗原性構築物のスペーサー部分は全て同じであってもよく、又は異なっていてもよい。
【0053】
新生抗原性構築物が2個以上のネオエピトープペプチド(例えば、1個以上のネオエピトープペプチド、2個以上のネオエピトープペプチド、又は3個以上のネオエピトープペプチド)を含むある好ましい実施形態では、ネオエピトープペプチドはそれぞれ、スペーサー部分を介して連結される。
【0054】
スペーサー部分は、アミノ酸の短い配列、例えば1から15個のアミノ酸、好ましくは1から10個のアミノ酸、より好ましくは1から5個のアミノ酸(例えば、1、2、3、4又は5個のアミノ酸)であり得る。スペーサー部分は、アミノ酸のランダムな組み合わせを含み得、又は、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリグリシン、ポリアラニン若しくはポリヒスチジンアミノ酸配列のような合成アミノ酸配列を含み得る。好ましくは、スペーサー部分は、モチーフVVR及び/又はGGSを含む。
【0055】
2個の連結したネオエピトープペプチドを含む新生抗原性構築物の構造は、以下の通りであり得る。
-[第1のネオエピトープペプチド]-[スペーサー部分]-[第2のネオエピトープペプチド]
【0056】
3個の連結されたネオエピトープを含む新生抗原性構築物の構造は、以下の通りであり得る。
-[第1のネオエピトープペプチド]-[スペーサー部分]-[第2のネオエピトープペプチド]-[スペーサー部分]-[第3のネオエピトープペプチド]
【0057】
4個の連結されたネオエピトープを含む新生抗原性構築物の構造は、以下の通りであり得る。
-[第1のネオエピトープペプチド]-[スペーサー部分]-[第2のネオエピトープペプチド]-[スペーサー部分]-[第3のネオエピトープペプチド]-[スペーサー部分]-[第4のネオエピトープペプチド]
【0058】
5個の連結されたネオエピトープを含む新生抗原性構築物の構造は、以下の通りであり得る。
-[第1のネオエピトープペプチド]-[スペーサー部分]-[第2のネオエピトープペプチド]-[スペーサー部分]-[第3のネオエピトープペプチド]-[スペーサー部分
]-[第4のネオエピトープペプチド]-[スペーサー部分]-[第5のネオエピトープペプチド]
【0059】
n個の連結したネオエピトープペプチドを含む新生抗原性構築物の構造は、以下の通りであり得る。
-[第1のネオエピトープペプチド]-[スペーサー部分]-[第2のネオエピトープペプチド]-[スペーサー部分]-[第3のネオエピトープペプチド].....-[スペーサー部分]-[第nのネオエピトープペプチド]
【0060】
新生抗原性構築物が2個以上のネオエピトープペプチドを含む場合、新生抗原性構築物は、ネオエピトープペプチドと、任意選択的に任意のスペーサー部分とからなり得る。あるいは、新生抗原性構築物が2個以上のネオエピトープペプチドを含む場合、新生抗原性構築物は、ネオエピトープペプチドと、任意選択で、任意のスペーサー部分及び追加的なアミノ酸配列とを含み得る。そのような追加的なアミノ酸配列は、例えば、アミノ酸のランダムな組み合わせ(特に、高い割合のヒスチジン及び/又はシステイン残基を有するランダムな配列)、又は、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリグリシン、ポリアラニン、ポリヒスチジン若しくはポリシステインアミノ酸配列(及び、好ましくは、ポリヒスチジン若しくはポリシステイン)などの合成アミノ酸配列であり得る。そのような追加的なアミノ酸配列は、例えば、貪食可能な粒子のコアと、それに強固に会合した新生抗原性構築物のネオエピトープペプチドとの間のリンカー及び/又はスペーサーとして使用され得、又は、新生抗原性構築物を貪食可能な粒子に強固に会合するために使用され得る。例えば、金属キレートは、ヒスチジン又はシステインを含有するタンパク質及びペプチドに大きな強度で結合することができる。したがって、金属キレートを有するコアは、ポリヒスチジン合成アミノ酸配列若しくはポリシステイン合成アミノ酸配列、並びに/又は、高い割合のヒスチジン残基及び/若しくはシステイン残基を有するアミノ酸のランダムな組み合わせを追加的なアミノ酸配列として含む新生抗原性構築物に非共有結合することができる。本明細書に記載の新生抗原構築物はまた、アルブミン結合ドメイン(ABD)を含み得る。
【0061】
本発明の実施形態では、新生抗原性構築物が1個のネオエピトープペプチドを含む場合、新生抗原性構築物はネオエピトープペプチドからなり得る。あるいは、新生抗原性構築物が1個のネオエピトープペプチドを含む場合、新生抗原性構築物は、ネオエピトープペプチド及び追加的なアミノ酸配列を含み得る。そのような追加的なアミノ酸配列は、例えば、アミノ酸のランダムな組み合わせ(特に、高い割合のヒスチジン及び/又はシステイン残基を有するランダムな配列)、又は、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリグリシン、ポリアラニン、ポリヒスチジン若しくはポリシステインアミノ酸配列(及び、好ましくは、ポリヒスチジン若しくはポリシステイン)などの合成アミノ酸配列であり得る。そのような追加的なアミノ酸配列は、例えば、貪食可能な粒子のコアと、それに強固に会合した新生抗原性構築物のネオエピトープペプチドとの間のリンカー及び/又はスペーサーとして使用され得、又は、新生抗原性構築物を貪食可能な粒子に強固に会合するために使用され得る。例えば、金属キレートは、ヒスチジン又はシステインを含有するタンパク質及びペプチドに大きな強度で結合することができる。したがって、金属キレートを有するコアは、ポリヒスチジン合成アミノ酸配列若しくはポリシステイン合成アミノ酸配列、並びに/又は、高い割合のヒスチジン残基及び/若しくはシステイン残基を有するアミノ酸のランダムな組み合わせを追加的なアミノ酸配列として含む新生抗原性構築物に非共有結合することができる。
【0062】
本発明で使用するための新生抗原性構築物の長さは、例えば、新生抗原性構築物中のネオエピトープペプチドの数及び新生抗原性構築物中の各ネオエピトープペプチドの長さに依存し、並びに、2個以上のネオエピトープペプチドが存在する場合に存在し得る任意の
スペーサー部分の長さ及び存在し得る任意の追加的なアミノ酸配列の長さに依存する。ある好ましい実施形態では、本発明の新生抗原性構築物は、3から300アミノ酸長、好ましくは10から250アミノ酸長、より好ましくは10から200アミノ酸長、より好ましくは10から180アミノ酸長であるアミノ酸配列を有し得る。例えば、本発明の新生抗原性構築物は、11から150アミノ酸長、11から140アミノ酸長、33から120アミノ酸長、42から140アミノ酸長、11から112アミノ酸長、33から112アミノ酸長、2,42から112アミノ酸長、11から100アミノ酸長、33から100アミノ酸長、42から100アミノ酸長、11から84アミノ酸長、33から84アミノ酸長、42から84アミノ酸長、11から60アミノ酸長、33から60アミノ酸長、又は42から60アミノ酸長、11から50アミノ酸長、33から50アミノ酸長、又は42から50アミノ酸長を含み得る。
【0063】
本発明で使用するための新生抗原性構築物は、組換えにより(例えば、大腸菌、哺乳動物細胞又は昆虫細胞において)、合成的に(例えば、溶液又は固相ペプチド合成などの標準的な有機化学技術を使用して)調製することができ、又は、動物源(例えば、ヒト源)に由来する天然タンパク質若しくはペプチドから単離されたポリペプチドから調製することができる。好ましくは、本発明で使用するための新生抗原性構築物は、組換えにより調製される(例えば、大腸菌、哺乳動物細胞又は昆虫細胞において)。より好ましくは、本発明で使用するための新生抗原性構築物は、大腸菌で組換えにより調製される。
【0064】
貪食可能な粒子及び貪食可能な粒子のコア
本発明の貪食可能な粒子は、免疫系の細胞によって貪食され得る粒子である。しかしながら、本発明の貪食可能な粒子は、異なる経路(例えば、飲作用、クラスリン媒介エンドサイトーシス及び非クラスリン媒介エンドサイトーシス)を介して免疫系の細胞によって取り込まれ得ることを理解されたい。好ましくは、貪食可能な粒子は、APC、例えば、単球、樹状細胞、B細胞若しくはマクロファージ、又は、抗原などの細胞外分子を貪食するか取り込んでMHCクラスII及び/若しくはMHCクラスI分子上の抗原由来ペプチドをCD4+T細胞及び/若しくはCD8+T細胞に提示する他の細胞によって貪食可能である。
【0065】
貪食経路によってAPCに取り込まれる抗原は不均一に分解され、その後、APCがより多様な抗原由来ペプチドを提示する。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明で使用するための貪食可能な粒子は、新生抗原性構築物がAPCによって貪食されることで、抗がんT細胞の活性化及び増殖をさらに改善すると考えられており、その結果、より多様な新生抗原性構築物由来ペプチドがAPCによって提示され、それゆえに、抗がんT細胞のさらなる活性化及び増殖をもたらす。
【0066】
APCなどの免疫系の細胞によって貪食される粒子の場合、粒子は、貪食を可能にするのに適したサイズの範囲内である必要がある。例えば、小さすぎる粒子は、特定のAPCによる食作用を誘発しない場合があり、また、大きすぎる粒子は、特定のAPCによる食作用が可能でない場合がある。完全な食作用は、APCによる良好な抗原分解及びその後のMHCクラスII経路を介したT細胞への良好な提示をもたらす。最適なサイズは、本発明者らによって研究されている(実施例3a及び3b、並びに図1図5A~C及び図6A~Eを参照されたい)。
【0067】
本発明の貪食可能な粒子は、コアと、コアに強固に会合した新生抗原性構築物とを含む。したがって、コアのサイズは、コアが新生抗原性構築物に強固に会合している場合に、コアとその強固に会合した新生抗原性構築物が免疫系の細胞、特にAPCによって貪食可能であるような範囲内である必要がある。コアのサイズは、コアが新生抗原性構築物と強固に会合している場合に、コアとその強固に会合した新生抗原性構築物が、2個以上の貪
食可能な粒子が食作用によって同じAPCに入ることができるほどに十分に小さくなるような範囲内であることが好ましい。APC中に2個以上の貪食された粒子を有することは、MHCクラスII経路を介した細胞表面上のネオエピトープの提示を最大化する。さらに、このことは、異なる新生抗原性構築物(特に、異なるネオエピトープペプチドを含む新生抗原性構築物)を有する粒子がAPCに入ることを可能にし、これは、APCが、異なるファゴソームにおいて、いくつかの粒子からの異なるネオエピトープを同時に提示し得ることを意味する。
【0068】
したがって、好ましい一実施形態では、コアは、6μm未満、5.6μm未満、4μm未満、3μm未満、2.5μm未満、2μm未満又は1.5μm未満の最大寸法を有する。より好ましくは、コアは、1.5μm未満の最大寸法を有する。別の好ましい実施形態では、コアは、0.001μm超、0.005μm超、0.01μm超、0.05μm超、0.1μm超、0.2μm超、又は0.5μm超の最大寸法を有してもよい。より好ましくは、コアは、0.5μmを超える最大寸法を有する。
【0069】
特に好ましい一実施形態では、コアは、0.1から6μm、例えば0.1から5.6μm、0.2から5.6μm、0.5から5.6μm、0.1から4μm、又は0.5から4μmの範囲の最大寸法を有する。より好ましくは、コアは、0.1から3μm、例えば0.5から3μm、0.2から2.5μm、0.5から2.5μm、0.2から2μm、0.5から2μm又は1から2μmの範囲内の最大寸法を有する。さらにより好ましくは、コアは、約1μm、約1.5μm又は約2μmの最大寸法を有する。本発明の非常に好ましい実施形態では、コアは、約1μmである。
【0070】
本発明の貪食可能な粒子のコアは、任意の三次元形状、例えば、任意の規則的又は不規則な三次元形状の形態をとる。好ましくは、貪食可能な粒子は実質的に球形であり、この場合、貪食可能な粒子の寸法は直径を指す。
【0071】
貪食可能な粒子のコアは、ポリマー、ガラス、セラミック材料を含み得る(例えば、コアは、ポリマー粒子、ガラス粒子又はセラミック粒子であってもよい)。コアの材料は、生分解性及び/又は生体適合性材料であってもよい(例えば、粒子は、生分解性及び/又は生体適合性粒子であってもよい)。
【0072】
好ましくは、コアは、ポリマーを含む(例えば、コアはポリマー粒子である)。コアがポリマーを含む場合、それは、合成芳香族ポリマー(ポリスチレンなど、例えば、コアはポリスチレン粒子である)、合成非芳香族ポリマー(ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)及びポリカプロラクトンなど、例えば、コアはポリエチレン粒子、ポリ乳酸粒子、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)粒子又はポリカプロラクトン粒子である)、天然ポリマー(コラーゲン、ゼラチン、タンパク質など(例えば、ウイルス様粒子)、脂質又はアルブミンなど、例えば、コアはコラーゲン粒子、ゼラチン粒子又はアルブミン粒子である)、ポリマー炭水化物分子(多糖など、例えば、アガロース、アルギネート、キトサン又はザイモサンなど、例えば、コアはアガロース粒子、アルギネート粒子、キトサン粒子又はザイモサン粒子である)からなる群から選択され得る。
【0073】
好ましい一実施形態では、コアは、ポリスチレン又はポリエチレンを含み、より好ましくはポリスチレンを含む(例えば、コアは、ポリスチレン粒子である)。このようなポリマーは、生体適合性である。
【0074】
本発明者らは、ポリスチレン粒子が非毒性であり、様々なサイズ及び様々な官能化可能な形態で広く市販されていることから、ポリスチレン粒子が本発明の貪食可能な粒子の特に有用なコアであることを見出した。さらに、本発明者らは、ポリスチレン粒子などのポ
リスチレンコアを含む貪食可能な粒子が、対象へ投与する粒子を調製するための厳格な滅菌手順に耐えることができることを見出した。そのような滅菌手順は、酸又はアルカリ溶液による繰り返しの洗浄及び/又は高温への曝露を含み得る。
【0075】
本発明の非常に好ましい一実施形態では、コアは、6μm未満、好ましくは約1μmから約3μm、より好ましくは約1μmの最大寸法を有するポリスチレン粒子である。約1μmから約3μm、特に約1μmの寸法を有するポリスチレン粒子コアを含む貪食可能な粒子は、APCによって効率的に貪食され、コア又は新生抗原性構築物に会合し得る、病原体(例えば、細菌、真菌及びウイルス)並びに発熱物質(例えば、エンドトキシン)などの抗原性汚染物質を除去するための厳格な滅菌手順に耐えることもできる。
