(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】濃縮された粒界を有する多結晶金属酸化物
(51)【国際特許分類】
C01G 53/00 20250101AFI20250205BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20250205BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20250205BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20250205BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250205BHJP
【FI】
C01G53/00
H01M4/36 C
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2021541559
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(86)【国際出願番号】 US2019057630
(87)【国際公開番号】W WO2020149910
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-10-21
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518275567
【氏名又は名称】カムエクス パワー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】CAMX Power LLC
【住所又は居所原語表記】35 Hartwell Avenue, Lexington, MA 02421, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100210099
【氏名又は名称】遠藤 太介
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン パレン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド オーファー
(72)【発明者】
【氏名】スレッシュ スリラムル
(72)【発明者】
【氏名】ケナン シャヒン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン レンペル
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/189887(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/025328(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 53/00
H01M 4/36
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムとニッケルと酸素とを含有する第1の組成物を含む複数の結晶子と、
前記複数の結晶子の隣接する結晶子間にある粒界であって層状のα-NaFeO
2型構造、立方晶構造、スピネル構造、またはこれらの組み合わせを有する第2の組成物を含む粒界と、
を含む粒子であって、
前記粒界におけるアルミニウムの濃度が前記結晶子中のアルミニウムの濃度よりも高い、または、前記粒界におけるアルミニウムの濃度が前記結晶子中のアルミニウムの濃度よりも高く且つ前記粒界におけるコバルトの濃度が前記結晶子中のコバルトの濃度よりも高く、
アルミニウムが前記粒界に前記第1の組成物中の遷移金属全体に対して
0.5at%~10at%で存在する粒子。
【請求項2】
前記粒界におけるアルミニウムの量が、前記第1の組成物中の遷移金属全体に対して
0.7at%~1.0at%である、請求項1記載の粒子。
【請求項3】
前記第2の組成物中のアルミニウムの濃度が前記第2の組成物中のCoの濃度以下である、請求項1記載の粒子。
【請求項4】
前記複数の結晶子が、α-NaFeO
2型の層状構造、立方晶構造、スピネル構造、またはこれらの組み合わせを有する、請求項1から
3までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項5】
前記結晶子が、Li
1+xMO
2+y
[式中、
-0.1≦x≦0.3、
-0.3≦y≦0.3であり、
Mは10原子パーセント以上のニッケルを含む]によって規定される第1の組成物を含む、請求項1から
3までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項6】
Mが75at%以上の原子パーセントのニッケルを含む、請求項
5記載の粒子。
【請求項7】
前記粒界が、前記第2の組成物中の遷移金属全体に対して約2at%~約99at%の量のコバルトを含む、請求項1から
3までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項8】
Mが追加の金属をさらに含み、前記追加の金属が約1at%~約90at%の量で存在し、
前記追加の金属がMg、Sr、Co、Al、Ca、Cu、Zn、Mn、V、Ba、Zr、Ti、Cr、Fe、Mo、B、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項
5記載の粒子。
【請求項9】
前記結晶子がコバルトを含み、前記コバルトの濃度が、前記第1の組成物中の遷移金属全体に対して0at%~約50at%の範囲である、請求項
5記載の粒子。
【請求項10】
前記結晶子がコバルトを含み、前記コバルトの濃度が、前記第1の組成物中の遷移金属全体に対して1at%~約10at%の範囲である、請求項
5記載の粒子。
【請求項11】
前記結晶子が約1at%~約60at%の量で存在するMnを含み、
前記粒界が約1at%~約60at%の量で存在するMnを含み、ここで前記at%は前記結晶子または前記粒界それぞれにおける遷移金属全体に対するものである、請求項1から
3までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項12】
前記粒界がNiとCoとAlとを含む、請求項1から
3までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項13】
前記粒界におけるNiの濃度が、前記粒界における遷移金属全体に対して90at%未満である、請求項1から
3までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項14】
前記粒子の表面に外側コーティングをさらに含み、前記外側コーティングが、
Al、Zr、Y、Co、Ni、Mg、およびLiから選択される1つ以上の元素の酸化物;
Al、Zr、およびLiから選択される1つ以上の元素を含むフッ化物;
Al、Co、Ni、Mn、およびLiから選択される1つ以上の元素を含む炭酸塩;
Al、Co、Ni、Mn、およびLiから選択される1つ以上の元素を含む硫酸塩;または
AlおよびLiから選択される1つ以上の元素を含むリン酸塩
を含む、請求項1から
13までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項15】
Li
1+xMO
2+y
[式中、
-0.1≦x≦0.3、
-0.3≦y≦0.3であり、
Mは80原子パーセント以上のニッケルを含む]によって規定される第1の組成物を含む複数の結晶子と、
前記複数の結晶子の隣接する結晶子間にある粒界であって、α-NaFeO
2型の層状構造、立方晶構造、スピネル構造、またはこれらの組み合わせを有する第2の組成物を含む粒界と、
を含む電気化学的に活性な多結晶二次粒子であって、前記粒界におけるアルミニウムの濃度が前記結晶子中のアルミニウムの濃度よりも高く、前記粒界におけるコバルトの濃度が前記結晶子中のコバルトの濃度よりも高く、前記アルミニウムが前記粒界全体に実質的に均一に分布し、アルミニウムが前記粒界に前記第1の組成物中の遷移金属全体に対して
0.5at%~10at%で存在する、粒子。
【請求項16】
前記粒界におけるコバルトの濃度が前記粒界におけるアルミニウムの濃度よりも高い、請求項
15記載の粒子。
【請求項17】
前記結晶子中のコバルトの濃度が約0~約17原子パーセントであり、
前記粒界におけるコバルト濃度が約0.5~約32原子パーセントであり、それぞれが前記粒子の遷移金属の原子組成全体を基準とするものである、請求項
15記載の粒子。
【請求項18】
Mが、Al、Mg、Co、Mn、Ca、Sr、Ba、Zn、Ti、Zr、Y、Cr、Mo、Fe、V、Si、Ga、およびBからなる群から選択される1つ以上の元素をさらに含み、前記1つ以上の元素が前記結晶子のLi層、M層、またはその両方に存在する、請求項
15記載の粒子。
【請求項19】
Mが、90パーセント以上の原子パーセントのニッケルを含む、請求項
15記載の粒子。
【請求項20】
カソード活物質を含む電気化学セルであって、前記カソード活物質が請求項1から
19までのいずれか1項記載の粒子を含む電気化学セル。
【請求項21】
45℃で100サイクルを超えるサイクルにおいて、4.2Vで100%未満のインピーダンス増加を特徴とする、請求項
20記載の電気化学セル。
【請求項22】
45℃で200サイクルを超えるサイクルにおいて、4.2Vで100%未満のインピーダンス増加を特徴とする、請求項
20記載の電気化学セル。
【請求項23】
リチウムとニッケルとコバルトとアルミニウムと酸素とを含む全体組成を有し、
リチウムとニッケルと酸素とを含有する第1の組成物を有する一次結晶子と、
複数の結晶子の隣接する結晶子間にある粒界であって、層状のα-NaFeO
2型構造、立方晶構造、スピネル構造、またはこれらの組み合わせを有し、リチウムとニッケルとコバルトとアルミニウムと酸素とを含む第2の組成物を含む粒界と、を含む粒子であって、
前記粒界におけるニッケルに対するアルミニウムの原子分率が、前記結晶子中のニッケルに対するアルミニウムの原子分率よりも大きく、前記粒界におけるニッケルに対するコバルトの原子分率が、前記結晶子中のニッケルに対するコバルトの原子分率よりも大きいか、または
前記粒界におけるニッケルに対するアルミニウムの原子分率が、前記全体組成のニッケルに対するアルミニウムの原子分率よりも大きく、前記粒界におけるニッケルに対するコバルトの原子分率が、前記全体組成のニッケルに対するコバルトの原子分率よりも大きいか、または
前記粒界におけるニッケルに対するアルミニウムの原子分率が、前記全体組成のニッケルに対するアルミニウムの原子分率よりも大きく、前記一次結晶子におけるニッケルに対するコバルトの原子分率が、前記全体組成のニッケルに対するコバルトの原子分率よりも小さいか、または
これらの組み合わせであり、アルミニウムが前記粒界に前記第1の組成物中の遷移金属全体に対して
0.5at%~10at%で存在する、
粒子。
【請求項24】
リチウム化合物とニッケル化合物とを混ぜ合わせて混合物を形成すること;
前記混合物を熱処理して、LiとNiとOとを含む第1の組成物を含む複数の結晶子と、前記複数の結晶子の隣接する結晶子間にある粒界とを含む前駆体を製造すること;
Alを含む処理溶液に前記前駆体を浸漬すること;
前記前駆体を乾燥させること;および
前記前駆体を熱処理して、前記粒界におけるアルミニウムの濃度が前記結晶子中のアルミニウムの濃度よりも高い粒子を形成すること
を含む、請求項1から
23までのいずれか1項記載の粒子を形成する方法。
【請求項25】
前記処理溶液が水系であるか、有機溶媒を含む、請求項
24記載の方法。
【請求項26】
前記処理溶液が、前記前駆体粒子中の遷移金属全体に対して
0.7at%~10at%のアルミニウム量と、前記前駆体粒子中の遷移金属全体に対して0.5at%~10at%のコバルト量とを含む、請求項
24記載の方法。
【請求項27】
前記処理溶液中のat%Alが前記処理溶液中のat%Co以下である、請求項
24から
26までのいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
前記複数の結晶子が、α-NaFeO
2型の層状構造、立方晶構造、スピネル構造、またはこれらの組み合わせを有する、請求項
24から
26までのいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
前記結晶子が、Li
1+xMO
2+y
[式中、
-0.1≦x≦0.3、
-0.3≦y≦0.3であり、
Mは10原子パーセント以上のニッケルを含む]によって規定される第1の組成物を含む、請求項
24から
26までのいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
Mが75at%以上の原子パーセントのニッケルを含む、請求項
29記載の方法。
【請求項31】
Mが追加の金属をさらに含み、前記追加の金属が約1at%~約90at%の量で存在し;
前記追加の金属が、Mg、Sr、Co、Al、Ca、Cu、Zn、Mn、V、Ba、Zr、Ti、Cr、Fe、Mo、B、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項
29記載の方法。
【請求項32】
前記粒界が、前記粒界における遷移金属全体に対して約2at%~約99at%の量のコバルトを含む、請求項
24から
26までのいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
アノードと、
電解質と、
カソードと、
を含む電気化学セルであって、前記カソードが複数の粒子を含む電気化学的に活性なカソード活物質を含み、前記複数の粒子が、リチウムとニッケルと酸素とを含有する第1の組成物をそれぞれ含む複数の結晶子と、
