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特許7629405パルプ工場でのナトリウム損失の補充方法、漂白セルロースパルプの製造方法、及びシステム
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  • 特許-パルプ工場でのナトリウム損失の補充方法、漂白セルロースパルプの製造方法、及びシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】パルプ工場でのナトリウム損失の補充方法、漂白セルロースパルプの製造方法、及びシステム
(51)【国際特許分類】
   D21C 11/00 20060101AFI20250205BHJP
   D21C 9/10 20060101ALI20250205BHJP
   D21C 9/14 20060101ALI20250205BHJP
   D21C 9/16 20060101ALI20250205BHJP
   D21C 9/147 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
D21C11/00 Z
D21C11/00 C
D21C9/10 Z
D21C9/14
D21C9/16
D21C9/147
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2021547272
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 FI2020050092
(87)【国際公開番号】W WO2020165504
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】20195108
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】515326239
【氏名又は名称】メッツァ ファイバー オサケユキチュア
【氏名又は名称原語表記】METSA FIBRE OY
(73)【特許権者】
【識別番号】520102646
【氏名又は名称】アンドリッツ オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195017
【弁理士】
【氏名又は名称】水間 章子
(72)【発明者】
【氏名】アリ ポウッカ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェリ-ペッカ テルヴォラ
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表昭55-500508(JP,A)
【文献】国際公開第95/006775(WO,A1)
【文献】特開昭52-015602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースパルプを製造するためにクラフトプロセスを採用するパルプ工場での流出によって引き起こされるナトリウム損失をナトリウム補充化学物質で置き換える方法であって、前記パルプ工場は、前記クラフトプロセスの硫黄物質が供給されて、前記硫黄物質を酸化硫黄化合物に変換する、硫黄化合物の変換用ユニットを含み、前記方法は、本質的に水酸化ナトリウムを含まないナトリウム補充化学物質の供給を達成するために、硫酸ナトリウムを、場合によっては他のナトリウム塩と共に主な補充化学物質として使用することを含み、前記ナトリウム補充化学物質に含まれる硫黄の少なくとも一部は、前記硫黄化合物の変換用ユニットで酸化硫黄化合物を製造するために使用され
前記パルプ工場の硫黄化合物の変換用プラントが、前記クラフトプロセスの非凝縮性ガスの群から選択される硫黄物質が供給されている硫酸プラントを含む、方法。
【請求項2】
前記酸化硫黄化合物が、アルカリ金属重亜硫酸塩と、硫酸と、SOと、それらの組み合わせとの群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記硫酸ナトリウム、及び、補充化学物質として使用される他のナトリウム塩が、前記パルプ工場の前記ナトリウム損失の少なくとも80モル%を補充する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記補充化学物質として使用されるナトリウム化合物の少なくとも大部分が、硫酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム又はそれらの混合物を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
補充化学物質として使用されるナトリウム塩の少なくとも一部が、パルプ工場の副産物及び残留物の形態で提供され、前記パルプ工場の副産物及び残留物は、硫黄灰、及び、濾過ケーキ、並びに、それらの組み合わせの群から選択される、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記補充化学物質が、他のパルプ工場の副産物及び残留物の前記形態で提供される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記パルプ工場の前記ナトリウム損失が、5モル%未満の水酸化ナトリウムを含む補充化学物質によって置き換えられる、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記硫酸ナトリウム、及び、場合によってはナトリウム損失を置き換えるための主な補充化学物質として使用される他のナトリウム塩が、白液を再生するために前記パルプ工場の化学的再循環に供給されている、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
-パルプが、前記パルプ工場の化学的再循環で再生される白液を含む蒸解液を使用して、蒸解段階で製造される、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
-前記パルプ工場の化学的再循環で再生される白液の少なくとも一部が酸化され、かつ、
-このようにして得られた酸化白液が、アルカリ剤の新たな供給を少なくとも部分的に置き換えるために、前記パルプ工場のアルカリ流でアルカリ剤として使用される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化白液が、前記パルプ工場のアルカリ流のアルカリ媒体として使用されるか、又は、前記パルプ工場の流出物を含む流れのpHを調整するために使用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化白液は、漂白のアルカリ流のアルカリ媒体として使用されるか、又は、漂白の流出物のpHを調整するために使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記蒸解段階から得られる前記パルプは、オゾン、過酸化物、酸素、又はそれらの組み合わせを使用した、少なくとも1つのアルカリ酸化工程を含む完全無塩素漂白に供される、請求項10から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記蒸解段階から得られる前記パルプは、酸性pHで実施される第1の二酸化塩素工程と、酸性pHで実施される第2の二酸化塩素工程と、前記第1の二酸化塩素工程と前記第2の二酸化塩素工程との間で実施される中間アルカリ酸化工程とを少なくとも含む二酸化塩素漂白段階に供される、請求項から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