【0076】
本発明の一実施形態では、コアは、磁気特性を有する。例えば、コアは、常磁性又は超常磁性を有し得る。好ましくは、コアは超常磁性特性を有する。
【0077】
本発明での使用に適した超常磁性コアの例は、Dynabeads(商標)(Invitrogen)である。Dynabeads(商標)は、様々な官能化可能な形態、例えばDynabeads M-270カルボン酸、Dynabeads M-270アミン及びDynabeads MyOneカルボン酸で入手可能である。Dynabeads(商標)は、単サイズの超常磁性粒子であり、一様に分布した磁性材料を有する高度に架橋したポリスチレンから構成される。磁性材料は、酸化鉄であってもよい。磁性コア、特に超常磁性コアの他の例としては、Encapsulated Carboxylated Estapo(登録商標)SuperParamagnetic Microspheres(メルク・シミーS.A.S.)及びSera-Mag SpeedBeads(親水性)カルボキシレート修飾磁性粒子(GE Healthcare UK Limited)が挙げられる。Encapsulated Carboxylated Estapor(登録商標)SuperParamagnetic Microspheresは、酸化鉄コアをカプセル化するコア-シェル構造で作られている。
【0078】
本発明の貪食可能な粒子は、コアに強固に会合した新生抗原性構築物を含む。新生抗原性構築物は、様々な手段を使用してコアに強固に会合することができる。例えば、新生抗原性構築物は、共有結合、例えば、新生抗原性構築物のアミン基又はカルボン酸基とコアの表面のカルボン酸基又はアミン基との間のアミド結合によってコアに結合され得る。あるいは、新生抗原性構築物は、金属キレートを介してコアに連結されてもよい。例えば、イミノ二酢酸などの金属キレート配位子で連結されたコアは、Cu2+、Zn2+、Ca2+、Co2+又はFe3+などの金属イオンに結合することができる。次いで、これらの金属キレートは、例えば、ヒスチジン又はシステインを含むタンパク質及びペプチドに大きな強度で結合することができる。その結果、金属キレートを有するコアは、新生抗原性構築物に非共有結合的に結合することができる。好ましくは、新生抗原性構築物は、コアに共有結合的に付着している。新生抗原性構築物をコアに会合させる一例を実施例1に示す。
【0079】
本発明の貪食可能な粒子は、コアと、コアに強固に会合した新生抗原性構築物とを含む。本発明の貪食可能な粒子は、コアに会合した1個以上の新生抗原性構築物を含み得る。例えば、本発明の貪食可能な粒子は、1から300万個の新生抗原性構築物、好ましくは1から200万個の新生抗原性構築物、より好ましくは1から100万個の新生抗原性構築物、例えば1から800,000個、1から500,000個、1から100,000個、1から10,000個、1から1000個、1から100個又は1から10個の新生抗原性構築物を含み得、あるいは、例えば、10から100万個、100から100万個、1000から100万個、10,000から100万個、100,000から100万個、又は500,000から100万個の新生抗原性構築物を含み得る。好ましくは、本
発明の貪食可能な粒子は、500,000から100万個の新生抗原性構築物を含み得る。
【0080】
好ましい実施形態では、APCへの新生抗原性構築物の送達を最大化するために(その後、新生抗原性構築物は貪食可能な粒子から切断され、APCによって処理され得、その結果、APCの表面上に多種多様なネオエピトープ由来ペプチドを提示する)、本発明の貪食可能な粒子は、コアに会合する2個以上(すなわち、2個以上、例えば、2から300万個)の新生抗原性構築物を含み得る。例えば、本発明の貪食可能な粒子は、コアに強固に会合した2から100万個の新生抗原性構築物(例えば、コアに強固に会合した2から800,000個、2から500,000個、2から100,000個、2から10,000個、2から1000個、2から100個又は2から10個の新生抗原性構築物)を含み得る。好ましくは、本発明の貪食可能な粒子は、コアに強固に会合した10から100万個の新生抗原性構築物(例えば、コアに強固に会合した10から800,000個、10から500,000個、10から100,000個、10から10,000個、10から1000個、又は10から100個の新生抗原性構築物)など、コアに強固に会合した10個以上の新生抗原性構築物を含む。より好ましくは、本発明の貪食可能な粒子は、コアに強固に会合した100から100万個の新生抗原性構築物(例えば、コアに強固に会合した100から800,000個、100から500,000個、100から100,000個、100から10,000個、又は100から1000個の新生抗原性構築物)など、コアに強固に会合した100個以上の新生抗原性構築物を含む。ある実施形態では、本発明の貪食可能な粒子は、コアに強固に会合した1000から100万個の新生抗原性構築物(例えば、コアに密に会合した1000から800,000個、1000から500,000個、1000から100,000個、又は1000から10,000個の新生抗原性構築物)など、コアに強固に会合した1000個以上の遺伝子構築物を含む。ある実施形態では、本発明の貪食可能な粒子は、コアに強固に会合した10,000個から100万個の新生抗原性構築物(例えば、コアに密に会合した10,000から800,000個、10,000から500,000個、又は10,000から100,000個の新生抗原性構築物)など、コアに強固に会合した10,000個以上の新生抗原性構築物を含む。ある実施形態では、本発明の貪食可能な粒子は、コアに強固に会合した100,000から100万個の新生抗原性構築物(例えば、コアに強固に会合した100,000から800,000個又は100,000から500,000個の新生抗原性構築物)など、コアに強固に会合した100,000個以上の新生抗原性構築物を含む。非常に好ましい一実施形態では、本発明の貪食可能な粒子は、コアに強固に会合した500,000から100万個の新生抗原性構築物、又はコアに強固に会合した500,000から200万個の新生抗原性構築物、又はコアに強固に会合した500,000から300万個の新生抗原性構築物など、コアに強固に会合した500,000個以上の新生抗原性構築物を含む。別の実施形態では、本発明の貪食可能な粒子は、コアに強固に会合した100万個を超える新生抗原性構築物、例えば、コアに強固に会合した100万から300万個又は100万から200万個の新生抗原性構築物を含み得る。
【0081】
本発明の実施形態では、本発明の貪食可能な粒子が、コアに会合した2個以上の新生抗原性構築物(例えば、コアに会合した2個以上、10個以上、100個以上、1000個以上、10,000個以上、100,000個以上又は500,000個以上の新生抗原性構築物)を含み得る場合、コアに会合した新生抗原性構築物は同じであってもよく、又は異なっていてもよい(すなわち、コアに会合した新生抗原性構築物の一部又は全部が異なっていてもよい)。それらは、異なるネオエピトープペプチド配列を含むことによって異なり得、又はネオエピトープペプチドの異なる組み合わせを含むことによって異なり得る。代替的又は追加的に、それらは、1個以上の異なるスペーサー部分又は追加的なアミノ酸配列を含むことによって異なり得る(そのような部分及び配列が存在する場合には)。異なる新生抗原性構築物は、「異なるタイプ」の新生抗原性構築物と呼ばれることがあ
る。同一の新生抗原性構築物は、「同じタイプ」の新生抗原性構築物と呼ばれることがある。がん細胞は、しばしば、がん細胞によって発現される複数のタンパク質又はペプチドにおいて複数のアミノ酸変異を誘導する。本発明者らは、2個以上の異なるタイプの新生抗原性構築物を含む貪食可能な粒子が、多種多様なネオエピトープをAPCに送達し、その結果、APCによって提示されるネオエピトープ由来ペプチドの多様性を増加し得ることを見出した。本発明者らは、このことが、がん細胞を標的化することができる抗がんT細胞の活性化及び増殖を有意に改善することを見出した。
【0082】
本発明のコアに会合した2個以上の新生抗原性構築物(例えば、コアに会合した2個以上、10個以上、100個以上、1000個以上、10,000個以上、100,000個以上又は500,000個以上の新生抗原性構築物)を含む貪食可能な粒子は、コアに強固に会合した1種類の新生抗原性構築物を含むことができる(すなわち、コアに強固に会合したすべての新生抗原性構築物は同じである)。本発明の一実施形態では、貪食可能な粒子は、コアに強固に会合した100,000から100万個の新生抗原性構築物を含み、100,000から100万個の新生抗原性構築物は同じ種類の新生抗原性構築物である。
【0083】
本発明の代替的な実施形態では、コアに会合した2個以上の新生抗原性構築物(例えば、コアに会合した2個以上、10個以上、100個以上、1000個以上、10,000個以上、100,000個以上又は500,000個以上の新生抗原性構築物)を含む貪食可能な粒子は、コアに強固に会合した2つの異なる新生抗原性構築物のタイプを含み得る。本発明の別の実施形態では、コアに会合した11個以上の新生抗原性構築物(例えば、コアに会合した100個以上、1000個以上、10,000個以上、100,000個以上又は500,000個以上の新生抗原性構築物)を含む貪食可能な粒子は、コアに強固に会合した2種類以上の異なる新生抗原性構築物のタイプを含み得る。例えば、そのような貪食可能な粒子は、コアに強固に会合した2から10種類(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10種類)の異なる新生抗原性構築物のタイプを含み得る。好ましくは、そのような貪食可能な粒子は、2から6種類の異なる新生抗原性構築物のタイプ(例えば、2、3、4、5又は6種類)を含み得る。本発明の一実施形態では、貪食可能な粒子は、コアに強固に会合した100,000から100万個の新生抗原性構築物を含み、100,000から100万個の新生抗原性構築物は、2種類以上の異なる新生抗原性構築物タイプを含む。例えば、2から6種類の異なる新生抗原性構築物のタイプ(例えば、2、3、4、5又は6種類)。
【0084】
本発明の一実施形態では、貪食可能な粒子は、コアに強固に会合したアジュバントをさらに含む。本明細書で使用される「アジュバント」という用語は、抗原に対する免疫応答を増強する任意の物質として理解されるものである。アジュバントの特定の例としては、ポリイノシン:ポリシチジル酸などのdsRNA類似体、不完全フロイントアジュバント、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-4、IL-17及びIL-15)、CD40、キーホールリンペットヘモシアニン、Toll様受容体、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、サポニン、コロイドミョウバン、及びリポ多糖の脂質Aの類似体が挙げられる。アジュバントは、本明細書に記載された新生抗原性構築物をコアに強固に会合させるための方法と同じ方法でコアに強固に会合し得る。
【0085】
貪食可能な粒子の滅菌
本発明者らは、有利なことに、コアと、コアに強固に会合した新生抗原性構築物とを含む貪食可能な粒子が、対象への投与前に効率的に洗浄及び滅菌され得ることを見出した。これは、洗浄及び滅菌された 貪食可能な粒子が含む病原体(例えば、細菌、真菌及びウイルス)並びにエンドトキシン(例えば、リポ多糖)及びその他の抗原性汚染物質など汚染物質がより低いレベルであることから、特に有利である。そのような汚染物質は、対象
において非特異的免疫応答を誘発する可能性がある。したがって、投与前の本発明の貪食可能な粒子の洗浄及び滅菌は、その安全性及び有効性を改善する。
【0086】
本発明の一実施形態では、貪食可能な粒子は、磁性コアを含み、例えば常磁性コア又は超常磁性コアを含む。磁性コアを含む貪食可能な粒子は、磁石によって収集することができ、及び/又は、定位置に保持することができる。他の手段によって、例えば、貪食可能な粒子(常磁性であろうとなかろうと)をカラムに保持することによって、又は、重力若しくは遠心分離により粒子を沈降させることによって洗浄を行うことも可能である。
【0087】
洗浄の特定の方法は、本発明の文脈において重要ではない。例えば、洗浄は、貪食可能な粒子を高pH、低pH、高温、滅菌/変性剤、又はそれらの組み合わせにさらすことを含み得る。
【0088】
洗浄は、貪食可能な粒子をアルカリ、好ましくは強アルカリ、例えば、少なくとも0.1M、0.5M、1M、2M、3M、4M、5M、6M、7M又は8Mのアルカリにさらすことを含み得る。好ましくは、洗浄は、貪食可能な粒子を少なくとも1Mの水酸化ナトリウム(NaOH)、例えば、少なくとも2MのNaOHにさらすことを含み得る。好ましくは、洗浄は、貪食可能な粒子を少なくとも13.0、より好ましくは少なくとも14.0、最も好ましくは少なくとも14.3の高pHにさらすことを含む。使用し得る他のアルカリとしては、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化ストロンチウム(Sr(OH))、及び水酸化バリウム(Ba(OH))が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、洗浄は、貪食可能な粒子を少なくとも13.0、より好ましくは少なくとも14.0、最も好ましくは少なくとも14.3の高pHにさらすことを含む。
【0089】
洗浄はまた、貪食可能な粒子を酸、好ましくは強酸、例えば、少なくとも0.1M、0.5M、1M、2M、3M、4M、5M、6M、7M又は8Mの酸にさらすことを含み得る。好ましくは、洗浄は、貪食可能な粒子を少なくとも1Mの塩酸(HCl)、例えば、少なくとも2MのHClにさらすことを含み得る。使用し得る他の酸としては、ヨウ化水素酸(HI)、臭化水素酸(HBr)、過塩素酸(HClO)、硝酸(HNO)及び硫酸(HSO)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
洗浄はまた、貪食可能な粒子をさらに尿素及び/又はグアニジン-HClなどの滅菌/変性剤にさらすことを含み得る。
【0091】
好ましくは、洗浄により、貪食可能な粒子が無菌及び/又は滅菌される。より好ましくは、洗浄により、貪食可能な粒子が滅菌される。本明細書で定義される無菌は、疾患を引き起こす微生物及びウイルスを含まない。滅菌は、本明細書において、すべての生物学的汚染物質を含まないと定義される。