前記複数の結晶子の隣接する結晶子間にある粒界であって層状のα-NaFeO
2型構造、立方晶構造、スピネル構造、またはこれらの組み合わせを有する第2の組成物を含む粒界と、を含み;
前記電気化学的に活性なカソード活物質が180mAh/g以上の初期放電容量を有し;
45℃で100サイクルを超えるサイクルにおいて4.2Vで50%未満のインピーダンス増加を有し、前記粒界におけるアルミニウムの濃度が前記結晶子中のアルミニウムの濃度よりも高い、または、前記粒界におけるアルミニウムの濃度が前記結晶子中のアルミニウムの濃度よりも高く且つ前記粒界におけるコバルトの濃度が前記結晶子中のコバルトの濃度よりも高く、アルミニウムが前記粒界に前記第1の組成物中の遷移金属全体に対して
0.5at%~10at%で存在する、電気化学セル。
【請求項34】
45℃で200サイクルを超えるサイクルにおいて4.2Vで120%未満のインピーダンス増加を有する、請求項
33記載のセル。
【請求項35】
45℃で200サイクルを超えるサイクルにおいて50%の充電状態で50%未満のインピーダンス増加を特徴とする、請求項
33記載の電気化学セル。
【請求項36】
前記結晶子のそれぞれが、リチウム、ニッケル、コバルト、および酸素を含む、請求項
33記載のセル。
【請求項37】
前記結晶子のそれぞれがAlをさらに含む、請求項
36記載のセル。
【請求項38】
前記結晶子のそれぞれがMnをさらに含む、請求項
36記載のセル。
【請求項39】
前記結晶子のそれぞれがMgをさらに含む、請求項
36記載のセル。
【請求項40】
前記第1の組成物と前記第2の組成物が同じ元素を有する、請求項
33記載のセル。
【請求項41】
前記第1の組成物が、Li
1+xMO
2+y
[式中、
-0.95≦x≦0.3、
-0.3≦y≦0.3であり、
Mは80原子パーセント以上のニッケルを含む]によって規定される、請求項
33から
40までのいずれか1項記載のセル。
【請求項42】
Mが、Mg、Sr、Co、Al、Ca、Cu、Zn、Mn、V、Ba、Zr、Ti、Nb、Ta、Cr、Fe、Mo、W、Hf、およびBからなる群から選択される1つ以上の元素をさらに含み、前記1つ以上の元素が、前記結晶子のLi層、M層、またはその両方に存在する、請求項
41記載のセル。
【請求項43】
Mが90パーセント以上の原子パーセントのニッケルを含む、請求項
41記載のセル。
【請求項44】
前記結晶子がコバルトを含み、前記コバルト濃度が前記第1の組成物の遷移金属全体に対して1at%~約50at%の範囲である、請求項
33から
40までのいずれか1項記載のセル。
【請求項45】
前記結晶子がコバルトを含み、前記コバルト濃度が前記結晶子中の遷移金属全体に対して1at%~約15at%の範囲である、請求項
33から
40までのいずれか1項記載のセル。
【請求項46】
前記結晶子がCoおよびMgを含む、請求項
33から
40までのいずれか1項記載のセル。
【請求項47】
前記第1の組成物がAlを含まない、請求項
33から
40までのいずれか1項記載のセル。
【請求項48】
Alが、前記第1の組成物中の遷移金属全体に対して4原子パーセント未満で存在する、請求項
33から
40までのいずれか1項記載のセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月17日に出願された米国特許出願第16/250,615号、2019年1月17日に出願された米国特許出願第16/250,762号、および2019年1月17日に出願された米国特許出願第16/250,622号に従属し、かつこれらに基づく優先権を主張するものであり、これらそれぞれの内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
多結晶金属酸化物粒子、その製造方法、およびそれらを含む電気化学セルまたは電池が開示される。
【0003】
発明の背景
層状構造のリチウムニッケル酸化物(LiNiO2)に基づく材料は、歴史的に主要なLiCoO2カソード材料よりも一般に低コスト、高容量、および高定格容量を有しているため、リチウムイオン電池カソード用に開発されてきた。しかしながら、純粋なLiNiO2材料は、不十分な電気化学的安定性およびサイクル性能を示す。これに対処するために、構造を安定化してサイクル性能を改善する非ニッケル元素添加剤がLiNiO2に配合されたが、これは典型的には放電容量を犠牲にする。エネルギー密度の需要が高まるのに伴い、研究では、これらの非ニッケル添加剤を最適化および低減して高Ni材料の容量を得ると同時にサイクル性能を維持することに焦点が当てられてきた。
【0004】
そのため、長いサイクル寿命を有する高容量材料の需要に対応するために、新規な材料が必要とされている。本明細書で提供される材料およびそのような材料を形成する方法は、長いサイクル寿命にわたって高容量を維持することによってこの要求に対応する。
【0005】
発明の概要
以下の概要は、本開示に固有の革新的な特徴の一部を理解しやすくするために提供されており、完全な説明を意図するものではない。明細書全体、特許請求の範囲、図面、および要約書を全体として解釈することにより、本開示の様々な態様を完全に理解することができる。
【0006】
Liイオン二次電池のカソード電気化学活物質として使用される場合にインピーダンス増加が大幅に低減されることが見出された二次粒子が提供される。CoとAlとの組み合わせで二次粒子の結晶子間の粒界を選択的に濃縮することにより、改善されたインピーダンスプロファイルを達成することができ、これらの改善されたインピーダンスプロファイルが多くの組成的に異なる電気化学活物質で達成されることが見出された。
【0007】
そのため、リチウムとニッケルと酸素とを含有する第1の組成物を含む複数の結晶子と、複数の結晶子の隣接する結晶子間にある粒界であって層状のα-NaFeO2型構造、立方晶構造、スピネル構造、またはこれらの組み合わせを有する第2の組成物を含む粒界と、を含む粒子であって、粒界におけるアルミニウムの濃度が結晶子中のアルミニウムの濃度よりも高く、かつ粒界におけるコバルトの濃度が結晶子中のコバルトの濃度よりも高い、粒子が提供される。いくつかの態様では、粒界のAl濃縮は、不均一であるか、不完全であるか、あるいは達成されなかったが、本明細書に提供される製造プロセスが利用された場合、Al粒界濃縮を実現することができ、任意選択的にはCoおよびAlの粒界濃縮を実現できることが見出された。したがって、いくつかの態様では、Alは、複数の粒子全体に実質的に均一に分布している。
【0008】
いくつかの態様では、粒界におけるAlの量は、二次粒子の残りの部分の遷移金属全体の量の0.01at%~10at%である。任意選択的には、粒界におけるCoの量は、二次粒子の残りの部分の遷移金属全体の量の0at%~10at%であり、任意選択的には、二次粒子の残りの部分の遷移金属全体の量の0.1at%~10at%である。任意選択的には、粒界におけるAlの量は、二次粒子の残りの部分の遷移金属全体の量の0.01at%~5at%であり、粒界におけるCoの量は、二次粒子の残りの部分の遷移金属全体の量の0.01at%~10at%である。任意選択的には、粒界におけるアルミニウムの量は、粒界におけるCoの量以下である。
【0009】
いくつかの態様では、複数の結晶子は、α-NaFeO2型の層状構造、立方晶構造、スピネル構造、またはこれらの組み合わせを有する。
【0010】
任意選択的には、前述した態様またはその他の態様のいずれかにおける第1の組成物、第2の組成物、またはその両方は、Li1+xMO2+yによって規定され、式中、
-0.1≦x≦0.3、
-0.3≦y≦0.3であり、
Mは、10原子パーセント以上のニッケルを含む。任意選択的には、Mは、75at%以上の原子パーセントのニッケルを含む。任意選択的には、全体の粒界は、約2at%~約99at%の量のコバルトと、約2at%~約99at%の量のアルミニウムとを含む。任意選択的には、第1の組成物、第2の組成物、またはその両方において、Mは追加の金属をさらに含み、追加の金属は約1at%~約90at%の量で存在し、追加の金属は、Mg、Sr、Co、Al、Ca、Cu、Zn、Mn、V、Ba、Zr、Ti、Nb、Ta、Cr、Fe、Mo、W、Hf、B、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、これにより、1つ以上の追加の元素は、任意選択的には、Li層、M層、またはその両方に存在する。
【0011】
任意選択的には、結晶子はコバルトを含み、コバルト濃度は1at%~約50at%の範囲であり、任意選択的には1at%~約15at%の範囲である。いくつかの態様では、結晶子は、約1at%~約60at%の量で存在するMnを含み、粒界は、約1at%~約60at%の量で存在するMnを含む。別の態様では、粒界は、Ni、Co、およびAlを含む。任意選択的には、粒界におけるNiの濃度は75at%よりも大きい。
【0012】
粒子のいくつかの態様は、粒子の表面上の外側コーティングを含み、外側コーティングは、Al、Zr、Y、Co、Ni、Mg、およびLiから選択される1つ以上の元素の酸化物;Al、Zr、およびLiから選択される1つ以上の元素を含むフッ化物;Al、Co、Ni、Mn、およびLiから選択される1つ以上の元素を含む炭酸塩;またはAlおよびLiから選択される1つ以上の元素を含むリン酸塩または硫酸塩を含む。
【0013】
本明細書で提供される別の態様では、Li1+xMO2+y[式中、-0.1≦x≦0.3、-0.3≦y≦0.3であり、Mは80原子パーセント以上のニッケルを含む]によって規定される第1の組成物を含む複数の結晶子と;前記複数の結晶子の隣接する結晶子間にある粒界であって、任意選択的にはLi1+xMO2+y[式中、-0.1≦x≦0.3、-0.3≦y≦0.3である]によって規定され、任意選択的には層状のα-NaFeO2型構造、立方晶構造、またはこれらの組み合わせを有する第2の組成物を含む粒界と、を含む電気化学的に活性な多結晶二次粒子であって、粒界におけるアルミニウムの濃度が結晶子中のアルミニウムの濃度よりも高く、任意選択的には粒界におけるコバルトの濃度が結晶子中のコバルトの濃度よりも高く、アルミニウムが粒界全体に実質的に均一に分布している、粒子が提供される。任意選択的には、結晶子中のコバルトの濃度は、第1の組成物中のMの約0~約17原子パーセントであり、粒界におけるコバルトの量は、結晶子中のMの約0~約10原子パーセントである。任意選択的には、Mは、Na、K、Al、Mg、Co、Mn、Ca、Sr、Ba、Zn、Ti、Zr、Y、Cr、Mo、Fe、V、Si、Ga、およびBからなる群から選択される1つ以上の元素をさらに含み、前記1つ以上の元素は、結晶子のLi層、M層、またはその両方に存在する。任意選択的には、Mは、90パーセント以上の原子パーセントのニッケルを含む。
【0014】
電気化学セルも提供される。電気化学セルは、カソード活物質を含む。カソード活物質は、任意選択的には、本明細書の上または別の場所で示される粒子のいずれかを含む。この電気化学セルは、任意選択的には、45℃で100サイクルを超えるサイクルで100%未満、任意選択的には45℃で200サイクルを超えるサイクルで100%未満の、4.2Vにおけるインピーダンス増加によって特徴付けられる。
【0015】
アノードと、電解質と、カソードとを含む電気化学セル、任意選択的には二次電池、任意選択的にはリチウムイオン二次電池であって、カソードが、リチウムとニッケルと酸素とを含有する第1の組成物をそれぞれ含む複数の結晶子と、複数の結晶子の隣接する結晶子間にある粒界であって層状のα-NaFeO2型構造、立方晶構造、スピネル構造、またはこれらの組み合わせを有する第2の組成物を含む粒界と、を含む複数の粒子を含む電気化学的に活性なカソード活物質を含み、電気化学的に活性なカソード活物質が、180mAh/g以上の初期放電容量を有し、100サイクルを超えるサイクルで45℃で50%未満の4.2Vにおけるインピーダンス増加を有する電気化学セル、任意選択的には二次電池、任意選択的にはリチウムイオン二次電池も提供される。電気化学セルは、任意選択的には、50%の充電状態で、45℃で200サイクルを超えるサイクルで50%未満の、任意選択的には45℃で200サイクルを超えるサイクルで120%未満のインピーダンス増加によって特徴付けられる。いくつかの態様では、電気化学セルは、50%の充電状態で、45℃で200サイクルを超えるサイクルで50%未満のインピーダンス増加によって特徴付けられる。任意選択的には、結晶子のそれぞれは、リチウム、ニッケル、コバルト、および酸素を含む。任意選択的には、結晶子は、Al、Mn、Mg、またはこれらの組み合わせを含む。
【0016】
任意選択的には、前述した態様またはその他の態様のいずれかにおける第1の組成物、第2の組成物、またはその両方は、Li1+xMO2+yによって規定され、式中、
-0.95≦x≦0.3、
-0.3≦y≦0.3、
であり、Mは、80原子パーセント以上のニッケルを含む。任意選択的には、第1の組成物中のMは、第1の組成物中の遷移金属全体に対して75at%以上の原子パーセントのニッケルを含む。第2の組成物中では、Mは、任意選択的には、第2の組成物中の遷移金属全体に対して90at%以下である。任意選択的には、全体の粒界は、約2at%~約99at%の量のコバルトと、約2at%~約99at%の量のアルミニウムとを含む。任意選択的には、第1の組成物、第2の組成物、またはその両方において、Mは追加の金属をさらに含み、追加の金属は、第1の組成物または第2の組成物それぞれの中の金属全体に対して約1at%~約90at%の量で存在し、追加の金属は、Mg、Sr、Co、Al、Ca、Cu、Zn、Mn、V、Ba、Zr、Ti、Nb、Ta、Cr、Fe、Mo、W、Hf、B、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、これにより、1つ以上の追加の元素は、任意選択的には、Li層、M層、またはその両方に存在する。