-硫酸ナトリウムが、ナトリウム損失を置き換えるための主な補充化学物質として使用され、前記硫酸ナトリウムは、白液を再生するために前記パルプ工場の前記化学的再循環に少なくとも部分的に供給される、請求項から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記アルカリ酸化工程の流出物が、前記パルプ工場の前記化学的再循環において、回収されて、少なくとも部分的に再循環される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
硫黄を含む非凝縮性ガス、臭気ガスが、前記硫酸プラントに供給される前に収集及び濃縮される、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記硫酸プラントで製造される硫酸が、第1の二酸化塩素漂白工程及び第2の二酸化塩素漂白工程のpHを調整するために使用される、請求項に記載の方法。
【請求項19】
前記硫酸プラントで製造される硫酸が、黒液から分離される未精製トール油石鹸の酸性化のために使用される、請求項に記載の方法。
【請求項20】
パルプが、前記クラフトプロセスの前記蒸解段階で、20から50%の硫化度を有する白液を含む蒸解液中で製造される、請求項に記載の方法。
【請求項21】
クラフトプロセスを採用しているパルプ工場で漂白セルロースパルプを製造する方法であって、
-パルプが、前記パルプ工場の化学的再循環で再生される白液を含む蒸解液を使用して、蒸解段階でリグノセルロース原材料から製造され、かつ、
-前記蒸解段階から得られる前記パルプは、漂白セルロースパルプを製造するために、少なくとも1つのアルカリ酸化工程を含む漂白段階に供され、
前記パルプ工場は、更に、硫酸又はアルカリ金属セスキ硫酸又はそれらの組み合わせを製造するための前記クラフトプロセスから収集される硫黄物質が供給されている硫酸プラントを含み、
-前記パルプ工場の化学的再循環で再生される白液の少なくとも一部が酸化され、
-このようにして得られた酸化白液は、漂白のアルカリ酸化工程で媒体として使用され、かつ、
-硫酸ナトリウムが、ナトリウム損失を置き換えるための主な補充化学物質として使用され、前記硫酸ナトリウムは、白液を再生するために前記パルプ工場の前記化学的再循環に少なくとも部分的に供給され、前記補充化学物質に含まれる硫黄の少なくとも一部は、前記硫酸プラントで硫酸又はアルカリ金属重亜硫酸塩又はそれらの組み合わせを製造するために使用される、方法。
【請求項22】
漂白が、完全無塩素漂白として、オゾン、過酸化物、酸素又はそれらの組み合わせを使用して実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記酸化工程が、酸素ガス及び過酸化物並びにそれらの組み合わせの群から選択される酸化剤の存在下、pHが10から14のアルカリ媒体中で実施される、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
二酸化塩素漂白の前記酸化工程の前記アルカリ媒体のアルカリ剤の少なくとも50モル%が、酸化白液からなる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アルカリ酸化工程の流出物の少なくとも一部が、白液を再生するために、前記パルプ工場の前記化学的再循環に再循環される、請求項21から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
漂白セルロースを製造するために、
-蒸解段階で得られる前記パルプが、酸性pHで実施される第1の二酸化塩素工程、酸性pHで実施される第2の二酸化塩素工程、及び、前記第1の二酸化塩素工程と前記第2の二酸化塩素工程との間に実施される中間アルカリ酸化工程を少なくとも含む二酸化塩素漂白段階に供される、請求項21から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の二酸化塩素工程と前記第2の二酸化塩素工程とが、最終pHが2から5.5の範囲で実施され、前記硫酸プラントで製造される硫酸が、前記第1の二酸化塩素工程と前記第2の二酸化塩素工程の液体媒体のpHを調製するために使用される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
補充化学物質として使用される前記硫酸ナトリウムは、パルプ工場の副産物及び残留物として得られる硫酸ナトリウム又は硫酸ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合物を少なくとも部分的に含み、硫黄副産物及び硫黄残留物は、硫黄灰、濾過ケーキ、及びそれらの組み合わせの群から選択される、請求項21から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
ナトリウム損失を置き換えるための前記補充化学物質は、パルプ工場の副産物及び残留物として得られる硫酸ナトリウム又は硫酸ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合物を含むか、又はそれらからなる、請求項21から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記パルプ工場の化学的再循環で再生される白液の少なくとも一部が酸化され、こうして得られた酸化又は部分酸化白液が、前記漂白のE、EO及び/又はEOP工程において、媒体として使用される、請求項21から29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
漂白工程からのろ液の一部が、化学サイクルに戻される、請求項21から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
-ナトリウム損失を置き換えるための前記補充化学物質が、パルプ工場の副産物及び残留物として得られる硫酸ナトリウム又は硫酸ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合物を含み、
-前記パルプ工場の化学的再循環で再生される白液の少なくとも一部が酸化され、そのようにして得られた酸化又は部分酸化白液が、前記漂白のEO工程で媒体として使用され、
-EO漂白工程からのろ液の一部が前記化学サイクルに戻される、請求項21から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
第1のパルプ工場と第2のパルプ工場とを含み、請求項29から32のいずれか1項に記載の方法を実施するように構成されており、前記補充化学物質は、前記第1のパルプ工場に由来し、前記第2のパルプ工場に供給され、そこでナトリウム損失を置き換える、システム。
【請求項34】
前記第2のパルプ工場が硫酸プラントを含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記第2のパルプ工場が、回収サイクルからの非プロセス成分を選択的に除去するためのユニットを含む、請求項33又は34に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプ工場でのナトリウム/硫黄バランスの制御に関する。特に、本発明は、クラフトパルプを製造するパルプ工場におけるナトリウム損失の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプ工場及び蒸解工程
【0003】
パルプ工場は木材チップからパルプを製造する。得られたパルプは、後に、紙又は板紙の製造に使用することができる。