【0092】
好ましくは、洗浄はまた、貪食可能な粒子から発熱物質(例えばエンドトキシン)などの抗原性汚染物質を除去する。好ましくは、洗浄は、100pg/ml未満、好ましくは50pg/ml未満、より好ましくは25pg/ml未満、最も好ましくは10pg/ml未満のエンドトキシン汚染物質を有する貪食可能な粒子をもたらす。
【0093】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、貪食可能な粒子は滅菌され、100pg/ml未満のエンドトキシン汚染物質を有する。
【0094】
洗浄の注目すべき利点は、貪食可能な粒子が単一工程で滅菌及び変性されるように条件
を選択できることである。特に、高pH洗浄(例えば、pH>14)は、貪食可能な粒子を簡便に、同時にかつ迅速に滅菌し、十分な量のエンドトキシン及び他の抗原性汚染物質を除去することができる。
【0095】
洗浄は、1回の洗浄又は数回の反復洗浄、例えば、2、3、4又は5回の洗浄を含み得る。加えて、又は代替的に、貪食可能な粒子は、高温、例えば、少なくとも90℃、好ましくは少なくとも92℃、より好ましくは少なくとも95℃、例えば、少なくとも100℃又は少なくとも110℃にさらしてもよい。
【0096】
本発明者らは、有利なことに、新生抗原性構築物が共有結合によってコアに会合している場合には、貪食可能な粒子は、新生抗原性構築物又はコアに結合し得る発熱物質(例えば、エンドトキシン)などの抗原性汚染物質の量を減少させる厳格な滅菌及び洗浄手順に耐え得ることを見出した。これは、本明細書に記載の貪食可能な粒子ががんの治療又は予防における使用に特に適していることを意味する。
【0097】
注射用組成物
本発明は、本発明の貪食可能な粒子を含む注射用組成物を提供する。
【0098】
本明細書に記載の貪食可能な粒子を含む本発明の注射用組成物は、1個以上の貪食可能な粒子を含み得る。好ましくは、それは2個以上の粒子を含む。そのような実施形態では、それらの貪食可能な粒子は同じであってもよく、又は異なっていてもよい。貪食可能な粒子は、コアによって異なっていてもよく、及び/又はコアに強固に会合した異なる種類の新生抗原性構築物を含むことによって異なっていてもよい。好ましくは、本発明の貪食可能な粒子を含む組成物であって、中の貪食可能な粒子が異なる組成物では、それらの貪食可能な粒子は、同じコアを有し、当該粒子がコアに強固に会合した異なる種類の新生抗原性構築物を含むために異なる。
【0099】
異なるコア(例えば、異なるサイズを有する、及び/又は本明細書に記載の異なる材料/ポリマーを含むコア)を有する貪食可能な粒子は、本明細書では 「異なるセット」 の貪食可能な粒子と呼ぶ。同じコア(例えば、同じサイズを有し、同じ材料/ポリマーを含むコア)を有する貪食可能な粒子は、本明細書では「同じセット」の貪食可能な粒子と呼ぶ。
【0100】
同じコアを有する貪食可能な粒子である(すなわち、それらは同じ貪食可能な粒子セットである)が、コアに強固に会合した異なる種類の新生抗原性構築物を有するために異なる貪食可能な粒子は、本明細書では「異なる群」の貪食可能な粒子と呼ぶ。同じコアと、そのコアに強固に会合した同じ種類の新生抗原性構築物とを有する貪食可能な粒子は、本明細書では「同じ群」の貪食可能な粒子と呼ぶ。
【0101】
一実施形態では、本発明の注射用組成物は、1つの貪食可能な粒子群(すなわち、組成物中の貪食可能な粒子のすべてが同じである)からなる1つの貪食可能な粒子セットを含む。あるいは、本発明の注射用組成物は、2以上の異なる貪食可能な粒子群(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、40又は50、又はそれ以上の貪食可能な粒子群)を含む1つの貪食可能な粒子セットを含み得る。一実施形態では、本発明の注射用組成物は、2から50の異なる貪食可能な粒子群(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、18、20、25、30、40又は50の貪食可能な粒子群)を含む1つの貪食可能な粒子セットを含み得る。一実施形態では、本発明の注射用組成物は、2から30の異なる貪食可能な粒子群(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、18、20、25又は30の貪食可能な粒子群)を含む1つの貪食可能な粒子セットを含み得る。別の実施形態では、本発明の注
射用組成物は、2から20個の異なる貪食可能な粒子群(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、18又は20個の貪食可能な粒子群)を含む1個の貪食可能な粒子セットを含み得る。別の実施形態では、本発明の注射用組成物は、2から15の異なる貪食可能な粒子群(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12又は15の貪食可能な粒子群)を含む1つの貪食可能な粒子セットを含み得る。別の実施形態では、本発明の注射用組成物は、2から10の異なる貪食可能な粒子群(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の貪食可能な粒子群)を含む1つの貪食可能な粒子セットを含み得る。別の実施形態では、本発明の注射用組成物は、2から8の異なる貪食可能な粒子群(例えば、2、3、4、5、6、7又は8の貪食可能な粒子群)を含む1つの貪食可能な粒子セットを含み得る。別の実施形態では、本発明の注射用組成物は、2から6の異なる貪食可能な粒子群(例えば、2、3、4、5又は6つの貪食可能な粒子群)を含む1つの貪食可能な粒子セットを含み得る。
【0102】
一実施形態では、本発明の注射用組成物は、2以上の異なる貪食可能な粒子セットを含む(すなわち、各セットは異なるコアを有し、例えば、各セットは異なるサイズのコアを有し、及び/又は本明細書に記載の異なる材料を含む)ことができ、各セットは1つの貪食可能な粒子群からなることができる。例えば、本発明の注射用組成物は、2、3、4又は5の貪食可能な粒子セットを含むことができ、各セットは、1つの貪食可能な粒子群からなることができる。好ましくは、本発明の注射用組成物は、2又は3の貪食可能な粒子セットを含むことができ、各セットは1つの貪食可能な粒子群からなる。
【0103】
別の実施形態では、本発明の注射用組成物は、2以上の異なる貪食可能な粒子セット(例えば、2、3又は4の貪食可能な粒子セット)を含むことができ、各セットは、2以上の異なる貪食可能な粒子群(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25又は30の貪食可能な粒子群)を含むことができる。一実施形態では、本発明の注射用組成物は、2以上の異なる貪食可能な粒子セット(例えば、2、3又は4の貪食可能な粒子セット)を含むことができ、各セットは、2から30の異なる貪食可能な粒子群(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、18、20、25又は30の貪食可能な粒子群)を含むことができる。別の実施形態では、本発明の注射用組成物は、2以上の異なる貪食可能な粒子セット(例えば、2、3又は4の貪食可能な粒子セット)を含むことができ、各セットは、2から20の異なる貪食可能な粒子群(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、18又は20の貪食可能な粒子群)を含むことができる。別の実施形態では、本発明の注射用組成物は、2以上の異なる貪食可能な粒子セット(例えば、2、3又は4の貪食可能な粒子セット)を含むことができ、各セットは、2から15の異なる貪食可能な粒子群(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12又は15の貪食可能な粒子群)を含むことができる。別の実施形態では、本発明の注射用組成物は、2以上の異なる貪食可能な粒子セット(例えば、2、3又は4の貪食可能な粒子セット)を含むことができ、各セットは、2から10の異なる貪食可能な粒子群(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の貪食可能な粒子群)を含むことができる。別の実施形態では、本発明の注射用組成物は、2以上の異なる貪食可能な粒子セット(例えば、2、3又は4の貪食可能な粒子セット)を含むことができ、各セットは、2から8の異なる貪食可能な粒子群(例えば、2、3、4、5、6、7又は8の貪食可能な粒子群)を含むことができる。別の実施形態では、本発明の注射用組成物は、2以上の異なる貪食可能な粒子セット(例えば、2、3又は4の貪食可能な粒子セット)を含むことができ、各セットは、2から6の異なる貪食可能な粒子群(例えば、2、3、4、5又は6の貪食可能な粒子群)を含むことができる。
【0104】
誤解を避けるために記すと、貪食可能な粒子の2以上のグループ及び貪食可能な粒子の2以上のセットを有する実施形態では、貪食可能な粒子セットの各グループは、別の貪食可能な粒子セットの各グループから独立している。したがって、ある貪食可能な粒子セッ
トからの群は、別の貪食可能な粒子セットからの群と同じ新生抗原性構築物タイプを有することができる。あるいは、1つの貪食可能な粒子セットからの群は、別の貪食可能な粒子セットからの群のものとは異なるタイプの新生抗原性構築物を有することができる。
【0105】
がん細胞は、しばしば、がん細胞によって発現される複数のタンパク質又はペプチドにおいて複数のアミノ酸変異を誘導する。2以上の貪食可能な粒子群を含む注射用組成物の投与は、多種多様なネオエピトープをAPCに送達することを可能にし、その結果、APCによって提示されるネオエピトープ由来ペプチドの多様性を増加させる。APCによって提示されるネオエピトープ由来ペプチドの多様性の増加は、抗がんT細胞の活性化及び増殖を有意に改善することができる。
【0106】
本発明による有用な薬学的に許容され得る注射用製剤としては、非経口投与(皮下、皮内、筋肉内、静脈内(ボーラス又は注入)、関節内、及びリンパ内を含む)に適したものが挙げられる。最も適切な経路は、例えば、レシピエントの状態及び疾患に依存し得る。好ましくは、医薬組成物は、静脈内及び/又はリンパ内投与に適している。このように、本発明は、本発明の貪食可能な粒子を含む注射用組成物を提供する。
【0107】
好ましくは、本発明の注射可能な組成物は、注射可能な医薬組成物である。本発明の注射用組成物は、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、静脈内投与(ボーラス又は注入)、腫瘍内投与、関節内投与及びリンパ内投与に適した組成物を含むが、最も適した経路は、例えば、対象に存在するがん又は腫瘍の種類に依存し得る。好ましくは、注射用組成物は、静脈内投与及び/又はリンパ内投与に適している。
【0108】
本発明の薬学的に許容され得る注射用製剤及び本発明の注射用組成物は、水性及び非水性滅菌注射溶液(例えば、PBSなどの生理食塩水)を含み得、抗酸化剤、緩衝剤(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、TRIS及びTEA)、静菌剤、界面活性剤(例えば、ポロキサマー、ポリソルベート、CHAPS及びTiton X-100)、及び当該組成物を対象となるレシピエントの血液と等張にする溶質、並びに懸濁化剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁液を含有し得る。組成物は、ユニットドーズ型容器又はマルチドーズ型容器、例えば、密封されたアンプル及びバイアルで提供されてもよく、また、使用直前に、滅菌液体担体、例えば、生理食塩水又は注射用蒸留水の添加のみを必要とする、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵されてもよい。非経口投与のための即時注射溶液及び懸濁液としては、例えば、マンニトール、1,3-ブタンジオール、水、リンガー液、等張塩化ナトリウム溶液、又は、合成モノグリセリド若しくは合成ジグリセリドと、オレイン酸若しくはクレマフォールを含む脂肪酸とを含む他の適切な分散剤若しくは湿潤剤及び懸濁剤といった、適切な非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒を含有し得る注射可能な溶液又は懸濁液が挙げられる。
【0109】
本発明の薬学的に許容され得る製剤及び本発明の注射用組成物は、アジュバントをさらに含み得る。本明細書で使用される「アジュバント」という用語は、抗原に対する免疫応答を増強する任意の物質として理解されるものである。本発明で使用するためのアジュバントの例としては、ポリイノシン:ポリシチジル酸などのdsRNA類似体、不完全フロイントアジュバント、サイトカイン(例えば、インターロイキン)、CD40、キーホールリンペットヘモシアニン、Toll様受容体、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、サポニン、コロイドミョウバン、及びリポ多糖の脂質Aの類似体が挙げられる。したがって、本発明の注射用組成物は、ポリイノシン:ポリシチジル酸などのdsRNA類似体、不完全フロイントアジュバント、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-4、IL-17及びIL-15)、CD40、キーホールリンペットヘモシアニン、Toll様受容体、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、サポニン、コロイドミョウバン、及びリポ多糖の脂質Aの類似体を含み得る。
【0110】