【0017】
任意選択的には、結晶子はコバルトを含み、コバルト濃度は第1の組成物の遷移金属全体に対して1at%~約50at%の範囲であり、任意選択的には1at%~約15at%の範囲である。いくつかの態様では、結晶子は、約1at%~約60at%の量で存在するMnを含み、粒界は、約1at%~約60at%の量で存在するMnを含む。別の態様では、粒界は、Ni、Co、およびAlを含む。任意選択的には、粒界におけるNiの濃度は75at%よりも大きい。
【0018】
図面に記載されている態様は、本質的に図示的かつ例示的なものであり、特許請求の範囲によって規定される主題を限定することを意図するものではない。例示的な態様の以下の詳細な説明は、以下の図面と併せて読むことで理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本明細書に記載のいくつかの態様に従って提供される二次粒子の断面の概略斜視図である。
【
図2】本明細書で提供されるいくつかの態様による二次粒子を使用するフルセルの容量低下を示す図である。
【
図3】本明細書で提供されるいくつかの態様による二次粒子を使用するフルセルのインピーダンス増加を示す図である。
【
図4】Alのみ、またはCoの存在下でのAlが粒界に濃縮された、本明細書で提供される二次粒子のEDSマッピングの図である。
【
図5】結晶粒界を1.9at%のAlと4at%のCoの両方で濃縮することによって製造された、複数の結晶子を含む本明細書で提供される一態様による二次粒子の小領域の走査型透過電子顕微鏡写真(STEM)画像であり、3つのEDSスポット分析が行われた場所が示されている。
【
図6】
図5に示されている3つのスポットのEDSスペクトルの図である。
【
図7】処理溶液中にCoが存在しない状態で粒界に1.9at%のAlを濃縮することによって製造された、複数の結晶子を含む本明細書で提供される一態様による二次粒子の小領域のSTEM画像であり、2つのEDSスポット分析が行われた場所が示されている。
【
図8】
図7に示されている3つのスポットのEDSスペクトルの図である。
【
図9】Alのみ、または処理液中にCoが存在する状態でのAlを使用して、製造中の生粒子の粒界濃縮のための非水系処理によって製造された、本明細書で提供される二次粒子のEDSマッピングの図である。
【
図10】処理溶液中に0at%のAlが含まれるものおよび処理溶液中に0.5at%のAlが含まれるものを用いて製造された、本明細書で提供される態様に従って濃縮された活物質粒界が組み込まれたカソードを用いて形成されたセルについてのサイクル容量低下、ならびに追加のCo含有量へのそれらの依存性を示す図である。
【
図11】処理溶液中に0at%のAlが含まれるものと処理溶液中に0.5at%のAlが含まれるものとを用いて製造された、本明細書で提供される態様に従って濃縮された活物質粒界が組み込まれたカソードを用いて形成されたセルについてのインピーダンスの増加、ならびに追加のCo含有量へのそれらの依存性を示す図である。
【
図12】粒界におけるCo濃縮に加えてAlを取り込ませることにより観察される相乗的な利益を示す図である。
【
図13】様々なAlレベルを用いた3at%のCoプロセス利用により本明細書で提供されるいくつかの態様に従って粒界が濃縮されたカソード材料を有するセルのサイクル容量低下およびインピーダンス増加を示す図である。
【
図14】いくつかの態様による、本明細書で提供されるカソード活物質の様々なAl/Co濃縮原子パーセント比におけるインピーダンス増加を示す図である。
【
図15】Coの存在下でAlが濃縮された粒界である、本明細書で提供されるとおりに製造されたNCAの二次粒子の小領域における3つのスポットのSTEMおよびEDS分析の結果の図である。
【
図16】対照または本明細書で提供される態様による粒界濃縮NCA活物質を含有するカソードを用いて形成されたセルのサイクル容量低下を示す図である。
【
図17】対照または本明細書で提供される態様による粒界濃縮NCA活物質を含有するカソードを用いて形成されたセルのインピーダンス増加を示す図である。
【
図18】対照または本明細書で提供される態様による粒界濃縮NCM活物質を含有するカソードを用いて形成されたセルのサイクル容量低下を示す図である。
【
図19】対照または本明細書で提供される態様による粒界濃縮NCM活物質を含有するカソードを用いて形成されたセルのインピーダンス増加を示す図である。
【0020】
詳細な説明
以降の説明は、本質的に例示にすぎず、開示の範囲や、当然変わることがあるその適用または使用を限定することを決して意図するものではない。材料およびプロセスは、本明細書に含まれる非限定的な定義および用語との関連で説明される。これらの定義および用語は、本開示の範囲または実施に対する限定として機能するようには意図されておらず、例示および説明の目的でのみ提示されている。プロセスまたは組成物は、個々のステップの順序として、または特定の材料を使用して説明されるが、ステップまたは材料は、本発明の説明が当業者によって容易に理解できるように多くの方法で配置された複数のパーツまたはステップを含み得るように交換可能であってよいことが理解される。
【0021】
「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、本明細書では、様々な要素、構成要素、領域、層、および/または部分を説明するために使用される場合があるが、これらの要素、構成要素、領域、層、および/または部分はこれらの用語によって限定されるべきでないことは理解されるであろう。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層、または部分を別の要素、構成要素、領域、層、または部分から区別するためにのみ使用される。したがって、特に明記のない限り、以下で説明する「第1の要素」、「構成要素」、「領域」、「層」、または「部分」は、本明細書の教示から逸脱することなしに、第2の(または別の)要素、構成要素、領域、層、または部分と呼ぶことができる。
【0022】
本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、内容からそうでないとの指示が明確にない限り「少なくとも1つ」を含む複数形を含むことが意図されている。「または」は「および/または」を意味する。本明細書で使用される「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のあらゆる組み合わせを含む。本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」および/もしくは「含む(comprising)」、または「含む(includes)」および/もしくは「含む(including)」という用語は、記載されている特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことがさらに理解されるであろう。「またはこれらの組み合わせ」という用語は、前述した要素のうちの少なくとも1つを含む組み合わせを意味する。
【0023】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連技術および本開示の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈すべきであり、本明細書で明示的にそのように定義されていない限り、理想的な意味または過度に形式的な意味で解釈されない。
【0024】
LiMO2型のNiベースの層状材料は、初晶の緻密な多結晶凝集体である。これらは、典型的には、様々な前駆体材料から開始して、600℃~900℃の範囲の温度で標準的な固相プロセスを使用して製造される。前駆体材料は、典型的には、遷移金属水酸化物(M(OH)2)、リチウム前駆体(例えばLiOHまたはLi2CO3)、または他のドーパント用無機前駆体(例えば水酸化物、炭酸塩、硝酸塩)である。前駆体混合物の加熱中に、H2O、CO2、またはNO2などのガスの排出と共に多結晶LiMO2が形成される。
【0025】
適切な条件下で適切な前駆体を用いる焼結作用を行うと、結果として、電気化学活物質として機能し得るより大きな二次粒子へと形成される複数の一次結晶子が形成される。これらの一次結晶子の間の領域である粒界は、米国特許第9,209,455号にみられるようにCoで選択的に濃縮され得ることが以前に見出された。本開示において、本発明者らは、粒界の濃縮されたCoの一部をAlで置き換えることでインピーダンス増加をさらに低減し、かつサイクル寿命を改善することにより、さらに大幅な改良が達成できることを見出した。粒界におけるCoとAlとの間の相乗的関係、特により低い相対的なレベルのAlと組み合わされた2モルパーセントCoと5モルパーセントCoの間のCoレベル(結晶子中の合計のMの含有量に対して)は、この材料をカソード活物質として使用する電気化学セルのインピーダンス増加を大幅に低減し、サイクル寿命を改善することが理解される。
【0026】
したがって、本開示は、従来の材料と比較して、電池の充電/放電サイクル中のインピーダンス増加および/または容量低下の割合が低減された、Liイオン二次電池の正極(カソード)における使用に適したものなどの改良された電気化学活物質を提供する。また、同じ材料であるが粒界にCoとAlが濃縮されていない材料と比較してサイクルされたときにインピーダンス増加および容量低下の減少を示す、大きい放電容量のカソード活物質を実現するための様々な方法も提供される。
【0027】
本明細書で提供される多結晶層状構造のリチウム化金属酸化物は、強化された電気化学的性能および安定性を示す。この組成物は、電気化学サイクル中のインピーダンス増加割合を低減することによって、例えばそのような層状金属酸化物から製造された再充電可能なリチウムイオンカソードの電気化学的容量などの他の望まれる最終用途の物品特性を維持しながらも、電気化学的にサイクルされたNi含有多結晶LiMO2系材料の性能劣化を防止する。そのようなCoおよびAlが粒界に濃縮された材料は、LiOHと前駆体である水酸化物または炭酸塩とを含む成形体配合物をか焼して規定された粒界を有する粒子を形成し、次いで、CoとAlとの組み合わせで粒界を濃縮することによって容易に製造することができ、その結果、得られる粒子は粒界を有し、粒界におけるCoおよびAlの濃度は濃縮前よりも高く、任意選択的には一次結晶子内よりも高く、その外表面は二次粒子における粒界の端部を規定する。
【0028】
そのため、高い初期放電容量およびサイクル中の少ないインピーダンス増加を実現する手段として、リチウムイオン二次電池においてCoとAlとが濃縮された粒界を有する多結晶層状構造リチウム化金属酸化物を製造および使用する組成物、システム、および方法が提供され、それによって高い放電容量(例えばC/20で>205mAh/g)も有し得る高ニッケル配合物のこれまでの課題が克服される。
【0029】
提供される材料は、それぞれが第1の組成物を含む複数の結晶子を含む粒子を含む。複数の結晶子から形成された粒子は、二次粒子と呼ばれる場合がある。本明細書で提供される粒子は、一次結晶子の間に粒界を持つように独自に調整されている。CoとAlとの組み合わせで、任意選択的にはCoとAlとの特定の相対濃度で、これらの粒界を形成後に濃縮すると、粒子をカソードの構成要素として含有するセルのサイクル中のインピーダンス増加を低減し、性能およびサイクル寿命を改善する粒子が得られる。
【0030】
粒子は、第2の組成物から形成されているか第2の組成物を含む粒界を含むことが理解され、例えば粒界におけるコバルトおよびアルミニウムの濃度は、例えばそれに隣接する一次結晶子中のコバルトおよびアルミニウムの濃度よりも高い。粒界におけるCoおよびAlの濃度は、任意選択的には、平均で隣接する結晶子内の平均のCoおよびAlの濃度よりも高い。本明細書で提供される材料は、結晶子内のCoおよび/またはAl濃度(いずれかが存在する場合)が任意選択的には比較的均一である。均一であるか否かにかかわらず、粒界におけるCoおよびAlの濃度は、隣接する結晶子内のCoおよびAlの別々のまたは合計の平均値としての濃度よりも高い。任意選択的には、提供される材料は、コーティングされた二次粒子を得るために二次粒子の外表面に配置され得る追加の外側コーティング層を含む。
【0031】
本明細書で提供される粒子のいくつかの態様では、第1の組成物は、組成Li1+xMO2+yによって規定される多結晶層状構造リチウム化金属酸化物を含み、任意選択的にはそれからセルまたは電池が形成され、式中、-0.1≦x≦0.3かつ-0.3≦y≦0.3である。いくつかの態様では、xは、-0.1、任意選択的には0、任意選択的には0.1、任意選択的には0.2、または任意選択的には0.3である。任意選択的には、xは、-0.10以上、-0.09以上、-0.08以上、-0.07以上、-0.06以上、-0.05以上、-0.04以上、-0.03以上、-0.02以上、-0.01以上、0.00以上、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.10以上、0.11以上、0.12以上、0.13以上、0.14以上、0.15以上、0.16以上、0.17以上、0.18以上、0.19以上、0.20以上、0.21以上、0.22以上、0.23以上、0.24以上、0.25以上、0.26以上、0.27以上、0.28以上、0.29以上、または0.30以上である。いくつかの態様では、yは、-0.3、任意選択的には-0.2、任意選択的には-0.1、任意選択的には0、任意選択的には0.1、任意選択的には0.2、または任意選択的には0.3である。任意選択的には、yは、-0.30以上、-0.29以上、-0.28以上、-0.27以上、-0.26以上、-0.25以上、-0.24以上、-0.23以上、-0.22以上、-0.21以上、-0.20以上、-0.19以上、-0.18以上、-0.17以上、-0.16以上、-0.15以上、-0.14以上、-0.13以上、-0.12以上、-0.11以上、-0.10以上、-0.09以上、-0.08以上、-0.07以上、-0.06以上、-0.05以上、-0.04以上、-0.03以上、-0.02以上、-0.01以上、0.00以上、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.10以上、0.11以上、0.12以上、0.13以上、0.14以上、0.15以上、0.16以上、0.17以上、0.18以上、0.19以上、0.20以上、0.21以上、0.22以上、0.23以上、0.24以上、0.25以上、0.26以上、0.27以上、0.28以上、0.29以上、または0.3以上である。