【0004】
代表的なパルプ工場は、実際の製造パルプのため、そしてまた、価値ある副流を製造するための、多くの様々なユニット及び操作の組み合わせである。
【0005】
蒸解プロセスの第1段階は、高温のアルカリ環境中で、蒸解装置内の木材チップを蒸解すること(主な脱リグニン工程)である。蒸解液であるいわゆる白液は、主に、NaOH及びNaSで構成されている。この脱リグニン工程中に、繊維が解繊され、リグニンが抽出される。白液は、暗褐色の黒液になる。
【0006】
次の工程は洗浄であり、使用済の蒸解液は洗い流され、洗浄水は蒸解装置に戻され、やがては蒸発プラントに戻される。この段階では、パルプは漂白されていない。
【0007】
高輝度を得るために、パルプは漂白段階に導かれる。実際の漂白の開始前に、リグニン含有量を低減するために、酸素脱リグニンが漂白段階に先行してもよい。種々の漂白シーケンス及び化学物質が用いられる。基本的無塩素(ECF)漂白プロセスは、漂白剤としての二酸化塩素の使用に依拠している。酸素又は水酸化ナトリウムなどの塩素を含まない過酸化水素及び他の化学物質もまた、パルプの漂白に使用することができる。
【0008】
漂白プロセスの種々の段階は、A、Z、D、E、EO、EOP、P及びPO段階のように頭文字で呼ばれる。ここで、Eは、NaOH抽出の使用を言い、Oは、酸素の使用を言い、Pは、過酸化物の使用を言う。Aは酸加水分解段階、Zはオゾン段階であり、D段階はClO2を採用する。
【0009】
パルプ工場は、黒液蒸発プラント及び回収ボイラーを含み、これらはそれぞれ、蒸解装置から、そして場合によっては洗浄プラントからの使用済の蒸解液の濃縮と、濃縮物の燃焼のためとに使用される。ボイラーの固体出力である溶解物は主にNaCO及びNaSで構成されており、再か性へ導かれ、NaOH及びNaSを回収するためにCaOによって苛性化される。再か性からの固体(主にCaCO)は、CaOを回収するために石灰窯で燃焼され、再か性へと戻りリサイクルされる。このように、価値ある蒸解化学物質を回収して蒸解装置に戻すことができる。回収ボイラーはまた、主に硫酸ナトリウムと、炭酸ナトリウムと、少量のカリウムと、塩素塩とで構成されるフライアッシュを出力する。排出を減少させるために、電気集じん器(ESP)を使用して、煙道ガスからフライアッシュが収集される。
【0010】
Na/Sバランス並びにK及びClの蓄積
【0011】
クラフトプロセスによるパルプ製造の初期には、工場からの大気及び海への硫黄の排出及び漏れが多いという理由から、硫酸ナトリウムは重要な補充化学物質であった。プロセスの名前である「硫酸プロセス」は、硫酸ナトリウム補充化学物質に由来する。それ以来、パルプ工場は、排出に関する厳しい環境規制に応じるために、より閉鎖的なシステムとなった。
【0012】
現在、パルプ工場は、化学サイクルをより閉鎖して、硫黄の漏出を大幅に低減し、さらにはそれらを排除することに成功している。したがって、主に木材や化学物質として工場に到着する硫黄、カリウム及び塩化物は、工場の化学サイクル内に蓄積する傾向がある。化学サイクルからのS、K及びCl含有化学物質の除去は、通常、同時にNa損失につながり、そのような損失は、減少させて制御するにはより困難であることが証明されている。このことは、最も重要な補充化学物質が、ナトリウム損失の補償に向けられるという状況につながっている。
【0013】
例えば、フライアッシュの投棄によって硫黄が化学サイクルから除去されると、一定量のNa、K及びClも除去されるようになり、これは、望ましくないNa流出につながる。
【0014】
Na源
【0015】
ナトリウムは、通常、NaClOを原材料として使用する二酸化塩素プラントと補充NaOHとを介して化学サイクルにもたらされる。木材もある程度のナトリウムを含む。
【0016】
S源
【0017】
硫黄は、主に、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム及び硫酸などの化学物質の形で化学サイクルにもたらされる。酸素脱リグニン及び過酸化水素段階では、硫酸マグネシウムを使用し得る。トール油プラントでは、硫酸が供給される。硫酸は、pHを制御するために種々の段階でも使用される。二酸化塩素プラントから排出された使用済の酸は、硫黄を含む。
【0018】
損失
【0019】
ナトリウム及び硫黄の主な損失の1つは、回収ボイラーから浄化されたESP(電気集じん器)灰(フライアッシュ)である。このような浄化は、白液の硫化度を制御する目的で、あるいは、回収ボイラー内の塩素及びカリウム含有量を制御する目的で実行される。灰は、大量の硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、並びに、塩素及びカリウムを含む少量の塩を含む。パルプ工場からのその他の損失は、選別廃棄物、石灰泥損失、石灰窯粉塵、パルプが漂白工程に入るときの洗浄損失、及び苛性化プラントからのかす及びちりである。
【0020】
Na/Sバランスの制御並びにK及びClの蓄積
【0021】
通常、Na/S/K/Clバランスは、例えば、回収ボイラーフライアッシュの投棄、及び/又は、補充NaOHの追加によって制御される。
【0022】
回収ボイラーのフライアッシュを定期的な浄化に加えて、回収サイクルからCl及びKを選択的に除去するために、浸出(ALE)、蒸発結晶化(ARC)、凍結結晶化及びイオン交換などの種々の原理を使用した、いくつかのフライアッシュ処理プロセスが、現在のところ利用可能である。最初の3つのフライアッシュ処理プロセスが異なる原理を採用する一方で、これらはすべて基本的なスキームに従う。フライアッシュ及び水が灰処理ユニットに供給され、そこで混合されて処理される。結果として生じるスラリーは、液体及び固体の2つの部分から構成されている。液体部分は基本的にはフライアッシュの飽和溶液であり、固体部分よりもより多くのCl及びKを含み、より少ないSO 2+及びCO 2+を含む。これらの2つの部分は、その後、分離ユニットで分離される。液体流はCl及びKを除去するために浄化され、一方で、固定流はNa及びSを回収するために工場溶液に戻される。
【0023】
補充化学物質、そして特に、パルプ工場に供給される必要のあるナトリウム含有補充化学物質を低減する必要がある。
【0024】
トール油製造及びリグニン抽出などの価値ある副流を調製するために、硫酸プラントの能力を一層利用する必要がある。
【0025】
フライアッシュの投棄を減らし、プロセスにリサイクルする必要がある。
【発明の概要】
【0026】
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。いくつかの特定の実施形態は、従属請求項で定義されている。
【0027】
本発明の第1の態様によれば、セルロースパルプを製造するためにクラフトプロセスを採用するパルプ工場での流出によって引き起こされるナトリウム損失をナトリウム補充化学物質で置き換える方法が提供され、ここで、パルプ工場は、クラフトパルプの硫黄物質が供給されて、前記硫黄物質を酸化硫黄物質に変換する、硫黄化合物の変換用ユニットを含み、前記方法は、本質的に水酸化ナトリウムを含まないナトリウム補充化学物質の供給を達成するために、硫酸ナトリウムを、場合によっては他のナトリウム塩と共に主な補充化学物質として使用することを含み、硫酸ナトリウム補充化学物質に含まれる硫黄の少なくとも一部は、前記硫黄化合物の変換用ユニットで酸化硫黄化合物を製造するために使用される。
【0028】