本発明の薬学的に許容され得る製剤及び本発明の注射用組成物の好ましい単位投与量は、貪食可能な粒子についての、治療用量(すなわち、がんに対する一次免疫応答を誘発するのに適した用量)、若しくはブースター用量(すなわち、がんに対する二次免疫応答を誘導するのに適した用量)、又はそれらの適切な分画を含むものである。貪食可能な粒子の単位投与量は、1μgから4000μg、10μgから3000μg、又は10μgから2000μgであり得る。例えば、単位投与量は、10μgから1000μg、10μgから750μg、10μgから500μg、20から400μg、25μgから300μg、又は30μgから200μg、50μgから1000μg、50μgから750μg、50μgから500μg、50μgから400μg、50μgから300μg、50μgから200μg、100μgから1000μg、100μgから750μg、100μgから500μg、100μgから400 μg、100μgから300μg又は100μgから200μg、200μgから1000μg、200μgから750μg、200μgから500μg、200μgから400μg、200μgから300μg、400μgから1000μg、400μgから750μg、400μgから500μg、500μgから1000μg、500μgから750μg、又は750μgから1000μgであり得る。例えば、貪食可能な粒子の単位投与量は、1、10、50、100、200、250、300、400、500、600、700、750、800、900、1000、1500、2000、3000又は4000μgであり得る。好ましくは、上記単位投与量は、100から750μg、より好ましくは200から750μg、より好ましくは300から750μg、より好ましくは400から750μg、より好ましくは500から750μg、より好ましくは600から750μg、さらに好ましくは650から750μgである。例えば、貪食可能な粒子の単位投与量は、100、200、300、400、500、600、700又は750μgであり得る。
【0111】
上記で特に言及した成分に加えて、本発明の薬学的に許容され得る製剤及び本発明の注射用組成物は、問題の組成物の種類を考慮して当技術分野で慣用的な他の薬剤を含み得ることを理解されたい。
【0112】
本発明の様々な実施形態で使用するための本発明の貪食可能な粒子は、唯一の活性成分として使用することができるが、貪食可能な粒子をさらに1種以上の活性剤と組み合わせて使用することも可能である。上述したように、本発明はまた、対象のがんの治療若しくは予防に使用するための、又は対象のがんの治療若しくは予防の方法に使用するための貪食可能な粒子を、本発明に従って、同時に、逐次的に若しくは別々に投与するための追加的な活性薬剤と併せて提供する。かかる追加的な活性剤は、がんの治療に有用な薬剤又は他の医薬活性材料であり得るが、好ましくは、がんの治療用として既知の薬剤である。かかる薬剤は、当技術分野で既知である。追加的な活性剤の例としては、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍抗生物質、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、免疫調節薬、微小管相互作用薬、プロテインキナーゼ阻害剤、ステロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、細胞周期阻害剤及び血管新生阻害剤が挙げられる。
【0113】
したがって、対象のがんの治療若しくは予防に使用するための、又は本発明の対象のがんの治療若しくは予防の方法に使用するための本発明の貪食可能な粒子は、がんの治療若しくは予防用として既知の1種以上の化合物、例えば、1種以上のアルキル化剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍抗生物質、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、免疫調節薬、微小管相互作用薬、プロテインキナーゼ阻害剤、ステロイド、トポイソメラーゼ阻害剤細胞周期阻害剤、又は血管新生阻害剤と一緒に投与され得る。
【0114】
組み合わせで使用される場合、追加的な活性薬剤の正確な投与量は、投与スケジュール、選択された特定の薬剤の経口効力、対象(典型的には哺乳動物又はヒト)の年齢、体格
、性別及び症状、がんの性質及び重症度、並びに他の関連する医学的及び物理的要因によって異なる。したがって、正確な治療用量又はブースター用量を事前に特定することはできず、介護者又は臨床医によって容易に決定することができる。適切な量は、動物モデル及びヒトの臨床研究からの所定の実験によって決定することができる。ヒトの場合、治療用量又はブースター用量は既知であるか、そうでなければ当業者によって決定される。
【0115】
かかる組合せの個々の成分は、治療過程の異なる時間において別々に投与することができ、又は分割された若しくは単一の組合せ形態で同時に投与することができる。したがって、本発明は、同時処置又は交互処置のすべてのそのようなレジームを包含するものとして理解されるべきである。
【0116】
上記の追加的な活性剤は、本発明において有用な化合物と組み合わせて使用される場合、例えば、医師用添付文書集(PDR)に示される量で、又はそうでなければ当業者によって決定される量で使用され得る。
【0117】
処置
本発明は、対象におけるがんの治療又は予防に使用するための貪食可能な粒子であって、当該貪食可能な粒子が、コアと、コアに強固に会合した新生抗原性構築物とを含み、当該新生抗原性構築物が、対象におけるがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドの一部のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するネオエピトープペプチドを含み、当該タンパク質又はペプチドの一部が、少なくとも1個の体細胞変異アミノ酸を有する、貪食可能な粒子を提供する。本発明はまた、本発明の貪食可能な粒子を対象に投与する工程を含む、対象のがんを治療又は予防する方法を提供する。本発明はまた、がんを治療又は予防するための医薬品を製造するための本発明の貪食可能な粒子の使用を提供する。
【0118】
本発明者らは、本発明で使用される貪食可能な粒子が、驚くべきことに、対象においてがん細胞に対する堅牢な抗がん免疫応答を誘発するのに有効であることを見出した。一般的なレベルでは、免疫応答は、自然免疫応答又は適応免疫応答のいずれかに分類することができる。自然免疫応答は、抗原との事前の接触によって本質的に影響を受けない免疫応答である。かかる応答は、しばしば、ナイーブT細胞及びB細胞の活性化及び増殖を特徴とする。対照的に、適応免疫応答は、抗原との事前の接触を必要とする免疫応答である。適応免疫応答は、一般に、自然免疫応答の直後に続き、最終的に抗原に対する免疫記憶をもたらす。免疫系が抗原と初めて接触するときに誘発される免疫応答(自然応答及び適応応答)は、しばしば「一次免疫応答」と呼ばれる。同じ抗原によるメモリーT細胞及びB細胞の後の活性化は、抗原に対する迅速かつ特異的な免疫応答をもたらし、抗原に対するこの迅速かつ特異的な免疫応答は、しばしば「二次免疫応答」と呼ばれる。
【0119】
本投資家は、驚くべきことに、本発明の貪食可能な粒子が、対象において自然免疫応答及び適応免疫応答の双方を活性化することによって堅牢な抗がん免疫応答を誘発することを見出した。
【0120】
本発明で使用される貪食可能な粒子によって誘導される免疫応答は、抗原提示細胞(APC)による貪食可能な粒子の食作用を含み得る。APCは、典型的には樹状細胞(DC)、B細胞若しくはマクロファージ、又は、細胞外生物若しくはタンパク質(すなわち抗原)を貪食又は取り込む細胞であり、処理後にMHCクラスII及び/又はMHCクラスI上の抗原由来ペプチドをCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞に提示する。血液において、最も豊富なAPCは単球であり、例えば、樹状細胞、マクロファージ及びB細胞である。
【0121】
本発明で使用される貪食可能な粒子によって誘導される免疫応答はまた、ナイーブT細胞又はメモリーT細胞の活性化及び増殖を誘導し得る。例えば、本発明の貪食可能な粒子は、CD4+T細胞(又はTヘルパー細胞又はCD4+ヘルパーT細胞)及び/又はCD8+T細胞(又は細胞傷害性T細胞)の活性化及び増殖を誘導し得る。CD4+T細胞は、サイトカイン分泌を介して免疫応答を指揮する細胞である。それらは、B細胞の抗体クラススイッチングを刺激する、細胞傷害性T細胞の活性化及び増殖を刺激する、又は食細胞を増強するなど、他の免疫細胞を抑制又は増強することができる。それらは、APC上のMHCクラスIIを介した抗原提示によって活性化され、特定の抗原内の約15アミノ酸のストレッチ(いわゆるT細胞エピトープ)に特異的なT細胞受容体(TCR)を発現する。CD8+T細胞(又は細胞傷害性T細胞)は、腫瘍細胞、感染細胞又は他の方法で損傷を受けた細胞を死滅させる細胞である。CD4+T細胞とは異なり、それらは活性化のためにAPCを必要としない。それらのT細胞受容体は、すべての有核細胞上に発現されるタンパク質であるMHCクラスIによって提示される抗原由来ペプチド(約7~10、例えば、8アミノ酸長)を認識する。
【0122】
本発明の処置は、任意の形態のがん、例えば固形がん、転移性固形がん又は血液悪性腫瘍を治療又は予防するために使用され得る。
【0123】
本明細書における「固形がん」は、例えば、臓器に由来する組織の異常な塊である。固形がんは悪性であり得る。様々なタイプの固形がんが、それらを形成する細胞のタイプについて命名されている。固形がんの種類には、肉腫、がん腫及びリンパ腫が含まれる。固形がんの例としては、副腎がん、肛門がん、未分化大細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、胆管がん、膀胱がん、脳/CNS腫瘍、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、子宮内膜がん、食道がん、腫瘍のewingファミリー、眼がん、胆嚢がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(gist)、妊娠性栄養膜疾患、肝脾T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、腎臓がん、喉頭及び下咽頭がん、肝臓がん、肺がん(非小細胞及び小細胞)、肺がんカルチノイド腫瘍リンパ様肉芽腫症、悪性中皮腫、鼻腔及び副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、節辺縁帯B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、口腔及び口腔咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、陰茎がん、下垂体腫瘍、原発性体液性リンパ腫、前立腺がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫、皮膚がん(基底及び扁平細胞、メラノーマ及びメルケル細胞)、小腸がん、胃がん、精巣がん、胸腺がん、甲状腺がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍が挙げられる。本発明の処置は、固形がんの処置において特に有効である。したがって、本発明の対象は、固形がんであり得る。本発明の処置は、肛門がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、肝臓がん、肺がん(非小細胞及び小細胞)、肺がんカルチノイド腫瘍、卵巣がん、膵臓がん、陰茎がん、前立腺がん、胃がん、精巣がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がんからなる群から選択される固形がんの処置において特に有効であり、さらにより具体的には、乳がん、結腸がん、肝臓がん、肺がん(非小細胞及び小細胞)、肺がんカルチノイド腫瘍、膵臓がん、前立腺がん、卵巣がん、及び膀胱がんの処置に特に有効である。
【0124】
本発明の処置はまた、転移性固形がんの処置において特に有効である。転移性がんは、原発部位から身体の1以上の異なる領域に広がっているがんである。
【0125】
あるいは、がんは、任意の形態の血液悪性腫瘍であり得る。血液悪性腫瘍は、骨髄又はリンパ系などの血液形成組織の細胞で始まるがんの一形態である。多くの血液悪性腫瘍において、正常な血球発生プロセスは、異常なタイプの血球の無制御な成長によって妨害される。血液がんの例としては、白血病、リンパ腫、骨髄腫及び骨髄異形成症候群が挙げられる(リンパ腫は、固形がん及び血液悪性腫瘍の双方として分類され得る)。血液悪性腫瘍の例としては、急性好塩基球性白血病、急性好酸球性白血病、急性赤血球性白血病、急
性リンパ芽球性白血病、急性巨核芽球性白血病、急性単球性白血病、成熟型急性骨髄芽球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄樹状細胞白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、攻撃的NK細胞白血病、未分化大細胞リンパ腫、及び形質細胞腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病、B細胞白血病、B細胞リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、慢性特発性骨髄線維症、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、慢性好中球性白血病、髄外白血病、有毛細胞白血病、肝脾T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、カーラー病、リンパ腫様肉芽腫症、肥満細胞白血病、多発性骨髄腫、筋膜、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、形質細胞性白血病、原発性滲出液リンパ腫、及びヴァルデンストレームマクログロブリン血症が挙げられる。
【0126】
投与及び投与レジメン
本発明の貪食可能な粒子又は注射用組成物の治療用量は、対象においてがんに対する免疫応答を誘発するのに十分な用量である。例えば、一次免疫応答及び/又は二次免疫応答である。
【0127】
本発明のある実施形態では、がんの治療又は予防のための本明細書に記載の貪食可能な粒子の使用は、治療用量の貪食可能な粒子を対象に投与することを含む。本発明のある実施形態では、本発明のがんを治療又は予防する方法が、治療用量の貪食可能な粒子を対象に投与することを含む。本発明のある実施形態では、本発明の貪食可能な粒子又は本発明の治療方法の使用は、治療用量の本発明の注射用組成物を対象に投与することを含む。
【0128】
対象のがんを治療又は予防するために必要とされる本発明の貪食可能な粒子又は注射用組成物の治療用量は、注射経路及び治療中の対象の特徴、例えば、種、年齢、体重、性別、病状、特定のがん及びその重症度、並びに他の関連する医学的及び物理的要因によって異なる。通常の熟練した医師であれば、がんの処置又は予防に必要な貪食可能な粒子の有効量を容易に決定し投与することができる。
【0129】