【0032】
いくつかの態様では、Liは、Liのみである必要はなく、Mg、Sr、Na、K、およびCaからなる群から選択される1つ以上の元素で部分的に置き換えられていてよいことが理解される。Liを置き換える1つ以上の元素は、任意選択的には10原子%以下、任意選択的には5原子%以下、任意選択的には3原子%以下、任意選択的には2原子パーセント以下で存在し、これらのパーセントは材料中のLi全体に対するものである。
【0033】
第1の組成物中で提供されるMは、Niを含む。第1の組成物中のNiの量は、任意選択的には、M全体の10原子パーセント~100原子パーセント(at%)である。任意選択的には、MのNi成分は75at%以上である。任意選択的には、MのNi成分は80at%以上である。任意選択的には、MのNi成分は85at%以上である。任意選択的には、MのNi成分は90at%以上である。任意選択的には、MのNi成分は95at%以上である。任意選択的には、MのNi成分は、75at%以上、76at%以上、77at%以上、78at%以上、79at%以上、80at%以上、81at%以上、82at%以上、83at%以上、84at%以上、85at%以上、86at%以上、87at%以上、88at%以上、89at%以上、90at%以上、91at%以上、92at%以上、93at%以上、94at%以上、95at%以上、96at%以上、97at%以上、98at%以上、99at%以上、99.5at%以上、99.9at%以上、または100at%以上である。
【0034】
いくつかの態様では、第1の組成物中のMは、Niのみ、または1つ以上の追加の元素との組み合わせである。追加の元素は任意選択的には金属である。任意選択的には、追加の元素は、Al、Mg、Co、Mn、Ca、Sr、Zn、Ti、Y、Cr、Mo、Fe、V、Si、Ga、またはBうちの1つ以上を含み得るか、またはこれらのうちの1つ以上であってよい。特定の態様では、追加の元素には、Mg、Co、Al、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。任意選択的には、追加の元素は、Mg、Al、V、Ti、B、またはMn、またはこれらの組み合わせであってよい。任意選択的には、追加の元素は、Mg、Al、V、Ti、B、またはMnからなる群から選択される。任意選択的には、追加の元素は、Mg、Co、およびAlからなる群から選択される。任意選択的には、追加の元素は、Ca、Co、およびAlからなる群から選択される。いくつかの態様では、追加の元素は、MnまたはMg、またはMnとMgの両方である。任意選択的には、追加の元素は、Mn、Co、Al、またはこれらの任意の組み合わせである。任意選択的には、追加の元素にはCoおよびMnが含まれる。任意選択的には、追加の元素はCoおよびAlである。任意選択的には、追加の元素はCoである。
【0035】
第1の組成物の追加の元素は、第1の組成物中のMの約1~約90at%、具体的には約5~約80at%、より具体的には約10~約70at%の量で存在し得る。任意選択的には、追加の元素は、第1の組成物中のMの約1~約20at%、具体的には約2~約18at%、より具体的には約4~約16at%の量で存在し得る。いくつかの実例では、Mは、約75~100at%のNiと、0~15at%のCoと、0~15at%のMnと、0~10at%の追加の元素である。
【0036】
多結晶材料内で、各結晶子は、各粒子内で同じであっても異なっていてもよい任意の適切な形状を有し得る。さらに、各結晶子の形状は、異なる粒子内で同じであっても異なっていてもよい。その結晶の性質のため、結晶子はファセット化することができ、結晶子は複数の平坦な表面を有することができ、そして結晶子の形状は幾何学的形状に近似することができる。いくつかの態様では、結晶子は、不整合な結晶面を有する隣接する結晶子と融合される場合がある。結晶子は、任意選択的には多面体であってよい。結晶子は直線形状を有していてよく、断面で見た場合に、結晶子の一部または全体が直線であってよい。結晶子は、正方形、六角形、長方形、三角形、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0037】
特定の態様では、二次粒子は、CoおよびAlが濃縮された粒界を有しており、任意選択的には、粒界におけるCoおよびAlの原子パーセントは、全体にわたって平均される結晶子中のCoおよびAlの原子パーセントよりも大きい。例示的な図示としての
図1を参照すると、結晶粒界20,21は、隣接する結晶子10の間にあり、第2の組成物を含む。第2の組成物は、CoとAlの両方が結晶子中のCoおよびAlの濃度に対してそれぞれ独立して粒界で濃縮されていなければならないこと、いくつかの態様ではCoとAlの濃度が特定の濃度範囲内にあることに起因してインピーダンスの低減またはサイクル寿命の改善において相乗効果が付与され得ること、を除いて、米国特許第9,391,317号明細書および第9,209,455号明細書に記載のとおりであってよい。第2の組成物は、任意選択的には、層状のα-NaFeO
2型構造、立方晶構造、またはこれらの組み合わせを有する。上述したように、粒界におけるCoおよびAlの濃度は、結晶子中のCoおよびAlの濃度よりも高くなり得る。粒界が層状のα-NaFeO
2型構造を有する態様が具体的に言及される。欠陥のあるα-NaFeO
2型構造を粒界が有する別の態様が具体的に言及される。粒界の一部が立方晶またはスピネル構造を有する別の態様が具体的に言及される。
【0038】
粒界に部分的にまたは全体的に存在する第2の組成物は、組成物Li1+xMO2+y[式中、-0.1≦x≦0.3かつ-0.3≦y≦0.3である]によって規定されるリチウム化金属酸化物を任意選択的に含む。任意選択的には、第2の組成物と第1の組成物は、第1の組成物と比較して第2の組成物中にCoおよびAlが存在するまたはこれらの濃度が高いことを除いて同一である。第2の組成物のいくつかの態様では、xは、-0.1、任意選択的には0、任意選択的には0.1、任意選択的には0.2、または任意選択的には0.3である。任意選択的には、xは、-0.10以上、-0.09以上、-0.08以上、-0.07以上、-0.06以上、-0.05以上、-0.04以上、-0.03以上、-0.02以上、-0.01以上、0.00以上、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.10以上、0.11以上、0.12以上、0.13以上、0.14以上、0.15以上、0.16以上、0.17以上、0.18以上、0.19以上、0.20以上、0.21以上、0.22以上、0.23以上、0.24以上、0.25以上、0.26以上、0.27以上、0.28以上、0.29以上、または0.30以上である。いくつかの態様では、yは、-0.3、任意選択的には-0.2、任意選択的には-0.1、任意選択的には0、任意選択的には0.1、任意選択的には0.2、または任意選択的には0.3である。任意選択的には、yは-0.30以上、-0.29以上、-0.28以上、-0.27以上、-0.26以上、-0.25以上、-0.24以上、-0.23以上、-0.22以上、-0.21以上、-0.20以上、-0.19以上、-0.18以上、-0.17以上、-0.16以上、-0.15以上、-0.14以上、-0.13以上、-0.12以上、-0.11以上、-0.10以上、-0.09以上、-0.08以上、-0.07以上、-0.06以上、-0.05以上、-0.04以上、-0.03以上、-0.02以上、-0.01以上、0.00以上、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.10以上、0.11以上、0.12以上、0.13以上、0.14以上、0.15以上、0.16以上、0.17以上、0.18以上、0.19以上、0.20以上、0.21以上、0.22以上、0.23以上、0.24以上、0.25以上、0.26以上、0.27以上、0.28以上、0.29以上、または0.3以上である。
【0039】
第2の組成物中で提供されるMは、CoおよびAlを含む。存在する場合、Niの量は、任意選択的には、Mの0.01原子パーセント~99原子パーセント(at%)である。任意選択的には、第2の組成物中のMはNiを含まない。任意選択的には、第2の組成物中のNiの量(すなわち相対濃度)は、相対原子パーセント(Niが存在するそれぞれの組成物に関して)で第1の組成物中のNiの量よりも少ない。任意選択的には、MのNi成分は1at%以下である。任意選択的には、MのNi成分は5at%以下である。任意選択的には、MのNi成分は10at%以下である。任意選択的には、MのNi成分は20at%以下である。任意選択的には、MのNi成分は75at%以下である。任意選択的には、MのNi成分は80at%以下である。任意選択的には、MのNi成分は85at%以下である。任意選択的には、MのNi成分は90at%以下である。任意選択的には、MのNi成分は95at%以下である。任意選択的には、MのNi成分は、75at%以下、76at%以下、77at%以下、78at%以下、79at%以下、80at%以下、81at%以下、82at%以下、83at%以下、84at%以下、85at%以下、86at%以下、87at%以下、88at%以下、89at%以下、90at%以下、91at%以下、92at%以下、93at%以下、94at%以下、95at%以下、96at%以下、97at%以下、98at%以下、99at%以下、または99.9at%以下である。
【0040】
本明細書で任意選択的に提供される材料では、二次粒子の公称のまたは全体としての配合された組成物(例えば誘導結合プラズマ(ICP)によって特徴付けられる)、任意選択的には第1の組成物、または任意選択的には第2の組成物は、式LiMOによって規定され、式中、MはNiであり、任意選択的には第2の組成物中の1つ以上の追加の金属は、少なくともCoおよびAlを含まなければならない。結晶子の組成を規定する第1の組成物中のCoおよびAlのモル分率は、存在する場合、ICPによって決定される粒子組成全体中のCoおよびAl全体の別々のまたは合計のモル分率よりも低い。第1の組成物中のCoおよびAlの別々のまたは合計のモル分率は、ゼロであり得る。粒界を規定する第2の組成物中のCoおよびAlの別々のまたは合計のモル分率は、ICPによって測定される粒子全体中のCoおよびAlの別々のまたは合計のモル分率よりも高い。
【0041】
粒界内に位置する第2の組成物は、CoおよびAlを含み、任意選択的には粒界中のCoおよびAlの別々のまたは合計の濃度が結晶子中のCoおよびAlの別々のまたは合計の濃度よりも高いという条件でこれらを含み、任意選択的には粒界におけるCoの濃度は結晶子中のCoの濃度よりも高く、任意選択的には粒界におけるAlの濃度は結晶子中のAlの濃度よりも高い。粒界においてCoおよびAlを濃縮することが可能なプロセスを使用して、第1の組成物の遷移金属全体に対して0at%~8at%の量の濃縮されるべきCo、任意選択的には3at%~5at%の量のCoが含まれる液体溶液に、0.01at%~10at%のAl、任意選択的には1.5at%以下のAlを補給することができ、添加されたCoおよびAlが二次粒子の粒界に組み込まれた、サイクル中のインピーダンス増加の大幅な低下を示す材料を作り出すことが見出された。
【0042】
一次粒子サイズ分布は全体の組成および合成条件の変化に伴って変化するため、所定の二次粒子内の粒界の体積分率は変化することから、第2の組成物中のCoおよびAlの最終濃度は、異なる二次粒子間および個々の二次粒子内でも変化し得るものの、常に第1の組成物中のCoとAlの濃度よりも高いままである。したがって、粒界に添加されるCoおよびAlの量を第1の組成物に対して定めることが最も有用である。
【0043】
処理溶液中に供給されるCoおよびAlの量は、二次粒子に添加されて二次粒子全体の粒界に分布するCoおよびAlの平均量と見なされ、第1の組成物のMに対して示される。本明細書に記載の二次粒子を製造する場合、処理溶液中の事実上全てのCoおよびAlが、か焼前に粒子に付着していることが見出された。そのため、粒界を濃縮するために利用可能なCoおよびAlの量は、処理溶液中の量である。したがって、例えば、1at%のAlおよび2at%のCoである処理溶液が記述される場合、このat%は、粒界濃縮前の第1の組成物中のMの量に対するものである。そのため、本明細書で使用される処理溶液中のAlおよびCoのat%は、常に粒界濃縮される一次粒子中のM全体に対するものである。
【0044】