本発明の第2の態様によれば、クラフトプロセスを採用しているパルプ工場で漂白セルロースパルプを製造する方法が提供され、ここで、パルプは、パルプ工場の化学的再循環で再生される白液を含む蒸解液を使用して、蒸解段階でリグノセルロース原材料から製造され、蒸解段階から得られるパルプは、漂白セルロースパルプを製造するために、少なくとも1つのアルカリ酸化工程を含む漂白段階に供される。パルプ工場は、更に、硫酸又はアルカリ金属セスキ硫酸又はそれらの組み合わせを製造するためのクラフトパルプから収集される硫酸物質が供給されている硫酸プラントを含み、再生白液の少なくとも一部が酸化される。このようにして得られた酸化白液は、漂白のアルカリ酸化工程で媒体として使用され、硫酸ナトリウムは、ナトリウム損失を置き換えるための主な補充化学物質として使用され、前記硫酸ナトリウムは、白液を再生するためにパルプ工場の化学的再循環に少なくとも部分的に供給され、補充化学物質供給に含まれる硫黄の少なくとも一部は、硫酸プラントで硫酸又はアルカリ金属重亜硫酸又はそれらの組み合わせを製造するために使用される。
【0029】
本発明の第3の態様によれば、第2の態様による方法を実行するために構成された第1のパルプ工場及び第2のパルプ工場を含むシステムが提供され、ここで、補充化学物質は、第1のパルプ工場に由来し、第2のパルプ工場に供給され、そこでナトリウム損失を置き換える。
【0030】
本発明の利点
【0031】
本発明の利点は、ナトリウムの損失を補償するために必要な補充水酸化ナトリウムが少ないことである。
【0032】
本発明の利点は、環境へのフライアッシュの投棄を減らすことができることである。
【0033】
本発明の利点は、使用済の酸を廃水処理プラントに送ることなく、ClOプラントからの大量の使用済の酸を内部で利用できることである。
【0034】
本発明の利点は、パルプ工場の硫酸プラントをより高性能で操作できることであり、したがって、内部使用及び外部使用のために、より多くの硫酸を製造することができる。
【0035】
本発明の利点は、トール油製造に必要なCOが少ないことである。
【0036】
本発明の利点は、パルプ工場において、例えばEOP漂白段階で使用される必要のある補充NaOHが少ないことである。
【0037】
本発明の利点は、石灰(CaO)が利用できない場合に、NaOHに替えて酸化白液を供給することで、費用効果の高い方法で廃水のpH調整を実施できることである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明の少なくともいくつかの実施形態によるパルプ工場の操作及び構成を概略的に示すプロセスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
定義
【0040】
本文脈において、「白液」という用語は、主な脱リグニン化学物質として、主にNaOH及びNaSを含むアルカリ蒸解媒体を指す。
【0041】
本文脈において、「黒液」という用語は、使用済の白液であって、溶解した有機乾燥固体、水、及び溶解した無機乾燥固体を含むものである。
【0042】
本文脈において、「非プロセス成分」という用語は、クラフト蒸解プロセスに必須ではない成分(Fe、Mn、Al、P、K、Clなど)を含む。カリウム(K)と塩素(Cl)はプロセスに関与することがあるが、これらも一般的にはNPEと見なされる。
【0043】
本文脈において、「D0段階」という用語は、第1のClO漂白工程を指し、「D1段階」は、第2のClO漂白段階を指す。
【0044】
本文脈において、「EO段階」という用語は、酸素及びNaOHが使用されるが過酸化物は使用されない漂白工程(アルカリ抽出)を指す。
【0045】
本文脈において、「EOP段階」という用語は、NaOHに加えて酸素及び過酸化物の両方が使用される漂白工程(アルカリ抽出)を指す。
【0046】
本文脈において、「補充化学物質」という用語は、脱リグニン、酸素脱リグニン、及び漂白プロセスから、及び/又はプロセスの通常の操作の間の流出により化学物質回収プロセスから失われる化学物質を置き換えるために使用される化学物質を指す。
【0047】
本文脈において、Na/Sバランスなどの化学バランスを評価するためのシステム境界は、少なくとも蒸解装置、酸素脱リグニン、及び漂白セクション、並びに化学物質回収及びリサイクルセクションがシステム内に定められるように配置される。
【0048】
本発明において、驚くべきことに、蒸解のいくつかの工程において、補充水酸化ナトリウムの供給の必要性がかなり低減されることがわかった。そのような工程の1つが酸化漂白工程であり、例えば、アルカリ条件で実施されるEOP漂白工程である。他の適切な工程は、EO又はE漂白工程である。
【0049】
本発明は、より少ないNaOH含有補充化学物質が必要とされるように、パルプ工場のNa/Sバランスを制御する新しい方法を提供する。
【0050】
この方法は、例えば、漂白セルロースパルプを製造するためのクラフトプロセスに適用可能であり、このパルプ工場は、硫酸を製造するためにクラフトプロセスのオフガスから収集される非濃縮性ガスが供給される硫酸プラントを含む。一実施形態によれば、水酸化ナトリウムを含まないナトリウム補充化学物質供給を達成するために、硫酸ナトリウムは、場合によっては他のナトリウム塩と共に、主な補充化学物質として使用される。硫酸ナトリウム補充化学物質に含まれる硫黄の少なくとも一部は、硫酸プラントで硫酸を製造するために使用される。製造される硫酸は、クラフトパルプ工場の内部又は外部で使用できる。
【0051】
一実施形態では、パルプは、クラフトプロセスの蒸解(脱リグニン)段階で、約20から50%、特に約35から42%の硫化度を有する白液を含む蒸解液中で製造される。
【0052】
一実施形態では、パルプは、少なくとも次の工程を含むクラフトプロセスによって調製される:蒸解(脱リグニン)工程、酸素脱リグニン工程、及び漂白工程。通常、硫黄含有の出力流は、硫酸を調製するために硫酸プラントで処理され、プロセスに再循環されるか、外部の使用に導くことができる。酸素脱リグニン工程及び/又は漂白において、白液の一部は酸化され、アルカリ性媒体として(苛性ソーダの供給源として)使用される。それにより、補充水酸化ナトリウムの投入は、この工程に対応して減らすことができる。補充化学物質の投入量を減らすことにより、ナトリウム及び/又は硫黄を含む代替化学物質、例えば、補充硫酸ナトリウム又は補充炭酸ナトリウムをプロセスに投入することが可能になる。
【0053】
一実施形態では、補充化学物質として使用される硫酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムなどの他のナトリウム塩は、この種のパルプ工場での損失をカバーするために必要なナトリウムのほとんど又はすべてさえを提供する。このようにして、水酸化ナトリウムの新規な供給は、実際には、完全に回避されるか、あるいは少なくとも大幅に減らすことができる。
【0054】
一実施形態では、補充化学物質供給は、本質的に水酸化ナトリウムを含まない。実際には、パルプ工場のナトリウム損失は、5モル%未満、特に2モル%未満、例えば0.5モル%未満の水酸化ナトリウムを含む補充化学物質によって置き換えられる。
【0055】
有利なことに、パルプ工場は、硫黄化合物の変換用ユニット(又はプラント)を含み、このユニットには、クラフトプロセスの硫黄物質が供給されて、前記硫黄物質を酸化硫黄化合物に変換する。硫黄化合物の変換のための前記ユニットは、硫酸プラントであり得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、酸化硫黄化合物は、アルカリ金属重亜硫酸と、硫酸と、SOと、それらの組み合わせとの群から選択される。
【0057】