貪食可能な粒子の治療用量は、1μgから4000μg、10μgから3000μg、又は10μgから2000μgであり得る。例えば、用量は、10μgから1000μg、10μgから750μg、10μgから500μg、20から400μg、25μgから300μg、30μgから200μg、50μgから1000μg、50μgから750μg、50μgから500μg、50μgから400μg、50μgから300μg、50μgから200μg、100μgから1000μg、100μgから750μg、100μgから500μg、100μgから400μg、100μgから300μg又は100μgから200μg、200μgから1000μg、200μgから750μg、200μgから500μg、200μgから400μg、200μgから300μg、400μgから1000μg、400μgから750μg、400μgから500μg、500μgから1000μg、500μgから750μg、又は750μgから1000μgであり得る。例えば、貪食可能な粒子の用量は、1、10、50、100、200、250、300、400、500、600、700、750、800、900、1000、1500、2000、3000、又は4000μgであり得る。好ましくは、上記用量は、100から750μg、より好ましくは200から750μg、より好ましくは300から750μg、より好ましくは400から750μg、より好ましくは500から750μg、より好ましくは600から750μg、さらに好ましくは650から750μgである。例えば、貪食可能な粒子の用量は、100、200、300、400、500、600、700、又は750μgであり得る。
【0130】
別法として、貪食可能な粒子の治療用量は、貪食可能な粒子の数に基づいて決定することができる。例えば、用量は、約10から1010、10から10、10から1
、10から10、又は10から10個の貪食可能な粒子(例えば、104、5、10、5、10、5、10、5、10、5、10、510、又は1010個の貪食可能な粒子)であり得る。好ましくは、用量は、およそ10から10,10から10、又は10から10個の貪食可能な粒子、例えば、およそ10から10、5x10から10、5x10から7.5x10、5x10から5x10、5x10から2.5x10、又は5x10から10個である。より好ましくは、用量は、約10から10個、例えば、約5×10から10、7.5×10から10、7.5×10から7.5×10、7.5×10から5×10、又は7.5×10から2.5×10個の貪食可能な粒子である。より好ましくは、用量は、およそ7.5×10から5×10個の貪食可能な粒子、例えば、およそ7500万、1億、1億5000万、2億又は2億5000万個の貪食可能な粒子である。
【0131】
別法として、貪食可能な粒子の治療用量は、コアに会合する新生抗原性構築物の量に基づいて決定することができる。例えば、用量は、1μgから4000μg、10μgから3000μg、又は10μgから2000μgの新生抗原性構築物であり得る。例えば、1μgから4000μg、10μgから3000μg、又は10μgから2000μgである。例えば、新生抗原性構築物の用量は、10μgから1000μg、10μgから750μg、10μgから500μg、10μgから400μg、10μgから300μg、10μgから200μg、10μgから100μg又は10から50μg、10から25、20μgから400μg、25μgから300μg、30μgから200μg、50μgから1000μg、50μgから750μg、50μgから500μg、50μgから400μg、50μgから300μg又は50μgから200μg、100μgから1000μg、100μgから750μg、100μgから500μg、100μgから400μg、100μgから300μg又は100μgから200μg、200μgから1000μg、200μgから750μg、200μgから500μg、200μgから400μg、200μgから300μg、400μgから1000μg、400μgから750μg、400μgから500μg、500μgから1000μg、500μgから750μg、又は750μgから1000μgである。例えば、新生抗原性構築物の用量は、1、10、15、20、25、30、40、50、75、100、200、250、300、400、500、600、700、750、800、900、1000、1500、2000、3000、又は4000μgであり得る。好ましくは、用量は、10μgから1000μg、10μgから750μg、10μgから500μg、10μgから400μg、10μgから300μg、10μgから200μg、10μgから100μg、又は10から50μgの新生抗原性構築物であり得る。好ましくは、用量は、10μgから100μgの新生抗原性構築物、例えば10μgから75μg、10μgから50μg、10μgから25μg、25μgから50μg、又は50μgから75μgの新生抗原性構築物である。例えば、貪食可能な粒子の用量は、1、10、15、20、25、30、40、50、75、100μgの新生抗原性構築物であり得る。好ましくは、用量は、10から50μgの新生抗原性構築物である。
【0132】
治療用量は、治療用量の貪食可能な粒子を含む単回単位用量として、又は単位用量が治療用量の分画を含む場合は複数単位用量として投与され得る。好ましくは、本発明の貪食可能な粒子の治療用量は、単回用量として対象に投与される。
【0133】
治療用量の貪食可能な粒子、又は治療用量の本発明の貪食可能な粒子を含む注射用組成物は、対象に1回投与され得る。
【0134】
ある好ましい実施形態では、対象に、治療用量の貪食可能な粒子又は治療用量の貪食可能な粒子を含む注射用組成物を投与し、そして、少なくとも1回の追加的な(又は「後続
の」)治療用量の本発明の貪食可能な粒子又は治療用量の本発明の貪食可能な粒子を含む注射用組成物を投与する。貪食可能な粒子の追加的な(又は「後続の」)治療用量は、毎日、2日毎若しくは3日毎、毎週、2週間毎、3週間毎若しくは4週間毎、毎月、2ヶ月毎、3ヶ月毎若しくは4ヶ月毎、6ヶ月毎、又は毎年投与され得る。本発明の貪食可能な粒子又は本発明の貪食可能な粒子の治療用量を含む注射用組成物の追加的な治療用量の数及び頻度は、対象、並びに治療されるがんの形態及び重症度に依存する。
【0135】
一実施形態では、がんの治療又は予防のための貪食可能な粒子の使用は、1回以上の後続の治療用量の本発明の貪食可能な粒子又は治療用量の本発明の貪食可能な粒子を含む注射用組成物を対象に投与することを含み、当該対象は、治療用量の本発明の貪食可能な粒子又は治療用量の本発明の貪食可能な粒子を含む注射用組成物を以前に投与されたことがある。1回以上の後続の治療用量は、それぞれが対象においてがん細胞に対する免疫応答(すなわち、一次免疫応答及び/又は二次免疫応答)を誘発するのに十分な用量である。
【0136】
1回以上の後続の治療用量の本発明の貪食可能な粒子又は治療用量の本発明の貪食可能な粒子を含む注射用組成物を対象に投与することを含む本発明の実施形態では、好ましくは、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はn回の 後続の治療用量の貪食可能な粒子又は注射用組成物が対象に投与される。ここで、「n」は、10回より多い任意の投与回数(例えば、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30回の投与)である。好ましくは、対象に投与される後続の治療用量の数及び頻度は、対象のがんを治療又は予防するのに十分である。
【0137】
本発明の貪食可能な粒子又は注射用組成物の治療用量は、独立して、本明細書に記載の貪食可能な粒子又は注射用組成物の治療用量の特性及び/又は特徴のいずれをも有し得る。本発明の好ましい実施形態では、後続の治療用量として対象に投与される貪食可能な粒子は、治療用量として対象に以前に投与された貪食可能な粒子と同じタイプの新生抗原性構築物を含む。後続の治療用量として投与される貪食可能な粒子のコアは、治療用量として対象に以前に投与された貪食可能な粒子のコアと同じであっても異なっていてもよい(例えば、コアは、異なるサイズを有していてもよく、及び/又は本明細書に記載の異なる材料/ポリマーを含んでいてもよい)。好ましくは、後続の治療用量として投与される貪食可能な粒子は、治療用量として対象に以前に投与された貪食可能な粒子と同じタイプの新生抗原性構築物及び同じコアを含み得る(すなわち、貪食可能な粒子は、同じセットであり、治療用量として対象に以前に投与された各群と同じである)。
【0138】
1回以上の後続の治療用量の貪食可能な粒子又は治療用量の貪食可能な粒子を含む注射用組成物を対象に投与することを含む本発明の実施形態では、好ましくは、1回以上の後続の治療用量は、数日、数週間又は数ヶ月の間隔で対象に投与される。例えば、1回以上の後続の治療用量が、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎に対象に投与される。代替的又は追加的に、1回以上の後続の治療用量が、例えば、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、又は4週間に1回、対象に投与される。代替的又は追加的に、1回以上の後続の治療用量が、例えば、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回又は6ヶ月に1回、対象に投与される。代替的又は追加的に、1回以上の後続の治療用量が、例えば、1年に1回、対象に投与される。
【0139】
本発明の一実施形態において、1回以上の後続の治療用量は、対象に、毎年1回、毎年2回、又は毎年3回投与される。例えば、1回以上の後続の治療用量は、1から10年、1から20年、1から30年、1から40年、又は1から60年(例えば、1から10年、10から20年、20から30年、30から40年又は50から60年の期間)の期間にわたって、毎年1回、毎年2回、又は毎年3回、対象に投与され得る。
【0140】
本発明者らは、1回以上の後続の治療用量を長期間にわたって(すなわち、1年以上にわたって)対象に投与することによって、対象に存在する抗がん性メモリーB細胞及びメモリーT細胞の数を増加させることが可能であることを見出した。対象における抗がん記憶B細胞及び記憶T細胞の数を増加させることにより、対象における抗がん免疫記憶が維持され、それにより、がんの成長(例えば、腫瘍を形成すること)又は再発が防止されることが予想される。
【0141】
本発明のある実施形態では、ブースター用量は、がんが(本明細書に記載の1個又は複数の治療用量で)首尾よく治療された対象に投与され、がんの再発を予防する。
【0142】
本発明の貪食可能な粒子又は注射用組成物のブースター用量は、独立して、本明細書に記載の貪食可能な粒子又は注射用組成物の治療用量の特性及び/又は特徴のいずれかを有し得る。本発明の好ましい実施形態では、ブースター用量として対象に投与される貪食可能な粒子は、治療用量として対象に投与される貪食可能な粒子と同じタイプの新生抗原性構築物を含む。貪食可能な粒子のコアは、治療用量として対象に投与される貪食可能な粒子のコアと同じであっても異なっていてもよい(例えば、コアは、異なるサイズを有していてもよく、及び/又は本明細書に記載の異なる材料/ポリマーを含んでもよい)。好ましくは、ブースター用量は、治療用量として対象に投与される貪食可能な粒子と同じタイプの新生抗原性構築物及び同じコアを有する貪食可能な粒子を含む(すなわち、貪食可能な粒子は、同じセットであり、治療用量として対象に以前に投与された各群と同じである)。
【0143】
本発明の一実施形態では、1回以上のブースター用量が、例えば、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、又は4週間に1回、対象に投与される。代替的又は追加的に、1回以上のブースター用量が、例えば、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、又は6ヶ月に1回、対象に投与される。代替的又は追加的に、1回以上のブースター用量が、例えば、年に1回、対象に投与される。
【0144】
本発明の別の実施形態では、1回以上のブースター用量が、毎年1回、毎年2回、又は毎年3回、対象に投与される。例えば、1回以上のブースター用量は、1から10年、10から20年、20から30年、30から40年、又は50から60年の期間にわたって、毎年1回、毎年2回、又は毎年3回、対象に投与され得る。
【0145】
1回以上のブースター用量を投与することによって対象における抗がんメモリーB細胞及びメモリーT細胞の数を増加させることにより、対象における抗がん免疫記憶が維持され、それにより、がんが成長又は再発することが防止されることが予想される。
【0146】
抗がんT細胞のエクスビボ活性化及び増殖
本発明はまた、a)APC及び抗がんT細胞を対象から採取すること、b)対象から採取した抗がんT細胞を増殖させること、及び、c)治療用量の増殖した抗がんT細胞を対象に投与することも追加の工程として含む本発明の治療を提供する。
【0147】
本発明はまた、対象においてがんを処置又は予防する方法であって、a)APC及び抗がんT細胞を対象から採取すること、b)対象から採取した抗がんT細胞を増殖させること、及び、c)治療用量の増殖した抗がんT細胞を対象に投与することも追加の工程として含む方法を提供する。
工程a)対象への貪食可能な粒子の投与後に、対象からAPC及び抗がんT細胞を採取する工程
【0148】
本発明の一実施形態では、工程a)において、APC及び抗がんT細胞を、本発明の貪食可能な粒子又は注射用組成物の用量(好ましくは治療用量)を対象に投与した後に対象から採取する。代替的又は追加的に、APC及び抗がんT細胞を、同時に、かつ/又は、用量(好ましくは、治療用量)の本発明の貪食可能な粒子又は注射用組成物を対象に投与する前に、対象から採取してもよい。好ましくは、APC及び抗がんT細胞を、本発明の貪食可能な粒子又は注射用組成物の用量(好ましくは治療用量)を対象に投与した後、対象から採取する。
【0149】
APCは、抗がんT細胞が反応し得る抗原特異的状況(MHC拘束性)で抗がんT細胞に抗原を提示することができるように、抗がんT細胞と適合するものでなければならない。APC及び抗がんT細胞は、好ましくは、同じ種から得られ、MHC受容体に関してドナー適合される。しかしながら、異なる種由来の遺伝子操作されたAPCの使用も想定される。より好ましくは、APC及び抗がんT細胞は、同じ対象から得られる。APC及び抗がんT細胞が同じ対象に由来する場合、APCと抗がんT細胞との間のミスマッチの可能性は回避される。
【0150】
対象から採取されたAPCは、食細胞、単球及び/又は樹状細胞を含み得る。抗がんT細胞は、CD4+及び/又はCD8+T細胞を含み得る。