処理溶液中のAlの量は、任意選択的には0.01at%~10at%、任意選択的には9at%以下、任意選択的には8at%以下、任意選択的には7at%以下、任意選択的には6at%以下、任意選択的には5at%以下、任意選択的には4at%以下、任意選択的には3at%以下、任意選択的には2at%以下、任意選択的には1at%以下、任意選択的には0.1~1at%、任意選択的には0.5~1at%である。任意選択的には、処理溶液中のAlの量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、または1.5の原子パーセント以下である。
【0045】
任意選択的には、処理溶液中のCoの量は、3at%より大きく最大4at%であり、Alの量は、1at%未満、任意選択的には0.1~1at%、任意選択的には0.1at%から1at%未満である。任意選択的には、処理溶液中のCoの量は0.5at%~4at%であり、Alの量は0.01at%~10at%である。
【0046】
いくつかの態様では、処理液中のCoの量は約3at%である。このCo濃度では、Alの量は任意選択的には1at%未満である。サイクル中のインピーダンスの増加を低減するには、約0.3at%~0.7at%、任意選択的には約0.5at%のAl量が最適である。任意選択的には、Alは、複数の二次粒子間で実質的に均一に分配される。
【0047】
いくつかの態様では、処理液中のCoの量は約3.5at%である。このCo量では、Alの量は任意選択的には1at%未満である。サイクル中のインピーダンスの増加を低減するには、約0.3~0.7at%、任意選択的には約0.5at%のAl量が最適である。任意選択的には、Alは、複数の二次粒子間で実質的に均一に分配される。
【0048】
いくつかの態様では、処理液中のCoの量は約4at%である。このCo濃度では、Alの量は任意選択的には1.5at%未満である。サイクル中のインピーダンスの増加を低減するには、約0.7~1.3at%、任意選択的には約1.0at%のAl量が最適である。任意選択的には、Alは、複数の二次粒子間で実質的に均一に分配される。
【0049】
いくつかの態様では、処理液中のCoの量は約4.5at%である。このCo濃度では、Alの量は任意選択的には1at%未満である。サイクル中のインピーダンスの増加を低減するには、約0.3~0.7at%、任意選択的には約0.5at%のAl量が最適である。任意選択的には、Alは、複数の二次粒子間で実質的に均一に分配される。
【0050】
いくつかの態様では、処理液中のCoの量は約3at%である。このCo濃度では、Alの量は任意選択的には1.5at%未満である。サイクル中のインピーダンスの増加を低減するには、約0.5~1.3at%、任意選択的には約1.0at%のAl量が最適である。任意選択的には、Alは、複数の二次粒子間で実質的に均一に分配される。
【0051】
いくつかの態様では、処理液中のCoの量は約3at%~約4at%である。このCo濃度では、Alの量は任意選択的には1at%未満である。サイクル中のインピーダンスの増加を低減するには、約0.3~1.3at%、任意選択的には約0.5at%または約1.0at%のAl量が最適である。任意選択的には、Alは、複数の二次粒子間で実質的に均一に分配される。
【0052】
いくつかの態様では、処理液中のCoの量は約3at%である。このCo濃度では、Alの量は任意選択的には1.5at%未満である。サイクル中のインピーダンスの増加を低減するには、約0.5at%~1.3at%のAl量が最適である。任意選択的には、Alは、複数の二次粒子間で実質的に均一に分配される。
【0053】
いくつかの態様では、処理液中のCoの量は約4at%である。このCo濃度では、Alの量は任意選択的には1.0at%未満である。サイクル中のインピーダンスの増加を低減するには、約0.5at%~0.7at%のAl量が最適である。任意選択的には、Alは、複数の二次粒子間で実質的に均一に分配される。
【0054】
したがって、いくつかの態様では、Coの量が3at%から4at%まで増加するのに伴い、最も改善された結果を生むAlの量は、1.3at%未満から0.7at%未満まで移動する。任意選択的には、Alは、複数の二次粒子間で実質的に均一に分配される。
【0055】
任意選択的には、本明細書に記載の二次粒子のいくつかの態様によって示されるように、第2の組成物中のCoの量に対するAlの量は100at%以下である。これは、Alの量が任意選択的にはCoの量以下であることを意味する。任意選択的には、Coに対するAlの量は、90at%未満、任意選択的には80at%未満、任意選択的には70at%未満、任意選択的には60at%未満、任意選択的には50at%未満、任意選択的には40at%未満、任意選択的には30at%未満、任意選択的には20at%未満、任意選択的には10at%未満、任意選択的には9at%未満、任意選択的には8at%未満、任意選択的には7at%未満、任意選択的には6at%未満、任意選択的には4at%未満、任意選択的には3at%未満、任意選択的には2at%未満、任意選択的には1at%未満である。Alの量よりも多いCoの量が、同じまたはより高い濃度のCo単独と比較してインピーダンス増加を予想外に減少させる相乗関係を可能にすることが見出された。
【0056】
任意選択的には、第2の組成物中に、または複数の二次粒子間の粒界の一部または全体にわたって存在するAlは、実質的に均一である。例えば、Alのみの粒界濃縮のために本明細書で提供される方法によってAlが導入される場合、標準的な技術による粉末のEDSによって、Alを多く含む「ホットスポット」の存在が結果として観察され、これはAlの別々の相を生じさせることになるAlの不均一なまたは非効率的な粒界への取り込みを示す。しかしながら、処理溶液中に本明細書に記載の濃度のCoおよびAlが存在すると、EDSによって観察されたホットスポットがほぼまたは完全に存在しないことを示すAlのはるかに均一な分布が得られる。いくつかの態様では、Alのホットスポットの数および/またはサイズは、Coの同時濃縮がない状態でのAl粒界濃縮で生じるものと比較して、50%以上、任意選択的には60%以上、任意選択的には70%以上、任意選択的には80%以上減少する。
【0057】
アルミニウムの均一性は、2つの倍率でEDSを比較することによっても評価することができる。実施例1の表2には、広い領域(約150μm×150μm)についてのEDSによるアルミニウム濃度が表の最初の数値として示されており、続いて明らかなホットスポットのない粒子を中心としたはるかに狭い領域(約1μm×1μm)の平均EDS分析である2番目の数値が示されている。処理液中で4%のコバルトを使用した場合、これら2つの数値は互いに近くなる。しかしながら、コバルトを使用しない場合、ホットスポットではない狭い領域は広い領域に比べてはるかに少ないアルミニウムを有しており、これは、はるかに多くのアルミニウムが複数の二次粒子間で均一に分布するのではなく、ホットスポットに集中することを示している。
【0058】
いくつかの態様では、第2の組成物中のMは、1つ以上のNiを置換する元素(置換元素)をさらに含む。Ni置換元素は任意選択的には金属であり、これらの元素の存在がインピーダンス増加において観察される相乗的低減をもたらすことから、CoまたはAlではない。任意選択的には、置換元素は、Mg、Mn、Ca、Sr、Zn、Ti、Zr、Hf、Y、Cr、Mo、W、Fe、V、Nb、Ta、Si、Ga、またはBのうちの1つ以上を含むことができ、あるいはこれらのうちの1つ以上であってよい。第2の組成物の置換元素は、第1の組成物の約1~約90at%、具体的には約5~約80at%、より具体的には約10~約70at%の量で存在し得る。任意選択的には、追加の元素は、第1の組成物の約1~約20at%、具体的には約2~約18at%、より具体的には約4~約16at%の量で存在し得る。
【0059】
任意選択的には、第2の組成物中のLiは、Liのみである必要はなく、Mg、Sr、Na、K、およびCaからなる群から選択される1つ以上のLi置換元素で部分的に置換されていてよい。1つ以上のLi置換元素は、任意選択的には10at%以下、任意選択的には5at%以下、任意選択的には3at%以下、任意選択的には2原子パーセント以下で存在し、ここでのパーセントは製造したままの状態の材料中のLi全体に対するものである。
【0060】
本明細書で提供される二次粒子は、少なくとも2つの成分から、任意選択的には粉末形態で、成形体を合成することによって製造することができる。少なくとも2つの成分は、微粉化(または非微粉化)水酸化リチウムまたはその水和物と、ニッケル含有前駆体水酸化物と、任意選択的な1つ以上の他の元素とを含んでいてよく、前駆体水酸化物は、任意選択的には共沈プロセスによって得られる。最終粒子中の元素の最終的な全体組成(ただし必ずしも分布ではない)は、成形体の形成における前駆体材料の相対量を増加または減少させることによって調整され得ることが理解される。いくつかの態様では、水酸化リチウムまたはその水和物は微粉化される。成形体を形成する2種以上の粉末は、前駆体を完全に混合するために、混ぜ合わされ、ペイントシェーカーで振とうされる。次いで、成形体は、最高温度まで制御された空気または純粋な酸素雰囲気でか焼される。か焼は、任意選択的には、加熱曲線に従って行われる。その後、か焼された生成物は、自由流動性の粉末を形成するために処理することができる。
【0061】
いくつかの態様では、前駆体水酸化物は、混合金属水酸化物であってよい。いくつかの態様では、混合金属水酸化物は、NiとCoとMgとの金属組成物を含み得る。任意選択的には、混合金属水酸化物は、金属成分として、10~100at%のNiと、0~15at%のCoと、0~5at%のMgとを含む。任意選択的には、混合金属水酸化物は、10~100at%のNiと、0~30at%の範囲のCoと、0.1~80at%の範囲のMnとを含む。任意選択的には、混合金属水酸化物は、10~100at%のNiと、0~30at%の範囲のCoと、0~10at%の範囲のAlとを含む。任意選択的には、混合金属水酸化物の金属は、92at%のNiと8at%のCoである。任意選択的には、混合金属水酸化物の金属は、90at%のNiと、8at%のCoと、2at%のMgである。任意選択的には、混合金属水酸化物の金属は、89at%のNiと、8at%のCoと、3at%のMgである。任意選択的には、混合金属水酸化物の金属は、91at%のNiと、8at%のCoと、1at%のMgである。任意選択的には、混合金属水酸化物の金属は100at%のNiである。例えば、前駆体水酸化物は、ニッケル水酸化物ベースの材料を製造するための標準的な方法を使用して、Hunan Brunp Recycling Technology Co. Ltd. などの前駆体供給業者によって製造され得る。
【0062】
二次粒子は、多段階プロセスによって形成することができ、それにより第1の材料の粒子が形成され、か焼されることで、欠陥の少ないα-NaFeO2構造を有する一次粒子で任意選択的に規定された粒界が形成される。粒子は、その後、所望の濃度レベルでCoおよびAlを適用する液体プロセスを受け、続いて乾燥し、その後二回目のか焼を行い、その結果、表面にあるCoおよびAlの析出種が粒界に選択的に移動し、それによって結晶子中でよりも粒界でCoとAlの濃度が高い二次粒子が形成される。一例として本明細書で提供されるNi、Co、およびMgの塩基を有する二次粒子を製造する方法によれば、形成は、リチウム化合物と、1つ以上の金属または半金属の水酸化物前駆体化合物(例えば、共沈反応などによって予め生成された、混ぜ合わされたNi、Co、およびMg)とを混ぜ合わせて混合物を形成すること;混合物を約30~約200℃で熱処理して乾燥混合物を形成すること;乾燥した混合物を約200~約500℃で約0.1~約5時間熱処理すること;その後、600℃以上約800℃未満で約0.1~約10時間熱処理して二次粒子を製造すること;を含み得る。最初のか焼の最高温度は、水酸化物前駆体に使用される材料に応じて変わり、その材料に特有のものである。任意選択的には、最初のか焼において、最高温度は、850℃以下、任意選択的には720℃以下、任意選択的には715℃以下、任意選択的には710℃以下、任意選択的には705℃以下、任意選択的には700℃以下であってよい。任意選択的には、最初のか焼の最高温度は、約680℃以下であってよい。任意選択的には、最高温度は約660℃以下であってよい。任意選択的には、最高温度は約640℃以下であってよい。さらに別の態様では、最高温度は、約700℃未満、約695℃未満、約690℃未満、約685℃未満、約680℃未満、約675℃未満、約670℃未満、約665℃未満、約660℃未満、約655℃未満、約650℃未満、約645℃未満、または約640℃未満であってよい。最高温度におかれる時間は、任意選択的には10時間未満である。任意選択的には、最高温度におかれる時間は8時間以下、任意選択的には7時間以下、任意選択的には6時間以下、任意選択的には5時間以下、任意選択的には4時間以下、任意選択的には3時間以下、任意選択的には2時間以下である。
【0063】
か焼後、後続の処理は、得られた粉末が望まれるふるい、任意選択的には#35のふるいを通過するように、か焼された材料を乳鉢および乳棒で粉砕することを含み得る。次いで、粉末は、任意選択的には、2cmのドラムYSZメディアが入っている1ガロンのジャー内で、任意選択的には5分間、または材料が任意選択的には#270のふるいを通過できるのに十分な時間、ボールミル粉砕される。
【0064】