特に、硫酸ナトリウムの使用により、プロセス流中の硫黄化合物の割合が増加する。そのような化合物のいくらかは、蒸解及び蒸発中、並びに、使用済の蒸解液のリサイクル及び再生中に気化する。硫黄ガスの少なくとも一部は、非凝縮性の臭気ガスである。クラフトプロセスのオフガスから収集されたこのようなガスは、収集及び濃縮され、硫酸プラントでの硫酸の製造に使用される。したがって、非凝縮性硫黄ガスを通して、補充化学物質供給に含まれる硫黄の少なくとも一部を、硫酸プラントで硫酸を製造するために使用することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、硫黄含有ガスは、熱処理(LHT)を介して黒液から、又は、硫化水素(GLSS)のストリッピングを介して緑液から遊離される。これらのガスは、内部又は外部で利用できる硫黄化合物を製造するために処理される。このような価値のある硫黄化合物の例には、硫酸、二酸化硫黄(SO水)及び重亜硫酸化合物が含まれる。亜硫酸水素ナトリウム及び二酸化硫黄(いわゆる「脱塩素剤」化学物質)は、最終パルプ製品から残留ClOを除去するために使用できるため、貴重な化学物質である。一部の工場では、二酸化塩素塔の端に「脱塩素剤」化学物質を追加して、悪影響や高濃度の残留二酸化塩素を最小限に抑えている。
【0059】
有利には、そのような硫黄化合物は、工場の硫黄含有オフガスから製造され、この硫黄化合物は、蒸解プロセスで内部的に、又は、他の工場の蒸解プロセスで外部的に利用するか、あるいは他の用途に販売することができる。亜硫酸水素ナトリウム及び二酸化硫黄は、別のパルプ工場に輸送して、そこで使用することができる。
【0060】
好ましい実施形態では、補充NaOHの少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%が、他のナトリウム含有補充化学物質、例えばClOプラントからの硫酸ナトリウム又は使用済の酸で置き換えられる。一実施形態では、硫酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムなどの他のナトリウム塩は、パルプ工場のナトリウム損失の少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも85モル%、特に90から100モル%を補う。
【0061】
一実施形態では、補充化学物質として使用されるナトリウム化合物の大部分は、硫酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム又はそれらの混合物を含む。十分な溶解性を有する他のナトリウム塩も使用することができるが、一般に、腐食の問題を考慮して、ハロゲン化物を回避することが好ましい。
【0062】
補充化学物質は、純粋な形態又は精製された形態で、例えば、80重量%を超える、特に90重量%以上の純度を有する購入化学物質として使用することができる。
【0063】
代替の補充化学物質は、他のパルプ工場の回収ボイラーからのフライアッシュ、別のパルプ工場のClOプラントからの廃酸などの別のパルプ工場に由来する場合があり、又はそれらは、商業的に得られた硫酸ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムなどの商業的起源であり得る。これらの化学物質の利点は、これらは水酸化ナトリウムよりも安価であるということである。このようにして、パルプ工場の操業中に必要とされる化学物質に関連する費用を制御して最適化することができる。
【0064】
一実施形態では、NaOH補充化学物質を部分的又は全体的に置き換える代替の補充化学物質は、他のパルプ工場などの補充化学物質が供給されるパルプ工場の外部の供給源に由来する。一実施形態では、本発明は、前記2つのパルプ工場を含むシステムを提供する。一実施形態では、前記代替補充化学物質は、商業的起源の硫酸ナトリウムを含むか、又は、それからなり、それらは、パルプ工場のナトリウム損失の少なくとも50モル%を補う。他の実施形態では、前記代替の補充化学物質は、他のパルプ工場からの廃酸及び/又はフライアッシュを含むか、又は、それらからなる。
【0065】
代替の補充化学物質がナトリウムだけではなく硫黄も含む場合、再生のために硫黄含有流出物をプラントに導くことによって、内部の硫酸プラントの利用を増大させることができる。
【0066】
硫黄非含有である必要のない他のナトリウム含有化学物質を使用することの利点は、例えば、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、廃酸及びフライアッシュから選択するよりもより多くの選択肢があることである。これらの代替品は、NaOHよりも大幅に安価な場合がある。それらはまた、化学サイクルのさらなる閉鎖に貢献し、したがって、環境又は埋立地に通じる排水の量を低減する可能性がある。
【0067】
特定の実施形態では、補充化学物質として使用されるナトリウム塩の少なくとも一部は、パルプ工場の副産物及び残留物の形態で提供される。例えば、硫黄副産物及び硫黄残留物は、回収ボイラーフライアッシュなどの硫黄灰、二酸化塩素プラントの塩ケーキなどの濾過ケーキ、及びそれらの組み合わせの群から選択される。これらの製品及び残留物の一部は、他のパルプ工場に由来する可能性がある。
【0068】
いくつかの実施形態では、本発明は、第1のパルプ工場及び第2のパルプ工場を含むシステムを提供する。補充化学物質は、第1のパルプ工場に由来し、第2のパルプ工場に供給され、そこでナトリウム損失を置き換える。第2のパルプ工場でナトリウム損失を置き換えるための補充化学物質は、第1のパルプ工場及び/又は第2のパルプ工場の副産物及び残留物として得られる硫酸ナトリウム又は硫酸ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合物を含む。
【0069】
好ましくは、第2のパルプ工場では、再生白液の少なくとも一部が酸化され、こうして得られた酸化白液又は部分酸化白液が、漂白のE、EO及び/又はEOP工程における媒体として使用され、好ましくは漂白のEO工程で使用される。
【0070】
好ましくは、第2のパルプ工場は硫酸プラントを含む。さらにより好ましくは、第2のパルプ工場はまた、回収サイクルからCl及びKを選択的に除去するためのフライアッシュ処理ユニットを含む。
【0071】
パルプ工場などの工業プロセスから回収された化学組成物を使用することにより、補充化学物質の費用を大幅に削減することができる。さらに、驚くべきことに、副産物及びリサイクル流の使用により、基本的に他の非プロセス成分が蓄積するリスクがあるが、利用可能な技術によって、NPE化合物をプロセス流から適切に除去できることがわかり、以下に説明するように、さらなる蓄積を回避することができる。
【0072】
通常、パルプ工場に接続された硫酸プラントは、大容量で運転することができない。生成される硫酸の量は、通常、0から15kg/ADt(空気乾燥トン)の範囲である。硫酸プラントの入力流は、化学サイクル、主に、蒸発プラントで生成される臭気ガス(非凝縮性ガス、NCG)から構成され得る。NCGはナトリウムを含まないため、硫黄が過剰な状況でNa/Sバランスを制御する簡単な方法になる。入力流は、LHTプロセス又はGLSSプロセスなどで製造される硫黄ガスを含み得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、硫酸プラントの入力流は、次のリストのうちの1つ又は複数を含む:CNCG(濃縮非凝縮性ガス)、蒸解からのCNCG、蒸発真空システムからのCNCG、加圧BL貯蔵からのCNCG、メタノール液化からのCNCG、LHTからのCNCG、メタノール精製からのCNCG、SOG(ストリッパーオフガス)、液化MeOH(未精製)、緑液ストリッピングからのガス。