【0151】
APC及び抗がんT細胞は、対象に由来する血液試料から採取され得る。好ましくは、血液試料は末梢血単核球(PBMC)試料である。PBMCは、全血の密度勾配遠心分離によって調製されたヒト血液の分画である。PBMCは、主にリンパ球(70~90%)及び単球(10~30%)からなり、赤血球、顆粒球及び血漿は除去されている。単球は、場合によっては、PBMC試料中の細胞数の10から20%、例えば10から15%を構成し得る。
【0152】
APC及び抗がんT細胞はまた、対象の腫瘍、例えば腫瘍内のリンパ管又は腫瘍排出リンパ節(すなわち、センチネル節)に由来する試料に由来し得る。好ましくは、APC及び抗がんT細胞を、対象に由来する同じ試料及び/又は対象の同じ腫瘍から採取する。代替的又は追加的に、APC及び抗がんT細胞は、対象に由来する異なる試料から採取し得る。例えば、APCは血液試料から採取することができ、抗がんT細胞は腫瘍から採取することができる。
【0153】
好ましくは、APC及び抗がんT細胞をPBMC試料から採取する。例えば、APC及び抗がんT細胞を同じPBMC試料又は異なるPBMC試料から採取する。末梢血試料からPBMCを得ることは、ありふれたプロトコルであり、APC及びT細胞の双方のための便利な供給源を同時にかつ同じ対象から提供する。PBMC試料は、採取したてを使用してもよく、又は使用前に保存のために凍結してもよい。
工程b)対象から採取した抗がんT細胞を増殖させる工程
ステップa)で対象から採取されたAPC及び抗がんT細胞は、対象におけるがんの治療又は予防に使用するのに適した抗がんT細胞の調製に使用することができる。対象への投与に適した抗がんT細胞は、対象から採取された抗がんT細胞のインビトロ活性化及び増殖によって調製される。インビトロ活性化及び増殖方法は、
i)コアと、当該コアに強固に会合した新生抗原性構築物とを含む貪食可能な粒子貪食可能な粒子を提供する工程であって、上記新生抗原性構築物が、対象においてがん細胞によって発現されることが知られているか若しくは疑われるタンパク質又はペプチドの一部のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するネオエピトープペプチドを含み、上記タンパク質又はペプチドの一部が、少なくとも1個の体細胞変異アミノ酸を有する、工程と、
ii)APCを提供する工程と、
iii)iii)貪食可能な粒子を、APCによる貪食可能な粒子の食作用を可能にする条件下で、APCとインビトロで接触させる工程と、
iv)対象から採取された抗がんT細胞を提供する工程と、
v)インビトロで、APCによって提示されるネオエピトープに応答して抗がんT細胞の特異的活性化及び増殖を可能にする条件下で、抗がんT細胞を工程iii)からのAPCと接触させる工程と、を含む。
【0154】
インビトロ増殖方法は、APCを100から1×10個の貪食可能な粒子、例えば100から1×10個、例えば100から1×10個の貪食可能な粒子と接触させることを含み得、所与の増殖の実行では、例えば1000から1×10個の貪食可能な粒子を使用する。例えば、貪食可能な粒子とAPCの比は、1000:1から1:10の範囲内である。上記比は、貪食可能な粒子のサイズに応じて最適化することができる。例えば、約1μmの最大直径を有する貪食可能な粒子の場合、上記比は50:1から2:1、例えば25:1から5:1、15:1から7:1、及び10:1の範囲内であり得る。
【0155】
誤解を避けるために記すと、APCとの接触に適した貪食可能な粒子は、独立して、対象に治療用量又はブースター用量として投与される貪食可能な粒子の特性及び/又は特徴のいずれかを有し得る。
【0156】
本発明のある実施形態では、APCを、治療用量として対象に投与される貪食可能な粒子と同じタイプの新生抗原性構築物を含む貪食可能な粒子と接触させる。貪食可能な粒子のコアは、治療用量として対象に投与される貪食可能な粒子のコアと同じであっても異なっていてもよい(例えば、コアは、異なるサイズを有してもよく、及び/又は本明細書に記載の異なる材料/ポリマーを含んでもよい)。本発明の好ましい実施形態では、APCを、治療用量で対象に投与された貪食可能な粒子と同じタイプの新生抗原性構築物及び同じコアを含む貪食可能な粒子と接触させる。
【0157】
本発明の一実施形態では、抗がんT細胞を増殖させる方法は、抗がんT細胞試料に低用量のIL-2、例えば1.25U/ml超(例えば、1.25U/ml超、2.5U/ml超、5U/ml超、又は50U/ml超)のIL-2、好ましくは2.5U/ml超、5U/ml超、又は50U/ml超のIL-2を添加することを含む。抗原特異的T細胞の増殖は、IL-2が同時に存在する場合、抗原提示細胞の存在下で起こる。IL-2は、抗がんT細胞のエフェクター抗がんT細胞及びメモリー抗がんT細胞への分化を促進する。抗がんT細胞の増殖後、APCは、例えば磁気分離によって、増殖したT細胞集団から除去され得る。
【0158】
本発明の別の実施形態では、抗がんT細胞を増殖させる方法が、IL-2及び/又はIL-7及び/又はIL-15を抗がんT細胞試料に添加すること、例えば、低用量のIL-2を抗がんT細胞試料に添加すること、例えば、1.25U/ml超(例えば、1.25U/ml超、2.5U/ml超、5U/ml超、又は50U/ml超)、好ましくは2.5U/ml超、5U/ml超、又は50U/ml超のIL-2を添加すること、並びに、IL-7及び/又はIL-15を任意に添加することを含む。例えば、抗がん性T細胞試料に対する低用量のIL-7は、例えば1.25U/ml超(例えば、1.25U/ml超、2.5U/ml超、5U/ml超、又は50U/ml超)、好ましくは2.5U/ml超、5U/ml超、又は50U/ml超のIL-7であり、及び/又は、例えば、抗がんT細胞試料に対する低用量のIL-15は、例えば、1.25U/ml超(例えば、1.25U/ml超、2.5U/ml超、5U/ml超、又は50U/ml)、好ましくは2.5U/ml超、5U/ml超、又は50U/ml超のIL-15である。
【0159】
本発明の好ましい実施形態では、インビトロで抗がんT細胞を活性化及び増殖させる方
法は、抗がんT細胞から本発明の貪食可能な粒子を取り込んだAPCを除去する工程を含む。本発明の貪食可能な粒子が磁性コアを含む本発明の実施形態では、APCは、磁気分離を使用することによって抗がんT細胞から除去される。
【0160】
抗がんT細胞と、本発明の貪食可能な粒子を取り込んだAPCとの接触後、抗がんT細胞活性化の程度は、例えば、抗がんT細胞活性化の程度を関連する参照と比較することによって決定され得る。抗がんT細胞活性化の程度の決定は、当技術分野で既知のT細胞活性化アッセイ、例えば、ELISpot、FluoroSpot、フローサイトメトリーを用いたサイトカインの細胞内染色、FASCIA(活性化全血中の特異的細胞媒介性免疫応答のためのフローサイトメトリーアッセイ)、増殖アッセイ(例えば、チミジン取込み、CFSE又はBrdU染色)、MHC-I又はII四量体を用いた特異的TCR-検出、及び、分泌サイトカインのELISポアッセイのELISA-又はLuminex分析を使用して行うことができる。この方法は、抗がんT細胞活性化の程度を関連する参照と比較する工程を含み得る。適切な参考文献としては、例えば、抗がんT細胞を含まないT細胞試料、又は貪食可能な粒子を取り込んだAPCと接触していない抗がんT細胞試料が挙げられる。
c)拡大された抗がんT細胞の治療用量を対象に投与する工程
【0161】
増殖した抗がんT細胞の治療用量を対象に投与することができる。したがって、本発明はまた、対象のがんを治療又は予防するのに使用するための抗がんT細胞を提供する。増殖した抗がんT細胞は、対象に静脈内、動脈内、髄腔内又は腹腔内に投与することができる。
【0162】
増殖した抗がんT細胞の正確な投与量は、投与スケジュール、対象(典型的には哺乳動物又はヒト)の年齢、体格、性別及び病状、病状の性質及び重症度、並びに他の関連する医学的及び物理的要因によって異なる。したがって、正確な治療有効量は、臨床医によって容易に決定することができる。適切な量は、動物モデル及びヒトの臨床研究からの所定の実験によって決定することができる。ヒトの場合、有効用量は既知であるか、そうでなければ当業者により決定され得る。
【実施例
【0163】
実施例1:新生抗原性構築物又はモデルペプチド/タンパク質を磁気コアにカップリングするための一般プロトコル
【0164】
新生抗原性構築物又はモデルペプチド/タンパク質のコアへのカップリング
Dynabeads(登録商標)MyOne(商標)カルボン酸(ThermoFischer Scientific)(直径1μmの球)をコアとして使用した。Dynabeads(登録商標)MyOne(商標)カルボン酸粒子は、酸化鉄を含み、粒子の表面が遊離カルボン酸基で官能化された常磁性ポリスチレン粒子である。カップリング手順は、メーカーのプロトコル(NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)及びEDC(エチルカルボジイミド)を用いた2段階手順)に従って実施した。
【0165】
工程1):MES-Buffer(25mM MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、pH 6)で2回洗浄する。次いで、MES緩衝液中、50 mg/mlのNHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)及び50 mg/mlのEDC(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド)をポリスチレン粒子に添加することによってカルボン酸基を活性化し、室温(RT)で30分間インキュベートした。磁石を用いてポリスチレン粒子を回収し、上清を除去し、MES緩衝液で2回洗浄した。
【0166】
工程2):新生抗原性構築物又はモデルペプチド/タンパク質試料を、MES緩衝液で
1mg/ml、合計100μgの濃度に希釈して、ポリスチレン粒子に加え、室温で1時間インキュベートした。ポリスチレン粒子を磁石で収集し、上清を除去し、ペプチド濃度測定のために保存した。未反応の活性化カルボン酸基を50mM Tris pH7.4で15分間クエンチした。次いで、ポリスチレン粒子をPBS pH7.4で洗浄し、次いで-80で保存した。
【0167】
メーカーのプロトコルに従ってBCA(ビシンコニン酸)タンパク質アッセイキット(Pierce BCAタンパク質アッセイキット、ThermoFisher Scientific)を使用して、ポリスチレン粒子にカップリングされたペプチド性物質の量を測定し、カップリング前の新生抗原性構築物試料のペプチド性物質濃度及びカップリング後の上清のペプチド性物質濃度を測定した。
【0168】
いくつかのポリペプチドを試験し、1mgのポリスチレン粒子あたり推定平均48.7μg(平均:48.7、SD:20.5、N=10)の新生抗原性構築物をカップリングさせた。メーカーの指示によれば、1mgの粒子あたり50μgのポリペプチドをカップリングさせることができ、これは達成されたカップリングの効率が高いことを示している。
【0169】
実施例2:洗浄
実施例1に記載の方法に従って、ポリスチレン粒子を大腸菌で産生された組換え新生抗原性構築物に結合させた。カップリング後、ポリスチレン粒子を3つの異なる洗浄緩衝液(2M NaOH pH14.3、8M 尿素、又は6Mグアニジン(グアニジン-HCl)、すべて室温の滅菌水中)のうちの1つを用いて洗浄するか、又はポリスチレン粒子を95のPBS中でインキュベートした。ポリスチレン粒子を緩衝液に懸濁し、4分間振盪し、磁石で回収し、上清を除去した。これを3回繰り返した。熱処理したポリスチレン粒子をPBS pH7.4に入れ、95の加熱ブロックに5分間入れた後、磁石で回収し、上清を除去した。これを3回繰り返した。次いで、粒子を滅菌PBSで3回洗浄して、残っている洗浄緩衝液を除去した。
【0170】
4つの異なる洗浄条件、(a)高pH(2M NaOH pH14.3)、(b)高温(95℃)及び滅菌/変性剤((c)8M尿素、及び(d)6Mグアニジン塩酸塩)、を試験した。いずれの場合も、ポリスチレン粒子と会合した新生抗原性構築物は、ポリスチレン粒子と会合した状態を維持した。
【0171】
実施例3a:貪食可能な粒子に適した粒径の同定
チミジン取込みを測定する細胞増殖アッセイを使用して、抗原特異的T細胞活性化に対する貪食性粒径の効果を試験した。Ovalbumin(OVA)免疫マウス由来の脾細胞を、異なるサイズのOVA結合ポリスチレン粒子で刺激して、抗原特異的増殖を測定した。
【0172】
5.6μm、1μm、及び0.2μmの直径を有するDynabeads(登録商標)MyOne(商標)カルボン酸粒子を、実施例1のプロトコルに従ってOVA(OVA粒子)又はウシ血清アルブミン(BSA粒子)とカップリングさせた。
【0173】
抗原特異的T細胞活性化を刺激するOVA粒子の有効性を試験するために、増殖アッセイ(Hチミジン取込みによる)を使用した。細胞濃度に対する粒子濃度は、5.6μm粒子では1:1、1μm粒子では10:1、0.2μm粒子では500:1であった。細胞とのインキュベーション中の総タンパク質濃度は、5.6μm、1μm、及び0.2μmについて、それぞれ、125ng/ml、160ng/ml、及び160ng/mlと計算された。増殖アッセイを以下のように実行した。
【0174】
刺激剤として、Dynabeads(登録商標)MyOne(商標)カルボン酸粒子に結合したオボアルブミン(SigmaAldrich)及びBSA(SigmaAldrich)を使用した(OVA粒子又はBSA粒子)。マウスを、水酸化アルミニウムに吸着させた100μgのオボアルブミン(Sigma)を毎月注射することによってオボアルブミンに免疫化した。最初の注射の3ヶ月後、マウスを屠殺し、脾臓を採取した。脾細胞は、Thunberg et al.2009,Allergy 64:919に記載されている標準的な手順によって調製した。
【0175】
当該細胞を、OVA粒子又はBSA粒子(10粒子/細胞)と共にcRPMI中で5日間インキュベートした。全ての細胞を、37℃、6% COの加湿雰囲気中で6日間インキュベートした。最後の18時間のインキュベーションのために、1μCu/ウェル [H] チミジンを細胞培養物に添加した。刺激した3連から得られた毎分の平均カウント(cpm)を、刺激していない細胞からの平均cpm値で除算し、刺激指数(SI)として表した。SI値≧2.0は、一般に陽性と見なされる。
【0176】