最初のか焼の生成物または粉砕された生成物は、その後、任意選択的には、2回目のか焼の後に濃縮された粒界が得られるような方法で処理され得る。一次粒子内の粒界を濃縮するプロセスは、適用プロセスがあるレベルのCoとあるレベルのAlとを含む液体溶液を使用することを除いて、米国特許第9,391,317号明細書および同第9,209,455号明細書に示されている方法によって、またはこれらに示されている組成物を使用して行うことができ、任意選択的には、それらのレベルは二次粒子の粒界においてCoおよびAlの相乗的濃縮を生じさせるレベルである。粒界濃縮元素は、任意選択的にはCoとAlとリチウム化合物とを含む水性スラリー中で、粉砕生成物を任意選択的には約60℃の温度で懸濁させることによって利用することができ、それにより、CoおよびAlは、本明細書に記載の濃度で水溶液中に存在する。次いで、スラリーは噴霧乾燥されて自由流動性粉末を形成し、これはその後2回目のか焼を受け、任意選択的には加熱曲線は2つの昇温/保持プロセスに従う。2つの昇温/保持温度プロファイルの1回目は、周囲温度(約25℃)から450℃まで、任意選択的には毎分5℃の割合であってよく、450℃で1時間保持される。続いて、2回目の昇温/保持は、毎分2℃の割合で450℃から最高温度までであってよく、最高温度で2時間保持される。いくつかの態様では、最高温度は約725℃未満であり、任意選択的には約700℃である。別の態様では、最高温度は約725℃、任意選択的には750℃である。
【0065】
上述した最高温度での最初のか焼を、粒界濃縮元素を適用するプロセスと組み合わせ、続いて同じく上述した2回目のか焼を行うことにより、インピーダンスの増加および/または容量の低下を大幅に改善して低減させるために、得られた粒子をカソードで使用できることが見出された。そのような組み合わせにより、追加のサイクル寿命が得られ、インピーダンスの増加が減少し、材料の電気化学的性能が大幅に改善されることが判明した。そのため、いくつかの態様では、組成Li1+xMO2+y[式中、-0.1≦x≦0.3かつ-0.3≦y≦0.3である]によって規定される多結晶層状構造リチウム化金属酸化物を含む第1の組成物を有する複数の結晶子を粒子が含むことが理解される。いくつかの態様では、xは、-0.1、任意選択的には0、任意選択的には0.1、任意選択的には0.2、または任意選択的には0.3である。任意選択的には、xは-0.10以上、-0.09以上、-0.08以上、-0.07以上、-0.06以上、-0.05以上、-0.04以上、-0.03以上、-0.02以上、-0.01以上、0.00以上、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.10以上、0.11以上、0.12以上、0.13以上、0.14以上、0.15以上、0.16以上、0.17以上、0.18以上、0.19以上、0.20以上、0.21以上、0.22以上、0.23以上、0.24以上、0.25以上、0.26以上、0.27以上、0.28以上、0.29以上、または0.30以上である。いくつかの態様では、yは、-0.3、任意選択的には-0.2、任意選択的には-0.1、任意選択的には0、任意選択的には0.1、任意選択的には0.2、または任意選択的には0.3である。任意選択的には、yは、-0.30以上、-0.29以上、-0.28以上、-0.27以上、-0.26以上、-0.25以上、-0.24以上、-0.23以上、-0.22以上、-0.21以上、-0.20以上、-0.19以上、-0.18以上、-0.17以上、-0.16以上、-0.15以上、-0.14以上、-0.13以上、-0.12以上、-0.11以上、-0.10以上、-0.09以上、-0.08以上、-0.07以上、-0.06以上、-0.05以上、-0.04以上、-0.03以上、-0.02以上、-0.01以上、0.00以上、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.10以上、0.11以上、0.12以上、0.13以上、0.14以上、0.15以上、0.16以上、0.17以上、0.18以上、0.19以上、0.20以上、0.21以上、0.22以上、0.23以上、0.24以上、0.25以上、0.26以上、0.27以上、0.28以上、0.29以上、または0.3以上である。結晶子は、M元素の10原子パーセント~100原子パーセント(at%)のNiの量を有する。任意選択的には、MのNi成分は75at%以上である。任意選択的には、MのNi成分は80at%以上である。任意選択的には、MのNi成分は85at%以上である。任意選択的には、MのNi成分は90at%以上である。任意選択的には、MのNi成分は95at%以上である。任意選択的には、MのNi成分は、75at%以上、76at%以上、77at%以上、78at%以上、79at%以上、80at%以上、81at%以上、82at%以上、83at%以上、84at%以上、85at%以上、86at%以上、87at%以上、88at%以上、89at%以上、90at%以上、91at%以上、92at%以上、93at%以上、94at%以上、95at%以上、96at%以上、98at%以上、99at%以上、または100at%である。M成分は、1つ以上の追加の元素を含み得る。追加の元素は任意選択的には金属である。任意選択的には、追加の元素は、Al、Mg、Co、Mn、Ca、Sr、Zn、Ti、Y、Cr、Mo、Fe、V、Si、Ga、またはBのうちの1つ以上を含むことができ、あるいはこれらのうちの1つ以上であってよい。特定の態様では、追加の元素は、Mg、Co、Al、またはこれらの組み合わせを含み得る。任意選択的には、追加の元素は、Mg、Al、V、Ti、B、またはMn、またはこれらの組み合わせであってよい。任意選択的には、追加の元素は、Mg、Al、V、Ti、B、またはMnからなる。いくつかの態様では、追加の元素は、MnもしくはMg、またはMnとMgの両方である。第1の組成物の追加の元素は、第1の組成物の約1~約90at%、具体的には約5~約80at%、より具体的には約10~約70at%の量で存在し得る。任意選択的には、追加の元素は、第1の組成物の約1~約20at%、具体的には約2~約18at%、より具体的には約4~約16at%の量で存在し得る。いくつかの実例では、Mは、約75~100at%のNiと、0~15at%のCoと、0~15at%のMnと、0~10at%の追加の元素である。得られる二次粒子は粒界を有し、それによりCoの量およびAlの量は結晶子中よりも多い。
【0066】
得られた粒子は、任意選択的には、Coが濃縮された粒界のみを有する粒子と比較して、任意選択的には粒界にCoが濃縮されていない粒子のサイクル特性を大きく改善するには不十分であると考えられていたCoのレベルで、インピーダンス増加の減少を示す。得られた二次粒子がLiイオンセルカソードの活物質である場合、45℃で4.2Vと2.7Vとの間でサイクルされたセルは、任意選択的には、50サイクルより多いサイクルで、任意選択的には60サイクルより多いサイクルで、任意選択的には70サイクルより多いサイクルで、任意選択的には80サイクルより多いサイクルで、任意選択的には90サイクルより多いサイクルで、任意選択的には100サイクルより多いサイクルで、任意選択的には110サイクルより多いサイクルで、任意選択的には120サイクルより多いサイクルで、任意選択的には130サイクルより多いサイクルで、任意選択的には140サイクルより多いサイクルで、任意選択的には150サイクルより多いサイクルで、任意選択的には200サイクルより多いサイクルで、完全に充電された(4.2V)状態で50%未満のインピーダンス増加を示す。
【0067】
別の態様では、45℃で4.2Vと2.7Vとの間でサイクルされたセルは、100サイクルより多いサイクルで、任意選択的には110サイクルより多いサイクルで、任意選択的には120サイクルより多いサイクルで、任意選択的には130サイクルより多いサイクルで、任意選択的には140サイクルより多いサイクルで、任意選択的には150サイクルより多いサイクルで、任意選択的には160サイクルより多いサイクルで、任意選択的には170サイクルより多いサイクルで、任意選択的には180サイクルより多いサイクルで、任意選択的には190サイクルより多いサイクルで、任意選択的には200サイクルより多いサイクルで、任意選択的には210サイクルより多いサイクルで、任意選択的には220サイクルより多いサイクルで、完全に充電された(4.2V)状態で100%未満のインピーダンス増加を示す。
【0068】
別の態様では、45℃で4.2Vと2.7Vの間でサイクルされたセルは、任意選択的には、50%の充電状態(SOC)で、200サイクルより多いサイクルで50%未満、任意選択的には200サイクルより多いサイクルで40%未満、任意選択的には200サイクルより多いサイクルで30%未満のインピーダンス増加を示す。
【0069】
本明細書で提供される電気化学セルは、任意選択的には、180mAh/g以上、任意選択的には185mAh/g、任意選択的には190mAh/g、任意選択的には195mAh/g、任意選択的には200mAh/g、任意選択的には210mAh/gの初期放電容量を有する本明細書で提供される粒子を、電気化学活物質粒子として使用する。
【0070】
図1に示されているように、第1の組成物を含む結晶子10と、第2の組成物を含む粒界20,21とを含む粒子であって、粒界におけるAlの濃度が結晶子中のAlの濃度よりも高く、かつ粒界におけるコバルトの濃度が結晶子中のコバルトの濃度よりも高い、粒子が開示される。粒子は複数の結晶子を含み、これは二次粒子と呼ばれる。任意選択的には、不動態化層または保護層などの
図1に30で示されている外層が、粒子の外表面に堆積され得る。外層は、二次粒子を完全にまたは部分的に覆うことができる。この層は、アモルファスであっても結晶であってもよい。この層は、Al、Ti、B、Li、またはSi、またはこれらの組み合わせなどの元素の酸化物、リン酸塩、ピロリン酸塩、フルオロリン酸塩、炭酸塩、フッ化物、オキシフッ化物、またはこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの態様では、外層は、ホウ酸塩、アルミン酸塩、ケイ酸塩、フルオロアルミン酸塩、またはこれらの組み合わせを含む。任意選択的には、外層は炭酸塩を含む。任意選択的には、外層は、ZrO
2、Al
2O
3、TiO
2、AlPO
4、AlF
3、B
2O
3、SiO
2、Li
2O、Li
2CO
3、またはこれらの組み合わせを含む。任意選択的には、外層はAlPO
4またはLi
2CO
3を含むか、これらである。この層は、粒子の望ましい特性に悪影響を及ぼさない任意のプロセスまたは技術によって堆積させて配置することができる。代表的な方法には、例えばスプレーコーティングおよび浸漬コーティングが含まれる。
【0071】
電気化学活物質の構成要素として、または唯一の電気化学活物質として、本明細書に記載の二次粒子を含む電極も提供される。本明細書で提供される二次粒子は、任意選択的にはカソードの活性成分として含まれる。カソードは、任意選択的には、活物質として上に開示した二次粒子を含み、さらに導電剤および/またはバインダーを含み得る。導電剤は、適切な特性を付与し、かつアモルファス、結晶、またはこれらの組み合わせであってよい任意の導電剤を含み得る。導電剤は、アセチレンブラックやランプブラックなどのカーボンブラック、メソカーボン、黒鉛、グラフェン、炭素繊維、単層カーボンナノチューブや多層カーボンナノチューブなどのカーボンナノチューブ、またはこれらの組み合わせを含み得る。バインダーとしては、適切な特性を付与する任意のバインダーを挙げることができ、これらには、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルブチラール-co-ビニルアルコール-co酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸メチル-co-アクリル酸エチル)、ポリアクリロニトリル、塩化ポリビニル-co-酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリビニルエーテル、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、スルホン化スチレン/エチレン-ブチレン/スチレンのトリブロックポリマー、ポリエチレンオキシド、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0072】
カソードは、本明細書に記載の粒子、導電剤、およびバインダーを、適切な比率で、例えば粒子と導電剤とバインダーとを合わせた総重量を基準として約80~約98重量パーセントの粒子と、約1~約20重量パーセントの導電剤と、約1~約10重量パーセントのバインダーとを混ぜ合わせることによって製造することができる。粒子、導電剤、およびバインダーは、N-メチルピロリジノンなどの適切な溶媒に懸濁し、アルミニウム箔などの適切な基材上に配置し、空気中で乾燥することができる。なお、基材および溶媒は、例示目的のみで示されているにすぎない。カソードを形成するために、他の適切な基材および溶媒を使用または組み合わせることができる。
【0073】
本明細書で提供されるカソードは、2025コインセルにおいて、MCMB 10-28黒鉛アノードと、ポリオレフィンセパレータと、1重量%VCを含む1/1/1(体積)のEC/DMC/EMC中に1MのLiPF6を含む電解質とを用いてサイクルさせたときに、任意選択的には、Coが単独で濃縮されているか、粒界が濃縮されていない材料と比較して、インピーダンス増加の大幅な低下を示す。インピーダンス増加の1つの評価基準は、20サイクル間隔のサイクル計画の中に散在する1C/1Cの充電/放電サイクルを有するセルの高レートサイクルによって得ることができる。4.2Vまでの1C充電の後に電圧が保持され、その間、電流がC/10レートに減衰するまでセル電圧が4.2Vに維持され、その後セルは開回路で5分間休止される。その後、完全に充電されたセルが放電したときに、放電の最初の10秒間に生じる電圧降下と、1Cの放電率とがオームの法則(V=IR)に当てはめられ、セルインピーダンスのDCR(直流抵抗)測定値が計算される。サイクル数に対してプロットされたインピーダンス測定値は、定義された傾きを持つ曲線になる。活性粒子材料が本明細書に記載のCoとAlとが濃縮された粒界を有する場合、結晶粒界がそのように濃縮されていない粒子と比較して、またはCoのみが濃縮された粒界を有する粒子と比較して、インピーダンスの傾きは小さくなる。いくつかの態様では、セルのインピーダンス増加は、最初の50サイクルで25%以下、任意選択的には最初の100サイクルで50%以下、任意選択的には最初の125サイクルで63%以下、任意選択的には最初の150サイクルで75%以下である。任意選択的には、インピーダンスの増加は、50サイクルで25%以下、任意選択的には100サイクルで50%以下、任意選択的には125サイクルで63%以下、任意選択的には最初の150サイクルで75%以下である。