【0074】
本発明において、硫酸プラントの存在は、硫黄含有補充化学物質の使用が増加する状況において、Na/Sバランスの効率的な制御を可能にするので、有利である。本発明を使用することにより、プラントによって生成される硫酸の量は、30kgHSO/ADt、又は、それより高いレベルに増加させることができる。
【0075】
本発明は、回収ボイラーフライアッシュ及び二酸化塩素(ClO)プラント廃酸の投棄を回避又は低減することができる。このような投棄は、通常、プロセスで蓄積された硫黄を取り除くために使用されるが、灰にはナトリウム化合物も含まれているため、同時にナトリウムの損失が発生する。
【0076】
硫酸プラントが過剰な硫黄の問題を解決する一方で、黒液は、化学的回収プロセスを妨害する高レベルの非プロセス成分を含み得る。これらの非プロセス成分は、木材(原材料)、水、補充化学物質又は漂白に由来するろ液に由来する。したがって、本発明において、工場は、特に、代替の補充化学物質が同じ又は別のパルプ工場からのフライアッシュ、又は非プロセス成分のレベルが高い他の出力流である場合、化学サイクルからの塩素及びカリウムなどの非プロセス成分を除去するためのシステムを含むことが好ましい。フライアッシュは相当量の塩素及びカリウムを含んでいてもよい。
【0077】
化学サイクルからNPEを除去するための様々なプロセスが知られている。このようなプロセスは、回収ボイラーのCl又はKレベルが高すぎる場合に使用できる。このような状況は、漂白から戻される原材料(木材)、補充化学物質、水及び/又はろ液が大量のCl及び/又はKを含む場合に発生し得る。酸素脱リグニン後の酸素後洗浄、又は脱リグニン後の褐色ストック洗浄におけるECF漂白からのろ液の一部の使用は、特に、化学的回収サイクルにおけるCl含有量を増加させる。通常、例として、回収ボイラーフライアッシュでは、Clの量は2重量%を超えてはならず、Kの量は3重量%を超えてはならない。これらの値は、回収ボイラーの材料、並びに使用される圧力及び温度によって異なる。
【0078】
いくつかの実施形態では、Cl及びKは、次の方法のいずれか1つによって回収サイクルから除去される:浸出(ALE)、蒸発結晶化(ARC)、凍結結晶化、又はイオン交換。
【0079】
本発明はまた、特に、灰が大量のCl及び/又はKを含む場合、NPEのためのARC又はALE除去システムを利用することによって、他のパルプ工場で製造されたフライアッシュを投入することを可能にする。
【0080】
NPEを除去するための例示的なシステムは、アンドリッツによって供給される灰再結晶化システム(ARC)又は灰浸出システム(ALE)である。
【0081】
ARCプロセスにおいて、灰は、きれいな凝縮物(あるいは他のカルシウムを含まない水源)に完全に溶解される。溶解後、灰溶液は晶析装置にポンプで送られ、そこで硫酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムが溶液から沈殿するまで水が蒸発される。沈殿した結晶は増粘剤に送られ、例えば、プッシャー遠心分離機で分離される。分離された液体のほとんどは、ナトリウム損失を最小限に抑えるために晶析装置に再循環される。残りの液体は、化学サイクルから溶解した塩化物とカリウムを除去するために取り除かれる。
【0082】
灰浸出(ALE)において、ESP灰は、蒸発器からの高温の二次凝縮物に部分的に溶解される。部分的に溶解した後、遠心分離機を使用して固体及び液体が分離される。固体は主に硫酸ナトリウム炭酸ナトリウムで構成され、一方で、ろ液は塩化物とカリウムが豊富である。分離後、固体は重黒液と混合される。Cl及びKを除去するために、液体画分の一部がシステムから除去される。ろ液の残りは、ESP灰からのナトリウムの過剰な溶解を防ぐために、浸出タンクにリサイクルされる。
【0083】
一実施形態では、工場はトール油プラントを含む。トール油プラントは、トール油石鹸が黒液から分離されている蒸解及び/又は蒸発プラントから、その摂取量であるトール油石鹸を受け取る。石鹸は蒸発プラントの操作を妨げることに加えて、価値ある副流であるため、分離する必要がある。トール油石鹸から粗トール油を調製するために、例えば硫酸プラントからの補充硫酸が添加される。補充硫酸の量を減らす1つの方法は、トール油石鹸の酸性化のための補充二酸化炭素を使用することである。しかしながら、COベースのプロセスはあまり効果的ではなく、一定量の硫酸をCOと一緒に投入する必要がある。本発明を使用することの利点は、COの投入を省くことができるか、あるいは少なくとも減らすことができることである。
【0084】
好ましい実施形態によれば、漂白工程、好ましくはE、EO、EOP、P又はPO漂白工程からのろ液の一部は、酸素脱リグニン段階の洗浄工程に戻されてもよい。
【0085】
一実施形態では、漂白工程からの、好ましくはEO漂白工程からのろ液の一部は化学サイクルに戻される。このようにして、Naを化学サイクルに戻すことができる。好ましくは、パルプ工場は、この場合、化学的回収サイクルからのCl及びKなどの非プロセス成分を選択的に除去するためのユニットを含む。
【0086】
いくつかの実施形態によれば、補充硫酸ナトリウム及び/又は補充フライアッシュに由来する硫黄摂取量から製造された硫酸の少なくとも一部は、黒液からトール油石鹸を分離するために、特に、酸性化によって使用される。
【0087】
本発明の製品は、好ましくは漂白クラフトパルプなどの漂白パルプである。
【0088】
本技術は、漂白クラフトパルプの製造に特によく適している。漂白は、従来の基本的無塩素漂白(ECF)又は完全無塩素漂白(TCF)によって実行することができる。漂白化学物質は、通常、二酸化塩素、酸素ガス、過酸化水素、及び過酸化物化合物、硫酸、オゾン、及びそれらの組み合わせから選択される。通常、酸素脱リグニン段階は、蒸解後に残っているリグニンの大部分を除去するために、蒸解(脱リグニン)後に最初に実施される。酸素脱リグニン後、洗浄が実施される。
【0089】
アルカリ処理工程において、漂白工程におけるpHは、通常は9から11の範囲であり、例えば9.5から10.0である。酸処理工程において、漂白のpH(最終pH)は、通常は約2から5.5であり、例えば3から4.5である。一実施形態では、パルプ化段階から得られたパルプは、例えばオゾン、過酸化水素、酸素又はそれらの組み合わせを使用して、好ましくは、少なくとも1つのアルカリ酸化工程を含む、完全無塩素漂白に供される。
【0090】
一実施形態では、漂白は、通常の大気圧で実施される。他の実施形態では、漂白は、通常、通常の大気圧の約1.05から10倍である過圧で実施される。
【0091】
一実施形態では、酸素脱リグニン段階から得られたパルプは、酸性pHで実施される第1の二酸化塩素工程と、酸性pHで実施される第2の二酸化塩素工程と、第1の二酸化塩素工程と第2の二酸化塩素工程との間に実施される中間アルカリ酸化工程とを少なくとも含む二酸化塩素漂白段階に供される。
【0092】
第1の二酸化塩素段階(D0段階)は、pH調整のために酸を必要としてもよく、硫酸の投入が必要とされる。
【0093】
いわゆる「A」段階は、酸素脱リグニン段階の後であって、D段階の前に行われ得る。A段階においても、硫酸の投入が必要とされる。
【0094】
一実施形態では、二酸化塩素漂白の酸化工程は、酸素ガス及び過酸化物の群並びにそれらの組み合わせから選択される酸化剤の存在下で、pH9の後半から11のアルカリ媒体中で実施される。
【0095】