図1に見られるように、直径0.2μmのOVA粒子と共にインキュベートした細胞は、増殖の増加を示し、平均SIは4.1(95% CI 2.4~5.8、P=0.007)であった。直径1μmのOVA粒子と共にインキュベートした細胞は、増殖の増加を示し、平均SIは8.4(95% CI 6.1~10.6、P<0.005)であった。直径5.6μmのOVA粒子と共にインキュベートした細胞は、増殖を刺激することができず、平均SIは1.1(95% CI 0.4~2.7、P=0.876)であった。
【0177】
これらの結果は、異なるサイズの粒子に結合した抗原が細胞増殖を刺激し得ることを示す。約1μmの直径を有する粒子は、細胞刺激に関して最も効率的であると思われるが、0.2μmのサイズまでの粒子は依然として機能する。直径が5.6μmに近づくと、粒子は細胞を完全に刺激することができないが、1μmより大きいサイズの粒子も機能すると予測することは合理的である。1μmが最適なサイズであると仮定することは、それが細菌のサイズに類似していることから合理的である。我々の免疫系は、このサイズの微生物/粒子を貪食して反応するように進化している。正常な抗原提示細胞は、10~15μmの範囲のサイズを有する。
【0178】
実施例3b:異なる粒径の抗原結合粒子と、それらのT細胞の活性化及び増殖における有効性との比較
(i)抗原結合貪食可能な粒子の調製
異なるサイズの3種類の常磁性ポリスチレン貪食可能な粒子を使用した。
-直径1μm(Dynabeads MyOne カルボン酸、ThermoFisher)-直径2.8μm(Dynabeads M-270 カルボン酸、ThermoFisher)
-直径4.5μm(Dynabeads M-450 エポキシ、ThermoFisher)
【0179】
貪食可能な粒子を、メーカーの指示に従って、モデル抗原サイトメガロウイルス(CMV)タンパク質pp65構築物(配列番号19)と結合させた。エンドトキシンを除去するために、貪食可能な粒子を0.75M水酸化ナトリウム緩衝液で5回洗浄し、続いて滅菌PBSに再懸濁した。
(ii)抗原に結合した貪食可能な粒子のインキュベーション
【0180】
標準的なフィコールに基づく密度勾配遠心分離によって単離されたCMV感受性健常ド
ナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)を、CMV構築物に結合した貪食可能な粒子(以下、本明細書において「CMV粒子」と呼ぶ)と共に48ウェルプレート中、37℃、5% CO、500,000細胞/ウェルで18時間、1,000,000細胞/mlの濃度で培養した。CMV粒子の濃度は、総表面積(CMV粒子の表面に結合しているときのCMV量の代用マーカー)に基づいて平準化した。これは、試料中の全PMBCの数に基づいて、1μmサイズの粒子については10個のCMV粒子/PBMC、2.8μmサイズの粒子については1.4個のCMV粒子/PBMC、及び4.5μmサイズの粒子については0.5個のCMV粒子/PBMCに等しい。各粒子サイズの結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0181】
(iii)取込みの評価
インキュベーション後、共焦点顕微鏡を使用して、貪食されたCMV粒子の数を手動で計数した。8個の細胞を計数して、平均値及び標準偏差値を得た。図5Aには、細胞内に貪食されたCMV粒子を有する代表的な細胞の共焦点顕微鏡の画像が示されている。黒破線は細胞の輪郭を示す。白線は、細胞内のCMV粒子の全体の寸法を示す。
【0182】
この方法は、1μmのCMV粒子には、粒子が小さすぎて正確に計数することができなかったために適用できなかった。1μmのCMV粒子の大きさを評価するために、貪食されたすべてのCMV粒子の総体積を測定し、充填密度を60%と仮定して、総体積に基づいて個々のCMV粒子の大きさを逆算した。この方法は、2.8μmのCMV粒子(手動で計数した9.1個のCMV粒子/細胞に対して推定された11.9個のCMV粒子/細胞)及び4.5μmのCMV粒子(手動でカウントされた3.1個のCMV粒子/細胞に対して推定された2.4個のCMV粒子/細胞)についてかなり正確であることが証明されたので、1μmのCMV粒子の大きさも正確に推定すると仮定することができる。
【0183】
CMV粒子の取込みを図5B及び5Cに示す。図5Bは、手動計数によって評価した場合の各細胞によって取り込まれたCMV粒子の数を示す(ビーズの種類ごとに8個の細胞を計数)。手動計数法を使用して、4.5μmのCMV粒子の細胞あたりの貪食粒子の数は3.1(±1.1)であることが分かった。2.8μmのCMV粒子については、9.1(±2.2)であった。この方法を用いて1μmのCMV粒子数を計数することはできなかった。
【0184】
図5Cは、体積計算によって評価される各細胞によって取り込まれたCMV粒子の数を示す(ビーズの種類ごとに3個の細胞を測定)(*p<0.05 **p<0.01 *** p<0.001、スチューデントT検定を用いて計算)。体積計算法を使用して、4.5μmのCMV粒子の細胞あたりの貪食粒子の数は2.4(±1.1)であることが分かった。2.8μmのCMV粒子については、11.9(±3.2)であった。1μmのCMV粒子については、203.7(±21.9)であった。
【0185】
体積計算法によって評価した各細胞によって取り込まれたCMV粒子の数に基づいて、貪食されたCMVの総表面積、ひいてはCMVの総量を計算した。取り込まれた表面積は、1μmのCMV粒子については639.6(±68.9)μm、2.8μmのCMV粒子については293.1(±79.3)μm、及び4.5μmのCMV粒子については150.7(±67.0)μmとして計算された。これらのデータを以下の表2に示す。
【表2】
【0186】
(iv)T細胞刺激の評価
抗原結合粒子がT細胞を刺激することでその増殖を促進する能力を、FluoroSpotアッセイ(Mabtech、Sweden)を使用して、PBMCからのIFNγ、IL22及びIL17Aの放出を測定することによって評価した。CMV感受性健常ドナー(n=2)由来のPBMC(250,000個/ウェル)を、3連でCMV粒子で刺激した。抗原結合粒子の濃度は、総表面積に基づいて前述のように平準化した(10×1μm CMV粒子/細胞、1.4×2.8μm CMV粒子/PBMC、及び0.5×4.5μm CMV粒子/細胞)。FluoroSpotアッセイのウェルあたりのPBMCの数を、ウェルあたりの単球の推定数(PBMC試料の中身の20%が単球であるという推定に基づく)と共に、各粒径について以下に示す(表3)。
【表3】
【0187】
PBMCを37℃、5% COで44時間インキュベートした。プレートをメーカーの指示に従って現像し、自動FluoroSpotリーダーで読み取った。FluoroSpotについて報告されたデータは、細胞をCMV粒子で刺激した場合のスポット数であり、CMV粒子で刺激しなかった場合のスポット数よりも多い。
【0188】
FluoroSpotアッセイで評価したIFNγ産生のレベルを図6Aに示す。CMV粒子間の差はほとんどないことが分かる。
【0189】
FluoroSpotアッセイで評価したIL22及びIL17産生のレベルを図6B及び6Cに示す。1μmのCMV粒子は、より大きなCMV粒子よりも一方の個体において有意に高いIL22及びIL17産生を引き起こし、IL22に関してもう一方の個体でも同様の傾向が見られることが分かる。
【0190】
FluoroSpotアッセイで評価したデュアルサイトカイン産生のレベルを図6D及び6Eに示す。1μmのCMV粒子は、1μmの抗原結合粒子で刺激した場合、一方の健常ドナーに対して、より大きなCMV粒子よりも有意に高いデュアルサイトカイン放出(IFNγ+IL17及びIL22γ+IL17)を引き起こしたことが分かる。
【0191】
これらの実験におけるサイトカイン放出は、T細胞増殖の代わりになる。一般に、IFNγはCD4+T細胞(Th1サブクラス)及びCD8+T細胞によって産生される。IL17及びIL22は、主に炎症誘発性Th17 CD4+T細胞によって産生される。かかる細胞は炎症促進性であり、腫瘍根絶を補助することが示されている。データは、1μmビーズがTh1 CD4+T細胞及びCD8+T細胞を他のビーズと同程度に活性化して増殖させ、併せて、炎症誘発性Th17 CD4+T細胞及びあまり顕著ではないがやはり炎症誘発性の二重サイトカイン産生T細胞も活性化して増殖させるというさらなる
利点を伴うことを示唆している。
【0192】
実施例4:マウスがんモデルにおける貪食可能な粒子の予防効果
この実験では、2群の貪食可能な粒子、すなわち、1)ポリスチレン粒子コアを含み、コアに強固に会合した新生抗原性構築物M272120(配列番号1)を含む貪食可能な粒子、及び、2)ポリスチレン粒子コアと、コアに強固に会合した新生抗原性構築物M304748(配列番号2)とを含む貪食可能な粒子、を使用した。貪食可能な粒子を、実施例1及び2において本明細書に記載される方法を使用して調製した。すなわち、新生抗原性構築物を、実施例1及び2において概説されるプロトコルに従って1μmの超常磁性ビーズ(Sera-Mag SpeedBeads(親水性)カルボキシレート修飾磁性粒子、GE Healthcare)に結合させた。新生抗原性構築物は、B16-F10腫瘍モデルを使用した以前に公開された研究(Kreiter他(2015)、Nature、520:692及びCastle他(2012)、Cancer Res、72:1081)に基づいて設計した。作製後、2群の貪食可能な粒子を混合し(1:1の比)、次いで精製し、アジュバントとしてのCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN 1668、Enzo)を含むPBSに当該粒子を入れてストック溶液を作製した。ストック溶液は1000万粒子/μlの濃度を有していた。
【0193】
健常マウス(C57 BL/6マウス)に、低用量(9μlのPBS中に1μlの貪食可能な粒子)又は高用量(10μlの貪食可能な粒子)の貪食可能な粒子を、鼠径リンパ節又は皮下のいずれかに注射することによって投与した。各用量及び投与経路を3連で評価した(n=3)。低用量及び高用量を調製するために使用したストック貪食可能な粒子試料は、1000万ビーズ/μlを含有していた。したがって、低用量は約1000万個の貪食可能な粒子を含有し、高用量は約1億個の貪食可能な粒子を含有していた。貪食可能な粒子の各用量は、2つの異なるグループの貪食可能な粒子、すなわち、1)ポリスチレン粒子コアを含み、コアに強固に会合した新生抗原性構築物M272120(配列番号1)とを含む貪食可能な粒子、及び、2)ポリスチレン粒子コアと、該コアに強固に会合した新生抗原性構築物M304748(配列番号2)とを含む貪食可能な粒子、を含んでいた。
【0194】
マウスに、第1日目に第1の用量の貪食可能な粒子を投与し、次いで、約1ヶ月後(33日後)に第2の用量を同じマウスに投与した。血液試料を、1回目の貪食可能な粒子の投与の約3週間後(22日間)に、及び2回目の貪食可能な粒子の投与の約3週間後(23日間)にマウスから採取した。
【0195】
鼠径リンパ節注射によって2用量の貪食可能な粒子を受けたマウスの健康状態を併せて評価した。本発明者らは、鼠径リンパ節を介した貪食可能な粒子の2×10μl注射が動物の健康状態(体重及び全体的な健康状態)に影響を及ぼさないことを見出した。鼠径リンパ節及びマウス脾臓も肉眼的異常を示さず、貪食可能な粒子がマウスによって十分に許容されたことを示唆した。
【0196】
採取した血液試料を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて分析した。アッセイを96ウェルプレートで行った。PBS中5μg/mlの濃度で100μlの新生抗原性構築物を添加することによって、プレートを新生抗原性構築物M272120(配列番号1)又はM304748(配列番号2)でコーティングした。プレートを一晩インキュベートした後、洗浄した。次いで、被覆96ウェルプレートを、1回目の用量又は2回目の用量の貪食可能な粒子の投与後にマウスから採取した100μlの希釈(1:1000)マウス血清とインキュベートした。次いで、プレートを洗浄し、続いて抗マウスIgG-HRP二次抗体(Jackson Labs、1:8000希釈)とインキュベートした。最後に、プレートを洗浄し、次いで、TMB基質溶液(Sigma-Aldrich
)で現像し、吸光度を370及び650nmで測定した。各新生抗原性構築物に対する各マウス血清試料の吸光度を、図7A(1回目の投与後にマウスから採取した血清、新生抗原性構築物=M272120(配列番号1))、図B(1回目の投与後にマウスから採取した血清、新生抗原性構築物=M304748(配列番号2))、図7C(2回目の投与後にマウスから採取した血清、新生抗原性構築物=M272120(配列番号1))、及び図7D(2回目の投与後にマウスから採取した血清、新生抗原性構築物=M304748(配列番号2))に示す。対照試料として、ナイーブマウス(n=3、投与された貪食可能な粒子の用量なし)から採取した血清試料を併せて分析した。図7A図7B図7C、及び図7Dによって示されるように、(リンパ節内又は皮下に投与された)高用量の貪食可能な粒子を受けたマウスは、同じ経路を介して低用量の貪食可能な粒子を受けたマウス及び貪食可能な粒子の投与を受けなかったマウス(すなわち、ナイーブマウス)から採取された血清試料と比較して、血清試料中の抗ネオエピトープ抗体の割合が高かった。
【0197】
2回目の用量の貪食可能な粒子の投与のおよそ2ヶ月後(54日後)に、マウスの皮下に、メラノーマがん細胞株B16-F10の500,000個の細胞を注射した。腫瘍の体積を毎日測定した。図8は、腫瘍体積の経時的な増加を示す(日数、D)。
【0198】
実施例5:抗がんT細胞のエクスビボ増殖のために貪食可能な粒子を利用するパイロット試験
(i)膀胱がんにおけるネオエピトープ標的の同定
尿膀胱がんは、高い突然変異率を示し、その結果、免疫系によって非自己として認識される可能性がある多数のネオエピトープを発現する。したがって、本発明者らは、免疫療法用にT細胞を増殖させるために使用され得る潜在的なネオエピトープの大量のリポジトリを含む変異データベースを検索することによって、ネオエピトープペプチド及びT細胞の標的としてふさわしい腫瘍多型を調査した。
【0199】