【0074】
カソードを含む電池も開示される。電池は、例えば、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、またはリチウム電池であってよい。電池は、カソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に挟まれたセパレータとを含み得る。セパレータは、ミクロポーラス膜であってよく、これはポリプロピレン、ポリエチレン、またはこれらの組み合わせを含む多孔質フィルムを含んでよく、あるいはガラス繊維マットなどの織布系または不織布系の材料であってよい。アノードは、集電体上のコーティングを含み得る。コーティングは、例えば、黒鉛、コークス、硬質炭素などの適切なカーボン、またはメソカーボンマイクロビーズなどのメソカーボンを含み得る。集電体は、例えば、銅箔であってよい。
【0075】
電池は、正極(カソード)と、負極(アノード)と、セパレータとに接触し得る電解質も含む。電解質は、有機溶媒とリチウム塩とを含み得る。有機溶媒は、直鎖または環状のカーボネートであってよい。代表的な有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、スルホラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、3-メチル-1,3-ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、プロパンスルトン、またはこれらの組み合わせが挙げられる。別の態様では、電解質は高分子電解質である。
【0076】
電解質において有用な代表的なリチウム塩としては、限定するものではないが、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、LiN(SO2C2F5)2、LiSbF6、LiC(CF3SO2)3、LiC4F9SO3、およびLiAlCl4が挙げられる。リチウム塩は有機溶媒中に溶解することができる。前述したうちの少なくとも1つを含む組み合わせを使用することができる。リチウム塩の濃度は、電解質中で0.1~2.0Mとすることができる。
【0077】
電解質は、固体セラミック電解質であってよい。
【0078】
電池は、任意の適切な構成または形状を有することができ、円筒形または角柱状であってよい。
【0079】
本開示の様々な態様は、以降の非限定的な例によって説明される。実施例は例示を目的とするものであり、本発明の実施に対する限定ではない。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなしに変更および修正を行い得ることは理解されるであろう。
【0080】
実施例
実施例1:AlとCoとで粒界が濃縮された多結晶2Dα-NaFeO2型層状構造粒子。
【0081】
異なるタイプの粒界濃縮ありまたはなしの、それぞれカソード材料中にニッケルを多く含む電気化学的に活性な多結晶2Dα-NaFeO2型層状構造粒子を製造した。
【0082】
Li1.03Mg0.01Ni0.92Co0.08O2の組成を有する材料は、1リットルのジャーの中で252.1gのLi(OH)2(FMCより、脱水され微粉化されたLiOH*H2O)と961.6gのNi0.91Co0.08Mg0.01(OH)2(特注)とを乾式混合することによって製造した。ペイントシェーカーの中でジャーを振とうすることにより、化合物を混合した。
【0083】
混合した化合物をアルミナるつぼに入れ、焼結した。焼結は毎分約5℃の割合で約450℃まで加熱し、約450℃で約2時間保持することにより行った。次いで、温度を毎分約2℃で約700℃まで上げ、約6時間保持した。その後、サンプルを室温まで自然に放冷した。冷却したサンプルを約5分間粉砕し、凝集体を砕いてLi1.03Mg0.01Ni0.92Co0.08O2を得た。材料をXRDによって分析したところ、α-NaFeO2型の構造を示した。
【0084】
上記ベース材料を用いて、CoおよびAlが粒界濃縮された二次粒子のサンプルそれぞれ100gを製造した。Li、Co、およびAlの硝酸塩を、60℃に加熱した100gのH2Oに溶解した。添加したAlおよびCoの量は、Li1.03Mg0.01Ni0.92Co0.08O2の第1の組成物中のNi+Coと比較して、それぞれ1.9at%および4at%に対応するような量であった。配合されたLiNO3の量は、遷移金属+Alに対する最終的なLiの比率が1.01になるような量であった。
【0085】
上で製造した100gのLi1.03Mg0.01Ni0.92Co0.08O2をこれに添加し、得られたスラリーを30~120分間撹拌した。次いで、スラリーを噴霧乾燥して粉末を得た。得られた粉末をアルミナるつぼに入れ、毎分約5℃の割合で約450℃まで加熱し、約450℃で約1時間保持した。次に、温度を毎分約2℃で約700℃まで上げ、約2時間保持した。その後、各材料を100℃まで自然に放冷した。か焼した材料を、最初に乳鉢と乳棒で別々に粉砕し、次いでボールミルで粉砕した。
【0086】
全体として、それらの合成処方に基づいて、表1に示されている最終的な全体組成のAlおよび/またはCoによる粒界濃縮ありまたはなしの4つの材料を、上述した手順を使用して製造した。
【0087】
【0088】
得られた材料および対照を、NMP溶媒のスラリー中でPVDFバインダーおよび導電性カーボンとそれぞれブレンドし、アルミニウム箔集電体上にコーティングした。選択した材料の同様のコーティングもCu箔上に作製したため、箔に由来するAlを測定するリスクなしにFIB-STEM-EDSによりAl分布を分析することができた。その後、カソード電極を箔から打ち抜き、電気化学的サイクル寿命試験用のLiイオン「フル」コインセル形式で、MCMB 10-28黒鉛アノード、多孔質ポリプロピレンセパレータ、およびカーボネートベースの電解質と組み合わせた。カソード電極は、電気化学的放電容量試験用の「ハーフ」コインセル形式で、リチウム金属アノード、多孔質ポリプロピレンセパレータ、およびカーボネートベースの電解質とも組み合わせた。
【0089】
フルセルは、45℃での一連の充電および急速放電サイクルを通してサイクルさせた。低レートの放電容量およびインピーダンス値は、20回の充電/放電サイクルごとに測定した。一部の材料は、カソード形成に使用する前に、EDSおよび断面TEM/EDXによってさらに分析した。
【0090】
図2および3は、45℃でサイクルさせたフルセルの容量低下および関連するインピーダンスの増加を示している。
図2は、「粒界濃縮プロセスなし」(スラリーなし、噴霧乾燥、または2回目のか焼)サンプルと「粒界濃縮元素なし」(水性スラリー中にCo溶質またはAl溶質なし、噴霧乾燥、および2回目のか焼)サンプルが、ほぼ同じ高い割合で容量が低下したことを示している。「粒界濃縮元素なし」の材料は、水性スラリーおよびその後のか焼プロセスを受けたが、粒界濃縮元素を含まない水のみが使用された。
図3は、2つの材料が同様のインピーダンス増加率も有していたことを示しており、水への浸漬、噴霧乾燥、および2回目のか焼プロセスが大きな影響を及ぼさなかったことを示している。アルミニウムのみのサンプルは、粒界濃縮元素なしのベースラインに対してわずかな改善を示したが、コバルトのみの粒界濃縮で最も大きい改善が観察され、300サイクルで10%の低下であった。
【0091】
コバルトとアルミニウムのサンプルの両方で濃縮されたサンプル粒界(GB)は、コバルトのみよりも容量低下の改善を示さなかった。しかしながら、
図3に示されているように、これはインピーダンスの増加は大幅に少なく、100サイクル後のフル充電状態でのインピーダンスの増加は約50%であり、200サイクル後のインピーダンスの増加は約115%であった。CoとAlの両方がGB濃縮された材料は、CoのみがGB濃縮された材料よりもインピーダンス増加が30%低く、追加のCoを使用せずにそのようになった。
【0092】
か焼された材料のEDSマッピングによって示され、かつ
図4に示されているように、処理溶液中にCoが存在しないとリチウム化アルミナの別個の相が観察されることから、コバルトはアルミニウムの取り込みを大幅に改善する。AlのEDSによる元素マップの下の画像(明るい点)は、処理溶液にAlのみを配合した材料が、処理溶液にAlと共にCoを配合した材料よりもAlの「ホットスポット」が強く、多かったことを示している。これは、プロセス配合物へのCoの添加により複数の二次粒子間でAlがより均一に分布したことを示しており、か焼されたときに粒子に取り込まれるAlがCoによってはるかに多くなったことを示唆している。
【0093】
処理溶液中でCoと一緒に配合された場合の複数の二次粒子間のより均一なAlの分布および取り込みも、大きい面積(約150μm×150μm)にわたる粒子のAl分析についての定量的EDS結果を、ホットスポットではない場所で得られた3つのスポット(約1μm×1μm)分析を平均して得られたものに対して比較することによっても示された。表2は、Alのみが配合されたカソード粒子およびAlとCoとが配合されたカソード粒子についてのこれらの比較を示しており、またCoとAlとが配合された局所的な非ホットスポット分析から、広範囲にわたって得られたものと類似したAl含有量の結果が得られたことを示しており、Alが複数の二次粒子間で実質的に均一に分布していたことを示唆している。対照的に、Alのみが配合された材料は、広い領域よりも非ホットスポットAl分析結果の方がはるかに低く、これはAlの多くが複数の二次粒子間に均一に分布するのではなく、ホットスポット粒子中に集中していたことを示唆している。
【0094】
【0095】
2つの材料の薄いラメラにおけるSTEM/EDSによる定量的点分析からは、Alを含むプロセス配合物にCoを含めることにより、後続のか焼時に粒界へのAlの取り込みが促進されることが確認された。上述したCu箔上にコーティングされた各材料の二次粒子を集束イオンビーム(FIB)ミリングで切断し、厚さ約100nmの薄いラメラを得た。
図5は、1.9at%のAlと4at%のCoの両方が処理液に配合された粒界濃縮プロセスによって製造された粒子からの複数の結晶子を含む小領域の走査型透過電子顕微鏡写真(STEM)画像を示しており、3つのEDSスポット分析が行われた場所を示している。場所1および3は隣接する結晶子の内部にあり、場所2はその間にある粒界にある。
図6は、
図5でマークされた3つの場所で収集されたEDSスペクトルを示している。粒界のスペクトル2は約1.5keVでAlの明確なピークを示す一方で、結晶子内部のスペクトル1とスペクトル3は示さない。各スペクトルの6.9keVのCoピークを8.3keVのNiピークと比較することで示されるように、粒界のスペクトル2は、結晶子内部のスペクトル1およびスペクトル3でみられるよりも高いNiに対するCoの比率も示している。
図6のスペクトルを統合して得られた定量的な結果が表3に示されており、これはスペクトル2の粒界の場所でAlとCoの両方が濃縮されていることを示している。
【0096】
【0097】
Coの不存在下で処理溶液中に1.9at%のAlが存在する粒界濃縮プロセスによって製造された粒子に対して同じタイプのSTEM-EDS分析を行った。STEM画像およびEDS点分析の場所を
図7に示す。スペクトル1の場所は粒界にあり、スペクトル2の場所は結晶子内部にある。
図8は、
図7でマークした2つの場所で収集したEDSスペクトルを示している。いずれのスペクトルも、Alの存在を示しておらず、これらのCoピーク間にほとんど違いはみられない。
図8のスペクトルを統合して得られた定量的な結果が表4に示されている。これは、粒界とバルク結晶子の組成が同一であることを示しており、二次粒子のAl取り込みまたは粒界濃縮がほとんどないか全くないことを示唆している。
【0098】
【0099】
1.9at%のAl、4at%のCoの粒界濃縮材料については合計11個の粒界および10個の結晶子内部の場所で、ならびに1.9at%Alのみで濃縮された材料については16個の粒界および7個の結晶子内部の場所で、上述したタイプのSTEM-EDS点分析を行った。表5は、材料のバルク配合組成と比較したこれらの分析の平均の結果を示しており、Alのみを使用して液体プロセスを適用してからか焼すると、粒界のAl濃縮がほとんどまたは全くみられない(16か所のうち3か所で測定可能な量のAlを検出)一方で、AlとCoの両方で処理してからか焼すると、両方の元素が粒界にかなり濃縮されることを示している。
【0100】
【0101】
実施例2:非水系粒界濃縮プロセスによるAlとCoの両方での粒界濃縮。
【0102】
カソード材料中で異なるタイプの粒界濃縮がなされており、かつそれぞれニッケルを多く含む電気化学的に活性な多結晶2Dα-NaFeO
2型層状構造粒子を、非水系粒界濃縮プロセスによって製造した。Li
1.03Mg
0.01Ni
0.92Co
0.08O