アルカリ段階に対し、最終pHを約9から11の範囲に調整するために、任意のアルカリ剤を使用することができる。1つの好ましい実施形態では、パルプ工場の化学的回収循環で再生された白液の一部は酸化され、二酸化塩素プロセスのアルカリ酸化工程でアルカリ剤として使用される。
【0096】
一実施形態では、二酸化塩素漂白の酸化工程のアルカリ媒体のアルカリ剤の少なくとも50モル%、特に少なくとも75モル%は、酸化白液からなる。
【0097】
一実施形態では、再生白液の少なくとも一部が酸化され、こうして得られた酸化白液又は部分酸化白液は、漂白のアルカリ酸化工程、好ましくはEO工程の媒体として使用される。より好ましくは、同時に、補充NaOHの少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%は、外部の供給源、例えば、パルプ工場の外に由来する、硫酸を含む又は硫酸からなる他の硫黄含有補充化学物質によって置き換えられる。パルプ工場で上記のプロセスを使用すること(酸化白液の使用及び補充化学物質としての外部の硫酸ナトリウムの使用)の利点は、パルプ工場のNa/Sバランスが効率的かつ経済的に制御され得ることである。
【0098】
一実施形態では、再生された白液の少なくとも一部は、部分的又は完全に酸化され、こうして得られた酸化又は部分酸化白液は、漂白のアルカリ酸化工程、好ましくはEO工程において、媒体として使用される。好ましい実施形態では、前記酸化又は部分酸化白液はまた、パルプ工場における排出物の流れのpHを調整するために使用される。さらにより好ましくは、同時に、補充NaOHの少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%が、内部又は外部の供給源に由来する硫酸ナトリウムを含むか又はそれからなる他のナトリウム含有補充化学物質によって置き換えられる。パルプ工場での上記プロセスのすべての使用(酸化白液の使用及び補充化学物質として外部又は内部の硫酸ナトリウムの使用)の利点は、パルプ工場のNa/Sバランスが効率的かつ経済的に制御され得ることである。
【0099】
一実施形態では、再生白液の少なくとも一部は、部分的又は完全に酸化され、こうして得られた酸化又は部分酸化白液は、漂白のアルカリ酸化工程、好ましくはEO工程で媒体として使用される。酸化白液のNaOH含有量はかなり低いので、酸化白液を使用する前記プロセスは、ナトリウム損失を置き換えるための補充化学物質として、パルプ工場の副産物及び残留物の形で得られた硫酸ナトリウムを使用することと有利に組み合わされる。
【0100】
酸化漂白工程のアルカリの流出物は廃棄することができる。しかしながら、好ましくは、廃棄物の少なくとも一部は回収され、再循環されることである。一実施形態では、アルカリ酸化工程の廃棄物の少なくとも50重量%が、白液を再生するために、パルプ工場の化学的再循環へと再循環される。
【0101】
さらに、本技術の一実施形態は、クラフトプロセスを使用するパルプ工場において漂白セルロースパルプを製造する方法を含み、ここで、
-パルプは、リグノセルロース原材料から脱リグニン(蒸解)段階で、パルプ工場の化学的再循環で再生される白液を含む蒸解液を使用して製造され、
-脱リグニン(蒸解)段階から得られたパルプは、漂白に供される。
【0102】
上記プロセスのいくつかの実施形態では、漂白シーケンスは、ECF漂白又はTCF漂白のいずれかである。
【0103】
一実施形態では、ナトリウム損失を置き換えるための主な補充化学物質として使用される硫酸ナトリウム、及び、場合によっては他の硫酸塩が、白液を再生するためのパルプ工場の化学的再循環に供給される。
【0104】
したがって、一実施形態では、本技術は、脱リグニン液、すなわち白液だけでなく、アルカリ条件が観察される他のプロセスで使用するために、パルプ工場の従来の化学的回収再循環によって水酸化ナトリウムを生成する方法を提供する。
【0105】
好ましくは、再生された白液の少なくとも一部は酸化され、こうして得られた酸化白液は、二酸化塩素漂白(ECF)又はTCF漂白のアルカリ酸化工程における媒体として使用される。さらに、硫酸ナトリウムは、ナトリウム損失を置き換えるための主な補充化学物質として使用され、硫酸ナトリウムは、白液を再生するために、パルプ工場の化学的再循環に少なくとも部分的に供給される。
【0106】
いくつかの実施形態では、再生された白液の少なくとも一部が酸化され、こうして得られた酸化白液は、漂白プロセスのアルカリ酸化工程における媒体として使用され、これは、例えば、ECF漂白プロセス又はTCF漂白プロセスであり得、漂白剤として、又はpH調整のために使用されるNaOHの少なくとも一部を置き換える。
【0107】
酸化白液は、pH調整を必要とする任意の蒸解又は回収工程で使用することができる。酸化白液は、出力されて別のパルプ工場に輸送され、特に、受け取る工場にNPE除去システムが含まれていないが、送る工場には含まれている場合には、そこで使用される。
【0108】
好ましい実施形態では、この方法で原料として使用される木材は、マツ又はトウヒなどの針葉樹、又は、カバノキ、アスペン、ポプラ、アルダー、カエデ、コットンウッド、又はユーカリなどの、混合熱帯広葉樹を含む広葉樹を含む。しかし、穀物のわら、クサヨシ、バガスなどの環状及び多年生の植物材料など、他の原材料も問題になる可能性がある。
【0109】
有利な実施形態では、ナトリウム損失を置き換えるための補充化学物質は、パルプ工場の内部又は外部の副産物及び残留物のいずれかとして得られる硫酸ナトリウム又は硫酸ナトリウムと炭酸ナトリウムの混合物を含むか、又はそれらからなる。さらに、再生白液の少なくとも一部が酸化され、こうして得られた酸化白液、又は部分酸化白液を、漂白のEO工程の媒体として使用する。さらに、EO漂白工程からのろ液の一部が化学サイクルに戻される。この実施形態では、パルプ工場は、好ましくは、硫酸プラントと、回収サイクルからCl及びKなどの非プロセス成分を選択的に除去するためのユニットとを含む。この実施形態では、繊維ラインの機能及び回収ラインの機能は、相乗効果及びパルプ工場のNa/Sバランスを制御するための効率的な方法を提供する。
【0110】
ここで添付の図面に目を向けると、図1は、本発明の少なくともいくつかの実施形態によるパルプ工場の操作及び構成を概略的に示していることに留意される。
【0111】
工場は、一般に、繊維ラインと回収ラインとに分けられる。繊維ラインでは、木材原材料がパルプに変換される。回収ラインでは、蒸解媒体と化学サイクルの化学品が処理され、循環される。また、木材に含まれるエネルギーが回収される。
【0112】
木材原材料は、通常は、針葉樹であり例えば松又はトウヒであり、あるいは、広葉樹であり例えば白樺であるが、上記した他の原材料も使用できる。繊維ラインのプロセスは、木材の皮むき及び削り取り2、パイルへの木材チップの収集3、木材チップの選別4、そして、選別されたチップの蒸解装置への導入5である。得られた樹皮は乾燥され1、石灰化用としてガス化される。
【0113】
蒸解装置5において、繊維を可能な限り無傷に保ちながらリグニンを除去するために、チップはアルカリの白液中で脱リグニン化される。脱リグニンされたチップは洗浄され、選別される6。その後、酸素脱リグニン7及び漂白工程8が続く。脱リグニン及び漂白工程で使用し得る化学品には、MgSO、硫酸、過酸化水素、酸素、NaOH、及びClOが含まれる。酸化白液は、これらの工程の全て又は一部で使用できる。硫酸プラント11で製造された硫酸は、漂白工程8に導くことができる。
【0114】
漂白されたパルプは、乾燥され9、梱包され10され、それから取引先に渡される。
【0115】