COSMICデータベースは、全エクソーム解析及びホットスポット解析の双方の4754個の移行細胞がんの変異データを含む。本発明者らは、膀胱がん(UBC)に注目し、単一アミノ酸変異、特に置換変異をもたらす最も一般的な15の変異を選択し、その結果、ネオエピトープとして適格とした。本発明者らはまた、キナーゼ、成長因子受容体及び細胞周期タンパク質などの腫瘍病理発生に関連することが知られている遺伝子の多型に注目した。選択された15の変異だけで、COSMICにおいて見出される膀胱がん変異の73%をカバーする。COSMICデータベースから同定されたネオエピトープペプチドを、本実施例では「予測ネオエピトープペプチド」と呼ぶ。
【0200】
別法として、免疫療法のためのさらなる多型及び新しい標的を同定するために、UBC患者由来の腫瘍の全ゲノム配列決定が行われる。腫瘍のRNA配列決定を実施して多型を有する転写物の存在を確認することができる。多重反応モニタリング(MRM)質量分析遷移を使用することで、タンパク質レベルで最も一般的なネオエピトープの発現について患者を迅速にスキャンし、個々の免疫療法に使用されるネオエピトープペプチドを調整することができる。この方法を用いて同定されたネオエピトープペプチドを、本実施例では「個別化ネオエピトープ」と呼ぶ。
【0201】
新生抗原性構築物を、配列の 中央にある1個のアミノ酸の位置に体細胞変異アミノ酸を有する21アミノ酸ペプチドとして設計した(すなわち、アミノ酸位置11に体細胞変異アミノ酸を有する)。新生抗原性構築物を設計するために、3個のネオエピトープペプチドを2個のVVRスペーサーと連結した。これは、VVRモチーフが、ヒト白血球抗原提示のステップとして、翻訳後にリソソーム中のカテプシンSによって切断されるためである。
(iii)ネオエピトープによるT細胞の活性化及び増殖
【0202】
上記のように、9つのネオエピトープをバイオインフォマティックに同定した。予測ネオエピトープペプチドは、FGFR3及びp53などの報告された膀胱がん関連変異を持つ遺伝子に基づいていた。3個のネオエピトープペプチドを含む新生抗原性構築物を使用するパイロット試験において、本発明者らは、FluoroSpotによって膀胱がんを有する患者の血液からIFN-γ産生T細胞を同定することができ、ネオエピトープペプチドアプローチの妥当性を実証した。
【0203】
膀胱がんを有する同じ患者について、T細胞の活性化を、予測ネオエピトープペプチドNA1-9(配列番号4~12、以下の表4参照)を用いて行った。NA1、3、5、7及び8に応答して増殖が見られた(配列番号4、6、8、10及び11)。図2Aは、ポリスチレン粒子に結合した予測ネオエピトープペプチド(NA1~9)を含む貪食可能な粒子と接触させたAPCとのインキュベーション後のPBMC培養物中の細胞の数を経時的に示す(PB=末梢血)。図2Aの矢印は、再刺激の時間(すなわち、APCによって提示されたネオエピトープに応答した抗がんT細胞の特異的活性化を可能にする条件下で、T細胞試料を、予測ネオエピトープペプチド(NA1~9)を含む貪食可能な粒子と接触させたAPCの第2のバッチと接触させた時間)を示す。図2Bは、CD4+T細胞/全T細胞の%を示す。図2CはCD 4におけるT-bet発現を示し、図2D及びEはCD8+T細胞におけるグランザイムB及びパーフォリンの発現を示す。
【0204】
増殖したT細胞は、転写因子T-bet及び高レベルのエフェクター分子パーフォリン及びグランザイムB(GZB)を発現する。
【0205】
本発明の方法はまた、配列決定された腫瘍データが得られた播種性結腸がんを有する患者由来の細胞にも使用されている。患者はp53に2つの多型を示し、そのうち1つは既知であり、もう1つは新規であった。患者はまた、PIK3CAに変異を示した。3個のネオエピトープペプチドを含み、配列番号3によるアミノ酸配列を有する3個の新生抗原性構築物を含む個別化新生抗原性構築物を、患者の腫瘍データにおける特異的変異に基づいて設計、発現及び精製し、これにより個別化ネオエピトープの同定が可能になった。実施例1及び2に概説されているプロトコルに従って新生抗原性構築物をポリスチレン粒子にカップリングすることによって、貪食可能な粒子を調製した。個別化新生抗原性構築物(配列番号3)を含む貪食可能な粒子を、細胞を増殖させるために使用した結果、ネオエピトープ特異的応答が起こった。末梢血単核球(PBMC)を培養に使用した。図3は、ポリスチレン粒子コア及びコアに強固に会合した個別化新生抗原性構築物を含む貪食可能な粒子を用いた増殖前及び増殖中のT試料において増殖するCD4+細胞(丸)を示すと同時に、T細胞のパーセント(小さい四角)及びCD4+T細胞の総数(大きい四角)を示す。
【0206】
図4Aは、PBMC培養物中の経時的な細胞数(日)を示す。一番上の線(Pat2 個別化NA)は、個別化新生抗原性構築物(配列番号3)を含む貪食可能な粒子と接触させた、インキュベーション後のPBMC培養物中の細胞の数を示す。図の下の2本の線(Pat2 NA1+3及びPat2 NA4+5)は、NA1及びNA3の貪食可能な粒子又はNA4及びNA5の貪食可能な粒子と接触させた並行PBMC培養物中の細胞の数を示す。図4Bは、CD4+T細胞/総T細胞の%を示す。14日以降の時点における図4Bの一番上の線は、Pat2の個別化NAの実験に関するものである。図4A及び図4Bの矢印は、再刺激の時間(すなわち、APCによって提示されるネオエピトープに応答して抗がんT細胞の特異的活性化を可能にする条件下で、T細胞試料を、貪食可能な粒子と接触させたAPCの第2のバッチと接触させた時間)を示す。図4Cは、CD4+T細胞についてBarnes-Hut 確率的近傍埋め込み法(BH-SNE)アルゴリズムを用いて行われた分析を可視化しており、ここで、試料中のすべての細胞は、選択された
マーカー、ここではCD28、CD57、T-bet、GATA-3、パーフォリン、グランザイムB(GZB)、Ki-67及びPD-1のセットによる発現強度の類似性に従って2次元マップ上でクラスター化されている。
【0207】
増殖マーカーKi67の発現及びT細胞の数は増殖において増加し、T-bet、パーフォリン及びグランザイムBなどの抗腫瘍活性に関する重要なマーカーの発現は、14日間の培養期間にわたってCD4+細胞及びCD8+細胞の双方で増加した。CD8+T細胞のパーセンテージはCD4+T細胞の約10%に減少したが、CD8+細胞の総数は増加した。
【0208】
配列データを受け取ってから増殖細胞の分析までの全プロセスは、4~5週間で完了することができる。
【0209】
これらの結果は、ネオエピトープ特異的T細胞応答があったことを示す。上述したように、本発明者らは、T細胞の活性化及び増殖のために、予測ネオエピトープペプチド及び個別化ネオエピトープペプチドを設計し、使用することができることを実証した。
【0210】
本実施例のT細胞を増殖させる方法、及び本実施例の増殖方法を用いて増殖させたT細胞は、本明細書に記載のがんの治療及び予防のための使用及び方法において実用性が見出される。
【表4】
【0211】
実施例6:MC38結腸直腸腫瘍特異的新生抗原に結合した貪食可能な粒子によるワクチン接種後の腫瘍成長を評価する腫瘍マウスモデル
【0212】
材料及び方法
6個の異なる貪食可能な粒子群を含む貪食可能な粒子組成物をこの試験で使用した(本明細書では「MC38粒子組成物」と呼ぶ)。各粒子群は、以下のタイプ、すなわち、1)配列番号13、2)配列番号14、3)配列番号15、4)配列番号16、5)配列番号17、6)配列番号18(表5参照)、のMC38新生抗原構築物のうちの1つに結合したポリスチレン粒子コア(Sera-Mag SpeedBeads(親水性)カルボキシレート修飾磁性粒子、GE Healthcare)を含んでいた。
【表5】
【0213】
各MC38新生抗原性構築物は、MC38結腸がん細胞株に由来する6つの異なる20~23アミノ酸の新生抗原ペプチド配列を含む。MC38新生抗原性構築物を、大腸菌を使用して組換え発現させ、カラムクロマトグラフィーを使用して精製した。
【0214】
MC38粒子は、実施例1で概説したプロトコルに従って調製した。作製後、貪食可能な粒子の6つの群を混合し、次いで、実施例2に記載のプロトコルを用いて滅菌した。PBS中1000万粒子/μlの濃度でMC38粒子組成物のストック溶液を調製した。
【0215】
試験マウス(n=5)に、MC38粒子組成物の第1及び第2の用量を投与した。各用量の総体積は10μlであった(MC38粒子組成物原液9.5μl、アジュバントとして0.05nmol CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN 1668、Enzo)0.5μl)。対照マウスは処置をしなかった(n=5、非ワクチン接種群)。
【0216】
最初の用量の貪食可能な粒子(MC38粒子組成物)を、MC38腫瘍細胞を移植する5日前に注射した(図9の時点A)。MC38腫瘍細胞を0日目に移植した(図9の時点B)。10個のMC38腫瘍細胞を各マウスに注射することによって移植を実現した。移植の13日後、マウスに、1回目の用量と同じタイプの貪食可能な粒子(すなわちMC38粒子)の2回目の用量(図9の時点C)を注射した。各マウスの腫瘍体積を試験の経過にわたって測定した(図9参照)。
【0217】
結果
結果を図9に示す。図9から分かるように、腫瘍成長は、ワクチン接種していないマウス(「陰性対照」マウス)と比較して、MC38粒子を投与したマウス(「ワクチン接種」マウス)で顕著に減少した。これらの結果は、MC38粒子が、MC38結腸直腸腫瘍
マウスモデルにおいて腫瘍成長を阻害する抗がん免疫応答を誘導するのに有効であることを示している。
【0218】
実施例7:毒性及び生体内分布試験
貪食可能な粒子の最大許容量を評価するために、ラットモデルを使用して、貪食可能な粒子のコアの毒性及び生体内分布プロファイルを評価する。
【0219】
材料及び方法
試験に使用した粒子は、Sera-Mag SpeedBeadカルボキシレート修飾磁性粒子(親水性)である。これらの粒子は、GE Healthcare Life Sciences(粒子ロット/バッチ番号 GE:16807675、濃度:ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水中2.3%固形分(g/100 g)(10mg Fe/mLに相当)、pH7.1)によって供給される。粒子は、使用前に2~8℃で保存する。
【0220】
動物は、詳細には、ウィスター系ラットである。試験場に到着した時点で、ラットの体重をおよそ250 gとする。ラットを試験開始前に最低5日間馴化させる。ラットを、個別に換気したケージ(IVC 4型)の中、+22℃±3℃、湿度50%±20%、12時間明/12時間暗のサイクルで飼育する。食物及び水は自由に摂取可能とする。ケージあたり3匹のラットとする。
【0221】
試験1)
5匹の雌ウィスター系ラットをパイロット試験に使用する。ラット#1に、実行可能な最大濃度(鉄50mg/kgに相当する濃度5mL/kg)の粒子を静脈内(IV)注射し、その後、画像を取得するためにラットをコンピュータ断層撮影(CT)カメラに入れる。静脈内注射は可能な限りゆっくりと行う。毒性応答が明らかな場合、粒子を20分間にわたってゆっくり注入することで残りのラットに送達する(最大20 mL/kg)。ラットに送達する粒子濃度を、最大許容量が特定されるまで滴定する。粒子の用量を受けていないラットを陰性対照としてバックグラウンドCTスキャンを取得するために使用する。
【0222】
粒子のIV注射/注入後、ラットをイソフルランで麻酔し、眼軟膏を眼に入れて脱水を防ぐ。次いで、ラットをCT装置の加熱床に置き、吸入麻酔を維持する。呼吸センサ及び直腸温度計を使用して、実験の過程においてバイタルパラメータ(脈拍及び呼吸)をモニターする。ラットをCTカメラに入れ、約20分間にわたって写真を取得する。粒子のIV注射後の健康状態を記録して、起こり得る毒性反応を評価し、全身CT画像を使用して粒子の視認性を評価し、注射後の粒子の位置を特定する。CT画像の取得後、ラットを安楽死させる。
【0223】
試験2)
12匹のラットを用いてさらなる試験を行って、粒子除去速度を同定する。全てのラットは、パイロット試験で特定した用量で粒子のIV注射を受ける。粒子の投与直後に、ラットをCTカメラに入れる。その後、ラットを、投与から24時間後、3日後、7日後、14日後及び1ヶ月後にCTカメラでモニターする。各時点で、組織病理学的分析のために器官を切除するべく2匹のラットを安楽死させる。ラットを、投与から24時間後、3日後及び7日後、そして、その後は週に1回、健康状態及び体重の変化についてモニターする。
【0224】
実施例7:バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)を使用した貪食可能な粒子滅菌プロトコルの例示
本実験は、層流空気流(LAF)安全キャビネット内で滅菌条件下で実施した。新生抗
原構築物に結合したコア(Sera-Mag SpeedBeadsカルボキシレート修飾磁性粒子、GE Healthcare)を含む貪食可能な粒子を、高濃度アルカリ溶液(2Mから5M NaOH)で4回洗浄した。最初の洗浄後、貪食可能な粒子を新しい滅菌チューブに移し、上清を除去し、2度目の量のアルカリ溶液を添加した。貪食可能な粒子を超音波処理浴中で10分間超音波処理し、次いで、同じアルカリ溶液中でくるくると回転させながら30分間インキュベートした。このプロセスをさらに2回繰り返した後、滅菌ダルベッコ修飾PBSで4回洗浄した。
【0225】
貪食可能な粒子(新生抗原が付着していないSera-Mag SpeedBeadsカルボキシレート修飾磁性粒子)に高負荷量(>1.2 CFU)のbacillus subtilissubsp.spizizenii(ATCC(登録商標)6633(商標)Epower 106 CFU)を加え、その後に続く上記のNaOH処理プロトコルでNaOH処理プロトコルの有効性を評価した。NaOH処理後、未処理の試料(陽性対照)との対比で5M又は2M NaOH処理の試料からの完全ビーズ懸濁液及び上清の双方を、抗生物質のない栄養寒天に播種し、37℃で一晩(>16時間)インキュベートした。
【0226】
結果
洗浄処理がないとbacillus subtilissubsp.spizizeniiのコロニーが多量に増殖したのに対して、5M及び2M NaOH処理のいずれも細菌の増殖を効果的に無効にした。結論として、2M及び5M NaOH処理のいずれも、貪食可能な粒子から人為的に高くしたバイオバーデンを除去するのに非常に有効であった。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6-1】
図6-2】
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
【配列表】
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