2の組成の材料を実施例1の方法により製造した。次いで、この材料30gを、最終的な遷移金属+Alに対するLiの比率が1.01になるような十分なLiNO
3と共に、4at%のCo硝酸塩ありまたはなしで、溶解硝酸塩としての1.9at%のAlが入っている40mlのメタノールに分散させた。得られたスラリーをロータリーエバポレーターで乾燥させ、その後、回収した材料に対して実施例1の噴霧乾燥材料に適用したものと同じか焼手順を行った。
図9は、か焼された材料のAlのEDSマップを示しており、実施例1の水系プロセス材料でみられたように、Alのみが配合された材料は、Alと共にCoが配合された材料よりも、より強く、より多いAlの「ホットスポット」を有していたことを示している。この結果は、二次粒子によるAlのより均一な取り込みを促進するCoを用いた溶液処理の役割が、水系プロセスのアーチファクトではなく、溶媒蒸発による粒界濃縮元素の非水系堆積が酸塩基析出による水系堆積と同じ結果を与えることを示している。
【0103】
実施例3:AlとCoの両方での粒界濃縮によって得られる相乗的な利益。
【0104】
カソード材料中で異なるタイプの粒界濃縮がなされており、かつそれぞれニッケルを多く含む電気化学的に活性な多結晶2Dα-NaFeO2型層状構造粒子を、実施例1の方法により、Li1.03Mg0.01Ni0.92Co0.08O2ベース材料から製造した。これらの材料の製造に使用したAlおよびCoのプロセス配合物は、表6のマトリックスに示されている。
【0105】
【0106】
表6のとおりに濃縮された材料を用いてリチウムイオンコイン電池を組み立て、実施例1の方法に従ってサイクルさせた。
図10は、0at%のAl粒界濃縮材料および0.5at%のAl粒界濃縮材料を用いたセルのサイクル容量低下ならびにそれらの配合されたCo含有量に対する依存性を示している。様々な材料の容量は、配合物中のCoの増加と共に減少するが、容量の低下率は大きくは異ならず、200サイクルで4%~6%の範囲であり、配合物中の0.5at%のAlの有無による影響はほとんどみられない。しかしながら、
図11は、配合物中のCoレベルを上げるとインピーダンス増加が低下し、配合されたCoレベルが3at%から4at%に増加すると、200サイクルでの4.2Vのインピーダンスの増加が250%から130%に低下すること、ならびに溶液プロセス配合物中に0.5at%のAlをさらに含めると、配合物中のCoの全てのレベルでインピーダンス増加が大幅に低下し、溶液プロセス配合物中のCoレベルが3at%から4at%に増加すると、200サイクルでのインピーダンスの増加が150%から90%に低下することが示されている。
図12は、さらに、溶液プロセス配合物にAlを含めると相乗的な利益が観察され、Co濃度をさらに上げることのみで得られるよりもインピーダンスを大きく低下させることを示している。
【0107】
図13は、様々なAlレベルを有する3at%のCo溶液プロセス配合物から粒界濃縮されたカソード材料を有するセルのサイクル容量の低下(左)およびインピーダンスの増加(右)を示している。この図は、配合されるAlレベルを上げると、容量低下にほとんど影響を与えることなしにカソード材料の容量が減少することを示している(全てのセルは200サイクルにわたって6%~8%の範囲で低下する)が、配合されるAlレベルを0at%から1at%に増やすと200サイクルでの4.2Vのインピーダンスの増加を200%から120%に低下させるのに対し、Alレベルをさらに高くするとインピーダンス増加がわずかに上昇することを示している。
図13でプロットされたインピーダンスの増加が
図14にまとめられている。これは、処理溶液中にAlと共に3at%Coが含まれる場合、処理溶液の配合されたAl/Coのat%比が約0.3~0.4のときに最小のインピーダンス増加が得られることを示している。
【0108】
実施例4:NCA材料のAlおよびCoの粒界濃縮。
【0109】
一方がCoおよびAlの粒界濃縮を有しており、他方が有していない、同様の全体組成の2つのNCA材料を製造した。いずれの場合も、水酸化物前駆体を一緒にブレンドし、最終的なリチウム化酸化物が形成されて焼結されるまで酸素雰囲気中で焼成することによってベース材料を製造した。
【0110】
材料1:第1の組成物LiNi0.93Co0.04Al0.03O2を有し、第1の組成物中のM全体に対して追加の4at%のCoと、0.6at%のAlとで粒界が濃縮されたNCAベース材料。
【0111】
このプロセスのために、前駆体遷移金属水酸化物を使用した。これは、遷移金属に4at%のCoと3at%のAlとを含み、残部はNiであった。微粉化されたLiOH粉末は、500gのY安定化ジルコニア1/4インチ球の入ったプラスチックジャーに51gのLiOHを入れ、ペイントシェーカーで45分間振とうすることによって製造した。その後、この微粉化した粉末を、190.15gの遷移金属水酸化物前駆体が入っている別のプラスチックジャーに移し、ペイントシェーカーでジャーをさらに10分間振とうすることによって2つの粉末をブレンドした。ブレンドした後、約240gのブレンドした粉末を2つのるつぼに分割し、最初に5℃/分で450℃まで昇温し、2時間その温度で均熱化し、次に2℃/分で680℃まで昇温し、6時間均熱化することによって酸素雰囲気で焼成した。この加熱計画が終了した後、炉を130℃まで放冷し、粉末を取り出してボールミルに入れた。ボールミルには1/2インチのドラムメディアが入っており、これを使用して粉末を2分間粉砕した。次いで、粉末を270メッシュのふるいを通してふるいにかけた。材料をXRDによって分析したところ、α-NaFeO2型の構造が示された。
【0112】
その後、80gの水と、9.5gの硝酸コバルト(LiMO
2ベース組成物中のM全体に対して4at%のCo)と、1.9gの硝酸アルミニウム(LiMO
2ベース組成物中のM全体に対して0.6at%のAl)と、2.7gの硝酸リチウムとの溶液を作り、60℃まで加熱することによって、粉末をCoとAlとでコーティングした。これに、予め調製した粉末80gを添加した。スラリーを25分間撹拌し、その後これを噴霧乾燥して、スラリーから水を除去し、乾燥粉末を調製した。次に、この粉末を、最初に5℃/分で450℃まで加熱し、1時間均熱化し、その後2℃/分で700℃まで加熱し、2時間均熱化することにより、空気雰囲気で焼成した。次に、炉を130℃まで放冷し、粉末を炉から取り出し、270メッシュのふるいを通してふるいにかけた。
図15は、このように調製され、実施例1に記載のとおりにCu箔上にコーティングされた材料の薄く切断された二次粒子のSTEM顕微鏡画像を示している。
図15は、内部の粒界(GB)および隣接する一次粒子のバルク領域の3つのEDS点分析についてのAl/NiおよびCo/Nの原子比の結果も示している。これは、粒界にCoとAlの両方が濃縮されていることを示している。
【0113】
材料2:均質な第1の組成物LiNi0.89Co0.08Al0.03O2を有する比較のNCAベース材料
このプロセスのために、前駆体遷移金属水酸化物を使用した。これは、8at%のCoと3at%のAlとを含み、残部はNiであった。微粉化されたLiOH粉末は、500gのY安定化ジルコニア1/4インチ球の入ったプラスチックジャーに25.5gのLiOHを入れ、ペイントシェーカーで45分間振とうすることによって製造した。その後、この微粉化した粉末を、95.1gの遷移金属水酸化物が入っている別のプラスチックジャーに移し、ペイントシェーカーでさらに10分間振とうすることによって2つの粉末をブレンドした。ブレンドした後、約120gの粉末を1つのるつぼに入れ、最初に5℃/分で450℃まで昇温し、2時間その温度で均熱化し、次に2℃/分で680℃まで昇温し、6時間均熱化することによって酸素雰囲気で焼成した。その後、炉を130℃まで放冷し、粉末を取り出してボールミルに入れた。ボールミルには1/2インチのドラムメディアが入っており、これを使用して粉末を2分間粉砕した。次いで、粉末を270メッシュのふるいを通してふるいにかけた。材料をXRDによって分析したところ、α-NaFeO2型の構造を示した。
【0114】
上記カソード材料1および2を、実施例1に記載のとおりにコインセルに組み立てた。セルは、45℃で1C/1Cサイクルし、10秒の放電DCRをサイクルごとに100%充電状態(SOC)で、および20サイクルごとに50%SOCで測定した。各材料を用いて製造した2つのセルであるLiイオンコインセルの容量低下とインピーダンス増加の結果が、それぞれ
図16および
図17に示されている。2つの材料の全体の組成はほぼ同等であったが、粒界濃縮材料#1は粒界のバルク結晶子間に濃縮されたCoを含んでおり、材料#2は二次粒子全体に均一に分布した同等の全体量のCoを含んでいた。材料#1は材料#2よりもわずかに高い全体のAl含有量を有していたにすぎないが、過剰なAl(材料#2よりも約16%多いAl)は全て粒界に集中していた。均一組成の材料と比較した場合、GBE材料で容量低下とインピーダンス増加の両方が大きく改善された。
図16は、粒界濃縮材料#1が、均質材料#2よりもわずかに大きい容量(~1%)を有していることに加えて、材料#2の30%より大きい低下と比較して200サイクルでわずか8%の容量低下であったことを示している。
図17は、粒界濃縮材料#1を用いたセルでは、200サイクル後にフルSOC(4.2V)で100%のインピーダンスの増加を有し、50%SOCで30%のインピーダンスの増加を有していた一方で、材料#2を用いたセルでは、200サイクル後にフルSOCで800%より大きいインピーダンスの増加を有し、50%SOCで200%より大きいインピーダンスの増加を有していたことを示している。
【0115】
実施例5:NCM材料のAlおよびCo粒界濃縮。
【0116】
第1の組成物LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2を有するNCMベース材料(NCM811)を、10at%のCoと、10at%のMnと、残部のNiとを含有する共沈した前駆体遷移金属水酸化物から製造した。微粉化されたLiOH粉末は、500gのY安定化ジルコニア1/4インチ球の入ったプラスチックジャーに87.7gのLiOHを入れ、ペイントシェーカーで45分間振とうすることによって製造した。その後、この微粉化した粉末を、335.7gの前駆体遷移金属水酸化物が入っている別のプラスチックジャーに移し、ペイントシェーカーで2つをさらに10分間振とうすることによってブレンドした。ブレンドした後、約440gの粉末を3つのるつぼに分割し、最初に5℃/分で450℃まで昇温し、2時間その温度で均熱化し、次に2℃/分で770℃まで昇温し、770℃で10時間均熱化することによって酸素雰囲気で焼成した。次に、炉を130℃まで放冷し、粉末を取り出してボールミルに入れた。ボールミルには3/4インチのドラムメディアが入っており、これを使用して粉末を2分間粉砕した。次いで、粉末を270メッシュのふるいを通してふるいにかけた。
【0117】
その後、粉末を、ベース(追加の処理なし)、または200gの水と11.9gの硝酸コバルト(ベース組成物に対して2at%のCo)と3.1gの硝酸アルミニウム(0.4at%のAl)と3.4gの硝酸リチウムとの溶液を製造してから60℃まで加熱することによってCoとAlとが粒界濃縮されたものに分けた。これに、予め調製したリチウム化前駆体粉末200gを添加した。スラリーを10分間撹拌し、その後これを噴霧乾燥して、スラリーから水を除去し、乾燥粉末を調製した。次に、この粉末を、最初に5℃/分で450℃まで昇温し、その温度で1時間均熱化し、その後2℃/分で770℃まで昇温し、0.25時間均熱化することにより、空気雰囲気で焼成した。次に、炉を130℃まで放冷し、粉末を炉から取り出し、270メッシュのふるいを通してふるいにかけた。合成されたカソード粉末の全体の組成はLiNi0.079Co0.11Mn0.09Al0.006O2であった。
【0118】
その後、上記ベース材料および粒界濃縮NCM材料を、実施例1および4に記載の方法によってLiコインセルに組み立て45℃でサイクルさせた。各材料を用いて製造した2つのセルであるLiイオンコインセルの容量低下とインピーダンス増加の結果が、それぞれ
図18および
図19に示されている。両方の材料は良好なサイクル安定性を示し(
図18)、粒界濃縮材料の低下はわずかに少なく(ベース材料の約5%低下に対して、200サイクルで約4%の低下)、初期容量は若干低かった。それにもかかわらず、粒界濃縮材料は、同様の組成の均質なベース材料よりもはるかに低いインピーダンス増加を示し(
図19)、ベース材料では200サイクル後に100%SOCで225%インピーダンスが増加し、50%SOCで70%インピーダンスが増加したのに対し、200サイクル後の100%SOCで45%のインピーダンス増加および50%SOCで38%のインピーダンス増加であった。これらの結果は、比較的低いレベルでのAlおよびCoによる粒界濃縮がNCMに有益であることを示している。
【0119】
上記の説明の当業者には、本明細書で示され説明されたものに加えて、様々な修正が明らかであろう。そのような修正も本開示の範囲内に含まれることが意図されている。
【0120】
別段の明記がない限り、全ての試薬は当該技術分野で知られている供給業者から入手可能であることが理解される。
【0121】
本明細書に記載の特許、刊行物、および出願は、本開示に関する当業者の水準の指標である。これらの特許、刊行物、および出願は、個々の特許、刊行物、または出願が参照により本明細書に具体的かつ個別に組み込まれるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
前述した説明は、本発明の特定の態様を例示するものであるが、その実施を限定することを意味するものではない。