回収ラインにおいて、蒸解装置からの使用済の白液(黒液)は、蒸発プラント12に導かれ、そこから濃縮黒液(重黒液)は回収ボイラー16に送られる。回収ボイラーは固体を生成し(精錬)、これは、再苛性化ユニット15及び石灰窯14から構成される再生サイクルに導かれる。精錬物は、弱白液と混合されていわゆる緑液が調製され、再苛性化ユニットで処理されて白液が生成され、この白液にはアルカリ性の蒸解化学物質が含まれており、そこから石灰泥が分離される。次に、石灰窯は石灰泥を生石灰に燃やして再利用する。リグニンは、酸性化によって、例えば、硫酸(例えば、ユニット11から)を使用することによって、ユニット22において黒液から分離され、洗浄され、次いで、リグニン洗浄液を蒸発12に戻すことができる。
【0116】
蒸発プラント12からの凝縮物は、漂白工程8及び/又は酸素脱リグニン7の洗浄工程に実施することができる。
【0117】
有利には、再生された白液の一部は、蒸解装置5ではなく、酸素脱リグニン7及び/又は漂白工程8に導かれ、補充NaOHの代替物として機能する。この副流は酸化される。
【0118】
回収ボイラー16はまた、フライアッシュ及び蒸気を出力する。フライアッシュは、投棄されるか、化学サイクルに直接戻されるか、あるいは、最初に処理されてCl及び/又はKが除去されてから、化学サイクルに戻される。回収ボイラー16で生成された高温蒸気は、主にタービン17に導かれて、背圧蒸気を供給し、工場自体又は外部で使用することができる電気を生成する。回収ボイラー16及び石灰窯14で生成された煙道ガスは、電気集塵器19及び18によって濾過される。集塵器19からの灰は、蒸発器12及びNPE除去システム(25、ここでは、「アーク」とも呼ばれる。)の両方に導かれる。
【0119】
蒸発プラント12又は蒸解装置5又は再苛性化装置15から発生する濃縮硫黄含有臭気ガスは、回収ボイラー16、石灰窯14、又は、硫酸プラント11のいずれかに導かれる。弱い臭気ガス20ボイラーに導かれる。
【0120】
再苛性化ユニット15からのGLSS(緑液簡略化ストリッピング)製品は、硫酸プラント11に導くことができる。
【0121】
工場は、生物学的廃水処理プラント21を含む。
【0122】
ClOプラント24は、とりわけ、NaClO3及び(硫酸プラントからの)硫酸を原料として使用する。このプラントは、漂白化工程8につながるClOと、硫酸ナトリウム又はセスキ硫酸を含む廃酸を生成する。廃酸は蒸発プラント12に導かれる。
【0123】
工場は、トール油プラント13を含む。トール油プラントは、蒸解及び/又は蒸発プラント12からのトール油石鹸を受け取り、硫酸プラント11から硫酸を受け取る。トール油製造プロセスからの母液(ブライン)には、硫黄化合物が含まれている。それは蒸発プラントに戻され、これは、より多くの硫黄が重黒液に組み込まれ、それによって化学サイクルに組み込まれることを意味する。
【0124】
図1の実施形態では、補充硫酸ナトリウムが蒸発器12に投入される。他のパルプ工場からのフライアッシュがナトリウム含有補充化学物質として使用される場合、灰にはNPEが含まれている可能性があるため、フライアッシュはARC25に直接的に投入することが好ましい。あるいは、他のパルプ工場からのフライアッシュを蒸発器12に投入することができる。ARC25からの流出物は、生物学的廃水処理プラント21に導かれる。他のパルプ工場又は金属産業や化学産業などの他の外部ソースからの廃棄物を含むNa及びSは、ARC25又は蒸発器12に導くことができる。
【0125】
開示される本発明の実施形態は、本明細書に開示される特定の構造、プロセス工程、又は材料に限定されず、関連技術において通常当業者によって認識されるであろうそれらの同等物に拡張されることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用され、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0126】
本明細書全体を通して「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所での「一実施形態において」又は「実施形態において」という句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らない。
【0127】
本明細書で使用される場合、複数のアイテム、構造要素、構成要素、及び/または材料は、便宜上、共通のリストに提示され得る。ただし、これらのリストは、リストの各メンバーが個別の一意のメンバーとして個別に識別されているかのように解釈する必要がある。したがって、そのようなリストの個々のメンバーは、反対の指示なしに、共通のグループでの提示のみに基づいて、同じリストの他のメンバーと事実上同等であると解釈されるべきではない。さらに、本発明の様々な実施形態及び例は、その様々な構成要素の代替物と共に本明細書で参照され得る。そのような実施形態、実施例、及び代替案は、互いに事実上同等であると解釈されるべきではなく、本発明の別個の自律的な表現と見なされるべきであることが理解される。
【0128】
さらに、記載された特徴、構造、又は特徴は、1つ又は複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。以下の説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、長さ、幅、形状などの例など、多数の特定の詳細が提供される。しかしながら、関連技術の当業者は、本発明が、1つ又は複数の特定の詳細なしで、又は他の方法、構成要素、材料などを用いて実施できることを認識するであろう。他の例では、周知の構造、材料、又は操作本発明の態様を曖昧にすることを避けるために、詳細に示されていないか、又は説明されていない。
【0129】
前述の例は、1つ又は複数の特定の用途における本発明の原理を例示するものであるが、発明の能力を行使することなく、また、本発明の原理及び概念から逸脱することなく、形態、使用法、及び実施の詳細に多数の変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。したがって、以下に記載される特許請求の範囲による場合を除いて、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0130】
「含む」および「含める」という動詞は、この文書では、引用されていない機能の存在も除外も要求もしないオープンな制限として使用されている。従属請求項に記載されている特徴は、特に明記しない限り、相互に自由に組み合わせることができる。さらに、本文書全体での「a」または「an」、すなわち単数形の使用は、複数を除外しないことを理解されたい。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、少なくともパルプ、特に漂白パルプの製造に工業的に適用可能である。
【符号の説明】
【0132】
NPE 非プロセス成分
ECF 基本的無塩素
TCF 完全無塩素
LHT 溶液熱処理
GLSS 緑液簡略化ストリッピング
ESP 電気集じん器
LCHV 低濃度高容量
【0133】
参照符号リスト
1.樹皮の乾燥
2.樹皮化及びチップ化
3.チップ堆積
4.チップ選別
5.蒸解(リグニン除去)
6.洗浄、選別
7.酸素脱リグニン
8.漂白
9.乾燥
10.梱包
11.硫酸プラント
12.蒸発プラント
13.トール油蒸解
14.石灰窯
15.再か性
16.回収ボイラー
17.タービン、発電機
18.石灰窯の電気集じん器(ESP)
19.回収ボイラーの電気集じん器(ESP)
20.希釈臭気ガス、LCHVガス
21.生物学的廃水処理プラント
22.リグニン分離
24.ClO2プラント
25.ARC(NPE除去システム)
図1